愛知県衛生研究所

注意すべき蚊による感染症

2017年11月15日更新

キャンプ、花火大会、アウトドアスポーツ、ガーデニングなど、屋外活動の場で蚊は私たちを狙っています。本当に知っておきたいのは、蚊が感染症を媒介することです。近年、国内からの日本脳炎発生報告は少なくなりましたが、国際交流が頻繁になり、ワールドカップ、オリンピック、国際博覧会などの国際的な大規模イベント参加等で渡航した海外で、デング熱はじめ蚊が媒介する感染症に感染する機会が増えています。また今後は、地球温暖化の影響により蚊が生息地を拡大、増加する懸念もあります。以下に、蚊が媒介する主な感染症とその簡単な症状などを概説しますので、蚊が媒介する感染症の予防に役立ていただきたいと思います。

日本脳炎

日本脳炎は南アジア〜東南アジアを経て中国南部へ至るアジアモンスーン地帯に広く流行しています。世界保健機関(WHO)は世界で毎年少なくとも6万8千人が発病し、最大2万人が死亡すると推計しています(2015年12月現在)。先ずブタの間でウイルス感染が拡がり、媒介蚊がブタを吸血し、再度ヒトを刺すことによってヒトの間に流行がみられるようになります。多くの場合、感染はしたものの症状の出ない不顕性感染で、脳炎の発症率は感染者100〜1,000人に1人と言われています。日本でも、昭和30年代には毎年500〜1,600名程度の死亡者が報告されていました。現在では日本脳炎の発症は年間10人程度(2016年には長崎県で4例発症)ですが、重篤な後遺症が多くの回復者にみられると報告されています。東海地方では愛知県から2007年に40歳代女性1例(死亡例)、2008年に50代男性1例が報告されており、三重県で2010年と2013年に各1例の発症報告があります(2013年の報告はこちら)。

厚生労働省ではブタの日本脳炎ウイルス抗体獲得状況を調べています(愛知県も調査に参加しています)。この調査ではウイルスを持った蚊が国内で毎年発生していることを示していますので、日本国内でも感染の機会が無いわけではありません。

日本脳炎の感染リスクがある地域の地図
WHOホームページより抜粋(黄色が日本脳炎の感染リスクがある地域)
病原体
日本脳炎ウイルス(フラビウイルス科フラビウイルス属)
媒介蚊
コガタアカイエカ(主に夜間に活動します)。
潜伏期
5〜15日
症状
頭痛、発熱、悪心、嘔吐、眩暈。重症例では意識障害、痙攣、昏睡がみられる。死亡率は20〜40%と高く、生存しても後遺症が残ることが多い。
注意事項
日本脳炎ワクチンの接種をうけていない方、特に接種勧奨差し控えの影響を受けた小児等は、予防接種等の対策も必要です。夏場の薄着の季節等は特に蚊に刺されないよう気をつけることが大切です。また、雨季に東南アジアの稲作地帯へ一般観光客としてではなく、現地滞在型観光、ボランテイア活動などで出かける人は特に注意が必要で、出発前に予防接種を受けることが強く勧められますので、専門の医師にご相談ください。

ウエストナイル熱 (ウエストナイル脳炎)

ウエストナイル熱(ウエストナイル脳炎)の原因ウイルスは1937年ウガンダ共和国ウエストナイル郡で発見されました。その後アフリカ、南ヨーロッパ、中東に分布していましたが、1999年以降北米にも発生がみられるようになりました。現在は、アフリカ、ヨーロッパ、中東、中央アジア、西アジア、オーストラリア、北米等へ拡大しています。アメリカ合衆国疾病管理予防センター(CDC)によりますと、北米では2003年の大流行以降も患者報告数は増減を繰り返し、現在でも年間2,000程度の報告数があります。ウイルスは鳥と蚊の間で感染環が維持され、蚊を介してヒト、ウマなどに感染します。ウイルスに感染した蚊に刺されたとしても、多く(80%程度)の場合、不顕性感染の形をとり、次に比較的軽い症状を示す通常型がみられ、脳炎や髄膜炎などの重い症状が出現するのは感染を受けた人の1%未満とされています。

ウエストナイル熱の感染経路
(厚生労働省結核感染症課ハンドブックより)

日本では2005年にアメリカ合衆国カリフォルニア滞在中に感染したと考えられる患者1名が輸入感染症例として報告されています。国内ではウイルスを保有している蚊は見つかっていませんが、ウイルス保有蚊の侵入を防ぐ目的で空港検疫所が蚊の捕獲検査を実施し、監視体制が敷かれています。しかし、ウイルスは日本に生息する多くの蚊が媒介することが可能なことから、一度国内にウイルスが侵入すると大流行する可能性も少なくありません。万一、流行国からの帰国者や、観光客が国内でウエストナイル熱(脳炎)を発症したとしても、患者(感染者)を刺した蚊から別の人が感染する可能性はありません。(ウイルスがヒトの末梢血へ大量に出現することは少ないとの理由からほとんど起こらないと考えられています。)

病原体
ウエストナイルウイルス(フラビウイルス科フラビウイルス属)
媒介蚊
北米では30種類以上の蚊からウイルスが分離されていますが、我が国では私たちの身の周りにいるほとんどの蚊が(14種類ほどの蚊のうち、ヒト及びトリの両方を刺す性質を持つ11種類)ウエストナイルウイルスを媒介する可能性があるとされています。その中でも特にアカイエカ、チカイエカ、ヒトスジシマカが発生量・ヒト及びトリ嗜好性の点から重要視されています。
潜伏期
3〜15日
症状(現時点では、以下の症状が出ても、流行地域からの帰国者以外はウエストナイル熱(脳炎)の可能性は全くありません。)
通常型は急激な発熱、頭痛、背部痛、めまい、発汗、約半数の症例で出現するとされる紅い小丘が密生した猩紅熱様発疹、それにリンパ節腫大などです。3〜7日で解熱し、短期間で回復します。脳炎型は頭痛、高熱、頸部硬直、感覚障害、昏睡、戦慄、麻痺など重篤な症状が現れ、高齢者に多く、死亡率は3〜15%とされています。
注意事項

発生地域に渡航する場合は蚊よけスプレーを使用するなど、蚊に刺されないようにすること が重要です。

イエカ類は数km四方と広い範囲を飛翔することが知られており、カラスは毎日ねぐらと餌場を往復しているため、カラスからウエストナイルウイルスが検出された場合には相当範囲(数10km四方)にウイルスの活動が広がったと考えられます。

デング熱

デング熱は東南アジアや中・南米、アフリカ、東地中海、西太平洋などの熱帯・亜熱帯地域で流行を繰り返していますが、ここ数年世界的に発生数が激増し、 WHOによる2017年4月の推計では全世界で毎年4億人が感染し、50万人のデング出血熱が発生しているとされています。媒介蚊は、空き缶のような浅い水たまりでも発生するため、マラリアと異なり衛生状態の良い都市部でも流行し、日本人旅行者が感染する機会もマラリアよりはずっと高いと考えられます。また、感染してもかなりの割合で症状が出ない不顕性感染が50〜70%であるとされていますが、不顕性感染であっても感染源となることがあります。

蚊のイラスト

日本では、1942年から1945年にかけて長崎・佐世保・広島・呉・神戸・大阪で約20万人におよぶ流行が起こりました。その後、国内感染報告はありませんでしたが、2013年に日本を旅行したドイツ人観光者1名が発症、2014年8月下旬以降関東を中心に渡航歴が無い国内発症例が100例以上報告されました。蚊のウイルス保有状況調査の結果、東京都の公園でデングウイルス陽性の蚊が確認され、発症者の多くがこの公園若しくはその周辺を訪れていたことから、ウイルス陽性蚊が感染源となった可能性があります。この国内感染は最終的に19都府県から患者発生報告がありました。海外で感染したと考えられる輸入症例は、世界的な感染者の増加を反映するように増加傾向で、2010年以降毎年全国で約100〜350例、愛知県でも毎年約10〜20例の発生報告があります。

病原体
デングウイルス(フラビウイルス科フラビウイルス属)Ⅰ型からⅣ型までの4種
媒介蚊
ネッタイシマカ、およびヒトスジシマカ。感染者→媒介蚊→ヒト(新たな感染者)→媒介蚊という感染環を形成します。ヒトスジシマカは温帯地域や寒冷地域でも発生し、最近数十年でアフリカ、ヨーロッパ、アメリカ大陸に広がったほか、国内の生息域は年々北上して2016年には青森に達しています。
潜伏期
2〜15日といわれていますが、多くは3〜7日程度で発症します。
症状

発熱(38℃以上)、頭痛(眼球後部痛をしばしば伴う)、筋肉痛、関節痛、上肢内側に発疹が一時的に現れ、発症後3〜4日後より限局した発疹(斑状紅斑)が体幹から末梢へと広がっていきます。

一部(3〜5%)では出血傾向を主症状とするデング出血熱になり、さらに重くなると頻脈、脈圧低下などの循環障害がみられ、ショック症状に陥ります。このような重症なデング出血熱は、2度目以降の感染で発症することが多いといわれています。出血熱となった人の致死率は数%とされています。

注意事項
媒介蚊は日中に活動するため、昼間の木陰などでも刺される危険があります。予防ワクチンや特効薬はなく、流行地では蚊に刺されないよう個人による十分な対策(薬剤塗布、長袖の着用など)が必要です。

チクングニア熱

チクングニア熱は1952〜53年にタンザニアで初めて報告され、アフリカおよび東南アジア、南アジア、アフリカの熱帯地域の風土病でした。2005〜06年に、南西インド洋の島々で大流行し、ビーチリゾートで名高いこれらの観光地からヨーロッパ諸国へ帰国した人たちから感染者が報告されました。2007年にイタリア、2010年にはフランス南部でも国内発生が認められました。2013年末には新たにカリブ海地域での流行が報告され、北米・中米・南米を合わせて100万人以上の感染者が出ていると推計されています。デング熱やジカウイルス感染症と同じような症状を示し、感染経路(同じ媒介蚊)・流行地域も似ているため鑑別が難しい疾患です。

チクングニアの感染リスクがある地域の地図
WHOホームページより抜粋(斜線で囲まれた部分がチクングニアの感染リスクがある地域)

日本では2006年に初めて輸入症例2例が確認されて以来、主に東南アジアからの輸入患者報告数が増加していましたが、2014年以降は中南米での流行を反映し、同地域からの輸入症例が増加しています。2015年に17例、2016年に13例が報告されており、愛知県では2011年に2例、2013年に1例、2016年7〜8月に3例が報告されています。媒介蚊となるヒトスジシマカは北海道を除く全国に生息していますので、ウイルスが国内に侵入すると流行を引き起こす可能性があります。

病原体
チクングニアウイルス(トガウイルス科アルファウイルス属)
媒介蚊
ネッタイシマカ、およびヒトスジシマカ。感染者→媒介蚊→ヒト(新たな感染者)→媒介蚊という感染環を形成します。ヒトスジシマカは温帯地域や寒冷地域でも発生し、最近数十年でアフリカ、ヨーロッパ、アメリカ大陸に広がっています。
潜伏期
3〜12日
症状
発熱、関節痛、全身倦怠、頭痛、筋肉痛、リンパ節腫脹。発疹が多くに認められる。また出血傾向(鼻出血・歯肉出血)や悪心・嘔吐をきたすこともある。関節痛は急性症状のみならず、数か月〜数年続くことがある。
注意事項
媒介蚊は日中に活動するため、昼間の木陰などでも刺される危険があります。予防ワクチンや特効薬はなく、流行地では蚊に刺されないよう個人による十分な対策(薬剤塗布、長袖の着用など)が必要です。

ジカウイルス感染症

ジカウイルスは1947年にウガンダ共和国ジカ森林でアカゲザルから発見され、1968年にナイジェリアで行われた研究で初めてヒトから分離されました。このウイルスによる感染症は、2007年まで主にアフリカとアジアの一部地域で確認されていましたが、2007年にミクロネシア連邦のヤップ島で、2013年にはフランス領ポリネシアで流行し、2014年にはチリのイースター島での感染が確認されました。2015年には特にブラジルを含む中・南米で流行し、カリブ海地域を含めた国や地域から症例が報告されています。

ジカウイルス感染症には、ジカウイルス病と先天性ジカウイルス感染症があります。ジカウイルス病はジカウイルスの感染によって起こる後天的な感染症で、先天性ジカウイルス感染症はジカウイルスが母体から胎児へ感染して起こる感染症です。その場合、小頭症などの先天性障害が起こる可能性があります。2015年にはブラジルで150万人規模の感染者が発生し、2015年10月から2016年12月までに、小頭症が疑われる胎児または新生児10,342例が報告されました。また、2016年にはタイで2例、ベトナムで1例の先天性ジカウイルス感染症による小頭症の発症例が報告されました。日本では2013年12月に仏領ポリネシア2例、2014年7月にタイ1例、2016年2月〜2017年3月に中南米、オセアニア太平洋諸島及びベトナムへの渡航歴のある13例、計16例のジカウイルス感染症が確認されています。そのうち愛知県内では2016年3月に、ブラジルを含む中南米からの輸入感染2例が報告されています。

感染しても症状が出ない不顕性感染が約80%とされていますが、不顕性感染であっても感染源となることがあります。また、発症後、症状が認められなくなった後でもウイルスを保有している場合がありますので、注意が必要です。

病原体
ジカウイルス(フラビウイルス科フラビウイルス属)
媒介蚊
ネッタイシマカ、およびヒトスジシマカ。感染者→媒介蚊→ヒト(新たな感染者)→媒介蚊という感染環を形成します。ヒトスジシマカは日本では青森県より南の地域に広く生息し、最近数十年でアフリカ、ヨーロッパ、アメリカ大陸に広がっています。
潜伏期間
2〜12日といわれていますが、多くは2〜7日程度で発症します。
症状
軽度の発熱(38.5℃未満)、頭痛、関節痛、筋肉痛、斑丘疹、結膜炎、疲労感、倦怠感などの軽い症状が2〜7日続いて治り、予後は比較的良好です。
注意事項

媒介蚊は日中に活動するため、昼間の木陰などでも刺される危険があります。予防ワクチンや特効薬はなく、流行地では蚊に刺されないよう個人による十分な対策(薬剤塗布、長袖の着用など)が必要です。

妊娠中の女性が感染すると、胎児に感染する可能性がありますので、妊婦及び妊娠の可能性がある方は、流行地域への渡航を控えた方がよいでしょう。やむを得ず渡航する場合は主治医と相談し、蚊に刺されない厳密な対策を講じてください。

輸血や性行為など、血液や精液を介して感染する可能性がありますので、流行地域に滞在中又は流行地域から帰国した場合は、症状の有無にかかわらず、性行為の際にコンドームを使用するか一定期間性行為を控えてください。詳細は、国立感染症研究所のジカウイルス感染症関連サイト内「ジカウイルス感染症のリスクアセスメント」を参照してください。

黄熱

黄熱はアフリカと中南米の熱帯地域で流行しており、中南米では雨季に多く発生しています。特にアマゾン川流域の熱帯雨林に接した国々では毎年のように患者が発生し、旅行者の感染事例もあります。WHOの試算(2016年5月)によると、年間84,000〜170,000人の患者が発生し、最大で死者が6万人に及ぶとされています。

アフリカ:西アフリカでは2006年から大規模な黄熱撲滅キャンペーンが行われ、2015年には黄熱の集団発生は報告されなくなりました。一方で2010年以降、予防接種の行われていなかった中部、東アフリカで流行が起こるようになりました。2015年12月からアンゴラで、2016年1月からコンゴで黄熱が大流行しましたが、大規模なワクチン接種キャンペーン等の対策が行われ、流行は終息しています。しかし、アフリカでは2016年に上記以外の複数の国からも黄熱症例が報告されています。

南アメリカ:2016年12月からブラジルで流行が起こりましたが、2017年9月に終息が宣言されています。2017年に入って、エクアドル、コロンビア、スリナム、ブラジル、ペルー、ボリビア、フランス領ギニアの7か国から黄熱の発生が報告されています。

日本では第二次世界大戦終戦以後、輸入例を含めて黄熱の発生報告はありません。中国ではアンゴラでの流行に関連して2016年3月に1例目の輸入例が報告され、その後、計11例の輸入例が報告されました。

病原体
黄熱ウイルス(フラビウイルス科フラビウイルス属)
媒介蚊
主にネッタイシマカ。感染者→媒介蚊→ヒト(新たな感染者)→媒介蚊という感染環を形成します。森林地域ではサルと蚊の間で感染環が形成されています。
潜伏期間
3〜6日
症状
発熱、頭痛、悪寒、筋肉痛、背部痛、悪心嘔吐など。多くは不顕性感染ですが、発症者の15%が重症化し、黄疸や出血傾向などを来たしてショックや多臓器不全に至る場合があります。重症化すれば、致命率は20〜50%と高くなります。
注意事項
予防には黄熱ワクチン接種が有効です。接種後10日目から生涯有効ですので、黄熱のリスク国へ渡航する場合は予防接種が推奨されています。黄熱リスク国へ入国するときや、黄熱リスク国から次の国に入国するときに、入国条件として黄熱予防接種証明書(イエローカード)の提示を要求される場合があります。イエローカードの提示が義務づけられていない黄熱リスク国に入国する場合でも予防接種が推奨されています。黄熱リスク国及び予防接種についてはFORTHホームページをご覧ください。

マラリア

マラリアはアフリカ、中南米、東南アジア等を中心とした亜熱帯や熱帯地域の主として辺地で現在も大流行をしています。WHOによりますと2015年の感染者は約2.1億人、死者は約43万人で、死者のほとんどがアフリカの子供と推計されています。日本では古くから「オコリ」の名前で知られ流行を繰り返していましたが、近年は年間50〜80例の患者報告数となっています。現在では国内での感染例はなく、アフリカや東南アジアの流行地域で感染した人が日本へ帰国後、発症した輸入マラリアに限定されています。推定感染地域の流行を反映して、アフリカ地域の感染例では熱帯熱マラリアが、アジア地域の感染例では三日熱マラリアが多くなっています。2004年以降、サルマラリアによるヒト感染症の報告があり、日本でも2012年にマレーシアからの帰国者に感染例が認められました(報告はこちら)。

マラリアの治療にはクロロキンやスルファドキシン/ピリメタミン、アルテミシニン等の抗マラリア薬が使用されますが、最近では抗マラリア薬に耐性を獲得したマラリア原虫の拡散が問題になっています。

病原体
マラリア原虫(熱帯熱マラリア、三日熱マラリア、四日熱マラリア、卵形マラリアの4種に加えて、サルマラリアもヒトへ感染することが明らかになっています)
媒介蚊
ハマダラカ(主に日暮から夜明け直後までの夜間に人を刺します)
潜伏期間
国立感染症研究所及び米国CDC(米国では毎年1500人程のマラリア患者が報告されています)によると、マラリアに汚染されている蚊に刺された後、7日から30日前後に発症するとされています。三日熱マラリアの場合、典型的な症状が現れることなく一年以上経過することもあります。多くのマラリアが流行地域から帰国した後、かなり時間が経ってから発症していることになります。三日熱マラリア原虫と卵形マラリア原虫の場合には、肝細胞内で休眠体が形成され長期間経過した後再発することがあります。
症状
悪寒、戦慄と共に高熱が4〜5時間続き、頭痛、嘔吐、関節痛をともないます。熱発作は三日熱型や卵形では48時間、四日熱型では72時間、サルマラリア感染では24時間の間隔で起こります。熱帯型は明確な周期性を持っていません。特に、熱帯熱マラリアは重症化すると命に関わることも少なくないので、注意が必要です。
注意事項

東南アジアの観光地への旅行者は心配いりません。しかしながら、特に雨季にボランティア活動などで奥地に入る人は、出来るだけ蚊に刺されないために、活動時間の検討、長袖シャツ、長ズボンの着用、忌避剤(虫さされ予防剤)の使用に加え、蚊取り線香や蚊帳の使用等を考慮する必要があります。マラリアを媒介するハマダラカは夕暮れから夜明け直後まで活発な活動をして人を刺しますので、この時間の屋外での活動を最小限にし、かつ、DEET(ジエチルアミド)を含んだ忌避剤の使用が必要です。

サハラ砂漠以南のアフリカ(南アフリカ共和国の大部分を除く)で野外活動をするなど感染の危険が高い人には、発症予防のための抗生物質がありますので、専門家の医師等に御相談下さい。

アフリカ、中南米、東南アジア等を中心とした亜熱帯や熱帯地域の主として辺地を旅行、辺地に滞在した人は、マラリア流行地域を離れた後(日本へ帰国後)、半年以内に原因不明の発熱が出現した場合には、必ずこれらの地域への旅行、滞在を医師に告げて医療機関に受診することをお勧めします。

予防と対策

蚊から身を守ろう!

ウエストナイル熱、デング熱、チクングニア熱やジカウイルス感染症にはワクチンも予防薬もありませんので、自分たちで予防をしなければなりません。家屋の窓に網戸を設置することや、屋外にいる場合は長袖シャツ、長ズボンの着用、それに露出部分の皮膚にDEET(ジエチルアミド)などの忌避剤を塗るなどの防御方法をとるようにしましょう。特に流行地へ旅行をするときは蚊に刺されないよう十分な準備と注意が必要です。

厚生労働省検疫所のホームページでは海外での感染症の流行状況や予防接種等の情報提供を行っています。詳しくはFORTHホームページへ

蚊の発生を防ごう!
その地域に分布する媒介蚊を可能な限り減らすことが最も効果的です。蚊は少しの水たまりでも卵を産みますので、環境改善による蚊の幼虫発生源(空き缶、ペットボトルや古タイヤ、植木鉢の受け皿等の水溜まり)を無くすようにしましょう。

日本では新たな感染症の監視体制を強化するため、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」の一部改正を行い、ウエストナイル熱(脳炎を含む)(平成14年10月)、チクングニア熱(平成23年2月)、ジカウイルス感染症(平成28年2月)が4類感染症に追加指定されています。従ってここに掲載した4類感染症を診断した医師は都道府県知事に届け出なければならないことになっています。

当衛生研究所では、全国の地方衛生研究所及び国立感染症研究所と連携して上記の蚊媒介性ウイルスの遺伝子検査体制を整えており、黄熱とマラリアを除く5種類のウイルス遺伝子の鑑別が実施できるようになっています。