委員会情報
委員会審査状況
県民環境委員会
( 委 員 会 )
日 時 令和5年10月10日(火) 午後0時58分~
会 場 第6委員会室
出 席 者
黒田太郎、杉江繁樹 正副委員長
松川浩明、中野治美、神戸健太郎、山田たかお、杉浦正和、増田成美、
高木ひろし、鈴木 純、加藤貴志、神谷まさひろ、永田敦史 各委員
県民文化局長、県民生活部長、人権推進監、女性の活躍促進監、文化部長、
関係各課長等
<付託案件等>
○ 議 案
第103号 令和5年度愛知県一般会計補正予算(第4号)
第1条(歳入歳出予算の補正)の内
歳 出
第3款 県民環境費
(結 果)
全員一致をもって原案を可決すべきものと決した議案
第103号
○ 請 願
第 7 号 「小中高生の新型コロナワクチン接種後体調不良者への合
理的配慮」について(県民関係)
第 12 号 「愛知県に『学校給食無償化補助金』の創設を求める」に
ついて(県民関係)
(結 果)
賛成者なしをもって不採択すべきものと決した請願
第7号
賛成少数をもって不採択すべきものと決した請願
第12号
<会議の概要>
1 開 会
2 口頭陳情(2件 請願第12号及び陳情第31号関係)
3 議案審査(1件)
(1)理事者の説明
(2)質 疑
(3)採 決
4 請願審査(2件)
5 委員長報告の決定
6 一般質問
7 閉 会
(主な質疑)
《議案関係》
【委員】
予算が上程された県文化施設の活性化を図るための県計画について伺う。
今年の8月2日だが、読売新聞に芸文センター利用者低迷という見出しで、利用者数が1994年の約285万人をピークに減少傾向にあり、コロナ禍もあって最近では、レストランやアートショップが撤退し、空き店舗になっているという報道があった。
そのような背景もあり、今回の活性化のための基本計画になると思うが、この文化施設活性化基本計画を策定するに至った背景及び計画の策定に際し、何を調査検討し、どのような内容の計画を策定するつもりなのか。
【理事者】
今回の基本計画の対象施設である愛知県美術館、愛知県芸術劇場などから構成される愛知芸術文化センター栄施設と愛知県陶磁美術館は、多彩なテーマの企画展や質の高い舞台芸術公演を開催しており、両施設とも多くの人々から高い評価を得ている。
その一方で、芸術文化センターは、名古屋の中心である栄という立地や、建物全体の空間を有効活用できておらず、また、陶磁美術館では、建物や広大な敷地などのポテンシャルを生かすことができていないため、ともに集客やにぎわいの創出に苦労しており、レストランやショップなどの撤退につながっている。
そこで、昨年12月に策定したあいち文化芸術振興計画2027で、芸術文化センターをはじめとした県文化施設では、今後一層の活性化を図るため、指定管理者制度やコンセッション方式、地方独立行政法人制度の導入など、運用手法や経営形態を含めて、改めて在り方の検討を行うこととした。
基本計画の策定と策定に伴う調査検討については、芸術文化センター内の施設、建物及び陶磁美術館で、現状評価、先進事例の調査、民間事業者の施設運営の参画意向調査、様々な運営手法や経営形態の比較検討、新たな運営手法を導入する場合のスケジュールなどについて調査検討を行い、施設の活性化を図る上で効果的な維持管理、運営の手法を導き出すことを予定している。
この調査検討結果に基づいて策定する基本計画では、芸術文化センター、陶磁美術館の活性化を図るため、施設が持っているポテンシャルを十分に発揮できる、今後の望ましい運営手法や経営形態及びそれらを導入する場合のスケジュールを定める予定である。
【委員】
基本計画の中で、指定管理者、コンセッション、地方独立行政法人など、様々な形態の比較検討を行うということであった。
基本計画の策定時期は来年3月とのことであるが、この後、新しい形態に移行するためには、一定の手順と時間が必要になると思うが、基本計画策定後の、来年4月以降のスケジュールについて伺う。
【理事者】
計画策定後のスケジュールについては、今回策定予定の基本計画で、今後の望ましい運営手法や経営形態とともに、新たな運営手法を導入する場合の導入スケジュールを示す予定であるため、現時点では未定である。
なお、参考として、博物館・美術館の分野における唯一の地方独立行政法人であり、テーマの異なる六つの博物館・美術館を一体的に運用する大阪市博物館機構の例では、2017年3月に基本プランを策定後、定款や中期目標、中期計画の策定をはじめとした約2年間の設立準備期間を経て、2019年4月に設立されている。
【委員】
最近の文化施設の運営では、以前からの学芸員の役割だけではなく、アートマネジメントができる専門人材を求めていると聞いている。
アートマネジメントとは、例えば美術館に来る人のニーズを捉えて作品を選ぶことや、地域にふさわしい芸術を展示し、地域を活性化させようとする努力や活動など、芸術を題材とする経営を意味し、企業であれば市場調査、販売企画、経理やコンプライアンスなどを管理するものと聞いている。
答弁の中でも名前が挙がった大阪市博物館機構でも、地方独立行政法人化の効果として、専門人材の安定的確保が一番に掲げられている。
本県としても、この文化の創り手と受け手をつなぐアートマネジメントができる専門人材の育成が必要と思うが、この育成についてどのように考えているのか。
【理事者】
愛知の文化芸術を未来につなぐため、文化芸術の担い手のみならず、文化芸術と県民をつなぐ視点を持った、アートマネジメントなどに関する専門人材を育成し確保することは、県の重要な役割である。
そのため、今回の基本計画で、芸術文化センター、陶磁美術館といった県の文化施設が新たな運営手法や経営形態を導入することとなった場合でも、文化芸術の現場における実践的な知識と技能を備え、文化芸術と地域社会をつなぐことができる専門人材を確保し、育成していくことは必要不可欠である。
なお、あいち文化芸術振興計画2027でも、基本課題の一つとして、文化芸術と県民をつなぎ、支える人材の育成確保を掲げているため、実践的な研修の実施など各種施策を引き続き推進し、専門人材の育成に努める。
【委員】
最後に、要望する。
文化芸術の発信は、人を引き込もうとする観光振興とも大きな関連性がある。
2015年、本県では愛知の魅力を磨き上げ、多くの人に来てもらうため、あいち観光元年を宣言した。様々な取組が少しずつ成果を上げてきていると思う。3年後には、アジア競技大会・アジアパラ競技大会がこの愛知で行われる。そして、リニア新幹線が開通すれば、愛知の注目度はさらに高まると思う。
そうした中で、今回の基本計画の策定では、先ほど、地域のにぎわいづくり、新たな人流の創出との言葉があったが、栄地区の活性化だけではなく、本県全体の魅力を高めるという思いを持って、この事業を進めてもらいたい。
《請願関係》
【委員】
請願第12号について、先ほど請願者が説明したように、そもそも学校給食費の無償化は、子育て世代の負担軽減につながる、可処分所得が上がることと、給食は教育活動の一環であり、義務教育は無償とするという教育の在り方という点からも、私自身は賛成である。
そして、こうした教育政策は、基本的にはどこで生まれた、どこで育ったかなどの教育格差がないように、さらに言えば、親や家庭の経済状況によって子供の教育格差が生まれないようにするため、国が一律でやるのが望ましい。
一方で、地方自治体が独自でやることを否定するつもりはなく、自主性、主体性を持ってその自治体が取り組むことに、県が補助していくことも必要である。
本委員会に付託されたことは、特に私立学校に関係すると思うが、私の選挙区である安城市では、この9月から学校給食費の無償化を実施した。
給食費の無償化は、基本的には、多くの自治体がやっているように、もともと徴収するものを取らないのが基本であると思うが、安城市では、市外の小中学校に通っている、あるいは特別支援に通っている子どもにも補助している。
具体的には、1食当たり小学校で255円、中学校で290円を、給食の日数分支給するやり方である。そうした意味で、給食を取っていない人はもともと無料であるが、給食を取っていない場合でも、日数分の支給が行き渡って公平になる。
さらに言うと、アレルギーがあるなど、不登校の子どもはもともと欠食をしている。安城市の場合、予算ベースで200人ほどいるが、その子どもたちの分も申請すれば補助している。
いろいろな考え方があると思うが、とにかく経済的負担も含めて平等でとのことも含めて、安城市のやり方などいろいろな方法がある中で、学校給食の無償化は可能であることを意見としてお伝えする。
《一般質問》
【委員】
本県は8月17日に、来年4月1日からファミリーシップ制度の導入を目指すため、その検討を開始すると公表した。
ファミリーシップ制度とは、様々な事情によって婚姻制度を利用できないカップル及び生計を同一にする子どもらの家族について、継続的に家族として共同生活を行う旨を約束した関係を自治体が証明する制度である。
従来、パートナーシップ制度でやっているところが多いが、それを拡大して、性別、同性、異性問わず全てのカップル、あるいは子どもを含めたより広い範囲であるファミリーシップ制度とした点について、高く評価している。
このことによって、まずは、何よりも当事者が、社会や行政から家族と認められることで、自己肯定感につながり、前向きに生きることができる。そして同時に、証明書が発行された自治体で、公営住宅の入居、公立病院の面会や手術の同意など、同性パートナーなどでも家族と同等の行政サービスを受けられる。あるいは民間の金融、保険、通信などで、家族割や家族カード、保険の受け取りといったサービスも受けられる。
そこで、まず今回、パートナーシップ制度ではなく、より広いファミリーシップ制度にしたその経緯について、確認したい。
こうした制度の導入については、制度の当事者の声を聞き、反映すべきだと思う。関係団体のヒアリングを行ったとは聞いているが、この関係団体は当事者なのかどうか、当事者の声を聞いているのか。
一方で、こうしたLGBTQあるいは人権に関することは、思想的、宗教的、主観も含めて、賛否が大きく分かれることがある。
そうした中で、反対者の意見についても、合理的な理由があるかもしれないため、当事者以外の声を聞くことも必要と思っている。
もう一点が、今回、本県では、条例ではなく要綱にしたとのことであるが、要綱にした理由、あるいは要綱と条例の違いがあれば伺う。
【理事者】
最近では、異性カップルや子どもらを含んだファミリーシップ制度を導入する自治体も増えており、こうした状況を踏まえ、今年度の第1回愛知県人権施策推進審議会でパートナーシップ制度の導入に向けた検討をするよう意見があった。
そこで、関係団体等にヒアリングしたところ、異性カップルを含んだ幅広いものにした方が、望まないカミングアウトにつながらないことや、また最近では、子どもを育てるカップルも増えているとのことであったため、異性カップルや子どもらを含んだファミリーシップ制度が望ましいと判断し、事務局案を示した。
なお、ヒアリングは、LGBT関係の団体や有識者からであり、当事者からの意見を参考にしている。
また、県内の市町村でも、異性カップルや子どもらを含んだファミリーシップ制度を導入している市町村も増えており、そうした市町村との連携を考慮すると、県としては幅広い対象とする方が望ましいと考えた。
条例でなく要綱とした理由については、2022年4月1日に施行した愛知県人権尊重の社会づくり条例で、性の多様性に対する理解増進が盛り込まれており、ファミリーシップ制度はこの条例の理念を具体化した取組の一つであるため、要綱により制度を運用していくこととした。
条例でも要綱でも、ファミリーシップ制度は自治体独自の制度であることから法的な効力はなく、新たな権利の発生や義務の付与などはないため、条例でも要綱でも法的な効果の違いはない。
また、幅広く県民の意見を聞く機会としては、現在、人権施策に関する基本計画を策定中であるが、その中でファミリーシップ制度の導入についても盛り込むこととしており、基本計画のパブリックコメントを行う中で、ファミリーシップ制度について県民の意見も伺いたい。
【委員】
パブリックコメントも当然必要であるが、一度テーブルに着いて反対する立場の人の意見も聞き、当事者の人々が結果的に苦しむことが無いよう、なるべく感情的、思想的な対立を避けられるよう努力してほしい。
続いて、この制度を導入するに当たり一番重要なのは、もちろん当事者の声を聞くこと、当事者にしっかりと寄り添うことである。一方で、県民がこの制度を認知・理解することが、当事者にとって社会の生きやすさにつながると思うが、どのように周知や告知をしているのか。
また、民間企業、あるいは民間の団体等にも理解や協力を求めることが必要だと思うが、どう取り組んでいるのか。
そして、行政サービスについて先ほど具体的に話したが、県の場合、県営住宅の入居の適用拡大や緩和、あるいは県営病院の面会、手術の同意など、これらの行政サービスをこの制度と同時に拡大適用していく必要があると思うが、どのように考えているのか。
【理事者】
ファミリーシップ制度の導入に当たっては、県民の理解を得ることが重要と考えており、様々な機会を捉えて周知できるよう検討している。
また、民間企業に対しても、制度が固まってからにはなるが、協力のお願いをしていきたい。
また、県の行政サービスについても、昨年度設置した性の多様性に関する庁内連絡会議にワーキンググループを設け、現在どのようなサービスができるか検討を進めている。県営住宅の入居や県立病院での手術の同意などは想定している。
【委員】
限られた時間と人材の中で、要綱を策定する詰めの作業が大変なのは認識しているが、本来は4月1日に制度を運用するときに、県民への周知や理解など、ある程度県の体制が整っていることが理想である。できる限り制度を運用からスタートするのではなく、事前に行政としてやれることをやってもらいたい。
今前向きな回答があったのは、県営住宅の入居、県立病院の手術の同意、恐らく面会も含まれると思うが、これらは具体的に適用拡大すると理解した。それ以外の行政サービスについても、適用拡大をお願いしたい。
続いて、自治体との連携についてであるが、愛知県内54市町村の中で、26の市町が既にパートナーシップ制度またはファミリーシップ制度を導入している。逆に言うと、28の自治体がまだ導入していないため、まだ導入していない自治体に対して、制度の中身をしっかりと伝えながら、制度の理解、普及、浸透について取り組んでもらいたい。
あわせて、既に導入済みの自治体に関しては、恐らく独自の取組として、例えば市営住宅や市立病院で適用拡大していると考えられる。導入していない自治体は、行政サービスを適用していないため、県の制度導入により、導入していない自治体でも、既に導入している自治体が行っているような公営住宅、病院等、行政サービスへの協力が必要である。導入していない自治体には周知とともに、サービスの適用拡大をセットで、より力を入れてお願いしていくべきだと考える。
さらに、導入済みの自治体であっても、パートナーシップ制度だと県のファミリーシップ制度より適用範囲が狭い。したがって、自治体よりも広い本県の制度で、その市町では制度の対象にならない人も同じように行政サービスが使えるよう、市町に働きかけていくべきである。県では使える、市では使えないということを無くすため、同じような制度として働きかけていく必要がある。したがって、その市町のファミリーシップ制度であれ、県のパートナーシップ制度であれ、今後、県が提供拡大していく県営住宅、あるいは病院等のサービスも使えるように、相互の連携を図っていくべきである。
そして、他県との連携について、ファミリーシップ制度は基本的には法的な拘束力がなく、本県で取得したら本県で使えるものであるが、他県へ引っ越すなど、相互に行き来する場合に本県でわざわざ手続をやり直すのではなく、相互連携して、既に証明書等を持っていれば本県でも同様に取り扱うことができるよう、県同士の相互の連携、協力も必要である。
これらの点を踏まえ、自治体間の連携について伺う。
【理事者】
ファミリーシップ制度を活用した行政サービスについては、現在、庁内関係課室と検討を進めており、公営住宅の入居等の行政サービスについても、市町村との相互の連携ができるか検討している。
また、制度を導入していない市町村に対しては、本県の制度の周知を図るとともに、県制度の利用者が、市町村の公営住宅へも入居できるようにするなどの協力を検討する。
他県との連携協力についても、本県の制度が固まった後、各自治体の制度の違い等を踏まえ、その可能性を検討したい。
【委員】
最後に、要望する。
三点あるが、一点目は、4月1日に運用開始とのことだが、できる限り4月1日に向けて、特に県民、民間事業者に対して周知をお願いしたい。もちろん4月1日以降も引き続き、取り組んでほしい。この制度の最大のポイントは、行政や当事者だけでなく、県民や民間事業者、要は社会の理解や浸透であるため、これからも認知を広げてほしい。
二点目は、パートナーシップ制度とファミリーシップ制度が混在する状況について、県民、市民からすると分かりづらく、制度がふくそう化、多重化している印象を持たれてしまう。また、それぞれの制度によって使えるサービスが違うのもよくないため、自治体までコントロールできないが、県が音頭を取り、どこであっても同じような制度が使えたり、理解されるよう努めてもらいたい。
最後に三点目として、こうした制度は、法的な拘束力がないため、賛否いろいろと意見があると思うが、最終的には、民法改正も含めて法制度化という議論も考えらえる。
そうした中で、いろいろな理由があって結婚できない、また、その家族の人々が家族と認められないという事情を踏まえ、この制度で実現できない部分に関して、法律改正を国に求めていくことも考えなければならない。
この制度は、導入することが目的でもなくゴールでもないため、そうした人々が自己肯定感を高め、より生きやすく、社会が多様性を認める制度につながることを切に願う。
【委員】
今のファミリーシップ制度に関連して、知事が全国知事会議で提唱し、国での検討を求めている日本版PACS(民事連帯契約)について伺う。
これは、知事の説明によると、全ての子どもの福祉の観点から、事実婚であっても子どもの共同親権を認めるなど、婚姻に準じた法的保護を与える新たな届出や登録制度であるとされている。
永田敦史委員の発言にもあったように、婚姻や家族という定義の中にどういうものを多様な形として認めていくかは、最終的には、民法の改正にもつながってくる課題だと思う。県が今、ファミリーシップ制度で実現しようとしている実質的な家族の多様性と、国に対して検討を求めている日本版PACS、国でしかできない、こうした子どもを中心にした親の多様な形を認めて、親権等を認めるような制度改正があり、県が独自でやれること、そして国の法律改正によってしかできないことがある。目指している方向性は同じだと思うが、両者の関係について伺う。
【理事者】
ファミリーシップ制度については、愛知県人権尊重の社会づくり条例にある性の多様性への理解増進の取組の一つとして、検討を進めている。
日本版PACSについては、このファミリーシップ制度が結果として使えるのではと、県ができる取組の一つとして考えられている。
【委員】
家族とは何かという、伝統的な家族観や慣習的な考え方ともかなり抵触する部分もあり、国民の意識の変化もあるため、幅広な議論をしてもらい、あるべき社会像、多様性を認める社会に向かっていくことの意義を浸透させてほしい。
もう一点、私学助成、私学の無償化について、6月定例議会で永田敦史委員が提起され、議論があったが、大阪府では、国公立高校と私立高校の授業料を完全無償化する制度の概要を発表している。
これは、これまでの私学助成運動、私学の無償化運動が新たな段階に差しかかりつつあると思われるが、この概要は、まず、これまで私立高校に通う父母の、保護者の家計の所得水準によって補助額を段階的に増やして、実質的に公立高校を選んだ保護者との負担がなくなるような実質的補助、無償化、公平を実現する制度として理解できるが、所得制限そのものを撤廃し、限度なしに、あらゆる所得の子どもたちが享受できる授業料助成を実現しようというものである。大阪府では、現行、年収590万円未満までの世帯を私学助成、授業料助成の対象としていたものを、一挙に全世帯に拡充する。補助額は現行60万円から63万円に増額し、近畿1府4県の私立学校に通う大阪府民も対象としている。
また、大阪府独自のキャップ制というものを打ち出しており、これに参加する学校が対象である。令和6年度は、まず高校3年生から適用し、これを令和8年度まで3年間かけて暫時無償化を実現し、令和8年度に完全無償化が実現するプログラムである。経常費の補助についても単価を段階的に引き上げ、令和8年度までに2万円を増額する中身である。
このキャップ制などを巡り、もちろん歓迎される意見が保護者からはある一方、私立学校の経営サイドやそこに勤める教員からも、いろいろな課題が提起されていると聞いている。
そこで、このキャップ制はどのような制度なのか伺う。
【理事者】
大阪府の現在の授業料軽減補助金は、高木ひろし委員からも説明があったとおり、年収590万円未満の世帯に対して、国の就学支援金と大阪府の補助金を合わせ、60万円を補助上限額としているものである。例えば授業料が65万円の学校の場合、60万円を超える5万円、差額の5万円を保護者からは徴収できず、学校が負担する制度となっている。
このように、補助上限額を超える授業料について学校に負担を求める制度が、大阪府の言うキャップ制である。
なお、大阪府は、先ほどの拡充後の補助制度でも引き続きキャップ制を実施するとのことであり、補助上限額を60万円から63万円に増額して、所得に関係なく全世帯が無償化となる。したがって、授業料が65万円の学校の場合、63万円を超える2万円の部分は保護者から徴収できず、学校の負担となる。
【委員】
そのキャップ制の問題を含め、これまでの私学助成の流れについて、所得制限を一挙に撤廃し、全世帯に拡大することは一見望ましいように思えるが、いろいろな課題があるとも言われている。
この完全無償化と称する大阪府の新しい方針に対して、現在、どのような問題点が考えられているのか。
【理事者】
報道機関等によると、授業料は設置者が決めるという私学の独自性は堅持されるべきであり、学校が決めた授業料を徴収できず学校負担が生じる制度には課題があると言われている。また、キャップ制への参加を取りやめ、無償化の対象とならない学校が出てくる懸念がある、大阪府から通う生徒とそれ以外の生徒で不公平が生じる、そのほか、高所得世帯への恩恵が大きく、子育て負担軽減の観点からバランスを欠くなどの意見がある。
【委員】
高校無償化というか、教育無償化という問題は、令和2年に民主党政権が打ち出した政策に端を発して、国が4,000億円程度の新たな予算を組み、それまでは都道府県が自主的に行っていた授業料助成や経常費助成について、初めて国費が投入されることから、順次始まってきたものと理解している。
その後もいろいろと紆余曲折があり、一旦は公立高校の授業料は完全になくなったが、その後、所得制限を入れて、年収910万円以上の世帯は従来どおり授業料を払ってもらう制度になった。
今度は逆に、私立学校も所得制限をなくし、これは子ども手当などにも共通する考え方であるが、行政サービスとは子どもを主体にして考えれば、親の経済状況に関係なく、等しく提供されるべきサービスである。
一方、その原資となるべき税金は、所得に応じて応能負担で納めてもらうものであり、所得に応じてたくさん納めていただいた一方、その納めた税金が自分には返ってこないという国民の間の一種の不公平感を解消し、負担は応能で、サービスの提供は平等にという考え方は望ましい方向である。
6月定例議会で永田敦史委員が発言したこともそのような趣旨だったと理解しているが、国が支援金という形での支出を維持している下で、都道府県が独自に、今度は所得制限を撤廃した授業料助成を打ち出すとなれば、都道府県の単独の持ち出しが、愛知県の場合は100億円単位で必要になってくるため、財政上の問題は当然ある。
したがって、大阪府の場合は減債基金の積立てなど大阪府特有の事情で、令和5年度から浮いてくるお金をこちらに振り向けようというスキームとのことだが、東京都など財政力のある一部の自治体以外では、100億円単位の独自の支出を持ち出すことは困難である。
しかし、大きな教育無償化、それも所得制限なしの無償化という方向へ全体が動いている下では、本県も現行の制度をどのようにこれに近づけていくのかを議論しなければならない。
そこで、現行の本県の授業料補助制度について、他県と比較してどのような特徴があり、どのような段階にあるのか。
【理事者】
本県の授業料軽減補助金は、現在は年収720万円未満の世帯に対し、県内の私立高校の平均額まで補助する制度で、実質無償化としている。
他県との比較であるが、文部科学省の調査によると、本県よりも高い所得の世帯まで無償化しているのは東京都と福井県のみであり、年収910万円の世帯まで無償化している。
そのほかに、埼玉県が年収720万円未満の世帯まで、神奈川県が年収700万円未満の世帯まで無償化している。
このように、本県の年収720万円未満の世帯まで無償化しているのは、他県と比較しても決して低い数字ではない。
また、本県では、入学納付金についても年収720万円未満まで無償化しており、これは他県にはない特徴である。授業料と同様に入学金も無償化していることから、私学団体からは、全国でもトップクラスの補助であるという評価を得ている。
【委員】
最後に、要望であるが、ある試算によると、高校の授業料助成を全世帯に実質無償化という形に持っていくためには、本県の場合、授業料と入学納付金を合わせて、現行の予算に加え136億円が必要になると聞いている。
当面の目標としては、公立の無償化の水準になっている年収910万円までの世帯の生徒について授業料の助成をし、公私の格差をなくすとしている。したがって、年収720万円から年収910万円の間の層、ここに対する手当は当面必要である。
このことは毎年要望が出ていると思うが、授業料と入学納付金を合わせて、年収910万円までを新たにカバーしようとすると43億円必要という試算も出ているが、これを新年度予算の一つの焦点として実現できるよう、財政当局としっかりと交渉してほしい。
【委員】
一点だけ確認する。先ほど学納金という言い方をしていたが、46万円という本県の補助で、これが全国平均の77パーセントに留まっており、全国との格差が年々広まっているという意見を聞いたことがあるがどうか。
【理事者】
今、本県が40数万円の授業料軽減補助金として、県内の私立高校の平均額まで補助しているが、大阪府が60万円まで補助しているのは、大阪府の授業料の平均が60万円程度のためである。
神奈川県の場合、県内の授業料の平均が45万円、東京都が47万円、埼玉県が39万円であり、関東と比べると本県と大きな差はあまりない。大阪府の補助金が高いのは、県内の私立高校の授業料の平均額であるため、各都道府県によって異なるのが実態である。
【委員】
授業料の平均で基準をつくり補助しているのは理解できるが、入学金を上げたくても、県からもらえるお金が減ってしまうため、制度的に上げたくても上げられないという現状も聞いている。私学の独立性を鑑み、制度的なことも含めて、私学がしっかりと県の教育の一翼を担うことができるよう検討してほしい。
【委員】
性の多様性や、独り親世帯への配慮について伺う。
本県では、令和4年4月1日に愛知県人権尊重の社会づくり条例が施行され、その条例の第15条第2項には、県はその事務または事業を行うに当たり、性的指向及び性自認の多様性に配慮するよう努めるものとするとある。
人権推進課が作成している愛知県職員用のあいちにじいろハンドブックの中には、県民から県へ提出される申請書等について、性別記載欄の必要性を検討し、必要のない性別記載欄を設けないよう取扱いを徹底することが記載されている。
また、そのハンドブックには、窓口や電話対応の留意点も記載されており、夫、妻やお父さん、お母さん、御主人、奥様などという表現は避け、配偶者、保護者の方、御家族の方などという表現を使うこととされている。
こうした対応が、性の多様性への配慮から当然のことであり、独り親の子どもが申請書を書くときに、最初から記載欄に父、母とあったら心を痛めると思われるため、そういった観点からも配慮が必要である。
県のホームページで、夫、妻や父、母という記載欄がある申請書がないか検索したところ、私学振興室が所管する高等学校等奨学給付金支給申請書に、生徒との続柄を記載する欄があり、そこには、父、母、祖父、祖母、その他と印字され、レ点をつけるようになっていた。
この奨学給付金はどのような事業で、どのような人が申請し、申請書の生徒との続柄の欄はどのように活用されているのか。
【理事者】
高等学校等奨学給付金支給費は、教科書費、教材費など授業料以外の教育費負担を軽減するため、国が3分の1、都道府県が3分の2を負担する事業として、平成26年度に創設された。
給付の対象が、高等学校等に通学する生徒のいる生活保護世帯、住民税所得割が非課税の世帯であることから、申請者はこのような世帯の親権者等とされている。
次に、申請書に生徒との続柄の記載を求めている理由であるが、奨学給付金の受給資格を審査する際、生徒の親権者等を特定し、要件を満たす世帯の子であるかを確認するためである。
【委員】
親権者が申請者であるのなら、それほど複雑な内容を記載する欄ではないため、続柄の欄は申請者に記載してもらえばよいのではないか。様式に父、母、祖父、祖母と印字した理由と、どのような経緯でそうなったのかを伺う。
【理事者】
制度が創設された平成26年度当時は、続柄欄に申請者が記入するようになっていたが、令和元年度からは、事務の効率化を図るため、申請書をスキャナーで読み込んでデータ化するOCRという方式を採用し、それまでの記述式からレ点をつける方式へと変更した。
また、外国にルーツを持つ申請者などから、記載に対する質問が多く寄せられたことや提出された申請書に記載ミスが見受けられたことから、親権者の中で大多数を占める父、母などを印字して、レ点をつけるように改正している。
【委員】
事務の効率化や申請者の記載ミスを防ぐ目的であることは分かった。
しかし、最初に話したように、県の条例やハンドブックでは、そのような記載には配慮することになっている。父、母という記載でなく、保護者など別の言い方もあるかと思うが、高等学校等奨学給付金支給申請書の続柄欄の見直しを検討してもらえるのか。
【理事者】
続柄欄については見直しの必要があると思っているが、この給付金は7月1日以降、既に申請が開始されているため、今年度の様式の変更は、学校等の事務に混乱を招くおそれがあることから、今年度中にこの申請書の続柄欄をどのようにすべきか検討し、来年度から様式を変更したい。
【委員】
事務の効率化や記載ミスの防止は大切であると思うが、申請者や子どもたちが書類を記載する際に心を痛めることはあってはならないため、申請書の様式を決める際には配慮してほしい。
【委員】
まず初めに、日本語学習支援基金による助成について伺う。
9月5日に県庁の講堂で、令和5年度ボランティア活動功労者表彰式が行われ、私の地元刈谷市からは、外国にルーツを持つ子どもたちへの学習支援を行っているスリーエスという団体が表彰を受けた。
この団体は2011年に設立し、現在会員が約40人で、小中学校における取り出し授業や、公民館での放課後教室などを行っており、令和4年度に造成された第3次の日本語学習支援基金から助成を受けている団体である。
この第3次の日本語学習支援基金は、2008年度の第1次、2016年度の第2次に比べて基金の予算額も大きく減額され、それに伴い、昨年度の助成額もこれまでより減額され、運営していく資金面で非常に厳しい状況であると代表から聞いた。
そこで、日本語学習支援基金の第3次造成は、目標額に対してどのような状況であるのか、また、助成額の算定ルールについて、第3次の1年目であった昨年度から今年度、変更があったのか伺う。
【理事者】
日本語学習支援基金の第3次造成の目標額は1億円としているが、これまでに、県内企業等から約2,740万円の寄附をもらい、昨年度、県が拠出した5,000万円と合わせて、現時点で合計7,740万円を造成した。
助成額の算定ルールについては、昨年度から変更はない。
【委員】
2008年の第1次造成のとき、企業からの寄附は2億4,500万円であった。第2次、2016年のときの寄附は7,500万円であった。
そして今回は、目標の5,000万円に対して、途中ではあるが、現時点では2,740万円しか寄附が集まっていないため、第1次造成や第2次造成に比べれば、当然、大きく減額されていることが推測できる。
もう一つ言うと、この民間の寄附に対する意欲、この事業に対する意欲が以前に比べて減少しているのではないか。
日本語学習支援基金は、基金を毎年取り崩していくため、数年後には財源がなくなると思うが、その後はどうしていくつもりなのか。
【理事者】
第3次造成を行うことについては、2021年12月に地元経済団体に協力を依頼し、賛同してもらったときに、この基金は2026年度で終了し、その後は基金によらない支援体制を整備することで、各経済団体と合意している。
このため、昨年6月に、地元経済団体、行政、教育委員会、大学、愛知県国際交流協会を構成員とする日本語学習支援検討会議を設置し、地域日本語教育に取り組む市町村等に対して補助対象経費の2分の1を助成する愛知県地域日本語教育推進補助金の活用促進や、経済団体等と連携した企業ボランティア派遣の取組拡大など、基金によらない新たな支援を検討している。
【委員】
今回の日本語学習支援基金から、県の補助金を活用した支援等に今後移行していくとのことであるが、愛知県地域日本語教育推進補助金というのは既にある制度とすれば、基金がなくなって、2027年度以降にこちらの補助金にそれぞれの団体に移行してもらうのではなく、今からでも可能な団体については移行を働きかける必要がある。
その場合、市町との連携が重要であるが、市町とは具体的にどのような検討を進めているのか。
【理事者】
市町と連携協力して具体的な支援策を検討するため、今年5月に、基金の助成を受けている団体が所在する市町を中心に呼びかけ、26市町が参加するワーキンググループを設置した。
ワーキンググループでは、各教室の運営体制、収支状況、抱えている課題などを把握するため、7月から8月にかけて、各市町の担当者が地元の教室を個別訪問するなどして、ヒアリング調査を実施した。
その調査結果によると、資金不足のほか、人材不足や会場確保など、教室ごとに抱えている悩みも異なることから、教室ごとに課題を整理するとともに、今後は、県の補助制度の活用等に向けた各市町における課題の洗い出しを行う。
引き続き市町、経済団体等と連携協力し、基金終了後も各教室が継続して円滑に運営できるよう、新たな支援策の検討を進めていく。
【委員】
寄附に頼った基金による助成というやり方から、寄附に頼らない地域日本語教育推進補助金への変更という流れはよく分かった。
ただし先ほどのスリーエスの代表に話を聞くと、地元の刈谷市から、愛知県地域日本語教育推進補助金があるという話は全く聞かされていないといっていたため、基金が無くなってから移行するのではなく、今のうちから移行してもらうのもよいのではないかと思う。
一方で、現状、物価や燃料の高騰により、教室としては大変苦しんでいると聞く。
そこで、今の基金による助成の増額を、来年度以降検討する考えがないのか。
【理事者】
現時点で、物価高騰に対する支援策は予定していないが、地域日本語教室の運営団体から、物価高騰の影響で資金のやりくりに苦慮しているとの声も届いているため、地域日本語教室が継続して運営できるよう、物価高騰による助成の増額について前向きに検討する。
【委員】
前向きに検討するということで、期待したい。
どれぐらい不足しているかというと、第1次、第2次造成のときは、1教室当たり1万7,000円であったものが、今は5,000円になった。
先ほどの団体でいうと、一月当たり大体10万円は必要経費が要るとのことであり、交通費や手作りの教材費、子どもたちの意欲を造成するためのお楽しみ会などに必要であるが、今はその半分ぐらいしかもらえていない。今は過去の積立てで何とかやりくりしているが、二、三年後にはできなくなるかもしれないという声を聞いた。
この事業は、ただ単に子どもにとって日本語が学べるという利点があるだけではなく、その親にも当然、その子どもたちが日本語を教えてもらえたり、あるいは子どもたちがそういう場所にいることによって親も安心して仕事に就くことができ、子どもだけではなく親にとってもよい制度である。また、教える先生にとっても、長寿社会のよいモデルだと聞いた。現に、この団体で活動する先生の中には、元トヨタ系の重役なども在籍しており、89歳で生き生きとして今でもボランティアとして活動している人もいるとのことである。
そういった意味では、多くの方にとって非常によい日本語教室であるため、ボランティアの人々の善意に甘えるだけでなく、必要なものは県で支援し、ボランティア活動を安心してできるようにしてほしい。
もう一点、県の文化財の指定について伺う。
地元の刈谷市には、刈谷市無形民俗文化財に指定されている野田雨乞笠おどりがある。
この野田雨乞笠おどりは、正徳2年、1712年から野田八幡宮で、雨乞いの儀式として引き継がれており、2人1組の踊り手が太鼓を中心に向かい合い、つつろという短いばちを持って踊る歴史の長い踊りである。
刈谷市では、昭和59年、1984年に、この祭りを刈谷市無形民俗文化財に指定しており、野田雨乞笠おどりを県の無形民俗文化財にという願いが、保存会や関係者の間には以前からある。
県の文化財の指定は、愛知県文化財保護審議会で、指定を可とする旨の答申があったものを知事が指定することは承知している。
そこでまず、この県の文化財保護審議会の概要、具体的には構成員や、毎年度の開催時期とその回数、当日の流れについて伺う。
【理事者】
愛知県文化財保護審議会は、毎年度2回ずつ開催しており、ここ数年は7月と1月に開催している。委員は20人であり、美術工芸、建造物など、各分野に精通した学識経験者に委嘱している。また、審議会には、分野ごとに六つの部会があり、審議会当日は、まず、それぞれの部会で諮問案件を審議してもらい、その結果を基に全体会で議論の上、答申を得ている。
【委員】
それでは、審議会で、指定の答申について審議する際は、どのような点に着目して審議するのか、また、答申が出る件数は、毎回何件ぐらいあるのか。
【理事者】
審議会では、諮問された文化財に関する調査結果を参考にして、歴史上、芸術上、学術上の観点から重要性を判断し、指定にふさわしいかを審議してもらっている。
1回の答申件数は、ここ数回平均して三、四件であり、直近の7月の審議会でも、三件の文化財について指定を可とする答申を得た。
【委員】
審議会の内容は分かった。
それでは、その審議会に指定を諮問するための文化財をどのように決めるのか。特に、今回のように祭りなど形のない文化財は、何を基準に審議会に提案しているのか。
【理事者】
諮問する案件であるが、審議会の委員と事務局である文化財室で調査を行い決めている。
県指定文化財については、原則として、市町村の指定文化財が対象となる。祭りなどの無形民俗文化財については、その起源や変遷のほか、保存会の組織状況、継承の体制などを調査している。
今後も、個々の文化財についてその価値を十分に調査し、審議会の意見を聞きながら指定を検討したい。
【委員】
今の三点は、非常に大切な評価の視点であると思う。特に、現状どういった活動をしていて、それが次の世代へ継承できるかどうかは重要である。
日本やふるさとに昔から伝わっている歴史、文化、風習、祭りなどを次の世代に継承していくこと、これも我々大人の使命の一つであると感じる。そうした点で、県の文化財の指定を受けることは、指定を受けることが目的ではなく、次の世代へ継承していくことが本来の目的であり、そのような次の世代へ継承しようとする活動や努力の結果として、文化財に指定してもらえると感じた。
一方、こうした文化財の指定等を受けることは、単に箔がつくから指定してほしいのではなく、次の世代へ継承していくという、やっている人たちにとってモチベーションが高まることにつながる。継承の重要性を改めて認識したため、これからも継承に取り組んでもらうよう伝えていきたい。
【委員】
子ども、若者の支援について伺う。
青少年をめぐる問題は、不登校やいじめをはじめとして、ニートやひきこもりなど多岐にわたるとともに、一層深刻さを増しており、複合化している。
例えばいじめの問題から考えると、1人がいじめられている、あるいはいじめている子がおり、その子の背景を知るために家庭を調査すると、例えば貧困が存在していたり、その貧困の理由が、家族が障害者であるなど、いじめ一つを取ってもいろいろな問題が絡み合い、それが一部表面化している場合が多いと感じる。
県は、このような状況に対応するため、子ども・若者支援地域協議会などの設置を市町村に働きかけていると聞いているが、県内市町村における設置状況について伺う。
【理事者】
困難な状況にある子ども・若者に対しては、教育、福祉、保健、医療、雇用等の関係機関・団体が連携し、一人一人に寄り添い、年齢によって途切れることなく継続した支援を行うことが重要である。
そこで、本県では、関係機関・団体のネットワークによる支援を行う子ども・若者支援地域協議会の設置と、様々な相談に対するワンストップ窓口である子ども・若者総合相談センターの設置を、子ども・若者育成支援推進法に基づき、住民により身近な地域である市町村に働きかけている。
本県では、2023年3月末現在で、県内54市町村のうち18市町に子ども・若者支援地域協議会及び子ども・若者総合相談センターが設置されており、全国で最も多い設置数となっている。
これは、法律で支援の対象となる30歳代までの県内人口の73.4パーセントをカバーしている。
【委員】
全国で最多の設置数というのは、非常に評価できる。
ただ、54市町村のうち18市町で30歳代までの73.4パーセントをカバーしていることは、人口の少ない市町が比較的未設置だと感じる。
未設置の自治体について、設置できない理由を調査しているのか、また現状をどのように把握しているのか。
【理事者】
子ども・若者支援地域協議会未設置の市町村に対して、毎年、子ども・若者支援地域協議会の設置に関するアンケートを実施し、設置に当たっての課題等の把握に努めている。
アンケートによれば、市町村内で協議会の必要性が十分に認識されていない、協議会の担い手となる人材が不足していることなどが、主な課題として挙げられている。
【委員】
担い手不足について、小さな市町だと難しい部分があると思うが、必要性が十分に認識されていないのは課題に感じる。
子ども・若者支援地域協議会や子ども・若者総合相談センターが未設置の自治体に対して、県としてどのような取組を行っているのか。
【理事者】
未設置市町村への働きかけとして、子ども・若者支援の関係者を対象とした連絡会議や、未設置市町村向けの研修会を開催するとともに、未設置市町村への個別訪問を実施している。
連絡会議や研修会では、協議会等の設置意義やメリットに加え、既設置市町村における関係機関の連携事例を紹介するなど、協議会設置の必要性の理解に努めている。
また、個別訪問では、市町村個別の課題を聞き取り、意見交換や助言等をしている。
さらに、本年度からは新たに、担い手不足を課題とする市町村向けに、グループワークや事例検討といった実践的なカリキュラムにより、相談技法等を習得する研修を実施し、人材育成を支援していく。
【委員】
県からもいろいろと支援や助言などの取組をしていることは理解したが、設置後の支援の質についても重要である。
県内の自治体の中には、伴走支援に力を入れるなど、先進的な取組をしているところもある。例えば豊橋市は、この伴走支援を以前から民間に委託し、連携して取り組んでいるが、非常に重要な取組だと感じる。
子ども・若者支援地域協議会にしても、子ども・若者総合相談センターにしても、会議などを経て、案件ごとに対応する部署を決定するのが一般的だと思うが、複数の問題が絡み合っていると、個人に寄り添い、時にはその家庭まで入っていかないと問題の根本的な解決にならない場合が多い。
そこで、このような取組を県内全体に広められないか、県の考えを伺う。
【理事者】
豊橋市や西尾市等、県内の子ども・若者総合相談センターの中には、相談のたらい回しを防ぎ、適切な機関につなぐ役割に加えて、相談者に同行したり訪問する、より寄り添った支援を行っている先進的な市町村もある。
そこで、本県では、子ども・若者支援の関係者を対象とした連絡会議や設置市町村向けの研修会で、積極的に先進的な取組の紹介をするとともに、市町村の担当者間の交流を図り、研修後でも情報交換ができるような環境づくりを支援している。
実際に研修会等に参加した方からは、具体的な成功事例等を交えた取組の紹介等、今後の取組の参考になった、日頃交流のない市町村の担当者と交流でき、有意義な意見交換ができたなど前向きな意見が多いことから、今後も積極的に先進事例を紹介し、各相談センターの機能向上に向けた支援に取り組んでいく。
【委員】
設置が各自治体、市町村であり、県としてなかなか指導や支援の域を越えることはできないと思うが、人材の育成は重要であり、しっかり取り組んでほしい。
もう一点は、エリアの概念が必要ではないかと思う。小学生、中学生は各自治体が所管するためおおむね問題ないと思うが、高校生以上の場合、特に高校生が問題を抱えている場合、必ずしもその通っている学校の自治体に住んでいないこともある。例えば私の地域である豊橋市の場合、東三河地域で連携するといった概念も必要である。
各市町村だけでなく、ある程度広域に見ながら連携を図ることができると、より行政サービスが充実していくと思うため、この点も念頭に置きながら、これからの支援を継続してほしい。
【委員】
私からは、昨年の6月定例議会の委員会で質問した後の状況確認になるが、愛知県立芸術大学のメディア映像専攻が昨年の4月に開設したときに、10人の新1年生が入学したと聞いた。
昨年度、メディア映像専攻の募集人員10人に対して、全国から79人の応募があったと聞いたが、今年度の志願者数及び志願者の県内、県外からの人数内訳について伺う。
【理事者】
メディア映像専攻の2023年4月の入学生の志願者数については、募集人員10人に対し103人の応募があった。志願者のうち県内、県外の人数内訳は、愛知県内から44人、県外からは59人で、全国から応募があった。2年目ではあるが、応募倍率も7.9倍から10.3倍と増加している。
【委員】
昨年度入学した学生は、今年は2年生となって、現在、どのような内容の授業を受講しているのか。
【理事者】
授業の内容について、1年生では、コンピューターによる3次元画像、3Dプリンターなどの活用手法やメディア映像の制作技術やコンピューターグラフィックスを利用した映像表現など、メディア映像表現に必要となる造形力を身につけるための基礎的な演習を行った。
2年生では、メディア映像専攻に関する、より専門的で実践的な演習を行う。具体的には、メディア映像スタジオでの本格的な撮影、編集や照明の調整を学んだり、CGスタジオで人や物の動き、物理シミュレーションによる3DCG・アニメーションなどの制作を行っている。
また、著名な映画監督である堤幸彦氏をはじめ、国内外で活躍しているアーティストを特任教授として数か月交代で招聘し、特別講義などを行っている。
メディア映像専攻では、質の高い教育の機会を多く提供することで、最新情報を取り入れた教育を展開しており、卒業までにメディア映像のスペシャリストを育成するための教育を進めていく。
【委員】
学生もいろいろなことを学ぶ上で、自分が創ったものを見てもらいたいと感じている。
昨年度、学生が作品を発表する場をつくってあげてはどうかと話したが、それから1年たち、具体的な取組事例などがあれば伺う。
【理事者】
学生の作品を発表する場についてであるが、授業の一環として、学生が制作した作品を発表する場を、まずは、授業の中で設けている。
また、2年生の中には、コンペ等への応募を目指している学生もおり、大学として国内外のコンペ等の情報を提供している。
また、展示会などの発表の場では、愛知県立芸術大学をはじめ、県内の芸術系5大学の学生、卒業生によるデジタルメディア作品の展示会である大名古屋電脳博覧会が、名古屋市文化振興事業団の主催で、2023年10月4日から9日まで開催されていたが、企画展にもメディア映像専攻の学生が出展していた。
さらに、ホーユー株式会社の創立100周年の記念事業として、愛知県立芸術大学と産学協働による企画展が、本日から、名古屋市東区のホーユーヘアカラーミュージアムで開催されており、この企画展にもメディア映像専攻の学生が出展している。
メディア映像専攻の学生が、学習の成果をコンペや展示会などで発信できるよう指導していきたい。
【委員】
様々な具体例を示してもらったが、今の具体例は基本的に愛知県内、あるいは国内の取組であると思う。
幸いなことに、2026年にアジア競技大会・アジアパラ競技大会が本県で開催されるため、そのような国際大会や国際的なイベントが、今後、愛知県内でも予定されている中、そうした場で活躍できる人材が、メディア映像専攻から今後多く輩出されるのを期待しているが、大学としてはどのような人材育成を行っていくのか。
【理事者】
メディア映像専攻の学生は、4年間でコマーシャル映像をはじめ、アニメーション、メディアアートなど様々な制作技術を学ぶこととしており、就職先については、テレビ局やCG映像プロダクション、ゲーム会社など情報産業を想定している。そして、そのような企業に就職する学生やメディアアーティストを目指す学生などが、国際的なイベントなどに関わる機会もあると考えている。
また、先ほど紹介したメディア映像専攻の特任教授である堤幸彦氏は、10月8日に開催された中国・杭州のアジア競技大会閉会式のセレモニーで実施された愛知・名古屋のPRパフォーマンスの総監督を務めてもらっている。
そのような国際的なイベントで活躍されている堤幸彦氏の指導に触れた学生が、将来、産業界や芸術の分野で国際的に活躍できることを期待しており、大学としてもそのような人材を輩出できるよう、しっかり指導、教育を行っていきたい。
【委員】
メディア映像専攻は、開設してからまだ1年しかたっていないため、今後、卒業生が企業などに就職したという実績がない中、今の2年生が、来年度にはそろそろ就職活動を始める時期にかかってくる。そこで、学生の就職支援のために、大学としてどのような取組を行っているのか。
【理事者】
メディア映像専攻の学生の就職支援については、現時点で就職を希望している学生から希望する業界や企業などを聞き取っており、その企業の採用担当者と直接交渉を行うなど、求人開拓を行っている。また、2024年度に大学内で企業説明会を開催することを予定しており、多くの企業に参加してもらえるよう働きかけている。
【委員】
デジタル化やDXの中で、SNSを含め、動画あるいは映像というのは、すごく刺さるものがある。
今後、メディア映像専攻の学生たちにとって、デジタル化やDXは高い親和性があるため、県も予算をつけていると思うが、この大学からよりよい人材が出てくるよう、さらに力を入れて取り組んでほしい。
( 委 員 会 )
日 時 令和5年10月10日(火) 午後0時58分~
会 場 第6委員会室
出 席 者
黒田太郎、杉江繁樹 正副委員長
松川浩明、中野治美、神戸健太郎、山田たかお、杉浦正和、増田成美、
高木ひろし、鈴木 純、加藤貴志、神谷まさひろ、永田敦史 各委員
県民文化局長、県民生活部長、人権推進監、女性の活躍促進監、文化部長、
関係各課長等
委員会審査風景
<付託案件等>
○ 議 案
第103号 令和5年度愛知県一般会計補正予算(第4号)
第1条(歳入歳出予算の補正)の内
歳 出
第3款 県民環境費
(結 果)
全員一致をもって原案を可決すべきものと決した議案
第103号
○ 請 願
第 7 号 「小中高生の新型コロナワクチン接種後体調不良者への合
理的配慮」について(県民関係)
第 12 号 「愛知県に『学校給食無償化補助金』の創設を求める」に
ついて(県民関係)
(結 果)
賛成者なしをもって不採択すべきものと決した請願
第7号
賛成少数をもって不採択すべきものと決した請願
第12号
<会議の概要>
1 開 会
2 口頭陳情(2件 請願第12号及び陳情第31号関係)
3 議案審査(1件)
(1)理事者の説明
(2)質 疑
(3)採 決
4 請願審査(2件)
5 委員長報告の決定
6 一般質問
7 閉 会
(主な質疑)
《議案関係》
【委員】
予算が上程された県文化施設の活性化を図るための県計画について伺う。
今年の8月2日だが、読売新聞に芸文センター利用者低迷という見出しで、利用者数が1994年の約285万人をピークに減少傾向にあり、コロナ禍もあって最近では、レストランやアートショップが撤退し、空き店舗になっているという報道があった。
そのような背景もあり、今回の活性化のための基本計画になると思うが、この文化施設活性化基本計画を策定するに至った背景及び計画の策定に際し、何を調査検討し、どのような内容の計画を策定するつもりなのか。
【理事者】
今回の基本計画の対象施設である愛知県美術館、愛知県芸術劇場などから構成される愛知芸術文化センター栄施設と愛知県陶磁美術館は、多彩なテーマの企画展や質の高い舞台芸術公演を開催しており、両施設とも多くの人々から高い評価を得ている。
その一方で、芸術文化センターは、名古屋の中心である栄という立地や、建物全体の空間を有効活用できておらず、また、陶磁美術館では、建物や広大な敷地などのポテンシャルを生かすことができていないため、ともに集客やにぎわいの創出に苦労しており、レストランやショップなどの撤退につながっている。
そこで、昨年12月に策定したあいち文化芸術振興計画2027で、芸術文化センターをはじめとした県文化施設では、今後一層の活性化を図るため、指定管理者制度やコンセッション方式、地方独立行政法人制度の導入など、運用手法や経営形態を含めて、改めて在り方の検討を行うこととした。
基本計画の策定と策定に伴う調査検討については、芸術文化センター内の施設、建物及び陶磁美術館で、現状評価、先進事例の調査、民間事業者の施設運営の参画意向調査、様々な運営手法や経営形態の比較検討、新たな運営手法を導入する場合のスケジュールなどについて調査検討を行い、施設の活性化を図る上で効果的な維持管理、運営の手法を導き出すことを予定している。
この調査検討結果に基づいて策定する基本計画では、芸術文化センター、陶磁美術館の活性化を図るため、施設が持っているポテンシャルを十分に発揮できる、今後の望ましい運営手法や経営形態及びそれらを導入する場合のスケジュールを定める予定である。
【委員】
基本計画の中で、指定管理者、コンセッション、地方独立行政法人など、様々な形態の比較検討を行うということであった。
基本計画の策定時期は来年3月とのことであるが、この後、新しい形態に移行するためには、一定の手順と時間が必要になると思うが、基本計画策定後の、来年4月以降のスケジュールについて伺う。
【理事者】
計画策定後のスケジュールについては、今回策定予定の基本計画で、今後の望ましい運営手法や経営形態とともに、新たな運営手法を導入する場合の導入スケジュールを示す予定であるため、現時点では未定である。
なお、参考として、博物館・美術館の分野における唯一の地方独立行政法人であり、テーマの異なる六つの博物館・美術館を一体的に運用する大阪市博物館機構の例では、2017年3月に基本プランを策定後、定款や中期目標、中期計画の策定をはじめとした約2年間の設立準備期間を経て、2019年4月に設立されている。
【委員】
最近の文化施設の運営では、以前からの学芸員の役割だけではなく、アートマネジメントができる専門人材を求めていると聞いている。
アートマネジメントとは、例えば美術館に来る人のニーズを捉えて作品を選ぶことや、地域にふさわしい芸術を展示し、地域を活性化させようとする努力や活動など、芸術を題材とする経営を意味し、企業であれば市場調査、販売企画、経理やコンプライアンスなどを管理するものと聞いている。
答弁の中でも名前が挙がった大阪市博物館機構でも、地方独立行政法人化の効果として、専門人材の安定的確保が一番に掲げられている。
本県としても、この文化の創り手と受け手をつなぐアートマネジメントができる専門人材の育成が必要と思うが、この育成についてどのように考えているのか。
【理事者】
愛知の文化芸術を未来につなぐため、文化芸術の担い手のみならず、文化芸術と県民をつなぐ視点を持った、アートマネジメントなどに関する専門人材を育成し確保することは、県の重要な役割である。
そのため、今回の基本計画で、芸術文化センター、陶磁美術館といった県の文化施設が新たな運営手法や経営形態を導入することとなった場合でも、文化芸術の現場における実践的な知識と技能を備え、文化芸術と地域社会をつなぐことができる専門人材を確保し、育成していくことは必要不可欠である。
なお、あいち文化芸術振興計画2027でも、基本課題の一つとして、文化芸術と県民をつなぎ、支える人材の育成確保を掲げているため、実践的な研修の実施など各種施策を引き続き推進し、専門人材の育成に努める。
【委員】
最後に、要望する。
文化芸術の発信は、人を引き込もうとする観光振興とも大きな関連性がある。
2015年、本県では愛知の魅力を磨き上げ、多くの人に来てもらうため、あいち観光元年を宣言した。様々な取組が少しずつ成果を上げてきていると思う。3年後には、アジア競技大会・アジアパラ競技大会がこの愛知で行われる。そして、リニア新幹線が開通すれば、愛知の注目度はさらに高まると思う。
そうした中で、今回の基本計画の策定では、先ほど、地域のにぎわいづくり、新たな人流の創出との言葉があったが、栄地区の活性化だけではなく、本県全体の魅力を高めるという思いを持って、この事業を進めてもらいたい。
《請願関係》
【委員】
請願第12号について、先ほど請願者が説明したように、そもそも学校給食費の無償化は、子育て世代の負担軽減につながる、可処分所得が上がることと、給食は教育活動の一環であり、義務教育は無償とするという教育の在り方という点からも、私自身は賛成である。
そして、こうした教育政策は、基本的にはどこで生まれた、どこで育ったかなどの教育格差がないように、さらに言えば、親や家庭の経済状況によって子供の教育格差が生まれないようにするため、国が一律でやるのが望ましい。
一方で、地方自治体が独自でやることを否定するつもりはなく、自主性、主体性を持ってその自治体が取り組むことに、県が補助していくことも必要である。
本委員会に付託されたことは、特に私立学校に関係すると思うが、私の選挙区である安城市では、この9月から学校給食費の無償化を実施した。
給食費の無償化は、基本的には、多くの自治体がやっているように、もともと徴収するものを取らないのが基本であると思うが、安城市では、市外の小中学校に通っている、あるいは特別支援に通っている子どもにも補助している。
具体的には、1食当たり小学校で255円、中学校で290円を、給食の日数分支給するやり方である。そうした意味で、給食を取っていない人はもともと無料であるが、給食を取っていない場合でも、日数分の支給が行き渡って公平になる。
さらに言うと、アレルギーがあるなど、不登校の子どもはもともと欠食をしている。安城市の場合、予算ベースで200人ほどいるが、その子どもたちの分も申請すれば補助している。
いろいろな考え方があると思うが、とにかく経済的負担も含めて平等でとのことも含めて、安城市のやり方などいろいろな方法がある中で、学校給食の無償化は可能であることを意見としてお伝えする。
《一般質問》
【委員】
本県は8月17日に、来年4月1日からファミリーシップ制度の導入を目指すため、その検討を開始すると公表した。
ファミリーシップ制度とは、様々な事情によって婚姻制度を利用できないカップル及び生計を同一にする子どもらの家族について、継続的に家族として共同生活を行う旨を約束した関係を自治体が証明する制度である。
従来、パートナーシップ制度でやっているところが多いが、それを拡大して、性別、同性、異性問わず全てのカップル、あるいは子どもを含めたより広い範囲であるファミリーシップ制度とした点について、高く評価している。
このことによって、まずは、何よりも当事者が、社会や行政から家族と認められることで、自己肯定感につながり、前向きに生きることができる。そして同時に、証明書が発行された自治体で、公営住宅の入居、公立病院の面会や手術の同意など、同性パートナーなどでも家族と同等の行政サービスを受けられる。あるいは民間の金融、保険、通信などで、家族割や家族カード、保険の受け取りといったサービスも受けられる。
そこで、まず今回、パートナーシップ制度ではなく、より広いファミリーシップ制度にしたその経緯について、確認したい。
こうした制度の導入については、制度の当事者の声を聞き、反映すべきだと思う。関係団体のヒアリングを行ったとは聞いているが、この関係団体は当事者なのかどうか、当事者の声を聞いているのか。
一方で、こうしたLGBTQあるいは人権に関することは、思想的、宗教的、主観も含めて、賛否が大きく分かれることがある。
そうした中で、反対者の意見についても、合理的な理由があるかもしれないため、当事者以外の声を聞くことも必要と思っている。
もう一点が、今回、本県では、条例ではなく要綱にしたとのことであるが、要綱にした理由、あるいは要綱と条例の違いがあれば伺う。
【理事者】
最近では、異性カップルや子どもらを含んだファミリーシップ制度を導入する自治体も増えており、こうした状況を踏まえ、今年度の第1回愛知県人権施策推進審議会でパートナーシップ制度の導入に向けた検討をするよう意見があった。
そこで、関係団体等にヒアリングしたところ、異性カップルを含んだ幅広いものにした方が、望まないカミングアウトにつながらないことや、また最近では、子どもを育てるカップルも増えているとのことであったため、異性カップルや子どもらを含んだファミリーシップ制度が望ましいと判断し、事務局案を示した。
なお、ヒアリングは、LGBT関係の団体や有識者からであり、当事者からの意見を参考にしている。
また、県内の市町村でも、異性カップルや子どもらを含んだファミリーシップ制度を導入している市町村も増えており、そうした市町村との連携を考慮すると、県としては幅広い対象とする方が望ましいと考えた。
条例でなく要綱とした理由については、2022年4月1日に施行した愛知県人権尊重の社会づくり条例で、性の多様性に対する理解増進が盛り込まれており、ファミリーシップ制度はこの条例の理念を具体化した取組の一つであるため、要綱により制度を運用していくこととした。
条例でも要綱でも、ファミリーシップ制度は自治体独自の制度であることから法的な効力はなく、新たな権利の発生や義務の付与などはないため、条例でも要綱でも法的な効果の違いはない。
また、幅広く県民の意見を聞く機会としては、現在、人権施策に関する基本計画を策定中であるが、その中でファミリーシップ制度の導入についても盛り込むこととしており、基本計画のパブリックコメントを行う中で、ファミリーシップ制度について県民の意見も伺いたい。
【委員】
パブリックコメントも当然必要であるが、一度テーブルに着いて反対する立場の人の意見も聞き、当事者の人々が結果的に苦しむことが無いよう、なるべく感情的、思想的な対立を避けられるよう努力してほしい。
続いて、この制度を導入するに当たり一番重要なのは、もちろん当事者の声を聞くこと、当事者にしっかりと寄り添うことである。一方で、県民がこの制度を認知・理解することが、当事者にとって社会の生きやすさにつながると思うが、どのように周知や告知をしているのか。
また、民間企業、あるいは民間の団体等にも理解や協力を求めることが必要だと思うが、どう取り組んでいるのか。
そして、行政サービスについて先ほど具体的に話したが、県の場合、県営住宅の入居の適用拡大や緩和、あるいは県営病院の面会、手術の同意など、これらの行政サービスをこの制度と同時に拡大適用していく必要があると思うが、どのように考えているのか。
【理事者】
ファミリーシップ制度の導入に当たっては、県民の理解を得ることが重要と考えており、様々な機会を捉えて周知できるよう検討している。
また、民間企業に対しても、制度が固まってからにはなるが、協力のお願いをしていきたい。
また、県の行政サービスについても、昨年度設置した性の多様性に関する庁内連絡会議にワーキンググループを設け、現在どのようなサービスができるか検討を進めている。県営住宅の入居や県立病院での手術の同意などは想定している。
【委員】
限られた時間と人材の中で、要綱を策定する詰めの作業が大変なのは認識しているが、本来は4月1日に制度を運用するときに、県民への周知や理解など、ある程度県の体制が整っていることが理想である。できる限り制度を運用からスタートするのではなく、事前に行政としてやれることをやってもらいたい。
今前向きな回答があったのは、県営住宅の入居、県立病院の手術の同意、恐らく面会も含まれると思うが、これらは具体的に適用拡大すると理解した。それ以外の行政サービスについても、適用拡大をお願いしたい。
続いて、自治体との連携についてであるが、愛知県内54市町村の中で、26の市町が既にパートナーシップ制度またはファミリーシップ制度を導入している。逆に言うと、28の自治体がまだ導入していないため、まだ導入していない自治体に対して、制度の中身をしっかりと伝えながら、制度の理解、普及、浸透について取り組んでもらいたい。
あわせて、既に導入済みの自治体に関しては、恐らく独自の取組として、例えば市営住宅や市立病院で適用拡大していると考えられる。導入していない自治体は、行政サービスを適用していないため、県の制度導入により、導入していない自治体でも、既に導入している自治体が行っているような公営住宅、病院等、行政サービスへの協力が必要である。導入していない自治体には周知とともに、サービスの適用拡大をセットで、より力を入れてお願いしていくべきだと考える。
さらに、導入済みの自治体であっても、パートナーシップ制度だと県のファミリーシップ制度より適用範囲が狭い。したがって、自治体よりも広い本県の制度で、その市町では制度の対象にならない人も同じように行政サービスが使えるよう、市町に働きかけていくべきである。県では使える、市では使えないということを無くすため、同じような制度として働きかけていく必要がある。したがって、その市町のファミリーシップ制度であれ、県のパートナーシップ制度であれ、今後、県が提供拡大していく県営住宅、あるいは病院等のサービスも使えるように、相互の連携を図っていくべきである。
そして、他県との連携について、ファミリーシップ制度は基本的には法的な拘束力がなく、本県で取得したら本県で使えるものであるが、他県へ引っ越すなど、相互に行き来する場合に本県でわざわざ手続をやり直すのではなく、相互連携して、既に証明書等を持っていれば本県でも同様に取り扱うことができるよう、県同士の相互の連携、協力も必要である。
これらの点を踏まえ、自治体間の連携について伺う。
【理事者】
ファミリーシップ制度を活用した行政サービスについては、現在、庁内関係課室と検討を進めており、公営住宅の入居等の行政サービスについても、市町村との相互の連携ができるか検討している。
また、制度を導入していない市町村に対しては、本県の制度の周知を図るとともに、県制度の利用者が、市町村の公営住宅へも入居できるようにするなどの協力を検討する。
他県との連携協力についても、本県の制度が固まった後、各自治体の制度の違い等を踏まえ、その可能性を検討したい。
【委員】
最後に、要望する。
三点あるが、一点目は、4月1日に運用開始とのことだが、できる限り4月1日に向けて、特に県民、民間事業者に対して周知をお願いしたい。もちろん4月1日以降も引き続き、取り組んでほしい。この制度の最大のポイントは、行政や当事者だけでなく、県民や民間事業者、要は社会の理解や浸透であるため、これからも認知を広げてほしい。
二点目は、パートナーシップ制度とファミリーシップ制度が混在する状況について、県民、市民からすると分かりづらく、制度がふくそう化、多重化している印象を持たれてしまう。また、それぞれの制度によって使えるサービスが違うのもよくないため、自治体までコントロールできないが、県が音頭を取り、どこであっても同じような制度が使えたり、理解されるよう努めてもらいたい。
最後に三点目として、こうした制度は、法的な拘束力がないため、賛否いろいろと意見があると思うが、最終的には、民法改正も含めて法制度化という議論も考えらえる。
そうした中で、いろいろな理由があって結婚できない、また、その家族の人々が家族と認められないという事情を踏まえ、この制度で実現できない部分に関して、法律改正を国に求めていくことも考えなければならない。
この制度は、導入することが目的でもなくゴールでもないため、そうした人々が自己肯定感を高め、より生きやすく、社会が多様性を認める制度につながることを切に願う。
【委員】
今のファミリーシップ制度に関連して、知事が全国知事会議で提唱し、国での検討を求めている日本版PACS(民事連帯契約)について伺う。
これは、知事の説明によると、全ての子どもの福祉の観点から、事実婚であっても子どもの共同親権を認めるなど、婚姻に準じた法的保護を与える新たな届出や登録制度であるとされている。
永田敦史委員の発言にもあったように、婚姻や家族という定義の中にどういうものを多様な形として認めていくかは、最終的には、民法の改正にもつながってくる課題だと思う。県が今、ファミリーシップ制度で実現しようとしている実質的な家族の多様性と、国に対して検討を求めている日本版PACS、国でしかできない、こうした子どもを中心にした親の多様な形を認めて、親権等を認めるような制度改正があり、県が独自でやれること、そして国の法律改正によってしかできないことがある。目指している方向性は同じだと思うが、両者の関係について伺う。
【理事者】
ファミリーシップ制度については、愛知県人権尊重の社会づくり条例にある性の多様性への理解増進の取組の一つとして、検討を進めている。
日本版PACSについては、このファミリーシップ制度が結果として使えるのではと、県ができる取組の一つとして考えられている。
【委員】
家族とは何かという、伝統的な家族観や慣習的な考え方ともかなり抵触する部分もあり、国民の意識の変化もあるため、幅広な議論をしてもらい、あるべき社会像、多様性を認める社会に向かっていくことの意義を浸透させてほしい。
もう一点、私学助成、私学の無償化について、6月定例議会で永田敦史委員が提起され、議論があったが、大阪府では、国公立高校と私立高校の授業料を完全無償化する制度の概要を発表している。
これは、これまでの私学助成運動、私学の無償化運動が新たな段階に差しかかりつつあると思われるが、この概要は、まず、これまで私立高校に通う父母の、保護者の家計の所得水準によって補助額を段階的に増やして、実質的に公立高校を選んだ保護者との負担がなくなるような実質的補助、無償化、公平を実現する制度として理解できるが、所得制限そのものを撤廃し、限度なしに、あらゆる所得の子どもたちが享受できる授業料助成を実現しようというものである。大阪府では、現行、年収590万円未満までの世帯を私学助成、授業料助成の対象としていたものを、一挙に全世帯に拡充する。補助額は現行60万円から63万円に増額し、近畿1府4県の私立学校に通う大阪府民も対象としている。
また、大阪府独自のキャップ制というものを打ち出しており、これに参加する学校が対象である。令和6年度は、まず高校3年生から適用し、これを令和8年度まで3年間かけて暫時無償化を実現し、令和8年度に完全無償化が実現するプログラムである。経常費の補助についても単価を段階的に引き上げ、令和8年度までに2万円を増額する中身である。
このキャップ制などを巡り、もちろん歓迎される意見が保護者からはある一方、私立学校の経営サイドやそこに勤める教員からも、いろいろな課題が提起されていると聞いている。
そこで、このキャップ制はどのような制度なのか伺う。
【理事者】
大阪府の現在の授業料軽減補助金は、高木ひろし委員からも説明があったとおり、年収590万円未満の世帯に対して、国の就学支援金と大阪府の補助金を合わせ、60万円を補助上限額としているものである。例えば授業料が65万円の学校の場合、60万円を超える5万円、差額の5万円を保護者からは徴収できず、学校が負担する制度となっている。
このように、補助上限額を超える授業料について学校に負担を求める制度が、大阪府の言うキャップ制である。
なお、大阪府は、先ほどの拡充後の補助制度でも引き続きキャップ制を実施するとのことであり、補助上限額を60万円から63万円に増額して、所得に関係なく全世帯が無償化となる。したがって、授業料が65万円の学校の場合、63万円を超える2万円の部分は保護者から徴収できず、学校の負担となる。
【委員】
そのキャップ制の問題を含め、これまでの私学助成の流れについて、所得制限を一挙に撤廃し、全世帯に拡大することは一見望ましいように思えるが、いろいろな課題があるとも言われている。
この完全無償化と称する大阪府の新しい方針に対して、現在、どのような問題点が考えられているのか。
【理事者】
報道機関等によると、授業料は設置者が決めるという私学の独自性は堅持されるべきであり、学校が決めた授業料を徴収できず学校負担が生じる制度には課題があると言われている。また、キャップ制への参加を取りやめ、無償化の対象とならない学校が出てくる懸念がある、大阪府から通う生徒とそれ以外の生徒で不公平が生じる、そのほか、高所得世帯への恩恵が大きく、子育て負担軽減の観点からバランスを欠くなどの意見がある。
【委員】
高校無償化というか、教育無償化という問題は、令和2年に民主党政権が打ち出した政策に端を発して、国が4,000億円程度の新たな予算を組み、それまでは都道府県が自主的に行っていた授業料助成や経常費助成について、初めて国費が投入されることから、順次始まってきたものと理解している。
その後もいろいろと紆余曲折があり、一旦は公立高校の授業料は完全になくなったが、その後、所得制限を入れて、年収910万円以上の世帯は従来どおり授業料を払ってもらう制度になった。
今度は逆に、私立学校も所得制限をなくし、これは子ども手当などにも共通する考え方であるが、行政サービスとは子どもを主体にして考えれば、親の経済状況に関係なく、等しく提供されるべきサービスである。
一方、その原資となるべき税金は、所得に応じて応能負担で納めてもらうものであり、所得に応じてたくさん納めていただいた一方、その納めた税金が自分には返ってこないという国民の間の一種の不公平感を解消し、負担は応能で、サービスの提供は平等にという考え方は望ましい方向である。
6月定例議会で永田敦史委員が発言したこともそのような趣旨だったと理解しているが、国が支援金という形での支出を維持している下で、都道府県が独自に、今度は所得制限を撤廃した授業料助成を打ち出すとなれば、都道府県の単独の持ち出しが、愛知県の場合は100億円単位で必要になってくるため、財政上の問題は当然ある。
したがって、大阪府の場合は減債基金の積立てなど大阪府特有の事情で、令和5年度から浮いてくるお金をこちらに振り向けようというスキームとのことだが、東京都など財政力のある一部の自治体以外では、100億円単位の独自の支出を持ち出すことは困難である。
しかし、大きな教育無償化、それも所得制限なしの無償化という方向へ全体が動いている下では、本県も現行の制度をどのようにこれに近づけていくのかを議論しなければならない。
そこで、現行の本県の授業料補助制度について、他県と比較してどのような特徴があり、どのような段階にあるのか。
【理事者】
本県の授業料軽減補助金は、現在は年収720万円未満の世帯に対し、県内の私立高校の平均額まで補助する制度で、実質無償化としている。
他県との比較であるが、文部科学省の調査によると、本県よりも高い所得の世帯まで無償化しているのは東京都と福井県のみであり、年収910万円の世帯まで無償化している。
そのほかに、埼玉県が年収720万円未満の世帯まで、神奈川県が年収700万円未満の世帯まで無償化している。
このように、本県の年収720万円未満の世帯まで無償化しているのは、他県と比較しても決して低い数字ではない。
また、本県では、入学納付金についても年収720万円未満まで無償化しており、これは他県にはない特徴である。授業料と同様に入学金も無償化していることから、私学団体からは、全国でもトップクラスの補助であるという評価を得ている。
【委員】
最後に、要望であるが、ある試算によると、高校の授業料助成を全世帯に実質無償化という形に持っていくためには、本県の場合、授業料と入学納付金を合わせて、現行の予算に加え136億円が必要になると聞いている。
当面の目標としては、公立の無償化の水準になっている年収910万円までの世帯の生徒について授業料の助成をし、公私の格差をなくすとしている。したがって、年収720万円から年収910万円の間の層、ここに対する手当は当面必要である。
このことは毎年要望が出ていると思うが、授業料と入学納付金を合わせて、年収910万円までを新たにカバーしようとすると43億円必要という試算も出ているが、これを新年度予算の一つの焦点として実現できるよう、財政当局としっかりと交渉してほしい。
【委員】
一点だけ確認する。先ほど学納金という言い方をしていたが、46万円という本県の補助で、これが全国平均の77パーセントに留まっており、全国との格差が年々広まっているという意見を聞いたことがあるがどうか。
【理事者】
今、本県が40数万円の授業料軽減補助金として、県内の私立高校の平均額まで補助しているが、大阪府が60万円まで補助しているのは、大阪府の授業料の平均が60万円程度のためである。
神奈川県の場合、県内の授業料の平均が45万円、東京都が47万円、埼玉県が39万円であり、関東と比べると本県と大きな差はあまりない。大阪府の補助金が高いのは、県内の私立高校の授業料の平均額であるため、各都道府県によって異なるのが実態である。
【委員】
授業料の平均で基準をつくり補助しているのは理解できるが、入学金を上げたくても、県からもらえるお金が減ってしまうため、制度的に上げたくても上げられないという現状も聞いている。私学の独立性を鑑み、制度的なことも含めて、私学がしっかりと県の教育の一翼を担うことができるよう検討してほしい。
【委員】
性の多様性や、独り親世帯への配慮について伺う。
本県では、令和4年4月1日に愛知県人権尊重の社会づくり条例が施行され、その条例の第15条第2項には、県はその事務または事業を行うに当たり、性的指向及び性自認の多様性に配慮するよう努めるものとするとある。
人権推進課が作成している愛知県職員用のあいちにじいろハンドブックの中には、県民から県へ提出される申請書等について、性別記載欄の必要性を検討し、必要のない性別記載欄を設けないよう取扱いを徹底することが記載されている。
また、そのハンドブックには、窓口や電話対応の留意点も記載されており、夫、妻やお父さん、お母さん、御主人、奥様などという表現は避け、配偶者、保護者の方、御家族の方などという表現を使うこととされている。
こうした対応が、性の多様性への配慮から当然のことであり、独り親の子どもが申請書を書くときに、最初から記載欄に父、母とあったら心を痛めると思われるため、そういった観点からも配慮が必要である。
県のホームページで、夫、妻や父、母という記載欄がある申請書がないか検索したところ、私学振興室が所管する高等学校等奨学給付金支給申請書に、生徒との続柄を記載する欄があり、そこには、父、母、祖父、祖母、その他と印字され、レ点をつけるようになっていた。
この奨学給付金はどのような事業で、どのような人が申請し、申請書の生徒との続柄の欄はどのように活用されているのか。
【理事者】
高等学校等奨学給付金支給費は、教科書費、教材費など授業料以外の教育費負担を軽減するため、国が3分の1、都道府県が3分の2を負担する事業として、平成26年度に創設された。
給付の対象が、高等学校等に通学する生徒のいる生活保護世帯、住民税所得割が非課税の世帯であることから、申請者はこのような世帯の親権者等とされている。
次に、申請書に生徒との続柄の記載を求めている理由であるが、奨学給付金の受給資格を審査する際、生徒の親権者等を特定し、要件を満たす世帯の子であるかを確認するためである。
【委員】
親権者が申請者であるのなら、それほど複雑な内容を記載する欄ではないため、続柄の欄は申請者に記載してもらえばよいのではないか。様式に父、母、祖父、祖母と印字した理由と、どのような経緯でそうなったのかを伺う。
【理事者】
制度が創設された平成26年度当時は、続柄欄に申請者が記入するようになっていたが、令和元年度からは、事務の効率化を図るため、申請書をスキャナーで読み込んでデータ化するOCRという方式を採用し、それまでの記述式からレ点をつける方式へと変更した。
また、外国にルーツを持つ申請者などから、記載に対する質問が多く寄せられたことや提出された申請書に記載ミスが見受けられたことから、親権者の中で大多数を占める父、母などを印字して、レ点をつけるように改正している。
【委員】
事務の効率化や申請者の記載ミスを防ぐ目的であることは分かった。
しかし、最初に話したように、県の条例やハンドブックでは、そのような記載には配慮することになっている。父、母という記載でなく、保護者など別の言い方もあるかと思うが、高等学校等奨学給付金支給申請書の続柄欄の見直しを検討してもらえるのか。
【理事者】
続柄欄については見直しの必要があると思っているが、この給付金は7月1日以降、既に申請が開始されているため、今年度の様式の変更は、学校等の事務に混乱を招くおそれがあることから、今年度中にこの申請書の続柄欄をどのようにすべきか検討し、来年度から様式を変更したい。
【委員】
事務の効率化や記載ミスの防止は大切であると思うが、申請者や子どもたちが書類を記載する際に心を痛めることはあってはならないため、申請書の様式を決める際には配慮してほしい。
【委員】
まず初めに、日本語学習支援基金による助成について伺う。
9月5日に県庁の講堂で、令和5年度ボランティア活動功労者表彰式が行われ、私の地元刈谷市からは、外国にルーツを持つ子どもたちへの学習支援を行っているスリーエスという団体が表彰を受けた。
この団体は2011年に設立し、現在会員が約40人で、小中学校における取り出し授業や、公民館での放課後教室などを行っており、令和4年度に造成された第3次の日本語学習支援基金から助成を受けている団体である。
この第3次の日本語学習支援基金は、2008年度の第1次、2016年度の第2次に比べて基金の予算額も大きく減額され、それに伴い、昨年度の助成額もこれまでより減額され、運営していく資金面で非常に厳しい状況であると代表から聞いた。
そこで、日本語学習支援基金の第3次造成は、目標額に対してどのような状況であるのか、また、助成額の算定ルールについて、第3次の1年目であった昨年度から今年度、変更があったのか伺う。
【理事者】
日本語学習支援基金の第3次造成の目標額は1億円としているが、これまでに、県内企業等から約2,740万円の寄附をもらい、昨年度、県が拠出した5,000万円と合わせて、現時点で合計7,740万円を造成した。
助成額の算定ルールについては、昨年度から変更はない。
【委員】
2008年の第1次造成のとき、企業からの寄附は2億4,500万円であった。第2次、2016年のときの寄附は7,500万円であった。
そして今回は、目標の5,000万円に対して、途中ではあるが、現時点では2,740万円しか寄附が集まっていないため、第1次造成や第2次造成に比べれば、当然、大きく減額されていることが推測できる。
もう一つ言うと、この民間の寄附に対する意欲、この事業に対する意欲が以前に比べて減少しているのではないか。
日本語学習支援基金は、基金を毎年取り崩していくため、数年後には財源がなくなると思うが、その後はどうしていくつもりなのか。
【理事者】
第3次造成を行うことについては、2021年12月に地元経済団体に協力を依頼し、賛同してもらったときに、この基金は2026年度で終了し、その後は基金によらない支援体制を整備することで、各経済団体と合意している。
このため、昨年6月に、地元経済団体、行政、教育委員会、大学、愛知県国際交流協会を構成員とする日本語学習支援検討会議を設置し、地域日本語教育に取り組む市町村等に対して補助対象経費の2分の1を助成する愛知県地域日本語教育推進補助金の活用促進や、経済団体等と連携した企業ボランティア派遣の取組拡大など、基金によらない新たな支援を検討している。
【委員】
今回の日本語学習支援基金から、県の補助金を活用した支援等に今後移行していくとのことであるが、愛知県地域日本語教育推進補助金というのは既にある制度とすれば、基金がなくなって、2027年度以降にこちらの補助金にそれぞれの団体に移行してもらうのではなく、今からでも可能な団体については移行を働きかける必要がある。
その場合、市町との連携が重要であるが、市町とは具体的にどのような検討を進めているのか。
【理事者】
市町と連携協力して具体的な支援策を検討するため、今年5月に、基金の助成を受けている団体が所在する市町を中心に呼びかけ、26市町が参加するワーキンググループを設置した。
ワーキンググループでは、各教室の運営体制、収支状況、抱えている課題などを把握するため、7月から8月にかけて、各市町の担当者が地元の教室を個別訪問するなどして、ヒアリング調査を実施した。
その調査結果によると、資金不足のほか、人材不足や会場確保など、教室ごとに抱えている悩みも異なることから、教室ごとに課題を整理するとともに、今後は、県の補助制度の活用等に向けた各市町における課題の洗い出しを行う。
引き続き市町、経済団体等と連携協力し、基金終了後も各教室が継続して円滑に運営できるよう、新たな支援策の検討を進めていく。
【委員】
寄附に頼った基金による助成というやり方から、寄附に頼らない地域日本語教育推進補助金への変更という流れはよく分かった。
ただし先ほどのスリーエスの代表に話を聞くと、地元の刈谷市から、愛知県地域日本語教育推進補助金があるという話は全く聞かされていないといっていたため、基金が無くなってから移行するのではなく、今のうちから移行してもらうのもよいのではないかと思う。
一方で、現状、物価や燃料の高騰により、教室としては大変苦しんでいると聞く。
そこで、今の基金による助成の増額を、来年度以降検討する考えがないのか。
【理事者】
現時点で、物価高騰に対する支援策は予定していないが、地域日本語教室の運営団体から、物価高騰の影響で資金のやりくりに苦慮しているとの声も届いているため、地域日本語教室が継続して運営できるよう、物価高騰による助成の増額について前向きに検討する。
【委員】
前向きに検討するということで、期待したい。
どれぐらい不足しているかというと、第1次、第2次造成のときは、1教室当たり1万7,000円であったものが、今は5,000円になった。
先ほどの団体でいうと、一月当たり大体10万円は必要経費が要るとのことであり、交通費や手作りの教材費、子どもたちの意欲を造成するためのお楽しみ会などに必要であるが、今はその半分ぐらいしかもらえていない。今は過去の積立てで何とかやりくりしているが、二、三年後にはできなくなるかもしれないという声を聞いた。
この事業は、ただ単に子どもにとって日本語が学べるという利点があるだけではなく、その親にも当然、その子どもたちが日本語を教えてもらえたり、あるいは子どもたちがそういう場所にいることによって親も安心して仕事に就くことができ、子どもだけではなく親にとってもよい制度である。また、教える先生にとっても、長寿社会のよいモデルだと聞いた。現に、この団体で活動する先生の中には、元トヨタ系の重役なども在籍しており、89歳で生き生きとして今でもボランティアとして活動している人もいるとのことである。
そういった意味では、多くの方にとって非常によい日本語教室であるため、ボランティアの人々の善意に甘えるだけでなく、必要なものは県で支援し、ボランティア活動を安心してできるようにしてほしい。
もう一点、県の文化財の指定について伺う。
地元の刈谷市には、刈谷市無形民俗文化財に指定されている野田雨乞笠おどりがある。
この野田雨乞笠おどりは、正徳2年、1712年から野田八幡宮で、雨乞いの儀式として引き継がれており、2人1組の踊り手が太鼓を中心に向かい合い、つつろという短いばちを持って踊る歴史の長い踊りである。
刈谷市では、昭和59年、1984年に、この祭りを刈谷市無形民俗文化財に指定しており、野田雨乞笠おどりを県の無形民俗文化財にという願いが、保存会や関係者の間には以前からある。
県の文化財の指定は、愛知県文化財保護審議会で、指定を可とする旨の答申があったものを知事が指定することは承知している。
そこでまず、この県の文化財保護審議会の概要、具体的には構成員や、毎年度の開催時期とその回数、当日の流れについて伺う。
【理事者】
愛知県文化財保護審議会は、毎年度2回ずつ開催しており、ここ数年は7月と1月に開催している。委員は20人であり、美術工芸、建造物など、各分野に精通した学識経験者に委嘱している。また、審議会には、分野ごとに六つの部会があり、審議会当日は、まず、それぞれの部会で諮問案件を審議してもらい、その結果を基に全体会で議論の上、答申を得ている。
【委員】
それでは、審議会で、指定の答申について審議する際は、どのような点に着目して審議するのか、また、答申が出る件数は、毎回何件ぐらいあるのか。
【理事者】
審議会では、諮問された文化財に関する調査結果を参考にして、歴史上、芸術上、学術上の観点から重要性を判断し、指定にふさわしいかを審議してもらっている。
1回の答申件数は、ここ数回平均して三、四件であり、直近の7月の審議会でも、三件の文化財について指定を可とする答申を得た。
【委員】
審議会の内容は分かった。
それでは、その審議会に指定を諮問するための文化財をどのように決めるのか。特に、今回のように祭りなど形のない文化財は、何を基準に審議会に提案しているのか。
【理事者】
諮問する案件であるが、審議会の委員と事務局である文化財室で調査を行い決めている。
県指定文化財については、原則として、市町村の指定文化財が対象となる。祭りなどの無形民俗文化財については、その起源や変遷のほか、保存会の組織状況、継承の体制などを調査している。
今後も、個々の文化財についてその価値を十分に調査し、審議会の意見を聞きながら指定を検討したい。
【委員】
今の三点は、非常に大切な評価の視点であると思う。特に、現状どういった活動をしていて、それが次の世代へ継承できるかどうかは重要である。
日本やふるさとに昔から伝わっている歴史、文化、風習、祭りなどを次の世代に継承していくこと、これも我々大人の使命の一つであると感じる。そうした点で、県の文化財の指定を受けることは、指定を受けることが目的ではなく、次の世代へ継承していくことが本来の目的であり、そのような次の世代へ継承しようとする活動や努力の結果として、文化財に指定してもらえると感じた。
一方、こうした文化財の指定等を受けることは、単に箔がつくから指定してほしいのではなく、次の世代へ継承していくという、やっている人たちにとってモチベーションが高まることにつながる。継承の重要性を改めて認識したため、これからも継承に取り組んでもらうよう伝えていきたい。
【委員】
子ども、若者の支援について伺う。
青少年をめぐる問題は、不登校やいじめをはじめとして、ニートやひきこもりなど多岐にわたるとともに、一層深刻さを増しており、複合化している。
例えばいじめの問題から考えると、1人がいじめられている、あるいはいじめている子がおり、その子の背景を知るために家庭を調査すると、例えば貧困が存在していたり、その貧困の理由が、家族が障害者であるなど、いじめ一つを取ってもいろいろな問題が絡み合い、それが一部表面化している場合が多いと感じる。
県は、このような状況に対応するため、子ども・若者支援地域協議会などの設置を市町村に働きかけていると聞いているが、県内市町村における設置状況について伺う。
【理事者】
困難な状況にある子ども・若者に対しては、教育、福祉、保健、医療、雇用等の関係機関・団体が連携し、一人一人に寄り添い、年齢によって途切れることなく継続した支援を行うことが重要である。
そこで、本県では、関係機関・団体のネットワークによる支援を行う子ども・若者支援地域協議会の設置と、様々な相談に対するワンストップ窓口である子ども・若者総合相談センターの設置を、子ども・若者育成支援推進法に基づき、住民により身近な地域である市町村に働きかけている。
本県では、2023年3月末現在で、県内54市町村のうち18市町に子ども・若者支援地域協議会及び子ども・若者総合相談センターが設置されており、全国で最も多い設置数となっている。
これは、法律で支援の対象となる30歳代までの県内人口の73.4パーセントをカバーしている。
【委員】
全国で最多の設置数というのは、非常に評価できる。
ただ、54市町村のうち18市町で30歳代までの73.4パーセントをカバーしていることは、人口の少ない市町が比較的未設置だと感じる。
未設置の自治体について、設置できない理由を調査しているのか、また現状をどのように把握しているのか。
【理事者】
子ども・若者支援地域協議会未設置の市町村に対して、毎年、子ども・若者支援地域協議会の設置に関するアンケートを実施し、設置に当たっての課題等の把握に努めている。
アンケートによれば、市町村内で協議会の必要性が十分に認識されていない、協議会の担い手となる人材が不足していることなどが、主な課題として挙げられている。
【委員】
担い手不足について、小さな市町だと難しい部分があると思うが、必要性が十分に認識されていないのは課題に感じる。
子ども・若者支援地域協議会や子ども・若者総合相談センターが未設置の自治体に対して、県としてどのような取組を行っているのか。
【理事者】
未設置市町村への働きかけとして、子ども・若者支援の関係者を対象とした連絡会議や、未設置市町村向けの研修会を開催するとともに、未設置市町村への個別訪問を実施している。
連絡会議や研修会では、協議会等の設置意義やメリットに加え、既設置市町村における関係機関の連携事例を紹介するなど、協議会設置の必要性の理解に努めている。
また、個別訪問では、市町村個別の課題を聞き取り、意見交換や助言等をしている。
さらに、本年度からは新たに、担い手不足を課題とする市町村向けに、グループワークや事例検討といった実践的なカリキュラムにより、相談技法等を習得する研修を実施し、人材育成を支援していく。
【委員】
県からもいろいろと支援や助言などの取組をしていることは理解したが、設置後の支援の質についても重要である。
県内の自治体の中には、伴走支援に力を入れるなど、先進的な取組をしているところもある。例えば豊橋市は、この伴走支援を以前から民間に委託し、連携して取り組んでいるが、非常に重要な取組だと感じる。
子ども・若者支援地域協議会にしても、子ども・若者総合相談センターにしても、会議などを経て、案件ごとに対応する部署を決定するのが一般的だと思うが、複数の問題が絡み合っていると、個人に寄り添い、時にはその家庭まで入っていかないと問題の根本的な解決にならない場合が多い。
そこで、このような取組を県内全体に広められないか、県の考えを伺う。
【理事者】
豊橋市や西尾市等、県内の子ども・若者総合相談センターの中には、相談のたらい回しを防ぎ、適切な機関につなぐ役割に加えて、相談者に同行したり訪問する、より寄り添った支援を行っている先進的な市町村もある。
そこで、本県では、子ども・若者支援の関係者を対象とした連絡会議や設置市町村向けの研修会で、積極的に先進的な取組の紹介をするとともに、市町村の担当者間の交流を図り、研修後でも情報交換ができるような環境づくりを支援している。
実際に研修会等に参加した方からは、具体的な成功事例等を交えた取組の紹介等、今後の取組の参考になった、日頃交流のない市町村の担当者と交流でき、有意義な意見交換ができたなど前向きな意見が多いことから、今後も積極的に先進事例を紹介し、各相談センターの機能向上に向けた支援に取り組んでいく。
【委員】
設置が各自治体、市町村であり、県としてなかなか指導や支援の域を越えることはできないと思うが、人材の育成は重要であり、しっかり取り組んでほしい。
もう一点は、エリアの概念が必要ではないかと思う。小学生、中学生は各自治体が所管するためおおむね問題ないと思うが、高校生以上の場合、特に高校生が問題を抱えている場合、必ずしもその通っている学校の自治体に住んでいないこともある。例えば私の地域である豊橋市の場合、東三河地域で連携するといった概念も必要である。
各市町村だけでなく、ある程度広域に見ながら連携を図ることができると、より行政サービスが充実していくと思うため、この点も念頭に置きながら、これからの支援を継続してほしい。
【委員】
私からは、昨年の6月定例議会の委員会で質問した後の状況確認になるが、愛知県立芸術大学のメディア映像専攻が昨年の4月に開設したときに、10人の新1年生が入学したと聞いた。
昨年度、メディア映像専攻の募集人員10人に対して、全国から79人の応募があったと聞いたが、今年度の志願者数及び志願者の県内、県外からの人数内訳について伺う。
【理事者】
メディア映像専攻の2023年4月の入学生の志願者数については、募集人員10人に対し103人の応募があった。志願者のうち県内、県外の人数内訳は、愛知県内から44人、県外からは59人で、全国から応募があった。2年目ではあるが、応募倍率も7.9倍から10.3倍と増加している。
【委員】
昨年度入学した学生は、今年は2年生となって、現在、どのような内容の授業を受講しているのか。
【理事者】
授業の内容について、1年生では、コンピューターによる3次元画像、3Dプリンターなどの活用手法やメディア映像の制作技術やコンピューターグラフィックスを利用した映像表現など、メディア映像表現に必要となる造形力を身につけるための基礎的な演習を行った。
2年生では、メディア映像専攻に関する、より専門的で実践的な演習を行う。具体的には、メディア映像スタジオでの本格的な撮影、編集や照明の調整を学んだり、CGスタジオで人や物の動き、物理シミュレーションによる3DCG・アニメーションなどの制作を行っている。
また、著名な映画監督である堤幸彦氏をはじめ、国内外で活躍しているアーティストを特任教授として数か月交代で招聘し、特別講義などを行っている。
メディア映像専攻では、質の高い教育の機会を多く提供することで、最新情報を取り入れた教育を展開しており、卒業までにメディア映像のスペシャリストを育成するための教育を進めていく。
【委員】
学生もいろいろなことを学ぶ上で、自分が創ったものを見てもらいたいと感じている。
昨年度、学生が作品を発表する場をつくってあげてはどうかと話したが、それから1年たち、具体的な取組事例などがあれば伺う。
【理事者】
学生の作品を発表する場についてであるが、授業の一環として、学生が制作した作品を発表する場を、まずは、授業の中で設けている。
また、2年生の中には、コンペ等への応募を目指している学生もおり、大学として国内外のコンペ等の情報を提供している。
また、展示会などの発表の場では、愛知県立芸術大学をはじめ、県内の芸術系5大学の学生、卒業生によるデジタルメディア作品の展示会である大名古屋電脳博覧会が、名古屋市文化振興事業団の主催で、2023年10月4日から9日まで開催されていたが、企画展にもメディア映像専攻の学生が出展していた。
さらに、ホーユー株式会社の創立100周年の記念事業として、愛知県立芸術大学と産学協働による企画展が、本日から、名古屋市東区のホーユーヘアカラーミュージアムで開催されており、この企画展にもメディア映像専攻の学生が出展している。
メディア映像専攻の学生が、学習の成果をコンペや展示会などで発信できるよう指導していきたい。
【委員】
様々な具体例を示してもらったが、今の具体例は基本的に愛知県内、あるいは国内の取組であると思う。
幸いなことに、2026年にアジア競技大会・アジアパラ競技大会が本県で開催されるため、そのような国際大会や国際的なイベントが、今後、愛知県内でも予定されている中、そうした場で活躍できる人材が、メディア映像専攻から今後多く輩出されるのを期待しているが、大学としてはどのような人材育成を行っていくのか。
【理事者】
メディア映像専攻の学生は、4年間でコマーシャル映像をはじめ、アニメーション、メディアアートなど様々な制作技術を学ぶこととしており、就職先については、テレビ局やCG映像プロダクション、ゲーム会社など情報産業を想定している。そして、そのような企業に就職する学生やメディアアーティストを目指す学生などが、国際的なイベントなどに関わる機会もあると考えている。
また、先ほど紹介したメディア映像専攻の特任教授である堤幸彦氏は、10月8日に開催された中国・杭州のアジア競技大会閉会式のセレモニーで実施された愛知・名古屋のPRパフォーマンスの総監督を務めてもらっている。
そのような国際的なイベントで活躍されている堤幸彦氏の指導に触れた学生が、将来、産業界や芸術の分野で国際的に活躍できることを期待しており、大学としてもそのような人材を輩出できるよう、しっかり指導、教育を行っていきたい。
【委員】
メディア映像専攻は、開設してからまだ1年しかたっていないため、今後、卒業生が企業などに就職したという実績がない中、今の2年生が、来年度にはそろそろ就職活動を始める時期にかかってくる。そこで、学生の就職支援のために、大学としてどのような取組を行っているのか。
【理事者】
メディア映像専攻の学生の就職支援については、現時点で就職を希望している学生から希望する業界や企業などを聞き取っており、その企業の採用担当者と直接交渉を行うなど、求人開拓を行っている。また、2024年度に大学内で企業説明会を開催することを予定しており、多くの企業に参加してもらえるよう働きかけている。
【委員】
デジタル化やDXの中で、SNSを含め、動画あるいは映像というのは、すごく刺さるものがある。
今後、メディア映像専攻の学生たちにとって、デジタル化やDXは高い親和性があるため、県も予算をつけていると思うが、この大学からよりよい人材が出てくるよう、さらに力を入れて取り組んでほしい。