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第23回愛知まちなみ建築賞の受賞作品について

ページID:0114345 掲載日:2016年1月18日更新 印刷ページ表示

第23回愛知まちなみ建築賞 受賞作品(6作品)

記者発表

総評

伊藤恭行委員長

 ここ数年続いていた愛知まちなみ建築賞への応募作品の減少がやや落ち着いてきたように感じる。昨年の74作品に続き今年は49作品であり、減少傾向は続いているものの大きな変動ではなくなっている。昨年の総評でも指摘したが、このような傾向の原因の一つに、近年、東海地区において様々な建築賞が創設されてきたことがあげられる。特に、この愛知まちなみ建築賞と同様に長い歴史を持つ「すまいる愛知住宅賞」に続き、JIAの「東海住宅建築賞」が創設されたことで住宅作品の応募が大きく減少している。このような傾向は健全なことであって、それぞれの賞のもつ特徴を明確にし、顕彰制度としての役割を果たしていくことが重要であると考える。

 その意味で、まちなみ建築賞の意義を再確認しておきたい。建築の評価には様々な視点がありうるが、「まちなみ」という評価軸は、建築がパブリックな空間と如何に関わることができるのかを問うことに他ならない。個々の建築のクオリティを評価することが多くの建築賞の目的であるのに対し、そのような視点だけでは評価できない建築の存在意義を位置づけていくことが本賞の役割であると考える。建築の多様性を評価し、社会に対して広く発信する努力を今後も続けていくべきであろう。

 県内各地から49作品の応募をいただいた。この中から愛知県の「人にやさしい街づくりの推進に関する条例」に適合しないもの7点を除外して、42作品を審査の対象とすることとした。昨年の総評でも指摘したことだが、数点の作品がこの条例に適合しないとして選考から外さざるを得ないことが続いている。特に、大学のような大きな敷地の中で高低差がある場合、個別の建築とその周辺においての適合性が問われることになるが、ここでの見落としが多く、この条例に適合しないことが少なくない。難しい問題ではあるが、バリアフリーは社会的な要請でもあるので、応募者には十分な注意をお願いしたい。

 地域ごとでは、名古屋市が18点、尾張地域13点、西三河地域10点、東三河地域1点となっている。1次選考では、この中から14点を2次選考対象作品とした。10月26日に行われた2次選考では、作品ごとの詳細資料・図面ならびに現地撮影した映像資料を用いて選考委員による討議を行い、6作品を選定した。

 受賞した作品については各委員の選評をお読みいただきたい。個人的には、「円頓寺商店街アーケード」の再生が強く印象に残っている。郊外型大規模商業施設の隆盛により旧来の商店街が衰退して行く中で、アーケード街の再生をデザインしていくことは大きな挑戦だと考える。この再生は建築家と地元商店街の人々の高い志があってこそ初めて実現していくことだ。ここでは、厳しい資金状況の中で既存の鉄骨アーケードの屋根部分を主軸に改修することで、アーケード街の印象を一変するような改修がなされている。光環境、通風が改善され、地元商店街の祭り(七夕)の飾り付けにも細やかな対応がなされており、設計者と地元が協力しながら模索を続けていることが伝わってくる。現時点では、今後の推移を見守ることになろうかと思うが、全国に点在する同様な事例にとって一つの指針になる試みである。

受賞作品 講評

◆円頓寺商店街アーケード
円頓寺商店街アーケード

【齋藤正吉[齋藤正吉建築研究所](2015)】
 
 主要用途  公共用歩廊
 所在地   名古屋市西区那古野
 建築主   円頓寺商店街振興組合
         円頓寺商店街アーケード対策委員会
 設計者   齋藤正吉建築研究所
         有限会社デロ 市原建築設計事務所
 施工者   丸仲建設株式会社
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【講評】村山顕人委員

 リニア中央新幹線の開通を見据えた市街地再開発が進み、街並みが大きく変容する名古屋駅地区から北東方面に少し歩くと、歴史的蓄積と人間的スケールを継承する那古野地区がある。当地区の東西軸の一部である円頓寺商店街に1964年に設置された延長約220mのアーケードの3回目の改修は、この地区の街並みを今後とも継承していきたいという地域の総意を示す象徴的な作品であると言える。

 改修では、開閉可能な透過性の高い屋根による有効な換気と採光の実現、屋根の高さの変更による鉄骨の可視化と長寿命化、4種類のLED照明(ダウンライト、ペンダントライト、道しるべ灯、イルミネーションライト)による演出と省エネ、八角形のコンクリート補強による耐震化と店舗入口空間への配慮、ソーラーパネル設置により得られる売電益による道路清掃活動費の捻出、防犯カメラの設置による安全・安心の確保、スギ材を使用した洗練された正面ファサードの住民参加プロセスを通じた決定など、現代的な要請に応える様々な工夫が施されている。

 アーケード改修を契機に、今後、沿道の店舗がハード・ソフトともに持続的に更新され、この商店街の魅力が向上するのが楽しみである。

金城学院大学N1棟、N2棟、エラ・ヒューストン記念礼拝堂
金城学院大学N1棟、N2棟、エラ・ヒューストン記念礼拝堂

【佐々木俊徳 [カ・ドーロ](2014)】
 
 主要用途  大学、礼拝堂
 所在地   名古屋市守山区弁天が丘
 建築主   学校法人金城学院
 設計者   株式会社三菱地所設計
 施工者   大成建設株式会社 名古屋支店
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【講評】北川啓介委員

 地山が残り自然にも恵まれた名古屋北東部の丘陵地の大学キャンパスにおいて、やわらかな楕円形の広場が既存の敷地環境を絶妙につなぐことにより、講義棟、礼拝堂、中庭といった屋内空間と屋外空間が、地域との積極的な一体感や延伸感のあるまちなみを具現化している。豊かな森に恵まれた環境ゆえ、従前より名古屋市道がキャンパスを東西に隔てていた印象が強かったが、既存の樹木の剪定により自然光を溢れさせた公共動線の環境づくり、近景から遠景までのつながりを構成するまちなみの拡張、市道に接するキャンパス内歩道の整備など、視線を遮るものを極力取り除いていく中で豊かな学びの環境を誘発する風景を実現している。

 教職員や学生やキャンパス内の市道を通る人の視線を開放したことで、見る/見られるのコミュニケーションの楽しみをキャンパス内に溢れさせた点、同時に建築やまちなみを保全によって安心や安全へも配慮した点も高く評価したい。

◆さくらレジデンス
さくらレジデンス

【車田保 [車田写真事務所](2015)】
 
 主要用途  特別養護老人ホーム
 所在地   岡崎市仁木町
 建築主   社会福祉法人さくら福祉事業会   
 設計者   株式会社山下設計中部支社
 施工者   小原建設株式会社
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【講評】朝岡市郎委員

 特別養護老人ホーム「さくらレジデンス」は、岡崎市の市街地より北に30分ほどの丘陵地にあり、旧街道とせせらぎの美しい川に挟まれた自然ゆたかな里山にある。旧街道沿いの湾曲した大きな屋根は地域との調和が図られているとともに来訪者をやさしく迎えいれている。背面の川からみると形状の異なる多数の台形がダイナミックに配置されており、今までの同様な建物にはない斬新な外観となっている。この対照的な2つのファサードがある作品である。

 旧街道沿いの湾曲した大きな屋根の下には、木構造で温かみのある地域ギャラリーや多目的ホールなど地域に開放されたスペースがあり、地域の皆さんに親しまれている。そして入所者と地域の人々との”ふれあい”の場には、閉ざされることなく地域に根差した生活が生まれ、大きな効果を得られるスペースが創出されている。

◆杉木立のアトリエ
杉木立のアトリエ

【鈴木文人[フォワードストローク](2013)】

 主要用途  住宅+アトリエ
 所在地   豊田市池島町
 建築主   岩永
 設計者   塩田有紀建築設計事務所
 施工者   株式会社中島工務店
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【講評】水野豊秋委員

 この建物立地は、奥三河地域に今も点在する、かやぶき屋根の田舎家が見られる集落の中であり、私自身の育った原風景でもある。建替えのたびに壊されていく景観にジレンマを感じている昨今、「杉木立のアトリエ」は、里山にいかに溶け込み周辺の建物と共に山間地域の景観に寄与するべく構想され、時の流れに負けない存在感のある建築として、見事にその役割を果たしている。

 また芯持ち4寸角杉材を集成パネル化した構造壁とし、そのまま仕上げ材として使った取り組みや、土台なしで基礎から直接柱を立てることによって、杉木立に見立てた列柱をよりシンプルでリズミカルな印象を与えることに腐心が見られる。このように軽やかで素朴でありながら内部と外部が緩やかに区切られ、開かれた空間が実現している。

 ただ残念なことにその後の外構・造園工事でブロック積み土留やアルミ目隠しフェンス・アルミカーポートが増設され、選考委員会にて建築のよさが損なわれたとの意見もあり、設計者が最後まで携わる必要性を感じた。

◆名古屋商科大学国際教育研究センター
名古屋商科大学国際教育研究センター

【株式会社エスエス名古屋支店(2010)】
 
 主要用途  寄宿舎
 所在地   名古屋市千種区東山元町
 建築主   学校法人栗本学園   名古屋商科大学 
 設計者   株式会社竹中工務店 名古屋支店 
 施工者   株式会社竹中工務店 名古屋支店
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【講評】森真弓委員

 名古屋商科大学国際教育センターは、短期留学生のための学生寮である。本建築物は、東山動植物園の南側に走る名古屋高速2号線沿いに建つ。敷地は、東山の森から続く小高い丘にあり、道路側から南側斜面に沿って下に広がっている。

 建物の正面は、水平に長く伸びた「起り」の大屋根と、それに対峙する「信長塀」によって構成されている。日本固有の形式を取り入れ、統一感があり歴史性を意識させる。おおらかで大胆な瓦屋根と、敷地勾配に合わせて分割された塀は、屋根勾配や高さがよく吟味され、存在感を示しつつも圧迫感を感じさせず心地よい。入り口は門をおかず、ロビー側に広がる空間が通り側に開かれ、脇に作られた庭園を鑑賞できる。生活空間側は、南側斜面の傾斜を活かして建てられ、雑木林につながる視界と風の道を確保している。繊細な構成によって、周囲の環境と調和しながら、日本固有の美学、強さを感じさせている。世界の若者がここに集い、日本の「こころ」を感じながら交流し研究を進められる、豊かな環境が生み出されている。

◆道の駅 もっくる新城
道の駅 もっくる新城

【堀内広治[新写真工房](2015)】
 
 主要用途  道の駅
 所在地   新城市八束穂
 建築主   新城市
 設計者   株式会社鵜飼哲矢事務所 
 施工者   三河建設工業株式会社
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【講評】武藤隆委員

  この建物は新東名高速道路の新城インターチェンジと伊奈街道の間近に建つ「道の駅」施設である。敷地は全周を道路に囲まれた、ややすり鉢状の地形に位置し、物販や飲食の機能を持つ棟と観光案内所や足湯施設の棟とからなる。一般的な「道の駅」は施設の性格上、大規模な駐車場が併設され、建物は脇に追いやられることが多いが、ここでは建物をアイランド状に配置するとともに、木造でアーチ状の建物とすることで大屋根面をどこからでも視認できることに成功している。メインファサードとなる北部分はアーチの妻面を大開口部として内部との連続性を持たせつつ、斜面に沿った客席を持つステージとなり、内外の活動とランドスケープとを効果的に結び付けている。木造のアーチ屋根を支える架構の構造材はもちろん、内外の仕上げや什器などにも地元産の木材を多用し、長篠の合戦の「馬防柵」をモチーフとした空間とすることで地域のアイデンティティーを高めている点が、審査では高い評価を集めた。

 2016年2月には新たに高速道路が開通し、インターチェンジという地域の新しい玄関が誕生するが、その顔としてふさわしいだけでなく、景観と地域イメージの向上にも寄与する建築である。

問合せ

愛知県 建設部 公園緑地課 景観グループ
電話:052-954-6612(ダイヤルイン)
内線:2669、2678
E-mail: koen@pref.aichi.lg.jp