愛知県衛生研究所

旋尾線虫−ホタルイカから寄生虫−

イカイカイカイカ

平成12年6月20付日本経済新聞に「ホタルイカから寄生虫」という掲載記事があり、その後NHKテレビ等でも放映され、大きな注目を浴びました。また、厚生労働省からホタルイカの取り扱いに注意するよう6月21日付で通知が出されました。記事の内容は、国立感染症研究所で東京都内のスーパーで販売された富山県産の生食用のホタルイカを3回にわたり調査したところ、旋尾線虫という寄生虫の幼虫が検出された(ホタルイカ168検体中12検体、7.1%)というものです。そこで今回は、旋尾線虫について簡単に解説します。

旋尾線虫とはどんな寄生虫?

比較的最近に発見されたこの寄生虫の学名は未だ決定されていません。旋尾線虫の幼虫には多くの種類があり、ホタルイカから検出されるものはタイプⅩ(テン)と呼ばれています。

幼虫タイプⅩ(テン)は、体長約10mm×体幅約0.1mmの糸くずのような細長い虫です。この虫が中間宿主であるホタルイカやタラなどの内臓に寄生しています。ホタルイカでの寄生率は2〜7%といわれています。終宿主ははっきりとわかっていませんが、海のほ乳類か鳥類と考えられています。

ヒトに感染するとどうなるの?

腹痛を起こした男性のイラスト

ホタルイカなどの中間宿主にいる幼虫をヒトが食べると、約1〜3日のうちに腹部皮膚にミミズばれができる「皮膚爬行(はこう)症」や嘔吐、腹痛を訴え、最悪の場合には「腸閉塞」を起こすこともあります。「腸閉塞」は入院し数日の絶食で軽快することが多いのですが、重症の場合には手術が必要です。

症例はどのくらいあるの?

この幼虫は今から36年前の1969年に秋田の腸閉塞の患者から発見されたと74年に論文で発表されたのが初めての症例です。その後80年代半ば頃より次第にこの寄生虫による症例報告数が増加しましたが、95年には本症の報告は1例にとどまりました。しかしながら、その後96年より再び患者がみられるようになり、2003年までにこの寄生虫による「皮膚爬行症」が23例、「腸閉塞」24例、及びその他2例の合計49例の報告があります。

予防はどうすればいいの?

医者のイラスト

ホタルイカは大きさが手頃なサイズで、内臓も美味しいため、生で丸飲みしたり刺身で食べられることが少なくありません。この旋尾線虫の幼虫は、ホタルイカの内臓(胃・腸)の中にしかいません。したがって、完全に内臓を取り除くことにより、この寄生虫に感染する危険性をほとんどなくすることが可能です。

この寄生虫は高温には弱いため、沸騰水に投入し30秒以上、中心温度60度以上で処理すれば安全です。したがって釜ゆでなどの加工品は安心です。また、−30℃の低温で4日間以上、−35℃(中心温度)では15時間以上、−40℃で40分以上凍結処理されたホタルイカはそのまま食べても安全です。

また、イカやサバなどでよく見られるアニサキスという寄生虫は、旋尾線虫と同様に一般的な塩や酢による調理では死滅しませんが、この寄生虫も凍結処理により死滅します。これらの魚介類を生で食べるときには、これら寄生虫ばかりでなく、季節がら食中毒にならないよう、食品の衛生的な取り扱いに十分注意して、安全で美味しく、愉快な食生活を楽しみましょう。