愛知県衛生研究所

21世紀に発見された
ヒトメタニューモウイルスについて

2006年12月8日

ヒトメタニューモウイルス(human metapneumovirus: HMPV)は、2001年にオランダで急性呼吸器感染症患児の鼻咽腔吸引液から初めて分離された、パラミクソウイルス科に属するウイルスです。現在までに我が国を含め世界中から分離例が報告されています。新しく発見されたウイルスですが、欧米及び日本における血清抗体調査の結果では10歳以上の抗体保有率はほぼ100%となっており、多くのヒトが乳幼児期に初感染を受けていると考えられます。抗体調査の結果からこのウイルスは50年以上前からヒトの間で流行しており、従来原因不明とされていた呼吸器感染症の病原体のひとつと考えられます(呼吸器感染症患者検体におけるHMPV陽性率は10-20%程度)。

風邪を引いた子のイラスト

パラミクソウイルス科には、麻しんウイルスやおたふくかぜを起こすムンプスウイルスのほか、RSウイルスやパラインフルエンザウイルスなど呼吸器感染症の病原ウイルスが属しています。HMPV感染症の症状はRSウイルス感染症に類似しており、軽度の上気道炎から、気管支炎、肺炎まで様々です。HMPVは冬から春にかけて流行しますが、同時期に流行するRSウイルスやインフルエンザウイルスとの混合感染は重症という報告もあります。呼吸器以外に熱性けいれんや急性脳症等、神経症状も報告されており、愛知県からもHMPV感染を伴った急性脳症死亡例が報告されています(清澤ら.病原体検出情報 27: 318-319, 2006)。また、高齢者福祉施設における集団感染事例も報告されており、乳幼児や高齢者におけるHMPV感染の重要性が明らかとなってきました。

現在HMPV感染症の簡易診断キットはなく、ウイルス分離も困難なため、主にRT-PCR法によるウイルス遺伝子RNA検出が行なわれています。検出の際はF, N遺伝子における変異の少ないとされる部位を標的とします。遺伝子の系統樹解析からHMPVには2つのグループ(A,B)が存在し、さらにそれぞれのグループが2つ(A1,A2及びB1,B2)に分類可能とされています。

以上のように、HMPVは重要な気道感染症の原因ウイルスであることが最近わかってきましたが、未だ不明な点も多く、積極的な発生動向調査による実態把握が急務と思われます。