
特別展
アーツ・アンド・クラフツとデザイン
―ウィリアム・モリスからフランク・ロイド・ライトまで
Arts & Crafts and Design:
From William Morris to Frank Lloyd Wright
2023年1月28日(土)から3月26日(日)まで
毎週月曜日休館
展覧会の概要
アーツ・アンド・クラフツは、19世紀後半のイギリスで興ったデザイン運動です。産業革命後の工業化の波の中、思想家ジョン・ラスキンは「機械が人間の労働から創造性を奪う」と批判し、中世の創造と労働が一体となった社会であるべきと唱えました。ラスキンの思想に傾倒したウィリアム・モリス(1834-1896)は、仲間たちと共に手仕事を通して「すべての人々の生活に美しいデザイン」を提供しようとしました。モリスらの仕事に影響を受けた多くのデザイナーや建築家たちは、アーツ・アンド・クラフツ運動を発展させ、やがてその影響はヨーロッパを始め世界各地へと及びます。アメリカでは、建築家フランク・ロイド・ライトが機械生産を受容し、運動の新たな方向を提起しました。
本展では、各地の歴史や文化、社会情勢を反映しながら展開を見せたアーツ・アンド・クラフツ運動の広がりと多様性を、イギリスとアメリカのテキスタイルや壁紙、家具、タイル、ガラス、アクセサリーなど約150点を通じて御紹介します。
展覧会のみどころ
◇アーツ・アンド・クラフツ運動の代表作家による「心豊かな暮らしのためのデザイン」が大結集!
◇日本でも人気が高い憧れのリバティプリントやプロダクトもお目見え
◇アメリカのティファニーやフランク・ロイド・ライトも網羅した大規模な展示
◇他巡回会場では見られないオリジナル展示「アーツ&クラフツの陶芸」を同時開催
展示構成
第1章 モリス・マーシャル・フォークナー商会とモリス商会
ウィリアム・モリスが初期に手掛けた壁紙をはじめモリス商会の代表的なテキスタイル、家具のほか、晩年に情熱を注いだ書籍デザインなどをご紹介します。
第2章 アーツ・アンド・クラフツ展覧会協会
モリスの理念と実践は、次世代のデザイナーや建築家に大きな影響を与えました。モリスに共鳴した代表的な作家をご紹介します。
第3章 英国におけるアーツ・アンド・クラフツの展開
アーツ・アンド・クラフツ運動はしだいに産業デザインとして展開していきます。たくさんの人々に美しいデザインを提供するために、リバティをはじめ各メーカーが同運動の製品を販売しました。
第4章 アメリカでのアーツ・アンド・クラフツ
世界各地に広がったアーツ・アンド・クラフツ運動は、それぞれの地の事情を合わせて展開していきました。アメリカのアーツ・アンド・クラフツ運動は、機械で生産することを受容し独自の方向を示しました。
展覧会関連イベント
記念講演会
「モリスとド・モーガンのタイル」
日時:2023年2月12日(日)午後1時30分から
講師:吉村典子氏(宮城学院女子大学教授)
会場:本館地下1階講堂
定員:100名(事前申込不要、当日先着順、聴講無料)
ミニ講座&ギャラリートーク
日時:2023年2月5日(日)、3月5日(日)いずれも午後1時30分から1時間程度
会場:本館1階 第1・第2展示室(集合は本館ロビー)
定員:各回20名(事前申込不要、先着順)、要当日観覧券
体験講座 「ティーアドバイザーに学ぶヴィクトリア時代の紅茶文化」【要申込・有料】
内容:展覧会・講師所有のアンティークカップの鑑賞と美味しいお茶の淹れ方を実習します。
日時:2023年2月23日(木・祝)
午前の部:午前10時から/午後の部:午後1時15分から
講師:森川隆氏(日本紅茶協会認定ティーアドバイザー/紅茶館M`s Tearoom主宰)
定員:各回15名(応募多数の場合は抽選)、要参加料
参加料やお申し込み方法は、イベント情報ページでお知らせします。
ワークショップ「自然の美しさに心を馳せるータイルに和と洋の動物を描く」【要申込・有料】
内容:東洋と西洋の動植物の表現を学んだ後に、タイルに美しい自然を描きます。
日時:2023年3月11日(土)午後1時から
講師:石川理恵氏(陶芸家)
定員:20名(応募多数の場合は抽選)、要参加料
参加料やお申し込み方法は、 イベント情報ページでお知らせします。
展覧会図録ご案内
本館1階特設ショップにて、展覧会開催初日より販売します。
価格:2,400円(税込み)

出陳作品の図版・解説等を収録しています。
※当館分は完売しました。
「もう1回展覧会を観たい!」―リピーターにお得な割引をご利用ください
本展を再度観覧いただく場合に通常の観覧料から2割引になる、「同一展リピート割」(本展使用済観覧券を持参により適用)をぜひご利用ください!
詳細はこちらのページでご確認またはお問合せください。
※各割引制度の併用はできません。
無料音声ガイド
新型コロナウイルス感染症予防のため、本展では音声ガイド貸出は見合わせます。
主な展示作品
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壁紙《格子垣(こうしがき)》
ウィリアム・モリス(1834-1896)
1864年
木版、色刷り、紙
モリス・マーシャルフォークナー商会
Photo ©Brain Trust Inc.
すべては、ここから始まった
モリスと妻・ジェーン・バーデンの新居「レッド・ハウス」は、建築から内装まで、すべて仲間と協働して設計された。この経験をもとに、モリスは「モリス・マーシャルフォークナー商会」を設立し、装飾芸術家として出発した。この壁紙は、「レッド・ハウス」の庭のバラの生垣をモチーフに、中世の作風を意識した初期のデザインである。 -
テキスタイル《いちご泥棒》
ウィリアム・モリス
1883年
木版、色刷り、インディゴ抜染、木綿
モリス商会
Photo ©Brain Trust Inc.
モリスの代名詞といえば?
インディゴ(藍染)で染色した後、色をのせる部分を漂白し、木版で何回も色を重ねたこのテキスタイルは、モリスの代名詞ともいえる作品。「いちご泥棒」という愛らしいネーミングも世界中で愛される理由のひとつである。 -
《サセックス・シリーズの肘掛け椅子》
おそらくフィリップ・ウェッブ (1831-1915)
1860年頃
黒檀色仕上げのブナ材、い草座
モリス商会
Photo ©Brain Trust Inc.
美しい構造と実用性を兼ね備えた民芸椅子
イギリス南東部サセックス州の伝統的な民芸家具をモデルにして制作された椅子。座面は、い草編みでつくられている。最初は、モリスの住まい「レッドハウス」のためにデザインされたもので、その後モリス商会で販売され、高い人気を誇った。人気だったがゆえに、類似品も他社から販売された。 -
テキスタイル《小鳥》
C・F・A・ヴォイジー (1857-1941)
1918年頃
プリント、木綿
モートン・サンダー・ファブリック社
Photo ©Brain Trust Inc.
モリスの意思を引き継いで
ヴォイジーは建築家として中産階級の住宅を、設計から室内装飾までデザインし、総合的な空間づくりを目指した。モリスと同様に、植物や鳥など自然をテーマにしたモチーフを好んだが、線を削ぎ落とした簡潔なスタイルは次世代に影響を与えた。
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タイル《バラと格子》
ウィリアム・ド・モーガン (1839-1917)
1872年頃
陶製タイル
ド・モーガン工房
Photo ©Brain Trust Inc.
モリス生涯の友による美しいタイル
19世紀後半、デザイン性に富み、耐久性があり清潔を保つ陶磁器タイルは、当時の人々の住まいには欠かせないものであった。
ド・モーガン工房はモリス商会のために多くのタイルを提供した。このタイルはモリスのテキスタイルなどに見られるような中世風の生垣の図柄で、野の花を連続文様に仕上げている。試行錯誤により生み出された鮮やかなトルコブルーは、ド・モーガンのタイルを特徴づける色彩である。
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《ピューターとエナメルの3点組ティーセット》
アーチボールド・ノックス (1864-1933)
1900年頃
ピューター、エナメル
リバティ商会
Photo ©Brain Trust Inc.
流行の発信地として
リバティ商会は、ジャポニズムやアーツ・アンド・クラフツなど、当時の芸術運動を反映したデザインを商業ベースに乗せて、多くの人々に販売した。この金工品も銀ではなく、価格の手頃なピューター(錫すず)製品である。マン島出身のノックスは、自身のルーツであるケルト文化に特徴的な組紐くみひも文様もんようのデザインを展開した。 -
《三輪のリリィの金色ランプ》
1901-1925年
ティファニー・スタジオ
Photo ©Brain Trust Inc.
新大陸のアーツ・アンド・クラフツ
アーツ・アンド・クラフツのデザインの民主化という理念は、アメリカですぐに受け入れられ、イギリスとは異なり機械生産を受容したものづくりが始まった。宝飾品で名高い「ティファニー」創始者の長男ルイス・コンフォート・ティファニーは、ガラス工芸作家として、ステンドグラスやランプシェードを手掛けた。この百合型ランプシェードは、ティファニーが開発し1894年に特許を取得したファブリルガラス(玉虫色の光彩を放つガラス)で、ティファニー・スタジオのベストセラー商品のひとつとなった。
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《花のピッチャー》
ウィリアム・ムーアクロフト
1919年頃
ジェイムス・マッキンタイア商会
国立研究開発法人産業技術総合研究所蔵(愛知県陶磁美術館寄託)
同時開催「アーツ&クラフツの陶芸」も必見
19世紀後半、大量生産を手掛けていた製陶所でもアーツ・アンド・クラフツ運動に影響を受け、デザイナーを起用し新たに芸術性を高めたアート・ポタリーが作られるようになった。イギリスのアール・ヌーヴォーを代表する陶芸家ムーアクロフトは、自身の作品にサインをいれ、芸術性と作家性を強調した。
第1章 モリス・マーシャル・フォークナー商会とモリス商会
第2章 アーツ・アンド・クラフツ展覧会協会
第3章 英国におけるアーツ・アンド・クラフツの展開
第4章 アメリカでのアーツ・アンド・クラフツ
特集展示 アーツ&クラフツの陶芸
会期 | 2023年1月28日(土)から3月26日(日)まで |
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会場 | 愛知県陶磁美術館 本館1階 第1・第2展示室・第8展示室 |
開館時間 | 午前9時30分から午後4時30分まで(入館は午後4時まで) ※ただし、1月28日(土)は開会式のため観覧は午前11時から |
休館日 | 毎週月曜日 |
観覧料 | 一般 900円(720円)、高大生 700円(560円) 中学生以下無料 ※( )内は20名以上の団体料金 ※上記観覧料で常設展も併せてご観覧いただけます。 ※各種割引制度あり。詳しくは下記をご確認ください |
割引制度 |
さまざまな割引制度がございます。割引一覧はこちらのページの下部にある一覧をご覧ください。 ※各割引制度の併用は不可。 |
主催 | 愛知県陶磁美術館、朝日新聞社 |
後援 | ブリティッシュ・カウンシル、愛知県教育委員会、愛知高速交通株式会社(リニモ) |
問い合わせ先 | 愛知県陶磁美術館 学芸課 〒489-0965 愛知県瀬戸市南山口町234番地 TEL : 0561-84-7474 FAX : 0561-84-4932 担当:大槻・佐久間・植田 |
報道機関の皆様へ | 2022年11月17日(木)県政・中部芸術文化・瀬戸市政各記者クラブ発表 プレス・リリース資料(2022年11月17日(木)付)のダウンロードはこちら |