トップページがんの知識 > がん薬物療法専門医について

がん薬物療法専門医について

 化学療法を受けられる皆様からの「がん薬物療法専門医」についての問い合わせに答えるためQ&A形式で紹介させていただきます。当院には日本臨床腫瘍学会理事の室薬物療法部長を含め、学会評議員や薬物療法専門医が複数勤務しています。

Q1 「がん薬物療法専門医」とはどのような医師のことを言うのでしょうか?

A: がんに対する診療技術の向上と治療成績の向上をめざす日本臨床腫瘍学会が平成17年秋より開始した専門医認定試験に合格した47名の医師が、平成18年4月1日付けで「がん薬物療法専門医」として初めて認定されてから、毎年新たな専門医が増加し、2015年4月に1030名に達し、2016年4月には1138名になりました。日本臨床腫瘍学会ホームページに専門医名簿が掲載されています(http://www.jsmo.or.jp/system/pdf/senmon.pdf)。「がん薬物療法専門医」には、単にがん患者さんの病状・病態にあった最も有効ながん化学療法を安全かつ適正に行うだけでなく、がん薬物療法の質の向上を目指して、臨床試験にきちんと関与できたり、緩和治療も行えたり、患者さんの精神的・身体的苦痛にきちんと向き合えたりすること、さらには先端的な臨床開発研究にも関与できることが求められています。がん薬物療法専門医には深い内科学全般にわたる知識の他に他の診療科との間を埋める知識など多面的な能力が必要と思われます。また、「がん薬物療法専門医」の中から「指導医」が誕生してきており、平成21年度の審査で31名誕生した「指導医」も平成28年4月で492名認定されています。当院も9名指導医が勤務しております。指導医名簿も以下のアドレスにて見ることが可能です。(http://www.jsmo.or.jp/system/pdf/sidou.pdf)

Q2 「がん薬物療法専門医」と「がん治療認定医」の違いはありますか?

A: 日本臨床腫瘍学会の認定する専門医資格が「がん薬物療法専門医」で、日本医学会の提言に基づいて日本癌学会、癌治療学会、臨床腫瘍学会、全がん協の4団体が中心となって設立した日本がん治療認定医機構が認定する認定医が「がん治療認定医」です。それぞれが、認定研修施設と資格をさだめていて、患者さんの視点からわかりにくいものとなっています。
 「がん治療認定医」は、がんを診療するにあたっての基礎的な知識と技術が求められ、専門医の指導のもと標準的治療を行うことのできるレベルの資格です。一方、「がん薬物療法専門医」は、がんの化学療法、分子標的療法、内分泌療法などの薬物療法の専門医で、基礎的な知識と技術を持つことはもちろん、十分な薬物療法の経験と各がん種のバイオロジー(生物学)の理解、標準的な薬物療法や緩和医療を含む支持療法の実践のみならず、先端的な臨床開発研究についても詳細な説明責任が果たせ、完遂できることが求められたレベルの資格です。あえて、「がん薬物療法専門医」と「がん治療認定医」との違いを明確に説明するなら「がん薬物療法専門医」は責任をもってがん薬物療法が実践できる医師であり、「がん治療認定医」はがん診療の基本を学んだ医師、これから専門医になろうとする医師と言うことができるでしょう。
 それぞれの資格認定の要件については、日本臨床腫瘍学会の「専門医制度規程細則(http://www.jsmo.or.jp/authorize/senmon-shinsei.html)」と、日本がん治療認定医機構の「がん治療認定医とは」(http://www.jbct.jp/sys_auth_outline.html)に詳しく掲載されています。
 日本の専門医制度は、現在変革期にあり、専門医を持つ85学会と日本専門医機構が、患者さんの視点にたった専門医制度を確立すべく努力しています。

Q3 現在、どのくらいの「がん薬物療法専門医」がいるのでしょうか?

A: 平成17年度から平成27年度までの専門医認定試験において、全国で1138名のがん薬物療法専門医がいます。愛知県では70名の専門医がいます。当センターには15名の医師が勤務しております。

Q4 愛知県がんセンター中央病院で勤務する医師は全員「がん薬物療法専門医」ですか?

A: 資格制度なので、日本臨床腫瘍学会の専門医認定試験に合格した医師のみが「がん薬物療法専門医」と呼ばれます。専門医は「適切な教育を受けて十分な知識・経験を持ち、患者から信頼される標準的な医療を提供できる医師」で神の手を持つというスーパードクターを意味しません。ただ、がん薬物療法の分野の進歩は激しく、殺細胞型抗がん剤に加え、多数の分子標的薬の登場、副作用プロファイルの多様化、バイオマーカーを加えた臨床評価など、がん治療の個別化と共に、細分化が進んできています。「がん診療」という特殊政策医療を担う愛知県がんセンター中央病院では、組織診断を行う遺伝子病理診断部、内科、外科、放射線治療部、放射線診断・IVR(Interventional Radiology)部、精神腫瘍科などの臨床各科と薬剤部と看護部やその他のコメディカルとの垣根が低く、各科専門医や専門看護師を含むグループによる巡回回診あるいは薬物療法部が主体で行われているキャンサーボードなどのカンファランスなどにより、1つ1つの症例に対して、各科医師や看護師や薬剤師が専門の立場よりチーム内で議論を行う雰囲気と場で持って進歩に対応しています。設立以来、数多くのがん症例に対応してきた歴史とその伝統を維持し、最先端のがん診療に対応して変化していくために、当院の医師たちは各診療科の専門性を大事にしながら、カンファランスを有効に使い、がん患者さんの診断・治療をさせていただいています。また、当院はがん化学療法委員会とその実働部隊である化学療法チームを設置しており、がんセンターとして確実で統一したがんの薬物療法が実施できるように心がけています。がん薬物療法専門医は、化学療法チームの中で、がん化学療法認定看護師などと力を合わせて、今までの当院の特徴を生かしながら、さらなるレベルアップを図っていきたいと思っています。

Q5 近くの病院には「がん薬物療法専門医」がいません。がん治療を受けて大丈夫でしょうか?

A: わが国では臨床腫瘍学が独立した学問体系と認知されて来なかった長い歴史があり、最近、臨床腫瘍学の重要性が認識され始めています。東海地区も大学中心のがんプロフェッショナルプランに基づいたり、都道府県がん診療連携拠点病院や地域がん診療連携拠点病院で研修したりして、大学医学部を卒業した若手医師が広く深くさまざまな臓器の悪性腫瘍を体系的に学べるようになってきています。また、各病院医師個人の努力や学会でのセミナーやインターネットでのがんの情報を通じて学びながら、多くの場合適切な診断・治療が行われてきています。お近くの病院での診療に疑問がある場合や当院での意見を聞きたい場合には是非予約診療である当院のセカンド・オピニオン外来への受診をお勧めします。

Q6 「がん薬物療法専門医」の資格は永久ですか?

A: がん薬物療法の進歩は著しく、日本臨床腫瘍学会が5年ごとの更新手続きが必要と定めています。書類審査と筆記試験が課せられていて、常に新しい情報を取り入れてがん診療の知識を更新していく態度が求められています。平成22年度に「がん薬物療法専門医」の中で1回目の更新が行われました。全国でも有数のがん診療を行ってきた当院では、各臓器悪性腫瘍の薬物療法を含む各種診断・治療に関して院内での勉強会を以前より定期的に開催してきましたが、今後は愛知県のがん診療連携拠点病院(都道府県に1カ所程度)である愛知県がんセンター中央病院が中心となって各大学医学部や県内の地域がん診療連携拠点病院(二次医療圏に1カ所程度)と連携をとり、がん診療における知識の更新をしながら、質の高いがん医療の普及と若手医師や看護師や薬剤師などへの教育に取り組むことも必要と考えています。現実問題として、薬物療法専門医の育成のためのカリキュラムは作られていますが、トレーニングプログラムは必ずしも確立していないのが現状だと思います。個人的な考えですが、実際のがん患者さんを診察する中で臨床的判断を繰り返すことで臨床能力が高めることができます。がんセンターに勤務する医師は、種々の機会を通じて、臨床的判断基準と方針を示していくことが重要と思っています。その意味で、院内教育だけでなく、対外教育も含め、重大な任務を抱えていると考えています。

Q7 「がん薬物療法専門医」としての夢や展望はありますか?

A: 質の高いがん医療を提供しながら、がんセンターである当院がますます発展するためには、先端的な臨床開発研究、諸外国を含めた医療のグローバル化や医療情報の電子化に迅速に対応し、複数の医療機関と大きな枠組みで連携していく必要があります。それには、国や県や地域からの支援を受けて、制度や組織の改革を含めた柔軟な対応も必要と考えています。私たちは、皆様のご理解とご協力を得ながら努力していくつもりですので、今後ともどうぞ宜しくお願い申し上げます。

このページのトップへ