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毒グモ (セアカゴケグモ) について


2005/08/24 更新

皆さんは“セアカゴケグモ”を覚えていますか?


2005年(平成17年)8月19日、セアカゴケグモの生息が、愛知県内で初めて確認されました。発見された場所は、中部国際空港(常滑市)の滑走路付近で、滑走路南端付近にある航空灯火の電源装置内でした。点検に訪れた電力会社の職員が2匹(メス)見つけ、保健所を経由して当所に持ち込まれました。


この機会に県民の皆様に、再度セアカゴケグモについての情報を提供します。

日本には生息しないとされていたセアカゴケグモは、1995年(平成7年)11月に大阪府の臨海部を中心とした地域で初めて発見されました。

この発見を契機として、国が中心となって緊急に実施された全国的な調査の結果、本州の主に大都市の港を中心とした地域で見つかり、東海地域でも同年12月に三重県四日市市で確認されました。翌96年(平成8年)には、和歌山県でも発見され、このセアカゴケグモが日本の各地に侵入していることが明らかとなりました。

また1995年(平成7年)11〜12月の調査では、東京都品川区、横浜市、名古屋市、北九州市、那覇市でハイイロゴケグモ(セアカゴケグモと同じ毒を持つクモ)が発見されています。

さらに、2003年(平成15年)7〜9月大阪府が実施した調査によると、同府内における生息地の面積が8年前の調査のおよそ2倍に拡大していることが明らかになりました。また、隣の奈良県における調査では、同年8月初めてセアカゴケグモが確認されました。



セアカゴケグモの特徴

セアカゴケグモ(メス) 【1目盛=1mm】

背中側が赤く目立ち(英名: Red back spider)、交尾後メスがオスを食い殺すと言う伝説に基づく「後家グモ」の意味から“セアカゴケグモ”と呼ばれています。

ゴケグモ類は、オスとメスとの寿命の違いにより、越冬に入った後では発見時にメスだけがたまたま多く発見されることから、このような名前が付けられたようです。しかし、実際は雄雌関係なく成長期の共食いは良くあるということですが、交尾しても必ずしもメスがオスを食べる訳ではありません。

セアカゴケグモは、元来は熱帯〜亜熱帯に分布し、オーストラリア、ニュージランド、ニューギニア、インドなどからその存在が報告されています。その体長は、メスでは約1cmで、全身ほとんどが光沢のある黒色で、細長い脚と腹部の背中側の中央に赤〜オレンジ色(中には黄色)の帯が目立ちます。腹部の腹面には砂時計型の斑紋を有します。これに対してオスの体長はメスの1/3以下の約3mmで、腹部は細く、その背面は灰白色で中央に縁取りのある白い斑紋があり、その両側に黒紋が2列に並んでいます。

繁殖時期は真夏で、この時期に活動が活発となり、注意が必要です。生息場所は、屋外の建物の隅、道路わきの側溝の内部や蓋の隙間、フェンスの基部やベンチの隙間、庭石・墓石の間や窪み、コンクリートの割れ目など外敵から攻撃されにくい場所にいます。セアカゴケグモ自身に攻撃性はなく、驚かされると死んだふりをするなどおとなしい性質なので、素手で捕まえようとしない限り、咬まれることはほとんどありません。



セアカゴケグモの毒

クモ毒の性状や量は種によって著しく異なります。ゴケグモ属の毒は神経毒で、咬まれると激痛を伴いますが、死亡することは非常に稀です。毒の主な症状は痛みです。他に発汗、発熱、発疹が起こる場合があります。全身症状を示す人はごく稀ですが、その多くは咬まれて3〜4時間後に、吐き気、嘔吐、めまい、頭痛、高血圧、呼吸困難、排尿困難、全身の関節痛などの全身症状を示すと報告されています。胸部の痛みは心臓発作による痛みと間違われることもあります。

最も注意が必要なのは乳幼児や老人で、症状の進行は早く、重症化しやすいとされています。幼児では熱がないのに強い痛みが突然起こり、発疹が認められれば、地域によってはセアカゴケグモに咬まれた可能性も考える必要があるかもしれません。

治療としては抗毒素の投与が行なわれます。咬まれた後できるだけ早く抗毒素を投与した方が良いことは確かですが、何時間後、何日後の投与までが有効なのか等については、ハッキリしたことは分かっていません。それは、局所の痛みや全身症状がかなりの日数継続した後に初めてセアカゴケグモに咬まれたことを気が付く例もあり、咬傷10日後に初めて気付いた例などもあることによります。

しかし、咬傷後1週間経過しても効果があったとの報告もなされています。また米国からは、クロゴケグモの抗毒素血清は咬傷後24〜48時間を経過してからの投与でも有効だとの報告がなされています。



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