愛知県衛生研究所

旋尾線虫症

旋尾線虫症とは?

旋尾線虫症とは、旋尾線虫の幼虫が寄生するホタルイカを生食することで発生する食品媒介性寄生虫症です。

幼虫は体長10mm×体幅0.1mm程度と細長く、ホタルイカだけでなくスルメイカや、ハタハタ、スケソウダラなどの内臓にも寄生しています。また、ホタルイカでの寄生率は2~7%と報告されています。

ホタルイカから取り出した旋尾線虫幼虫の写真
図. ホタルイカから取り出した旋尾線虫幼虫 (引用:水産食品の寄生虫・異物検索図鑑 株式会社緑書房)

旋尾線虫の幼虫には多くの種類があり、成虫が不明であったため、ホタルイカから検出されたものは旋尾線虫TypeⅩ(テン)幼虫とこれまで呼ばれてきました。

しかし、近年の研究によりツチクジラの腎臓に寄生する線虫Crassicauda giliakianaの幼虫であることが解っています。

報告されている症例について

1969年に秋田県の腸閉塞の患者から発見され、74年に論文で報告されたのが、初めての症例です。その後80年代半ば頃から次第に症例報告数が増加しましたが、95年は全国で1例の報告にとどまりました。しかしながら、その後96年から再び患者がみられるようになりました。ホタルイカの漁期である3~6月に発生が集中しているのも特徴です。

臨床症状

幼虫移行症は腸閉塞を含む急性腹症、あるいは皮膚爬行症が大部分を占めています。

1.急性腹症

ホタルイカ摂食後数時間~2日後に腹部膨満感、腹痛が現れます。腹痛は2日~10日程度続き、嘔気または嘔吐を伴うことが多いです。腸壁が肥厚して腸閉塞を起こすものと麻痺性イレウス症状を呈するものとがあります。

2.皮膚爬行症

ホタルイカ摂食後2週間前後の発症が多く、皮疹の多くは腹部から始まります。数ミリ幅の赤い線状の皮疹が蛇行して長く伸び、また、水泡をつくることが多いです。

予防方法

ホタルイカの「踊り食い」や、内臓付未冷凍のものを刺身で食べないことです。

下記の処理をすることで安全にホタルイカを食べることができます。

(平成12年6月厚生省(現・厚生労働省)通知「生食用ホタルイカの取扱いについて」抜粋)

a.加熱処理
沸騰水に投入後30秒以上保持、もしくは中心温度で60℃以上の加熱を行うこと
b.凍結
-30℃で4日間以上、もしくはそれと同等の殺虫能力を有する条件で凍結すること
(同等の殺虫能力例:中心温度-35℃で15時間以上、-40℃で40分以上)

※一般的な料理で使う食酢、醤油やわさびを使用しても旋尾線虫幼虫は死滅しないので注意してください。

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