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広東住血線虫

広東住血線虫で国内初の犠牲者

平成12年6月11日付中日新聞に「広東住血線虫で国内初の犠牲者」という掲載記事がありました。その内容は、沖縄県・嘉手納基地内の女児(7歳)が我が国で初めて広東住血線虫という寄生虫による髄膜脳炎で死亡し、また別の女児(5歳)が同様の症状で入院しているという報道でした。そこで広東住血線虫症について簡単に解説します。

広東住血線虫(Angiostrongylus cantonensis)とはどんな寄生虫?

成虫はドブネズミやクマネズミなどの肺動脈内(心臓から肺にいく血管)に寄生する体長22〜23mmの線虫です。肺動脈内に産み落とされた虫卵は、肺の毛細血管内で孵化し幼虫になり、肺胞から気管、食道、胃、腸を経て糞として外界に出ます。この幼虫が中間宿主に経口的あるいは経皮的に入ると、体内で発育し感染幼虫になります。これをネズミが食べると肺動脈内で成虫になります。ヒトが幼虫に感染した中間宿主を食べると、脳や脊髄の血管や髄液の中に寄生し、髄膜脳炎の症状を起こしますが、幼虫自身は成虫になることなく死滅します。

中間宿主にはなにがなるの?

中間宿主として最も重要なのはアフリカマイマイ(東南アジアや沖縄、小笠原、奄美大島等に生息する大型のカタツムリ)で、その他数種のマイマイやナメクジが中間宿主になります。また、アジアヒキガエルなどのカエルや淡水産のエビ、リンゴガイ(ジャンボタニシ)なども感染源になります。

どこに分布しているの?

広東住血線虫は、熱帯・亜熱帯地方の台湾、タイ、インドネシアなどの東南アジアや太平洋諸島に分布しています。これらの地方において好酸球性髄膜脳炎の患者さんの中にこの寄生虫の感染者が多く見いだされています。日本では、琉球諸島に比較的多くみられますが、日本全国の港湾などのネズミやマイマイ、ナメクジなどからこの寄生虫が検出されたことが報告されています。




日本でどれくらいの感染例があるの?

我が国では、1969年に沖縄で初めて患者が見いだされて以来、沖縄県はもとより全国各地から少なくとも54例(2003年8月現在)が報告されていますが(愛知県での患者発生の報告はありません)、死亡例は今回の症例が初めてです。




ヒトが感染するとどうなるの?

主として口からヒトの体内に侵入した幼虫は、胃や腸の壁から血液やリンパ液により全身に回り、やがて脊髄や脳などの中枢神経系に集まってきます。そして、幼虫が脊髄から脳に侵入すると好酸球性髄膜脳炎(白血球の一種である好酸球の著しい増加を伴う髄膜炎及び脳炎)を起こします。激しい頭痛、発熱、顔面麻痺、四肢麻痺、昏睡、痙攣、神経異常などの髄膜脳炎の症状が約2週間ほどの潜伏期(幼虫が体内に入ってから症状が出るまでの期間)の後に出現すると言われています。

予防はどうすればいいの?

カタツムリやナメクジ、タニシ、カエルなどを生で食べてはいけません。火を通せば安全ですが、東南アジアなどこの病気が多い地域ではこれらのものを口にしないほうが安全でしょう。ナメクジがよくつくキャベツやレタスなどの生野菜はよく洗ってから調理しましょう。また、この病気に限らず食べ物から感染する病気(O-157をはじめ多くの食中毒など)を予防するには、調理台やまな板、それに包丁など食べ物と直に接触するものを清潔に保つことが非常に大切です。 また、カタツムリやナメクジ、それにカエル等にはむやみに触れないこと。それに、このようなものに触れた後には、ここ愛知県では広東住血線虫に感染する危険性はほとんどないとは言え、よく手を洗うことを習慣付けましょう。

広東住血線虫の発育と感染のしかた



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