委員会情報
委員会審査状況
農林水産委員会
( 委 員 会 )
日 時 令和5年10月10日(火) 午後0時58分~
会 場 第2委員会室
出 席 者
佐藤英俊、村瀬正臣 正副委員長
峰野 修、いなもと和仁、近藤裕人、柳沢英希、杉浦友昭、高橋正子、
長江正成、桜井秀樹、藤原 聖、井上しんや、喚田孝博 各委員
農業水産局長、農林水産推進監、農業水産局技監、農政部長、
畜産振興監兼畜産課長、水産振興監、
農林基盤局長、同技監、農地部長、林務部長、関係各課長等
<付託案件等>
○ 議 案
第103号 令和5年度愛知県一般会計補正予算(第4号)
第1条(歳入歳出予算の補正)の内
歳 出
第6款 農林水産費
第115号 県の行う土地改良事業に対する市町村の負担金の変更につ
いて
(結 果)
全員一致をもって原案を可決すべきものと決した議案
第103号及び第115号
○ 閉会中継続調査申出案件
1 農林水産業の振興について
2 農地関係の調整及び土地改良について
3 緑化の推進について
4 農業水産局、農林基盤局、海区漁業調整委員会及び内水面漁場管理委
員会の行政運営について
<会議の概要>
1 開 会
2 議案審査(2件)
(1)理事者の説明
(2)質 疑
(3)採 決
3 委員長報告の決定
4 一般質問
5 閉会中継続調査申出案件の決定
6 閉 会
(主な質疑)
《議案関係》
【委員】
9月定例議会において、将来を担う人材の育成を図るため、農業水産局、労働局及び教育委員会において、農業大学校、高等技術専門校及び県立高等学校における実習施設の整備を行うとして議案が提出されている。この財源は、名古屋競馬株式会社からの寄附金を活用するとされているが、農業水産局が整備を行う農業大学校については、岡崎市にある全寮制の学校で、時代の要請に対応した質の高い農業後継者を育成しており、農業を実践的に学べる県内唯一の研修機関であると承知している。
そこで、今回の施設整備に至った経緯について、また、具体的な整備内容について伺う。
【理事者】
農業大学校においては、卒業後、農業の現場で即戦力となる人材の育成を教育目標として学生の育成を行っており、実際の生産現場に対応した施設で先行実習を行うことを基本としている。養鶏専攻においては、学生に養鶏の実践的な技術を習得させるため、計3棟の鶏舎で約2,500羽の採卵鶏を飼育している。
今般、名古屋競馬株式会社から県や市に対して、中京競馬場開設70周年を記念し、若い人への人材育成に関する事業に活用してほしいとの寄附の申出があった。本県では、農業水産局、労働局及び教育委員会の3局で寄附者の意向に沿った設備を整備することとし、農業水産局としては、農業大学校において、老朽化により早急に整備が必要な鶏舎内の飼養設備を更新することとした。
具体的な整備内容は、3棟ある鶏舎のうち、1棟のウインドウレス鶏舎内において、老朽化して一部腐食が進んでいる多段式ケージを更新する予定である。また、ケージに附属する自動給餌機、給水設備、集卵機等も故障が頻発しているため、最新の生産現場で採用されている設備に一体的に更新する。
【委員】
鶏舎内のケージや附属する設備等を一体的に更新するとのことだが、今回更新する施設について、今後どのように利用していくのか。
【理事者】
ケージと附属設備を最新の生産現場で採用している設備に更新することにより、機器の故障による鶏の事故死や卵の破損などを防ぎ、採卵鶏の生産性の向上を図る。
また、鶏舎内の環境向上を図ることにより、鳥インフルエンザなどの家畜伝染病の発生を防ぎ、より防疫体制を強化した設備での学習教育を進める。
今回の更新を早期に実施することにより、養鶏専攻における卒業論文のテーマの幅を広げるなど、教育効果を高め、生産現場で即戦力となる人材の育成を図りたい。
【委員】
本県の養鶏は、国の事業等を活用した規模拡大が進む一方で、都市化の進展による飼養環境の悪化や後継者不足などによる廃業で飼養戸数は減少傾向にあると聞いている。また、鳥インフルエンザをはじめとする防疫対策の負担が増大するなど、経営環境も厳しくなっているとも聞いている。こうした中、今回の農業大学校における施設整備を契機として、生産現場で即戦力となる人材の育成を進めて、本県の養鶏産業がさらに元気になることを期待している。
【委員】
土地改良事業費の土地改良事業費補助金と治山費の小規模治山施設費について、9月補正額はそれぞれ昨年に比べどのぐらい増えているのか伺う。
【理事者】
土地改良事業費補助金については、昨年度の9月補正では1億5,000万円の予算であり、今年度は2億円であるため、5,000万円増えている。
【理事者】
小規模治山施設費については、今年度は2億5,000万円であり、昨年度は2億円であるため、5,000万円の増額である。
【委員】
それぞれ5,000万円増えているとのことだが、6月の集中豪雨による被害の対策費で増えているとの理解でよいか。
【理事者】
土地改良事業費補助金については、6月2日の大雨で被災した市町村等が行う排水路の更新や、排水機場の修繕等緊急を要する施設の整備に対して、補助する予定である。
【理事者】
小規模治山施設費については、6月2日の豪雨で被災した箇所の復旧事業の実施を予定している。
【委員】
小規模治山施設費は6月2日の豪雨被害への対策で全て使うということでよいか。
【理事者】
今回の6月2日の災害の被害箇所と災害以外の要因による箇所を両方合わせて検討した結果、6月2日の被害箇所を優先すべきとなったため、結果的に災害で被害を受けたところを事業実施予定箇所とした。
【委員】
災害以外の箇所が後回しになったと思うが、そこはやらないといけないため、財政当局にも掛け合って、次の補正予算も要求してほしい。
《一般質問》
【委員】
農業分野のみならず、様々なモノづくりの業界をはじめ、流通、看護、介護、警察など、多くの業界において人手不足の課題が生じている。
今後の農業分野での人材確保や人材育成において、ICTやIoTなどを導入して今までの農作業のイメージを一新し、農業の仕事の効率化や、若年層を含め幅広い年代層の農業従事者の確保、また、最も重要な食料確保、食料自給率の向上に向け、新規参入しやすい土壌をつくり、農業作業率の向上を目指す必要があると考えている。
9月補正予算において、農業大学校管理運営事業費では新たなゲージシステムを導入すると聞いているが、古い設備を更新することも大切なことではあるが、それだけでは現状の農業が抱える課題解決には結びつきにくいと考えている。
現場での課題をいち早く酌み取り、農業の専門学校と言われる農業大学校の魅力向上に努め、少子化の中でもより多くの人材を確保し、農業県である愛知県の農業の発展に精力的に取り組んでほしい。
初めに、農業大学校の卒業生の就農状況、また、進路状況がどのようになっているのか。
【理事者】
農業大学校と4年制大学校の違いであるが、農業大学校は幅広い教養教育を実施する一般大学とは異なり、農業の担い手の育成に向けて、農業に関する知識や技術を習得するための専門的、実践的な教育を実施している。農業経営に必要な実習に重点を置いた2年制の専修学校である。
2018年度から昨年度までの農業大学校の卒業生の合計は447人で、就農している人は224人であり、就農率は50.1パーセントである。そのうち、昨年度の卒業生は74人で、就農者は42人であり、就農率は56.7パーセントである。
就農者42人の内訳は、自営農業者が8人、農業法人等への雇用就農者が24人、そのほか研修や一時的に就職した後に就農する予定の人が10人となっている。就農者の男女別内訳は、42人中30人が男性、12人が女性である。
就農者以外の卒業生の進路としては、30人が農業協同組合や農業機械・資材等農業関連企業に就職しており、そのほか農学科の4年制大学への編入などがある。
【委員】
農業大学校では、農業の現場において即戦力となる人材の育成がされているとの話であったが、農作業の時間短縮や効率化のためにスマート農業に取り組んでいる経営者が現在増えている。先日の沖縄県への視察でも、電照菊やマンゴーの栽培において、IoTの導入によって農作業における作業時間等が削減されたとの話があった。
そこで、農業の即戦力となる人材を育成する農業大学校では、ICTやIoTに関する施設の整備をどのように考えているのか、また、どのような教育を行っているのか、今後考える予定があるのかなど、教えてほしい。
【理事者】
近年、農業の現場では、ICT等の先端技術を活用したスマート農業の導入が進んでおり、農業大学校では、農業総合試験場とも連携して、研究員を講師として受け入れるとともに、授業の一環として試験場を訪問するなど、最新の農業技術に精通したデジタル人材を育成するための体制を強化している。
施設整備の面では、施設野菜専攻にハウス内の環境を制御できる機器を導入したトマト栽培のICT温室を2019年度に整備するとともに、露地野菜専攻においてはGPSトラクターを本年度導入するなどしている。
また、授業においては、校内のネットワーク等通信基盤を整備して、教室と圃場をつないでデータの収集や分析を行う学習の実施や、株式会社クボタ、ヤンマーホールディングス株式会社などの農業機械メーカーからも協力を得て、専攻実習での直進アシストトラクターや農薬散布用ドローンなど、最新のスマート農業機械の試乗や実演、県外の先進的な植物工場の視察等を実施している。
加えて、今年度からは2年生全員を対象として、スマート農業に特化した新たなカリキュラムを開設しており、引き続き、農業の生産現場で即戦力となる人材の育成を図りたい。
【委員】
本県は、農業に特化した県立高校として、半田農業、渥美農業、安城農林、猿投農林などがあるが、それらの県立農業高校から、農業大学校への入学者はどれぐらいいるのか。自治体における教育現場では、現在は幼保小中で一貫して教育を行っているが、同じく県立農業高校と愛知県の農業大学校では、一貫性という観点から情報共有をしたり、先生同士が連携することがあるのかどうか、また、今後考えていることなどを含めて教えてほしい。
【理事者】
今年度の農業大学校の入学者91人のうち、他県を含め、農業高校の出身者は60人となっており、その割合は66パーセント、普通高校など農業高校以外の入学者は31人で、34パーセントとなっている。なお、入学者91人のうち、農家出身者は25人、農家以外の出身者は66人となっており、男女別の内訳としては、男性が62人、女性が29人となっている。
農業大学校では、農業高校などからの入学者を確保するため、オープンキャンパスの開催や農業高校を訪問しての受験相談、進路ガイダンス等を通じて入学希望者の勧誘を行っている。さらに、2018年度からは特別推薦制度を設けて、農業高校からの入学者の確保を図っている。
また、今後は、県内の農業高校との連携を強化し、各専攻において技術交流による共同プロジェクトの実施などを検討しており、引き続き、農業高校と一体的な教育の実践を進めていきたい。
【委員】
農業高校に様々な考えで入学した生徒も多くいると思うが、現状の社会における農業のイメージをICTの導入やIoTの活用で、今まで農業にあった、休みがない、大変であるといったイメージを変えていくことも新たに農業従事や農業経営を考える上で大事だと考える。また、農業高校出身でなくても、農業大学校に入学をして、今後、本県、そして日本の農業を支えていきたいという生徒が増えてほしい。
本県も農業試験場を核としたあいち農業イノベーションを進めており、本県の強みはモノづくりなどの工業だけではないため、本県の農業出荷額も、これから伸びて、全国から、トヨタ自動車株式会社がある愛知というだけではなく、農業県でもある愛知県と見てもらえるようになってほしい。これからも農業大学校を卒業した人の支援、新しい生徒や学生の確保に努めてほしい。
【委員】
本県の養牛農家は大変厳しい状況である。特に、酪農経営の収益性が急速に低下しており、酪農を断念する経営体も目立ってきている。収益低下の主因は、子牛などの販売代金の下落と物財費の半分以上を占める飼料費の高騰のダブルパンチであり、また、今般のインボイスの制度導入でさらに税負担が増える農家もある。
この状況の中で、産業動物の疾病予防、治療及び安全で良質な畜産物の安定的な供給を行う産業動物獣医師、その産業動物獣医が診療を行う施設やその機能を維持していくことは極めて重要である。
本県では、養牛農家が集中している知多地域や渥美半島のある東三河地域では、民間の産業動物診療施設が多く、診療体制が充実しているが、尾張地域は都市化の進行が著しいことから飼養規模が小さく、また、豊田加茂地域及び新城設楽地域は県内の和牛繁殖の中心的地域であるが、養牛農家が小規模かつ点在をしているため、診療効率の低さが課題であり、民間の産業動物診療所の参入は難しい状況にある。
これらの診療効率の低い尾張・豊田加茂・新城設楽地域など、中山間家畜過疎地域において、家畜共済加入者から家畜診療及び家畜防疫に係る業務の要望に応え、基幹的な産業動物診療施設としての役割を担っているのが、愛知県農業共済組合の家畜診療所である。
現在、豊川市に獣医3人が勤務する家畜診療所があり、岡崎市に獣医4人が勤務する家畜診療所西三河分室が開設されており、全市町村でシェアが2割程度、73戸の担当農家を抱えている。ここでは、家畜共済事故を軽減するための損害防止業務、家畜共済事業の損害評価業務が行われ、さらに、次世代の産業動物医を教育、育成するための学生実習の受入れにも対応している。
しかし、診療効率が悪く収益性の低い診療業務であるため、診療所の運営が圧迫され経営状況が非常に悪く、家畜共済の制度改正が行われた令和元年度から令和4年度末までの累積赤字が約8,600万円となっており、さらに、昨年度には3人の獣医師が退職し、10人から7人体制になったことから、既に設楽町及び愛西市において、緊急性のあるものを除く家畜診療について水曜日は休診となっており、さらに、土日祝日は、人工授精のみで往診は原則、受け付けないなど、既に農家に不利な状況が発生している。
最近、夏が非常に暑いため、牛の暑熱ストレスは深刻であり、産乳量の減少はもとより受胎率の低下も避けられない問題となっており、人工授精ができない期間が長くなっていることから、人工授精のピーク時に土日祝日に対応できないことなどへ、農家の不満が高いと聞いている。
農業共済組合では、これまで人件費の削減、傷病事故外診療費の改正などが行われてきたが、内部の努力だけでは収支は改善されず、このままでは経営的にも人員的にも家畜診療所の運営が困難となること、また、令和6年度に2人の獣医師の新規採用を計画しているとのことであるが、この累積赤字を解消し、診療所の経営を健全化するためには診療費の値上げを検討しなければならない状況だと承知している。
具体的には、令和6年4月から診療点数の変更が予定されており、今1点10円のものが12円になり、この変更2円分がそのまま農家の負担となる。1頭の診療が約1,700点と言われており、これまでは共済組合で9割の1万5,300円、農家負担が1割の1,700円だったものが、来年の4月以降は1点12円となるため、農家負担が1,700点だと合計で2万400円、共済組合の1万5,300円は変わらず、農家負担が5,100円になる。つまり、この例だと農家の負担が単純に3,400円増えることになる。
養牛農家の大変厳しい経営環境、廃業ラッシュの中でさらに農家負担分が増えることは死活問題である。また、県内で家畜伝染病発生時の蔓延リスクを回避する観点から、生産地の分散化は必要である。これら尾張・豊田加茂・新城設楽地域での経営継続、また、そのための家畜診療の存続は不可欠だと考えている。なお、農業共済組合は本年7月に本県や各市町村への経済的な支援を要請しているが、今のところ実現には至っていない。
令和2年に公表された国の第4次獣医療を提供する体制の整備を図るための基本方針に基づき、令和3年3月に策定された令和12年度を目標年度とする愛知県における獣医療を提供する体制の整備を図るための計画では、愛知県農業共済組合は、西三河及び東三河地域だけでなく県内全域の診療も担っており、特に地域内の産業動物の診療施設が少ない地域においては基幹的な診療施設として位置づけられることから、その存在自体が畜産業の存続にとって重要と考えられ、県は各団体の施設の維持について配慮すること、また、診療効率の低い尾張・豊田加茂・新城設楽地域では、診療効率の低さから獣医療の提供の継続が困難となる懸念がある、愛知県農業共済組合が基幹的な施設として診療を担っているが、各家畜保健衛生所とも連携して、地域の診療施設の動向を見ながら、現在の診療体制を維持するとされている。
静岡県では、農業共済組合の家畜診療所が本年3月末で閉鎖されたと聞いている。農家を守るためにも、農業共済組合が家畜診療業務から撤退するという最悪のケースを避けるためにも、県としてこの計画に基づき、公益性の観点から具体的な支援策、つまりは、診療点数の値上げ分に対する補助や、他地域から広域診療等の際の往診距離にかかる往診料等の補助などが必要だと考える。
まず、中山間地域の獣医療体制について、その現状と対策はどのようになっているのか。また、来年度からの診療費値上げに対して、県はどのように支援をしていくのか。
【理事者】
尾張地域の一部、新城市、設楽町などの中山間地域では、牛農家が小規模かつ点在しており、診療効率が低く、民間の産業動物診療施設の参入が難しいことから、主に愛知県農業共済組合家畜診療所が診察を担っている。
しかし、本組合の家畜診療所はコスト削減を図るため、設楽町などでの診療日を曜日指定にしており、牛農家にとっては不便な状況となっている。
その対策としては、2021年度から、新城市をはじめとする関係市町村と共に獣医療確保に向けて対応策を検討しており、2022年度については、畜産が盛んな地域の民間診療施設に対して、中山間地域への新規参入意向調査を実施し、診察可能な施設が出てきたため、そのリストを関係市町村に情報提供している。
今年度は、国が推進する遠隔診療を導入するための予備調査として、牛農家を対象にアンケートを実施している。この遠隔診療により診療効率を上げて、コストの削減を目指している。今後も引き続き、中山間地域の獣医療体制を維持するための方策を検討したい。
共済組合の値上げに対する支援については、現在、共済組合が値上げに向けて、牛農家への説明を始めていることは承知している。値上げ後の情勢を見極めて支援策を検討したい。
【委員】
家畜保健衛生所について、現在の業務内容はおおむね承知しているが、過去に家畜診療所の獣医師と各家畜保健衛生所の獣医師が連携をして、診療効率が悪い地域の診療体制を維持するために何ができるか議論していたと聞いている。
国の基本方針には、十分な診療の提供を確保できない場合は、獣医療関係者との意見調整を十分に図った上で、家畜保健衛生所等公的機関による補完的な診療の提供に努めると書いてあり、他県では家畜保健衛生所がこの診療業務を担っているところもあると承知している。
県計画における各家畜保健衛生所とも連携とは、何か意味することがあるのか。
【理事者】
本計画策定前の豚熱が発生する以前については、家畜保健所が診療する可能性を検討したこともあったが、現在、豚のワクチン接種業務が多忙となっており、診療に参入することが難しい状況にある。
本計画の各家畜保健所とも連携の意味は、家畜保健所が実施している病気が何なのか、死んだ原因が何なのかという病気を判定する病性鑑定結果の活用や、民間診療施設へ提供して連携していくことを意味しており、今後、必要に応じて計画を見直すなど、獣医療体制を維持するための対策を講じたい。
【委員】
民間の診療施設の意向調査を行っているとのことだが、往診距離の課題があると考えており、現在は、往診起点から3段階で距離に応じて往診点数が決まっているが、この起点が遠くなると負担が増える。
農業共済組合の仕組みでは、県内4か所の最寄りの診療所や駐在所からの距離で計算されており、移動にかかる高速料金などは共済組合側が負担しているとのことであるため、これを民間の診療施設が往診すると大幅に負担感が増えるため、往診距離に対して、補塡が必要だと考える。何よりも民間診療所の場合は赤字で撤退するリスクも考えなければならない。
また、遠隔地等における診療の効率化は必要であるが、牛に使用できるかはイメージが湧かない。初診ではなかなか難しく、そもそもベテランの農家が獣医に診療を求める場合は本当に急を要する事態である。また、処方する薬をどう保管するかなどの課題もあるため、まずは実証実験などで検討してほしい。
先週土曜日に岸田文雄内閣総理大臣が栃木県の牧場を訪問し、酪農などへの連携強化と支援に向けて、今週会議を開催し、高騰する輸入飼料価格抑制のため、国内の飼料の生産拡大や、稲作から飼料作物を含む畑作への転換支援、乳牛や乳製品の輸出促進などの施策を取りまとめると報道されているため、国の動向を注視しながら、本県の追加対策等を検討してほしい。
また、今週末14日に、岡崎市の畜産総合センターで畜産フェスタ、安城市のデンパークであいちの農林水産フェアが開催されるとのことであり、毎年非常に楽しみにしている。ぜひ、このような場を通じて、生産現場がいかに危機感を持っているかを広く県民に共有し、地域や食卓につながる問題であり、自分事として捉える消費者を増やすこと、また、国産を適正価格で買い支える消費者を増やすことにつなげてほしい。
【委員】
本県において、2018年10月に策定されたAichi-Startup戦略及び2022年12月に策定された革新事業創造戦略に基づき、社会課題の解決等に向けたイノベーション創出のプロジェクトを推進している。
この中で、農業分野において、あいち農業イノベーションプロジェクトを実施しているが、まず、このプロジェクトの概要を伺う。
【理事者】
あいち農業イノベーションプロジェクトは、担い手の減少など本県農業の様々な課題に対応するため、STATION Aiプロジェクトの一環として、県農業総合試験場と新しいアイデアや技術を持つスタートアップ、大学等との共同研究体制の強化を図り、新しい農業イノベーション創出を目指すもので、2021年度から開始している。
2022年度には、農業総合試験場とイノベーション創出を目指すスタートアップ等を公募し、79社から143件と多くの応募があった中から、農業現場の課題解決につながる斬新なアイデアや先進的な技術を活用する19社、18課題を決定した。現在、この共同研究開発にスピード感を持って取り組んでおり、収穫作業の負担を軽減する農業用アシストスーツなど、既に県内で生産者向けのテスト販売を開始している取組もある。
【委員】
あいち農業イノベーションプロジェクトは、スタートアップをはじめとする斬新なアイデアを取り入れ、本県農業の持続的な成長と課題の解決を追求する重要な取組であり、多くの関係者からその成果に高い期待が寄せられている。
その中でも、農林業センサスの最新の統計データを基に考えると、販売額が1億円以上を誇るトップ層の生産者は、革新的なサービスや製品の導入に際して主体的に情報を収集し、経営戦略の中で効果的な投資を行っている。このトップ層の生産者の取組は、他の生産者にとってとても参考になるが、真の意味での本県農業の発展と数多くの農家の経営安定を実現するためには、新技術や情報へのアクセスが難しい中間層への支援が欠かせない。中間層が新しい技術や情報に触れ、それを取り入れることで全体の生産性や品質が向上し、経営も安定する。したがって、この中間層への情報提供や技術移転の機会を増やすことが今後の大きな課題として位置づけられる。さらには、この課題に対応するための戦略や方針を明確にすることが本プロジェクトの成功につながると考える。
まず初めに、あいち農業イノベーションプロジェクトの成果はどのような農家や生産者に普及することを想定しているのか。
【理事者】
スタートアップ等との共同研究に当たり、農業総合試験場が農業生産現場の様々なニーズの調査、分析を行い、イノベーション創出を目指していくテーマを設定している。
本プロジェクトは、現場のニーズと最新の技術を速やかに研究に取り込みながら本県農業の課題に対応するための技術開発に取り組むものであることから、本県農業を支えている多くの中堅農家、例えば、水田営農のオペレーターや農業協同組合の野菜部会などを対象として想定している。
【委員】
中堅農家が対象とのことだが、中堅農家への成果の普及方法について伺う。
【理事者】
県内の農林水産事務所農業改良普及課には186人の普及指導員を設置しており、直接農業者に接して技術指導や経営相談等に対応している。この普及員が農業総合試験場の開発した技術を農業者へ橋渡しする機能も持っている。
具体的には、試作機を試験場と農業改良普及課、産地が一体となって現地で実証したり、開発した技術について普及指導員を通じて生産部会の研究会で紹介したり、農業総合試験場の開発担当者が直接説明する実用化技術研究会を開催するなど、内容に応じ様々な方法で普及を図っている。
2021年度には、研究開発、普及指導活動等の機能を強化するため、農業総合試験場に研究戦略部と普及戦略部を設置した。この研究と普及の二つの組織が車の両輪となり、これまで以上に開発技術の現地導入を迅速化し、イノベーション創出につなげていく体制を整備している。
【委員】
あいち農業イノベーションプロジェクトの目標は何か。
【理事者】
あいち農業イノベーションプロジェクトは、開発技術の社会実装、すなわち、開発された技術が広く受け入れられ、持続的に使われるようになることを目標としている。
スタートアップ等によりサービスや製品が安定供給されることで持続的な利用が可能になるが、スタートアップ等はビジネスの観点から、製品化により収益を上げていく必要がある。そのため、まずは本県農業の課題解決につながるよう、コストや利用場面等、出口を見据え、農家が導入しやすく、普及性の高い技術となるようブラッシュアップしていく。
また、イノベーションの加速化には、職員の知識やスキル向上が重要であることから、現場で技術指導を行う県の普及指導員に対してデータ解析の研修を実施したり、農業総合試験場の研究員にビジネスやデジタルに関するセミナーやワークショップを実施するなど、人材育成にも努めていく。
【委員】
あいち農業イノベーションプロジェクトが、刻々と変化する情勢に柔軟に対応し、持続可能な食料生産と本県農業の生産力強化につながるようにしてほしい。
【委員】
本県では、食と緑の基本計画2025の個別計画として、2021年3月に愛知県漁業振興計画が策定されており、計画期間を2021年度から2030年度までの10年としている。愛知県漁業振興計画では、今後10年間に特に重点的に取り組む施策として、豊かな水産資源を育む海づくり、漁業者がもうかる経営体づくり、未来につながる水産業の構造改革の三つの柱が示されている。
愛知県漁業振興計画の主要目標として、中間年の5年後である2025年に漁業産出額を計画策定時の直近実績の390億円から410億円にするとし、また、進捗管理指標として、漁場の整備面積を5年間で196ヘクタールとするとされている。
そこで、計画策定から昨年度までの漁場の整備面積はどうなっているのか、また、本年度の整備予定面積はどのようか伺う。
【理事者】
本県では、漁場の整備として、三河湾における干潟、浅場の造成、渥美外海における魚礁、漁場の整備、そして、アサリを増やす貝類増殖場の造成に取り組んでいる。
愛知県漁業振興計画を策定した2021年以降、過去2年間の累計は、干潟、浅場の造成では15ヘクタール、魚礁、漁場の整備で44ヘクタール、貝類増殖場の造成で6ヘクタール、合計65ヘクタールの整備を行ってきた。
今年度は、干潟、浅場の造成を西尾市と田原市の沿岸で10ヘクタール、魚礁漁場の整備を渥美外海の田原市沖で31ヘクタール、貝類増殖場の造成を西尾市と蒲郡市の沿岸で3ヘクタール、合計44ヘクタールの整備を予定しており、計画どおり進捗している。
【委員】
本年度、蒲郡市において貝類の増殖場の造成を行うと聞いている。現時点でまだ実施されていないようだが、現状について伺う。
【理事者】
貝類増殖場の造成は、冬の波浪の影響を強く受けるアサリ漁場に砕石を敷き詰め、地盤を安定させ、アサリの生き残りを高める目的で造成している。今年度、蒲郡市では西浦町の沿岸、15センチメートルから20センチメートルサイズの採石により約1ヘクタールの貝類増殖場を造成する予定である。現在、工事発注に向けた準備を行っており、来年3月には工事が完了する見込みである。
【委員】
アサリの漁獲量は全国一の愛知県であるが、海洋環境の変化等により、数年ほど前には最盛期の約1割まで漁獲量は落ち込み、漁場生産力の強化が求められている。
農業水産局においては、豊かな海に向けた栄養塩類等の濃度を高める社会実験を行っており、一定の成果が見られるようになってきた。
これまでの社会実験の概要や成果、今後の取組について伺う。
【理事者】
社会実験については、環境局や建設局と連携し、2022年から2年間、秋から冬にかけて、矢作川浄化センター及び豊川浄化センターの放流水中の窒素とリンの濃度を国の規制値上限まで緩和して増加させる管理運転を行うもので、水質やアサリ、ノリへの効果を調査している。
社会実験1年目であった昨年度の調査結果では、環境への悪影響は見られず、アサリの生息量やノリの色調は過去5年のリン増加試験運転時に比べて良好であり、アサリやノリへの効果があったと考えている。
今後は、栄養塩確保の取組を効果的に進めるために立ち上げた学識経験者、漁業関係者、国、県、市町で構成する愛知県栄養塩管理検討会議において、社会実験終了後の管理運転の方向性や漁業生産に必要な栄養塩類を確保するための栄養塩管理の方策を検討していく。
引き続き、関係局と連携して、豊かな海の実現に向けて取り組みたい。
【委員】
この取組は、全国的に見ると、瀬戸内が先進的な取組になっている。本県においても、沿岸にある蒲郡市を始め、他の自治体との連携をしっかりと取ってほしい。
そうした中、現在、沿岸の自治体でも、各市の浄化センターから窒素、リンの基準値内での濃度を上げた栄養塩類の排出を行っていると聞いている。この点、本県と十分な連携が取れているか危惧する部分もある。蒲郡市でも、情報がまだ十分でないと聞くため、しっかりと沿岸自治体と連携を取りながら、この事業を進めてほしい。
漁業振興計画の中では漁業の担い手の育成にも言及をしており、就業希望者への相談対応や研修制度の推進等により、新規漁業者の確保、育成を図ると記載されている。
そこで、これまでの取組状況について伺う。
【理事者】
これまでの漁業新規就業者への取組としては、本県では、水産試験場に漁業就業者確保育成センターを設置して就業希望者の相談に応じているほか、愛知労働局が主催する農林水産業への就業希望者を対象とした就職面接会に参加し、漁業への就業に関するガイダンスや個人相談への対応を行っている。
また、国の新規漁業就業者支援事業である円滑に就業するための研修制度に、実施主体の一員として携わっている。
さらに、昨年度からは、新たに漁業現場を分かりやすく紹介する動画の作成に取り組むとともに、実際に漁業を体験できる研修を実施するなど、1人でも多く就業してもらえるよう努めている。
【委員】
新規漁業就業者はどの程度増えているのか。
【理事者】
直近の5か年の新規就業漁業者数は、2018年は12人、2019年は14人、2020年は15人、2021年は13人、昨年度は13人となっている。
【委員】
蒲郡市でも2014年度から、3か年の研修後に独立を希望する就業支援として、新規漁業就業支援事業を実施している。これまでに3回実施し、37人の申込みがあり、実際、研修に参加したのは5人で、うち1人が独立をして、現在、漁業者として活躍している。今年度も3人の申込みがあり、2人が研修に参加していたが、先月末、1人が体調不良で研修を辞退している。今でも1人が研修を受講している。
こうした蒲郡市の就業支援事業は、国の経営体育成総合支援事業の漁業担い手確保・育成事業に合わせて実施をしているものであるが、国の長期研修制度と県との関わり合いについて伺う。
【理事者】
国の長期研修制度は、県、市町、水産団体等で構成する愛知県漁業担い手確保育成支援協議会が国の補助を受け、就業を希望する人を研修生として雇用する漁家に対し、漁業に必要な技術を指導する研修費用を支援するものである。また、漁業を始めるには、船舶操縦免許などが必要であり、協議会では漁業協同組合等が開催する免許取得のための講習会への支援を行っている。
本県としては、この協議会の構成員として、研修等が効率的に進むように努めている。
【委員】
3か年の研修を無事に終え、独立をしようとすると、船やエンジン、漁具など、それ相応の金額を要する。生活面の不安等もあるが、こうしたことへのサポートを本県としてどのように考えているのか。
【理事者】
県では、漁業者の資金需要に応えるため、様々な制度資金を用意しているが、そのメニューの一つとして、新規就業者が漁業を開始しようとする際に必要となる資金を融資する漁業経営開始資金というものがある。この資金は、漁船やエンジン、漁具のほか、種苗や餌料の購入などに幅広く対応できるもので、原資は県と国で造成し、貸付利率は無利子となっている。
また、県内3か所の農林水産事務所には、水産業普及指導員を配置しており、こうした制度資金の周知に努めるとともに、漁業者が経営していくに当たっての様々な相談に応じている。
【委員】
先ほども紹介した蒲郡市で研修を受けて独立した人が船舶、エンジン等を購入した際には2,000万ほどかかったとの話であり、本県の制度を活用したか聞いたところ、使っていないとのことであった。民間の金融機関を活用したとのことで、理由を確認したところ、返済金額が民間よりも大きかったとのことである。新規就業してしばらくの間は経営的に十分ではないため、返済金額は検討してほしい。
蒲郡市に、今まで活用されていない西浦の知柄漁港の周辺に未利用地がある。県と市で約2万6,000平方メートルを埋立ててもらい、また、漁業関連施設として4万7,000平方メートル、合わせて約7万4,000平方メートルが未利用地で使われていない。そのため、蒲郡市は、知柄漁港周辺整備基本構想を現在策定している。具体的にはまだこれからだが、漁村の活性化に向け、本県としての取組をしていく必要がある。建設局との兼ね合いもあると思うが、漁業振興においては、農業水産局にも関わってもらい、水産業の振興にしっかりと取り組んでほしい。
【委員】
あいち森と緑づくり税条例の改正により、課税が5年間の延長となる。一方で、2024年度から、国で森林環境税が新たに徴収される。県民目線としては二重課税との誤解を生む可能性が心配される。
また、森林整備における最大の課題は林業従事者の確保である。
まず、これまでのあいち森と緑づくり税を活用した事業について、2009年度から2018年度の第1期事業計画における人材育成に関して、総予算と執行率を伺う。また、その中で人材育成に関する成果と課題も併せて伺う。
【理事者】
2009年度から2018年度の第1期事業計画において、あいち森と緑づくり事業による森林整備に従事する人材を養成することを目的に森林整備技術者養成事業を実施した。あいち森と緑づくり事業による間伐は、道路沿いなど高度な技術を要する区域での作業が多いことから、安全かつ円滑に工事を進めるため、クレーンや高所作業車などの操作資格を取得する技能講習、クレーン車などを使用した道路沿いの間伐や、木の上で安全に伐採作業を行うための技術を身につける実技研修を行った。
この森林整備技術者養成事業の第1期事業計画10年間における予算額は1億535万円で、執行率は79パーセントであった。10年間で200人の森林整備技術者を養成するという目標に対し、実績は249人となっており、達成率は125パーセントである。
2018年度に公表した事業評価報告書における受講者や受講者が勤務する会社へのアンケート結果では、受講者の82パーセント、勤務する会社の78パーセントが研修で習得した技術が実際の現場で役立っているとの回答であった。また、森林整備工事の入札参加資格を有する経営体56社のうち、半数以上である29社が従事者に本研修を受講させていたと報告されている。
森林整備技術者養成事業は、あいち森と緑づくり事業の人工林整備事業の推進に貢献したほか、県内の森林整備を担う技術者の養成といった面においても波及効果が大きかったと捉えている。一方、課題に関しては、事業評価報告書のアンケート結果では、研修日数30日の期間が長いなどの意見があった。これを受け、その後の人材育成に関する研修については、受講者が研修科目や受講時期を必要に応じて選択できることとし、研修期間が長期にわたることによる負担の軽減を図っている。
【委員】
執行率79パーセントの執行残を改善してほしい。森林環境譲与税が全国でも基金残高が大きくなっているという課題があると聞いているため、改善の検討をしてほしい。一方で、技術者の養成達成率が125パーセントであることは評価しているため、引き続き取組を進めてほしい。
全国で37の府県が同様に県独自の税を制定して取り組んでいると承知しているが、人材育成に関して、他県の状況についてどのように把握して、本県に対してどのように生かしているのか。
【理事者】
2019年度からの第2期事業計画の作成時に森林環境譲与税の導入を踏まえ、他県への調査や聞き取りを行った。その結果、聞き取りをした全ての県が林業技術者、経営体の育成全般については、森林環境譲与税の活用により取り組むことを検討することとしていた。このような他県の状況も踏まえ、第2期あいち森と緑づくり事業計画においては、人材育成に関する取組は森林環境譲与税を活用することと整理した。
【委員】
奈良県では、2021年に林業大学校である、奈良県フォレスターアカデミーを開校して、林業技術に加えて、環境や生態系、地域との関係を踏まえて持続可能な森林の将来像を考える専門人材の育成に特化した学科を設けていると聞いている。一方、本県では今年度よりあいち林業技術強化カレッジを開設して人材育成に取り組んでいる。
愛知県と奈良県との人材育成に関する取組の違いについて伺う。併せて、あいち林業技術強化カレッジの設置を検討する際の設立の考え方についても伺う。
【理事者】
本県では、林業就業後の人材の育成強化のため、従前から森林・林業技術センター等において、知識や技術のレベルアップ、安全意識の向上のための研修を実施してきた。
そして、今年度、より効果的な人材育成、技術力強化を図るため、従来の森林・林業研修の見直しを行い、未経験者から指導者まで、キャリアに応じた段階的な研修コースを備えたあいち林業技術強化カレッジをオープンした。
カレッジの設置を検討するに当たり、県内の森林組合及び民間の林業経営体に対して人材確保に関するヒアリングを行ったほか、林業関係団体である愛知県森林協会、愛知県森林組合連合会、公益財団法人愛知県林業振興基金、林業・木材製造業労働災害防止協会愛知県支部の4団体から、人材育成の強化や研修体制の充実についての要望をもらった。
こうした意見や要望を踏まえ検討した結果、林業経営体で従事する人材の定着を図るとともに、安全な森林作業を徹底するため、林業従事者が働きながら、キャリアに応じ段階的にスキルアップを図ることができる研修体系としてカレッジをオープンした。
一方、奈良県では、林業就業前の教育機関である林業大学校として、奈良県フォレスターアカデミーを設立し、林業や森林管理等について、1年または2年間の育成を行い、県内の林業経営体等への就業につなげていると聞いている。
奈良県と本県の取組の大きな違いは、奈良県では、就業前の人を対象に林業大学校において人材を育成していくのに対し、本県では、林業経営体等に就業している人を対象に技術力の向上を図ることで人材を育成していくとともに、就業者の定着に努めている点である。
【委員】
本県の考え方として、現役の林業従事者の技術の向上と位置づけていくことについては理解するが、若い新規林業従事者の確保に課題があると感じている。
例えば、豊田森林組合では、高校を卒業した後に採用後2年間、県外の林業大学で本人の負担なしに学ばせる取組を行っている。豊田市では、森林環境譲与税を財源にその経費の一部を負担している。しかし、近年、その大学への入学も困難になっているとも聞いている。
そこで、本県として、若い林業従事者の具体的な確保策についての考えを伺う。
【理事者】
本県では人材の確保のため、森林、林業に関心を持ってもらうとともに、職業としての林業を理解してもらうための取組を実施している。具体的には、県内の各種イベントにおける林業の仕事に関するパネル展示によるPRや、若い林業従事者へのインタビュー動画の公開などにより林業の魅力を広く情報発信している。
また、公益財団法人愛知県林業振興基金等と連携して、名古屋市をはじめ、県内各地で開催、出展はもとより、東京都や大阪府においても就業ガイダンスに出展し、県内の林業のPRや就業希望者と林業経営体とのマッチングを行い、昨年度は8回のガイダンスを通して、延べ100人以上の就業相談に応じている。こうした就業ガイダンスをきっかけとし、昨年度までの5年間で19人が県内の林業経営体に就職した。
さらに、林業現場の雰囲気を体感してもらうため、チェーンソーによる伐木体験やシミュレーター装置による高性能林業機械の疑似操作体験、林業経営体へのインターンシップの支援をしている。
県内にある林業関係の三つの県立高校に対し、林業現場での高性能林業機械の操作体験や各高校と林業関係者による就業懇談会を通じて積極的に林業の魅力を伝え、林業の就業を働きかけており、この5年間で17人が林業経営体に就職した。こうした取組を通じ、若い林業従事者の確保にしっかりと取り組んでいく。
【委員】
本県には林業大学がない状態である。豊田森林組合の新規高卒者が県外の林業大学への入学は困難であることを紹介したが、近年、豊田森林組合がこれまで隣の岐阜県の林業大学に入れようとしたところ、成績等の問題があったと考えるが、結果的に入学できず、さらに遠くの県の林業大学に行かなければならないという状況が起きている。
今後、森林環境譲与税を活用し、高校卒業後、林業に興味を持って学びたい人が増えることを期待するが、肝心の林業大学への入学が狭き門にならないよう、例えば、他県の林業大学校に愛知県枠を設けるよう県同士で調整するなど、林業従事者が持続的に確保できるようにしてほしい。
【委員】
地域外に居住する人に農地が相続されることにより、地域に所有者がいなくなる、いわゆる農地所有者の不在村化により未耕作地が増えている問題があり、私の地元である日進市の農業委員会にも議案として提出されている。この議案は令和5年1月に提出された案件であり、所有者の住所は、長野県が2件、三重県が3件、東京都が2件と名古屋市であり、全てが未耕作地である。未耕作でも、一部は親戚がいるため、草だけは刈っているものがあると聞いている。
この案件について日進市の農業委員会で検討され、農家など未耕作地を請け負ってくれるところがないかヒアリング等を行ったが、今でも耕作放棄地になっており、現状は売却もままならないと聞いている。結局、買手がいない。例えば、隣で耕作をしている農家がいれば、面倒を見てもらうこともできると思うが、難しい。また、農地中間管理機構にこの件を依頼したところ、結果的には引き受けられないとの回答であった。
いずれにしても、この件は宙に浮いた状態で、草刈りすらままならない状況となっている。これは、恐らく日進市だけの問題ではなく、県内でも相当あるのではないかと思う。難しい課題だと考えるが、このような状況について、本県としてどのように考えているか伺う。
【理事者】
市町村では令和6年度末を目途に地域計画を作成しており、そのうち、農業委員会が目標地図の素案をつくる流れになっている。農業委員会は、目標地図の素案づくりに当たり、農地の所有者に対するアンケート結果や、県外に居住する未耕作地の所有者の意向も踏まえ、また、所有者不明土地もあるが、そういったものを協議の場において、10年後、この農地を誰が耕作をしていくのかを協議した上で検討することになる。
検討を行っても継承者が見つからないような、例えば、小規模な農地等については、地域内の新規就農者、あるいは多様な農業を担う人、例えば、半農半Xの人や事業の多角化を希望する経営体、農業に関心のあるNPO法人などを地域の中から探して、それでも見つからない場合は地域外の人々に手を広げてもらうことが大切だと考えている。
【委員】
地域計画についてはよく理解でき、理屈上はそうだと考える。しかし、現実は難しいのではないか。それをどうしたらよいかを議論したい。
前回の委員会では、本県としては、市町村にやる気があればそれでお願いをするが、県はそこまで指導する立場ではないとの話であったが、受け手側の農業者はどうしたらよいのか。もう少し大きな力を働かせないとこの問題は解決しない。経済産業局においては、例えば、中小企業が、事業継承してくれる人がいないからギブアップといったときには、M&Aとして、買ってくれるほかの企業などとのマッチングをしている。そういったことも一つの手段だと考える。
新規就農者については、あいち食と緑の基本計画2025で掲げている5年間の就農目標に対して、2,511人の就農を11年間で行っており、その定着率が91パーセントとのことである。
問題は、2015年に3万6,000の経営体が、2020年までの5年間で2万7,000となり26パーセント減っている。また、農業従事者が65歳以上の割合が63.8パーセントから65.8パーセントに微増しており、着実に農業従事者は歳をとっている。そのため、新規就農が多くなっていても、これまでやっていた人々が減っているということは、農業は衰退の一途だということである。
先ほど、経済産業局の話をしたが、産業空洞化対策減税基金を元にいろいろな施策を行っており、アイデア次第である。そういったものをつくって、農業者をバックアップしてほしい。現実問題として、農家もこれまで精一杯やっており、自分がやってきた苦労を子供たちには任せられないと思い、後継を諦めている部分があると思う。しかし、ほかの業態でも、最近の若者たちはとても前向きである。苦労と思わずに楽しいことがあるからといってすごい発想でやってくれる若者もたくさんいる。今の農業を行っている現役の70代や80代の人から孫の世代にうまく後継できるような方策をぜひ考えてほしい。
やはり農業は難しい。漁業や酪農、林業などはやることが明確である。しかし、水田耕作が一番苦労している。これを何とかしないといけないため、国に対して、米の値段をしっかり上乗せしてもらうなどの要求をした上で、県独自の施策をやってほしいが、県としての意見を伺う。
【理事者】
農業を経営していく中で土地の問題など様々な課題等がある。本年度は、農業経営・就農サポート推進事業として、農業者の様々な問題に対応している。これは農業者の担い手や新規就農の部分など、トータル的にバックアップ体制を取っていくものである。しかし、何が問題になっているのか、実際にその問題に対してどのような解決があるのかは個々の問題によるため、農業改良普及課等と連携しながら、現場での対応をしっかりと取り組みたい。
【委員】
ポケット情報あいちには、令和4年度の新設住宅着工数が6万937戸とある。また、新設住宅、持家の着工数が1万7,228戸であり、新設の戸建ての鉄骨造り住宅の着工数が4,020戸とある。しかし、林業の動きでは統計の取り方が違う。住宅の着工数があり、木造数があり、非木造数がある。しかし、ポケット情報あいちには、持家での統計になっている。統計の取り方がなぜ違うのか。
また、ポケット情報あいちには林業産出額26億円とある。これは、林業の動きにも同じような数字が載っているが、これが令和3年度の数字になっている。この違いはなぜか。
【理事者】
住宅の内訳については、持家以外に大きな区分として賃貸住宅があり、これも一般的な住宅に分類されているため、その部分が大きく異なっている。
【委員】
林業の動きには、今後も持家の着工数は載らないということか。
【理事者】
それぞれの統計で、連続性の観点で同じ抽出をして数字を並べている。
【委員】
7月3日に木質化サポートセンターを開設してからの相談対応について、県産木材の調達方法が分からない、設計や法規制、補助金制度など、どのような相談でも伺うとパンフレットにあったが、開設時から本日までの状況はどうか。
【理事者】
相談対応では、木材資材をどのように調達すればいいのかが一番多い。また、市町村からは、木造もしくは木質化したいがどのようにすればいいのかなどの質問が多い。
【委員】
持家に対しての相談はあったのか。自分が今後建てる持家で、県産材をどのように調達したらいいかなど、建築事務所などからの相談はあったのか。
【理事者】
個人からそのような相談があったと聞いている。
【委員】
今後ともしっかり木質化サポートセンターをアピールして、県産材の利用が順調に進むようにお願いしたい。一方で、公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律の一部が令和3年に改正されており、附帯決議の中で、持続可能な社会の実現に向けて木材の利用の拡大による炭素貯蔵、二酸化炭素の排出削減効果の最大化等により2050年カーボンニュートラルの実現を目指すとともに、循環型社会の形成、自然との共生等を統合的に推進するため、本法の措置に加え、建築物等における木材の利用の促進のみならず、公共土木分野での木材の利用の促進と書かれている。
そこで、あいちの木活用推進室では、愛知県の公共土木分野について対応が取れる体制が取れているのか伺う。
【理事者】
公共工事における木材利用については、あいち木づかいプランの中で、県自らの土木工事でなるべく木を使うという取組を全庁的に進めている。
その中で、工事看板は、ほとんど間伐材利用のものになっている。また、コンクリート型枠については、最近は針葉樹合板として、ヒノキやスギを使ったものが一般的になっているが、合板メーカーに掛け合い、県産木材を使ったものを作り活用している。
【委員】
私の地元の瀬戸市では、陶磁器問屋において昔から木箱を使っている。製品を出荷するに当たり、一時的に、自分の会社の倉庫に置いておく際に木箱に製品を置いて、発注があった際に木箱から出して段ボール箱に詰め替えて出荷している。プラスチック等がない時代はほとんど木が使われていた。愛知の県産材は、利用の拡大を図ろうと思えば、まだまだ図るところが多くある。
林業の動きを見ても、杉材や松材の4メートルの長さの丸太材も統計上載っている。丸太材は、コンクリートが流通する以前は基礎杭で使っていたと思う。橋を木造にすることも可能ではないか。まだまだ使える余地がある。今後の愛知の木をどのように活用していくのか。
【理事者】
木は建築物から身の回りのものまで様々なものに使うことができ、過去そのように活用されてきた。ダンネージと称して、大きなものを船で運ぶ際の梱包材や、パレット用に杉材を見直す動きは確かにある。
県産木材の利活用について、林業は経済活動であるため、いい材はなるべく高い値段で使ってもらい、そうでない材は、例えば梱包材やパレットとして使う。木材はカスケード利用もできるため、パレット等として使った後に、それを潰してチップにして燃やすなど、山の所有者になるべくお金が還元されるように、関わる人々にそれぞれ少しでも経済的メリットがあるようなサプライチェーンをつくっていかなければならない。
ウッドショックの影響が徐々になくなり、国産材が見直されている。愛知は林産物の売上高が多いが、外材による部分が非常に多いのが実情である。それを少しでも県産材に置き換えていけるように、全国的な流れも見ながら少しずつ取り組んでいきたい。
【委員】
あいち森と緑づくり事業について、事業評価報告書を踏まえて、これからの5年間、どのような方向性で実施する予定か。
【理事者】
あいち森と緑づくり事業の今後の進め方については、事業評価を行う中で、市町村や事業関係者などから事業内容に対する様々な意見をもらっている。意見を踏まえて、本事業が県民のニーズに沿い一層事業の効果が得られるよう、今年度、事業の見直しの検討を行っている。
人工林の整備では、道路沿いの間伐の一層の促進と小規模な林業経営体が参入できる仕組みの創設に対して意見をもらったため、道路沿い等の間伐を一層進めるとともに、小面積の森林における間伐メニューの検討を進めている。
次世代森林の育成については、手入れ不足のまま高齢化した人工林の若返りや獣害対策に対応できるよう、事業内容を見直したい。
里山林の整備では、地域ニーズへの対応や現状を踏まえた地域活動について意見があったため、市町村、活動団体、土地所有者の3者で結ぶ協定内容等について見直しの検討を進めている。
木材の利用促進については、民間建築物等での木材利用のニーズへの高まりへの対応について意見があったため、一層波及効果が高まるよう検討を進めている。
県民から理解してもらえるよう、事業内容を検討し、引き続き山から街まで緑豊かな愛知の実現を目指し、事業を一層推進したい。
【委員】
搬出間伐については、義務化していくくらいの意気込みでやってほしい。大雨が降った際に、林内に残っている木が川へ流れてダム化し、洪水や災害リスクが増えるため、しっかり考えてほしい。
また、道路沿いでは、中部電力株式会社と協力して過去に倒木による停電があった箇所を重点的に間伐していると聞いている。山に住む人にとって、台風などの風水害での倒木による停電は避けたい事例であるが、道路沿いは非常にコストがかかる。警察の注意も厳しく、警備員を立てるなど、非常にコストのかかる事業である。また、木を倒す際も高度な技術が要る。そのため、個人では不可能に近い事業である。また、道路の維持管理についても、道路側の木がなくなることによって道路が乾き、道路が長もちするなど、様々な効果がある事業である。間伐事業は面積を目標としているが、道路沿いを重点的に行うことが面積が伸びない原因となっている。今回の見直しの中で県民に理解をもらえる方向性を出してほしい。
また、小規模事業体について、林業従事者の年齢構成が若返っている。そのため、若い人たちの事業量を確保するためにも、意欲のある人たちに事業をやってもらえる仕組み、仕掛けを進めてほしい。
木材利用の促進について、木の香る都市づくり事業など、木材利用を行っている事業者には心強い支援事業だと考える。しかし、一般住宅へのフォローが手薄になってきたと感じるため、バランスの取れた支援を検討してほしい。
野生イノシシの豚熱経口ワクチン散布について、豚熱は非常に大きな脅威であり、その対策として、野生イノシシからの感染の可能性が強いことが指摘され、野生イノシシに経口ワクチンを散布する経過だったと思う。これにより、多くの養豚で豚熱の発生が最近抑えられている。経口ワクチンは、予算が大変かかることと、イノシシの通りそうな山中の地下に埋めるため、効果があるのかどうか疑ったが、難題を解決して、効果があると聞いている。
まず、経口ワクチンを使うことを採用した経緯を伺う。
【理事者】
経口ワクチンの散布については、経口ワクチンと呼ばれる液体の豚熱の生ワクチンをアルミ箔で密封したポリエチレン容器に封入して、その周りをトウモロコシの粉など、野生イノシシが好む食品を材料にした餌で包み込んで、縦横4センチメートル、厚さ1.5センチメートルの形に成形したものを、野生イノシシが生息する山林などの地中に埋め込み、野生イノシシが食べることによって豚熱ウイルスに対する免疫を獲得させ、豚熱の感染を防止することを目的とするものである。
本県でのワクチン散布までの経緯については、2018年9月、岐阜県において26年ぶりに豚熱が発生し、本県内においても、同年12月に犬山市で野生イノシシでの感染が確認された。
国は、2019年2月に農林水産省豚コレラ防疫対策本部において、野生イノシシによる豚熱ウイルスの拡散防止対策を講じるため、経口ワクチンの散布などにより豚熱の発生を抑え、2009年に封じ込めに成功したドイツでの実績に基づいて、ヨーロッパ連合の政策執行機関である欧州委員会が2010年に公表した野生イノシシ豚熱対策に関するガイドラインを参考に、我が国初の取組となる経口ワクチンの散布方針を決定した。
その後、2019年2月末に農林水産副大臣が本県の知事と会談し、経口ワクチンの散布は国主導の下で県が実施主体となり散布すること、費用は全額国が負担することなどを確認できたことから、本県は翌月3月に愛知県豚コレラ感染拡大防止対策協議会を設立して、同月24日から県内での散布を開始した。これまでに野生イノシシで豚熱が確認された本県を含む36の都道府県で散布が行われている。
【委員】
散布費用はどこが負担しているのか
【理事者】
散布の費用は、全額国が負担して実施している。
【委員】
今年度の予算額を教えてほしい。
【理事者】
今年度の予算額は、8,160万円である。
【委員】
経口ワクチンの散布とは、ばらまくのではなく埋めるとのことだが、どのように実施しているのか。また、実施にあたる経費や実施体制も教えてほしい。
【理事者】
経口ワクチンの散布の実施体制については、国が策定した豚熱経口ワクチンの野外散布実施に係る指針に基づき、まず国が散布に使用する経口ワクチンの選定、調達及び輸入、都府県への配布などの調整を行っている。
次に、都府県及び市町村、猟友会、畜産関係団体などから構成される経口ワクチン散布の実施に係る協議会を設置し、国と協議の上、年間の散布計画を作成し提出する。
なお、本県では2019年に協議会を設置しており、今年度の散布計画については、年4回、前期に1回、後期に3回となる。県内の16市町村を対象に延べ4,000地点、計8万個の散布を計画しており、使用する経口ワクチンは、必要数量が国から随時配布され、散布業務を業者に委託して実施している。
【委員】
散布業務を実施する民間の業者は以前から実施している業者か、また、散布地点の指示は誰がしているのか。
【理事者】
委託している業者については民間業者である。例年、同じ業者に委託している。散布の指示については、県が散布地点を設定して、契約の際に散布地点を指示している。
【委員】
散布地点は猟友会などから指導してもらっているのか。
【理事者】
散布する地点については、イノシシが多く出る森と畑等の周辺や境目の辺縁部、陽性が発生している地点、養豚場の周辺など、地域の猟友会をはじめとした地域で活動している人々から、イノシシの生息が確認できる場所を情報提供してもらいながら、本県で散布地点を決定している。
【委員】
今までの取組の成果はどのように把握しているのか。
【理事者】
豚熱経口ワクチンの散布については、2019年3月から実施しており、今年の8月末までにおおむね17市町村、延べ1万6,000地点に累計で約31万個を散布している。年度ごとに散布地点の見直しを行うが、継続的に散布を実施することにより、豚熱の抗体ができ免疫を獲得したイノシシの割合が、抗体検査を開始した2019年度の16.9パーセントから、2022年度は23パーセントと増加をしている。
また、豚熱検査を行ったイノシシのうち、陽性を確認したイノシシの割合は、感染拡大した2019年の8.6パーセントから、2022年度は3.1パーセントと低下しており、近隣県である岐阜県の4.3パーセント、静岡県の3.3パーセントと比較しても低い値で、一定の成果を得ている。
一方で、タヌキやカラスなど、イノシシ以外の鳥獣が経口ワクチンを食べてしまう事例が複数確認されたことから、選択的にイノシシに食べさせるために、愛知県農業総合試験場が考案したコンクリートブロックを使った散布方法の実証実験を、今年度から県内の35地点において実施している。これはコンクリートブロックの穴の中にワクチンを入れて、上から米ぬかをかぶせて設置するもので、力の強いイノシシはコンクリートブロックを倒して食べることができるが、タヌキやカラスはその力がないため、ブロックが倒せない仕組みになっている。
今年度第1回目、春の散布の際の実証実験結果として、データを得られた各10地点で比較したところ、イノシシが食べた割合が、全て土に埋めた場合の16.5パーセントから、コンクリートブロックを使った場合は36パーセントに改善された。
【委員】
この経口ワクチンについて今後どのように進める予定か。
【理事者】
野生イノシシにおける豚熱対策については、主に三つの対策から成っている。一つは、サーベイランスと呼ばれる豚熱検査や抗体検査による豚熱の感染動向や抗体の獲得状況の把握と監視、二つ目は、サーベイランスに基づく経口ワクチンの散布、三つ目は、感染の可能性のある個体を減らすための捕獲の強化である。
野生イノシシの豚熱感染は、今年度に入ってから、9月末時点の本県での陽性個体の数は8頭、陽性率は1.6パーセントとなっている。近隣県においては、9月28日時点で、岐阜県では陽性が99頭、陽性率は6.2パーセント、静岡県では陽性が56頭、陽性率が3.3パーセントとなっており、今後も感染拡大が懸念されることから、予断を許さない状況になっている。そのため、野生イノシシにおける三つの豚熱対策である、サーベイランス、経口ワクチンの散布、捕獲の強化を効果的かつ効率的に実施できるよう、毎年度の取組結果を分析、改善しながら、今後も継続的に取り組みたい。
【委員】
農作物被害額は昨年度4億8,000万円と、一昨年より増えている。鳥獣の捕獲に対する支援について伺う。
【理事者】
農作物の被害防止のための捕獲である有害捕獲に係る捕獲者への支援については、国からは鳥獣被害防止総合対策交付金により、捕獲活動経費の補助として、イノシシ及びシカの成獣のうち、食肉処理施設に搬入するものについては、1頭当たり9,000円、焼却施設等に搬入するものは8,000円、それ以外は7,000円を助成している。サル、クマ及びカモシカの成獣については8,000円、その他の獣類及び全ての幼獣、子供の獣については1,000円、鳥類は1羽当たり200円を助成している。あわせて、本県では、イノシシには2019年度より、豚熱対策として県費による上乗せ補助を行っており、イノシシの成獣で1万3,000円、イノシシの幼獣で6,000円となっている。さらに、各市町村においても、地域の実情により金額は異なっているが、上乗せ補助が行われている。
【委員】
シカについて言うと、年間約700トン捕獲されている。そのうちでジビエに出ているのは約200頭と聞いている。これは、生きたまま持っていかなければならず、また、鉄砲で撃ったものは駄目など、制約が大きい。そのため、食肉加工施設に搬入できる頭数は知れている。もう少し捕獲に対するトータルの補助ができるようなことも考えてほしい。
そこで、現在の捕獲実績はどのぐらいか伺う。
【理事者】
捕獲経費の補助による県内の主な鳥獣の捕獲実績について、昨年度は、イノシシが6,132頭、シカが5,511頭、サルが373頭、カラスが1,588羽となっている。特にシカの捕獲頭数は年々増加しており、5年前の2017年度に比べて約1.8倍となっている。
【委員】
イノシシは、一時期、豚熱の影響で個体数が減ったと言われたが、最近増えてきている。鹿はかなり増えているようで、本格的に取り組まないと、山の中には夜、道路を走ると間違いなく出てくる場所が増えてくる。捕獲した個体のうち補助できるものは2割から3割ほどである。もう少し全体的に支援する必要があると考えるが、どのように考えているのか伺う。
【理事者】
シカの捕獲に対する経費の補助について、国に要望して、捕獲経費補助の増額を要求している。
その中で、捕獲だけなくシカ対策として、例えば、鹿をまとめて捕獲するような大型の捕獲おり等、効果的な捕獲を目指すシカの捕獲対策を進める補助事業もある。シカで悩んでいる市町村等と相談をしながら、単純に1頭幾らとの補助だけではなく、そのような捕獲も相談しながら対応したい。
【委員】
鳥獣の被害は、相手が相手だけになかなか効果が出しにくい事業だと思う。その辺も踏まえて、今一度、もう一歩事業を進めるためにはどうしたらよいかを考えてほしい。森と緑づくり事業もそうだが、国の森林環境譲与税は、愛知県は県民が対象である。国は全国対象なので、国の事業の効果性は薄れる。その点は県もできるだけフォローして、国と県が一体となって事業を進め、森と緑づくり事業のより効果的な運用と、獣害対策をさらに進めてほしい。
【委員】
福島第一原発の処理水の海洋放出が始まって1か月以上が経過した。海への放出には、中国が猛反発して、処理水を核汚染水と呼んで、8月下旬から日本産水産物の全面禁輸を始めた。新聞報道によると、8月の日本からの水産物の輸入額は日本円で約30億円となり、去年の同月と比べて67パーセント余り減少するなど、影響がかなり広がっている。特に北海道や東北のホタテに大きな影響が出ており、それ以外にも、日本の水産物が輸出される国では中国が最も多いとされることから、日本の水産業界への打撃が広がることは必至である。
そこで、この処理水の海洋放出による、本県の水産物輸出への影響について、まず、本県の水産物で中国へ輸出している産品はあるのか。
【理事者】
本県から中国への輸出している水産物について、愛知県漁業協同組合連合会及び県内の漁業協同組合へ聞き取り調査を行った。その結果、本県産のナマコやノリが加工されて輸出されていることが確認された。
【委員】
以前読んだ新聞だと、日本からはホタテが圧倒的に多く、2番目にナマコが多いと載っていた。国内でナマコは需要が限られるそうで、中国ではナマコは高級食材として珍重されているため、日本から中国への輸出規制されているところが各地であるとのことであった。
そこで、処理水の海洋放出が始まって1か月が経過し、本県の水産物への影響はどうか。
【理事者】
ナマコについては、本県の漁期が12月から翌年3月であり、現在漁獲されていない。また、昨年度に漁獲したナマコの加工品は、既に輸出済みであるため、現時点では直接的な影響は見られてない。
また、ノリについては、近年、国内需要が満たされていない状況であるため、輸出は限定的であり、こちらも現時点で直接的な影響はないと考えている。
【委員】
ナマコの漁獲時期が12月から3月であり、日中関係の悪化で、全面禁輸も長期化する可能性もあると言われる中で、本県のナマコが採れる時期に当てはまった場合、県として対応は何か考えているのか。
【理事者】
今後の対応については、引き続き情報収集に努め、影響等が生じた場合は、国が実施する支援策の活用についてサポートをするなど、業界団体と連携して取り組みたい。
【委員】
西尾市一色町はウナギの養殖業が非常に盛んであり、令和3年のウナギの生産量は全国で2位である。私が驚いたことは、養殖ウナギの9割以上が生育過程で雄になっていくとのことである。愛知県水産試験場では、雌のウナギは雄に比べて大きくなり、雌のほうが身が柔らかいことに着目して、5年以上の研究期間を費やして、新たな技術開発で雌を生産する技術開発に成功したことが話題になった。その特許は、ウナギの稚魚に大豆に含まれる大豆イソフラボンを混ぜた餌を与え、効率的にウナギを雌にする技術で、愛知発の大きくて柔らかくおいしい新たなウナギのブランドの確立を目指し、ウナギのブランド名と、ブランドマークを公募していた。最優秀賞や優秀賞にはウナギ蒲焼きプレゼントという賞品付きで、9月15日に応募が締め切られた。
そこで、応募状況はどうであったのか、応募状況に対する県としての感想も踏まえて伺う。
【理事者】
大型雌ウナギの応募状況について、41都道府県の10代から90代の幅広い年齢層から、ブランド名には609件、ブランドマークに158件の応募があった。たくさんの人々から応募があり、特許技術を用いて生産する大型雌ウナギへの消費者の関心の高さを知ることができた。
【委員】
この愛知産のブランドウナギを今後どのようにPRしていくのか。また、名前が決まった時点からだと思うが、商品化のための今後のスケジュールについて伺う。
【理事者】
今後のスケジュールとして、まず、応募があったブランド名、ブランドマークについては、生産者、生産者が組織する漁業協同組合、県などで審査を行い、来年1月以降に、最優秀賞、優秀賞を発表する予定である。ブランド名、ブランドマークの発表に合わせて、生産者が知事を訪問し、このウナギにかける意気込みを伝えるとともに、知事にも味わってもらい、魅力をPRしていく予定である。
また、消費者への販売は、この発表後、西尾市の生産者の直営店において数量限定で行う予定である。農業水産局としては、引き続き、大型雌ウナギの消費者への積極的なPRに努めたい。
【委員】
本県は有機質肥料に積極的に取り組んでいると思うが、農家から有機農業に必要な肥料の安定供給も同時に必要になってくることが課題である。肥料に関しては、基本的に海外に頼っており、化学肥料の原料である尿素、リン酸、アンモニウム、塩化カリウムなどに関してはほとんど輸入に依存している。これは本県だけではなく日本全体の課題である。
その中で、本県として、有機農業の活発化に向けて、有機質肥料も積極的に開発、推進していくことが必要だと考えている。肥料の資源としての汚泥の利用は、汚泥を単純に熱処理して廃棄物にするのではなく、例えば微生物などを用いて、有機質肥料として活用することが、国としても推進されており、具体的な目標として、2030年までに下水汚泥飼料・堆肥の肥料利用量を倍増させて、肥料の使用量に占める国内資源の利用割合を40パーセントまで拡大するとのことである。
現在、本県としては、汚泥ではなく、家畜ふん堆肥の利用を進めていると思うが、本県の有機質肥料、家畜ふん堆肥のマップの作成など、現状の動きはどうなっているのか。また、下水汚泥の資源利用に関して、現在の本県の動きでなくとも、今後に向けた考え方も伺う。
【理事者】
有機質肥料のうち、特に堆肥については、畜産農家が排出される家畜ふん堆肥を農家に提供できるよう、堆肥マップ等を作成して推進を図っている。
下水汚泥について、国は、肥料高騰対策を受け、国内にある肥料資源を活用していくよう、10月1日に制度改正をしている。これまで、下水汚泥は普通肥料として登録できるが、成分が保証されなかった。流通する際に成分保証されていないと、有効活用が難しかったが、制度改正により、菌体リン酸肥料として、リン酸成分を保証でき、推進を図る動きがある。今までは、下水汚泥の普通肥料の登録は国が行っていたが、10月1日からは県で登録を行うこととなった。汚泥肥料の品質管理計画について、まず国が確認をしてから県が登録に入る制度の仕組みであり、現在、一部の人からは相談がある。本格的に制度が稼働していけば、問合せも増え、登録ができていくと考えるため、汚泥肥料の肥料としての有効活用も県として進めたい。
【委員】
事業者からやりたいとの声が上がってくることがスタートになると思う。声が上がった際に、国の動向も適切に見極めていく必要があるが、本県としても、有機農業の活発化や肥料の自給も含めてよい方向に持っていけるように、ぜひ独自の取組として推進してほしい。
( 委 員 会 )
日 時 令和5年10月10日(火) 午後0時58分~
会 場 第2委員会室
出 席 者
佐藤英俊、村瀬正臣 正副委員長
峰野 修、いなもと和仁、近藤裕人、柳沢英希、杉浦友昭、高橋正子、
長江正成、桜井秀樹、藤原 聖、井上しんや、喚田孝博 各委員
農業水産局長、農林水産推進監、農業水産局技監、農政部長、
畜産振興監兼畜産課長、水産振興監、
農林基盤局長、同技監、農地部長、林務部長、関係各課長等
委員会審査風景
<付託案件等>
○ 議 案
第103号 令和5年度愛知県一般会計補正予算(第4号)
第1条(歳入歳出予算の補正)の内
歳 出
第6款 農林水産費
第115号 県の行う土地改良事業に対する市町村の負担金の変更につ
いて
(結 果)
全員一致をもって原案を可決すべきものと決した議案
第103号及び第115号
○ 閉会中継続調査申出案件
1 農林水産業の振興について
2 農地関係の調整及び土地改良について
3 緑化の推進について
4 農業水産局、農林基盤局、海区漁業調整委員会及び内水面漁場管理委
員会の行政運営について
<会議の概要>
1 開 会
2 議案審査(2件)
(1)理事者の説明
(2)質 疑
(3)採 決
3 委員長報告の決定
4 一般質問
5 閉会中継続調査申出案件の決定
6 閉 会
(主な質疑)
《議案関係》
【委員】
9月定例議会において、将来を担う人材の育成を図るため、農業水産局、労働局及び教育委員会において、農業大学校、高等技術専門校及び県立高等学校における実習施設の整備を行うとして議案が提出されている。この財源は、名古屋競馬株式会社からの寄附金を活用するとされているが、農業水産局が整備を行う農業大学校については、岡崎市にある全寮制の学校で、時代の要請に対応した質の高い農業後継者を育成しており、農業を実践的に学べる県内唯一の研修機関であると承知している。
そこで、今回の施設整備に至った経緯について、また、具体的な整備内容について伺う。
【理事者】
農業大学校においては、卒業後、農業の現場で即戦力となる人材の育成を教育目標として学生の育成を行っており、実際の生産現場に対応した施設で先行実習を行うことを基本としている。養鶏専攻においては、学生に養鶏の実践的な技術を習得させるため、計3棟の鶏舎で約2,500羽の採卵鶏を飼育している。
今般、名古屋競馬株式会社から県や市に対して、中京競馬場開設70周年を記念し、若い人への人材育成に関する事業に活用してほしいとの寄附の申出があった。本県では、農業水産局、労働局及び教育委員会の3局で寄附者の意向に沿った設備を整備することとし、農業水産局としては、農業大学校において、老朽化により早急に整備が必要な鶏舎内の飼養設備を更新することとした。
具体的な整備内容は、3棟ある鶏舎のうち、1棟のウインドウレス鶏舎内において、老朽化して一部腐食が進んでいる多段式ケージを更新する予定である。また、ケージに附属する自動給餌機、給水設備、集卵機等も故障が頻発しているため、最新の生産現場で採用されている設備に一体的に更新する。
【委員】
鶏舎内のケージや附属する設備等を一体的に更新するとのことだが、今回更新する施設について、今後どのように利用していくのか。
【理事者】
ケージと附属設備を最新の生産現場で採用している設備に更新することにより、機器の故障による鶏の事故死や卵の破損などを防ぎ、採卵鶏の生産性の向上を図る。
また、鶏舎内の環境向上を図ることにより、鳥インフルエンザなどの家畜伝染病の発生を防ぎ、より防疫体制を強化した設備での学習教育を進める。
今回の更新を早期に実施することにより、養鶏専攻における卒業論文のテーマの幅を広げるなど、教育効果を高め、生産現場で即戦力となる人材の育成を図りたい。
【委員】
本県の養鶏は、国の事業等を活用した規模拡大が進む一方で、都市化の進展による飼養環境の悪化や後継者不足などによる廃業で飼養戸数は減少傾向にあると聞いている。また、鳥インフルエンザをはじめとする防疫対策の負担が増大するなど、経営環境も厳しくなっているとも聞いている。こうした中、今回の農業大学校における施設整備を契機として、生産現場で即戦力となる人材の育成を進めて、本県の養鶏産業がさらに元気になることを期待している。
【委員】
土地改良事業費の土地改良事業費補助金と治山費の小規模治山施設費について、9月補正額はそれぞれ昨年に比べどのぐらい増えているのか伺う。
【理事者】
土地改良事業費補助金については、昨年度の9月補正では1億5,000万円の予算であり、今年度は2億円であるため、5,000万円増えている。
【理事者】
小規模治山施設費については、今年度は2億5,000万円であり、昨年度は2億円であるため、5,000万円の増額である。
【委員】
それぞれ5,000万円増えているとのことだが、6月の集中豪雨による被害の対策費で増えているとの理解でよいか。
【理事者】
土地改良事業費補助金については、6月2日の大雨で被災した市町村等が行う排水路の更新や、排水機場の修繕等緊急を要する施設の整備に対して、補助する予定である。
【理事者】
小規模治山施設費については、6月2日の豪雨で被災した箇所の復旧事業の実施を予定している。
【委員】
小規模治山施設費は6月2日の豪雨被害への対策で全て使うということでよいか。
【理事者】
今回の6月2日の災害の被害箇所と災害以外の要因による箇所を両方合わせて検討した結果、6月2日の被害箇所を優先すべきとなったため、結果的に災害で被害を受けたところを事業実施予定箇所とした。
【委員】
災害以外の箇所が後回しになったと思うが、そこはやらないといけないため、財政当局にも掛け合って、次の補正予算も要求してほしい。
《一般質問》
【委員】
農業分野のみならず、様々なモノづくりの業界をはじめ、流通、看護、介護、警察など、多くの業界において人手不足の課題が生じている。
今後の農業分野での人材確保や人材育成において、ICTやIoTなどを導入して今までの農作業のイメージを一新し、農業の仕事の効率化や、若年層を含め幅広い年代層の農業従事者の確保、また、最も重要な食料確保、食料自給率の向上に向け、新規参入しやすい土壌をつくり、農業作業率の向上を目指す必要があると考えている。
9月補正予算において、農業大学校管理運営事業費では新たなゲージシステムを導入すると聞いているが、古い設備を更新することも大切なことではあるが、それだけでは現状の農業が抱える課題解決には結びつきにくいと考えている。
現場での課題をいち早く酌み取り、農業の専門学校と言われる農業大学校の魅力向上に努め、少子化の中でもより多くの人材を確保し、農業県である愛知県の農業の発展に精力的に取り組んでほしい。
初めに、農業大学校の卒業生の就農状況、また、進路状況がどのようになっているのか。
【理事者】
農業大学校と4年制大学校の違いであるが、農業大学校は幅広い教養教育を実施する一般大学とは異なり、農業の担い手の育成に向けて、農業に関する知識や技術を習得するための専門的、実践的な教育を実施している。農業経営に必要な実習に重点を置いた2年制の専修学校である。
2018年度から昨年度までの農業大学校の卒業生の合計は447人で、就農している人は224人であり、就農率は50.1パーセントである。そのうち、昨年度の卒業生は74人で、就農者は42人であり、就農率は56.7パーセントである。
就農者42人の内訳は、自営農業者が8人、農業法人等への雇用就農者が24人、そのほか研修や一時的に就職した後に就農する予定の人が10人となっている。就農者の男女別内訳は、42人中30人が男性、12人が女性である。
就農者以外の卒業生の進路としては、30人が農業協同組合や農業機械・資材等農業関連企業に就職しており、そのほか農学科の4年制大学への編入などがある。
【委員】
農業大学校では、農業の現場において即戦力となる人材の育成がされているとの話であったが、農作業の時間短縮や効率化のためにスマート農業に取り組んでいる経営者が現在増えている。先日の沖縄県への視察でも、電照菊やマンゴーの栽培において、IoTの導入によって農作業における作業時間等が削減されたとの話があった。
そこで、農業の即戦力となる人材を育成する農業大学校では、ICTやIoTに関する施設の整備をどのように考えているのか、また、どのような教育を行っているのか、今後考える予定があるのかなど、教えてほしい。
【理事者】
近年、農業の現場では、ICT等の先端技術を活用したスマート農業の導入が進んでおり、農業大学校では、農業総合試験場とも連携して、研究員を講師として受け入れるとともに、授業の一環として試験場を訪問するなど、最新の農業技術に精通したデジタル人材を育成するための体制を強化している。
施設整備の面では、施設野菜専攻にハウス内の環境を制御できる機器を導入したトマト栽培のICT温室を2019年度に整備するとともに、露地野菜専攻においてはGPSトラクターを本年度導入するなどしている。
また、授業においては、校内のネットワーク等通信基盤を整備して、教室と圃場をつないでデータの収集や分析を行う学習の実施や、株式会社クボタ、ヤンマーホールディングス株式会社などの農業機械メーカーからも協力を得て、専攻実習での直進アシストトラクターや農薬散布用ドローンなど、最新のスマート農業機械の試乗や実演、県外の先進的な植物工場の視察等を実施している。
加えて、今年度からは2年生全員を対象として、スマート農業に特化した新たなカリキュラムを開設しており、引き続き、農業の生産現場で即戦力となる人材の育成を図りたい。
【委員】
本県は、農業に特化した県立高校として、半田農業、渥美農業、安城農林、猿投農林などがあるが、それらの県立農業高校から、農業大学校への入学者はどれぐらいいるのか。自治体における教育現場では、現在は幼保小中で一貫して教育を行っているが、同じく県立農業高校と愛知県の農業大学校では、一貫性という観点から情報共有をしたり、先生同士が連携することがあるのかどうか、また、今後考えていることなどを含めて教えてほしい。
【理事者】
今年度の農業大学校の入学者91人のうち、他県を含め、農業高校の出身者は60人となっており、その割合は66パーセント、普通高校など農業高校以外の入学者は31人で、34パーセントとなっている。なお、入学者91人のうち、農家出身者は25人、農家以外の出身者は66人となっており、男女別の内訳としては、男性が62人、女性が29人となっている。
農業大学校では、農業高校などからの入学者を確保するため、オープンキャンパスの開催や農業高校を訪問しての受験相談、進路ガイダンス等を通じて入学希望者の勧誘を行っている。さらに、2018年度からは特別推薦制度を設けて、農業高校からの入学者の確保を図っている。
また、今後は、県内の農業高校との連携を強化し、各専攻において技術交流による共同プロジェクトの実施などを検討しており、引き続き、農業高校と一体的な教育の実践を進めていきたい。
【委員】
農業高校に様々な考えで入学した生徒も多くいると思うが、現状の社会における農業のイメージをICTの導入やIoTの活用で、今まで農業にあった、休みがない、大変であるといったイメージを変えていくことも新たに農業従事や農業経営を考える上で大事だと考える。また、農業高校出身でなくても、農業大学校に入学をして、今後、本県、そして日本の農業を支えていきたいという生徒が増えてほしい。
本県も農業試験場を核としたあいち農業イノベーションを進めており、本県の強みはモノづくりなどの工業だけではないため、本県の農業出荷額も、これから伸びて、全国から、トヨタ自動車株式会社がある愛知というだけではなく、農業県でもある愛知県と見てもらえるようになってほしい。これからも農業大学校を卒業した人の支援、新しい生徒や学生の確保に努めてほしい。
【委員】
本県の養牛農家は大変厳しい状況である。特に、酪農経営の収益性が急速に低下しており、酪農を断念する経営体も目立ってきている。収益低下の主因は、子牛などの販売代金の下落と物財費の半分以上を占める飼料費の高騰のダブルパンチであり、また、今般のインボイスの制度導入でさらに税負担が増える農家もある。
この状況の中で、産業動物の疾病予防、治療及び安全で良質な畜産物の安定的な供給を行う産業動物獣医師、その産業動物獣医が診療を行う施設やその機能を維持していくことは極めて重要である。
本県では、養牛農家が集中している知多地域や渥美半島のある東三河地域では、民間の産業動物診療施設が多く、診療体制が充実しているが、尾張地域は都市化の進行が著しいことから飼養規模が小さく、また、豊田加茂地域及び新城設楽地域は県内の和牛繁殖の中心的地域であるが、養牛農家が小規模かつ点在をしているため、診療効率の低さが課題であり、民間の産業動物診療所の参入は難しい状況にある。
これらの診療効率の低い尾張・豊田加茂・新城設楽地域など、中山間家畜過疎地域において、家畜共済加入者から家畜診療及び家畜防疫に係る業務の要望に応え、基幹的な産業動物診療施設としての役割を担っているのが、愛知県農業共済組合の家畜診療所である。
現在、豊川市に獣医3人が勤務する家畜診療所があり、岡崎市に獣医4人が勤務する家畜診療所西三河分室が開設されており、全市町村でシェアが2割程度、73戸の担当農家を抱えている。ここでは、家畜共済事故を軽減するための損害防止業務、家畜共済事業の損害評価業務が行われ、さらに、次世代の産業動物医を教育、育成するための学生実習の受入れにも対応している。
しかし、診療効率が悪く収益性の低い診療業務であるため、診療所の運営が圧迫され経営状況が非常に悪く、家畜共済の制度改正が行われた令和元年度から令和4年度末までの累積赤字が約8,600万円となっており、さらに、昨年度には3人の獣医師が退職し、10人から7人体制になったことから、既に設楽町及び愛西市において、緊急性のあるものを除く家畜診療について水曜日は休診となっており、さらに、土日祝日は、人工授精のみで往診は原則、受け付けないなど、既に農家に不利な状況が発生している。
最近、夏が非常に暑いため、牛の暑熱ストレスは深刻であり、産乳量の減少はもとより受胎率の低下も避けられない問題となっており、人工授精ができない期間が長くなっていることから、人工授精のピーク時に土日祝日に対応できないことなどへ、農家の不満が高いと聞いている。
農業共済組合では、これまで人件費の削減、傷病事故外診療費の改正などが行われてきたが、内部の努力だけでは収支は改善されず、このままでは経営的にも人員的にも家畜診療所の運営が困難となること、また、令和6年度に2人の獣医師の新規採用を計画しているとのことであるが、この累積赤字を解消し、診療所の経営を健全化するためには診療費の値上げを検討しなければならない状況だと承知している。
具体的には、令和6年4月から診療点数の変更が予定されており、今1点10円のものが12円になり、この変更2円分がそのまま農家の負担となる。1頭の診療が約1,700点と言われており、これまでは共済組合で9割の1万5,300円、農家負担が1割の1,700円だったものが、来年の4月以降は1点12円となるため、農家負担が1,700点だと合計で2万400円、共済組合の1万5,300円は変わらず、農家負担が5,100円になる。つまり、この例だと農家の負担が単純に3,400円増えることになる。
養牛農家の大変厳しい経営環境、廃業ラッシュの中でさらに農家負担分が増えることは死活問題である。また、県内で家畜伝染病発生時の蔓延リスクを回避する観点から、生産地の分散化は必要である。これら尾張・豊田加茂・新城設楽地域での経営継続、また、そのための家畜診療の存続は不可欠だと考えている。なお、農業共済組合は本年7月に本県や各市町村への経済的な支援を要請しているが、今のところ実現には至っていない。
令和2年に公表された国の第4次獣医療を提供する体制の整備を図るための基本方針に基づき、令和3年3月に策定された令和12年度を目標年度とする愛知県における獣医療を提供する体制の整備を図るための計画では、愛知県農業共済組合は、西三河及び東三河地域だけでなく県内全域の診療も担っており、特に地域内の産業動物の診療施設が少ない地域においては基幹的な診療施設として位置づけられることから、その存在自体が畜産業の存続にとって重要と考えられ、県は各団体の施設の維持について配慮すること、また、診療効率の低い尾張・豊田加茂・新城設楽地域では、診療効率の低さから獣医療の提供の継続が困難となる懸念がある、愛知県農業共済組合が基幹的な施設として診療を担っているが、各家畜保健衛生所とも連携して、地域の診療施設の動向を見ながら、現在の診療体制を維持するとされている。
静岡県では、農業共済組合の家畜診療所が本年3月末で閉鎖されたと聞いている。農家を守るためにも、農業共済組合が家畜診療業務から撤退するという最悪のケースを避けるためにも、県としてこの計画に基づき、公益性の観点から具体的な支援策、つまりは、診療点数の値上げ分に対する補助や、他地域から広域診療等の際の往診距離にかかる往診料等の補助などが必要だと考える。
まず、中山間地域の獣医療体制について、その現状と対策はどのようになっているのか。また、来年度からの診療費値上げに対して、県はどのように支援をしていくのか。
【理事者】
尾張地域の一部、新城市、設楽町などの中山間地域では、牛農家が小規模かつ点在しており、診療効率が低く、民間の産業動物診療施設の参入が難しいことから、主に愛知県農業共済組合家畜診療所が診察を担っている。
しかし、本組合の家畜診療所はコスト削減を図るため、設楽町などでの診療日を曜日指定にしており、牛農家にとっては不便な状況となっている。
その対策としては、2021年度から、新城市をはじめとする関係市町村と共に獣医療確保に向けて対応策を検討しており、2022年度については、畜産が盛んな地域の民間診療施設に対して、中山間地域への新規参入意向調査を実施し、診察可能な施設が出てきたため、そのリストを関係市町村に情報提供している。
今年度は、国が推進する遠隔診療を導入するための予備調査として、牛農家を対象にアンケートを実施している。この遠隔診療により診療効率を上げて、コストの削減を目指している。今後も引き続き、中山間地域の獣医療体制を維持するための方策を検討したい。
共済組合の値上げに対する支援については、現在、共済組合が値上げに向けて、牛農家への説明を始めていることは承知している。値上げ後の情勢を見極めて支援策を検討したい。
【委員】
家畜保健衛生所について、現在の業務内容はおおむね承知しているが、過去に家畜診療所の獣医師と各家畜保健衛生所の獣医師が連携をして、診療効率が悪い地域の診療体制を維持するために何ができるか議論していたと聞いている。
国の基本方針には、十分な診療の提供を確保できない場合は、獣医療関係者との意見調整を十分に図った上で、家畜保健衛生所等公的機関による補完的な診療の提供に努めると書いてあり、他県では家畜保健衛生所がこの診療業務を担っているところもあると承知している。
県計画における各家畜保健衛生所とも連携とは、何か意味することがあるのか。
【理事者】
本計画策定前の豚熱が発生する以前については、家畜保健所が診療する可能性を検討したこともあったが、現在、豚のワクチン接種業務が多忙となっており、診療に参入することが難しい状況にある。
本計画の各家畜保健所とも連携の意味は、家畜保健所が実施している病気が何なのか、死んだ原因が何なのかという病気を判定する病性鑑定結果の活用や、民間診療施設へ提供して連携していくことを意味しており、今後、必要に応じて計画を見直すなど、獣医療体制を維持するための対策を講じたい。
【委員】
民間の診療施設の意向調査を行っているとのことだが、往診距離の課題があると考えており、現在は、往診起点から3段階で距離に応じて往診点数が決まっているが、この起点が遠くなると負担が増える。
農業共済組合の仕組みでは、県内4か所の最寄りの診療所や駐在所からの距離で計算されており、移動にかかる高速料金などは共済組合側が負担しているとのことであるため、これを民間の診療施設が往診すると大幅に負担感が増えるため、往診距離に対して、補塡が必要だと考える。何よりも民間診療所の場合は赤字で撤退するリスクも考えなければならない。
また、遠隔地等における診療の効率化は必要であるが、牛に使用できるかはイメージが湧かない。初診ではなかなか難しく、そもそもベテランの農家が獣医に診療を求める場合は本当に急を要する事態である。また、処方する薬をどう保管するかなどの課題もあるため、まずは実証実験などで検討してほしい。
先週土曜日に岸田文雄内閣総理大臣が栃木県の牧場を訪問し、酪農などへの連携強化と支援に向けて、今週会議を開催し、高騰する輸入飼料価格抑制のため、国内の飼料の生産拡大や、稲作から飼料作物を含む畑作への転換支援、乳牛や乳製品の輸出促進などの施策を取りまとめると報道されているため、国の動向を注視しながら、本県の追加対策等を検討してほしい。
また、今週末14日に、岡崎市の畜産総合センターで畜産フェスタ、安城市のデンパークであいちの農林水産フェアが開催されるとのことであり、毎年非常に楽しみにしている。ぜひ、このような場を通じて、生産現場がいかに危機感を持っているかを広く県民に共有し、地域や食卓につながる問題であり、自分事として捉える消費者を増やすこと、また、国産を適正価格で買い支える消費者を増やすことにつなげてほしい。
【委員】
本県において、2018年10月に策定されたAichi-Startup戦略及び2022年12月に策定された革新事業創造戦略に基づき、社会課題の解決等に向けたイノベーション創出のプロジェクトを推進している。
この中で、農業分野において、あいち農業イノベーションプロジェクトを実施しているが、まず、このプロジェクトの概要を伺う。
【理事者】
あいち農業イノベーションプロジェクトは、担い手の減少など本県農業の様々な課題に対応するため、STATION Aiプロジェクトの一環として、県農業総合試験場と新しいアイデアや技術を持つスタートアップ、大学等との共同研究体制の強化を図り、新しい農業イノベーション創出を目指すもので、2021年度から開始している。
2022年度には、農業総合試験場とイノベーション創出を目指すスタートアップ等を公募し、79社から143件と多くの応募があった中から、農業現場の課題解決につながる斬新なアイデアや先進的な技術を活用する19社、18課題を決定した。現在、この共同研究開発にスピード感を持って取り組んでおり、収穫作業の負担を軽減する農業用アシストスーツなど、既に県内で生産者向けのテスト販売を開始している取組もある。
【委員】
あいち農業イノベーションプロジェクトは、スタートアップをはじめとする斬新なアイデアを取り入れ、本県農業の持続的な成長と課題の解決を追求する重要な取組であり、多くの関係者からその成果に高い期待が寄せられている。
その中でも、農林業センサスの最新の統計データを基に考えると、販売額が1億円以上を誇るトップ層の生産者は、革新的なサービスや製品の導入に際して主体的に情報を収集し、経営戦略の中で効果的な投資を行っている。このトップ層の生産者の取組は、他の生産者にとってとても参考になるが、真の意味での本県農業の発展と数多くの農家の経営安定を実現するためには、新技術や情報へのアクセスが難しい中間層への支援が欠かせない。中間層が新しい技術や情報に触れ、それを取り入れることで全体の生産性や品質が向上し、経営も安定する。したがって、この中間層への情報提供や技術移転の機会を増やすことが今後の大きな課題として位置づけられる。さらには、この課題に対応するための戦略や方針を明確にすることが本プロジェクトの成功につながると考える。
まず初めに、あいち農業イノベーションプロジェクトの成果はどのような農家や生産者に普及することを想定しているのか。
【理事者】
スタートアップ等との共同研究に当たり、農業総合試験場が農業生産現場の様々なニーズの調査、分析を行い、イノベーション創出を目指していくテーマを設定している。
本プロジェクトは、現場のニーズと最新の技術を速やかに研究に取り込みながら本県農業の課題に対応するための技術開発に取り組むものであることから、本県農業を支えている多くの中堅農家、例えば、水田営農のオペレーターや農業協同組合の野菜部会などを対象として想定している。
【委員】
中堅農家が対象とのことだが、中堅農家への成果の普及方法について伺う。
【理事者】
県内の農林水産事務所農業改良普及課には186人の普及指導員を設置しており、直接農業者に接して技術指導や経営相談等に対応している。この普及員が農業総合試験場の開発した技術を農業者へ橋渡しする機能も持っている。
具体的には、試作機を試験場と農業改良普及課、産地が一体となって現地で実証したり、開発した技術について普及指導員を通じて生産部会の研究会で紹介したり、農業総合試験場の開発担当者が直接説明する実用化技術研究会を開催するなど、内容に応じ様々な方法で普及を図っている。
2021年度には、研究開発、普及指導活動等の機能を強化するため、農業総合試験場に研究戦略部と普及戦略部を設置した。この研究と普及の二つの組織が車の両輪となり、これまで以上に開発技術の現地導入を迅速化し、イノベーション創出につなげていく体制を整備している。
【委員】
あいち農業イノベーションプロジェクトの目標は何か。
【理事者】
あいち農業イノベーションプロジェクトは、開発技術の社会実装、すなわち、開発された技術が広く受け入れられ、持続的に使われるようになることを目標としている。
スタートアップ等によりサービスや製品が安定供給されることで持続的な利用が可能になるが、スタートアップ等はビジネスの観点から、製品化により収益を上げていく必要がある。そのため、まずは本県農業の課題解決につながるよう、コストや利用場面等、出口を見据え、農家が導入しやすく、普及性の高い技術となるようブラッシュアップしていく。
また、イノベーションの加速化には、職員の知識やスキル向上が重要であることから、現場で技術指導を行う県の普及指導員に対してデータ解析の研修を実施したり、農業総合試験場の研究員にビジネスやデジタルに関するセミナーやワークショップを実施するなど、人材育成にも努めていく。
【委員】
あいち農業イノベーションプロジェクトが、刻々と変化する情勢に柔軟に対応し、持続可能な食料生産と本県農業の生産力強化につながるようにしてほしい。
【委員】
本県では、食と緑の基本計画2025の個別計画として、2021年3月に愛知県漁業振興計画が策定されており、計画期間を2021年度から2030年度までの10年としている。愛知県漁業振興計画では、今後10年間に特に重点的に取り組む施策として、豊かな水産資源を育む海づくり、漁業者がもうかる経営体づくり、未来につながる水産業の構造改革の三つの柱が示されている。
愛知県漁業振興計画の主要目標として、中間年の5年後である2025年に漁業産出額を計画策定時の直近実績の390億円から410億円にするとし、また、進捗管理指標として、漁場の整備面積を5年間で196ヘクタールとするとされている。
そこで、計画策定から昨年度までの漁場の整備面積はどうなっているのか、また、本年度の整備予定面積はどのようか伺う。
【理事者】
本県では、漁場の整備として、三河湾における干潟、浅場の造成、渥美外海における魚礁、漁場の整備、そして、アサリを増やす貝類増殖場の造成に取り組んでいる。
愛知県漁業振興計画を策定した2021年以降、過去2年間の累計は、干潟、浅場の造成では15ヘクタール、魚礁、漁場の整備で44ヘクタール、貝類増殖場の造成で6ヘクタール、合計65ヘクタールの整備を行ってきた。
今年度は、干潟、浅場の造成を西尾市と田原市の沿岸で10ヘクタール、魚礁漁場の整備を渥美外海の田原市沖で31ヘクタール、貝類増殖場の造成を西尾市と蒲郡市の沿岸で3ヘクタール、合計44ヘクタールの整備を予定しており、計画どおり進捗している。
【委員】
本年度、蒲郡市において貝類の増殖場の造成を行うと聞いている。現時点でまだ実施されていないようだが、現状について伺う。
【理事者】
貝類増殖場の造成は、冬の波浪の影響を強く受けるアサリ漁場に砕石を敷き詰め、地盤を安定させ、アサリの生き残りを高める目的で造成している。今年度、蒲郡市では西浦町の沿岸、15センチメートルから20センチメートルサイズの採石により約1ヘクタールの貝類増殖場を造成する予定である。現在、工事発注に向けた準備を行っており、来年3月には工事が完了する見込みである。
【委員】
アサリの漁獲量は全国一の愛知県であるが、海洋環境の変化等により、数年ほど前には最盛期の約1割まで漁獲量は落ち込み、漁場生産力の強化が求められている。
農業水産局においては、豊かな海に向けた栄養塩類等の濃度を高める社会実験を行っており、一定の成果が見られるようになってきた。
これまでの社会実験の概要や成果、今後の取組について伺う。
【理事者】
社会実験については、環境局や建設局と連携し、2022年から2年間、秋から冬にかけて、矢作川浄化センター及び豊川浄化センターの放流水中の窒素とリンの濃度を国の規制値上限まで緩和して増加させる管理運転を行うもので、水質やアサリ、ノリへの効果を調査している。
社会実験1年目であった昨年度の調査結果では、環境への悪影響は見られず、アサリの生息量やノリの色調は過去5年のリン増加試験運転時に比べて良好であり、アサリやノリへの効果があったと考えている。
今後は、栄養塩確保の取組を効果的に進めるために立ち上げた学識経験者、漁業関係者、国、県、市町で構成する愛知県栄養塩管理検討会議において、社会実験終了後の管理運転の方向性や漁業生産に必要な栄養塩類を確保するための栄養塩管理の方策を検討していく。
引き続き、関係局と連携して、豊かな海の実現に向けて取り組みたい。
【委員】
この取組は、全国的に見ると、瀬戸内が先進的な取組になっている。本県においても、沿岸にある蒲郡市を始め、他の自治体との連携をしっかりと取ってほしい。
そうした中、現在、沿岸の自治体でも、各市の浄化センターから窒素、リンの基準値内での濃度を上げた栄養塩類の排出を行っていると聞いている。この点、本県と十分な連携が取れているか危惧する部分もある。蒲郡市でも、情報がまだ十分でないと聞くため、しっかりと沿岸自治体と連携を取りながら、この事業を進めてほしい。
漁業振興計画の中では漁業の担い手の育成にも言及をしており、就業希望者への相談対応や研修制度の推進等により、新規漁業者の確保、育成を図ると記載されている。
そこで、これまでの取組状況について伺う。
【理事者】
これまでの漁業新規就業者への取組としては、本県では、水産試験場に漁業就業者確保育成センターを設置して就業希望者の相談に応じているほか、愛知労働局が主催する農林水産業への就業希望者を対象とした就職面接会に参加し、漁業への就業に関するガイダンスや個人相談への対応を行っている。
また、国の新規漁業就業者支援事業である円滑に就業するための研修制度に、実施主体の一員として携わっている。
さらに、昨年度からは、新たに漁業現場を分かりやすく紹介する動画の作成に取り組むとともに、実際に漁業を体験できる研修を実施するなど、1人でも多く就業してもらえるよう努めている。
【委員】
新規漁業就業者はどの程度増えているのか。
【理事者】
直近の5か年の新規就業漁業者数は、2018年は12人、2019年は14人、2020年は15人、2021年は13人、昨年度は13人となっている。
【委員】
蒲郡市でも2014年度から、3か年の研修後に独立を希望する就業支援として、新規漁業就業支援事業を実施している。これまでに3回実施し、37人の申込みがあり、実際、研修に参加したのは5人で、うち1人が独立をして、現在、漁業者として活躍している。今年度も3人の申込みがあり、2人が研修に参加していたが、先月末、1人が体調不良で研修を辞退している。今でも1人が研修を受講している。
こうした蒲郡市の就業支援事業は、国の経営体育成総合支援事業の漁業担い手確保・育成事業に合わせて実施をしているものであるが、国の長期研修制度と県との関わり合いについて伺う。
【理事者】
国の長期研修制度は、県、市町、水産団体等で構成する愛知県漁業担い手確保育成支援協議会が国の補助を受け、就業を希望する人を研修生として雇用する漁家に対し、漁業に必要な技術を指導する研修費用を支援するものである。また、漁業を始めるには、船舶操縦免許などが必要であり、協議会では漁業協同組合等が開催する免許取得のための講習会への支援を行っている。
本県としては、この協議会の構成員として、研修等が効率的に進むように努めている。
【委員】
3か年の研修を無事に終え、独立をしようとすると、船やエンジン、漁具など、それ相応の金額を要する。生活面の不安等もあるが、こうしたことへのサポートを本県としてどのように考えているのか。
【理事者】
県では、漁業者の資金需要に応えるため、様々な制度資金を用意しているが、そのメニューの一つとして、新規就業者が漁業を開始しようとする際に必要となる資金を融資する漁業経営開始資金というものがある。この資金は、漁船やエンジン、漁具のほか、種苗や餌料の購入などに幅広く対応できるもので、原資は県と国で造成し、貸付利率は無利子となっている。
また、県内3か所の農林水産事務所には、水産業普及指導員を配置しており、こうした制度資金の周知に努めるとともに、漁業者が経営していくに当たっての様々な相談に応じている。
【委員】
先ほども紹介した蒲郡市で研修を受けて独立した人が船舶、エンジン等を購入した際には2,000万ほどかかったとの話であり、本県の制度を活用したか聞いたところ、使っていないとのことであった。民間の金融機関を活用したとのことで、理由を確認したところ、返済金額が民間よりも大きかったとのことである。新規就業してしばらくの間は経営的に十分ではないため、返済金額は検討してほしい。
蒲郡市に、今まで活用されていない西浦の知柄漁港の周辺に未利用地がある。県と市で約2万6,000平方メートルを埋立ててもらい、また、漁業関連施設として4万7,000平方メートル、合わせて約7万4,000平方メートルが未利用地で使われていない。そのため、蒲郡市は、知柄漁港周辺整備基本構想を現在策定している。具体的にはまだこれからだが、漁村の活性化に向け、本県としての取組をしていく必要がある。建設局との兼ね合いもあると思うが、漁業振興においては、農業水産局にも関わってもらい、水産業の振興にしっかりと取り組んでほしい。
【委員】
あいち森と緑づくり税条例の改正により、課税が5年間の延長となる。一方で、2024年度から、国で森林環境税が新たに徴収される。県民目線としては二重課税との誤解を生む可能性が心配される。
また、森林整備における最大の課題は林業従事者の確保である。
まず、これまでのあいち森と緑づくり税を活用した事業について、2009年度から2018年度の第1期事業計画における人材育成に関して、総予算と執行率を伺う。また、その中で人材育成に関する成果と課題も併せて伺う。
【理事者】
2009年度から2018年度の第1期事業計画において、あいち森と緑づくり事業による森林整備に従事する人材を養成することを目的に森林整備技術者養成事業を実施した。あいち森と緑づくり事業による間伐は、道路沿いなど高度な技術を要する区域での作業が多いことから、安全かつ円滑に工事を進めるため、クレーンや高所作業車などの操作資格を取得する技能講習、クレーン車などを使用した道路沿いの間伐や、木の上で安全に伐採作業を行うための技術を身につける実技研修を行った。
この森林整備技術者養成事業の第1期事業計画10年間における予算額は1億535万円で、執行率は79パーセントであった。10年間で200人の森林整備技術者を養成するという目標に対し、実績は249人となっており、達成率は125パーセントである。
2018年度に公表した事業評価報告書における受講者や受講者が勤務する会社へのアンケート結果では、受講者の82パーセント、勤務する会社の78パーセントが研修で習得した技術が実際の現場で役立っているとの回答であった。また、森林整備工事の入札参加資格を有する経営体56社のうち、半数以上である29社が従事者に本研修を受講させていたと報告されている。
森林整備技術者養成事業は、あいち森と緑づくり事業の人工林整備事業の推進に貢献したほか、県内の森林整備を担う技術者の養成といった面においても波及効果が大きかったと捉えている。一方、課題に関しては、事業評価報告書のアンケート結果では、研修日数30日の期間が長いなどの意見があった。これを受け、その後の人材育成に関する研修については、受講者が研修科目や受講時期を必要に応じて選択できることとし、研修期間が長期にわたることによる負担の軽減を図っている。
【委員】
執行率79パーセントの執行残を改善してほしい。森林環境譲与税が全国でも基金残高が大きくなっているという課題があると聞いているため、改善の検討をしてほしい。一方で、技術者の養成達成率が125パーセントであることは評価しているため、引き続き取組を進めてほしい。
全国で37の府県が同様に県独自の税を制定して取り組んでいると承知しているが、人材育成に関して、他県の状況についてどのように把握して、本県に対してどのように生かしているのか。
【理事者】
2019年度からの第2期事業計画の作成時に森林環境譲与税の導入を踏まえ、他県への調査や聞き取りを行った。その結果、聞き取りをした全ての県が林業技術者、経営体の育成全般については、森林環境譲与税の活用により取り組むことを検討することとしていた。このような他県の状況も踏まえ、第2期あいち森と緑づくり事業計画においては、人材育成に関する取組は森林環境譲与税を活用することと整理した。
【委員】
奈良県では、2021年に林業大学校である、奈良県フォレスターアカデミーを開校して、林業技術に加えて、環境や生態系、地域との関係を踏まえて持続可能な森林の将来像を考える専門人材の育成に特化した学科を設けていると聞いている。一方、本県では今年度よりあいち林業技術強化カレッジを開設して人材育成に取り組んでいる。
愛知県と奈良県との人材育成に関する取組の違いについて伺う。併せて、あいち林業技術強化カレッジの設置を検討する際の設立の考え方についても伺う。
【理事者】
本県では、林業就業後の人材の育成強化のため、従前から森林・林業技術センター等において、知識や技術のレベルアップ、安全意識の向上のための研修を実施してきた。
そして、今年度、より効果的な人材育成、技術力強化を図るため、従来の森林・林業研修の見直しを行い、未経験者から指導者まで、キャリアに応じた段階的な研修コースを備えたあいち林業技術強化カレッジをオープンした。
カレッジの設置を検討するに当たり、県内の森林組合及び民間の林業経営体に対して人材確保に関するヒアリングを行ったほか、林業関係団体である愛知県森林協会、愛知県森林組合連合会、公益財団法人愛知県林業振興基金、林業・木材製造業労働災害防止協会愛知県支部の4団体から、人材育成の強化や研修体制の充実についての要望をもらった。
こうした意見や要望を踏まえ検討した結果、林業経営体で従事する人材の定着を図るとともに、安全な森林作業を徹底するため、林業従事者が働きながら、キャリアに応じ段階的にスキルアップを図ることができる研修体系としてカレッジをオープンした。
一方、奈良県では、林業就業前の教育機関である林業大学校として、奈良県フォレスターアカデミーを設立し、林業や森林管理等について、1年または2年間の育成を行い、県内の林業経営体等への就業につなげていると聞いている。
奈良県と本県の取組の大きな違いは、奈良県では、就業前の人を対象に林業大学校において人材を育成していくのに対し、本県では、林業経営体等に就業している人を対象に技術力の向上を図ることで人材を育成していくとともに、就業者の定着に努めている点である。
【委員】
本県の考え方として、現役の林業従事者の技術の向上と位置づけていくことについては理解するが、若い新規林業従事者の確保に課題があると感じている。
例えば、豊田森林組合では、高校を卒業した後に採用後2年間、県外の林業大学で本人の負担なしに学ばせる取組を行っている。豊田市では、森林環境譲与税を財源にその経費の一部を負担している。しかし、近年、その大学への入学も困難になっているとも聞いている。
そこで、本県として、若い林業従事者の具体的な確保策についての考えを伺う。
【理事者】
本県では人材の確保のため、森林、林業に関心を持ってもらうとともに、職業としての林業を理解してもらうための取組を実施している。具体的には、県内の各種イベントにおける林業の仕事に関するパネル展示によるPRや、若い林業従事者へのインタビュー動画の公開などにより林業の魅力を広く情報発信している。
また、公益財団法人愛知県林業振興基金等と連携して、名古屋市をはじめ、県内各地で開催、出展はもとより、東京都や大阪府においても就業ガイダンスに出展し、県内の林業のPRや就業希望者と林業経営体とのマッチングを行い、昨年度は8回のガイダンスを通して、延べ100人以上の就業相談に応じている。こうした就業ガイダンスをきっかけとし、昨年度までの5年間で19人が県内の林業経営体に就職した。
さらに、林業現場の雰囲気を体感してもらうため、チェーンソーによる伐木体験やシミュレーター装置による高性能林業機械の疑似操作体験、林業経営体へのインターンシップの支援をしている。
県内にある林業関係の三つの県立高校に対し、林業現場での高性能林業機械の操作体験や各高校と林業関係者による就業懇談会を通じて積極的に林業の魅力を伝え、林業の就業を働きかけており、この5年間で17人が林業経営体に就職した。こうした取組を通じ、若い林業従事者の確保にしっかりと取り組んでいく。
【委員】
本県には林業大学がない状態である。豊田森林組合の新規高卒者が県外の林業大学への入学は困難であることを紹介したが、近年、豊田森林組合がこれまで隣の岐阜県の林業大学に入れようとしたところ、成績等の問題があったと考えるが、結果的に入学できず、さらに遠くの県の林業大学に行かなければならないという状況が起きている。
今後、森林環境譲与税を活用し、高校卒業後、林業に興味を持って学びたい人が増えることを期待するが、肝心の林業大学への入学が狭き門にならないよう、例えば、他県の林業大学校に愛知県枠を設けるよう県同士で調整するなど、林業従事者が持続的に確保できるようにしてほしい。
【委員】
地域外に居住する人に農地が相続されることにより、地域に所有者がいなくなる、いわゆる農地所有者の不在村化により未耕作地が増えている問題があり、私の地元である日進市の農業委員会にも議案として提出されている。この議案は令和5年1月に提出された案件であり、所有者の住所は、長野県が2件、三重県が3件、東京都が2件と名古屋市であり、全てが未耕作地である。未耕作でも、一部は親戚がいるため、草だけは刈っているものがあると聞いている。
この案件について日進市の農業委員会で検討され、農家など未耕作地を請け負ってくれるところがないかヒアリング等を行ったが、今でも耕作放棄地になっており、現状は売却もままならないと聞いている。結局、買手がいない。例えば、隣で耕作をしている農家がいれば、面倒を見てもらうこともできると思うが、難しい。また、農地中間管理機構にこの件を依頼したところ、結果的には引き受けられないとの回答であった。
いずれにしても、この件は宙に浮いた状態で、草刈りすらままならない状況となっている。これは、恐らく日進市だけの問題ではなく、県内でも相当あるのではないかと思う。難しい課題だと考えるが、このような状況について、本県としてどのように考えているか伺う。
【理事者】
市町村では令和6年度末を目途に地域計画を作成しており、そのうち、農業委員会が目標地図の素案をつくる流れになっている。農業委員会は、目標地図の素案づくりに当たり、農地の所有者に対するアンケート結果や、県外に居住する未耕作地の所有者の意向も踏まえ、また、所有者不明土地もあるが、そういったものを協議の場において、10年後、この農地を誰が耕作をしていくのかを協議した上で検討することになる。
検討を行っても継承者が見つからないような、例えば、小規模な農地等については、地域内の新規就農者、あるいは多様な農業を担う人、例えば、半農半Xの人や事業の多角化を希望する経営体、農業に関心のあるNPO法人などを地域の中から探して、それでも見つからない場合は地域外の人々に手を広げてもらうことが大切だと考えている。
【委員】
地域計画についてはよく理解でき、理屈上はそうだと考える。しかし、現実は難しいのではないか。それをどうしたらよいかを議論したい。
前回の委員会では、本県としては、市町村にやる気があればそれでお願いをするが、県はそこまで指導する立場ではないとの話であったが、受け手側の農業者はどうしたらよいのか。もう少し大きな力を働かせないとこの問題は解決しない。経済産業局においては、例えば、中小企業が、事業継承してくれる人がいないからギブアップといったときには、M&Aとして、買ってくれるほかの企業などとのマッチングをしている。そういったことも一つの手段だと考える。
新規就農者については、あいち食と緑の基本計画2025で掲げている5年間の就農目標に対して、2,511人の就農を11年間で行っており、その定着率が91パーセントとのことである。
問題は、2015年に3万6,000の経営体が、2020年までの5年間で2万7,000となり26パーセント減っている。また、農業従事者が65歳以上の割合が63.8パーセントから65.8パーセントに微増しており、着実に農業従事者は歳をとっている。そのため、新規就農が多くなっていても、これまでやっていた人々が減っているということは、農業は衰退の一途だということである。
先ほど、経済産業局の話をしたが、産業空洞化対策減税基金を元にいろいろな施策を行っており、アイデア次第である。そういったものをつくって、農業者をバックアップしてほしい。現実問題として、農家もこれまで精一杯やっており、自分がやってきた苦労を子供たちには任せられないと思い、後継を諦めている部分があると思う。しかし、ほかの業態でも、最近の若者たちはとても前向きである。苦労と思わずに楽しいことがあるからといってすごい発想でやってくれる若者もたくさんいる。今の農業を行っている現役の70代や80代の人から孫の世代にうまく後継できるような方策をぜひ考えてほしい。
やはり農業は難しい。漁業や酪農、林業などはやることが明確である。しかし、水田耕作が一番苦労している。これを何とかしないといけないため、国に対して、米の値段をしっかり上乗せしてもらうなどの要求をした上で、県独自の施策をやってほしいが、県としての意見を伺う。
【理事者】
農業を経営していく中で土地の問題など様々な課題等がある。本年度は、農業経営・就農サポート推進事業として、農業者の様々な問題に対応している。これは農業者の担い手や新規就農の部分など、トータル的にバックアップ体制を取っていくものである。しかし、何が問題になっているのか、実際にその問題に対してどのような解決があるのかは個々の問題によるため、農業改良普及課等と連携しながら、現場での対応をしっかりと取り組みたい。
【委員】
ポケット情報あいちには、令和4年度の新設住宅着工数が6万937戸とある。また、新設住宅、持家の着工数が1万7,228戸であり、新設の戸建ての鉄骨造り住宅の着工数が4,020戸とある。しかし、林業の動きでは統計の取り方が違う。住宅の着工数があり、木造数があり、非木造数がある。しかし、ポケット情報あいちには、持家での統計になっている。統計の取り方がなぜ違うのか。
また、ポケット情報あいちには林業産出額26億円とある。これは、林業の動きにも同じような数字が載っているが、これが令和3年度の数字になっている。この違いはなぜか。
【理事者】
住宅の内訳については、持家以外に大きな区分として賃貸住宅があり、これも一般的な住宅に分類されているため、その部分が大きく異なっている。
【委員】
林業の動きには、今後も持家の着工数は載らないということか。
【理事者】
それぞれの統計で、連続性の観点で同じ抽出をして数字を並べている。
【委員】
7月3日に木質化サポートセンターを開設してからの相談対応について、県産木材の調達方法が分からない、設計や法規制、補助金制度など、どのような相談でも伺うとパンフレットにあったが、開設時から本日までの状況はどうか。
【理事者】
相談対応では、木材資材をどのように調達すればいいのかが一番多い。また、市町村からは、木造もしくは木質化したいがどのようにすればいいのかなどの質問が多い。
【委員】
持家に対しての相談はあったのか。自分が今後建てる持家で、県産材をどのように調達したらいいかなど、建築事務所などからの相談はあったのか。
【理事者】
個人からそのような相談があったと聞いている。
【委員】
今後ともしっかり木質化サポートセンターをアピールして、県産材の利用が順調に進むようにお願いしたい。一方で、公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律の一部が令和3年に改正されており、附帯決議の中で、持続可能な社会の実現に向けて木材の利用の拡大による炭素貯蔵、二酸化炭素の排出削減効果の最大化等により2050年カーボンニュートラルの実現を目指すとともに、循環型社会の形成、自然との共生等を統合的に推進するため、本法の措置に加え、建築物等における木材の利用の促進のみならず、公共土木分野での木材の利用の促進と書かれている。
そこで、あいちの木活用推進室では、愛知県の公共土木分野について対応が取れる体制が取れているのか伺う。
【理事者】
公共工事における木材利用については、あいち木づかいプランの中で、県自らの土木工事でなるべく木を使うという取組を全庁的に進めている。
その中で、工事看板は、ほとんど間伐材利用のものになっている。また、コンクリート型枠については、最近は針葉樹合板として、ヒノキやスギを使ったものが一般的になっているが、合板メーカーに掛け合い、県産木材を使ったものを作り活用している。
【委員】
私の地元の瀬戸市では、陶磁器問屋において昔から木箱を使っている。製品を出荷するに当たり、一時的に、自分の会社の倉庫に置いておく際に木箱に製品を置いて、発注があった際に木箱から出して段ボール箱に詰め替えて出荷している。プラスチック等がない時代はほとんど木が使われていた。愛知の県産材は、利用の拡大を図ろうと思えば、まだまだ図るところが多くある。
林業の動きを見ても、杉材や松材の4メートルの長さの丸太材も統計上載っている。丸太材は、コンクリートが流通する以前は基礎杭で使っていたと思う。橋を木造にすることも可能ではないか。まだまだ使える余地がある。今後の愛知の木をどのように活用していくのか。
【理事者】
木は建築物から身の回りのものまで様々なものに使うことができ、過去そのように活用されてきた。ダンネージと称して、大きなものを船で運ぶ際の梱包材や、パレット用に杉材を見直す動きは確かにある。
県産木材の利活用について、林業は経済活動であるため、いい材はなるべく高い値段で使ってもらい、そうでない材は、例えば梱包材やパレットとして使う。木材はカスケード利用もできるため、パレット等として使った後に、それを潰してチップにして燃やすなど、山の所有者になるべくお金が還元されるように、関わる人々にそれぞれ少しでも経済的メリットがあるようなサプライチェーンをつくっていかなければならない。
ウッドショックの影響が徐々になくなり、国産材が見直されている。愛知は林産物の売上高が多いが、外材による部分が非常に多いのが実情である。それを少しでも県産材に置き換えていけるように、全国的な流れも見ながら少しずつ取り組んでいきたい。
【委員】
あいち森と緑づくり事業について、事業評価報告書を踏まえて、これからの5年間、どのような方向性で実施する予定か。
【理事者】
あいち森と緑づくり事業の今後の進め方については、事業評価を行う中で、市町村や事業関係者などから事業内容に対する様々な意見をもらっている。意見を踏まえて、本事業が県民のニーズに沿い一層事業の効果が得られるよう、今年度、事業の見直しの検討を行っている。
人工林の整備では、道路沿いの間伐の一層の促進と小規模な林業経営体が参入できる仕組みの創設に対して意見をもらったため、道路沿い等の間伐を一層進めるとともに、小面積の森林における間伐メニューの検討を進めている。
次世代森林の育成については、手入れ不足のまま高齢化した人工林の若返りや獣害対策に対応できるよう、事業内容を見直したい。
里山林の整備では、地域ニーズへの対応や現状を踏まえた地域活動について意見があったため、市町村、活動団体、土地所有者の3者で結ぶ協定内容等について見直しの検討を進めている。
木材の利用促進については、民間建築物等での木材利用のニーズへの高まりへの対応について意見があったため、一層波及効果が高まるよう検討を進めている。
県民から理解してもらえるよう、事業内容を検討し、引き続き山から街まで緑豊かな愛知の実現を目指し、事業を一層推進したい。
【委員】
搬出間伐については、義務化していくくらいの意気込みでやってほしい。大雨が降った際に、林内に残っている木が川へ流れてダム化し、洪水や災害リスクが増えるため、しっかり考えてほしい。
また、道路沿いでは、中部電力株式会社と協力して過去に倒木による停電があった箇所を重点的に間伐していると聞いている。山に住む人にとって、台風などの風水害での倒木による停電は避けたい事例であるが、道路沿いは非常にコストがかかる。警察の注意も厳しく、警備員を立てるなど、非常にコストのかかる事業である。また、木を倒す際も高度な技術が要る。そのため、個人では不可能に近い事業である。また、道路の維持管理についても、道路側の木がなくなることによって道路が乾き、道路が長もちするなど、様々な効果がある事業である。間伐事業は面積を目標としているが、道路沿いを重点的に行うことが面積が伸びない原因となっている。今回の見直しの中で県民に理解をもらえる方向性を出してほしい。
また、小規模事業体について、林業従事者の年齢構成が若返っている。そのため、若い人たちの事業量を確保するためにも、意欲のある人たちに事業をやってもらえる仕組み、仕掛けを進めてほしい。
木材利用の促進について、木の香る都市づくり事業など、木材利用を行っている事業者には心強い支援事業だと考える。しかし、一般住宅へのフォローが手薄になってきたと感じるため、バランスの取れた支援を検討してほしい。
野生イノシシの豚熱経口ワクチン散布について、豚熱は非常に大きな脅威であり、その対策として、野生イノシシからの感染の可能性が強いことが指摘され、野生イノシシに経口ワクチンを散布する経過だったと思う。これにより、多くの養豚で豚熱の発生が最近抑えられている。経口ワクチンは、予算が大変かかることと、イノシシの通りそうな山中の地下に埋めるため、効果があるのかどうか疑ったが、難題を解決して、効果があると聞いている。
まず、経口ワクチンを使うことを採用した経緯を伺う。
【理事者】
経口ワクチンの散布については、経口ワクチンと呼ばれる液体の豚熱の生ワクチンをアルミ箔で密封したポリエチレン容器に封入して、その周りをトウモロコシの粉など、野生イノシシが好む食品を材料にした餌で包み込んで、縦横4センチメートル、厚さ1.5センチメートルの形に成形したものを、野生イノシシが生息する山林などの地中に埋め込み、野生イノシシが食べることによって豚熱ウイルスに対する免疫を獲得させ、豚熱の感染を防止することを目的とするものである。
本県でのワクチン散布までの経緯については、2018年9月、岐阜県において26年ぶりに豚熱が発生し、本県内においても、同年12月に犬山市で野生イノシシでの感染が確認された。
国は、2019年2月に農林水産省豚コレラ防疫対策本部において、野生イノシシによる豚熱ウイルスの拡散防止対策を講じるため、経口ワクチンの散布などにより豚熱の発生を抑え、2009年に封じ込めに成功したドイツでの実績に基づいて、ヨーロッパ連合の政策執行機関である欧州委員会が2010年に公表した野生イノシシ豚熱対策に関するガイドラインを参考に、我が国初の取組となる経口ワクチンの散布方針を決定した。
その後、2019年2月末に農林水産副大臣が本県の知事と会談し、経口ワクチンの散布は国主導の下で県が実施主体となり散布すること、費用は全額国が負担することなどを確認できたことから、本県は翌月3月に愛知県豚コレラ感染拡大防止対策協議会を設立して、同月24日から県内での散布を開始した。これまでに野生イノシシで豚熱が確認された本県を含む36の都道府県で散布が行われている。
【委員】
散布費用はどこが負担しているのか
【理事者】
散布の費用は、全額国が負担して実施している。
【委員】
今年度の予算額を教えてほしい。
【理事者】
今年度の予算額は、8,160万円である。
【委員】
経口ワクチンの散布とは、ばらまくのではなく埋めるとのことだが、どのように実施しているのか。また、実施にあたる経費や実施体制も教えてほしい。
【理事者】
経口ワクチンの散布の実施体制については、国が策定した豚熱経口ワクチンの野外散布実施に係る指針に基づき、まず国が散布に使用する経口ワクチンの選定、調達及び輸入、都府県への配布などの調整を行っている。
次に、都府県及び市町村、猟友会、畜産関係団体などから構成される経口ワクチン散布の実施に係る協議会を設置し、国と協議の上、年間の散布計画を作成し提出する。
なお、本県では2019年に協議会を設置しており、今年度の散布計画については、年4回、前期に1回、後期に3回となる。県内の16市町村を対象に延べ4,000地点、計8万個の散布を計画しており、使用する経口ワクチンは、必要数量が国から随時配布され、散布業務を業者に委託して実施している。
【委員】
散布業務を実施する民間の業者は以前から実施している業者か、また、散布地点の指示は誰がしているのか。
【理事者】
委託している業者については民間業者である。例年、同じ業者に委託している。散布の指示については、県が散布地点を設定して、契約の際に散布地点を指示している。
【委員】
散布地点は猟友会などから指導してもらっているのか。
【理事者】
散布する地点については、イノシシが多く出る森と畑等の周辺や境目の辺縁部、陽性が発生している地点、養豚場の周辺など、地域の猟友会をはじめとした地域で活動している人々から、イノシシの生息が確認できる場所を情報提供してもらいながら、本県で散布地点を決定している。
【委員】
今までの取組の成果はどのように把握しているのか。
【理事者】
豚熱経口ワクチンの散布については、2019年3月から実施しており、今年の8月末までにおおむね17市町村、延べ1万6,000地点に累計で約31万個を散布している。年度ごとに散布地点の見直しを行うが、継続的に散布を実施することにより、豚熱の抗体ができ免疫を獲得したイノシシの割合が、抗体検査を開始した2019年度の16.9パーセントから、2022年度は23パーセントと増加をしている。
また、豚熱検査を行ったイノシシのうち、陽性を確認したイノシシの割合は、感染拡大した2019年の8.6パーセントから、2022年度は3.1パーセントと低下しており、近隣県である岐阜県の4.3パーセント、静岡県の3.3パーセントと比較しても低い値で、一定の成果を得ている。
一方で、タヌキやカラスなど、イノシシ以外の鳥獣が経口ワクチンを食べてしまう事例が複数確認されたことから、選択的にイノシシに食べさせるために、愛知県農業総合試験場が考案したコンクリートブロックを使った散布方法の実証実験を、今年度から県内の35地点において実施している。これはコンクリートブロックの穴の中にワクチンを入れて、上から米ぬかをかぶせて設置するもので、力の強いイノシシはコンクリートブロックを倒して食べることができるが、タヌキやカラスはその力がないため、ブロックが倒せない仕組みになっている。
今年度第1回目、春の散布の際の実証実験結果として、データを得られた各10地点で比較したところ、イノシシが食べた割合が、全て土に埋めた場合の16.5パーセントから、コンクリートブロックを使った場合は36パーセントに改善された。
【委員】
この経口ワクチンについて今後どのように進める予定か。
【理事者】
野生イノシシにおける豚熱対策については、主に三つの対策から成っている。一つは、サーベイランスと呼ばれる豚熱検査や抗体検査による豚熱の感染動向や抗体の獲得状況の把握と監視、二つ目は、サーベイランスに基づく経口ワクチンの散布、三つ目は、感染の可能性のある個体を減らすための捕獲の強化である。
野生イノシシの豚熱感染は、今年度に入ってから、9月末時点の本県での陽性個体の数は8頭、陽性率は1.6パーセントとなっている。近隣県においては、9月28日時点で、岐阜県では陽性が99頭、陽性率は6.2パーセント、静岡県では陽性が56頭、陽性率が3.3パーセントとなっており、今後も感染拡大が懸念されることから、予断を許さない状況になっている。そのため、野生イノシシにおける三つの豚熱対策である、サーベイランス、経口ワクチンの散布、捕獲の強化を効果的かつ効率的に実施できるよう、毎年度の取組結果を分析、改善しながら、今後も継続的に取り組みたい。
【委員】
農作物被害額は昨年度4億8,000万円と、一昨年より増えている。鳥獣の捕獲に対する支援について伺う。
【理事者】
農作物の被害防止のための捕獲である有害捕獲に係る捕獲者への支援については、国からは鳥獣被害防止総合対策交付金により、捕獲活動経費の補助として、イノシシ及びシカの成獣のうち、食肉処理施設に搬入するものについては、1頭当たり9,000円、焼却施設等に搬入するものは8,000円、それ以外は7,000円を助成している。サル、クマ及びカモシカの成獣については8,000円、その他の獣類及び全ての幼獣、子供の獣については1,000円、鳥類は1羽当たり200円を助成している。あわせて、本県では、イノシシには2019年度より、豚熱対策として県費による上乗せ補助を行っており、イノシシの成獣で1万3,000円、イノシシの幼獣で6,000円となっている。さらに、各市町村においても、地域の実情により金額は異なっているが、上乗せ補助が行われている。
【委員】
シカについて言うと、年間約700トン捕獲されている。そのうちでジビエに出ているのは約200頭と聞いている。これは、生きたまま持っていかなければならず、また、鉄砲で撃ったものは駄目など、制約が大きい。そのため、食肉加工施設に搬入できる頭数は知れている。もう少し捕獲に対するトータルの補助ができるようなことも考えてほしい。
そこで、現在の捕獲実績はどのぐらいか伺う。
【理事者】
捕獲経費の補助による県内の主な鳥獣の捕獲実績について、昨年度は、イノシシが6,132頭、シカが5,511頭、サルが373頭、カラスが1,588羽となっている。特にシカの捕獲頭数は年々増加しており、5年前の2017年度に比べて約1.8倍となっている。
【委員】
イノシシは、一時期、豚熱の影響で個体数が減ったと言われたが、最近増えてきている。鹿はかなり増えているようで、本格的に取り組まないと、山の中には夜、道路を走ると間違いなく出てくる場所が増えてくる。捕獲した個体のうち補助できるものは2割から3割ほどである。もう少し全体的に支援する必要があると考えるが、どのように考えているのか伺う。
【理事者】
シカの捕獲に対する経費の補助について、国に要望して、捕獲経費補助の増額を要求している。
その中で、捕獲だけなくシカ対策として、例えば、鹿をまとめて捕獲するような大型の捕獲おり等、効果的な捕獲を目指すシカの捕獲対策を進める補助事業もある。シカで悩んでいる市町村等と相談をしながら、単純に1頭幾らとの補助だけではなく、そのような捕獲も相談しながら対応したい。
【委員】
鳥獣の被害は、相手が相手だけになかなか効果が出しにくい事業だと思う。その辺も踏まえて、今一度、もう一歩事業を進めるためにはどうしたらよいかを考えてほしい。森と緑づくり事業もそうだが、国の森林環境譲与税は、愛知県は県民が対象である。国は全国対象なので、国の事業の効果性は薄れる。その点は県もできるだけフォローして、国と県が一体となって事業を進め、森と緑づくり事業のより効果的な運用と、獣害対策をさらに進めてほしい。
【委員】
福島第一原発の処理水の海洋放出が始まって1か月以上が経過した。海への放出には、中国が猛反発して、処理水を核汚染水と呼んで、8月下旬から日本産水産物の全面禁輸を始めた。新聞報道によると、8月の日本からの水産物の輸入額は日本円で約30億円となり、去年の同月と比べて67パーセント余り減少するなど、影響がかなり広がっている。特に北海道や東北のホタテに大きな影響が出ており、それ以外にも、日本の水産物が輸出される国では中国が最も多いとされることから、日本の水産業界への打撃が広がることは必至である。
そこで、この処理水の海洋放出による、本県の水産物輸出への影響について、まず、本県の水産物で中国へ輸出している産品はあるのか。
【理事者】
本県から中国への輸出している水産物について、愛知県漁業協同組合連合会及び県内の漁業協同組合へ聞き取り調査を行った。その結果、本県産のナマコやノリが加工されて輸出されていることが確認された。
【委員】
以前読んだ新聞だと、日本からはホタテが圧倒的に多く、2番目にナマコが多いと載っていた。国内でナマコは需要が限られるそうで、中国ではナマコは高級食材として珍重されているため、日本から中国への輸出規制されているところが各地であるとのことであった。
そこで、処理水の海洋放出が始まって1か月が経過し、本県の水産物への影響はどうか。
【理事者】
ナマコについては、本県の漁期が12月から翌年3月であり、現在漁獲されていない。また、昨年度に漁獲したナマコの加工品は、既に輸出済みであるため、現時点では直接的な影響は見られてない。
また、ノリについては、近年、国内需要が満たされていない状況であるため、輸出は限定的であり、こちらも現時点で直接的な影響はないと考えている。
【委員】
ナマコの漁獲時期が12月から3月であり、日中関係の悪化で、全面禁輸も長期化する可能性もあると言われる中で、本県のナマコが採れる時期に当てはまった場合、県として対応は何か考えているのか。
【理事者】
今後の対応については、引き続き情報収集に努め、影響等が生じた場合は、国が実施する支援策の活用についてサポートをするなど、業界団体と連携して取り組みたい。
【委員】
西尾市一色町はウナギの養殖業が非常に盛んであり、令和3年のウナギの生産量は全国で2位である。私が驚いたことは、養殖ウナギの9割以上が生育過程で雄になっていくとのことである。愛知県水産試験場では、雌のウナギは雄に比べて大きくなり、雌のほうが身が柔らかいことに着目して、5年以上の研究期間を費やして、新たな技術開発で雌を生産する技術開発に成功したことが話題になった。その特許は、ウナギの稚魚に大豆に含まれる大豆イソフラボンを混ぜた餌を与え、効率的にウナギを雌にする技術で、愛知発の大きくて柔らかくおいしい新たなウナギのブランドの確立を目指し、ウナギのブランド名と、ブランドマークを公募していた。最優秀賞や優秀賞にはウナギ蒲焼きプレゼントという賞品付きで、9月15日に応募が締め切られた。
そこで、応募状況はどうであったのか、応募状況に対する県としての感想も踏まえて伺う。
【理事者】
大型雌ウナギの応募状況について、41都道府県の10代から90代の幅広い年齢層から、ブランド名には609件、ブランドマークに158件の応募があった。たくさんの人々から応募があり、特許技術を用いて生産する大型雌ウナギへの消費者の関心の高さを知ることができた。
【委員】
この愛知産のブランドウナギを今後どのようにPRしていくのか。また、名前が決まった時点からだと思うが、商品化のための今後のスケジュールについて伺う。
【理事者】
今後のスケジュールとして、まず、応募があったブランド名、ブランドマークについては、生産者、生産者が組織する漁業協同組合、県などで審査を行い、来年1月以降に、最優秀賞、優秀賞を発表する予定である。ブランド名、ブランドマークの発表に合わせて、生産者が知事を訪問し、このウナギにかける意気込みを伝えるとともに、知事にも味わってもらい、魅力をPRしていく予定である。
また、消費者への販売は、この発表後、西尾市の生産者の直営店において数量限定で行う予定である。農業水産局としては、引き続き、大型雌ウナギの消費者への積極的なPRに努めたい。
【委員】
本県は有機質肥料に積極的に取り組んでいると思うが、農家から有機農業に必要な肥料の安定供給も同時に必要になってくることが課題である。肥料に関しては、基本的に海外に頼っており、化学肥料の原料である尿素、リン酸、アンモニウム、塩化カリウムなどに関してはほとんど輸入に依存している。これは本県だけではなく日本全体の課題である。
その中で、本県として、有機農業の活発化に向けて、有機質肥料も積極的に開発、推進していくことが必要だと考えている。肥料の資源としての汚泥の利用は、汚泥を単純に熱処理して廃棄物にするのではなく、例えば微生物などを用いて、有機質肥料として活用することが、国としても推進されており、具体的な目標として、2030年までに下水汚泥飼料・堆肥の肥料利用量を倍増させて、肥料の使用量に占める国内資源の利用割合を40パーセントまで拡大するとのことである。
現在、本県としては、汚泥ではなく、家畜ふん堆肥の利用を進めていると思うが、本県の有機質肥料、家畜ふん堆肥のマップの作成など、現状の動きはどうなっているのか。また、下水汚泥の資源利用に関して、現在の本県の動きでなくとも、今後に向けた考え方も伺う。
【理事者】
有機質肥料のうち、特に堆肥については、畜産農家が排出される家畜ふん堆肥を農家に提供できるよう、堆肥マップ等を作成して推進を図っている。
下水汚泥について、国は、肥料高騰対策を受け、国内にある肥料資源を活用していくよう、10月1日に制度改正をしている。これまで、下水汚泥は普通肥料として登録できるが、成分が保証されなかった。流通する際に成分保証されていないと、有効活用が難しかったが、制度改正により、菌体リン酸肥料として、リン酸成分を保証でき、推進を図る動きがある。今までは、下水汚泥の普通肥料の登録は国が行っていたが、10月1日からは県で登録を行うこととなった。汚泥肥料の品質管理計画について、まず国が確認をしてから県が登録に入る制度の仕組みであり、現在、一部の人からは相談がある。本格的に制度が稼働していけば、問合せも増え、登録ができていくと考えるため、汚泥肥料の肥料としての有効活用も県として進めたい。
【委員】
事業者からやりたいとの声が上がってくることがスタートになると思う。声が上がった際に、国の動向も適切に見極めていく必要があるが、本県としても、有機農業の活発化や肥料の自給も含めてよい方向に持っていけるように、ぜひ独自の取組として推進してほしい。