1 はじめに
麻疹ウイルスに感染する機会があった後、麻疹(はしか)を発症するか予防できるかは、各個人がウイルス抗原に対応する免疫があるか(防御抗体等を保有しているか)にかかっています。ちなみに麻疹の予防接種では、感染防御免疫を誘導する目的で、弱毒化した生ウイルスワクチンを注射しています。
毎年日本では、厚生労働省と地方自治体が協力して全国で感染症流行予測調査事業が行なわれています。愛知県においてもインフルエンザ流行シーズン前に一般県民より年齢層ごとに一定数の血清を集めて、インフルエンザや麻疹、風疹など予防接種による集団免疫が行われているウイルスに対する抗体価を測定し、免疫の状態を調査しています。
2 対象者
平成18年7月〜9月に本県において、60歳未満の健康人男女各年齢層(0〜1歳、2〜3歳、4〜9歳、10〜14歳、15〜19歳、20〜24歳、25〜29歳、30〜39歳、40〜59歳)25名合計225名から採取された血清を使用しました。全ての対象者あるいは保護者から、血清使用について書面による承諾をいただきました。
3 測定法(ゼラチン粒子凝集試験)
抗体価の測定には、16,32,64,128,256,512倍に段階希釈した血清を用いてゼラチン粒子凝集(PA)試験を行い、16倍未満(図1の左端の白い部分)を陰性、16倍以上を「陽性(免疫がある)」としました。
4 結果
2006年における県民の麻疹抗体保有状況を図1に示します。
現在の抗体保有状況:16倍以上の麻疹抗体を保有する割合は、全体では90.6%すなわち抗体陰性者が9.4%みられました。年齢階層別にみると、ワクチン未接種者の多い2歳未満は40%が抗体陰性、2歳以上においても30〜39歳をのぞく全ての年齢層に抗体陰性者がみられ、児童・生徒だけでなく大学生や社会人の成人麻疹発生が危惧されます。
抗体価の分布:麻疹ワクチンの感染防御効果は10年以上持続すると考えられていますが、低力価抗体保有者(16〜32倍 図1参照)は、麻疹の発生がさらに減少してウイルスとの接触機会がなくなると、ワクチン追加接種をしなければ今後数年間に抗体陰性になると思われます。
5 考察
以上の抗体保有状況は、現在関東で起こっている麻疹の流行や集団発生が愛知県においても起こる可能性を否定できないものです。
麻疹の予防には、抗体陰性者への麻疹風疹混合(MR)あるいは麻疹単味ワクチン接種が有効です。