委員会情報
委員会審査状況
経済労働委員会
( 委 員 会 )
日 時 令和5年12月11日(月) 午後0時57分~
会 場 第7委員会室
出 席 者
福田喜夫、杉浦哲也 正副委員長
直江弘文、神野博史、高桑敏直、山本浩史、山下智也、今井隆喜、
かじ山義章、鳴海やすひろ、村嶌嘉将、岡 明彦、阿部武史 各委員
経済産業局長、経済産業推進監、情報通信(ICT)政策推進監、
経済産業局技監、産業部長、中小企業部長、革新事業創造部長、
労働局長、就業推進監、
観光コンベンション局長、観光推進監、
労働委員会事務局長、同次長兼審査調整課長、関係各課長等
<付託案件等>
○ 議 案
第118号 令和5年度愛知県一般会計補正予算(第5号)
第1条(歳入歳出予算の補正)の内
歳 出
第5款 経済労働費
第142号 損害賠償の額の決定及び和解について(経済産業局
中小企業部商業流通課)
(結 果)
全員一致をもって原案を可決すべきものと決した議案
第118号及び第142号
<会議の概要>
1 開 会
2 理事に関する申合せの変更
3 議案審査(2件)
(1)理事者の説明
(2)質 疑
(3)採 決
4 一般質問
5 閉 会
(主な質疑)
《議案関係》
【委員】
2028年の技能五輪国際大会について、先月、知事の臨時会見があり、厚生労働省が2028年開催予定の技能五輪国際大会を日本・愛知に招致すること、開催地の正式決定は2024年9月にフランスのリヨンで開催されるワールド・スキルズ・インターナショナル(WSI)の総会で決定すること、そして、現在のところ、日本以外に立候補している国はないことが分かった。
そこで、立候補の締切りはいつなのか、正式な立候補の届出はいつになるのか等、改めて現在の状況や今後のスケジュールについて伺う。
【理事者】
愛知県では、技能五輪国際大会の本県での開催を継続的に国に働きかけていたが、先月10日に厚生労働大臣が日本・愛知への招致を表明し、同日、知事が臨時会見を行い、国の招致表明を歓迎し、引き続き国や関係者と一丸となって取り組んでいくと発言した。
技能五輪国際大会の招致が実現すれば、日本では4回目、愛知では初開催となる。技能五輪国際大会の運営組織であるWSIの日本における加盟組織である中央職業能力開発協会は、既にWSIに対し、立候補の関心表明を行っている。関心表明の後、WSIによる現地調査である検証訪問が行われ、開催基準を満たしているかの確認などが行われる。検証訪問は来年3月に行われる見込みである。
検証訪問の後、正式な立候補国と認められれば、来年6月に開催計画を記した提案書をWSIに提出し、9月にフランス・リヨンで開催されるWSI総会において、2028年の第49回技能五輪国際大会の開催国が決定する予定である。
【委員】
来年、2024年9月にフランス・リヨンで開催される第47回大会には、当初、日本・愛知も立候補していたが、招致合戦に敗れたと聞いている。それは、フランスが当時3回目の立候補であったことや、しばらくの間ヨーロッパでの開催が少なかったことなどを考慮すると仕方ないとは思うが、いずれにしても2028年大会の招致成功となれば、満を持しての開催になる。
これまでの大会の課題を踏まえ、どのような大会にしたいのか。
【理事者】
技能五輪国際大会は、参加国数、実施競技数が増大傾向にあり、ホスト国となるハードルが上がっていると考えられ、WSIの課題認識としては、ホスト国となる国、地域を増やすために、大会規模の抑制が必要であると聞いている。
また、我が国では、開催に当たって、近年の人件費や資材価格の高騰などの課題がある。そこで、競技や宿泊など、選手が滞在する場を空港島内に集約し、コンパクトで、今後の技能五輪国際大会のモデルとなる大会を、国とともに、運営組織であるWSI及び加盟国、地域に提案していきたい。
【委員】
本年11月17日から21日にかけて愛知県で開催された技能五輪全国大会と全国アビリンピックは大変盛況であり、愛知県選手団も好成績であったと聞いている。また、来年の2024年大会と再来年の2025年大会も愛知県で開催される。
モノづくり王国とも言われる愛知県であり、大変喜ばしいことであるが、国際大会を愛知県で開催する意義を教えてほしい。
【理事者】
本県は、日本のモノづくりの中心地であり、日本の経済や産業をリードしている。昨年開催された技能五輪国際大会では、日本全体で8個の金メダルを獲得したうち、本県選手は5個の金メダルを含む、過去最多のメダルを獲得した。
また、全国大会は、2014年度、2019年度、2020年度、2023年度と、この10年間に4度本県で開催しており、都道府県としての成績では現在19連覇中である。さらに、2024年度、2025年度も本県で開催するため、こうしたノウハウを蓄積し、2028年の国際大会につなげていきたい。
技能五輪の開催は、出場する選手や企業の技能向上にとどまらず、子どもたちがモノづくりへの関心を高める絶好の機会であり、本県に脈々と引き継がれてきた技能尊重気運を向上させ、将来の日本、愛知を支える産業人材の確保、育成につながるものである。大会開催を通じて、技能立国・愛知のモノづくりのすばらしさを次代に継承し、世界に発信していきたい。
【委員】
まずは、首都圏人材確保支援事業費の補正予算について、制度の概要と、増額になった要因を伺う。
【理事者】
移住支援金は、東京一極集中を是正するための国の制度として、国のデジタル田園都市国家構想交付金を活用して、2019年度から実施している。
東京23区に通算5年以上在住もしくは在勤する50歳以下の人を対象に、県が設置するあいちUIJターン支援センターの専用ポータルサイト掲載企業に就職する場合、テレワーカーとして移住する場合、移住後にあいちスタートアップ創業支援事業費補助金の交付決定を受けて起業する場合等に、市町村を通じて支給する。
移住者への支給額は、世帯が100万円、単身が60万円で、2022年度からは、18歳未満の世帯員を帯同して移住する場合に、子供1人につき加算を行う制度も設けられている。
今年度予算額が増額となった要因は、制度が創設された2019年度から5年が経過し、制度の周知が進んだことに加え、2021年度から支給対象者にテレワーカー等が追加されるなど、要件が拡充されたことで支給件数が増加した。さらに、2022年度から開始された子供に係る加算について、今年度から上限額が1人当たり100万円に引き上げられ、1件当たりの申請金額が増加したことも要因となっている。こうしたことから、市町村への聞き取りを基に、申請件数の見込みを当初の14件から55件へ変更した。
【委員】
説明によると、一定の要件を満たせば世帯ごとに100万円がもらえ、かつ、18歳未満の子が3人いる場合は合計で400万円もらえるなど、金額的にとても大きなインパクトがある。
申請件数の見込みを当初の14件から55件へ変更しているが、過去の実績について伺う。
【理事者】
県から市町村への補助金の実績は、制度が開始された2019年度は0件、2020年度は6件の420万円、21年度は7件の495万円、22年度は16件の1,140万円であった。
【委員】
2019年度はゼロだが、2022年度には16件と多くなり、2023年度には大幅に上回る見込みである。増額となった要因に周知が進んだことがあるが、移住支援金はどのように周知しているのか。
【理事者】
東京と名古屋に拠点を設置しているあいちUIJターン支援センターにおいて、首都圏に住む学生や求職者と、その家族に制度を紹介しているほか、東京で開催される大規模就職フェアへの出展やセミナーの開催、大学への訪問なども行い、周知を図っている。また、センター専用のポータルサイトにおいて移住支援金の制度紹介を行うとともに、県内企業の求人情報や本県の生活支援情報なども提供している。
さらに、専用ポータルサイトへの誘導を図るため、検索サイトで上位に表示されるよう工夫するとともに、民間求人サイトにセンターの求人情報を掲載し、多くの求職者の目にとどまるようにしている。引き続き、あいちUIJターン支援センターの認知度を高めながら、移住支援金制度の情報も届けられるよう、周知に取り組む。
《一般質問》
【委員】
2024年の9月にAichi Sky Expoで開催される学生フォーミュラ日本大会の招致や、大会を活用したリクルーティングの観点から、県の取組について伺う。
12月6日の本会議一般質問で福田喜夫委員長から説明があった学生フォーミュラ日本大会は、2003年に発足し、栃木県茂木町や静岡県富士市、袋井市で開催してきた。
学生が自らチームを組み、約1年かけて、フォーミュラスタイルの小型レーシングカーを構想、設計、製作することにより、学生の自主的なモノづくりの総合力を育成することを大会の理念として、これまで開催している。学生にとっては、モノづくりの本質やプロセスを学び、その厳しさや面白さ、喜びを実感できる自己能力向上の場となっており、現在では70チームほどが参加していると聞いている。コロナ禍で少し減ったようであるが、多いときは100チームほどが参加していた大会である。
企業にとっては、将来を担う有能な人材発掘の場という側面もあり、この大会の理念はまさにモノづくり愛知にふさわしいものであり、Aichi Sky Expoでの開催招致にこぎ着けたこれまでの県の取組に敬意を表する。
まず、学生フォーミュラ日本大会の招致に至った、県のこれまでの取組を伺う。
【理事者】
本県では、新たな交流による新産業の創出や既存産業の強化を図るとともに、首都圏に並ぶ交流拠点を目指すため、2019年8月にAichi Sky Expoを開業し、様々な催事の誘致に取り組んでいる。
学生フォーミュラ日本大会についても、本県で開催されることは自動車産業の振興などに寄与するものであり、本県では、主催者の公益社団法人自動車技術会に対して、Aichi Sky Expoの開業前から誘致活動を行ってきた。
その活動では、Aichi Sky Expoの特徴である約4万平方メートルの屋外の多目的利用地と屋内の展示ホールを一体的に利用できるメリットをPRするほか、福田喜夫委員長の一般質問にもあったとおり、開業前から主催者に会場を視察してもらうなど、積極的に誘致を進めてきた。開業以降は、運営事業者と県で一丸となって誘致活動を重ね、その中で、大会参加者の熱中症対策、大会スポンサー企業の出展場所の確保、知事賞など特別賞の提供など、主催者の要望に対応する提案を行ってきた結果、2024年にAichi Sky Expoでの開催が決定した。
今後も引き続き、運営事業者とともに主催者のニーズに丁寧に対応することや、周辺の自治体にも協力を求めながら、学生フォーミュラ日本大会がAichi Sky Expoで円滑に開催されるよう支援していきたい。
【委員】
前回は静岡県袋井市で開催した。レーシングカーの組立ては、今まで屋外で行われており、毎年、大変暑い時期での開催は、参加学生にとっても熱中症等の負担になっていたため、国際展示場内で組立てができるのはとてもよい。
また、この愛知、日本の真ん中で、空路、鉄路、陸路ともにアクセスがよい条件を生かして、国内のチームだけではなく、いわゆる先進国で3強と言われているアメリカ、ドイツ、日本や、近年参加者が増えている中国や台湾のチームなど海外からの参加も、Aichi Sky Expoで開催することで、今まで以上に期待できる。また、開催期間が6日間あり、海外や全国から、若年層や学生に愛知へ足を運んでもらい、本県の魅力を知ってもらえることは、地域振興につながるため、今後も引き続き、学生フォーミュラの大会が愛知で開催されるよう取組を行ってもらいたい。
そして、少子化による学生の減少に加えて、近年の若者の理科離れ、車離れなどの深刻な状況は、日本または本県の自動車産業にとって、将来の国際競争力の低下など、優秀な技術者の人材不足につながりかねないと危惧している。
こうした大会を契機に、学生たちが実際に物に接して、物をつくり、技術の理解を深めてもらい、実践的な能力を養って、より高いレベルに意欲的に取り組んでもらいたい。また、チームとして喜びを分かち合うことができる、この学生フォーミュラ日本大会2024を私も全力で応援していきたい。
最後に、学生フォーミュラ日本大会を活用して、県内の自動車産業をはじめとしたモノづくり企業のリクルーティングにどう取り組んでいくのか。
【理事者】
まず、製造現場の人手不足の状況であるが、2022年度ものづくり白書によると、製造業の就業者数は、2002年から2021年までの20年間で157万人減少している。特に34歳以下の若年就業者数が121万人減少し、65歳以上の高齢就業者の割合が4.7パーセントから8.7パーセントに上昇するなど、製造現場の高齢化と若い人たちを中心とした人手不足が深刻な課題となっている。
また、自動車産業においては、EVシフトやカーボンニュートラルなどの新しい課題に対応するためには、例えば、金属やリチウムイオン電池のリサイクルや、再生電池の他産業への利活用などについて、車の設計段階から考慮に入れる必要があり、機械工学系の人材だけではなく、化学系の人材やデジタル人材が必要とされている。
こうした現状を踏まえると、学生フォーミュラに参加する人々は、もとから自動車に興味を持ち、自動車に関わる多くの知識を持った貴重な人材であるため、我々としても、自動車産業をはじめとしたモノづくり企業に就職してもらいたい。
そこで、学生フォーミュラ日本大会においては、会場に愛知県内の先進的な中小企業のブースを設置し、イベントに参加する優秀な学生に対して自社のPRをできるようにするなどの工夫を、主催者である公益社団法人自動車技術会と連携しながら検討したい。
【委員】
そういったブースもすばらしい取組だと思うので、私も現地へ見に行きたい。
最後に要望するが、学生フォーミュラ日本大会が2003年に開始される22年前、1981年にアメリカで学生フォーミュラSAEという前身的な大会を発足している。これは、アメリカが自動車産業で我が国に追い抜かれたその翌年に、教室の中だけでは優秀なエンジニアは育たないと、危機感をあらわにしたプログラムである。アメリカも必死である。本県が中心になって、日本の自動車産業を盛り上げてもらいたい。
余談だが、1990年、私は中学生であったが、鈴鹿サーキットでのアイルトン・セナとアラン・プロストの壮絶なレースを、実際に足を運んで見た。F1のすごさや技術に大いに感動し、中学校のときにすぐに免許を取りたい、マニュアル車を運転したいと思った。最近では、残念ながら、若者の運転免許の取得率が低下しており、ほとんどがオートマチック限定免許を取得していると聞いている。
こうした学生フォーミュラのような機会を通じて、もっと自動車に興味を持ってもらい、本県からさらに優秀な自動車エンジニアが誕生する機会につながることを期待する。
【委員】
大きく二つ質問する。
まず、アフターコロナとはいうものの、エネルギーの価格高騰や原材料高等で、回復の足並み状況がままならず、足並みがそのまま止まっている中小企業者への支援について伺う。
コロナ禍における資金繰り対策として実施した新型コロナウイルス感染症対応資金、いわゆるゼロゼロ融資について、返済が始まっている中小・小規模企業もあるが、制度の開始から3年を経て据置期間の終了に伴い、今年度から返済が本格化していると認識している。
そこで、現在のゼロゼロ融資の返済状況について伺う。
【理事者】
本県では、コロナ禍における資金繰り対策の一つとして、2020年5月から2021年3月末まで、全国統一制度である新型コロナウイルス感染症対応資金、いわゆるゼロゼロ融資を実施し、約8万7,000件、1兆4,680億円と、大変多くの事業者が利用した。
この融資制度は、最大5年の据置期間を設定することができるが、本県の場合、据置期間2年以内が約52パーセント、3年以内が約40パーセントであり、既に返済中も含め、大半の事業者の返済が今年度本格化する。
直近の10月末時点の融資残高は、約5万8,000件、7,418億円と、当初の融資実績と比べて約2万8,000件、7,262億円減少している。これは、件数で約33パーセント、金額で約49パーセントの減少率であり、件数と比べて金額の減少幅が大きいことから、制度の終了からこの2年半で、比較的大口の利用者の返済や借換えなどにより減少したものと考えられる。
【委員】
地域を歩いていると、コロナ禍は乗り越えたといえるが、コロナ禍後の生活様式の変化、人手不足及び原材料高の影響もあって、中小・小規模企業の経営の回復状況はまだまだである。
そこで、据置期間終了に伴い、本格化するゼロゼロ融資の返済に不安を抱えている中小企業者に対して、県としてどのような対応を行っているのか。
【理事者】
本県では、ゼロゼロ融資の返済に不安を抱える中小企業者の声を受け、昨年10月に、独自のサポート資金(新型コロナ借換)を創設した。さらに、既存のサポート資金(経営改善等支援)の融資限度額を1億円に引き上げるとともに、本年1月に、売上高の減少要件を15パーセント以上から5パーセント以上に緩和し、利益率の減少を対象に追加、借換えの特例を設ける見直しを行った。なお、サポート資金(経営改善等支援)は、本年4月以降、サポート資金(伴走支援)として引き続き実施している。
これら、ゼロゼロ融資の借換えに対応する二つの制度は、いずれも据置期間が5年以内で、特に新型コロナ借換は最長15年の融資期間に対応しており、借換えにより月々の返済負担が軽減されるほか、据置期間の再設定により、経営の改善や今後の事業の方向性を検討する時間的な余裕が生ずるといったメリットが見込まれる。
なお、これら制度の融資実績は、2022年度が合わせて6,347件、約1,209億円、制度融資全体の実績に対する構成比は45パーセント、2023年度が10月末時点で7,585件、約1,520億円、構成比が68パーセントと、ゼロゼロ融資の返済時期の到来に伴う借換え需要を背景に、利用が大きく伸びている。
このほか、金融機関や県信用保証協会に対し、夏季や年末、年度末の資金需要期に合わせて定期的に金融の円滑化を要請しているが、直近では、12月5日付けで知事名の文書を発出し、これら制度の周知とともに、条件変更などの相談に、各事業者の実情に応じて柔軟かつ積極的に対応してもらうよう要請を行った。
本県としては、今後も、経済環境の動向等を注視しつつ、こうした取組を通じて、物価高などの影響により依然として厳しい状況にある中小企業者の資金繰りを引き続きしっかりと支援する。
【委員】
10月25日に財務省が全国の景気判断を発表した。そこには、全国的には物価上昇や海外経済の減速等の影響が見られるものの、緩やかに回復しつつあるとあった。
そこで、県は、県内の中小企業の景況感をどう認識しているのか伺う。
【理事者】
県内の中小企業の景況感については、四半期ごとに中小企業景況調査を実施している。その結果では、中小企業の景況感を示す業況判断DI、これは、よいと回答した企業割合から悪いと回答した企業割合を差し引いて算出するものであるが、直近の7月から9月期がマイナス24.2ポイント、前期実績の4月から6月期がマイナス21.5ポイント、それから10月から12月期の来期見通しがマイナス16.4ポイントとなっている。
これまでの推移では、コロナ禍で最悪期となった2020年4月から6月期のマイナス80.0ポイントから急回復しており、2022年1月から3月期には、ロシアのウクライナ侵攻による原油・原材料高を受けて、マイナス36.5ポイントまで下振れしたものの、今年5月、新型コロナウイルス感染症が5類になって以降、マイナス幅が20ポイント前半で推移していた。中小企業の景況感は、足踏みしながらも緩やかな回復傾向と判断している。
【委員】
11月2日に閣議決定されたデフレ完全脱却のための総合経済対策に、重点支援地方交付金の追加が盛り込まれたことを踏まえて、令和5年度の補正予算第1号において、約1兆6,000億円が追加計上された。
そこで、私たち公明党愛知県議員団は、11月29日に、物価高騰により厳しい状況にある県民や事業者を引き続きしっかりと支えるため、この重点支援地方交付金を活用して物価高騰対策を講じるよう、大村秀章知事に対して要望した。
重点支援地方交付金は、エネルギー、食料品等の物価高騰の影響を受けた生活者や事業者に対し、地方公共団体が地域事情に合わせて必要な支援をきめ細かに実施できるよう、臨時交付金の中に創設された交付金である。今般の経済対策において、具体の対策の早期執行を上げている趣旨を鑑みて、本県においても、この交付金を活用した対応を早期に行う必要があると考える。
そこで、原油・原材料価格高騰等の影響等により、依然として厳しい状況にある中小企業等に対し、県はどのような資金繰り支援を考えているのか。
【理事者】
本県ではこれまで、令和3年11月、令和4年6月と9月、令和5年5月の計4回、補正予算を議決してもらい、原油・原材料価格高騰の影響を受けている中小企業者に対して県独自の資金繰り支援策を実施してきた。具体的には、売上原価の上昇により収益が悪化している中小企業者を対象とした既存の融資制度、サポート資金(経済対策特別)に、県が信用保証料の2分の1を補助する原油・原材料高緊急対応枠を設け、借入れに係るコストを軽減することで、厳しい状況にある中小企業者の資金繰りを支援してきた。
この制度の融資実績は、第1回から4回までの累計で、件数が6,929件、金額が約1,147億円、保証料補助額は約28億円と、同時期の融資実績全体の約2割を占めるなど、幅広い業種の多くの中小企業者が利用しており、資金調達の円滑化に寄与できたと考えている。
なお、原油・原材料高緊急対応枠の取扱期間は、本年9月29日までで一旦終了しているが、本県としては、引き続き経済環境の動向等を注視しつつ、制度の再開を含め、依然として厳しい状況にある中小企業者の資金繰り支援策を検討していく。
【委員】
それでは、依然として厳しい状況にある中小企業の資金繰り支援策について、今回の重点支援地方交付金等の有効な活用を要望する。
続いて、本県には、就労をはじめとする障害者の社会参加に資する特筆すべき活動に、アール・ブリュットに係る活動、いわゆる障害者アートがある。福祉局が中心となって開催してきたあいちアール・ブリュット障害者アーツ展は、10周年を迎えて、新たな段階を迎えている。同展の優秀作品等が、一般社団法人アティックアート等の仲立によって企業のノベルティーグッズに採用されるなど、障害者の収入につながっており、令和5年8月までのデータによると、同展を代表する障害者アーティスト22人が12の企業に就職した事例もあった。
私は、令和2年11月定例議会の本会議、併せて令和5年3月の福祉医療委員会における一般質問において、障害者アートは障害者の新たな就労形態として全国的に注目されていることから、本県の障害者のアート雇用の広がりに期待を寄せてきた。その中で、県の障害者アート活動をきっかけに知り合った元県職員とイベント会社の間で、名古屋競馬場をめぐる贈収賄事件が発生したことは誠に遺憾である。その上で、元職員が県の障害者アートの振興に係る中心的な人物であったことから、本県の今後の障害者アートの広がりが停滞するなど、障害者のアート就労に支障があってはいけない。
そこで、障害者のアート雇用について伺う。一つ目は、新たな就労の形としての障害者のアート雇用の可能性をどのように捉えているのか。
【理事者】
アート雇用の可能性だが、アート雇用は、絵を描くことなどが得意な障害者が自身の創作活動を業務として企業と雇用契約を結ぶもので、自宅等で創作活動を行うことができるため、在宅勤務が可能となる働き方である。雇用された障害者は、企業の名前を明示して作品展などに出展することで企業のPRを行い、作品を自社のノベルティーに活用することなどを主な業務としている。
アート雇用は、障害者の多様な働き方の一つであり、通勤が困難であったり、対人関係の不安や障害などの理由により、在宅勤務であれば働くことができる障害者の雇用機会を増やすことにつながる。雇用された障害者は、自身の得意分野を仕事に活かすことができ、アートを通じて、障害のある人の社会参加と障害への理解促進を図る一助ともなっている。
こうしたことから、アート雇用は障害者の活躍の場を広げることにつながっていると認識している。
【委員】
これまでも県は、アート雇用について、イベント等で周知してきたと承知しているが、障害者のアート雇用の周知、啓発の取組状況について伺う。
【理事者】
アート雇用を広く周知、啓発する取組としては、大学等卒業予定障害者就職面接会や障害者雇用促進トップセミナーにおいて、求職者及び企業経営者や人事担当者にアート雇用を知ってもらうため、チラシを活用し、周知を行っている。
加えて、障害者雇用に取り組む企業の相談窓口であるあいち障害者雇用総合サポートデスクにおいて、多様な働き方の一つとして企業に提案しており、アート雇用で働く障害者を紹介する動画もホームページで公開している。また、ハローワークと合同で、サポートデスクが企業訪問したときにも機会を捉えて、在宅勤務が可能となるアート雇用を紹介している。さらに、あいちアール・ブリュット障害者アーツ展で行われる障害者雇用促進セミナーにおいて、サポートデスクの支援内容について講演を行い、周知啓発と雇用促進に取り組んでいる。
【委員】
冒頭で話した汚職事件に関するマスコミ報道によると、11月11日付けの中日新聞朝刊の1面の記事には、容疑者が県職員を辞めて注力した障害者アートの分野で利益を出すことは簡単ではない、近年は企業による障害者アートの活用が進むが取組は一部にとどまる、障害者アートの活動は続けることが大切であるが、続けるためには資金が必要になると、業界の関係者は指摘する、とあった。
そこで、最後に、障害者雇用全般に対する課題、そして、障害者のアート雇用に対する課題及び取組状況について伺う。
【理事者】
障害者雇用における課題は、企業の障害者雇用への理解促進と障害者の特性や希望を踏まえたマッチングの難しさ、採用後の雇用管理を含めた職場定着支援にあると認識している。
このため、県では、あいち障害者雇用総合サポートデスクにおいて、採用前の受入れ体制から採用後の定着までの相談対応や、企業に出向いての定着支援など、障害者雇用に取り組む企業に寄り添ったきめ細かな支援を行っている。さらに、在宅勤務であるテレワークについても、障害者雇用を考える企業に提案を行っており、テレワークで行う職場実習先を開拓している。実習を行うことで、企業及び障害者がテレワーク勤務のメリット、デメリットを認識してもらい、よりよい雇用に結びつけることができるよう支援している。
また、アート雇用の課題としては、認知度がまだ低いことであると考えており、より多くの人に知ってもらえるよう幅広く周知することが必要である。そのため、障害者就職面接会やセミナー等で周知を図るほか、あいち障害者雇用総合サポートデスクのホームページでアート雇用の事例動画を発信し、企業に雇用の選択肢の一つとして紹介している。
今後も、愛知労働局と連携しながら取組を進め、障害者の活躍促進を支援していく。
【委員】
様々な取組をしていると理解した。何年か前に話したときは、アート雇用についての取組は緒に就いたところだと思ったが、今の話を聞くと、少しずつ前に進んでいると思う。
障害者アートが就労につながるための課題をいろいろと、今までの知見も含めて調べてみた上で、チャットGPTを使って課題についてのQ&Aをやってみた。
今まで勉強した感覚で、このチャットGPTを使ったQ&Aはしっかりしていると思ったため、少し紹介したい。幅広く障害者アート雇用を考えていかないと就労につながらないことが明確であるため、要望も含めて伝える。
どういう課題があるか、チャットGPTは五つ答えた。
一つ目は、教育とトレーニング。障害者がアートにおいて高いスキルを磨くための教育とトレーニングが必要である。これは、特別なニーズに対する教育プログラムやワークショップを通じて実現できる。教育的な話である。
二つ目は、市場アクセスと流通。障害者アーティストの作品を市場に出すための流通チャンネルや、プラットフォームの確立が必要である。オンラインマーケットプレイスやアートフェアへの参加が有効な方法である。
三つ目は、社会の認知と支援。社会全体の障害者アートに対する認知を高め、支援を集めることが重要である。メディアや公共のイベントを通じて、障害者アートの認知度を上げることが効果的である。
四つ目は、障害に対する配慮。障害のあるアーティストが快適に作業できるように、適切な作業環境やアクセシビリティーを確保することが重要である。テレワークの話にもつながる。
五つ目は、資金調達とリソース。アート活動を支えるための資金調達とリソースの確保も重要である。これには、助成金、スポンサーシップ、クラウドファンディングなどが含まれる。
就業促進課ができることは、その中の一部分かもしれない。その上で、福祉局を始め他部局とも連携しながら、広い意味で進めていかないと障害者雇用が進まないのも事実である。大きな視点も持ち、横串を刺しながら今後頑張ってもらいたい。
【委員】
産業技術センターについて伺う。
経済労働委員会は県外調査で、11月7日に鹿児島県工業技術センターを訪問した。ここでは、ものづくりDXラボを立ち上げ、力を入れていたため紹介する。このような技術センターはモノづくりの基盤であり、日本一のモノづくり県である本県では、特に重要であると感じた。
私は、今年の8月に、豊田市にある知の拠点、あいち産業科学技術総合センター本部と、刈谷市にある産業技術センターを訪問し、活動状況等の説明を受けた。
このような技術センターや試験場が、県内には8か所あり、そこでは、主に中小企業からの依頼試験や技術相談を通じて技術支援を行っていると聞いたが、この依頼試験の利用状況はどのような形になっているのか、前年度と比較して、どのような傾向があるかを伺う。
【理事者】
県内8か所の技術センター、試験場の今年度前期4月から9月までの依頼試験の実績は、7万5,156件であり、前年同期と比べて10パーセントの伸びとなっている。利用企業については、依頼試験の手数料の収入ベースであるが、中小企業が57パーセント、大企業が40パーセント、残りの3パーセントは大学の利用となっている。
利用状況として、1位が金属製品製造業、2位が輸送用機械器具製造業、3位がプラスチック製品製造業である。神野博史委員が訪問した刈谷市にある産業技術センターの依頼試験の件数は、今期の上半期で3万6,916件、前年同期17パーセント増であり、中小企業の利用が62パーセント、大企業が37パーセントとなっている。
【委員】
答弁にあったように、依頼試験の実績が、全体でも10パーセント、また産業技術センターでは17パーセントも伸びており、大きな需要があると認識している。
豊田市にある本部と、刈谷市にある産業技術センターを訪問したときに気づいたが、蛍光エックス線分析装置のように、二つのセンターに両方配置されている機器があるが、依頼試験や技術支援を利用するユーザーである企業は、どのように二つのセンターの機器を使い分けているのか。
【理事者】
各センターの経験豊富な職員が、利用者の要望を聞いた上で、必要に応じてセンターを紹介している。使い分けについては、電話等で近くの技術センターに問い合わせてもらえるとよい。
大きく分けると本部では、ナノレベルの計測を行うための高度な分析機器や金属3Dプリンターなどの最新の試作機器を備え、先端的なモノづくりの支援を行っている。
産業技術センターは、基本的に、製造現場での技術課題や不良品の原因調査など、主に製造現場レベルでの技術相談に対応するため、汎用の分析機器や材料試験機を備えている違いがある。
例えば、蛍光エックス線分析装置だと、本部の機器は、20マイクロメートルのサイズから測定できるが、産業技術センターでは、同じ機器ではあるが、100マイクロメートル以上のサイズとなる。また、測定可能な元素の種類も、本部の装置のほうが多い。また、依頼試験手数料は、本部の機器のほうが精度が高いため産業技術センターより高く設定されている。そういう違いもあるため、利用する企業は一度問い合わせてもらえるとよい。
【委員】
産業技術センターは、地域のモノづくりでいろいろな中小企業が利用すると聞いている。
訪問の際に、かなり古い機器で分析を行っているものもあったが、企業からの分析評価のニーズに十分応えられているのか。
【理事者】
古い機器であっても、機器の校正、点検、保守を定期的に行い、分析結果の信頼性向上に努めているため、おおむねニーズには対応していると考えている。
例えば、先ほどの蛍光エックス線分析装置が産業技術センターと本部にあるが、産業技術センターの装置は、15年前に導入した装置ではあるが、2021年に内部の主要部品である検出器の交換修繕を行っている。万が一、産業技術センターで対応できない場合は、本部や他のセンターと連携して対応する。
分析装置の更新は、企業や業界からのニーズ、老朽化や故障による依頼試験への影響、新規の需要見込みなども踏まえて、県費に加え、競輪の収益を財源とする公益財団法人JKAの補助金や、国の補正予算等を利用して、計画的に更新整備を行っている。
ニーズに対応する点では、所管する8か所の技術センター及び試験場では、従来から、技術相談・指導、依頼試験、研究を3本柱として行っており、地域のモノづくり企業に寄り添った取組を心がけている。今後もユーザーのニーズに応えられるよう、ユーザーの目線に立って、高度化や多様化する企業の技術開発に丁寧に対応する。
【委員】
今回の視察で感心したことが二つある。一つは、センターで働く技術者が、当初は素人であったが、徐々に経験を積むことによってベテランになっていくこと、もう一つは、ただ企業から依頼試験を受けるだけではなく、企業に提案しており、すばらしい取組である。同時に、愛知県は45年連続、製造品出荷額等全国1位であるが、産業技術センターなどの機関が産業基盤を支えていることである。
視察先で燃料電池に関する装置とプラスチックの伸びを測定する装置、金属の混入調査をする装置、包装材の圧縮や振動試験装置といった機械装置を見たが、株式会社堀場製作所製だったと思うが、20年ほど前の非常に古い装置があった。先ほどの話では、機能には問題ないとはいえ、素人から見ると、新しい機器のほうが正確に分析できると思う。中小企業の人が来ても、とても古いと思われないよう、順繰りに新品に替えてもらいたい。
また、施設の廊下や部屋の中も、雨漏りするところがあったと聞いた。中小企業の人が利用するのに雨漏りしてはいけないので、十分に補修等の維持管理をするよう要望する。
【委員】
先日、日本経済新聞に、日本がGDPでドイツに抜かれたとの記事があった。日本の人口は1億2,000万人で、ドイツは8,000万人である。ドイツは20年ほど前から、シュレーダー首相の社民党政権で、インダストリー4.0というデジタル化を始めた。途中でメルケル首相の保守政権に替わっても、ずっと継続している。当時からリスキリングはどんどんやっていた。ドイツの商工会議所は国家機関であり、一旦就職して、自分の希望に合わないとか、やりにくいことがあると、商工会議所でリスキリングして、違う職場へ行く。当時、このままでは日本は抜かれると思った。そして、その証拠に抜かれた。
今度はインドに抜かれるとの話が出ている。インドは人口が14億人もおり、当然GDPで抜かれるだろうが、人口5,000万人の韓国にも個人のGDPは抜かれている。国のGDPは少し差があるが、いずれ抜かれてしまう可能性がある。
日本は、デジタル化ができていないため、1人当たりの生産性が上がらない。一方、大企業は金があるから、どんどん現場をロボット化している。問題はバックオフィス、事務や営業などの関連業務が6割から7割だと言われており、つまり、中小企業はデジタル化しないがために余剰人員を抱えることとなり、給料が上がらない図式になる。
安倍政権が異次元の金融政策として、国債を全部買い上げ、中小企業の支援策につながったが、そのことで、逆にイノベーションが起こらなかった。そんなに無理しなくても維持できる、もうかることで技術開発が遅れたことが原因だと、ある学者が言っていたが、そのとおりだと思う。
構造改革し、デジタル化によって効率化を目指す、データをAIに分析させて、そのデータによって新しい事業、ビジネスを生み出すのが、これからの日本の役目である。ところが、成功事例があったおかげで、ITを軽視してしまった。二十数年前にIT社会形成基本法ができたが、中途半端に終わり、そのツケが今、回ってきている。このことにもっと衝撃を受けて進めないと、日本にはもっと大変なことが起きる。周辺の国、アジアだけでも中国も韓国も台湾も、今度はインドもデジタル化はどんどん進んでいく。
そこで、あと10年もたつと数十万人のIT人材が枯渇する、足りないと言われている。愛知県でも数万人が必要であり、その人材をどこへ求めるかというと、私はインドであり、ベトナムであると言わせてもらっている。同時に、中小企業の経営者に対して啓発し、デジタル人材をどんどん取り込んで構造を変えていかない限りは、日本の円安は戻らないし、浮上しない。
ドイツの例から見ても、国のやることが中途半端である。本当の危機感を持っていない。先ほど神野博史委員から、45年間、製造品出荷額等が第1位だと話があったが、2番目が神奈川県で17兆円から18兆円であるので、圧倒的な愛知県がしっかりしないと、日本経済はパニックになる。
いつも私はデジタル化と言うが、教育をしようとしても、これから10年、20年かかる。そこで、ITの高度な技術を持ったインドやベトナムに人材を求めるべきだと盛んに主張しているが、どのような取組をしているのか。
【理事者】
まず、課題認識として、分厚い産業集積を誇る愛知県の根幹をなす製造業、中でも、それを下支えする中小企業の生産性を、IoTに加えて、バックオフィスのデジタル化によって生産性を向上することは、焦眉の課題と認識している。
現在の取組では、例えば、情報セキュリティ対策や診断も含めた相談窓口を設置し、伴走支援するとともに、パイロットプロジェクトの実施や拡散、さらには、本格導入や横展開に向けた補助制度の創設など、中小企業を支援する取組を推進している。
一方で、デジタル人材の量と質の両面で不足があり、それを外国人材で補うことが課題として指摘されている。しかしながら、外国人材を受け入れる場合には、様々な課題もある。例えば、受入れ体制の整備、企業の受入れニーズの有無、その対応の確認やマッチング、また、中小企業等がデジタル人材を、単純労働者としてではなく、適正な処遇で招聘するという心構えの重要性の涵養については、実際に雇用した後も、例えば、インド人は、ジョブホッピングによりキャリアアップを図っていく習性があるので、そういった人材との間でウィン・ウィンの関係を維持しながら雇用関係を継続していくなど、様々な課題もハードルもあるのが事実だと認識している。
そこで、県としては、例えば、インドのデジタル社会や企業の取組状況、人材育成に加えて、将来の連携可能性について、各方面に情報共有を図るために、県内企業を対象としたセミナーの開催を検討しているとともに、あいち外国人材適正受入れ・共生推進協議会の場も活用しながら取組を実施している。
また、求人企業を支援するために配信しているメールマガジンがあるが、その登録企業等を対象にして、外国人デジタル人材の雇用ニーズの可能性を調査したいと考えている。そのような形で中小企業の招へいの可能性を探りながら、来年10月に開業するSTATION Aiには先進的なスタートアップ企業が多数入居するため、そこでの活用も並行して図っていきたい。
このように、県において様々な取組や検討を行っているが、情報通信(ICT)政策推進監の立場から、部局の枠を超えて、垣根を越えて必要な調整や助言等を行い、全庁が連携する形で、デジタルで生まれ変わる愛知の実現に向けて引き続き取り組む。
【委員】
あらゆることを努力してもらい本当にありがたい。来年できるSTATION Aiも画期的である。
GAFAがネット社会を制覇したといっても、広告と小売である。全体の情報量の8パーセントで、その他92パーセントのサービスやモノづくりや農業など、あらゆるものに情報はある。だからこそⅠoTで結べば、新しいビジネスになる。
いろいろなアプリができており、ほとんどはソフトである。SaaSやフィンテック、IoTは、徹底されていない。そこでもっとスタートアップが出てくる必要があり、簡単にⅠoTができるローコードやノーコードがあるので、現場で働く人たちに簡単にできる技術があるから、そういう技術を持たなければならないという意識を持ってもらう、との話を、今の東芝の島田太郎社長に聞いたことがある。そのような時代のニーズがあるため、ぜひとも中小企業、特に経営者に啓発をする。内省的に伴走していくためにも、早くからやっているインドに学ぶべきである。
今、日本はマイナンバーカードの紐づけで悩んでいるが、インドは3年で、顔認証と両手の指紋と虹彩を使って、14億人のうちの13億人を紐づけしたそうである。そういうIT企業はある。そういう時代である。数学は強く、英語も強く、平均年齢が27歳、28歳である、IT人材が、年間何百万も欧米へ行っている。だからインドやベトナムに人材を求めるべきである。経済産業局と労働局と一緒になって、県を挙げてやらないと、大変な時代がもう来ている。
構造改革をして、余剰の人員をリスキリングし他の職場へ移動してもらう。労働の移動をやらないと本当に成り立たない。そうすることで人手不足も多少補える。今、50万人の若者が、オーストラリアやカナダにアルバイトに行っている。日本は人手不足である根本はそこにある。
新しい産業をどんどん生み出さないといけない。イノベーションを愛知県がやらない限り、日本の経済は浮上できない。インバウンドで4,000万人来たと喜んでいても、貧乏な国で、安いから来ているだけである。そのことを、共通課題として取り組んでいかなければならない。
【理事者】
製造業でいえば、今までは親方の経験と勘と度胸などで乗り切った部分があったが、それも限界に来ており、技能継承を含めて、デジタル化、見える化して、形式化していく必要がある。
製造現場のデジタル化は、よくオペレーショナルテクノロジー、OTというが、ITとは少し違い、生産ラインをいかに効率的に回すか、アクチュエーターの制御技術など、いわゆるクラウドでデータを管理して一括的に情報処理するというよりは、むしろ、エッジコンピューティングのような、現場で課題解決を注視して対応するところがあり、それは多分に、情報漏えいさせない、生産ラインを止めないところにある。経済産業局も、いろいろな伴走型の実証実験などをしながら、生産現場のITの高度化をやっているが、今は、ブロックチェーンや、生成AI、さらに新しい技術などもどんどん出ているため、そういう技術を製造現場にどうビルトインしていくのか支援、研究していく必要がある。
また、大曽根にある三菱電機株式会社名古屋製作所の大きなFA(ファクトリーオートメーション)の工場の人などに聞くと、製造の大手を含めて、工場現場のIT化は言うほど易しくなく、昔からの経験と勘ではないが、生産ラインごとにそれぞれのシステムが入っており、それを統合していくことは、今まで、それぞれの製造分野ごとに成功体験もあり、結果を出しているところもあって、なかなか、それを一括してIT化していくのが難しいと聞くため、やはり経営層のITリテラシーを高めて、トップダウンでやっていかないとなかなかうまくいかない。
ITというのは、部分最適、いわゆる生産ラインや事業部ごとではなく、会社を挙げて、ITの力を使って、全体最適で最高の生産性を上げる。それで初めてITのいいところが出るため、それぞれの事業部、ひどいところは生産ラインごとにシステムが違うなどして、なかなか統合が難しい。その場合に何が起きるかというと、部品の品番のつけ方も全部違うため、生産ラインが効率化していかないとの話は三菱電機株式会社名古屋製作所でもある。
トップダウンで、経営層にリテラシーを高めてもらい、号令をかけてもらって進めていく必要がある。我々もコンソーシアムをつくるなど、いろいろな形をつくりながら、いろいろな人に入ってもらい、中小企業のITの向上ももちろん取り組むが、大企業を含めて、愛知県全体のITリテラシーを高めて、全体最適な形で生産性を高める必要がある。より高度なITを使いながら、生産現場の高度化を図っていくために、県でも、できることを一生懸命やっていく。
【理事者】
中小企業においても、デジタル技術の導入で生産性を高めていかなければならないと認識している。中小企業のデジタル化と一言で言っても、いきなり高度なデジタル人材を連れてきても、中小企業の事業に反映しづらいということもあるため、まずは、自社の業務に精通した社員がデジタル技術の知識、技術を高める、リスキリングが大変重要である。
このために、労働局では様々な研修をしている。しかも、デジタル技術の研修、デジタル人材の育成といっても、対象者それぞれにランクがあるため、場面場面に分ける。例えば、新事業開発リーダー向け研修や、自社のデータ分析に活用できる一般社員向けの研修などに加え、経営者の意識改革も十分必要だと思うため、経営者に対する経営塾という形でやっている。
この経営塾では、デジタル化を進めた中小企業を実際に見てもらう。業態などが違うため、すぐに参考にはならないかもしれないが、先進的な中小企業を見てもらい、いかに自社で取り組んでいくか、人をどうやって確保、育成していくかを学んでもらう取組も行っている。経営者から一般社員まで、専門家が会社に入り込んで研修を行い、その後のフォローアップまで行う伴走型支援も行っている。また、高等技術専門校では、いろいろなカリキュラムを、毎年企画をチェンジしながら行っている。例えば、今年は、業務の効率化を推進するためのRPA体験講座など、デジタル分野の関連の訓練を非常に増やしている。現在は657人が実施し、計画を上回るペースで推移している。中小企業の人々をはじめ、皆の関心が高まっていると実感している。
中小企業では、人材を育成するために経費等が必要であるため、国の人材開発支援助成金、これは、訓練経費の一部や賃金の一部を助成する制度であるが、こういった制度も紹介しながら、育成と経費面の支援など、あらゆるツールを使いながら人材育成に取り組んでいく。
IT産業の振興、IT企業の誘致、スタートアップ、高度人材の確保と活用に密接に関わるため、労働局だけではなく、連携しながら今後も取り組んでいく。
【委員】
取組の規模が小さい。そんな小さな話ではない。東京都に全部集中しており、技術を教える人がいない。例えばインドの人材はたくさんいるため、大学と連携してもいいので、そういう人材を連れてくるのも、一つの刺激としていいのではないか。
ハローワークに来た人にやっていることとは規模が全然違う。もっと県全体の労働政策を考えて、リスキリングをやってもらい、新しい職場に送り込むぐらいのことをやらないと駄目である。中途半端なことではなく、もっとグローバルに物事を考えてほしい。今後の取組に期待する。
( 委 員 会 )
日 時 令和5年12月11日(月) 午後0時57分~
会 場 第7委員会室
出 席 者
福田喜夫、杉浦哲也 正副委員長
直江弘文、神野博史、高桑敏直、山本浩史、山下智也、今井隆喜、
かじ山義章、鳴海やすひろ、村嶌嘉将、岡 明彦、阿部武史 各委員
経済産業局長、経済産業推進監、情報通信(ICT)政策推進監、
経済産業局技監、産業部長、中小企業部長、革新事業創造部長、
労働局長、就業推進監、
観光コンベンション局長、観光推進監、
労働委員会事務局長、同次長兼審査調整課長、関係各課長等
委員会審査風景
<付託案件等>
○ 議 案
第118号 令和5年度愛知県一般会計補正予算(第5号)
第1条(歳入歳出予算の補正)の内
歳 出
第5款 経済労働費
第142号 損害賠償の額の決定及び和解について(経済産業局
中小企業部商業流通課)
(結 果)
全員一致をもって原案を可決すべきものと決した議案
第118号及び第142号
<会議の概要>
1 開 会
2 理事に関する申合せの変更
3 議案審査(2件)
(1)理事者の説明
(2)質 疑
(3)採 決
4 一般質問
5 閉 会
(主な質疑)
《議案関係》
【委員】
2028年の技能五輪国際大会について、先月、知事の臨時会見があり、厚生労働省が2028年開催予定の技能五輪国際大会を日本・愛知に招致すること、開催地の正式決定は2024年9月にフランスのリヨンで開催されるワールド・スキルズ・インターナショナル(WSI)の総会で決定すること、そして、現在のところ、日本以外に立候補している国はないことが分かった。
そこで、立候補の締切りはいつなのか、正式な立候補の届出はいつになるのか等、改めて現在の状況や今後のスケジュールについて伺う。
【理事者】
愛知県では、技能五輪国際大会の本県での開催を継続的に国に働きかけていたが、先月10日に厚生労働大臣が日本・愛知への招致を表明し、同日、知事が臨時会見を行い、国の招致表明を歓迎し、引き続き国や関係者と一丸となって取り組んでいくと発言した。
技能五輪国際大会の招致が実現すれば、日本では4回目、愛知では初開催となる。技能五輪国際大会の運営組織であるWSIの日本における加盟組織である中央職業能力開発協会は、既にWSIに対し、立候補の関心表明を行っている。関心表明の後、WSIによる現地調査である検証訪問が行われ、開催基準を満たしているかの確認などが行われる。検証訪問は来年3月に行われる見込みである。
検証訪問の後、正式な立候補国と認められれば、来年6月に開催計画を記した提案書をWSIに提出し、9月にフランス・リヨンで開催されるWSI総会において、2028年の第49回技能五輪国際大会の開催国が決定する予定である。
【委員】
来年、2024年9月にフランス・リヨンで開催される第47回大会には、当初、日本・愛知も立候補していたが、招致合戦に敗れたと聞いている。それは、フランスが当時3回目の立候補であったことや、しばらくの間ヨーロッパでの開催が少なかったことなどを考慮すると仕方ないとは思うが、いずれにしても2028年大会の招致成功となれば、満を持しての開催になる。
これまでの大会の課題を踏まえ、どのような大会にしたいのか。
【理事者】
技能五輪国際大会は、参加国数、実施競技数が増大傾向にあり、ホスト国となるハードルが上がっていると考えられ、WSIの課題認識としては、ホスト国となる国、地域を増やすために、大会規模の抑制が必要であると聞いている。
また、我が国では、開催に当たって、近年の人件費や資材価格の高騰などの課題がある。そこで、競技や宿泊など、選手が滞在する場を空港島内に集約し、コンパクトで、今後の技能五輪国際大会のモデルとなる大会を、国とともに、運営組織であるWSI及び加盟国、地域に提案していきたい。
【委員】
本年11月17日から21日にかけて愛知県で開催された技能五輪全国大会と全国アビリンピックは大変盛況であり、愛知県選手団も好成績であったと聞いている。また、来年の2024年大会と再来年の2025年大会も愛知県で開催される。
モノづくり王国とも言われる愛知県であり、大変喜ばしいことであるが、国際大会を愛知県で開催する意義を教えてほしい。
【理事者】
本県は、日本のモノづくりの中心地であり、日本の経済や産業をリードしている。昨年開催された技能五輪国際大会では、日本全体で8個の金メダルを獲得したうち、本県選手は5個の金メダルを含む、過去最多のメダルを獲得した。
また、全国大会は、2014年度、2019年度、2020年度、2023年度と、この10年間に4度本県で開催しており、都道府県としての成績では現在19連覇中である。さらに、2024年度、2025年度も本県で開催するため、こうしたノウハウを蓄積し、2028年の国際大会につなげていきたい。
技能五輪の開催は、出場する選手や企業の技能向上にとどまらず、子どもたちがモノづくりへの関心を高める絶好の機会であり、本県に脈々と引き継がれてきた技能尊重気運を向上させ、将来の日本、愛知を支える産業人材の確保、育成につながるものである。大会開催を通じて、技能立国・愛知のモノづくりのすばらしさを次代に継承し、世界に発信していきたい。
【委員】
まずは、首都圏人材確保支援事業費の補正予算について、制度の概要と、増額になった要因を伺う。
【理事者】
移住支援金は、東京一極集中を是正するための国の制度として、国のデジタル田園都市国家構想交付金を活用して、2019年度から実施している。
東京23区に通算5年以上在住もしくは在勤する50歳以下の人を対象に、県が設置するあいちUIJターン支援センターの専用ポータルサイト掲載企業に就職する場合、テレワーカーとして移住する場合、移住後にあいちスタートアップ創業支援事業費補助金の交付決定を受けて起業する場合等に、市町村を通じて支給する。
移住者への支給額は、世帯が100万円、単身が60万円で、2022年度からは、18歳未満の世帯員を帯同して移住する場合に、子供1人につき加算を行う制度も設けられている。
今年度予算額が増額となった要因は、制度が創設された2019年度から5年が経過し、制度の周知が進んだことに加え、2021年度から支給対象者にテレワーカー等が追加されるなど、要件が拡充されたことで支給件数が増加した。さらに、2022年度から開始された子供に係る加算について、今年度から上限額が1人当たり100万円に引き上げられ、1件当たりの申請金額が増加したことも要因となっている。こうしたことから、市町村への聞き取りを基に、申請件数の見込みを当初の14件から55件へ変更した。
【委員】
説明によると、一定の要件を満たせば世帯ごとに100万円がもらえ、かつ、18歳未満の子が3人いる場合は合計で400万円もらえるなど、金額的にとても大きなインパクトがある。
申請件数の見込みを当初の14件から55件へ変更しているが、過去の実績について伺う。
【理事者】
県から市町村への補助金の実績は、制度が開始された2019年度は0件、2020年度は6件の420万円、21年度は7件の495万円、22年度は16件の1,140万円であった。
【委員】
2019年度はゼロだが、2022年度には16件と多くなり、2023年度には大幅に上回る見込みである。増額となった要因に周知が進んだことがあるが、移住支援金はどのように周知しているのか。
【理事者】
東京と名古屋に拠点を設置しているあいちUIJターン支援センターにおいて、首都圏に住む学生や求職者と、その家族に制度を紹介しているほか、東京で開催される大規模就職フェアへの出展やセミナーの開催、大学への訪問なども行い、周知を図っている。また、センター専用のポータルサイトにおいて移住支援金の制度紹介を行うとともに、県内企業の求人情報や本県の生活支援情報なども提供している。
さらに、専用ポータルサイトへの誘導を図るため、検索サイトで上位に表示されるよう工夫するとともに、民間求人サイトにセンターの求人情報を掲載し、多くの求職者の目にとどまるようにしている。引き続き、あいちUIJターン支援センターの認知度を高めながら、移住支援金制度の情報も届けられるよう、周知に取り組む。
《一般質問》
【委員】
2024年の9月にAichi Sky Expoで開催される学生フォーミュラ日本大会の招致や、大会を活用したリクルーティングの観点から、県の取組について伺う。
12月6日の本会議一般質問で福田喜夫委員長から説明があった学生フォーミュラ日本大会は、2003年に発足し、栃木県茂木町や静岡県富士市、袋井市で開催してきた。
学生が自らチームを組み、約1年かけて、フォーミュラスタイルの小型レーシングカーを構想、設計、製作することにより、学生の自主的なモノづくりの総合力を育成することを大会の理念として、これまで開催している。学生にとっては、モノづくりの本質やプロセスを学び、その厳しさや面白さ、喜びを実感できる自己能力向上の場となっており、現在では70チームほどが参加していると聞いている。コロナ禍で少し減ったようであるが、多いときは100チームほどが参加していた大会である。
企業にとっては、将来を担う有能な人材発掘の場という側面もあり、この大会の理念はまさにモノづくり愛知にふさわしいものであり、Aichi Sky Expoでの開催招致にこぎ着けたこれまでの県の取組に敬意を表する。
まず、学生フォーミュラ日本大会の招致に至った、県のこれまでの取組を伺う。
【理事者】
本県では、新たな交流による新産業の創出や既存産業の強化を図るとともに、首都圏に並ぶ交流拠点を目指すため、2019年8月にAichi Sky Expoを開業し、様々な催事の誘致に取り組んでいる。
学生フォーミュラ日本大会についても、本県で開催されることは自動車産業の振興などに寄与するものであり、本県では、主催者の公益社団法人自動車技術会に対して、Aichi Sky Expoの開業前から誘致活動を行ってきた。
その活動では、Aichi Sky Expoの特徴である約4万平方メートルの屋外の多目的利用地と屋内の展示ホールを一体的に利用できるメリットをPRするほか、福田喜夫委員長の一般質問にもあったとおり、開業前から主催者に会場を視察してもらうなど、積極的に誘致を進めてきた。開業以降は、運営事業者と県で一丸となって誘致活動を重ね、その中で、大会参加者の熱中症対策、大会スポンサー企業の出展場所の確保、知事賞など特別賞の提供など、主催者の要望に対応する提案を行ってきた結果、2024年にAichi Sky Expoでの開催が決定した。
今後も引き続き、運営事業者とともに主催者のニーズに丁寧に対応することや、周辺の自治体にも協力を求めながら、学生フォーミュラ日本大会がAichi Sky Expoで円滑に開催されるよう支援していきたい。
【委員】
前回は静岡県袋井市で開催した。レーシングカーの組立ては、今まで屋外で行われており、毎年、大変暑い時期での開催は、参加学生にとっても熱中症等の負担になっていたため、国際展示場内で組立てができるのはとてもよい。
また、この愛知、日本の真ん中で、空路、鉄路、陸路ともにアクセスがよい条件を生かして、国内のチームだけではなく、いわゆる先進国で3強と言われているアメリカ、ドイツ、日本や、近年参加者が増えている中国や台湾のチームなど海外からの参加も、Aichi Sky Expoで開催することで、今まで以上に期待できる。また、開催期間が6日間あり、海外や全国から、若年層や学生に愛知へ足を運んでもらい、本県の魅力を知ってもらえることは、地域振興につながるため、今後も引き続き、学生フォーミュラの大会が愛知で開催されるよう取組を行ってもらいたい。
そして、少子化による学生の減少に加えて、近年の若者の理科離れ、車離れなどの深刻な状況は、日本または本県の自動車産業にとって、将来の国際競争力の低下など、優秀な技術者の人材不足につながりかねないと危惧している。
こうした大会を契機に、学生たちが実際に物に接して、物をつくり、技術の理解を深めてもらい、実践的な能力を養って、より高いレベルに意欲的に取り組んでもらいたい。また、チームとして喜びを分かち合うことができる、この学生フォーミュラ日本大会2024を私も全力で応援していきたい。
最後に、学生フォーミュラ日本大会を活用して、県内の自動車産業をはじめとしたモノづくり企業のリクルーティングにどう取り組んでいくのか。
【理事者】
まず、製造現場の人手不足の状況であるが、2022年度ものづくり白書によると、製造業の就業者数は、2002年から2021年までの20年間で157万人減少している。特に34歳以下の若年就業者数が121万人減少し、65歳以上の高齢就業者の割合が4.7パーセントから8.7パーセントに上昇するなど、製造現場の高齢化と若い人たちを中心とした人手不足が深刻な課題となっている。
また、自動車産業においては、EVシフトやカーボンニュートラルなどの新しい課題に対応するためには、例えば、金属やリチウムイオン電池のリサイクルや、再生電池の他産業への利活用などについて、車の設計段階から考慮に入れる必要があり、機械工学系の人材だけではなく、化学系の人材やデジタル人材が必要とされている。
こうした現状を踏まえると、学生フォーミュラに参加する人々は、もとから自動車に興味を持ち、自動車に関わる多くの知識を持った貴重な人材であるため、我々としても、自動車産業をはじめとしたモノづくり企業に就職してもらいたい。
そこで、学生フォーミュラ日本大会においては、会場に愛知県内の先進的な中小企業のブースを設置し、イベントに参加する優秀な学生に対して自社のPRをできるようにするなどの工夫を、主催者である公益社団法人自動車技術会と連携しながら検討したい。
【委員】
そういったブースもすばらしい取組だと思うので、私も現地へ見に行きたい。
最後に要望するが、学生フォーミュラ日本大会が2003年に開始される22年前、1981年にアメリカで学生フォーミュラSAEという前身的な大会を発足している。これは、アメリカが自動車産業で我が国に追い抜かれたその翌年に、教室の中だけでは優秀なエンジニアは育たないと、危機感をあらわにしたプログラムである。アメリカも必死である。本県が中心になって、日本の自動車産業を盛り上げてもらいたい。
余談だが、1990年、私は中学生であったが、鈴鹿サーキットでのアイルトン・セナとアラン・プロストの壮絶なレースを、実際に足を運んで見た。F1のすごさや技術に大いに感動し、中学校のときにすぐに免許を取りたい、マニュアル車を運転したいと思った。最近では、残念ながら、若者の運転免許の取得率が低下しており、ほとんどがオートマチック限定免許を取得していると聞いている。
こうした学生フォーミュラのような機会を通じて、もっと自動車に興味を持ってもらい、本県からさらに優秀な自動車エンジニアが誕生する機会につながることを期待する。
【委員】
大きく二つ質問する。
まず、アフターコロナとはいうものの、エネルギーの価格高騰や原材料高等で、回復の足並み状況がままならず、足並みがそのまま止まっている中小企業者への支援について伺う。
コロナ禍における資金繰り対策として実施した新型コロナウイルス感染症対応資金、いわゆるゼロゼロ融資について、返済が始まっている中小・小規模企業もあるが、制度の開始から3年を経て据置期間の終了に伴い、今年度から返済が本格化していると認識している。
そこで、現在のゼロゼロ融資の返済状況について伺う。
【理事者】
本県では、コロナ禍における資金繰り対策の一つとして、2020年5月から2021年3月末まで、全国統一制度である新型コロナウイルス感染症対応資金、いわゆるゼロゼロ融資を実施し、約8万7,000件、1兆4,680億円と、大変多くの事業者が利用した。
この融資制度は、最大5年の据置期間を設定することができるが、本県の場合、据置期間2年以内が約52パーセント、3年以内が約40パーセントであり、既に返済中も含め、大半の事業者の返済が今年度本格化する。
直近の10月末時点の融資残高は、約5万8,000件、7,418億円と、当初の融資実績と比べて約2万8,000件、7,262億円減少している。これは、件数で約33パーセント、金額で約49パーセントの減少率であり、件数と比べて金額の減少幅が大きいことから、制度の終了からこの2年半で、比較的大口の利用者の返済や借換えなどにより減少したものと考えられる。
【委員】
地域を歩いていると、コロナ禍は乗り越えたといえるが、コロナ禍後の生活様式の変化、人手不足及び原材料高の影響もあって、中小・小規模企業の経営の回復状況はまだまだである。
そこで、据置期間終了に伴い、本格化するゼロゼロ融資の返済に不安を抱えている中小企業者に対して、県としてどのような対応を行っているのか。
【理事者】
本県では、ゼロゼロ融資の返済に不安を抱える中小企業者の声を受け、昨年10月に、独自のサポート資金(新型コロナ借換)を創設した。さらに、既存のサポート資金(経営改善等支援)の融資限度額を1億円に引き上げるとともに、本年1月に、売上高の減少要件を15パーセント以上から5パーセント以上に緩和し、利益率の減少を対象に追加、借換えの特例を設ける見直しを行った。なお、サポート資金(経営改善等支援)は、本年4月以降、サポート資金(伴走支援)として引き続き実施している。
これら、ゼロゼロ融資の借換えに対応する二つの制度は、いずれも据置期間が5年以内で、特に新型コロナ借換は最長15年の融資期間に対応しており、借換えにより月々の返済負担が軽減されるほか、据置期間の再設定により、経営の改善や今後の事業の方向性を検討する時間的な余裕が生ずるといったメリットが見込まれる。
なお、これら制度の融資実績は、2022年度が合わせて6,347件、約1,209億円、制度融資全体の実績に対する構成比は45パーセント、2023年度が10月末時点で7,585件、約1,520億円、構成比が68パーセントと、ゼロゼロ融資の返済時期の到来に伴う借換え需要を背景に、利用が大きく伸びている。
このほか、金融機関や県信用保証協会に対し、夏季や年末、年度末の資金需要期に合わせて定期的に金融の円滑化を要請しているが、直近では、12月5日付けで知事名の文書を発出し、これら制度の周知とともに、条件変更などの相談に、各事業者の実情に応じて柔軟かつ積極的に対応してもらうよう要請を行った。
本県としては、今後も、経済環境の動向等を注視しつつ、こうした取組を通じて、物価高などの影響により依然として厳しい状況にある中小企業者の資金繰りを引き続きしっかりと支援する。
【委員】
10月25日に財務省が全国の景気判断を発表した。そこには、全国的には物価上昇や海外経済の減速等の影響が見られるものの、緩やかに回復しつつあるとあった。
そこで、県は、県内の中小企業の景況感をどう認識しているのか伺う。
【理事者】
県内の中小企業の景況感については、四半期ごとに中小企業景況調査を実施している。その結果では、中小企業の景況感を示す業況判断DI、これは、よいと回答した企業割合から悪いと回答した企業割合を差し引いて算出するものであるが、直近の7月から9月期がマイナス24.2ポイント、前期実績の4月から6月期がマイナス21.5ポイント、それから10月から12月期の来期見通しがマイナス16.4ポイントとなっている。
これまでの推移では、コロナ禍で最悪期となった2020年4月から6月期のマイナス80.0ポイントから急回復しており、2022年1月から3月期には、ロシアのウクライナ侵攻による原油・原材料高を受けて、マイナス36.5ポイントまで下振れしたものの、今年5月、新型コロナウイルス感染症が5類になって以降、マイナス幅が20ポイント前半で推移していた。中小企業の景況感は、足踏みしながらも緩やかな回復傾向と判断している。
【委員】
11月2日に閣議決定されたデフレ完全脱却のための総合経済対策に、重点支援地方交付金の追加が盛り込まれたことを踏まえて、令和5年度の補正予算第1号において、約1兆6,000億円が追加計上された。
そこで、私たち公明党愛知県議員団は、11月29日に、物価高騰により厳しい状況にある県民や事業者を引き続きしっかりと支えるため、この重点支援地方交付金を活用して物価高騰対策を講じるよう、大村秀章知事に対して要望した。
重点支援地方交付金は、エネルギー、食料品等の物価高騰の影響を受けた生活者や事業者に対し、地方公共団体が地域事情に合わせて必要な支援をきめ細かに実施できるよう、臨時交付金の中に創設された交付金である。今般の経済対策において、具体の対策の早期執行を上げている趣旨を鑑みて、本県においても、この交付金を活用した対応を早期に行う必要があると考える。
そこで、原油・原材料価格高騰等の影響等により、依然として厳しい状況にある中小企業等に対し、県はどのような資金繰り支援を考えているのか。
【理事者】
本県ではこれまで、令和3年11月、令和4年6月と9月、令和5年5月の計4回、補正予算を議決してもらい、原油・原材料価格高騰の影響を受けている中小企業者に対して県独自の資金繰り支援策を実施してきた。具体的には、売上原価の上昇により収益が悪化している中小企業者を対象とした既存の融資制度、サポート資金(経済対策特別)に、県が信用保証料の2分の1を補助する原油・原材料高緊急対応枠を設け、借入れに係るコストを軽減することで、厳しい状況にある中小企業者の資金繰りを支援してきた。
この制度の融資実績は、第1回から4回までの累計で、件数が6,929件、金額が約1,147億円、保証料補助額は約28億円と、同時期の融資実績全体の約2割を占めるなど、幅広い業種の多くの中小企業者が利用しており、資金調達の円滑化に寄与できたと考えている。
なお、原油・原材料高緊急対応枠の取扱期間は、本年9月29日までで一旦終了しているが、本県としては、引き続き経済環境の動向等を注視しつつ、制度の再開を含め、依然として厳しい状況にある中小企業者の資金繰り支援策を検討していく。
【委員】
それでは、依然として厳しい状況にある中小企業の資金繰り支援策について、今回の重点支援地方交付金等の有効な活用を要望する。
続いて、本県には、就労をはじめとする障害者の社会参加に資する特筆すべき活動に、アール・ブリュットに係る活動、いわゆる障害者アートがある。福祉局が中心となって開催してきたあいちアール・ブリュット障害者アーツ展は、10周年を迎えて、新たな段階を迎えている。同展の優秀作品等が、一般社団法人アティックアート等の仲立によって企業のノベルティーグッズに採用されるなど、障害者の収入につながっており、令和5年8月までのデータによると、同展を代表する障害者アーティスト22人が12の企業に就職した事例もあった。
私は、令和2年11月定例議会の本会議、併せて令和5年3月の福祉医療委員会における一般質問において、障害者アートは障害者の新たな就労形態として全国的に注目されていることから、本県の障害者のアート雇用の広がりに期待を寄せてきた。その中で、県の障害者アート活動をきっかけに知り合った元県職員とイベント会社の間で、名古屋競馬場をめぐる贈収賄事件が発生したことは誠に遺憾である。その上で、元職員が県の障害者アートの振興に係る中心的な人物であったことから、本県の今後の障害者アートの広がりが停滞するなど、障害者のアート就労に支障があってはいけない。
そこで、障害者のアート雇用について伺う。一つ目は、新たな就労の形としての障害者のアート雇用の可能性をどのように捉えているのか。
【理事者】
アート雇用の可能性だが、アート雇用は、絵を描くことなどが得意な障害者が自身の創作活動を業務として企業と雇用契約を結ぶもので、自宅等で創作活動を行うことができるため、在宅勤務が可能となる働き方である。雇用された障害者は、企業の名前を明示して作品展などに出展することで企業のPRを行い、作品を自社のノベルティーに活用することなどを主な業務としている。
アート雇用は、障害者の多様な働き方の一つであり、通勤が困難であったり、対人関係の不安や障害などの理由により、在宅勤務であれば働くことができる障害者の雇用機会を増やすことにつながる。雇用された障害者は、自身の得意分野を仕事に活かすことができ、アートを通じて、障害のある人の社会参加と障害への理解促進を図る一助ともなっている。
こうしたことから、アート雇用は障害者の活躍の場を広げることにつながっていると認識している。
【委員】
これまでも県は、アート雇用について、イベント等で周知してきたと承知しているが、障害者のアート雇用の周知、啓発の取組状況について伺う。
【理事者】
アート雇用を広く周知、啓発する取組としては、大学等卒業予定障害者就職面接会や障害者雇用促進トップセミナーにおいて、求職者及び企業経営者や人事担当者にアート雇用を知ってもらうため、チラシを活用し、周知を行っている。
加えて、障害者雇用に取り組む企業の相談窓口であるあいち障害者雇用総合サポートデスクにおいて、多様な働き方の一つとして企業に提案しており、アート雇用で働く障害者を紹介する動画もホームページで公開している。また、ハローワークと合同で、サポートデスクが企業訪問したときにも機会を捉えて、在宅勤務が可能となるアート雇用を紹介している。さらに、あいちアール・ブリュット障害者アーツ展で行われる障害者雇用促進セミナーにおいて、サポートデスクの支援内容について講演を行い、周知啓発と雇用促進に取り組んでいる。
【委員】
冒頭で話した汚職事件に関するマスコミ報道によると、11月11日付けの中日新聞朝刊の1面の記事には、容疑者が県職員を辞めて注力した障害者アートの分野で利益を出すことは簡単ではない、近年は企業による障害者アートの活用が進むが取組は一部にとどまる、障害者アートの活動は続けることが大切であるが、続けるためには資金が必要になると、業界の関係者は指摘する、とあった。
そこで、最後に、障害者雇用全般に対する課題、そして、障害者のアート雇用に対する課題及び取組状況について伺う。
【理事者】
障害者雇用における課題は、企業の障害者雇用への理解促進と障害者の特性や希望を踏まえたマッチングの難しさ、採用後の雇用管理を含めた職場定着支援にあると認識している。
このため、県では、あいち障害者雇用総合サポートデスクにおいて、採用前の受入れ体制から採用後の定着までの相談対応や、企業に出向いての定着支援など、障害者雇用に取り組む企業に寄り添ったきめ細かな支援を行っている。さらに、在宅勤務であるテレワークについても、障害者雇用を考える企業に提案を行っており、テレワークで行う職場実習先を開拓している。実習を行うことで、企業及び障害者がテレワーク勤務のメリット、デメリットを認識してもらい、よりよい雇用に結びつけることができるよう支援している。
また、アート雇用の課題としては、認知度がまだ低いことであると考えており、より多くの人に知ってもらえるよう幅広く周知することが必要である。そのため、障害者就職面接会やセミナー等で周知を図るほか、あいち障害者雇用総合サポートデスクのホームページでアート雇用の事例動画を発信し、企業に雇用の選択肢の一つとして紹介している。
今後も、愛知労働局と連携しながら取組を進め、障害者の活躍促進を支援していく。
【委員】
様々な取組をしていると理解した。何年か前に話したときは、アート雇用についての取組は緒に就いたところだと思ったが、今の話を聞くと、少しずつ前に進んでいると思う。
障害者アートが就労につながるための課題をいろいろと、今までの知見も含めて調べてみた上で、チャットGPTを使って課題についてのQ&Aをやってみた。
今まで勉強した感覚で、このチャットGPTを使ったQ&Aはしっかりしていると思ったため、少し紹介したい。幅広く障害者アート雇用を考えていかないと就労につながらないことが明確であるため、要望も含めて伝える。
どういう課題があるか、チャットGPTは五つ答えた。
一つ目は、教育とトレーニング。障害者がアートにおいて高いスキルを磨くための教育とトレーニングが必要である。これは、特別なニーズに対する教育プログラムやワークショップを通じて実現できる。教育的な話である。
二つ目は、市場アクセスと流通。障害者アーティストの作品を市場に出すための流通チャンネルや、プラットフォームの確立が必要である。オンラインマーケットプレイスやアートフェアへの参加が有効な方法である。
三つ目は、社会の認知と支援。社会全体の障害者アートに対する認知を高め、支援を集めることが重要である。メディアや公共のイベントを通じて、障害者アートの認知度を上げることが効果的である。
四つ目は、障害に対する配慮。障害のあるアーティストが快適に作業できるように、適切な作業環境やアクセシビリティーを確保することが重要である。テレワークの話にもつながる。
五つ目は、資金調達とリソース。アート活動を支えるための資金調達とリソースの確保も重要である。これには、助成金、スポンサーシップ、クラウドファンディングなどが含まれる。
就業促進課ができることは、その中の一部分かもしれない。その上で、福祉局を始め他部局とも連携しながら、広い意味で進めていかないと障害者雇用が進まないのも事実である。大きな視点も持ち、横串を刺しながら今後頑張ってもらいたい。
【委員】
産業技術センターについて伺う。
経済労働委員会は県外調査で、11月7日に鹿児島県工業技術センターを訪問した。ここでは、ものづくりDXラボを立ち上げ、力を入れていたため紹介する。このような技術センターはモノづくりの基盤であり、日本一のモノづくり県である本県では、特に重要であると感じた。
私は、今年の8月に、豊田市にある知の拠点、あいち産業科学技術総合センター本部と、刈谷市にある産業技術センターを訪問し、活動状況等の説明を受けた。
このような技術センターや試験場が、県内には8か所あり、そこでは、主に中小企業からの依頼試験や技術相談を通じて技術支援を行っていると聞いたが、この依頼試験の利用状況はどのような形になっているのか、前年度と比較して、どのような傾向があるかを伺う。
【理事者】
県内8か所の技術センター、試験場の今年度前期4月から9月までの依頼試験の実績は、7万5,156件であり、前年同期と比べて10パーセントの伸びとなっている。利用企業については、依頼試験の手数料の収入ベースであるが、中小企業が57パーセント、大企業が40パーセント、残りの3パーセントは大学の利用となっている。
利用状況として、1位が金属製品製造業、2位が輸送用機械器具製造業、3位がプラスチック製品製造業である。神野博史委員が訪問した刈谷市にある産業技術センターの依頼試験の件数は、今期の上半期で3万6,916件、前年同期17パーセント増であり、中小企業の利用が62パーセント、大企業が37パーセントとなっている。
【委員】
答弁にあったように、依頼試験の実績が、全体でも10パーセント、また産業技術センターでは17パーセントも伸びており、大きな需要があると認識している。
豊田市にある本部と、刈谷市にある産業技術センターを訪問したときに気づいたが、蛍光エックス線分析装置のように、二つのセンターに両方配置されている機器があるが、依頼試験や技術支援を利用するユーザーである企業は、どのように二つのセンターの機器を使い分けているのか。
【理事者】
各センターの経験豊富な職員が、利用者の要望を聞いた上で、必要に応じてセンターを紹介している。使い分けについては、電話等で近くの技術センターに問い合わせてもらえるとよい。
大きく分けると本部では、ナノレベルの計測を行うための高度な分析機器や金属3Dプリンターなどの最新の試作機器を備え、先端的なモノづくりの支援を行っている。
産業技術センターは、基本的に、製造現場での技術課題や不良品の原因調査など、主に製造現場レベルでの技術相談に対応するため、汎用の分析機器や材料試験機を備えている違いがある。
例えば、蛍光エックス線分析装置だと、本部の機器は、20マイクロメートルのサイズから測定できるが、産業技術センターでは、同じ機器ではあるが、100マイクロメートル以上のサイズとなる。また、測定可能な元素の種類も、本部の装置のほうが多い。また、依頼試験手数料は、本部の機器のほうが精度が高いため産業技術センターより高く設定されている。そういう違いもあるため、利用する企業は一度問い合わせてもらえるとよい。
【委員】
産業技術センターは、地域のモノづくりでいろいろな中小企業が利用すると聞いている。
訪問の際に、かなり古い機器で分析を行っているものもあったが、企業からの分析評価のニーズに十分応えられているのか。
【理事者】
古い機器であっても、機器の校正、点検、保守を定期的に行い、分析結果の信頼性向上に努めているため、おおむねニーズには対応していると考えている。
例えば、先ほどの蛍光エックス線分析装置が産業技術センターと本部にあるが、産業技術センターの装置は、15年前に導入した装置ではあるが、2021年に内部の主要部品である検出器の交換修繕を行っている。万が一、産業技術センターで対応できない場合は、本部や他のセンターと連携して対応する。
分析装置の更新は、企業や業界からのニーズ、老朽化や故障による依頼試験への影響、新規の需要見込みなども踏まえて、県費に加え、競輪の収益を財源とする公益財団法人JKAの補助金や、国の補正予算等を利用して、計画的に更新整備を行っている。
ニーズに対応する点では、所管する8か所の技術センター及び試験場では、従来から、技術相談・指導、依頼試験、研究を3本柱として行っており、地域のモノづくり企業に寄り添った取組を心がけている。今後もユーザーのニーズに応えられるよう、ユーザーの目線に立って、高度化や多様化する企業の技術開発に丁寧に対応する。
【委員】
今回の視察で感心したことが二つある。一つは、センターで働く技術者が、当初は素人であったが、徐々に経験を積むことによってベテランになっていくこと、もう一つは、ただ企業から依頼試験を受けるだけではなく、企業に提案しており、すばらしい取組である。同時に、愛知県は45年連続、製造品出荷額等全国1位であるが、産業技術センターなどの機関が産業基盤を支えていることである。
視察先で燃料電池に関する装置とプラスチックの伸びを測定する装置、金属の混入調査をする装置、包装材の圧縮や振動試験装置といった機械装置を見たが、株式会社堀場製作所製だったと思うが、20年ほど前の非常に古い装置があった。先ほどの話では、機能には問題ないとはいえ、素人から見ると、新しい機器のほうが正確に分析できると思う。中小企業の人が来ても、とても古いと思われないよう、順繰りに新品に替えてもらいたい。
また、施設の廊下や部屋の中も、雨漏りするところがあったと聞いた。中小企業の人が利用するのに雨漏りしてはいけないので、十分に補修等の維持管理をするよう要望する。
【委員】
先日、日本経済新聞に、日本がGDPでドイツに抜かれたとの記事があった。日本の人口は1億2,000万人で、ドイツは8,000万人である。ドイツは20年ほど前から、シュレーダー首相の社民党政権で、インダストリー4.0というデジタル化を始めた。途中でメルケル首相の保守政権に替わっても、ずっと継続している。当時からリスキリングはどんどんやっていた。ドイツの商工会議所は国家機関であり、一旦就職して、自分の希望に合わないとか、やりにくいことがあると、商工会議所でリスキリングして、違う職場へ行く。当時、このままでは日本は抜かれると思った。そして、その証拠に抜かれた。
今度はインドに抜かれるとの話が出ている。インドは人口が14億人もおり、当然GDPで抜かれるだろうが、人口5,000万人の韓国にも個人のGDPは抜かれている。国のGDPは少し差があるが、いずれ抜かれてしまう可能性がある。
日本は、デジタル化ができていないため、1人当たりの生産性が上がらない。一方、大企業は金があるから、どんどん現場をロボット化している。問題はバックオフィス、事務や営業などの関連業務が6割から7割だと言われており、つまり、中小企業はデジタル化しないがために余剰人員を抱えることとなり、給料が上がらない図式になる。
安倍政権が異次元の金融政策として、国債を全部買い上げ、中小企業の支援策につながったが、そのことで、逆にイノベーションが起こらなかった。そんなに無理しなくても維持できる、もうかることで技術開発が遅れたことが原因だと、ある学者が言っていたが、そのとおりだと思う。
構造改革し、デジタル化によって効率化を目指す、データをAIに分析させて、そのデータによって新しい事業、ビジネスを生み出すのが、これからの日本の役目である。ところが、成功事例があったおかげで、ITを軽視してしまった。二十数年前にIT社会形成基本法ができたが、中途半端に終わり、そのツケが今、回ってきている。このことにもっと衝撃を受けて進めないと、日本にはもっと大変なことが起きる。周辺の国、アジアだけでも中国も韓国も台湾も、今度はインドもデジタル化はどんどん進んでいく。
そこで、あと10年もたつと数十万人のIT人材が枯渇する、足りないと言われている。愛知県でも数万人が必要であり、その人材をどこへ求めるかというと、私はインドであり、ベトナムであると言わせてもらっている。同時に、中小企業の経営者に対して啓発し、デジタル人材をどんどん取り込んで構造を変えていかない限りは、日本の円安は戻らないし、浮上しない。
ドイツの例から見ても、国のやることが中途半端である。本当の危機感を持っていない。先ほど神野博史委員から、45年間、製造品出荷額等が第1位だと話があったが、2番目が神奈川県で17兆円から18兆円であるので、圧倒的な愛知県がしっかりしないと、日本経済はパニックになる。
いつも私はデジタル化と言うが、教育をしようとしても、これから10年、20年かかる。そこで、ITの高度な技術を持ったインドやベトナムに人材を求めるべきだと盛んに主張しているが、どのような取組をしているのか。
【理事者】
まず、課題認識として、分厚い産業集積を誇る愛知県の根幹をなす製造業、中でも、それを下支えする中小企業の生産性を、IoTに加えて、バックオフィスのデジタル化によって生産性を向上することは、焦眉の課題と認識している。
現在の取組では、例えば、情報セキュリティ対策や診断も含めた相談窓口を設置し、伴走支援するとともに、パイロットプロジェクトの実施や拡散、さらには、本格導入や横展開に向けた補助制度の創設など、中小企業を支援する取組を推進している。
一方で、デジタル人材の量と質の両面で不足があり、それを外国人材で補うことが課題として指摘されている。しかしながら、外国人材を受け入れる場合には、様々な課題もある。例えば、受入れ体制の整備、企業の受入れニーズの有無、その対応の確認やマッチング、また、中小企業等がデジタル人材を、単純労働者としてではなく、適正な処遇で招聘するという心構えの重要性の涵養については、実際に雇用した後も、例えば、インド人は、ジョブホッピングによりキャリアアップを図っていく習性があるので、そういった人材との間でウィン・ウィンの関係を維持しながら雇用関係を継続していくなど、様々な課題もハードルもあるのが事実だと認識している。
そこで、県としては、例えば、インドのデジタル社会や企業の取組状況、人材育成に加えて、将来の連携可能性について、各方面に情報共有を図るために、県内企業を対象としたセミナーの開催を検討しているとともに、あいち外国人材適正受入れ・共生推進協議会の場も活用しながら取組を実施している。
また、求人企業を支援するために配信しているメールマガジンがあるが、その登録企業等を対象にして、外国人デジタル人材の雇用ニーズの可能性を調査したいと考えている。そのような形で中小企業の招へいの可能性を探りながら、来年10月に開業するSTATION Aiには先進的なスタートアップ企業が多数入居するため、そこでの活用も並行して図っていきたい。
このように、県において様々な取組や検討を行っているが、情報通信(ICT)政策推進監の立場から、部局の枠を超えて、垣根を越えて必要な調整や助言等を行い、全庁が連携する形で、デジタルで生まれ変わる愛知の実現に向けて引き続き取り組む。
【委員】
あらゆることを努力してもらい本当にありがたい。来年できるSTATION Aiも画期的である。
GAFAがネット社会を制覇したといっても、広告と小売である。全体の情報量の8パーセントで、その他92パーセントのサービスやモノづくりや農業など、あらゆるものに情報はある。だからこそⅠoTで結べば、新しいビジネスになる。
いろいろなアプリができており、ほとんどはソフトである。SaaSやフィンテック、IoTは、徹底されていない。そこでもっとスタートアップが出てくる必要があり、簡単にⅠoTができるローコードやノーコードがあるので、現場で働く人たちに簡単にできる技術があるから、そういう技術を持たなければならないという意識を持ってもらう、との話を、今の東芝の島田太郎社長に聞いたことがある。そのような時代のニーズがあるため、ぜひとも中小企業、特に経営者に啓発をする。内省的に伴走していくためにも、早くからやっているインドに学ぶべきである。
今、日本はマイナンバーカードの紐づけで悩んでいるが、インドは3年で、顔認証と両手の指紋と虹彩を使って、14億人のうちの13億人を紐づけしたそうである。そういうIT企業はある。そういう時代である。数学は強く、英語も強く、平均年齢が27歳、28歳である、IT人材が、年間何百万も欧米へ行っている。だからインドやベトナムに人材を求めるべきである。経済産業局と労働局と一緒になって、県を挙げてやらないと、大変な時代がもう来ている。
構造改革をして、余剰の人員をリスキリングし他の職場へ移動してもらう。労働の移動をやらないと本当に成り立たない。そうすることで人手不足も多少補える。今、50万人の若者が、オーストラリアやカナダにアルバイトに行っている。日本は人手不足である根本はそこにある。
新しい産業をどんどん生み出さないといけない。イノベーションを愛知県がやらない限り、日本の経済は浮上できない。インバウンドで4,000万人来たと喜んでいても、貧乏な国で、安いから来ているだけである。そのことを、共通課題として取り組んでいかなければならない。
【理事者】
製造業でいえば、今までは親方の経験と勘と度胸などで乗り切った部分があったが、それも限界に来ており、技能継承を含めて、デジタル化、見える化して、形式化していく必要がある。
製造現場のデジタル化は、よくオペレーショナルテクノロジー、OTというが、ITとは少し違い、生産ラインをいかに効率的に回すか、アクチュエーターの制御技術など、いわゆるクラウドでデータを管理して一括的に情報処理するというよりは、むしろ、エッジコンピューティングのような、現場で課題解決を注視して対応するところがあり、それは多分に、情報漏えいさせない、生産ラインを止めないところにある。経済産業局も、いろいろな伴走型の実証実験などをしながら、生産現場のITの高度化をやっているが、今は、ブロックチェーンや、生成AI、さらに新しい技術などもどんどん出ているため、そういう技術を製造現場にどうビルトインしていくのか支援、研究していく必要がある。
また、大曽根にある三菱電機株式会社名古屋製作所の大きなFA(ファクトリーオートメーション)の工場の人などに聞くと、製造の大手を含めて、工場現場のIT化は言うほど易しくなく、昔からの経験と勘ではないが、生産ラインごとにそれぞれのシステムが入っており、それを統合していくことは、今まで、それぞれの製造分野ごとに成功体験もあり、結果を出しているところもあって、なかなか、それを一括してIT化していくのが難しいと聞くため、やはり経営層のITリテラシーを高めて、トップダウンでやっていかないとなかなかうまくいかない。
ITというのは、部分最適、いわゆる生産ラインや事業部ごとではなく、会社を挙げて、ITの力を使って、全体最適で最高の生産性を上げる。それで初めてITのいいところが出るため、それぞれの事業部、ひどいところは生産ラインごとにシステムが違うなどして、なかなか統合が難しい。その場合に何が起きるかというと、部品の品番のつけ方も全部違うため、生産ラインが効率化していかないとの話は三菱電機株式会社名古屋製作所でもある。
トップダウンで、経営層にリテラシーを高めてもらい、号令をかけてもらって進めていく必要がある。我々もコンソーシアムをつくるなど、いろいろな形をつくりながら、いろいろな人に入ってもらい、中小企業のITの向上ももちろん取り組むが、大企業を含めて、愛知県全体のITリテラシーを高めて、全体最適な形で生産性を高める必要がある。より高度なITを使いながら、生産現場の高度化を図っていくために、県でも、できることを一生懸命やっていく。
【理事者】
中小企業においても、デジタル技術の導入で生産性を高めていかなければならないと認識している。中小企業のデジタル化と一言で言っても、いきなり高度なデジタル人材を連れてきても、中小企業の事業に反映しづらいということもあるため、まずは、自社の業務に精通した社員がデジタル技術の知識、技術を高める、リスキリングが大変重要である。
このために、労働局では様々な研修をしている。しかも、デジタル技術の研修、デジタル人材の育成といっても、対象者それぞれにランクがあるため、場面場面に分ける。例えば、新事業開発リーダー向け研修や、自社のデータ分析に活用できる一般社員向けの研修などに加え、経営者の意識改革も十分必要だと思うため、経営者に対する経営塾という形でやっている。
この経営塾では、デジタル化を進めた中小企業を実際に見てもらう。業態などが違うため、すぐに参考にはならないかもしれないが、先進的な中小企業を見てもらい、いかに自社で取り組んでいくか、人をどうやって確保、育成していくかを学んでもらう取組も行っている。経営者から一般社員まで、専門家が会社に入り込んで研修を行い、その後のフォローアップまで行う伴走型支援も行っている。また、高等技術専門校では、いろいろなカリキュラムを、毎年企画をチェンジしながら行っている。例えば、今年は、業務の効率化を推進するためのRPA体験講座など、デジタル分野の関連の訓練を非常に増やしている。現在は657人が実施し、計画を上回るペースで推移している。中小企業の人々をはじめ、皆の関心が高まっていると実感している。
中小企業では、人材を育成するために経費等が必要であるため、国の人材開発支援助成金、これは、訓練経費の一部や賃金の一部を助成する制度であるが、こういった制度も紹介しながら、育成と経費面の支援など、あらゆるツールを使いながら人材育成に取り組んでいく。
IT産業の振興、IT企業の誘致、スタートアップ、高度人材の確保と活用に密接に関わるため、労働局だけではなく、連携しながら今後も取り組んでいく。
【委員】
取組の規模が小さい。そんな小さな話ではない。東京都に全部集中しており、技術を教える人がいない。例えばインドの人材はたくさんいるため、大学と連携してもいいので、そういう人材を連れてくるのも、一つの刺激としていいのではないか。
ハローワークに来た人にやっていることとは規模が全然違う。もっと県全体の労働政策を考えて、リスキリングをやってもらい、新しい職場に送り込むぐらいのことをやらないと駄目である。中途半端なことではなく、もっとグローバルに物事を考えてほしい。今後の取組に期待する。