委員会情報
委員会審査状況
建設委員会
( 委 員 会 )
日 時 令和5年12月13日(水) 午後0時58分~
会 場 第4委員会室
出 席 者
丹羽洋章、松本まもる 正副委員長
横井五六、鈴木喜博、青山省三、新海正春、日高 章、伊藤貴治、
富田昭雄、阿部洋祐、古林千恵、柴田高伸、園山康男 各委員
建設局長、建設政策推進監、建設局技監(2名)、土木部長、道路監、
治水防災対策監、豊川水系対策本部副本部長、豊川水系対策本部事務局長、
水資源監、
都市・交通局長、同技監、都市基盤部長、リニア・交通対策監、
港湾空港推進監、空港長、
建築局長、同技監、公共建築部長、建築指導監、
収用委員会事務局長、関係各課長等
<付託案件等>
○ 議 案
第118号 令和5年度愛知県一般会計補正予算(第5号)
第1条(歳入歳出予算の補正)の内
歳 出
第7款 建設費
第2条(繰越明許費の補正)の内
第7款 建設費
第121号 令和5年度愛知県港湾整備事業特別会計補正予算(第2号)
第122号 令和5年度愛知県県営住宅管理事業特別会計補正予算 (第1号)
第127号 令和5年度愛知県流域下水道事業会計補正予算(第2号)
第133号 愛知県都市公園条例の一部改正について
第135号 工事請負契約の締結について(道路改良事業一般国道419号
蛇抜高架橋上部工事)
第136号 工事請負契約の締結について(道路改良事業県道豊田明智線
浅谷トンネル(仮称)建設工事)
第137号 工事請負契約の変更について
第138号 特定事業契約の締結について
第139号 名古屋高速道路公社が新設し、又は改築する指定都市高速
道路の整備計画の変更について
第157号 愛知県名古屋飛行場及びあいち航空ミュージアムの指定管
理者の指定について
(結 果)
全員一致をもって原案を可決すべきものと決した議案
第118号、第121号、第122号、第127号、第133号、第135号から
第139号まで及び第157号
○ 閉会中継続調査申出案件
1 道路の整備等について
2 水資源対策並びに河川、砂防及び下水道の整備等について
3 土地対策、都市計画並びに公園及び市街地の整備等について
4 総合交通体系及び港湾の整備等並びに航空対策について
5 宅地建物取引及び建築・宅地造成等の規制について
6 公営住宅等の建設及び管理並びに県有施設の営繕工事について
7 建設局、都市・交通局、建築局及び収用委員会の行政運営について
<会議の概要>
1 開 会
2 議案審査(11件)
(1)理事者の説明
(2)質 疑
(3)採 決
3 委員長報告の決定
4 一般質問
5 閉会中継続調査申出案件の決定
6 閉 会
(主な質疑)
《議案関係》
【委員】
第133号議案愛知県都市公園条例の一部改正について伺う。
現在、愛・地球博記念公園において、来年3月16日にオープンする魔女の谷の北側にある丘の南斜面に魔女の谷のみえる展望台を整備しており、今回の条例改正は、この展望台を利用する際、使用料を徴収する内容になっていると思う。土日休日、ゴールデンウイーク、学校の春休み、夏休み、冬休みには多くの利用者が訪れ、混雑が見込まれるため、出入口に監視員を配置するなど、利用者の安全に万全を期すための費用について利用者に負担を求める内容である。
この有料化の考え方は、6月定例議会で条例改正した猫の城遊具と同じであるが、そもそも猫の城遊具は、現状混雑しているのか。まず、猫の城遊具の利用状況について伺う。
【理事者】
猫の城遊具の利用状況については、8月は猛暑日が続き、9月も真夏日が続いたこともあり、1回当たりの平均利用率は定員140人の3割程度にとどまっており、気候が落ち着いた10月から11月にかけては、1回当たりの平均利用率も、10月は6割と倍増し、11月は8割を超えている。
また、1回当たり100人以上の利用も、8月から9月の2か月間で10回のみであったが、10月は84回、11月は116回と着実に伸び続けており、大変盛況でにぎわっている。
【委員】
この状況から、魔女の谷のみえる展望台も、少なくとも当面は混雑対策が必要であることは推測できる。
ただし、混雑がいつまで続くかは分からない。この先重要なことは、混雑しなくなったときにどうするのかである。混雑しなくなり、常時人員を配置する必要がなくなった場合はどうするのか。
【理事者】
将来的に入場を制限したり誤侵入を防ぐための監視員が必要ないと判断される状況になれば、無料化も検討する必要がある。
ただし、無料化の検討に当たり、入場制限などの必要ない状況が一過性のものなのか、それとも継続性が見込まれるものなのかを適切に見極める必要がある。
【委員】
将来的に混雑しないと判断できるかの見極めが必要だと思う。そのためには、一時的に無料にして混雑状況を確認する必要がある。その場合、条例で料金を徴収するものを一時的に無料にすることができるのか、その対応は可能になるのかのイメージが湧かないため、実際にどう検討を進めていくのか伺う。
【理事者】
条例上、料金を支払う人は、その前に施設の利用許可を受けてもらうこととなり、利用許可を必要としない施設は無料となる。
今回、条文中に魔女の谷のみえる展望台の利用許可の対象から知事の指定する日を除くという除外規定を追加している。これにより、愛知県公報で知事が指定する日を告示すれば料金徴収の前提となる条件がなくなるため、その日は無料化が可能な仕組みになっている。
無料化の検討に当たっては、入場制限などの必要のない状況が一過性なのか、継続性が見込まれるのかを適切に見極める必要があるため、このような一時的な無料化にも対応できる仕組みとした。
なお、一定の検証期間を経た上で入場制限などの必要がない状況が継続すると見込まれる場合には、条例改正をした上で恒久的な無料化を検討する必要がある。
【委員】
本来公園施設は、野球場やテニスコートといった特定の人が一時的に独占利用するような施設を除いて無料で使用することが基本である。供用開始後の利用状況をしっかりと見極めて、利用者にとって何が最良なのかを適切に判断することを要望する。
続いて、第138号議案、特定事業契約の締結について、愛知県営東高森台住宅のPFI方式整備事業について、この事業の概要と事業者選定の経緯を伺う。
【理事者】
事業の概要は、春日井市にある県営東高森台住宅において、PFI手法を活用し、老朽化した2棟80戸の既存住棟等を除却するとともに、1棟100戸を建設して県に引き渡す、いわゆるBT方式による事業であり、工期は2027年7月末までの予定である。
次に、事業者選定の経緯については、総合評価落札方式による一般競争入札により事業者を選定しており、2者の入札参加者があった。
選定に当たり、学識経験者等で構成された事業者選定委員会において、入札参加者から提出された入札書及び事業提案書を評価し、総合評価点が最も高いものを落札候補者として選定した。これを受け、本年10月24日に落札者として決定した。
【委員】
今回、BT方式とするメリットは何か。また、なぜ維持管理や運営を含んだBTO方式ではなく、BT方式としたのか。
【理事者】
公営住宅におけるPFI方式による事業手法は主に2種類あり、PFI事業者が自らの資金で施設を建設して、所有権を移転し、事業完了するBT方式と、BTの後、事業者が一定期間施設を維持管理・運営するBTO方式がある。
本県では、2017年度に東浦住宅で最初のPFI事業を実施して以来、全ての県営住宅において、BT方式を採用している。
BT方式は、PFI事業者に設計・施工を一括して発注することにより、民間が持つ高い技術力を活用し、コストの削減や工期短縮などのメリットが期待できる。
本事業においても、県が直接実施した場合に比べ、約8.6パーセントの県財政負担額の削減効果と、およそ2割の工期短縮効果が見込まれている。
BTO方式は、BT方式の設計・施工一括などのメリットに加え、運営等の効果が加わるが、県営住宅は、住宅セーフティネットとしての役割を担う特性上、家賃収入の制約がある一方、民間事業者に委ねる業務がエレベーターなど共用部設備の保守点検程度に限られるという特性があるため、文化ホールや運動施設など高い収益性が見込める公共施設と比べると民間事業者の創意工夫の余地が小さく、高い収益が期待しにくいと考えられる。
これらのことから、事業者へのヒアリング結果なども参考にして、県営住宅のPFI方式整備事業については、維持管理・運営を含めないBT方式を採用している。
【委員】
事業実施に当たっては、地元経済の発展や地元企業の育成も重要であると考える。今回、一般競争入札に2者が応札したが、事業者選定に当たって、地元経済へどう配慮しているのか。
【理事者】
本県の公共工事発注方針において、地元建設業者の受注機会の確保、県産資材の優先使用等を掲げている。本事業も、応募企業の資格要件や事業者選定における評価基準を設定することで地域への配慮を行っている。
まず、応募企業の入札参加資格要件として、構成員となる設計、建設及び工事監理業務に当たる企業について、営業所の所在地が県内にあることなどを参加要件としており、地元建設業者等への配慮を行っている。
次に、事業者選定に当たり、事業者選定委員会において、落札者決定基準に係る提案内容の評価項目として、地域経済等への貢献を評価している。この項目では、代表企業の主たる営業所の所在地や県産資材の活用などによる地域経済への貢献の内容等を評価している。県営住宅PFI方式整備事業においても、このように地域経済等への配慮を行いながら事業を進めている。
【委員】
最近、愛知県体育館の施設整備等でもBTコンセッション方式が取り入れられ、効果的な手法で施設整備にも本県が取り組んでいることは承知している。公共事業は、基本設計、実施設計、工事という流れと、単年度会計でもあり、時間がかかる部分もあると思う。基本設計、実施設計を同時期に行い、今回工期が2割短くなるとのことであったが、そういったメリット、また、民間事業者のノウハウも取り入れながら、最小の経費で最大の効果を上げられるよう取り組んでもらいたい。
【委員】
第139号議案名古屋高速道路の整備計画の変更について、二つ質問をする。
今回の議案では、本整備計画の変更に伴って追加で670億円の建設事業費が必要になるとのことだが、出資者である県が負担する額は実質幾らになるのか。
【理事者】
名古屋高速道路の建設費用の財源構成は、県と名古屋市の出資金が15パーセント、国土交通省の無利子貸付金が25パーセント、財務省からの財政融資資金を県、市を経由して名古屋高速道路公社へ貸し付ける特別転貸債が35パーセント、市中銀行などから調達する民間資金が25パーセントとなっている。このうち、670億円の増額に対し、出資金は名古屋市と折半するため、県は50億2,500万円を出資する。
また、特別転貸債も市と折半するため、県は117億2,500万円を貸し付けることになり、出資金と特別転貸債を合わせると167億5,000万円となる。
なお、名古屋高速道路公社の料金収入により、出資金は将来的に公社から県へ返還され、特別転貸債は公社から県を経由して財務省に20年かけて償還される予定である。
【委員】
今後の料金と償還計画への影響について、今回の建設事業費の増額を償還する方法として、主に二つの方法が考えられる。一つは利用料金を値上げすること、もう一つは、2044年10月までとなっている現行の償還期限を延長することである。2044年以降、高速道路が無料開放される現計画からの変更である。本年6月29日の建設委員会において、償還期限の見通しについて質問したところ、有料道路室長からは、名古屋高速道路では建設費用や大規模修繕事業費などに係る費用を着実に償還できる見通しとなっており、引き続き現行の料金を基本としていきたいとの答弁があったが、今回の建設事業費の増額を受けた今後の影響について、改めて伺う。
【理事者】
料金については、供用の段階で国が料金認可することになっており、現時点では答えられない。
しかし、都心アクセス関連事業の整備については、料金の値上げではなく、償還満了日の延伸で対応していく予定としており、今回の増額分も同様に対応したい。
【委員】
今、償還期限を延長する可能性についても言及したと受け止めた。
耐震化や老朽化への対応、また、資材や労務単価の上昇など、今後も整備に係る建設事業費が計画以上に上がることが予想される。今回のケースも踏まえれば、償還主義を見直して、恒久有料化に向けた検討も進めるべきではないか。
国も本年5月に道路整備特別措置法等を改正して、全国の高速道路の償還期限を50年間延ばして2115年までとした。事実上、半永久的に料金徴収を続けることを宣言した経緯も踏まえれば、名古屋高速道路においても、恒久有料化に向けた議論を始めるべきタイミングである。
恒久有料化は、道路の安心・安全の確保のために必要な維持管理費用を持続的に徴収する仕組みであるとともに、利用料金の引下げにもつながると思う。昨年度は、料金収入約679億円のうち半分近くの約314億円が償還準備金に充てられているが、償還期限を延ばせば1年間の借金を払う額も波が低くなるので、その分を料金の引下げに充てることもできるはずである。
この提案は、あいち民主県議団の令和6年度施策及び当初予算に対する提言として、本年10月に知事に提出した。来年以降懸念される物流の2024年問題の解消に向けた長時間労働の是正、物流コストの削減を通じた産業競争力の強化、また、物価高騰に現在あえいでいる県民への家計支援策として、名古屋高速道路の償還期限の延長や恒久有料化の議論を進めてもらいたい。
【委員】
同じく第139号議案の名古屋高速道路の整備計画変更について伺う。
名古屋高速道路公社が取り組んでいる都心関連アクセス事業は、名古屋駅へのアクセス向上や広域交通網の連携強化を図るためには欠かせない事業である。
今回の事業費と完了予定年度に係る整備計画変更は、新洲崎地区の実施設計の結果によるものであるが、実施設計に当たり、通常の設計契約ではなく、ECI方式により実施設計を行った。そこで、ECI方式を採用した理由について伺う。
【理事者】
ECI方式は、設計施工に必要な条件や仕様など、発注時点では明確に定めることができない事業などが対象であり、設計段階から建設会社の専門的な技術などを反映させる仕組みである。
今回変更対象となる新洲崎地区は、名古屋高速道路の東山線と都心環状線が交差する新洲崎ジャンクションを改築するため構造が複雑な形状となり、設計に当たっては、既設構造物を含めた全体の耐震検討とともに架設方法など、施工が現実的に可能か考える必要があり、技術的難易度が非常に高い。
また、現場は交通量が多い主要幹線街路で多くの占用管が埋設されているため、交通への影響を最小限に抑えることや、移設困難なライフラインの本管などを避けることも考慮する必要があり、発注時点で条件や仕様などを定めることが困難な状況であった。
そのため、建設会社からの技術提案を受けることにより、合理的な設計を行い、効率的に事業を推進することができるECI方式を採用している。
【委員】
当初に新洲崎地区を整備計画に組み入れたときと比較して事業費が670億円増加となっており、また、完了予定日が4年延伸となり、大きな変更となっている。
昨今の社会情勢や資機材及び労務単価の増額などはやむを得ないが、設計業務で受注後に優先交渉権者として詳細設計を行うECI方式を採用したことにより、競争が働きにくいのではないかという印象も受け、構造や施工方法が過大な設計になっていないか、懸念をしている。そこで、事業費や事業期間の妥当性について伺う。
【理事者】
今回の事業費や事業期間の変更については、名古屋高速道路公社が建設会社と具体の構造や施工方法を協議し、まとまった設計内容について、積算基準などに基づき精査を行っている。
また、ECI方式においては、中立公正な観点からの学識経験者の意見を聴くことが定められており、名古屋高速道路公社が学識経験者で構成される外部委員会において今回の変更内容を説明し妥当性を確認していることから、県としても適切であると考えている。
【委員】
大変難しい事業であることは理解したが、事業費の増額は公社の安定運営にも関わる。引き続き工事実施の段階においても、コスト意識を持って事業費の縮減に努めるようお願いする。
また、都心アクセス関連事業は地域の発展、活性化に大きく貢献するものであり、早期完了を目指して取り組んでほしい。
《一般質問》
【委員】
令和3年7月、静岡県熱海市において、不適切な盛土に起因する大規模な土石流により甚大な人的・物的被害が生じた。それを受けて、国は盛土総点検を全国の自治体に要請するとともに、盛土による災害の防止に向けた対応方策を検討し、全国一律の基準で規制する盛土規制法が本年5月26日に施行された。
本県でも熱海市での災害発生時に独自の条例制定に向けた検討を行ったと聞いているが、盛土規制法について本県の考え方を伺う。
【理事者】
静岡県熱海市での土石流災害の発生を受け、本県でも独自条例を検討してきたが、盛土規制法は、本県が検討してきた独自条例よりもさらに厳しい内容になっていることから、独自条例ではなく同法を適切に執行することにより、危険な盛土等から県民の生命や財産を守ることが可能である。
【委員】
今回の盛土規制法の特徴について伺う。
【理事者】
盛土規制法の特徴は4点ある。
1点目は、隙間のない規制であり、土地の用途にかかわらず、盛土等により人家等に被害を及ぼし得る区域を都道府県、政令市、中核市が規制区域に指定して、規制区域内で行われる盛土や切土について幅広く許可対象としている。
2点目は、盛土等の安全性の確保である。災害防止のために必要な許可基準に沿った安全対策について、工事計画から工事完了まで、各段階で検査を実施する。
3点目は、責任の所在の明確化で、盛土等が行われた土地について、土地所有者等が安全な状態に維持する責務を有することが明確化された。
4点目は、実効性のある罰則で、無許可での行為や命令違反等に対する罰則が大幅に強化されている。
こうした規制の強化により、盛土等による災害の防止を図るものである。
【委員】
同法の規制は、新たな規制区域が指定された後、運用が開始され、その規制区域は都道府県知事等が指定する。そこで、規制区域の指定に向けた現在の取組状況と今後の予定について伺う。
【理事者】
盛土規制法では、市街地や集落などの人家がまとまって存在しているエリアや、市街地から離れていても渓流の上流域などの盛土が崩落した場合に土石流となるエリアなど、人家に危害を及ぼし得るエリアを規制区域として指定できる。
本県では、今年度より規制区域の指定に必要な基礎調査を実施している。現在、保全対象となる家屋や道路、公共施設などの分布状況、傾斜地、渓流などの地形状況などを調査しており、盛土等の崩落や流出から保全対象を守るために規制する区域の抽出を行っている。
今後は、規制区域の案を作成の上、関係市町村への意見聴取を実施し、規制区域を取りまとめる。盛土規制法の施行に伴う2年間の経過措置期間が終了する2025年5月までに規制区域の指定を行い、新たな規制の運用を開始したい。
【委員】
危険箇所を行政側がくまなく点検、パトロールするには限界があり、県民との連携が欠かせない。情報通報窓口を設置するなど、不適切な盛土の把握に努めてもらいたい。県、市町村及び県民が一体となって法の適切な運用ができるよう、今後もしっかりと準備をしてもらうことを要望する。
【委員】
境川水系河川整備計画に基づく事業の進捗状況について伺う。
地球温暖化が進む中で風水害が激甚化、頻発化し、その対策が急がれるとして、国は、防災減災国土強靱化のための5か年加速化対策を進めている。
そのような中で、一昨年、安全・安心対策特別委員会の県内調査で、境川の支川である五ケ村川の治水事業の視察があり、境川の右岸側になるが、そこに流れる五ケ村川、その支川とほかの支川の多くと支川同士が立体交差をしている非常に複雑な状況であることを目の当たりにした。
そして、23年前の東海豪雨の際には、この特殊な流域で河川構造も要因となって、境川右岸流域が氾濫し、甚大な水害をもたらし、周辺地域の被災状況は激甚災害に指定された。
特に被害がひどかった地域が境川右岸側の支川流域の市町である豊明市、大府市、東浦町であった。その流域全体のうち、JR東海道線の北側と南側では災害の発生メカニズムが別々のものであり、まず、北側の被害メカニズムについて触れながら質問をする。
流域の状況を簡単に説明すると、境川の支川である五ケ村川は、境川本川の右岸側を並流するように流れており、境川に直接流入する皆瀬川、明神川、砂川、石ケ瀬川などの支川と立体交差をしていき、豊明市、大府市、東浦町を流れて最終的に河口付近で境川に合流する特殊な河川である。この支川の立体交差が、特に五ケ村川の流下能力に制約を与えており、言わば立体交差がそれぞれの箇所でボトルネックになる状況であり、とりわけJR東海道線が境川をまたぐように走っているが、これに並流するように境川に注ぎ込む石ケ瀬川がある。この石ケ瀬川と五ケ村川の立体交差が最も特殊であり、五ケ村川が石ケ瀬川をくぐる立体交差である。石ケ瀬川が自然流下をしているのを五ケ村川がくぐっている。五ケ村川の川上に貯留施設があり、そこからサイホン方式で高低差を利用し、高低差のエネルギーで、水圧で押し出して流れていく。すなわち、当然サイホン方式の流下能力が五ケ村川自体のボトルネックとなり、これを超える東海豪雨のような大雨となった場合、この貯留施設の限界を超えて五ケ村川の上流方向であるJR東海道線の北側に氾濫する状況を招いた。
JR東海道線の北側の部分の氾濫に対して対策を取る必要があるが、五ケ村川の石ケ瀬川との立体交差地点の流下能力に制約があることから、立体交差地点から上流区間で貯留能力を高める必要がある。この点について、令和4年6月定例議会の一般質問において、整備の方針を示してもらった。その後の進捗状況と今後の見通しについて伺う。
【理事者】
五ケ村川の石ケ瀬川立体交差地点から上流の区間については、隣接して流れる大府市管理の横根川との中堤の撤去を行い、五ケ村川と一体化する河道拡幅を2018年度から実施して、昨年度完了した。現在は五ケ村川の洪水の一部を境川へ毎秒2.8立方メートル排水する排水機場の新設に向けて昨年度予備設計を行い、ポンプの型式や原動機などの仕様を決定したことから、今年度、詳細設計を実施している。
今後は、設計業務の取りまとめ、将来管理を依頼する大府市との調整を整え、早期工事着手を目指す。
【委員】
従前から同地区には五ケ村川の湛水防除対策で農業用の排水機場があり、それが東海豪雨の際には五ケ村川の氾濫で浸水し、発電設備が作動せず排水できない状況となった。その結果、湛水防除すらできず被害がより甚大化する状況を招いた。
心配されるのが今後新設される2.8トンのポンプがある排水機場であるが、今後新設される排水機場は、洪水時に確実に稼働させるための浸水対策ができているのか。
【理事者】
五ケ村川に新設する排水機場は、洪水により排水機場の周辺が浸水した場合にも排水機能を確保する構造を検討している。
具体的には、排水機場を建設する土地は、県が2020年4月に公表した想定最大規模降雨における浸水予想図において、浸水高が境川の堤防高から約20センチメートル下がると想定されていることから、境川の堤防高まで土地をかさ上げすることとして、地盤高は浸水が想定される高さ以上となる計画である。
また、ポンプの稼働には電源の確保が必須となり、商用電源が遮断された場合においても電力が供給されるよう発電機を設置して、自家発電による運転を可能としている。
【委員】
過去の災害をしっかり教訓にして、設計もそれに耐え得る状況を検討して考慮していることがよく分かったので、速やかに建設を進めてもらいたい。1年でも一日でも早く排水機場が完成するよう、しっかりと予算を確保してもらうことを要望する。
JR東海道線の南側の東海豪雨の水害メカニズムは、石ケ瀬川が境川に合流する地点から境川の河川形状がいびつに一部区間狭くなっており、これが原因となって東海豪雨では大きな被害に発展したと考えられる。石ケ瀬川と境川の合流地点から約500メートルの区間で、見た目にも分かるほど人工的に角ばって擁壁が造られた状態で境川の川幅が狭くなっている。これは、伊勢湾台風の被害を教訓として、その治水対策で昭和40年代頃から衣浦湾の河口から堤防掘削によって河道拡幅をしたが、途中の当該箇所の右岸で産業廃棄物が出てきたため、掘削工事を中断することとなり、その後何十年も一部で川幅が極端に狭くなるいびつな堤防となって固定化されてきた。
満潮時に遡上してくる水が川幅の狭いところで極端に水位が上がり、ただでさえ大雨で水の量が増えている流れと相まって、その地点が石ケ瀬川との合流点になるので、石ケ瀬川の流下能力を阻害するどころか、それをせき止めて逆にバックウォーター現象が起こってしまい、バックウォーター現象起こってしまう。さらには越水や破堤を起こし、その支川である市街地に広範囲に流れる鞍流瀬川にもバックウォーター現象を起こして、これが大府市内の都市部や東浦町の一部で氾濫して、大きな被害をもたらした。
この点についても、令和4年6月定例議会で一般質問したところ、境川の川幅が狭い数百メートルの区間の堤防掘削を再開する方針が示された。この境川の整備について、石ケ瀬川の合流地点から下流の川幅の狭い区間における、整備の進捗状況と今後の見通しについて伺う。
【理事者】
境川の石ケ瀬川合流点から下流の川幅の狭い約500メートルの区間については、川幅を約20メートル拡幅する計画である。この区間の整備の進め方として、既設堤防を残し、仮締切りとして利用して護岸工事を行い、最後に全区間の既設堤防を撤去する手順で進めている。
整備の進捗状況については、2021年度から工事に着手し、今年度末には護岸工事が約140メートル完了する予定となっている。
今後も5か年加速化対策予算を活用するなど、必要となる予算を確保し、早期完成を目指す。
【委員】
想像以上に産業廃棄物が奥深くまで埋まっており、それを取り除くのに莫大な費用を要するため、産業廃棄物が混じった土の処理に手間と時間がかかっているが、これが取り除かれないと川幅を広げて河道の流下能力を確保することができず、同じような水害や災害を招きかねないので、1年でも早く完成させてもらうように、しっかりとした予算の確保を要望する。
【委員】
地域鉄道は、地域住民の通勤通学などの足として重要な役割を担っているとともに地域の経済活動の基盤であって、移動手段の確保はもとより、少子・高齢化や地球環境問題への対応、まちづくりと連動した地域経済の自立、活性化などの観点から、その活性化が求められている重要な社会インフラである。
地域鉄道とは、国土交通省によれば新幹線、在来幹線、都市鉄道に該当する路線以外の鉄軌道路線のことをいい、その運営主体は中小の民鉄と第三セクターである。これらを合わせて地域鉄道事業者と呼び、本年4月1日現在で全国に合計で95社あり、うち中小民間鉄道が49社、第三セクターが46社である。
県内では、中小民間鉄道として渥美線などを運行する豊橋鉄道株式会社と城北線を運行する株式会社東海交通事業がある。第三セクターは、今から取り上げる愛知環状鉄道線を運行する愛知環状鉄道株式会社が地域鉄道事業者に該当する。
地域鉄道を取り巻く環境は、少子・高齢化やモータリゼーションの進展などに伴って極めて厳しい状況が続いていることに加えて、新型コロナウイルス感染症の影響により、例えば昨年度は約9割の事業者が鉄軌道業の経常収支ベースで赤字を計上するに至っている。
今回取り上げる愛知環状鉄道線は、岡崎市の岡崎駅から新豊田駅や瀬戸市駅などを経て春日井市の高蔵寺駅に至る45.3キロメートルを約68分で結ぶ鉄道路線であって、通称名は愛環と言う。1988年1月31日に愛知県と岡崎市、豊田市、瀬戸市、春日井市の沿線4市と民間の共同出資で運営する第三セクター方式で営業開始し、本年開業35周年を迎えている。
この間、2005年には愛知万博の開催に際し、会場アクセス列車として、名古屋駅から八草駅間にJR中央線直通列車を運行し、当該年度の輸送実績は史上最高を記録し、年間で1,966万人、1日当たり5万3,890人であった。その後も沿線企業の、例えばトヨタ自動車株式会社がマイカー通勤から公共交通機関利用へ転換する、いわゆるマイカー通勤転換プロジェクトに対応するなど、沿線地域に貢献しつつ、利用者数を着実に増やしてきた。新型コロナ感染拡大前の2019年度の輸送実績は、年間で1,883万5,000人、1日当たり5万1,463人であった。
こうした状況から、この愛知環状鉄道は第三セクターの優等生と言われてきたが、コロナ禍が経営に大きな打撃を与えており、昨年度の輸送実績はその前年度と比べて9パーセントの増加であり、コロナ禍前に比べると約79パーセントの回復に過ぎなかった。
そこで、この愛知環状鉄道における最近の輸送実績、利用者数と現在の経営状況について伺う。
【理事者】
愛知環状鉄道の利用者数は、コロナ前までは順調に推移し、2019年度には約1,883万5,000人となり、新型コロナウイルスの影響により、2020年度は前年度より約570万人少ない約1,312万8,000人まで落ち込んだ。その後、回復傾向にはあるものの、リモートワークの定着などにより、昨年度の実績は約1,486万4,000人、これは2019年度の79パーセントにとどまっている。定期券の利用者について見ると、通学についてはコロナ前の水準にほぼ戻りつつあり、一方で、通勤については2019年度の77パーセントと回復が鈍い状況にある。また、定期以外の利用者についても2019年度の71パーセントにとどまっている。
なお、今年度の上半期についても、前年同期は上回ったものの、コロナ前の2019年度に比べると83パーセントにとどまるなど、厳しい状況が続いている。経営状況についても同様の傾向であり、運輸収入をコロナの前後で比較すると、2020年度はコロナ前の2019年度の66パーセントまで減少した。昨年度はコロナ前の78パーセントの回復となっている。
この結果、会社は3期連続の赤字決算となっており、昨年度の当期の純損失は5億1,700万円である。
【委員】
通学者は戻ってきたが通勤者が戻っていないのであれば、取戻しに手を打たなければならないが、リモートワークが定着してしまうと、取り戻すのが極めて難しくなる。そのため、ほかに糸口を見いだすしかなく、愛知環状鉄道は現在、観光振興に力を入れており、愛知環状鉄道沿線の名所や文化観光施設などを巡る愛環沿線ウォーキングを通年で開催したり、土日限定のフリー乗車券を発売するなど、通勤通学以外の利用者への定着を図ろうと努力している。
そこで、愛知環状鉄道の厳しい状況を克服するため、県と会社、愛知環状鉄道はそれぞれどのような取組を考えているのか。
【理事者】
県の取組として、厳しい経営状況下においても先送りができない安全安定輸送のために必要となる修繕や設備更新に係る費用の一部を補助する制度を昨年度に創設し、沿線市と協調して支援を行っている。
また、高騰する電気料金の負担を軽減するため、国の交付金を活用した支援も実施している。
さらに、県と沿線4市、岡崎市、瀬戸市、春日井市、豊田市で構成する愛知環状鉄道連絡協議会では、JR東海や名古屋鉄道とコラボした沿線のウォーキングや愛知環状鉄道の車両基地見学会などのイベントを開催するなど、利用促進に努めている。
一方で、会社では既存の設備の長寿命化や設備投資の時期、数量の見直しなど、経費の削減に努めるとともに、収益の拡大に向けて全国の第三セクター鉄道を巡りスタンプを集める御朱印の鉄道版、鉄印帳の販売や有料の車両撮影会、シニア向け企画切符の販売など、様々な取組を行っている。
このほか、通勤利用の回復に向けて、県、会社、豊田市が協力して沿線企業を訪問して愛知環状鉄道利用の促進についての意見交換会を実施している。
今後も継続してこうした取組を実施するなど、会社の経営状況の改善に向けて、会社や沿線市と連携しながらしっかりと取り組んでいく。
【委員】
愛知環状鉄道が発表している利用者内訳の推移を見てみると、コロナ禍前までは定期券利用者の通勤通学利用者とそれ以外の定期外利用が半々であったが、コロナ禍に至り、通勤がリモートワークで減り、当然のことながら定期外利用の数が随分と減少している。先ほど少し触れたが、通勤客が戻らないのであれば観光に目を向けるとのことだが、観光がコロナ禍で著しく減っているので、コロナ禍前の水準には至らないことになる。工夫して観光振興の取組を実施しているが、さらに工夫して取組を進めてもらいたい。
最後に、昨年3月に愛知環状鉄道が策定した中期経営計画があり、そこに三つ、愛知環状鉄道の目指すべき姿がうたわれている。第1に掲げられているのが安全で信頼される鉄道である。社員全員が安全を最優先に業務に取り組むこととされ、例えばヒヤリ・ハットや危険予知のKY活動の取組を進めるとしている。続けて、第2に便利な鉄道を挙げており、利用者の様々な場面での利用に便利であること、例えばキャッシュレス決済の活用、あるいはバリアフリー法に基づくエレベーターや多機能トイレの設置を検討するとしている。今回取り上げた収益の悪化からの脱却についても、3番目に取り上げられており、営業収入の向上や経費の削減に取り組むとされ、一般利用の促進、通勤通学利用の促進、ジブリパーク開園による新たな移動需要の取り込みなど、運輸収入の確保に加えて高架下事業、車両ラッピングの売り込みなどの運輸外収入の確保を挙げている。営業収益の悪化からの脱却のために、老朽施設・設備の更新や修繕の執行停止や、施工数量の見直しによる経費の過度な削減に陥ることもありうるが、安全安定輸送の確保を最優先に利便性の高い輸送サービスの提供を目指すことを愛知環状鉄道が掲げていことは正しい。
一方で、将来的には生産年齢人口の減少は顕著に表れてくる。通勤通学の利用のさらなる減少が余儀なくされることは明らかである。利用者のさらなる確保は難しいが、沿線のまちづくりの進展が欠かせないと思っており、区画整理も含めた駅周辺の開発など、関係機関への働きかけは中長期的にしっかりとやらなければならない。
地域鉄道というと、ローカル線でのどかな田園や海岸沿い、山あいやトンネルを行くものをイメージする。そういう地域で新たなまちづくりと言っても絵空事でしかない。過疎が著しく進んでいくところでは現実味が全くないが、愛知環状鉄道は都市間輸送で都市と都市を結んでおり、輸送実績増の仕掛けは、観光振興だけでなく、根本的・長期的な課題解決のためにやるべき取組があると思うため、長期的な課題への対応を含めて、さらなる経営改善策の検討や実施を期待したい。
なお、愛知高速交通株式会社が運営する東部丘陵線、いわゆるリニモも、コロナ禍の影響を受けているが、利用客の戻りがよいと聞いている。しかし、長期的な需要減少は当然に見込まれ、リニモについても一層の利用促進策に取り組んでもらいたい。
【委員】
リニモについては、開業当時は未来の乗り物と言われ、磁気浮上型の無人で、大変眺めやデザインもよい乗り物であるとしてスタートしたが、愛知万博が終わってからは経営難で、県も市も相当財政的に支援したと聞いている。その後、イオン株式会社やIKEAができて状況も変わったが、その後コロナ禍となった。まず、リニモの乗車数及び売上げ等を伺う。
【理事者】
リニモの利用者数は、愛知万博後の2006年度は年間502万人であったが、その後、沿線における住宅や商業施設の開発の進展とともに着実に増加し、2017年度には年間916万人、2019年度には愛知万博後最多となる923万人となった。2020年度は新型コロナウイルスの影響で538万人、対前年比で約58パーセントまで落ち込んだが、昨年度は行動制限の緩和やジブリパークの開園効果もあり、年間851万人、2019年度比で92パーセントまで回復をした。さらに、今年度上半期9月までを見ると、コロナ禍前とほぼ同じ水準まで戻っている。
次に、リニモの経営状況については、開業時の初期投資に伴う長期借入金の返済が負担になっており、2006年度以降、毎年10億円以上の赤字を計上していたが、その後、県と沿線市等による2度の経営支援により長期借入金を完済し、2016年度以降は黒字に転じ、2019年度には万博後最大となる当期純利益3億1,500万円を計上した。その後2年間、2020年度と2021年度は新型コロナウイルスの影響でそれぞれ2億2,100万円と1億800万円の赤字となり、昨年度はジブリパークの開園の効果もあり、当期純利益が2億4,900万円、3年ぶりの黒字決算となった。
【委員】
3年ぶりに黒字決算となったとのことだが、損益分岐点を伺う。
【理事者】
損益分岐点について、直近2年間の2021年度と昨年度の会社の決算書類を基に計算すると、日々の運行に必要な経費である営業費が約14億6,800万円に対して、広告収入等の運輸雑収が約5,400万円あり、これを差し引いた約14億1,400万円を旅客運輸収入で賄う必要がある。利用者1人当たりの単価は173円であることから、この単価で割った約818万人が損益分岐点となる。
【委員】
ジブリパークが開園して、利用者数はどれぐらい増えたのか。
【理事者】
昨年11月のジブリパーク開園に伴うリニモの利用者数への影響については、ジブリパークの開園前後の定期以外の利用者数の比較から、1日当たり約2,000人の増加と試算している。
ジブリパークの年間の営業日数を300日と計算して、年間で換算するとリニモの利用者数は60万人増加となる。
【委員】
1日2,000人、実質1,000人が往復で2,000人である。60万人というが、単純に月6万人、1年で72万人増えたとして、年間で818万人とすると、先ほど851万人で黒字とのことだったので、その前は780万人しか乗っていないことになる。ジブリパークが開園しなかったら、ずっと赤字だったことになる。ジブリパークで60万人増加したとしても、851万人から60万人を引くと790万人である。
【理事者】
昨年度は、ジブリパークの開園が11月であり、半年分にすると30万人程度になるので、それを差し引くと収益分岐点を少し上回っていたと思う。
【委員】
ジブリパークが開園しなかったら、黒字になっていないのか。
【理事者】
昨年度の実績は851万人で、ジブリパークの増加者数が1年で換算すると60万人で、昨年度は半年分のため30万人である。851万人から30万人を引くと821万人で、損益分岐点が818万人であるため、2年の平均では、若干上回っている。
【委員】
損益分岐点を出して、どのくらい乗らなければいけないかを見なければならない。ジブリパークの入場者数は公表されておらず、実際に車でどのくらいの人が来ていて、どのくらいリニモに乗ったかが分からない。その辺はしっかり調べてもらい、ぎりぎりの状況であるので、リニモもしっかり対策しないと経営難になる。
藤が丘駅を見ると、ジブリパークが開園したからといって、全く潤っていない。駅の周辺にはジブリの装飾等もなく、人が増えて買物をしている雰囲気もないので、もう少し対策しなければいけないし、恩恵を受けていない。どのようにリニモにたくさん乗ってもらうのか。ジブリパークに来てもらう人もそうでない人も、リニモに乗ってもらい、買物や旅行など、いろいろなところを訪れてもらえるようにどう誘導するのか伺う。
【理事者】
本県では、ジブリパークの開園を契機に、沿線地域全体で受け止めて広く波及させることにより地域の活性化を図ることが重要であると考えている。
その一環として、今年度はリニモでおでかけキャンペーンを11月から来年の1月末まで実施している。ジブリパーク来園者がリニモの1DAYフリーきっぷを利用し、沿線の店舗、施設で割引などの特典が受けられる内容となっており、藤が丘の中央商店街振興組合や沿線市の観光協会などと連携して取り組んでいる。
また、快適な移動、地域の活性化などを目指し、名古屋東部丘陵地域を中心にMaaSの社会実装に向けた実証実験を行っており、これまでに沿線地域の観光情報の配信、回遊性の向上が期待されるシェアサイクルのポート設置などに取り組んできた。
3年目となる今年度は、リニモのキャンペーンと連携したデジタルクーポンの配信、デジタルチケットの販売などのサービスを追加し、周遊促進に取り組んでいる。
【委員】
MaaSについてはどのような効果があったのか。また、難しいと思うが、地下鉄とリニモの乗り継ぎ割引や、敬老パスは使えないのか。
【理事者】
乗り継ぎ割引は、名鉄電車と名鉄バスや地下鉄と市バスなどの連携は行われている。リニモは、藤が丘駅で地下鉄、八草駅で愛知環状鉄道とそれぞれ連絡しているが、事業者間割引となるので、減収が発生し、事業者間の減収面での調整が難しく、現在は乗り継ぎ割引は実施していない。
愛・地球博の際には、会場までのJR、愛知環状鉄道、リニモの往復割引フリー切符として、1枚の切符で行ける企画が行われていたが、当時は交通系のICカードがこの地域で普及しておらず、それぞれ切符を買わなければならないわずらわしさもある中で、その切符が販売されていた経緯がある。
敬老パスは名古屋市の福祉施策の一環で、名古屋市内在住の高齢者について、市内の公共交通の利用を無料にして高齢者の外出を促進している。無料化の財源は名古屋市の一般会計から交通局に補塡されている。リニモは、藤が丘駅は名古屋市内であるが、それ以外の駅が名古屋市外になっており、導入できない状況となっている。
【理事者】
MaaSは、様々な移動手段やサービスを組み合わせて一つの移動サービスとして提供するものである。公共交通のみならず、自転車、シェアサイクルやタクシーなど多様な移動手段や飲食や観光など様々なサービスを組み合わせて、一つのアプリケーションで複数の事業者の決済を可能とするものである。キャッシュレス化といった公共交通の利便性の向上はもとより、周遊の促進や観光や飲食などのほかのサービスとの連携による地域経済の活性化など、様々な効果が期待できる。
【委員】
先日、宇都宮市に行きLRT(次世代型路面電車システム)を視察したが、まちづくりを市電で進めようとしていた。コンパクトシティの取組である。LRTの沿線に工場があるなど、ある程度人が張りついている。また、パーク・アンド・ライドの駐車場をつくり、そこへ車を止めてLRTに乗る。また、駅も開発されて、駅前がきれいな町になっている。昔は小さい家がたくさん建ち並んで、そこに店舗があったが、今はきれいな町となり、そこで買物をするなど生活を楽しんでいる。LRTは、道路の真ん中を通しており、それほど難しい工事ではないと思うが、開発するのに30年かかっており、様々なことを決めるまで時間がかかったとのことであった。
これから免許を返納する高齢者が増えると、一番問題となるのは、買物と通院である。これらがある場所へどのように移住してもらうかを考えると、リニモは最適である。リニモの沿線には県の土地がたくさんあり、陶磁美術館は広大な土地であるので、県営住宅や介護施設をつくるなど、住居にしてリニモを使って通勤することをこれから考えていく上では、まちづくりや再開発が大変重要である。そのためには、市町の協力なしにはできないが、大きな絵を県が描かないといけない。リニモや愛知環状鉄道を使って地域のコンパクトシティをつくりながら人の輸送を考えていくのは、大変重要なテーマだと思う。ぜひリニモも、損益分岐点ぎりぎりのところであるため、利用促進やまちづくりも考えてもらい、本県の未来の都市開発やまちづくりに生かしてもらいたい。
( 委 員 会 )
日 時 令和5年12月13日(水) 午後0時58分~
会 場 第4委員会室
出 席 者
丹羽洋章、松本まもる 正副委員長
横井五六、鈴木喜博、青山省三、新海正春、日高 章、伊藤貴治、
富田昭雄、阿部洋祐、古林千恵、柴田高伸、園山康男 各委員
建設局長、建設政策推進監、建設局技監(2名)、土木部長、道路監、
治水防災対策監、豊川水系対策本部副本部長、豊川水系対策本部事務局長、
水資源監、
都市・交通局長、同技監、都市基盤部長、リニア・交通対策監、
港湾空港推進監、空港長、
建築局長、同技監、公共建築部長、建築指導監、
収用委員会事務局長、関係各課長等
委員会審査風景
<付託案件等>
○ 議 案
第118号 令和5年度愛知県一般会計補正予算(第5号)
第1条(歳入歳出予算の補正)の内
歳 出
第7款 建設費
第2条(繰越明許費の補正)の内
第7款 建設費
第121号 令和5年度愛知県港湾整備事業特別会計補正予算(第2号)
第122号 令和5年度愛知県県営住宅管理事業特別会計補正予算 (第1号)
第127号 令和5年度愛知県流域下水道事業会計補正予算(第2号)
第133号 愛知県都市公園条例の一部改正について
第135号 工事請負契約の締結について(道路改良事業一般国道419号
蛇抜高架橋上部工事)
第136号 工事請負契約の締結について(道路改良事業県道豊田明智線
浅谷トンネル(仮称)建設工事)
第137号 工事請負契約の変更について
第138号 特定事業契約の締結について
第139号 名古屋高速道路公社が新設し、又は改築する指定都市高速
道路の整備計画の変更について
第157号 愛知県名古屋飛行場及びあいち航空ミュージアムの指定管
理者の指定について
(結 果)
全員一致をもって原案を可決すべきものと決した議案
第118号、第121号、第122号、第127号、第133号、第135号から
第139号まで及び第157号
○ 閉会中継続調査申出案件
1 道路の整備等について
2 水資源対策並びに河川、砂防及び下水道の整備等について
3 土地対策、都市計画並びに公園及び市街地の整備等について
4 総合交通体系及び港湾の整備等並びに航空対策について
5 宅地建物取引及び建築・宅地造成等の規制について
6 公営住宅等の建設及び管理並びに県有施設の営繕工事について
7 建設局、都市・交通局、建築局及び収用委員会の行政運営について
<会議の概要>
1 開 会
2 議案審査(11件)
(1)理事者の説明
(2)質 疑
(3)採 決
3 委員長報告の決定
4 一般質問
5 閉会中継続調査申出案件の決定
6 閉 会
(主な質疑)
《議案関係》
【委員】
第133号議案愛知県都市公園条例の一部改正について伺う。
現在、愛・地球博記念公園において、来年3月16日にオープンする魔女の谷の北側にある丘の南斜面に魔女の谷のみえる展望台を整備しており、今回の条例改正は、この展望台を利用する際、使用料を徴収する内容になっていると思う。土日休日、ゴールデンウイーク、学校の春休み、夏休み、冬休みには多くの利用者が訪れ、混雑が見込まれるため、出入口に監視員を配置するなど、利用者の安全に万全を期すための費用について利用者に負担を求める内容である。
この有料化の考え方は、6月定例議会で条例改正した猫の城遊具と同じであるが、そもそも猫の城遊具は、現状混雑しているのか。まず、猫の城遊具の利用状況について伺う。
【理事者】
猫の城遊具の利用状況については、8月は猛暑日が続き、9月も真夏日が続いたこともあり、1回当たりの平均利用率は定員140人の3割程度にとどまっており、気候が落ち着いた10月から11月にかけては、1回当たりの平均利用率も、10月は6割と倍増し、11月は8割を超えている。
また、1回当たり100人以上の利用も、8月から9月の2か月間で10回のみであったが、10月は84回、11月は116回と着実に伸び続けており、大変盛況でにぎわっている。
【委員】
この状況から、魔女の谷のみえる展望台も、少なくとも当面は混雑対策が必要であることは推測できる。
ただし、混雑がいつまで続くかは分からない。この先重要なことは、混雑しなくなったときにどうするのかである。混雑しなくなり、常時人員を配置する必要がなくなった場合はどうするのか。
【理事者】
将来的に入場を制限したり誤侵入を防ぐための監視員が必要ないと判断される状況になれば、無料化も検討する必要がある。
ただし、無料化の検討に当たり、入場制限などの必要ない状況が一過性のものなのか、それとも継続性が見込まれるものなのかを適切に見極める必要がある。
【委員】
将来的に混雑しないと判断できるかの見極めが必要だと思う。そのためには、一時的に無料にして混雑状況を確認する必要がある。その場合、条例で料金を徴収するものを一時的に無料にすることができるのか、その対応は可能になるのかのイメージが湧かないため、実際にどう検討を進めていくのか伺う。
【理事者】
条例上、料金を支払う人は、その前に施設の利用許可を受けてもらうこととなり、利用許可を必要としない施設は無料となる。
今回、条文中に魔女の谷のみえる展望台の利用許可の対象から知事の指定する日を除くという除外規定を追加している。これにより、愛知県公報で知事が指定する日を告示すれば料金徴収の前提となる条件がなくなるため、その日は無料化が可能な仕組みになっている。
無料化の検討に当たっては、入場制限などの必要のない状況が一過性なのか、継続性が見込まれるのかを適切に見極める必要があるため、このような一時的な無料化にも対応できる仕組みとした。
なお、一定の検証期間を経た上で入場制限などの必要がない状況が継続すると見込まれる場合には、条例改正をした上で恒久的な無料化を検討する必要がある。
【委員】
本来公園施設は、野球場やテニスコートといった特定の人が一時的に独占利用するような施設を除いて無料で使用することが基本である。供用開始後の利用状況をしっかりと見極めて、利用者にとって何が最良なのかを適切に判断することを要望する。
続いて、第138号議案、特定事業契約の締結について、愛知県営東高森台住宅のPFI方式整備事業について、この事業の概要と事業者選定の経緯を伺う。
【理事者】
事業の概要は、春日井市にある県営東高森台住宅において、PFI手法を活用し、老朽化した2棟80戸の既存住棟等を除却するとともに、1棟100戸を建設して県に引き渡す、いわゆるBT方式による事業であり、工期は2027年7月末までの予定である。
次に、事業者選定の経緯については、総合評価落札方式による一般競争入札により事業者を選定しており、2者の入札参加者があった。
選定に当たり、学識経験者等で構成された事業者選定委員会において、入札参加者から提出された入札書及び事業提案書を評価し、総合評価点が最も高いものを落札候補者として選定した。これを受け、本年10月24日に落札者として決定した。
【委員】
今回、BT方式とするメリットは何か。また、なぜ維持管理や運営を含んだBTO方式ではなく、BT方式としたのか。
【理事者】
公営住宅におけるPFI方式による事業手法は主に2種類あり、PFI事業者が自らの資金で施設を建設して、所有権を移転し、事業完了するBT方式と、BTの後、事業者が一定期間施設を維持管理・運営するBTO方式がある。
本県では、2017年度に東浦住宅で最初のPFI事業を実施して以来、全ての県営住宅において、BT方式を採用している。
BT方式は、PFI事業者に設計・施工を一括して発注することにより、民間が持つ高い技術力を活用し、コストの削減や工期短縮などのメリットが期待できる。
本事業においても、県が直接実施した場合に比べ、約8.6パーセントの県財政負担額の削減効果と、およそ2割の工期短縮効果が見込まれている。
BTO方式は、BT方式の設計・施工一括などのメリットに加え、運営等の効果が加わるが、県営住宅は、住宅セーフティネットとしての役割を担う特性上、家賃収入の制約がある一方、民間事業者に委ねる業務がエレベーターなど共用部設備の保守点検程度に限られるという特性があるため、文化ホールや運動施設など高い収益性が見込める公共施設と比べると民間事業者の創意工夫の余地が小さく、高い収益が期待しにくいと考えられる。
これらのことから、事業者へのヒアリング結果なども参考にして、県営住宅のPFI方式整備事業については、維持管理・運営を含めないBT方式を採用している。
【委員】
事業実施に当たっては、地元経済の発展や地元企業の育成も重要であると考える。今回、一般競争入札に2者が応札したが、事業者選定に当たって、地元経済へどう配慮しているのか。
【理事者】
本県の公共工事発注方針において、地元建設業者の受注機会の確保、県産資材の優先使用等を掲げている。本事業も、応募企業の資格要件や事業者選定における評価基準を設定することで地域への配慮を行っている。
まず、応募企業の入札参加資格要件として、構成員となる設計、建設及び工事監理業務に当たる企業について、営業所の所在地が県内にあることなどを参加要件としており、地元建設業者等への配慮を行っている。
次に、事業者選定に当たり、事業者選定委員会において、落札者決定基準に係る提案内容の評価項目として、地域経済等への貢献を評価している。この項目では、代表企業の主たる営業所の所在地や県産資材の活用などによる地域経済への貢献の内容等を評価している。県営住宅PFI方式整備事業においても、このように地域経済等への配慮を行いながら事業を進めている。
【委員】
最近、愛知県体育館の施設整備等でもBTコンセッション方式が取り入れられ、効果的な手法で施設整備にも本県が取り組んでいることは承知している。公共事業は、基本設計、実施設計、工事という流れと、単年度会計でもあり、時間がかかる部分もあると思う。基本設計、実施設計を同時期に行い、今回工期が2割短くなるとのことであったが、そういったメリット、また、民間事業者のノウハウも取り入れながら、最小の経費で最大の効果を上げられるよう取り組んでもらいたい。
【委員】
第139号議案名古屋高速道路の整備計画の変更について、二つ質問をする。
今回の議案では、本整備計画の変更に伴って追加で670億円の建設事業費が必要になるとのことだが、出資者である県が負担する額は実質幾らになるのか。
【理事者】
名古屋高速道路の建設費用の財源構成は、県と名古屋市の出資金が15パーセント、国土交通省の無利子貸付金が25パーセント、財務省からの財政融資資金を県、市を経由して名古屋高速道路公社へ貸し付ける特別転貸債が35パーセント、市中銀行などから調達する民間資金が25パーセントとなっている。このうち、670億円の増額に対し、出資金は名古屋市と折半するため、県は50億2,500万円を出資する。
また、特別転貸債も市と折半するため、県は117億2,500万円を貸し付けることになり、出資金と特別転貸債を合わせると167億5,000万円となる。
なお、名古屋高速道路公社の料金収入により、出資金は将来的に公社から県へ返還され、特別転貸債は公社から県を経由して財務省に20年かけて償還される予定である。
【委員】
今後の料金と償還計画への影響について、今回の建設事業費の増額を償還する方法として、主に二つの方法が考えられる。一つは利用料金を値上げすること、もう一つは、2044年10月までとなっている現行の償還期限を延長することである。2044年以降、高速道路が無料開放される現計画からの変更である。本年6月29日の建設委員会において、償還期限の見通しについて質問したところ、有料道路室長からは、名古屋高速道路では建設費用や大規模修繕事業費などに係る費用を着実に償還できる見通しとなっており、引き続き現行の料金を基本としていきたいとの答弁があったが、今回の建設事業費の増額を受けた今後の影響について、改めて伺う。
【理事者】
料金については、供用の段階で国が料金認可することになっており、現時点では答えられない。
しかし、都心アクセス関連事業の整備については、料金の値上げではなく、償還満了日の延伸で対応していく予定としており、今回の増額分も同様に対応したい。
【委員】
今、償還期限を延長する可能性についても言及したと受け止めた。
耐震化や老朽化への対応、また、資材や労務単価の上昇など、今後も整備に係る建設事業費が計画以上に上がることが予想される。今回のケースも踏まえれば、償還主義を見直して、恒久有料化に向けた検討も進めるべきではないか。
国も本年5月に道路整備特別措置法等を改正して、全国の高速道路の償還期限を50年間延ばして2115年までとした。事実上、半永久的に料金徴収を続けることを宣言した経緯も踏まえれば、名古屋高速道路においても、恒久有料化に向けた議論を始めるべきタイミングである。
恒久有料化は、道路の安心・安全の確保のために必要な維持管理費用を持続的に徴収する仕組みであるとともに、利用料金の引下げにもつながると思う。昨年度は、料金収入約679億円のうち半分近くの約314億円が償還準備金に充てられているが、償還期限を延ばせば1年間の借金を払う額も波が低くなるので、その分を料金の引下げに充てることもできるはずである。
この提案は、あいち民主県議団の令和6年度施策及び当初予算に対する提言として、本年10月に知事に提出した。来年以降懸念される物流の2024年問題の解消に向けた長時間労働の是正、物流コストの削減を通じた産業競争力の強化、また、物価高騰に現在あえいでいる県民への家計支援策として、名古屋高速道路の償還期限の延長や恒久有料化の議論を進めてもらいたい。
【委員】
同じく第139号議案の名古屋高速道路の整備計画変更について伺う。
名古屋高速道路公社が取り組んでいる都心関連アクセス事業は、名古屋駅へのアクセス向上や広域交通網の連携強化を図るためには欠かせない事業である。
今回の事業費と完了予定年度に係る整備計画変更は、新洲崎地区の実施設計の結果によるものであるが、実施設計に当たり、通常の設計契約ではなく、ECI方式により実施設計を行った。そこで、ECI方式を採用した理由について伺う。
【理事者】
ECI方式は、設計施工に必要な条件や仕様など、発注時点では明確に定めることができない事業などが対象であり、設計段階から建設会社の専門的な技術などを反映させる仕組みである。
今回変更対象となる新洲崎地区は、名古屋高速道路の東山線と都心環状線が交差する新洲崎ジャンクションを改築するため構造が複雑な形状となり、設計に当たっては、既設構造物を含めた全体の耐震検討とともに架設方法など、施工が現実的に可能か考える必要があり、技術的難易度が非常に高い。
また、現場は交通量が多い主要幹線街路で多くの占用管が埋設されているため、交通への影響を最小限に抑えることや、移設困難なライフラインの本管などを避けることも考慮する必要があり、発注時点で条件や仕様などを定めることが困難な状況であった。
そのため、建設会社からの技術提案を受けることにより、合理的な設計を行い、効率的に事業を推進することができるECI方式を採用している。
【委員】
当初に新洲崎地区を整備計画に組み入れたときと比較して事業費が670億円増加となっており、また、完了予定日が4年延伸となり、大きな変更となっている。
昨今の社会情勢や資機材及び労務単価の増額などはやむを得ないが、設計業務で受注後に優先交渉権者として詳細設計を行うECI方式を採用したことにより、競争が働きにくいのではないかという印象も受け、構造や施工方法が過大な設計になっていないか、懸念をしている。そこで、事業費や事業期間の妥当性について伺う。
【理事者】
今回の事業費や事業期間の変更については、名古屋高速道路公社が建設会社と具体の構造や施工方法を協議し、まとまった設計内容について、積算基準などに基づき精査を行っている。
また、ECI方式においては、中立公正な観点からの学識経験者の意見を聴くことが定められており、名古屋高速道路公社が学識経験者で構成される外部委員会において今回の変更内容を説明し妥当性を確認していることから、県としても適切であると考えている。
【委員】
大変難しい事業であることは理解したが、事業費の増額は公社の安定運営にも関わる。引き続き工事実施の段階においても、コスト意識を持って事業費の縮減に努めるようお願いする。
また、都心アクセス関連事業は地域の発展、活性化に大きく貢献するものであり、早期完了を目指して取り組んでほしい。
《一般質問》
【委員】
令和3年7月、静岡県熱海市において、不適切な盛土に起因する大規模な土石流により甚大な人的・物的被害が生じた。それを受けて、国は盛土総点検を全国の自治体に要請するとともに、盛土による災害の防止に向けた対応方策を検討し、全国一律の基準で規制する盛土規制法が本年5月26日に施行された。
本県でも熱海市での災害発生時に独自の条例制定に向けた検討を行ったと聞いているが、盛土規制法について本県の考え方を伺う。
【理事者】
静岡県熱海市での土石流災害の発生を受け、本県でも独自条例を検討してきたが、盛土規制法は、本県が検討してきた独自条例よりもさらに厳しい内容になっていることから、独自条例ではなく同法を適切に執行することにより、危険な盛土等から県民の生命や財産を守ることが可能である。
【委員】
今回の盛土規制法の特徴について伺う。
【理事者】
盛土規制法の特徴は4点ある。
1点目は、隙間のない規制であり、土地の用途にかかわらず、盛土等により人家等に被害を及ぼし得る区域を都道府県、政令市、中核市が規制区域に指定して、規制区域内で行われる盛土や切土について幅広く許可対象としている。
2点目は、盛土等の安全性の確保である。災害防止のために必要な許可基準に沿った安全対策について、工事計画から工事完了まで、各段階で検査を実施する。
3点目は、責任の所在の明確化で、盛土等が行われた土地について、土地所有者等が安全な状態に維持する責務を有することが明確化された。
4点目は、実効性のある罰則で、無許可での行為や命令違反等に対する罰則が大幅に強化されている。
こうした規制の強化により、盛土等による災害の防止を図るものである。
【委員】
同法の規制は、新たな規制区域が指定された後、運用が開始され、その規制区域は都道府県知事等が指定する。そこで、規制区域の指定に向けた現在の取組状況と今後の予定について伺う。
【理事者】
盛土規制法では、市街地や集落などの人家がまとまって存在しているエリアや、市街地から離れていても渓流の上流域などの盛土が崩落した場合に土石流となるエリアなど、人家に危害を及ぼし得るエリアを規制区域として指定できる。
本県では、今年度より規制区域の指定に必要な基礎調査を実施している。現在、保全対象となる家屋や道路、公共施設などの分布状況、傾斜地、渓流などの地形状況などを調査しており、盛土等の崩落や流出から保全対象を守るために規制する区域の抽出を行っている。
今後は、規制区域の案を作成の上、関係市町村への意見聴取を実施し、規制区域を取りまとめる。盛土規制法の施行に伴う2年間の経過措置期間が終了する2025年5月までに規制区域の指定を行い、新たな規制の運用を開始したい。
【委員】
危険箇所を行政側がくまなく点検、パトロールするには限界があり、県民との連携が欠かせない。情報通報窓口を設置するなど、不適切な盛土の把握に努めてもらいたい。県、市町村及び県民が一体となって法の適切な運用ができるよう、今後もしっかりと準備をしてもらうことを要望する。
【委員】
境川水系河川整備計画に基づく事業の進捗状況について伺う。
地球温暖化が進む中で風水害が激甚化、頻発化し、その対策が急がれるとして、国は、防災減災国土強靱化のための5か年加速化対策を進めている。
そのような中で、一昨年、安全・安心対策特別委員会の県内調査で、境川の支川である五ケ村川の治水事業の視察があり、境川の右岸側になるが、そこに流れる五ケ村川、その支川とほかの支川の多くと支川同士が立体交差をしている非常に複雑な状況であることを目の当たりにした。
そして、23年前の東海豪雨の際には、この特殊な流域で河川構造も要因となって、境川右岸流域が氾濫し、甚大な水害をもたらし、周辺地域の被災状況は激甚災害に指定された。
特に被害がひどかった地域が境川右岸側の支川流域の市町である豊明市、大府市、東浦町であった。その流域全体のうち、JR東海道線の北側と南側では災害の発生メカニズムが別々のものであり、まず、北側の被害メカニズムについて触れながら質問をする。
流域の状況を簡単に説明すると、境川の支川である五ケ村川は、境川本川の右岸側を並流するように流れており、境川に直接流入する皆瀬川、明神川、砂川、石ケ瀬川などの支川と立体交差をしていき、豊明市、大府市、東浦町を流れて最終的に河口付近で境川に合流する特殊な河川である。この支川の立体交差が、特に五ケ村川の流下能力に制約を与えており、言わば立体交差がそれぞれの箇所でボトルネックになる状況であり、とりわけJR東海道線が境川をまたぐように走っているが、これに並流するように境川に注ぎ込む石ケ瀬川がある。この石ケ瀬川と五ケ村川の立体交差が最も特殊であり、五ケ村川が石ケ瀬川をくぐる立体交差である。石ケ瀬川が自然流下をしているのを五ケ村川がくぐっている。五ケ村川の川上に貯留施設があり、そこからサイホン方式で高低差を利用し、高低差のエネルギーで、水圧で押し出して流れていく。すなわち、当然サイホン方式の流下能力が五ケ村川自体のボトルネックとなり、これを超える東海豪雨のような大雨となった場合、この貯留施設の限界を超えて五ケ村川の上流方向であるJR東海道線の北側に氾濫する状況を招いた。
JR東海道線の北側の部分の氾濫に対して対策を取る必要があるが、五ケ村川の石ケ瀬川との立体交差地点の流下能力に制約があることから、立体交差地点から上流区間で貯留能力を高める必要がある。この点について、令和4年6月定例議会の一般質問において、整備の方針を示してもらった。その後の進捗状況と今後の見通しについて伺う。
【理事者】
五ケ村川の石ケ瀬川立体交差地点から上流の区間については、隣接して流れる大府市管理の横根川との中堤の撤去を行い、五ケ村川と一体化する河道拡幅を2018年度から実施して、昨年度完了した。現在は五ケ村川の洪水の一部を境川へ毎秒2.8立方メートル排水する排水機場の新設に向けて昨年度予備設計を行い、ポンプの型式や原動機などの仕様を決定したことから、今年度、詳細設計を実施している。
今後は、設計業務の取りまとめ、将来管理を依頼する大府市との調整を整え、早期工事着手を目指す。
【委員】
従前から同地区には五ケ村川の湛水防除対策で農業用の排水機場があり、それが東海豪雨の際には五ケ村川の氾濫で浸水し、発電設備が作動せず排水できない状況となった。その結果、湛水防除すらできず被害がより甚大化する状況を招いた。
心配されるのが今後新設される2.8トンのポンプがある排水機場であるが、今後新設される排水機場は、洪水時に確実に稼働させるための浸水対策ができているのか。
【理事者】
五ケ村川に新設する排水機場は、洪水により排水機場の周辺が浸水した場合にも排水機能を確保する構造を検討している。
具体的には、排水機場を建設する土地は、県が2020年4月に公表した想定最大規模降雨における浸水予想図において、浸水高が境川の堤防高から約20センチメートル下がると想定されていることから、境川の堤防高まで土地をかさ上げすることとして、地盤高は浸水が想定される高さ以上となる計画である。
また、ポンプの稼働には電源の確保が必須となり、商用電源が遮断された場合においても電力が供給されるよう発電機を設置して、自家発電による運転を可能としている。
【委員】
過去の災害をしっかり教訓にして、設計もそれに耐え得る状況を検討して考慮していることがよく分かったので、速やかに建設を進めてもらいたい。1年でも一日でも早く排水機場が完成するよう、しっかりと予算を確保してもらうことを要望する。
JR東海道線の南側の東海豪雨の水害メカニズムは、石ケ瀬川が境川に合流する地点から境川の河川形状がいびつに一部区間狭くなっており、これが原因となって東海豪雨では大きな被害に発展したと考えられる。石ケ瀬川と境川の合流地点から約500メートルの区間で、見た目にも分かるほど人工的に角ばって擁壁が造られた状態で境川の川幅が狭くなっている。これは、伊勢湾台風の被害を教訓として、その治水対策で昭和40年代頃から衣浦湾の河口から堤防掘削によって河道拡幅をしたが、途中の当該箇所の右岸で産業廃棄物が出てきたため、掘削工事を中断することとなり、その後何十年も一部で川幅が極端に狭くなるいびつな堤防となって固定化されてきた。
満潮時に遡上してくる水が川幅の狭いところで極端に水位が上がり、ただでさえ大雨で水の量が増えている流れと相まって、その地点が石ケ瀬川との合流点になるので、石ケ瀬川の流下能力を阻害するどころか、それをせき止めて逆にバックウォーター現象が起こってしまい、バックウォーター現象起こってしまう。さらには越水や破堤を起こし、その支川である市街地に広範囲に流れる鞍流瀬川にもバックウォーター現象を起こして、これが大府市内の都市部や東浦町の一部で氾濫して、大きな被害をもたらした。
この点についても、令和4年6月定例議会で一般質問したところ、境川の川幅が狭い数百メートルの区間の堤防掘削を再開する方針が示された。この境川の整備について、石ケ瀬川の合流地点から下流の川幅の狭い区間における、整備の進捗状況と今後の見通しについて伺う。
【理事者】
境川の石ケ瀬川合流点から下流の川幅の狭い約500メートルの区間については、川幅を約20メートル拡幅する計画である。この区間の整備の進め方として、既設堤防を残し、仮締切りとして利用して護岸工事を行い、最後に全区間の既設堤防を撤去する手順で進めている。
整備の進捗状況については、2021年度から工事に着手し、今年度末には護岸工事が約140メートル完了する予定となっている。
今後も5か年加速化対策予算を活用するなど、必要となる予算を確保し、早期完成を目指す。
【委員】
想像以上に産業廃棄物が奥深くまで埋まっており、それを取り除くのに莫大な費用を要するため、産業廃棄物が混じった土の処理に手間と時間がかかっているが、これが取り除かれないと川幅を広げて河道の流下能力を確保することができず、同じような水害や災害を招きかねないので、1年でも早く完成させてもらうように、しっかりとした予算の確保を要望する。
【委員】
地域鉄道は、地域住民の通勤通学などの足として重要な役割を担っているとともに地域の経済活動の基盤であって、移動手段の確保はもとより、少子・高齢化や地球環境問題への対応、まちづくりと連動した地域経済の自立、活性化などの観点から、その活性化が求められている重要な社会インフラである。
地域鉄道とは、国土交通省によれば新幹線、在来幹線、都市鉄道に該当する路線以外の鉄軌道路線のことをいい、その運営主体は中小の民鉄と第三セクターである。これらを合わせて地域鉄道事業者と呼び、本年4月1日現在で全国に合計で95社あり、うち中小民間鉄道が49社、第三セクターが46社である。
県内では、中小民間鉄道として渥美線などを運行する豊橋鉄道株式会社と城北線を運行する株式会社東海交通事業がある。第三セクターは、今から取り上げる愛知環状鉄道線を運行する愛知環状鉄道株式会社が地域鉄道事業者に該当する。
地域鉄道を取り巻く環境は、少子・高齢化やモータリゼーションの進展などに伴って極めて厳しい状況が続いていることに加えて、新型コロナウイルス感染症の影響により、例えば昨年度は約9割の事業者が鉄軌道業の経常収支ベースで赤字を計上するに至っている。
今回取り上げる愛知環状鉄道線は、岡崎市の岡崎駅から新豊田駅や瀬戸市駅などを経て春日井市の高蔵寺駅に至る45.3キロメートルを約68分で結ぶ鉄道路線であって、通称名は愛環と言う。1988年1月31日に愛知県と岡崎市、豊田市、瀬戸市、春日井市の沿線4市と民間の共同出資で運営する第三セクター方式で営業開始し、本年開業35周年を迎えている。
この間、2005年には愛知万博の開催に際し、会場アクセス列車として、名古屋駅から八草駅間にJR中央線直通列車を運行し、当該年度の輸送実績は史上最高を記録し、年間で1,966万人、1日当たり5万3,890人であった。その後も沿線企業の、例えばトヨタ自動車株式会社がマイカー通勤から公共交通機関利用へ転換する、いわゆるマイカー通勤転換プロジェクトに対応するなど、沿線地域に貢献しつつ、利用者数を着実に増やしてきた。新型コロナ感染拡大前の2019年度の輸送実績は、年間で1,883万5,000人、1日当たり5万1,463人であった。
こうした状況から、この愛知環状鉄道は第三セクターの優等生と言われてきたが、コロナ禍が経営に大きな打撃を与えており、昨年度の輸送実績はその前年度と比べて9パーセントの増加であり、コロナ禍前に比べると約79パーセントの回復に過ぎなかった。
そこで、この愛知環状鉄道における最近の輸送実績、利用者数と現在の経営状況について伺う。
【理事者】
愛知環状鉄道の利用者数は、コロナ前までは順調に推移し、2019年度には約1,883万5,000人となり、新型コロナウイルスの影響により、2020年度は前年度より約570万人少ない約1,312万8,000人まで落ち込んだ。その後、回復傾向にはあるものの、リモートワークの定着などにより、昨年度の実績は約1,486万4,000人、これは2019年度の79パーセントにとどまっている。定期券の利用者について見ると、通学についてはコロナ前の水準にほぼ戻りつつあり、一方で、通勤については2019年度の77パーセントと回復が鈍い状況にある。また、定期以外の利用者についても2019年度の71パーセントにとどまっている。
なお、今年度の上半期についても、前年同期は上回ったものの、コロナ前の2019年度に比べると83パーセントにとどまるなど、厳しい状況が続いている。経営状況についても同様の傾向であり、運輸収入をコロナの前後で比較すると、2020年度はコロナ前の2019年度の66パーセントまで減少した。昨年度はコロナ前の78パーセントの回復となっている。
この結果、会社は3期連続の赤字決算となっており、昨年度の当期の純損失は5億1,700万円である。
【委員】
通学者は戻ってきたが通勤者が戻っていないのであれば、取戻しに手を打たなければならないが、リモートワークが定着してしまうと、取り戻すのが極めて難しくなる。そのため、ほかに糸口を見いだすしかなく、愛知環状鉄道は現在、観光振興に力を入れており、愛知環状鉄道沿線の名所や文化観光施設などを巡る愛環沿線ウォーキングを通年で開催したり、土日限定のフリー乗車券を発売するなど、通勤通学以外の利用者への定着を図ろうと努力している。
そこで、愛知環状鉄道の厳しい状況を克服するため、県と会社、愛知環状鉄道はそれぞれどのような取組を考えているのか。
【理事者】
県の取組として、厳しい経営状況下においても先送りができない安全安定輸送のために必要となる修繕や設備更新に係る費用の一部を補助する制度を昨年度に創設し、沿線市と協調して支援を行っている。
また、高騰する電気料金の負担を軽減するため、国の交付金を活用した支援も実施している。
さらに、県と沿線4市、岡崎市、瀬戸市、春日井市、豊田市で構成する愛知環状鉄道連絡協議会では、JR東海や名古屋鉄道とコラボした沿線のウォーキングや愛知環状鉄道の車両基地見学会などのイベントを開催するなど、利用促進に努めている。
一方で、会社では既存の設備の長寿命化や設備投資の時期、数量の見直しなど、経費の削減に努めるとともに、収益の拡大に向けて全国の第三セクター鉄道を巡りスタンプを集める御朱印の鉄道版、鉄印帳の販売や有料の車両撮影会、シニア向け企画切符の販売など、様々な取組を行っている。
このほか、通勤利用の回復に向けて、県、会社、豊田市が協力して沿線企業を訪問して愛知環状鉄道利用の促進についての意見交換会を実施している。
今後も継続してこうした取組を実施するなど、会社の経営状況の改善に向けて、会社や沿線市と連携しながらしっかりと取り組んでいく。
【委員】
愛知環状鉄道が発表している利用者内訳の推移を見てみると、コロナ禍前までは定期券利用者の通勤通学利用者とそれ以外の定期外利用が半々であったが、コロナ禍に至り、通勤がリモートワークで減り、当然のことながら定期外利用の数が随分と減少している。先ほど少し触れたが、通勤客が戻らないのであれば観光に目を向けるとのことだが、観光がコロナ禍で著しく減っているので、コロナ禍前の水準には至らないことになる。工夫して観光振興の取組を実施しているが、さらに工夫して取組を進めてもらいたい。
最後に、昨年3月に愛知環状鉄道が策定した中期経営計画があり、そこに三つ、愛知環状鉄道の目指すべき姿がうたわれている。第1に掲げられているのが安全で信頼される鉄道である。社員全員が安全を最優先に業務に取り組むこととされ、例えばヒヤリ・ハットや危険予知のKY活動の取組を進めるとしている。続けて、第2に便利な鉄道を挙げており、利用者の様々な場面での利用に便利であること、例えばキャッシュレス決済の活用、あるいはバリアフリー法に基づくエレベーターや多機能トイレの設置を検討するとしている。今回取り上げた収益の悪化からの脱却についても、3番目に取り上げられており、営業収入の向上や経費の削減に取り組むとされ、一般利用の促進、通勤通学利用の促進、ジブリパーク開園による新たな移動需要の取り込みなど、運輸収入の確保に加えて高架下事業、車両ラッピングの売り込みなどの運輸外収入の確保を挙げている。営業収益の悪化からの脱却のために、老朽施設・設備の更新や修繕の執行停止や、施工数量の見直しによる経費の過度な削減に陥ることもありうるが、安全安定輸送の確保を最優先に利便性の高い輸送サービスの提供を目指すことを愛知環状鉄道が掲げていことは正しい。
一方で、将来的には生産年齢人口の減少は顕著に表れてくる。通勤通学の利用のさらなる減少が余儀なくされることは明らかである。利用者のさらなる確保は難しいが、沿線のまちづくりの進展が欠かせないと思っており、区画整理も含めた駅周辺の開発など、関係機関への働きかけは中長期的にしっかりとやらなければならない。
地域鉄道というと、ローカル線でのどかな田園や海岸沿い、山あいやトンネルを行くものをイメージする。そういう地域で新たなまちづくりと言っても絵空事でしかない。過疎が著しく進んでいくところでは現実味が全くないが、愛知環状鉄道は都市間輸送で都市と都市を結んでおり、輸送実績増の仕掛けは、観光振興だけでなく、根本的・長期的な課題解決のためにやるべき取組があると思うため、長期的な課題への対応を含めて、さらなる経営改善策の検討や実施を期待したい。
なお、愛知高速交通株式会社が運営する東部丘陵線、いわゆるリニモも、コロナ禍の影響を受けているが、利用客の戻りがよいと聞いている。しかし、長期的な需要減少は当然に見込まれ、リニモについても一層の利用促進策に取り組んでもらいたい。
【委員】
リニモについては、開業当時は未来の乗り物と言われ、磁気浮上型の無人で、大変眺めやデザインもよい乗り物であるとしてスタートしたが、愛知万博が終わってからは経営難で、県も市も相当財政的に支援したと聞いている。その後、イオン株式会社やIKEAができて状況も変わったが、その後コロナ禍となった。まず、リニモの乗車数及び売上げ等を伺う。
【理事者】
リニモの利用者数は、愛知万博後の2006年度は年間502万人であったが、その後、沿線における住宅や商業施設の開発の進展とともに着実に増加し、2017年度には年間916万人、2019年度には愛知万博後最多となる923万人となった。2020年度は新型コロナウイルスの影響で538万人、対前年比で約58パーセントまで落ち込んだが、昨年度は行動制限の緩和やジブリパークの開園効果もあり、年間851万人、2019年度比で92パーセントまで回復をした。さらに、今年度上半期9月までを見ると、コロナ禍前とほぼ同じ水準まで戻っている。
次に、リニモの経営状況については、開業時の初期投資に伴う長期借入金の返済が負担になっており、2006年度以降、毎年10億円以上の赤字を計上していたが、その後、県と沿線市等による2度の経営支援により長期借入金を完済し、2016年度以降は黒字に転じ、2019年度には万博後最大となる当期純利益3億1,500万円を計上した。その後2年間、2020年度と2021年度は新型コロナウイルスの影響でそれぞれ2億2,100万円と1億800万円の赤字となり、昨年度はジブリパークの開園の効果もあり、当期純利益が2億4,900万円、3年ぶりの黒字決算となった。
【委員】
3年ぶりに黒字決算となったとのことだが、損益分岐点を伺う。
【理事者】
損益分岐点について、直近2年間の2021年度と昨年度の会社の決算書類を基に計算すると、日々の運行に必要な経費である営業費が約14億6,800万円に対して、広告収入等の運輸雑収が約5,400万円あり、これを差し引いた約14億1,400万円を旅客運輸収入で賄う必要がある。利用者1人当たりの単価は173円であることから、この単価で割った約818万人が損益分岐点となる。
【委員】
ジブリパークが開園して、利用者数はどれぐらい増えたのか。
【理事者】
昨年11月のジブリパーク開園に伴うリニモの利用者数への影響については、ジブリパークの開園前後の定期以外の利用者数の比較から、1日当たり約2,000人の増加と試算している。
ジブリパークの年間の営業日数を300日と計算して、年間で換算するとリニモの利用者数は60万人増加となる。
【委員】
1日2,000人、実質1,000人が往復で2,000人である。60万人というが、単純に月6万人、1年で72万人増えたとして、年間で818万人とすると、先ほど851万人で黒字とのことだったので、その前は780万人しか乗っていないことになる。ジブリパークが開園しなかったら、ずっと赤字だったことになる。ジブリパークで60万人増加したとしても、851万人から60万人を引くと790万人である。
【理事者】
昨年度は、ジブリパークの開園が11月であり、半年分にすると30万人程度になるので、それを差し引くと収益分岐点を少し上回っていたと思う。
【委員】
ジブリパークが開園しなかったら、黒字になっていないのか。
【理事者】
昨年度の実績は851万人で、ジブリパークの増加者数が1年で換算すると60万人で、昨年度は半年分のため30万人である。851万人から30万人を引くと821万人で、損益分岐点が818万人であるため、2年の平均では、若干上回っている。
【委員】
損益分岐点を出して、どのくらい乗らなければいけないかを見なければならない。ジブリパークの入場者数は公表されておらず、実際に車でどのくらいの人が来ていて、どのくらいリニモに乗ったかが分からない。その辺はしっかり調べてもらい、ぎりぎりの状況であるので、リニモもしっかり対策しないと経営難になる。
藤が丘駅を見ると、ジブリパークが開園したからといって、全く潤っていない。駅の周辺にはジブリの装飾等もなく、人が増えて買物をしている雰囲気もないので、もう少し対策しなければいけないし、恩恵を受けていない。どのようにリニモにたくさん乗ってもらうのか。ジブリパークに来てもらう人もそうでない人も、リニモに乗ってもらい、買物や旅行など、いろいろなところを訪れてもらえるようにどう誘導するのか伺う。
【理事者】
本県では、ジブリパークの開園を契機に、沿線地域全体で受け止めて広く波及させることにより地域の活性化を図ることが重要であると考えている。
その一環として、今年度はリニモでおでかけキャンペーンを11月から来年の1月末まで実施している。ジブリパーク来園者がリニモの1DAYフリーきっぷを利用し、沿線の店舗、施設で割引などの特典が受けられる内容となっており、藤が丘の中央商店街振興組合や沿線市の観光協会などと連携して取り組んでいる。
また、快適な移動、地域の活性化などを目指し、名古屋東部丘陵地域を中心にMaaSの社会実装に向けた実証実験を行っており、これまでに沿線地域の観光情報の配信、回遊性の向上が期待されるシェアサイクルのポート設置などに取り組んできた。
3年目となる今年度は、リニモのキャンペーンと連携したデジタルクーポンの配信、デジタルチケットの販売などのサービスを追加し、周遊促進に取り組んでいる。
【委員】
MaaSについてはどのような効果があったのか。また、難しいと思うが、地下鉄とリニモの乗り継ぎ割引や、敬老パスは使えないのか。
【理事者】
乗り継ぎ割引は、名鉄電車と名鉄バスや地下鉄と市バスなどの連携は行われている。リニモは、藤が丘駅で地下鉄、八草駅で愛知環状鉄道とそれぞれ連絡しているが、事業者間割引となるので、減収が発生し、事業者間の減収面での調整が難しく、現在は乗り継ぎ割引は実施していない。
愛・地球博の際には、会場までのJR、愛知環状鉄道、リニモの往復割引フリー切符として、1枚の切符で行ける企画が行われていたが、当時は交通系のICカードがこの地域で普及しておらず、それぞれ切符を買わなければならないわずらわしさもある中で、その切符が販売されていた経緯がある。
敬老パスは名古屋市の福祉施策の一環で、名古屋市内在住の高齢者について、市内の公共交通の利用を無料にして高齢者の外出を促進している。無料化の財源は名古屋市の一般会計から交通局に補塡されている。リニモは、藤が丘駅は名古屋市内であるが、それ以外の駅が名古屋市外になっており、導入できない状況となっている。
【理事者】
MaaSは、様々な移動手段やサービスを組み合わせて一つの移動サービスとして提供するものである。公共交通のみならず、自転車、シェアサイクルやタクシーなど多様な移動手段や飲食や観光など様々なサービスを組み合わせて、一つのアプリケーションで複数の事業者の決済を可能とするものである。キャッシュレス化といった公共交通の利便性の向上はもとより、周遊の促進や観光や飲食などのほかのサービスとの連携による地域経済の活性化など、様々な効果が期待できる。
【委員】
先日、宇都宮市に行きLRT(次世代型路面電車システム)を視察したが、まちづくりを市電で進めようとしていた。コンパクトシティの取組である。LRTの沿線に工場があるなど、ある程度人が張りついている。また、パーク・アンド・ライドの駐車場をつくり、そこへ車を止めてLRTに乗る。また、駅も開発されて、駅前がきれいな町になっている。昔は小さい家がたくさん建ち並んで、そこに店舗があったが、今はきれいな町となり、そこで買物をするなど生活を楽しんでいる。LRTは、道路の真ん中を通しており、それほど難しい工事ではないと思うが、開発するのに30年かかっており、様々なことを決めるまで時間がかかったとのことであった。
これから免許を返納する高齢者が増えると、一番問題となるのは、買物と通院である。これらがある場所へどのように移住してもらうかを考えると、リニモは最適である。リニモの沿線には県の土地がたくさんあり、陶磁美術館は広大な土地であるので、県営住宅や介護施設をつくるなど、住居にしてリニモを使って通勤することをこれから考えていく上では、まちづくりや再開発が大変重要である。そのためには、市町の協力なしにはできないが、大きな絵を県が描かないといけない。リニモや愛知環状鉄道を使って地域のコンパクトシティをつくりながら人の輸送を考えていくのは、大変重要なテーマだと思う。ぜひリニモも、損益分岐点ぎりぎりのところであるため、利用促進やまちづくりも考えてもらい、本県の未来の都市開発やまちづくりに生かしてもらいたい。