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コラム

窯場今昔100選  仲野泰裕

(11) 源内焼

  • 褐釉アメリカ大陸地図皿
  • 三彩五鳥文皿 江戸時代 18世紀後半
 讃岐国志度(現在・香川県さぬき市)に元文三年(1738)開窯したとされる志度焼に、宝暦五年(1755)に平賀源内の指導を得て発展したとされるやきものについて、総括して源内焼と呼ばれるようになっている。
 しかし、近隣の諸窯の内、類似する意匠や焼成技法のある屋島焼などどの混同も認められ、さらに調査研究の必要な状況である。このため、多くの源内焼とされる伝世資料の中に、普遍的に認められる特徴を整理してみると、まず焼成技術と釉法からは、緑や褐色などの単彩や三彩などを象徴的に施した軟質施釉陶器である。
 成形では、原則として型を用いて器の基本形を成形するともに、型を用いてシャープな浮彫りとなる文様が施されている。しかし人物の表情や風景の描写などを細やかに彩色する事はなく、数種の釉色で大雑把に塗り分けられているのが一般的である。
 一方源内焼の文様は多彩であるが、いずれも口縁部が強調されており、六稜、八稜、輪花などと共にこれに伴う文様帯も幅広くとられ、花唐草などが整然と施されている。また見込みの主文様には、大陸地図、日本地図などの他、七賢人、寒山寺風景、西湖山水などがある。
 さらに皿・鉢など、限られた器形に偏るという傾向があるが、陶土の可塑性や型成形の技術的な制約も影響していると考えられる。
 青木木米が煎茶器を中心に、型成形と交趾意匠を駆使して京焼に新風を吹き込む以前に、このような源内焼の取り組みのあったことに注目したい。

 現在、平賀源内先生遺品館(さぬき市)に、作品・文書等が展示されており、自性院(同市)内に墓所がある。
(平成19年 『釉人』第73号掲載)
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