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県議会知事提案説明

平成28年2月定例県議会 知事提案説明要旨


 今議会に提案をいたしました諸議案のご説明を申し上げるに先立ち、所信の一端を申し述べ、県議会並びに県民の皆様方のご理解とご協力をお願い申し上げたいと存じます。
 私が知事として、2期目の県政運営をスタートさせてから、1年が経ちました。
 私は、愛知の経済、産業力を強くしていく中で、若者や女性の雇用を増やし、人づくりを進め、すべての人が活躍し、「人が輝く」愛知をつくっていく、そのことでさらに地域を元気にするという好循環をさらに前進させ、「日本一元気な愛知」と豊かさを実感できる県民生活の実現を目指したいとの思いをもって、ここまで、県政の諸課題に対し、県民の皆様と議員各位のご理解とご協力をいただきながら、全力を尽くしてまいりました。
 まずは、“Heart”of JAPAN〜Technology & Traditionをキャッチワードに、愛知の強みのさらなる進化と魅力の発信に全力で取り組んでまいりました。Technology、産業・技術の面では、次世代のモノづくりへのさらなる飛躍に向け、MRJプロジェクトの推進などに力を入れるとともに、Tradition、愛知の伝統文化・魅力の発信の面でも様々な取組を進めてまいりました。
 また、国家戦略特区を活用した規制緩和の取組をスタートしました。
 さらに、アジア各国を中心とした国際交流の推進、モノづくり人材の育成、女性の活躍促進、子ども・子育て支援、障害者福祉などにもしっかりと取り組み、愛知の産業力、人財力、地域力を着実に高めることができたものと考えております。
 今後も、引き続き、愛知の総合力を一段と高め、「日本一元気な愛知」の実現に全力で取り組んでまいる所存であります。


 それでは、まず、愛知県政を取り巻く最近の状況について申し上げます。

 まず、最近の経済情勢であります。
 我が国の景気は、このところ一部に弱さもみられますが、緩やかな回復基調が続いております。先行きにつきましては、雇用・所得環境の改善が続く中で、緩やかな回復に向かうことが期待されますが、アメリカの金融政策の正常化が進む中、中国を始めとするアジア新興国等の景気が下振れし、我が国の景気が下押しされるリスクがあります。
 中国の株価相場は年明けに急落し、また、原油を始めとする資源価格の下落は資源国の経済にダメージを与え、金融資本市場に動揺をきたしかねない状況であり、この、いわゆる「チャイルショック」の影響が我が国にも及ぶことが懸念されます。
 こうした中、日本銀行は、「2%の物価安定の目標」をできる限り早期に実現するため、いわゆる「マイナス金利」の導入を決定し、今月16日から当座預金の一部に適用されています。
 こうした諸状況をしっかりと確認しつつ、機動的に対処し得るよう、今後の金融資本市場の動向に留意してまいりたいと考えております。


 次に、国の経済財政運営と地方創生についてであります。
 政府は、今後の経済財政運営に当たり、「デフレ脱却・経済再生」をさらに前進させるため、アベノミクス第2ステージとして、「希望を生み出す強い経済」を始めとする新・三本の矢が一体となって成長と分配の好循環を強固なものにしていくとしております。
 本県は、日本一の産業県であり、この日本一の「産業力」をさらに強くし、「人財力」を育み、「地域力」を一層強化することで、愛知が我が国経済の成長の柱となるよう、しっかりと取り組んでまいります。
 地方創生についても、本県は、自然増・社会増の両方を維持しながら人口増加を続けている数少ない県であり、昨年10月に策定した「愛知県人口ビジョン・まち・ひと・しごと創生総合戦略」に基づき、幅広い政策に総合的に取り組み、持続的でバランスある愛知の発展を図るとともに、東京一極集中にストップをかけ、日本の活力を取り戻す核としての役割をしっかりと果たしてまいります。

 次に、地方法人課税の見直しについてであります。
 平成28年度税制改正において、平成29年4月に消費税率が10%に引き上げられる段階で、県議会の皆様方のご支援もいただき強く要求してきた地方法人特別税等の撤廃が実現いたします。
 しかしながら、一方で、法人住民税法人税割について国税化の割合が拡大され、また、市町村への減収補てん措置として、都道府県の法人事業税の一部を市町村への交付金とする、いわば実質的な国税化の措置が講じられることとなりました。
 これら一連の措置は、地方税の国税化をさらに進めることになり、まさしく地方分権に逆行するものであり、極めて遺憾であります。
 さらに、今回の見直しは、地方法人課税の割合が高い本県や東京都に多大な影響が見込まれます。とりわけ、県内市町村の地方交付税の不交付団体のうち7団体においては、法人市町村民税の国税化による減収が法人事業税交付金及び地方消費税率の引上げによる増収を上回り、大きく減収となる可能性があることが判明しました。
 これらの自治体では、地方消費税率の引上げにより住民負担が増加するにもかかわらず、住民サービスの削減を余儀なくされるなど、自治体運営が阻害されることとなります。
 自治体運営に非常に大きな影響を与えるこうした見直しについて、関係する自治体の声を聞くことなく、国が一方的に断行しようとしていることは極めて遺憾であります。
 去る1月25日には、今後、国において、こうした現場の実態を十分に把握した上で、全ての地方自治体の財政運営等に悪影響を生じさせないため、必要な対策を講じるよう、「地方法人課税の見直しに対する愛知県からの緊急声明」として取りまとめ、発表したところであり、今後も機会あるごとに、必要な対策を強く求めてまいります。
 これについては、愛知県市長会・町村会並びに議長会においても同様の緊急声明が取りまとめられております。県議会におかれましても、何卒ご理解とご支援をよろしくお願いいたします。

 次に、自動車税制の見直しについてであります。
 私は、平成23年以来、産業空洞化を食い止め、日本経済の活性化を図り、地域の経済・雇用を守るため、自動車税制の抜本的見直しに取り組んでまいりました。
 昨年11月にも、11県知事2市長の連名で緊急声明を取りまとめ、自動車関係団体の皆様とも一体となって、強力に働きかけを行ってまいりました。
 その結果、今回の税制改正では、平成29年4月1日に自動車税・軽自動車税に環境性能割を設けることとされました。環境性能割の税収額が自動車取得税の税収に比べて抑えられ、実質的に減税になることは、前向きに捉えたいと存じますが、車体課税の簡素化・負担軽減が次年度以降の税制改正に先送りされたことは極めて遺憾であります。
 引き続き、真の意味でのユーザー負担の軽減が実現するよう働きかけを継続してまいります。

 次に、本県を中心とする中部5県で進める国際戦略総合特区「アジアNo.1航空宇宙産業クラスター形成特区」についての動きであります。
 まず、特区における設備投資に係る税制支援措置については、その適用期限の延長を強く働きかけたところ、今回の税制改正において、2年間延長されることとなりました。
 また、1月27日の特区推進協議会において、新たにロケット関連を始めとする「宇宙機器等開発・供給事業」を加えるとともに、平成32年度までに航空宇宙産業の生産高を1兆1,800億円とすることや航空宇宙関連の輸出額を6,800億円とすることなどの数値目標を設定した新たな計画を取りまとめ、現在、国の認定に向けた手続を進めているところであります。
 「アジアNo.1航空宇宙産業クラスター形成特区」は、昨年12月に公表された内閣府の「総合特別区域評価・調査検討会における評価結果」でも、7つの国際戦略総合特区の中で、3年連続の最高評価を受けております。
 今後、税制支援措置の延長や宇宙機器産業への拡大を活かし、航空宇宙産業のさらなる集積と生産能力の拡充に地域を挙げて取り組んでまいります。

 次に、国家戦略特区についてであります。
 昨年8月に区域指定を受けて以降、日本初となる有料道路コンセッションを始め、農業、医療、教育、雇用・労働などの分野で特区制度を活用した具体的な取組を進めております。
 このうち、有料道路コンセッションにつきましては、10月からの民間事業者による運営開始に向けた手続を進め、利用者サービスの向上や沿線の地域活性化を図ってまいります。
 また、自動走行などの近未来技術の実証や外国人の産業人材の受入れに関する規制緩和についても、早期実現を目指してまいります。
 今後も引き続き特区の取組を活用し、国内最大のモノづくりの集積地として、我が国の成長を牽引する成長産業・先端技術の中枢拠点の形成に向け、全力で取り組んでまいります。

 次に、新東名高速道路につきましては、今月13日に、浜松いなさJCTから豊田東JCTまでの区間の供用が開始され、愛知県区間が全線開通いたしました。
 新東名高速道路は、三大都市圏を結ぶ日本の新たな大動脈となるものであり、日本経済を支える愛知の産業のさらなる発展と観光振興に重要な役割を果たすものと大いに期待しております。

 次に、環太平洋パートナーシップ(TPP)協定への対応についてであります。
 国においては、昨年11月に決定した「総合的なTPP関連政策大綱」を踏まえ、今年度の補正予算や新年度予算案においてTPP対策が盛り込まれたところであります。
 こうした中、本県では、今月19日に、私を本部長とする第2回愛知県TPP対策本部会議を開催し、TPP協定に伴う本県の影響と対応を取りまとめたところであります。
 世界のGDPの約4割(3,100兆円)という、かつてない規模の経済圏、そして、人口8億人という巨大市場が創出されるTPPにしっかりと対応するため、農林水産業の生産力強化や中小企業の市場開拓支援を進めるなど、愛知の産業競争力をさらに高めてまいりたいと考えております。

 次に、交通安全対策についてであります。
 本県の交通事故死者数は、これまで減少傾向が続いておりましたが、昨年は213人で4年ぶりに増加に転じ、また、13年連続の全国ワースト1位という非常に残念な結果になりました。
 こうしたことから、県、県警察、市町村、関係機関の連携による啓発の実施や県警察による取締りの強化に加え、自動車安全技術の普及などを通じて、交通事故の抑止、交通事故死者数の減少に、全力で取り組んでまいります。


 それでは、平成28年度当初予算編成につきましてご説明いたします。

 本県においては、昨年は、国産初のジェット旅客機MRJの初飛行、燃料電池自動車(FCV)の市場投入、リニア中央新幹線の本格着工という、日本の経済、産業の命運がかかった、日本の未来を創るプロジェクトが、大きく動き出しました。
 本県は、日本の中心に位置し、日本一のTechnology(技術)とTradition(伝統)を誇る我が国の産業の中心地であり、まさに“Heart” of JAPANであります。日本の未来を創るプロジェクトを日本一元気な愛知が牽引していき、愛知の強みをさらに進化させてまいりたいと考えております。

 平成28年度当初予算は、モノづくりをはじめ、日本一の「産業力」をさらに強くすることで、働く場をつくり、人を呼び込み、また新たな産業・雇用を生む好循環を継続・加速させてまいりたい、そして若者、女性、子ども、高齢者、障害者、外国人など、すべての人が輝き、すべての人が活躍する愛知をつくるとの思いをもって編成に当たったところであり、昨年の知事選挙で県民の皆様にお示しした政策集と、「あいちビジョン2020」を踏まえて、
12の柱立てを作らせていただきました。
 以下、この柱立てに沿いまして、主要な事業についてご説明させていただきます。

 まずは、リニア・インパクトを生かし、世界に発信する「中京大都市圏」づくりであります。
 2027年度のリニア中央新幹線の開業は、わが国の大都市圏構造そのものを変える大きなインパクトを与えるものであり、首都圏から中京圏に及ぶ5,000万人規模の大交流圏が形成されます。その西の拠点として、首都圏に対抗し得る強みをさらに伸ばし、ヒト・モノ・カネ・情報を呼び込み、世界の中で存在感を発揮できる「中京大都市圏」の実現を目指してまいります。
 リニア開業後に中京大都市圏の玄関口となる名古屋駅について、名古屋市と連携しながら、わかりやすい乗換空間の形成等によるスーパーターミナル化を推進してまいります。あわせて、リニアによる時間短縮効果をより広域に波及させ最大限に活用するため、名古屋駅からの40分交通圏の拡大を目指した取組を進めてまいります。
 また、鉄道、バス、タクシー等が相互に連携し、効率的で利便性の高い総合的な公共交通ネットワークの構築を目指す「あいち公共交通ビジョン(仮称)」を策定してまいります。
 さらに、中部国際空港の二本目滑走路を始めとした空港機能の強化の実現に向け、エアポートセールスやインバウンド、アウトバウンドを促進し、航空ネットワークの拡充と航空需要の一層の拡大を図ってまいります。
 また、港湾機能の強化のため、名古屋港、衣浦港、三河港の現状と課題、目指すべき将来像を取りまとめた港湾物流ビジョンを策定いたします。
 道路網の整備につきましては、名古屋環状2号線、三遠南信自動車道及び名豊道路などの広域幹線道路の整備促進に取り組むほか、西知多道路など空港、港湾へのアクセス道路や主要都市間を連絡する幹線道路ネットワークの整備を進めてまいります。また、地域の皆様の生活に密着する道路や山間道路などの整備についてもしっかりと取り組んでまいります。

 次に、世界をリードする日本一の産業の革新・創造拠点「産業首都あいち」づくりであります。
 製造品出荷額等が38年連続で日本一という、圧倒的な産業集積を誇る愛知の産業力を一層強化し、「産業首都あいち」を目指してまいります。
 本県の基幹産業である自動車産業の高度化を促進していくため、燃料電池自動車(FCV)のさらなる普及に向けて、本県独自の補助制度により水素ステーションの整備を一層促進するとともに、新たに燃料電池フォークリフトの導入への支援を行ってまいります。
 また、MRJの生産拠点が整備されていくことに伴い、県営名古屋空港の新駐機場などの整備を進めるとともに、この地域を、航空機の開発・生産の場という役割にとどまらず、人材育成の場・産業観光の場としていくことを目指し、航空機をテーマとした見学者の受入拠点施設として、「あいち航空ミュージアム(仮称)」を整備してまいります。
 さらに、昨年8月に近未来技術実証プロジェクトとして国家戦略特区に指定されたことを受け、自動走行の実証実験エリアを拡大し、産学行政が連携して早期の実用化に向けて取り組むとともに、ロボット産業につきましても、医療機関と患者をITでつなぎ、医師が診療・指導を行う「リハビリ遠隔医療システム」の実証や、効果的な治療を行う「リハビリ支援ロボット」の臨床研究への活用促進を図ってまいります。
 また、愛知の産業競争力を支えるのは中小企業です。中小企業に対する金融面での支援といたしまして、創業等支援資金に、日本政策金融公庫との「協調推進枠」を新設するとともに、パワーアップ資金において、さらなる設備投資や経営革新計画に基づく新事業展開を促進するため、金利を引き下げるなど、中小企業の資金繰りをきめ細かく支援してまいります。
 さらに、「あいち商店街活性化プラン2016−2020」に基づき、商店街の行う賑わい創出のための集客イベントの開催など活性化を図る取組を支援するとともに、新たに商店街を応援する大学、地域住民等との連携を促進し、持続可能な活力ある商店街を創出してまいります。
 産業空洞化対策減税基金による補助制度につきましては、この4年間で、企業立地・再投資の分野で171件の補助対象案件を採択し、総投資額3,297億円、35,000人を超える雇用維持・創出効果という大きな成果があがっております。また、研究開発・実証実験の分野では、4年間で274件の補助対象案件を採択し、高付加価値のモノづくりの拡大が図られております。
 来年度も基金に50億円を積み立て、これを原資とする日本一の補助制度により、本県産業の振興とさらなる雇用の維持・創出に取り組んでまいります。

 次に、中部最大・全国三番手の大農業県・愛知の力をさらにパワーアップさせるための「農林水産業の振興」であります。
 本県の優れた農林水産物の知名度向上のため、名古屋コーチン、花、抹茶、あさり、うなぎ、小麦を中心に、全国トップレベルのブランド力を一層強化し、需要拡大に取り組むとともに、輸出促進のため、マレーシアにおいて販売促進会等を行う「愛知フェア」を開催してまいります。
 また、本県は、53年連続花き産出額全国1位を誇る花の王国であります。10月にトルコで開催されるアンタルヤ国際園芸博覧会に出展するとともに、花や緑があふれる豊かな暮らしづくりに向けて、11月には弥富市で「あいち花フェスタ2016(仮称)」を開催するなど、花の需要拡大を図ってまいります。
 さらに、全国有数の施設園芸産地のさらなる競争力強化を目指して、ICT等の活用により生産性を向上させる「あいち型植物工場」の整備を支援してまいります。また、畜産業の強化を図るため、地域ぐるみで高収益型の畜産を実現する生産体制の構築を支援してまいります。
 林業につきましては、担い手の確保・育成を図るとともに、循環型林業を推進し、伐採した木材を余すことなく利用する取組を進めてまいります。
 水産業につきましても、日本一のあさりを始めとした漁業の振興のため、干潟・浅場の造成や魚礁漁場の整備を引き続き進めてまいります。

 次に、「人財力の強化」であります。
 元気な愛知の礎となるのは、「人づくり」です。愛知の人財力を磨き上げ、すべての人が輝き、活躍する愛知をつくってまいります。そのため、子どもたちの学力と個性を伸ばす教育の充実、女性の活躍促進、産業人材・雇用といった施策を進めてまいります。

 まず、教育の充実、「教育立県あいち、人材創造あいち」であります。
 本年4月には、モノづくりの発展に必要な人材、産業基盤を支える技術者・技能者を育成する本県の工業教育の中核となる愛知総合工科高等学校を開校いたします。そして、専攻科につきましては、産業現場のリーダーとなる人材の育成を図るため、国家戦略特区の制度を活用し、全国で初めてとなる平成29年4月からの公設民営化に向けて、着実に準備を進めてまいります。
 また、子どもたちの学習意欲を引き出し、基礎学力の向上を図るため、小学校1年生及び2年生並びに中学校1年生の35人学級を引き続き実施するとともに、発達障害児への学習支援など、きめ細やかな配慮のできる教育環境づくりを進めてまいります。
 さらに、勤労観、職業観を育むキャリア教育につきましては、専門的な知識・技能を有するキャリア教育コーディネーターを活用し、高校生のインターンシップ受入先の開拓などを行い、効果的に推進してまいります。
 また、いじめ・不登校の対策として、生徒の生活環境等の改善を図り、学校への適応や社会的な自立を支援するため、スクールソーシャルワーカーの県立高校への配置を拡大するとともに、スクールソーシャルワーカーを配置する市町村に対する補助制度を創設し、教育相談体制のさらなる充実を図ります。
 県立芸術大学につきましては、教育研究のさらなる充実を図り、地域の文化芸術を担う人材や、国内外の第一線で活躍する芸術家の育成を進めていくため、教育研究活動の多様化に対応した新デザイン棟の整備に向けた実施設計を行ってまいります。
 また、本県の学校教育において重要な役割を果たしている私立学校につきましては、その振興と父母負担の軽減を図るため、私立学校経常費や授業料、入学納付金への補助を充実するなど、各種助成を着実に実施してまいります。

 次に、「女性の活躍促進」であります。
 本県の総合力をさらに高めていくためには、働く場における女性の定着と活躍が不可欠です。
 そこで、「あいち女性の活躍促進プロジェクト」のさらなる充実に向けて、新たに、中小企業における女性の活躍を促進するため、好取組事例などをまとめたハンドブックを作成し、セミナーを開催するとともに、女子大学生等を対象に、キャリアプランや職業観の形成に向けた講演会を開催してまいります。
 また、女性の活躍を通じた産業振興や女性の雇用促進を検討するために設置した「あいち・ウーマノミクス研究会」を引き続き開催し、女性の起業家やモノづくりの現場などで働く女子の育成を図ってまいります。
 さらに、ワーク・ライフ・バランスの推進につきましては、企業向けに仕事と介護の両立を支援するマニュアルの作成や、男性の育児参加を促進するイクメン・イクボスの普及・拡大を図ってまいります。

 次に、「産業人材・雇用」であります。
 経済のグローバル化や少子高齢化が進む中、本県の産業競争力を一層強化していくために、モノづくりあいちを支える産業人材の育成・確保は、喫緊の課題であります。
 そこで、本県のモノづくり産業を支える中小企業の人材育成を一層支援するため、産業人材育成課内に「愛知県産業人材育成支援センター」を新たに設置し、産業人材育成連携コーディネーター2名による職業能力開発に係る情報提供や相談対応などに取り組んでまいります。
 また、航空宇宙産業における航空機製造人材の育成・確保を図るため、現場技能職への研修に対する支援を強化してまいります。
 さらに、将来にわたってモノづくりあいちを支える人材を創出していく取組として、本県開催が内定している2019年度の技能五輪全国大会の開催に向けた準備を進めるとともに、連続開催を目指し、2020年度の技能五輪全国大会・全国アビリンピックの誘致活動を進めてまいります。
 加えて、青年技能者の技能水準のさらなる向上を図るため、2020年代初頭の技能五輪国際大会の誘致に向けた調査を実施してまいります。
 また、雇用対策につきましては、未就職卒業者等を始めとする若年求職者を対象に職場体験等を行う「就職支援塾」を開催し、就職や就職後の職場への定着を支援してまいります。

 次に、「医療・福祉の充実で日本一の健康長寿を実現」であります。
 すべての人が活躍する「人が輝くあいち」の実現のためには、県民の皆様の健康を支える医療・福祉の充実が欠かせません。
 そこで、団塊の世代が75歳以上となる平成37年に向け、医療・介護サービスの提供体制の改革を推進するため、「地域医療介護総合確保基金」を活用して、病床の機能分化・連携や在宅医療の充実、介護施設等の整備、医療・介護従事者の確保に向けた取組を進めてまいります。
 また、高齢になっても住み慣れた地域で安心して暮らし続けられるよう、医療・介護・予防・生活支援・住まいを一体的に提供する地域包括ケアを推進するため、3年間で実施するモデル事業の最終年度として、医療と介護の連携等に加え、生活支援の強化や住まいの確保についての取組を実施してまいります。
 全面改築を進めております愛知県精神医療センターでは、本日、精神科救急などに対応する新棟での診療を開始します。今後、思春期対応の専用病棟を備えた東病棟などの整備に着手し、平成29年度中の全面オープンを目指します。
 また、健康寿命日本一を目指して、県民の皆様の健康づくりに取り組む気運の高揚を図り、生涯にわたる主体的な健康づくりを促進するため、食生活や運動などの正しい生活習慣づくりを呼びかける取組を推進し、「健康長寿あいち」を実現してまいります。

 次に、「子ども・子育て支援」であります。
 本県が活力を維持しながら持続的に発展していくため、また、女性の活躍を促進するためにも、次代の担い手である子どもを安心して生み育てることができる環境づくりが求められています。
 そこで、待機児童対策をはじめとした、子どもや子育てをめぐる様々な課題を解決するため、「子ども・子育て支援新制度」に基づき、認定こども園、幼稚園、保育所の運営費に対する共通の給付として、市町村が支弁する給付費の一部を負担します。また、少人数の子どもを預かる小規模保育などへの財政支援を行い、その安定的な運営と利用者負担の軽減につなげてまいります。
 放課後児童クラブにつきましては、「小1の壁」の解消を図るため、引き続き設置を促進してまいります。
 病児・病後児保育につきましては、新たに保育士以外の人材を活用した保育への支援を行い、多様な保育ニーズに応えてまいります。
 また、救急棟の建設を進めてきたあいち小児保健医療総合センターでは、今月1日に小児3次救急を開始しました。来年度は、本館の改修を行い、周産期部門を新設して、より安全で質の高い新生児医療を開始いたします。

 次に、「障害者福祉・支援、ノーマライゼーション推進」であります。
 昨年12月に制定しました「愛知県障害者差別解消推進条例」に基づき、障害の有無に関わらず共に暮らせる社会の実現に向け、相談に対応するための窓口を設置するとともに、市町村が実施する相談に関して情報の提供や援助を行うなど、障害者差別の解消に積極的に取り組んでまいります。
 児童生徒の増加により過大化が進んでいる知的障害特別支援学校につきましては、平成30年度開校予定の知多地区の新設特別支援学校と、平成31年度開校予定の尾張北東地区の新設特別支援学校につきまして、それぞれ着実に整備を進めてまいります。
 また、長時間通学による児童生徒の負担軽減や児童生徒数の増加に対応するため、スクールバスを増車いたします。
 さらに、民間法人による重症心身障害児者の入所施設の整備を後押しするため、障害者福祉減税基金による助成を引き続き行ってまいります。
 また、「医療療育総合センター(仮称)」につきましては、6月に医療型障害児入所施設を開所するとともに、平成
30年度内の全面開所に向けて本館棟の整備を進めてまいります。

 次に、「観光あいちの推進」であります。
 2015年を「あいち観光元年」と宣言し、観光産業を本県の新たな成長産業と位置付け、このたび、「あいち観光戦略」を策定し、平成32年度までの5年間で来県者数5,000万人、このうち外国人を400万人、観光消費額は1兆円を目標に、訪日外客誘致の強化など、より一層の観光振興の推進を図ってまいります。
 訪日外国人旅行者を本県にも取り込むため、「ハート・オブ・ジャパン」のキャッチワードのもと、本県の知名度の向上を図るとともに、中国・広東省、韓国及び台湾での観光説明会や交流会の開催、クルーズ船を誘致するためのポートセールスの実施など、観光プロモーションを展開してまいります。
 本県は、充実した交通インフラや世界でも有数の産業集積地であり、広くアジアを見渡しても、MICEの最適な開催地となるための極めて高いポテンシャルを有しております。
 このため、中部国際空港の隣接地に6万uの展示面積を持つ大規模展示場を整備し、新たな交流による新産業の創出や既存産業の充実など、本県産業基盤の強化を進めるとともに、当地域の国際観光都市としての魅力を一層高め、首都圏に並ぶ交流拠点を目指してまいります。
 さらに、本県、名古屋市などが中心となり結成した「愛知・名古屋MICE推進協議会」を通して、海外で開催される見本市に参加出展するなど、MICEの誘致に取り組んでまいります。
 また、人口集積地である首都圏・関西圏において観光PRや県産品の販売などのイベントを開催し、愛知への誘客拡大を図ってまいります。
 加えて、武将観光については、外国人誘客も視野に入れた「ワールドサムライサミット2016」を開催するとともに、今年度に結成した「徳川家康と服部半蔵忍者隊」の活動を強化し、「武将のふるさと愛知」を国内外に向けて発信してまいります。
 本県は、昨年12月に「山車日本一あいち」を宣言したところですが、さらに愛知の山車まつりの魅力を引き出し、発展させていくため、あいち山車まつり日本一協議会の取組を支援するとともに、山、鉾、屋台行事のユネスコ無形文化遺産登録に向けた取組を進めてまいります。
 また、本県で青少年期を過ごした杉原千畝氏の功績を広く県民に伝え、県民の郷土に対する誇りの醸成や地域の活性化につなげるため、杉原千畝氏を顕彰する施設のあり方について検討してまいります。

 次に、「文化・スポーツ・魅力発信」であります。
 本年は、本県にとって「芸術・アートの年」となります。
 8月から12月にかけて、「あいちトリエンナーレ2016」、「第31回国民文化祭・あいち
2016」、「第16回全国障害者芸術・文化祭あいち大会」と、大規模な文化行事を連続して開催してまいります。最先端の現代アートから伝統文化、さらに障害者アートまで、愛知の多様な文化や芸術に触れていただきたいと考えております。
 また、愛知芸術文化センターにおいては、全国有数の文化芸術の創造・発信拠点であり続けられるよう、小ホールの改修工事などに着手してまいります。
 スポーツの振興につきましては、「あいちスポーツコミッション」を立ち上げ、全国、世界に打ち出せるスポーツ大会を招致・育成し、地域の活性化につなげる取組を推進しております。
 豊田市と連携した「ラグビーワールドカップ2019」の開催準備や、「2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会」の競技招致及び合宿誘致、「FIFAフットサルワールドカップ2020」の日本・愛知への招致を着実に進めてまいります。
 さらに、リニア中央新幹線開業を見据え、「アジア競技大会」を始めとする様々な国際的スポーツ大会の開催可能性について調査検討してまいります。
 また、名古屋市にある瑞穂陸上競技場を会場として開催される、リオデジャネイロオリンピック代表選考会を兼ねた第100回日本陸上競技選手権大会の開催を支援してまいりますとともに、2020年東京オリンピックの強化指定選手に加えて、パラリンピックの強化指定選手の競技力強化についても取り組んでまいります。
 加えて、ラグーナ蒲郡エリアのさらなる活性化を牽引し、大規模な国際大会にも対応できるよう、海陽ヨットハーバーの整備に取り組んでまいります。また、愛知県体育館においても、国際的なスポーツ大会やイベント等を誘致できるよう、環境改善を図るための改修工事の基本設計を実施してまいります。

 次に、「グローバル展開」であります。
 グローバルな経済・社会の動きに的確に対応していくため、「あいち国際戦略プラン」に基づき、新たな国・地域とのパートナーシップの形成に取り組んでまいります。
 こうした中、本県企業に関連するプロジェクトが次々と進行するアメリカ・テキサス州とは、経済面に加え、文化や人的な交流を含めた地域レベルの関係強化を図ってまいります。また、成長著しいアジアの活力を積極的に取り込むため、相互協力の関係にある中国・広東省との交流を推進してまいります。
 また、5月に開催される伊勢志摩サミットにおいて、本県はゲートウェイの役割を担うこととなるため、各国首脳、関係者、メディアなど多くの方々の受入れ・歓迎を万全の態勢で行うとともに、この好機に日本一の技術・産業や伝統・文化といった世界に誇る愛知の様々な魅力を発信してまいります。
 なお、今月16日、17日には私がG7の各国在日大使館を訪問し、各大使等に本県のPRを行ってまいりました。今後G7以外のサミット参加国につきましても、決定次第、本県の魅力を伝えてまいります。
 さらに、外国人の子どもたちが能力を発揮し活躍できる環境をつくるため、小学校入学前から高等学校卒業までの各段階における外国人の日本語教育を拡充します。
 加えて、平成20年度に地元経済界、企業等と協力して造成した「日本語学習支援基金」を再造成し、外国人児童生徒の日本語教育を支える体制づくりを継続してまいります。

 「安全・安心なあいち」をつくることは、すべての基本であります。
 南海トラフ地震により浸水が予測されるゼロメートル地帯におきまして、円滑な救出・救助活動を行うための広域的な防災活動拠点の確保に向け、木曽三川下流域の拠点の整備計画を策定するとともに、他の拠点の整備候補地について、引き続き選定を進めてまいります。
 また、伊勢志摩サミットにおいて、国内外要人の身辺の安全確保と国際テロ等の未然防止、県民の皆様の安全・安心の確保を図るため、県警察による警戒警備を実施するとともに、消防の警戒活動を実施して、万全な態勢で受入れを行ってまいります。
 さらに、県有施設の非構造部材等の耐震対策として、吊り天井の脱落対策に取り組んでまいります。また、民間住宅・建築物の耐震診断や耐震改修に要する費用への補助を引き続き行ってまいります。
 加えて、地域防災力の中核である消防団への加入促進を図るため、市町村が行う消防団加入促進の取組を支援する助成制度を創設するほか、消防団を地域で応援する「消防団応援事業所制度」の導入や、次代の消防団を担う若者を対象とした一日入団体験等を実施してまいります。
 交通安全対策につきましては、交通事故死者数の減少を目指し、交通安全県民運動を中心とした取組を積極的に展開するとともに、高齢者の事故防止や法令違反・悪質な危険運転の根絶に向けた啓発活動を実施してまいります。また、交通事故の抑止と道路交通の円滑化のため、信号灯器の視認性を高めるためのLED化を進めるとともに、横断歩道を始めとした道路標示、道路標識の整備など、交通安全施設の整備にも取り組んでまいります。
 また、地域の治安や災害時の活動拠点である警察署につきましては、愛知警察署の建築工事及び蟹江警察署の実施設計を行うとともに、蒲郡警察署及び西尾警察署の基本設計に着手し、整備を進めてまいります。

 次に、「環境首都あいち」の確立であります。
 日本一の産業県である本県は、環境面においてもトップランナーを目指していきたいと考えており、持続可能な社会の実現に向けて、「あいち地球温暖化防止戦略2020」に基づき、省エネ活動の推進や再生可能エネルギーの導入促進を図っており、さらに、2030年以降の低炭素社会のビジョンを明らかにする新たな戦略の策定に向けた検討を開始いたします。
 また、「あいち自動車環境戦略2020」に基づき、電気自動車・プラグインハイブリッド自動車・燃料電池自動車を始めとする次世代自動車の普及を促進してまいります。
 さらに、12月にメキシコで開催されるCOP13においては、生物多様性保全に先進的に取り組む海外の州・県レベルの自治体と連携・協働し、世界の生物多様性保全の取組を促す共同アピールを行ってまいります。
 また、持続可能な未来のあいちを支える担い手となる人づくりを進めるため、大学生を対象に、リーダーなどの人材を育成する取組を充実させるとともに、産学行政が連携して地域全体で取組をサポートするための支援組織を設立してまいります。
 未就学児童等に対しては、インタープリター(森の案内人)による自然体感プログラムを子育てなどの場に取り入れることで、自然体験を通じた環境学習を実施します。
 さらに、廃棄物焼却炉の廃熱などの未利用エネルギーを活用して発電した上で、その電気の一部を使って水素を製造、輸送・貯蔵し、水素ステーションなどに供給する、低炭素水素のサプライチェーンの構築・事業化に向けた検討を産学行政で協働して行ってまいります。

 次に、「東三河の振興」であります。
 「東三河県庁」につきましては、市町村、東三河広域連合や経済団体等とともに、「東三河振興ビジョン」の将来ビジョンに掲げる施策を進め、着実に成果をあげてきたところであります。来年度は、新たなテーマで主要プロジェクト推進プランを策定し、東三河の振興に関する取組をさらに推進してまいります。
 加えて、東三河地域の農商工連携の取組をさらに活性化させるため、新商品の価値や競争力、売上向上につなげる試作品評会を新たに開催してまいります。
 また、「三河湾環境再生プロジェクト」として、引き続き「三河湾大感謝祭」を開催いたします。また、港湾の振興や地域の活性化を図るため、7月に豊橋市を中心とした東三河5市2町1村で「海フェスタ東三河」を開催してまいります。
 さらに、完成自動車の輸出入で全国トップクラスの三河港におきましては、自動車の保管ヤードを確保するため、神野西地区のふ頭用地の拡張整備を引き続き進めるとともに、明海地区の埋立事業を官民一体となって進めるなど、産業競争力の強化を図ってまいります。

 次に、「地方分権・行政改革の推進」であります。
 昨年10月に策定した「愛知県人口ビジョン・まち・ひと・しごと創生総合戦略」に基づき、
2060年に700万人程度の人口を確保するという展望の実現に向け、産業振興や雇用対策のほか、魅力発信、子育て支援、三河山間地域の振興など幅広い施策に取り組んでまいります。
 また、中京大都市圏づくりを総合的に進めるため、重要プロジェクトの推進はもとより、広域的な連携の強化や名古屋市との役割分担・共同連携による取組についても、引き続き、推進してまいります。
 行財政改革につきましては、健全で持続可能な行財政基盤の確立に向けて、「しなやか県庁創造プラン」に基づく取組を着実に進めてまいります。
 また、県立学校や県有施設の長寿命化につきましては、愛知県公共施設等総合管理計画に基づき、長寿命化に向けた改修や予防保全を行うための調査を実施してまいります。 

 以上、予算の主な内容につきまして申し上げてまいりましたが、ここにご審議をいただく平成28年度の当初予算は、一般会計2兆5,249億余円、特別会計7,517億余円、企業会計1,665億余円でございまして、合わせて3兆4,431億余円となります。
 このうち、一般会計の予算規模は、平成27年度当初予算に対し、101.7%でありますが、地方消費税清算金や地方消費税交付金などの地方消費税関連支出により歳出規模が拡大していますので、これを除くと、100.5%にとどまります。
 歳入につきまして、大宗をなす県税は法人二税や地方消費税の増収により、1兆2,480億円を計上いたします。平成27年度当初予算からは1,450億円の増額となりますが、平成27年度最終予算と比較すると、ほぼ同程度の額となります。
 県税収入が増加となる一方で、地方交付税と臨時財政対策債を合わせた地方財政措置につきましては、税収動向及び平成28年度地方財政計画を踏まえ、平成27年度当初予算に比べ800億円減の1,600億円の計上となります。
 また、税収に連動する税交付金等の歳出の増があるため、実質収入ベースの一般財源としては、平成27年度当初予算に対し、219億円の増にとどまります。
 県債につきましては、2,156億円を計上いたします。このうち、臨時財政対策債については、平成27年度当初予算に比べ1,100億円の大幅な減となることから、特例的な県債の平成28年度末の残高は、これまでと比べてその増加幅が抑制され、平成27年度末を338億円上回る2兆7,892億円となる見込みです。
 また、社会資本整備などに充当する、いわゆる通常の県債につきましては、必要な公共投資を確保しつつも、行革大綱に基づき、その残高の縮減に努めてまいりました。平成28年度末の残高は平成27年度末を863億円下回る2兆5,144億円となる見込みであり、健全で持続可能な財政基盤の確立に向けた取組を着実に進めることができたと考えております。
 こうしたことから、県債全体の残高は、平成27年度末を525億円下回る5兆3,036億円となる見込みです。
 一方、歳出につきまして、人件費は、平成27年度人事委員会勧告を反映するとともに、定員の適正管理に努め、平成27年度当初予算とほぼ同額を計上いたします。
 また、扶助費につきましては、後期高齢者医療費負担金や介護給付費負担金などの伸びにより、確実な増加が続いています。
 公債費につきましては、過去の特例的な県債の増発に伴う満期一括償還分の減債基金への積立金が増加しており、高止まり傾向にあります。
 投資的経費につきましては、愛知総合工科高等学校、三河青い鳥医療療育センターの建設や、警察本部庁舎の耐震改修といった大規模事業の完了により、全体では平成27年度当初予算に比べて減少しますが、こうした中にあっても、国庫補助金を活用した道路、河川等の公共事業につきまして、平成27年度当初予算を上回る額を確保するとともに、県単独事業としても県民の皆様の安心・安全につながるような社会基盤整備を積極的に進めることとしております。
 今回の予算編成では、年始の時点で多額の収支不足が見込まれましたが、平成27年度における税収増や歳出不用額の補正減などにより、平成27年度内に予定していた減債基金の取崩しを全額取り止めるとともに、財政調整基金取崩し額のうち一部を取り止め、平成28年度に再活用するという2か年にわたる財源調整で対応したところであります。
 本県の財政運営は、年度内に財源を確保して、翌年度当初予算の収支不足に対応するということを繰り返しており、単年度の歳入だけで歳出を賄うことができないことから、依然として厳しい財政状況が続いています。
 加えて、税制改正の影響、とりわけ、法人住民税法人税割の国税化の拡大や、この拡大に伴う市町村の減収を補てんする措置として設けられた法人事業税交付金、そして外形標準課税の拡大などにより、平成29年度以降、本県の税収に大きな影響が生じることが懸念されます。
 今後も、経済・産業の活性化を進め、税源の涵養につなげるとともに、より一層合理的な行政運営を図り、「しなやか県庁創造プラン」に沿った取組を着実に進め、健全で持続可能な財政基盤の確立に取り組んでまいります。


 次に、予算以外の案件につきまして、ご説明を申し上げます。
 条例は、制定、一部改正、廃止を合わせまして、33件を提案いたしております。
 まず、伊勢志摩サミット開催時における小型無人機の飛行の禁止に関する条例の制定についてであります。
 伊勢志摩サミットの開催時において、要人への危険を未然に防止し、県民生活の安全と平穏を確保するために、ゲートウェイとなる中部国際空港などにおいて、5月16日から28日までの間、小型無人機、いわゆるドローン等の飛行を禁止するものでございます。
 次に、愛知県議会の議員の選挙における選挙公報の発行に関する条例の制定についてであります。
 選挙権年齢が18歳以上になることを機に、県政に対する関心を高め、一人でも多くの有権者の投票参加を促すため、県議会議員選挙において選挙公報を発行することとし、発行に関し必要な事項を定めるものであります。
 次に、知事等及び職員の給与の特例に関する条例の制定についてであります。
 現下の厳しい財政状況に鑑み、引き続き私を始め特別職と管理職の職員を対象に、給与の一部を減額するものです。
 次に、愛知県公契約条例の制定についてであります。
 公契約につきましては、これまで、入札契約の公正性、透明性の確保に努めてまいりましたが、近年では、過度な価格競争が指摘され、サービスの質の低下や労働環境への影響なども懸念されております。また、これまでの行政手法に加え、公契約を政策推進の手法として積極的に活用できないかとの問題提起もされております。
 こうした公契約における様々な課題に対応するため、公契約に関する基本方針を定め、県及び公契約の相手方の責務を明らかにするとともに、公契約に関する県の取組の基本となる事項を定めた条例を制定し、体系的・総合的に問題解決を図るものでございます。
 次に、指定公立国際教育学校等管理法人による愛知県立愛知総合工科高等学校の専攻科の管理に関する条例の制定についてであります。
 国家戦略特別区域法に基づく区域計画の認定を受けて、愛知総合工科高等学校の専攻科の管理を民間事業者に行わせるため、その指定の手続や管理に関する基本的な方針など必要な事項を定めるものでございます。
 次に、愛知県職員定数条例の一部改正についてであります。
 知事の事務部局等の職員定数については、事務事業の廃止・縮小、事務処理方法の改善などに取り組む一方で、病院事業庁におけるあいち小児保健医療総合センターの周産期医療の実施等に伴い全体で113人増員いたします。また、小学校における特別支援学級数の増加などにより教職員を111人、我が国を取り巻く国際情勢の変化に対応するための事態対処能力の強化等のため警察官を40人、それぞれ増員するものでございます。
 さらに、条例以外の案件といたしましては、愛知県競馬組合規約の一部改正始め15件を提案いたしております。


 次に、平成27年度関係の諸議案についてであります。
 まず、今回の補正予算は、国の補正予算への対応や国庫補助金及び事業費の確定に伴う所要の措置並びに平成28年度当初予算編成に向けての財源確保等を行うものであります。
 補正予算を会計別に申し上げますと、一般会計669億5,092万余円の増額、特別会
計133億7,745万余円の減額、企業会計43億3,437万余円の増額でございまして、合わせて579億784万円の増額となります。
 以下、主なものにつきまして、概要をご説明申し上げます。
 国の補正予算関連事業費といたしまして、土地改良事業費などの公共事業に係る所要の経費の計上などを行いますほか、新たに国民健康保険財政安定化基金を設置するものなどでございます。
 以上、ご説明申し上げました一般会計の一般財源といたしましては、県税収入や地方交付税の増額などにより、全体で2,045億2,030万余円を増額することといたしております。
 特定財源につきましては、臨時財政対策債の減額や減債基金取崩し額の全部の取止めなどから、全体で1,375億6,938万余円を減額することといたしております。

 次に、補正予算以外の議案につきましては、条例は、制定、一部改正を合わせまして、3件を提案いたしております。
 このうち、職員の給与に関する条例等の一部改正でありますが、昨年10月の人事委員会勧告を受けまして、一般職員の月例給及び期末・勤勉手当について、民間給与との較差の解消を図ることを基本として勧告どおりの内容で実施するものでございます。
 さらに、条例関係議案以外のその他の議案といたしまして、工事請負契約の締結など8件でございます。


 以上、提案をいたしました案件のうち、主なものにつきまして、その概要をご説明申し上げました。なお、詳細につきましては、議事の進行に従いましてご説明を申し上げたいと存じます。よろしくご審議の上、適切なご議決を賜りますようお願い申し上げる次第でございます。
 最後に、結びとして今一度申し上げたいと存じます。
 昨年11月の県営名古屋空港におけるMRJの初飛行は、半世紀ぶりとなる国産旅客機の生産という大きな夢を乗せたものであり、本年は、いよいよ量産機の生産が開始されるなど、航空宇宙産業の一大拠点が完成しつつあります。
 また、宇宙産業の分野でも、本県で開発・最終組立が行われているH―UAロケットが、国産ロケットとして初の商業衛星の打ち上げに成功し、また、今月も成功いたしました。さらに、開発が進んでいるH3ロケットも、平成32年度に試験機が打ち上げられる予定となっております。このため、「アジアNo.1航空宇宙産業クラスター形成特区」においても、新たにロケット産業を始めとする宇宙機器産業を支援措置の対象に加え、ますます航空宇宙産業の集積や生産能力の拡充に向けた動きを後押ししてまいります。
 さらに、自動走行や無人飛行、リハビリ遠隔医療・ロボットといった近未来技術による次世代産業が、国家戦略特区に指定されたことを受け、愛知で花開こうとしております。
 こうした取組により、「集積が集積を呼ぶ」好循環をさらに加速させ日本一の「産業力」をさらに強くすることで、働く場をつくり、人を呼び込み、また新たな産業・雇用を生むという、この好循環も継続・加速させてまいります。
 また、こうした愛知の発展を支えるのは「人」であり、産業人材の育成・確保にしっかりと取り組むとともに、教育の充実、女性の活躍促進、子ども・子育て支援、医療・福祉の充実で日本一の健康長寿を実現、障害者福祉の充実でノーマライゼーションを推進していく必要があります。
 さらに、国内外から人を呼び込み、交流を活発化することで、地域が活性化し、新たな産業や雇用が生まれてまいります。そのため、観光、スポーツ、文化などを生かした「地域の魅力」を磨き上げ、発信してまいります。
 産業振興、教育、医療・福祉、インフラ整備、環境対策、地震防災対策、交通安全など、県政には様々な分野があり、常にアンテナを高くし、県民の皆様の声を聴きながら、時代の流れを着実に見通し、自由な発想で、かつ、果敢に「愛知の未来へ挑戦」してまいります。
 そして、産業力、人財力、地域力を一段と高め、愛知をさらに飛躍させ、「日本一元気な愛知」をつくり、地域間競争、都市間競争を勝ち抜き、ここ愛知から日本の未来をつくってまいりたいと考えております。
 今後も全力で県政運営に取り組んでまいる所存でありますので、県議会議員の皆様方並びに県民の皆様方の、ご理解とご支援を心よりお願い申し上げます。