愛知県衛生研究所

国内初クリプトスポリジウムのプールにおける集団感染

2006年7月27日

クリプトスポリジウムは、塩素消毒が効かない、飲料水から感染する病原体として、10年ほど前から広く知られるようになりましたが、プールや噴水など水に関する施設(親水施設)での感染はほとんど知られていないのが現状です。

プールで泳ぐ少年

平成16年(2004年)8月末、長野県北信保健所管内のプールなどの運動施設を持つホテルの利用客が、下痢・発熱・腹痛などの消化器症状を起こし、74名の発症者便からクリプトスポリジウムが検出されました。また、詳細な検査の結果、プールのろ過装置内の砂からもオーシストが検出されました。

最終的には、水泳合宿で来ていた千葉県内のスポーツクラブの(ホテル利用以前に感染していた)発症者複数名の糞便に汚染されたプール水による集団感染と考えられました。

プールサイドで目を洗う少女

さらに、別のプールを介して二次感染したと考えられる集団事例も起こりました。上記のスポーツクラブが長野県での合宿終了後に使用していた千葉県内10カ所のプール水についてクリプトスポリジウムの自主検査を行なったところ、2カ所から検出されました。長野での合宿に参加せず、これら2つのプールを利用し、下痢、腹痛、発熱などを起こした人について、保健所が調査した結果、症状のあった48名のうち、検査を行なうことのできた6名中2名の便からクリプトスポリジウムが検出されました。

アメリカでは、1993年の水道水を介したミルウォーキーにおける大規模な集団発生事件が有名ですが、1991〜2002年までに起こったクリプトスポリジウムによる集団発生で、飲料水による事件と水浴び場などの親水施設で発生した事件を比べると、飲料水よる事件が12事例に対して親水施設での事件が50事例と圧倒的に多くなっています。

クリプトスポリジウム症の患者は下痢などの症状が消失した後も2〜4週間にも渡って便からクリプトスポリジウムを排泄することもあると言われていますので、下痢の症状があるときはもちろん回復後しばらくの間は、プールへの入水を控えるようにしましょう(アメリカではプールの使用を症状消失後2週間は禁止している)。また、クリプトスポリジウム以外による下痢症の場合にも、下痢中及び回復後3〜4日はプールの使用を控えるようにしてください。

クリプトスポリジウムの生活史や病原性などの詳細については、当所のクリプトスポリジウムのページを参照してください。