悪性リンパ腫

 このページは、悪性リンパ腫と診断された皆様に、この病気に前向きに取り組んで頂くために作成したものです。
 悪性リンパ腫とはリンパ組織の悪性腫瘍(がん)の一つです。
 この病名からとても悪い病気と考えられる方がありかも知れませんが、一般的には固型がん(肺がんや膵臓がんなど)に比べれば、この病気はずっとよい治療成績が得られています。
 また、わが国では1年間に数千人もの方この病気にかかっていますが、ほかのがんに比べれば患者さんの数は少なく、主に専門的な病院で治療が行われています。

病型

 悪性リンパ腫の病型は主に病理学的(病巣を顕微鏡で見てどのような異常があるかを調べる方法)に決定されます。治療の方法や治療成績は病型や病巣の拡がりなどにより異なる場合が多く、病巣(腫れたリンパ節など)を試験的に切除して(生検:バイオプシーと言います)診断することが重要です。悪性リンパ腫は大まかに以下の2病型に分けられます。

ホジキンリンパ腫

 この病型は日本における悪性リンパ腫の約10%に見られます。一般的には、ホジキンリンパ腫は悪性度が低く、治療が予定どおりできれば治ることが多い(およそ65−80%)病気です。病期の進んだ場合を除き、強い治療が必要なことは少なく、がんとしての性格はおとなしいと言えます。

非ホジキンリンパ腫

 この病型は悪性リンパ腫の80−90%に見られます。病理学的にさらに多くの病型に分類されますが、以下の2型が頻度の高い病型です。

ろ胞性リンパ腫

 さらに中細胞型、混合型、大細胞型と分けることがあります。
一般的には、進行が年単位でゆっくりです。従来の化学療法では治癒することが難しい場合が多いとされていましたが、最近では治療法の進歩により成績が向上しています。

びまん性リンパ腫

 大細胞型が最も頻度が高く、その他リンパ芽球型、バーキット型などの多くの病型があります。
どの程度強い治療が必要になるかという点から、悪性度が低悪性度(ローグレード)、中悪性度(インターメディエートグレード)、高悪性度(ハイグレード)と分けることがあります。病型によって治療法が違ってきます。

病気の進行度(病期)

 悪性リンパ腫はリンパ節やリンパ組織(咽頭、鼻、胃、肺など)から生じたがんで、その病巣が拡がっているほど進んだ病期を表し、I期からIV期に分かれています。それぞれの病期で体重減少(診断前6ヶ月で10%以上)、発熱(38度以上)、寝汗の症状がなければA、あればBと記号を付けます。例えばIIIA期などと表現します。

国際予後因子

 治療がうまくいくかどうかを予想するのに利用される要因を「国際予後因子」と呼びます。年令、血清中のLDHという名前の酵素の濃度、歩行や作業ができるかどうかといった全身状態、上記の病期、リンパ節以外にいくつ病巣があるかなどが重要な予後因子です。これら予後因子がいくつあるかによって4つのグループに分けられています。
  L :ロー・リスク グループ
  L-I :ロー・インターメディエイトリスク グループ
  H-I :ハイ・インターメディエイトリスク グループ
  H :ハイ・リスク グループ

診断方法

病理検査

 悪性リンパ腫の確定診断(どんな病気・病型か最終的に決定する診断)は、リンパ節を外科的に取りだし、それを顕微鏡で見なければなりません。この検査のために、リンパ節などの病巣の一部の組織を取り出すことを生検と呼んでいます。

画像診断

 どのくらいの大きさの病巣がどこまで広がっているかを調べる検査です。X線を用いたレントゲン写真検査やCT検査、PET検査などがあります。それぞれの特徴を生かして、からだの内部の病巣を画像としてとらえます。      

血液での検査

 肝臓や腎臓などの機能を調べるために血液をとって検査します。他に病気はないか、治療にどの程度耐えられるかを調べるためです。血液中の白血球や血小板、赤血球の数を定期的に調べることも必要です。骨髄穿刺検査も必要です。

遺伝子に関する検査

 がんは遺伝子が傷つくことによって起きる病気です。両親からもらった遺伝子に異常がなくても、生活しているうちに傷つき、そのためがんができるわけです。そのような遺伝子の異常は子孫に受け継がれていくことはありません。
 悪性リンパ腫においても血液や生検のため取り出されたリンパ節を用いて、この検査をする場合があります。

治療

 悪性リンパ腫の治療には抗がん剤を用いる化学療法と放射線療法があります。手術を必要とすることは稀です。治りにくいリンパ腫や治療の効果が十分でない患者さんに造血幹細胞移植が有効な場合があります。以下に各治療法につき説明しますが、どのような治療法が適しているかは、リンパ腫の病型や広がりなどにより異なります。
 一般的に、これらの治療法は悪性リンパ腫にたいしてよく効くことが多く、治癒することも期待できますので、適切な治療に専念することが大切です。

化学療法

 薬剤によりリンパ腫細胞を殺す治療法です。リンパ腫にたいして感受性のある(効き目の高い)薬が数多く開発されており、いろいろな薬が組み合わせて使用されています。多くは2〜3週間単位で行われ(これを1クールと呼びます)、副作用が強くなければ4−8回(クール)繰り返します。
 あなたの治療がどのようなスケジュールで行われるかは担当医がその副作用も含めて詳しく説明します。
 例として、主に非ホジキンリンパ腫に用いられる代表的な治療法であるCHOP療法やR-CHOP療法についてその使用する薬と主な副作用を示します。
 サイクロフォスファミド ドキソルビシン ビンクリスチン プレドニン リツキシマブ
 神経障害(手足のしびれ) 脱毛 不妊 心障害 発熱 湿疹

化学療法による副作用(有害作用)とその対策

 化学療法による主な副作用とその対策につき以下に示しますが、使用する薬によりその程度はさまざまです。

吐き気

 多くの抗がん剤が吐き気と嘔吐を引き起こします。本人にとって苦しいこの症状には、吐き気を抑える薬が使われます。現在、数種類の薬が認可されており、非常によく効きます。抗がん剤を使用してから数日たてば、自然に吐き気は消えますので、その間だけ制吐剤を使用して頑張ることになります。

口内炎

 口の中がただれて、痛みを伴い、食事が食べにくくなることがあります。うがい薬や軟膏を用います。

便秘や下痢

 便秘薬や下痢止めを使用することにより症状を軽くすることができます。下痢により失われた水分や栄養分は点滴により補います。

脱毛

 脱毛はほぼ全員に起きます。しかし、抗がん剤を終了してから1〜2ヶ月後にまた生え始めてきますので、その間がまんしなければなりません。

白血球減少

 からだをばい菌から守っているのが白血球です。抗がん剤により白血球が減少してくると、からだに入ったばい菌を十分殺すことができなくなり、感染症が起きてきます。感染症が起きると発熱します。肺炎が起きれば咳や痰もでます。白血球が減少してくれば、抗がん剤の量を減らしたり、投薬を止めたりします。また、G-CSFという白血球を増加させる薬を注射します。

血小板減少

 血小板は血を固まらせる作用を持っている血液の中にある細胞です。これが減少してくると血が固まらなくなり、消化管から出血したり、脳出血を起こしたりします。この場合にも、抗がん剤の量を減らしたり、投薬を止めたりして対応します。また、少なくなりすぎた場合には、血小板輸血といって他の人の血液から血小板を採取して静脈内に注入するという方法をとります。

出血性膀胱炎

 排尿時に痛みを伴い、尿に血が混じります。水をたくさん飲んで、尿にでてきた抗がん剤の濃度が高くならないよう、またすぐ排尿できるようにします。

末梢神経障害

 手がしびれるなどの症状がでることがあります。そのまま、しびれが残ることはほとんどありません。

肝臓機能障害と腎機能障害

 症状がでるほどひどくなることはありませんが、血液検査により異常が認められることがあります。血液検査は定期的に行う必要があります。

その他

 まれに心筋障害、間質性肺炎、皮膚障害、などがあらわれることがあります。
 抗がん剤による治療がうまくいくように多くの支持療法が行われ、すこしでも安全に苦痛が少なくなるように努力致します。すべての副作用(有害作用)を薬で抑えることができるわけではありませんが、できる限りのことを致します。がまんせずに医師または看護師にお話下さい。

治療が終われば赤ちゃんできるの?

 治療法により異なりますが、男性も女性も子供を作ることができなくなることがあります。一般的に言えば、強い治療ほど妊娠する(させる)可能性は小さくなります。悪性リンパ腫の調査ではありませんが、白血病患者さんではこれまでにわが国で100人以上のお子さんが誕生しています。妊娠できれば奇形の発生率は通常とかわりがありません。治療が終わってから1年以上たてば、子供を作っても差し支えないと考えられます。

治療によって、別のがんができませんか?

 がんの治療により、別のがんができるのではないかと心配されるかもしれません。外国で行われた大規模な調査では悪性リンパ腫の患者さんでがんの発生率は他の人に比べて2倍以下だったと報告されています。わが国では大規模な調査はまだありませんが、これまでの調査では2倍を超えるものではありませんでした。実際にがんにかかる人は10年間に数%程度ですので、2倍といってもなる人は少なく、この病気を治す(寛解させる)ことが先決であるとわれわれは考えています。

放射線療法

 悪性リンパ腫は放射線に感受性のあるがんの一つです。病巣が限局している早期のリンパ腫などには放射線照射が単独もしくは短期的な化学療法と併用で実施されることもありますし、病巣が大きい場合には化学療法の後で照射することもあります。
 照射は1週間に5回、4週間から6週間続ける場合が多いですが、体調により回数や期間が短くなることもあります。照射する部位の粘膜に炎症がおき、部位に応じた症状が起こることがあります。

造血幹細胞移植

 上記した化学療法や放射線療法よりも大量の薬剤の投与や全身に放射線を照射した後、正常な血液を回復させるため造血幹細胞(血液の種)を移植する治療法を造血幹細胞移植と言います。通常の治療よりも強力な治療を行うことができるため治癒する可能性が高くなります。
 造血幹細胞の種類により末梢血幹細胞移植と骨髄移植とがあり、化学療法や放射線療法では治癒する見込みが少ない場合にこの移植が検討されます。

自家末梢血幹細胞移植

 化学療法をした後の回復期の末梢血中には血液の種(細胞)が流れています。この細胞を集めて凍結保存しておき、移植後に輸血(移植)する治療法です。
 悪性リンパ腫の場合この自家末梢血幹細胞移植が一般的に行われています。再発した患者さんや初発でも通常の治療では効きが悪いと考えられる患者さんが対象となります。年令は通常65才以下です。

同種骨髄移植・同種末梢血幹細胞移植・さい帯血移植

 悪性リンパ腫の病型や病期によっては兄弟姉妹や他人からの同種骨髄移植が適応になることがあります。この場合提供者(ドナー)と患者さんとのHLA型(白血球の型)が適合する必要があり、兄弟間では4人に1人が適合します。適合者がいない場合には日本骨髄バンクやさい帯血バンクに登録することもあります。   

お問合せ

 悪性リンパ腫について、あるいはその他の血液のがんについては、受診の仕方をご覧の上、お気軽に愛知県がんセンター血液・細胞療法部を受診下さい。この際、すでに他の医療機関に受診中の方は主治医の先生からの紹介状を持参されるようお願いします。これはあなたの病状についてのご相談に非常に役立つからです。

平成21年7月改訂

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