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農林水産物や食品を効率的に加熱、乾燥する低温用遠赤外線セラミックヒーターを開発しました~産学行政連携によりナノカーボン材料の新技術を実用化~

 あいち産業科学技術総合センター産業技術センター瀬戸窯業試験場(瀬戸市)は、ヤマキ電器株式会社(瀬戸市)、国立大学法人東京大学大学院工学系研究科、愛知県農業総合試験場東三河農業研究所(豊橋市)との産学行政の連携による共同研究により、ナノカーボン材料を用いた低温用遠赤外線ヒーターを開発しました。
 本開発品は、従来のセラミックヒーターと比較して、赤外線の波長域において広い範囲で高い放射率※1を持ちます。特に、ナノカーボン材料の特性により水が吸収する波長域の放射率が大幅に高くなったため、水分を多く含む対象物を素早く加熱することができます。これにより、農林水産物や食品を効率的に乾燥することができます。効果として、乾燥対象物の劣化抑制、品質向上が期待されます。
 今回開発した試作品を含む研究開発成果については、2020年11月11日(水曜日)から13日(金曜日)までオンラインで開催される「アグリビジネス創出フェア2020」において展示、紹介します。

ヒータ表面  ヒータ裏

         (表面)                         (裏面)     

低温用遠赤外線セラミックヒーター

1 開発の背景

● 従来のセラミックヒーターによる乾燥

 セラミックスは、加熱されると、赤外線を放射します。この特長を用いたヒーターがセラミックヒーターです。赤外線の放射による加熱はエネルギーの損失が少なく、急速な加熱が可能であることから工業製品や農林水産物等の乾燥に利用されています。
 一方で、セラミックスの赤外線の放射率は、波長によって異なるため、乾燥対象物に吸収されやすい波長と適合しないと乾燥効率が悪くなるという課題がありました。
 そこで、本研究においては、広い波長域で高い放射率をもつカーボンナノチューブやグラフェン(以下、「ナノカーボン材料」)に着目し、セラミックヒーター表面に塗布することで、様々な対象物に適用可能な低温用遠赤外線ヒーターの開発に取り組みました。
 また、乾燥効率の低下の原因となる、乾燥対象物との接触によるセラミックヒーター表面の汚損を防ぐため、ヒーター表面にシリコーン樹脂をコーティングし、引っかき硬度と撥水性の向上を図りました。

2 開発内容

(1) 研究開発体制 

 
機関名役割
国立大学法人東京大学大学院工学系研究科凝集しやすいナノカーボン材料を分散させる技術の開発
あいち産業科学技術総合センター
(産業技術センター瀬戸窯業試験場)
ナノカーボン材料とシリコーン樹脂のコーティング (引っかき硬度および撥水性の付与)
ヤマキ電器株式会社ナノカーボン材料をコーティングしたセラミックスヒーターの製品化
あいち産業科学技術総合センター
(共同研究支援部、食品工業技術センター)
食品を対象とした乾燥実験、乾燥品の成分分析
愛知県農業総合試験場(東三河農業研究所)碾茶(てんちゃ)※2の乾燥実験、乾燥品の評価

 ※本研究は農研機構 生研支援センター「「知」の集積と活用の場による革新的技術創造促進事業(異分野融合発展研究)」の支援を受けて行っています。

(2) 研究開発の内容

●ナノカーボン材料を表面に塗布したセラミックヒーターの作製

 セラミックヒーターの表面にナノカーボン材料を塗布し、赤外線の放射率を測定しました(図1)。測定結果では、波長の代わりにその逆数である波数(単位はcm-1、「カイザー」と呼ぶ)で表しています。結果より、波数6000-1500 cm-1において既存のセラミックヒーターよりも大幅に高い放射率をもっていました。水はこの波数域の赤外線をよく吸収するため、水分を多く含む対象物を効率的に加熱することができます。また、広い波数域にわたって放射率が高いため、吸収する波数の異なる様々な対象物に適用可能です。
 また、コーティングするシリコーン樹脂の塗布層の厚み等の条件を最適化することで、放射率を下げることなく引っかき硬度及び撥水性の付与に成功しました。これにより、乾燥対象物がセラミックヒーターと接触しても汚損しにくくなるため、乾燥効率の低下を抑えることができます。

図1赤外放射率

      図1 既存品と開発品の赤外線の放射率

●開発品を用いた食品の乾燥

 開発されたヒーターを用い、食品乾燥のモデル実験として食パンを対象として加熱を行ったところ、既存のセラミックヒーターと比較して表面温度が早く上昇し、30秒加熱時点で3℃の差がありました(図2)。また、サツマイモを2時間乾燥させると、既存品を用いた場合の重量減少は48%であったのに対し、開発品では54%であり、速やかな乾燥が達成されました。さらに、棚式の乾燥機に開発品を導入し、碾茶を対象とした乾燥を行いました。稼働中に棚を乾燥機から取り出し、碾茶の表面温度を測定したところ、ヒーターの直下にあった部分が熱風のみ当たっていた部分と比較して高温になっていました(図3)。開発品を用いることで、狙った部分を効果的に加熱することも可能です。

食パン2

           図2 食パンの温度上昇

           表 サツマイモの乾燥実験結果

さつま3

 

   サーも

          図3 碾茶の乾燥(表面温度)

(3) 効果

●食品等の水分を多く含む対象物に対して、従来のセラミックヒーターより素早く加熱、乾燥することができます。この特性を利用し、農林水産物を最適な温度プログラムで加熱乾燥することで、劣化の抑制や機能性成分等の増加が見込まれます。

●汚損による乾燥効率の低下を抑えることができるため、保守や交換サイクルを長期化することができます。

●小型かつ形状を自由に設計できるため、既存の乾燥装置に取り付けて使用できます。

3 今後の展開

 今回開発した試作品及び研究開発成果を2020年11月11日(水曜日)から11月13日(金曜日)までオンラインで開催される「アグリビジネス創出フェア2020」において展示、紹介します。なお、センターでは、本開発技術に関心のある方々からの相談や問合せに随時対応しています。お気軽に御連絡ください。
 また、2021年1月からヤマキ電器株式会社において、試作販売開始を予定しています。

4 問合せ先

(セラミックヒーターの開発、食品の乾燥について)
あいち産業科学技術総合センター産業技術センター瀬戸窯業試験場
セラミックス技術室(担当 高橋)
〒489-0965 愛知県瀬戸市南山口町537
電話:0561-21-2116(代表)  FAX:0561-21-2128

(セラミックヒーター試作品の製造、販売について)
ヤマキ電器株式会社旭工場
取締役 技術部長 小野田 茂
〒488-0035 愛知県尾張旭市上ノ山町間口3051
電話:0561-53-0560 FAX:0561-54-3941

【用語解説及び参考】
※1 放射率:物体が熱放射するエネルギーを、同温の黒体の放出するエネルギーで除した値
※2 碾(てん)茶:被覆栽培して摘採した茶を、揉む工程を行わずに乾燥させたもので、抹茶の原料

<参考>
「アグリビジネス創出フェア2020」について

日 時:2020年11月11日(水曜日)から11月13日(金曜日)まで

場 所:オンライン開催

内 容:全国の産学の機関が有する、農林水産・食品分野などの最新の研究成果を展示やプレゼンテーションなどで分かりやすく紹介し、研究機関間や研究機関と事業者との連携を促す場として開催する「技術交流展示会」

URL:https://agribiz-fair.maff.go.jp/