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病院長ごあいさつ

中央病院長 丹羽 康正
愛知県がんセンター
病院長 丹羽 康正

 元号が「令和」になり、日本では新年を思わせるような明るく穏やかなお祝い気分となっております。がん診療において時代は大きく変化しています。当センターは愛知県がんセンター愛知病院が2019年4月より岡崎市へ移管したことに伴い、「中央病院」が消えて1964年設立時の名称である「愛知県がんセンター」に戻りました。「令和」という新しい元号になっても開設当時の理念である、「患者さんの立場にたって、最先端の研究成果と根拠に基づいた最良のがん医療を提供する」ことを使命とし、高度で先進的ながん医療を開発・研究し、最高の医療安全のもとに患者さんに届けたいと思っています。
 さて、がんの治療は、外科的治療、放射線治療、抗がん剤治療の3本柱で行われてきました。最近では、内視鏡治療、鏡視下治療(ロボット治療を含む)など低侵襲治療に代表されるように早い段階でがんを見つけ、体に負担が少ない治療でがんを取り除き、切除することを目指しています。進行した状態で見つかったがんは、薬物療法治療や、抗がん剤などで腫瘍を小さくしたのちに外科治療でがんを治す「集学的治療」を行います。現在当センターのがん全体の5年生存率は約70%になります。しかし、実際に難治癌の患者さんを目の前にすると何とかもっと良い治療法がないかと度々思いを巡らせます。
 最近、免疫治療が注目されています。昨年、本庶佑先生がノーベル医学賞を受賞される経緯となった「がん免疫」は成果として「オプジーボ」が開発されて治療に取り入れられ、日本において保険収載されたのは2017年12月でした。劇的に効果がある患者さんがいる一方で、年間3500万円を超える薬剤費は保険財政を脅かし、皆保険制度が成り立たなくなると危惧されました。価格が当初の半分以下になったとはいえ、高額な免疫チェックポイント阻害剤は、現在(2019年4月現在)では6剤が保険で使用できるようになっています。この免疫治療は、従来の「標準治療」に組み合わされる治験や臨床試験でも進められています。現在は従来の一次治療や二次治療の無効例に行われますが、将来的には一次治療から免疫治療が開始されるかもしれません。また、放射線治療との「相性」がよいとの報告もあり、従来の抗がん剤との組み合わせも含めて、さらに相乗的な効果があらわれることへ期待が高まっています。但し、誰でも薬の適応があるわけではないこと、従来の抗がん剤とは異なった機序の副作用があることも報告されており、治療経験が多い施設での治療が望まれます。
 がんゲノム医療については、2018年3月に閣議決定された「第3期がん対策推進基本計画」においても大きく取り上げられていますが、「がんゲノム医療」に基づいたパネル検査(遺伝子を一度に数多く診断できる方法)が今年度前半に保険収載される予定です。このようなゲノム関連の研究や診療は、日本では欧米に比して遅れていると言われていました。欧米では既に何十万人単位のヒトの遺伝情報が蓄積されていると言われています。日本では「皆保険制度」を用いた「がんゲノム医療」を構築することを目指しています。この「がんゲノム医療」は、難治癌、希少癌治療や効率的にキーとなる遺伝子異常を見つけて治療に結びつけることが期待されます。難治・希少癌の個別に治療薬に結び付く割合は1−2割といわれていますが、これまで有効な薬がなかった疾患に治療薬が発見されることは患者さんをはじめ多くの方々の希望となっています。将来的には遺伝子異常に対応した治療薬が臓器横断的に選択されるものと思われます。一方、がんは遺伝子異常の集積で発生すると言われていますが、こうした遺伝子検査をすすめると、がん発生の元となった体細胞の遺伝子異常のみならず、親から遺伝する生殖細胞の遺伝子異常も二次的に見つかるようになってきました。私どもは遺伝子異常に対応できるような専門医やカウンセラーを配置して遺伝子疾患に対応しており、院内に、遺伝子異常を検索して効果的な薬剤の有無を探索する個別化医療センター、遺伝子異常の中で家族性の発生が判明した場合に対応するリスク評価センター、「がん遺伝子パネル検査」を実施する窓口となり、検査によって得られた結果を適切な医療につなげるがんゲノム医療センターを設置し、未来への医療に積極的に取り組んでいます。
 こうした新しい医療は、医療安全・インフォームドコンセントがベースに行われなくてはいけません。もともと医療は「不確かな科学技術」であり、期待する効果の他に、予期しない効果が起こり得て、幾重ものセイフティーネットが必要になります。また個人情報の管理も必須です。私共はこれまで以上に最高レベルの医療安全管理体制を計画し、ホームページでも新たな計画を随時紹介していく所存です。
 令和になっても、がんといえば「愛知県がんセンター」と言われる診断・治療レベルをさらに向上させておりますので、ご心配の場合にはクリニックや病院より紹介をいただきぜひ当院へお越しください。

(令和元年5月)

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