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研究報告第47号-抄録003

ページID:0122660 掲載日:2016年3月23日更新 印刷ページ表示

日本に侵入したミナミアオカメムシの卵寄生蜂Trissolcus basalis(Wollaston)と土着種Trissolcus mitsukurii(Ashmead)の寄生習性と種間競合

著者:西本浩之1)・藤田智美2)・田中利治3)・加藤晋朗1)

出典:関西病虫害研究会報(57):37-48

摘要:日本に侵入したミナミアオカメムシの卵寄生蜂Trissolcus basalis(Wollaston)(TB)と土着のTrissolcus mitsukurii(Ashmead)(TM)の寄生習性を比較し、2種の競合影響について考察した。被寄生卵の黒色度から判断すると幼虫期間はTMの方が短い。しかし羽化までの日数はTBの方が約1日短かった。2種間で共寄生が起こった場合、蛹化までの発育が早いTM幼虫の方が生存競争に勝ち残る個体が多いと考えられる。TM雌成虫は極めて強い攻撃性を示し、同種間で競争的闘争をするため産卵行動に集中できず、産卵に必要以上の時間を要した。対照的にTBは同種または他種に対してもほとんど攻撃性を示さず、短時間で寄生を終了させた。ミナミアオカメムシ1卵塊に同時にTBとTMを寄生させた時、羽化個体の大部分はTMであるが、TBの割合は各種1雌個体では5.8%、TB2雌個体とTM1雌個体では23.4%で、TBは少ないながら確実に寄生することができた。蜂蜜と水を十分に与えた条件では、産卵未経験のTB雌個体の寿命は90日、TM 雌個体は60日で、産卵経験有りの雌個体では、TBが48日、TMが23日となった。産卵の有無にかかわらずTBの方がTMより寿命が長かった。TBの生涯寄生産卵数は258で、羽化した雌個体の割合(雌/(雄+雌))は0.48であった。一方、TMの生涯寄生産卵数は125、雌個体の割合は0.77で、明らかに性比は雌に偏っていた。湿度20~30%の乾燥条件でTBは21%の個体が正常に羽化することができたが、TMは乾燥条件ではまったく羽化できなかった。TBはTMとの共寄生において不利である。しかし、これらの結果はTBが乾燥時に対応できる高い能力を持ち、寄主の相対密度が高く寄主卵塊が多く存在する時、より速く産卵を完了し、長寿命で産卵数が多いTBの方が多くの子孫を残すことを示唆している。


1)環境基盤研究部 2)環境基盤研究部(現尾張農林水産事務所) 3)名古屋大学