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RSウイルス感染症

2011年12月12日

RSウイルスの特徴

RS「アール・エス」 ウイルス(respiratory syncytial virus: RSV)は、乳児急性気道感染症(細気管支炎、肺炎など)の主な原因ウイルスです。名前の由来は、呼吸器(respiratory tract)感染症患者から分離され、感染細胞が多核巨細胞(合胞体syncytium)を形成するという特徴からです。RS ウイルス粒子はエンベロープをもち、遺伝子は1本のマイナス(-)鎖RNAで、RSウイルスはMononegavirales門パラミクソウイルス科(Paramyxoviridae)のPneumovirus属に分類されます。パラミクソウイルス科に属するウイルスには、古くからパラインフルエンザウイルス、麻しん(はしか)ウイルス(MeV)、ムンプス(おたふくかぜ)ウイルスが知られているほか、2001年にはやはり呼吸器感染症をおこすメタニューモウイルスが発見されました。RSウイルスにはAとBの血清型があり、さらに各血清型に多くの遺伝子型が知られています。

乳児のRSウイルス感染症は要注意

RSウイルスは接触や飛沫を介して気道に感染し、2-5日の潜伏期の後、発熱、鼻水、咳などで発症、通常1-2週間で軽快します。しかし2歳以下の乳幼児ではしばしば上気道炎から下気道炎に進展して細気管支炎、肺炎を発症し、特に6ヶ月以下の乳児では入院加療を必要とすることが珍しくありません。免疫不全児、低出生体重児や呼吸器・循環器に基礎疾患をもつ乳幼児は重症化しやすく、特に注意が必要です。

RSウイルス感染症の疫学

RSウイルス感染症は世界中でみられます。日本では主に乳幼児の間で冬季に流行し、通常10月から12月にかけて流行が始まり、3月から5月頃まで続きます。母体からの移行抗体だけでは感染防御は不十分なため、6ヶ月未満の乳児も感染・発症します。日本では2歳までにほぼ100%が初感染をうけると考えられます。麻しんやムンプスとは異なり一度感染しただけでは感染防御免疫が不十分で、何度も発症しますが、通常再感染のたびに症状は軽くなっていきます。

RSウイルス感染症は、2003年11月より新たに五類感染症の定点把握対象疾患に加えられ、全国集計が開始されました。愛知県内からは182小児科定点から患者発生報告がなされています (愛知県の感染症情報全国の病原微生物検出情報)。

診断

ウイルス分離、ウイルス抗原の検出、ウイルスRNAの検出、血清抗体価の上昇等の検査結果からRSウイルス感染症の病因診断がなされます。イムノクロマト法(http://eiken65.ddo.jp/gijyutu/20063004.pdf)を用いた簡便な迅速診断キット検査が実用化されています。この検査は2003年から3歳未満の入院患者に限定して保険適用とされていました。その後、2006年4月より入院患者に拡大され、さらに、2011年10月より一歳未満児及びパリビズマブ(下記参照)製剤の適用患者も対象となりました。保険適用の拡大により、早期診断および流行状況のより正確な把握が可能になると考えられます。

感染経路と発症予防

RSウイルス感染症は、感染者の気道分泌物への接触あるいは咳で生じた飛沫を介して感染します。接触感染の予防には手洗いが、飛沫感染予防にはマスクの着用が有効です。

2001年に日本においても、RSウイルス粒子表面のエンベロープにあるF(Fusion)タンパク質を特異的に認識するモノクローナル抗体製剤パリビズマブ(Palivizumab)が承認されました。

ワクチンの開発の努力は長く続けられていますが、実用化には至っていません。感染防御免疫の誘導が単純ではなく、ある種の感染防御反応は、かえって再感染を重症化させるため、発症機序のさらなる解明が必要です。

RSウイルスはエンベロープをもち環境中では不安定で、石けん、消毒用アルコール、次亜塩素酸ナトリウムをふくむ塩素系消毒薬などにふれると容易に感染力を失います。

RSウイルス感染症関連リンク

国立感染症研究所感染症情報センター(感染症の話)

米国CDC

(生物学部 ウイルス研究室)

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