- 1985年7月23日愛知県岡崎市生まれ。日本福祉大学卒。2009年、大手鍼灸接骨院勤務を経て訪問鍼灸治療を開設。09年からデイサービス施設で健康体操のボランティア活動を始める。2014年、地域密着型デイサービス「リハビリカフェ倶楽部」を開設。株式会社GOBOUを設立し、介護の「ご」、予防の「ぼう」で「ごぼう先生」として介護予防体操を全国で展開。介護事業所での体操コンテンツ指導日本一を誇る。著書に「介護界のアイドルごぼう先生のみんなを笑顔にする魔法」(講談社)、DVDブックに「ごぼう先生☓リリムジカ 昭和のヒット曲で筋肉つけよう体操」(世界文化社)など。
更新日:2024年2月
取材日:2024年1月29日
ニックネーム「ごぼう先生」こと簗瀬寛さんは介護予防を明るい笑顔で伝える「大人のための体操のお兄さん」。全国各地の介護施設などで座ったままできる健康体操の普及や講演に務めています。DVDを通じて体操を取り入れている事業所は3万カ所以上、これまでに一緒に体操をした人は5万人以上と、今やごぼう先生は高齢者のアイドル。健康体操を通じて“孤独予防”と介護職員の負担軽減を目指す簗瀬さんの挑戦と今後の目標をうかがいました。
僕は鍼灸師の専門学校を卒業後、大手鍼灸接骨院に勤め、その後尊敬する師匠のもとで働いて24歳のときに独立しました。最初はお客さんがいなかったので、そこで始めたのが健康体操。ボランティアでデイサービスにうかがい、白衣を着て体操していました。師匠の元ではデイサービス事業もやっていたので介護の現場を知ってはいたのですが、介護というのは専門性が高い分野だとの思いもあり、もっと勉強したい気持ちが大きくなって働きながら日本福祉大学で学びました。自分の会社、株式会社GOBOUを立ち上げたのは卒業の翌年です。
健康体操を始めた当時は、スポーツマンや子どものための体操はあっても、介護現場での体操は調べてみてもどこにもありません。だからこそ自分はパイオニアになれると信じ、ブログやYouTubeで情報発信を行い、健康体操を広めていきました。29歳のとき初めてリリースしたDVD「R70介護予防シリーズ ごぼう先生の健康体操DVD」は、現在タイトル数合計で23種類を数え、おかげさまでYouTubeチャンネル「ごぼう先生おひとりさま健康塾」の登録者数も3万3000人を突破しました。講演会、研修会、イベントも2023年は108回呼んでいただき、全国各地を飛び回っています。
また、現地にうかがうだけではなく健康体操が通信カラオケのシステムを使ったコンテンツに採用され、定期配信を通して月3回プログラムを実施しています。この参加者も多いときで同時に100施設ほど接続があり、参加人数も2万5000人以上。介護分野の体操コンテンツは日本一と言えるのではないかと自負しています。
僕の体操は集団体操といってみんなで一緒にやる体操。一番目標としているのは孤独予防です。みんなと一緒に体を動かすことで一体感を感じる、おしゃべりできる、友だちになる、そして事業所の居心地の良さに繋がる。それが地域の住みやすさになればいいと思ってやっています。外に出るきっかけづくりですね。僕の体操をするために、みんなが集ってくれれば嬉しいです。もう一つ、職員さんの業務負担軽減も非常に大きな要素として活用いただいています。
ここ数年のコロナ禍で、現場で体操をすることが難しい日々が続きましたが、そんな中でも事業所では配信やDVDなどを通して体操を続けてくださっているので、ある意味僕はデイサービスで“いつもテレビに映っている人”として受け入れてもらっています。先日も、4年ぶりに宇都宮のデイサービスにうかがったのですが、前回行ったときに僕と撮ったツーショット写真を持っていてくださる方がいて「いつも部屋に貼ってあるよ」と言ってくれました。僕の体操が思い出づくりになっているんだなと痛感して嬉しかったです。
体操はDVDでできますが、できるだけ触れ合ったり、握手したり、一緒に写真を撮ったりしながら、その方とその場でしかできない思い出づくりができれば。そういう時間を大切にしたいという気持ちが最近より強くなっています。
2024年の5月1日で会社を立ち上げて10年になります。会社設立当時、70歳以上の方のための体操をDVDで出しましたが、当時の70歳と今の70歳では明らかに違います。スマホも8、9割の方が持っていますから新たな10年の目標として、今の70歳以上の方々に役立つ情報を発信していきたいとの思いが強いです。例えば先日は税理士さんとコラボさせてもらいYouTubeチャンネルで「認知症とお金の話」をしました。今後も体操を軸としながらも、気持ちよく歳を重ねられる情報を発信していきたいと思っているところです。
介護の現場で働く職員の皆さんは、人に興味があり優しさやぬくもりがある方が多いと実感します。それぞれの場所でスキルアップしながら、利用者さんに必要とされる人にぜひなっていただきたい。まずは誰かに必要とされる、その次に会社から必要とされる、更に地域や社会から必要とされる人を目指してほしいと思います。
介護の現場は、自分がどう生きるかを考えさせられる場面が他の職業に比べて圧倒的に多い職業だと思います。利用者さんとお別れしなければならない機会もあるでしょう。しかし、悲しいで終わるのではなく、利用者さんに教えていただいた学びをどう生かしていくのか。考えながら頑張っていただきたいです。
そして、忙しい毎日の中で、僕をうまく使っていただきたい(笑)。システムや配信動画、映像などのコンテンツを上手に取り入れていただいて、利用者さんの満足度に繋げていただければと思います。