委員会情報
委員会審査状況
農林水産委員会
( 委 員 会 )
日 時 令和5年12月11日(月) 午後0時59分~
会 場 第2委員会室
出 席 者
佐藤英俊、村瀬正臣 正副委員長
峰野 修、いなもと和仁、近藤裕人、柳沢英希、杉浦友昭、高橋正子、
長江正成、桜井秀樹、藤原 聖、井上しんや、喚田孝博 各委員
農業水産局長、農林水産推進監、農業水産局技監、農政部長、
畜産振興監兼畜産課長、
水産振興監、農林基盤局長、同技監、農地部長、林務部長、関係各課長等
<付託案件等>
○ 議 案
第118号 令和5年度愛知県一般会計補正予算(第5号)
第1条(歳入歳出予算の補正)の内
歳 出
第6款 農林水産費
第120号 令和5年度愛知県県有林野特別会計補正予算(第1号)
第134号 工事請負契約の締結について(たん水防除事業新大江
地区排水機場機械設備工事)
第143号 損害賠償の額の決定及び和解について(西部家畜保健
衛生所)
第156号 愛知県森林公園の公園施設の指定管理者の指定について
(結 果)
全員一致をもって原案を可決すべきものと決した議案
第118号、第120号、第134号、第143号及び第156号
○ 閉会中継続調査申出案件
1 農林水産業の振興について
2 農地関係の調整及び土地改良について
3 緑化の推進について
4 農業水産局、農林基盤局、海区漁業調整委員会及び内水面漁場管理
委員会の行政運営について
<会議の概要>
1 開 会
2 議案審査(5件)
(1)理事者の説明
(2)質 疑
(3)採 決
3 委員長報告の決定
4 一般質問
5 閉会中継続調査申出案件の決定
6 閉 会
(主な質疑)
《議案関係》
【委員】
豚熱の予防的なワクチン接種により生じた損害賠償の経緯について伺う。
【理事者】
家畜伝染予防法では、愛玩用の豚でも豚熱ワクチン接種の対象となっており、マイクロブタについては、現在、家畜保健衛生所の職員である家畜防疫員が接種を行っている。
本年4月に、常滑市内にあるマイクロブタと触れ合いができる施設に西部家畜保健衛生所の職員3人が訪問し、1人が豚を固定した上で、別の1人が耳の付け根部分に注射針を刺して豚熱ワクチンを接種した。接種直後に手足をばたつかせる神経症状と呼吸困難を起こしたため介抱したところ、落ち着きを取り戻したが、自力で起きることができなくなった。現場では治療ができなかったことから、施設の従業員がかかりつけの動物病院へ連れて行き、そのまま入院治療を受けることになった。当該豚は、退院後も首が左側に曲がったままで、自力歩行ができずに、食事と排せつにも人の介助が必要になった。
ワクチン接種は所定の用法・用量に従って行ったが、接種直後に異常を呈していることから、ワクチン接種と豚の異常には因果関係があり、職員が行った注射方法に過失があったと判断し、相手方に対して損害賠償を支払うこととなった。
【委員】
因果関係との話があったが、最終的に因果関係があるとどの点で判断したのか。
【理事者】
接種直後に手足をばたつかせる神経症状と呼吸困難が見られたこと、また、退院後も首が左側に曲がって起き上がれない状態だったが、介助により立ち上がることができるようになり、首の曲がりや症状が徐々に回復した可逆性を考えると、注射薬液による影響ではなく、注射針によって神経を物理的に傷つけたことが原因である可能性が高い。
【委員】
接種を行った人は、新人なのか、ベテランなのか。また、今回の支払い金額の妥当性と、過去にも同じような事案があったのか伺う。
【理事者】
まず、接種した職員の経験について、2019年10月に本県で豚熱ワクチン接種が開始された当初から4年以上経験した者であり、十分な経験を有していた。
次に、損害賠償額の妥当性について、実際に発生した損害を積み上げたものであり、その積算の内容は4項目である。
一つ目は、障害により販売価格が低下した当該豚の販売額と、同居していた同じ日齢の豚の販売額との差額、二つ目は入院治療費及び通院のための交通費、三つ目は退院後の介助に要した経費、四つ目は事故の発生を受けて2日間営業を休止・休業した営業補償となっている。以上の4項目について、県の顧問弁護士とも相談の上、賠償額を決定しており、妥当な額だと判断している。
最後に、過去、豚熱ワクチン接種に伴う同様の障害事案や死亡事故は、本案件以外にはない。
【委員】
今回と同様の事案は他県であったのか、また、今後の再発防止策は考えているのか。
【理事者】
まず、他県での状況について、国や静岡県、岐阜県、三重県に問い合わせたところ、同様の事案はないと確認している。ただし、東京都では令和3年度に、愛玩豚への豚熱ワクチン接種により軽い副反応が出た事例が4例あったと報告されている。
次に、今後の再発防止対策について、今回の事故を受け、改善策を3点考案し、家畜保健衛生所の職員に注意や教育を徹底している。
一つ目は、豚熱ワクチン接種時には、飼育者に対し、事前に副反応等のワクチンによるリスク等をリーフレットで丁寧に説明し、飼育者との信頼関係を構築するように努めている。二つ目は、緊急時の対応フローを作成し、救急セットを準備するとともに、現場で対応できるよう職員の教育を行っている。三つ目は、ワクチンを接種する場所について、通常は豚肉の商品価値が下がることを避けるために耳の後ろへ接種しており、今回も同様に行ったが、この事故以降は、マイクロブタの接種は、安全性が高い皮膚の下や臀部へ変更した。これらの取組により再発防止を図っている。
【委員】
先ほどの委員の質疑を踏まえて伺う。
答弁にもあったとおり、接種した当日は、家畜保健衛生所の経験のある獣医師が2人と、畜産職の職員1人、合計3人で先方に訪問し、4頭のうち1頭に症状があったと聞いている。接種した豚がその後回復したことは何よりであるが、注射の方法に過失があったことは、本当に不幸な出来事としか言いようがない。しかし、この飼養者が県へ納める金額は1頭280円であり、損害があった場合に県側が負う代償は決して小さくない。
愛玩用豚は、個人はほぼ1頭飼いであり、業者でも数頭のため、訪問の効率から考えて、例えば1回溶解した1バイアル当たり20ドーズとなっている豚熱ワクチンを廃棄せざるを得ないのではないか、また、接種までにかかる交通費や人件費等を勘案すると、280円に対する金額と実際の金額が全く釣り合っていないのではないかなど、そもそもの設定が家畜用になっていると感じる。
現在、家畜伝染予防法上に基づいて年1回の提出が義務となっている定期報告書から考えると、県内で愛玩用豚を飼養していると考えられるのは約132戸、175頭である。ペットとして飼われている愛玩用豚であるため取扱いに配慮が必要であり、飼養者にも家畜衛生の感覚が薄い中で、飼養上の指導として、屋外が駄目なことや移動の制限があることなどを細かく説明すること、また、豚熱のワクチン接種予定計画が4回であるため、飼養者ごとに4回の豚熱ワクチン接種時に連絡や日程調整し、一軒一軒戸別訪問をすること、さらに、定期報告書の書き方の指導等を行わなければならないことを考えると、家畜保健衛生所職員への負担が非常に大きい。
今後、県内で愛玩用豚の飼養者の増加が見込まれる中、引き続き県の家畜保健衛生所の職員がこれらに全て対応するのは困難であり、本来の業務や家畜伝染病発生時の対応等に支障が出る可能性があるのではないか。
また、今後、同様の事案があった場合に、本議案の損害賠償額が参考となる可能性もあるため、その点で県民の理解は得にくくなってくる。
そのため、愛玩用豚の購入を検討する時点から、丁寧な説明や、かかりつけの動物病院に担ってもらう役割もあると考えている。今回の事案を受け、参考事例を探したところ、2022年の農林水産省の豚熱制度指針改定により、東京都では都知事認定獣医師制度が制定され、知事から認定された獣医師は豚熱のワクチン接種ができるようになったこと、そして、東京都のホームページでは、原則、愛玩用豚飼養者は動物病院でのワクチン接種をお願いしていると記載されている。そして、現在、認定獣医師が勤務し、豚熱ワクチンの接種を受けられる動物病院が表にまとめられ、複数の動物病院がホームページに掲載されている。
今回のような事例をできるだけ減らしていくため、また、家畜保健衛生所の業務負担軽減を図るためにも、飼養者の理解や獣医師、獣医師会の協力は必要である。そこで、東京都のような仕組みを本県でも導入することを検討していないのか。
【理事者】
家畜伝染予防法では、愛玩用豚であっても豚熱ワクチン接種対象になっており、マイクロブタについて、本県では、現在、家畜保健衛生所職員である家畜防疫員が接種を行っている。養豚場では、産業動物の臨床獣医師、いわゆる大動物を扱っている畜産系の獣医師が知事認定獣医師として認定されており、接種の一部を担っている。
マイクロブタについても、愛玩動物の扱いに慣れた小動物臨床獣医師、いわゆる動物病院の獣医師を知事認定獣医師に認定し、接種をお願いしたいと考えており、本年9月に公益社団法人愛知県獣医師会に協力を依頼した。接種に前向きな小動物臨床獣医師のリストアップができたため、現在、個々にリストアップされた獣医師に対し、家畜保健衛生所から打診中である。
【委員】
先日、県内のマイクロブタカフェを訪問した。若い世代を中心に大変にぎわっており、豚の人懐っこさやかわいさは十分に理解できた。話を聞くと、多いときに月8頭ほど売れるときもあるとのことで、愛知県だけとは限らないが、今後、飼養者が増えていく可能性が十分にある。購入を検討する人に対してはしっかりと説明していて安心したが、事業者と連携している動物病院も既に複数あったため、購入のきっかけとなる事業者にも、獣医師を含めて協力依頼は可能ではないか。
公益財団法人愛知県獣医師会で話を聴いたところ、約7軒の動物病院が協力依頼に前向きだと聞いている。そのうち1軒に話を聞いたところ、講習を受けなければならない、届出をしなければならない、犬猫に比べて少し太い針が必要になることなど、課題はあるとのことだったが、既に日本脳炎や豚単独のワクチン接種等の経験があり、基本的には問題なく対応可能で、ほかのワクチンと同じ価格帯でできるのではないかとの話があった。
公益財団法人愛知県獣医師会とも引き続き話をしてもらい、家畜保健衛生所がリストアップしている獣医師と前向きに話をし、このような仕組みとなるようお願いする。
また、他県の家畜保健衛生所では、飼養者や購入元へのアンケートを通じて、愛玩用豚の現況を調査し、公表している事例もあるため、今後このようなことが増え、必要があれば実態把握することも重ねて要望する。
【委員】
愛知県森林公園の公園施設の指定管理者の指定について質問する。現在の指定管理は、理由があって3年になったとのことだが、通常の公募により、この業者に決まったのか。
【理事者】
今の指定管理者は、公募により3年の期間で指定している。
【委員】
アジア・アジアパラ競技大会での活用が見込まれたため3年で公募したものと理解しているが、今回の指定管理者の指定についても、アジア・アジアパラ競技大会の活用を見込んで公募にかけて株式会社ウッドフレンズとするのか。
【理事者】
アジア・アジアパラ競技大会の影響が見込まれたことから、今回については、1年間の任意指定とした。
【委員】
次からは、5年の指定管理で通常どおりに公募をかけるということか。
【理事者】
来年度は、公募による選定で検討する。
【委員】
指定管理の在り方についてはいろいろと議論する余地があると思うが、公募まで1年延びてしまったとなると、手を挙げようと思っていた業者が、この事業をやろうとか、やろうとしていたことの当てが外れることなどがあるといけないため、公平性を担保して公募してもらうよう要望する。
《一般質問》
【委員】
愛知県産農産物の需要拡大について伺う。
2020年における愛知県の総農家数が6万1,055戸となっており、2015年の7万3,833戸と比べると非常に減少している。純粋な人口の減少や高齢化、その他の理由も含め、減少自体は仕方ないことだが、農家として働いている人々を大切にすることで、今後の愛知県の農業が継続的に発展する中で、農家がもうかることが大切である。愛知県の農家が野菜を作り、売ることでもうかり、発展していく。そのような仕組みを作ることができる農家は長く続くと思うが、愛知県の新規就農者の割合を見たところ、約70パーセント以上が新規学卒者、もしくは新規参入者となっており、農家になった後に売れ続けるためのノウハウや経験、知識がまだない人がほとんどであると思う。
私の周りでも、脱サラして農家を始める人がいるが、農作物を作るものの、売り切れずに余ってしまう人もたくさんいる。個人に問題がある場合もあるとは思うが、新しく農業を始める人に対する入口の支援だけではなく、その後の需要をどう拡大していくのか、この点に愛知県からの支援があるのか。
一点目に、愛知県産農産物の需要拡大について、県外に向けた取組があれば伺う。
二点目に、地産地消の推進に関わる取組状況について伺う。
【理事者】
県では、県産農産物の魅力を広くPRするため、イベントの開催やSNSを活用した情報発信などに取り組んでいる。このうちイベント開催の取組については、例年、主要な取引先である首都圏の量販店で、知事と農業団体代表者によるトップセールスとして、県産農産物の販売促進フェアを開催し、キャベツやブロッコリー、トマトなどの本県が誇る農産物を首都圏の消費者に直接PRしている。
本年2月に、東京都品川区にあるスーパーマーケットでフェアを開催した結果、開催店舗における本県産農産物の売上げが対前年比156パーセントとなるなど、好評を博した。
次に、SNSを活用した情報発信の取組については、今年度、名古屋コーチンやみかわ牛、カンキツの新品種である夕焼け姫などが登場する3本のPR動画を新たに作成し、9月からユーチューブ上で配信を行っている。これら動画の合計再生回数は既に40万回を超えており、本県産農産物の魅力を全国の消費者に向けて広く発信できたと考えている。
続いて、地産地消の推進に係る取組について、本県では、1998年から本県独自の地産地消の取組である、いいともあいち運動を展開している。昨年度からは、これまでの取組に加え、SDGsや環境負荷低減に対する社会的関心の高まりを受け、地産地消がこれらの達成に貢献することを前面に押し出してPRする地産地消あいちSDGs推進キャンペーンを展開している。
この取組の一つとして、県民に地産地消を推進する店舗に足を運び、県産農林水産物を購入し、利用してもらうきっかけづくりを目的に、いいともあいち・地産地消デジタルスタンプラリーを実施している。本年度は500を超える店舗の参加を得て、来年2月までの5か月間にわたり実施しており、現時点で6,468人が参加している。参加店舗数、参加人数ともに昨年度を大きく上回るなど、盛り上がりを見せている。
このほか、県産農林水産物やその加工品を一堂に集めたあいちの農林水産フェアを、本年度は10月に安城産業文化公園デンパーク、11月に金山総合駅で実施するなど、イベント開催を通じた地産地消の推進にも取り組んでいる。これら地産地消の取組や県外に向けた取組により、県産農産物の需要拡大を図ることを通じて、本県農業の継続的な発展に寄与したい。
【委員】
愛知県の地産地消の取組について要望する。
愛知県産の農産物が県内、県外でどれだけ消費されたのかを数字で正確に把握するのは難しいと思う。また、答弁の内容から、イベント、SNSでのPRなどの情報発信をよく行っていると理解したが、実際にどのような効果があったかなどの振り返りも難しいと思う。
その中で、食と緑の基本計画2025では、県産農林水産物を優先して購入する県民の割合を示しており、目標値は、2020年の時点で15.4パーセント、2025年の時点では25パーセント以上と掲げている。2023年度の進捗は18.6パーセントであり、残り2年で目標値の25パーセントに達しなければならないが、現状は、県民の認知などまだ至らない部分がある。
ユーチューブの動画を見たが、非常にきれいな出来になっており、広告も出している分、認知されていると思う。その結果、しっかりと愛知県の農家がもうかっていく。県産農産物を優先して買うことに関しては、まだ課題がある。
愛知県の農家が作って、売る、要はもうかるように、今後も継続的に現在の取組を正しく振り返り、次年度の施策として生かしてもらえるよう要望する。
【委員】
地元西尾市の漁業者が抱える問題を、漁業者側の視点を含めて伺う。
10月30日に私の地元の衣崎漁業協同組合と吉田漁業協同組合の合併仮契約調印式が行われた。来春、衣崎漁業協同組合が吉田漁業協同組合を吸収合併し、将来を見据えた選択肢として、前向きに組織再編による経営基盤の強化に取り組んでいくことになる。調印式の中で、合併協議会会長である衣崎漁業協同組合の黒田勝春組合長が、「漁業者の高齢化と担い手となる若手漁業者の減少により、漁村活力の低下が著しく、また、アサリをはじめとする水産資源の減少や魚価の低迷や漁業を営む上での燃料などの経費高騰から、地域漁業の存続が危ぶまれるまでに弱体化している。今後もこの状況が続く限り、小規模漁業協同組合の存続を図ることは大変難しいと言わざるを得ない」と挨拶していたことがとても印象的だった。
先週、吸収される側の吉田漁業協同組合で唯一のノリの生産者となった中島万三樹組合長の工場で収穫したノリを、いろいろな機械を使って出荷まで準備する様子を見学したが、その中でも、吉田漁業協同組合では、40年前には約500軒あったノリの漁師が、今や1軒しかおらず、衣崎漁業協同組合でも約600軒あったものが、今や6軒であり、西三河は味沢支所、一色支所を足しても15軒しかいない。そして、後継者がいないところや、機械を更新してまで子供に跡を継がせるのは難しいと考えるところも多くある。社会実験をしてもらっているが、吉田の海面まで栄養塩が届いておらず、既に中島万三樹組合長も、衣崎側の海面でノリの養殖をしているとのことであった。
また、12月2日に半田市の海苔流通センターで行われたノリの初市を視察したところ、鬼崎漁業協同組合、大井漁業協同組合、篠島漁業協同組合、私の地元西尾市の西三河漁業協同組合味沢支所、一色支所、衣崎漁業協同組合、吉田漁業協同組合が、縦21センチメートル、横19センチメートルの単位で約380万枚を出荷した。平均価格は1枚約34円、最高値は西三河漁業協同組合一色支所の1枚157円であり、過去最高値でもあった。なお、昨年の初市では、最高値が初めて100円を超え111円、出荷数は366万枚であった。
愛知県漁業協同組合連合会によると、今年は、海水温の上昇や強風などが原因で凶作だった去年よりは期待できるとのことだったが、このところ愛知県全体では、ノリの生産量が40年前から7割減っており、昔は海苔流通センター1階の倉庫が全面天井までノリで埋まっていたものが、今は大変寂しい状況であると説明してもらい、愛知県漁業協同組合連合会役員からは、豊かな海を取り戻すのは、10年前の海ではなく、20年前の海に戻さないと、愛知県の漁業は成り立っていかないのではないかとの強い危機感を示されていた。
その一方で、2020年9月から管理運転を行ったあたりから、アサリが少しずつ年を越えて生き延びるようになり、ノリも10回摘採程度まではよい状態が続いて、その効果があること、また、放流濃度を高めてもアサリ等の二枚貝が増加すれば赤潮にはならないことも確認されており、来年度以降への強い期待と、改めて強い要望を受けた。
私も三河湾の再生はこれからが本番だと思っている。まずは、現在の社会実験が来年度も継続されるのか、総量規制基準上限に近い濃度で放流するために何がボトルネックになっているのか、社会実験の結果を踏まえた終了後の管理運転の方向性、漁業生産に必要な栄養塩類を確保するための栄養塩管理がどのようになっていくのか、さらには、現在、2022年に策定された2024年度を目標年度とする第9次水質総量削減に係る総量削減計画及び総量規制基準が運用されている中で、次期第10次計画策定時には、現在行われている社会実験の結果や漁業者の思いがしっかりと反映したものになるのか、さらには、現在Ⅱ類型となっている窒素、リンの環境基準の類型指定が、沿岸域や区画漁業権の範囲内の中だけでも現実的に漁業が営める類型指定に見直しされることがないのか、これは他局や国にも関係する大きな話であるが、まずは県庁内での見解の統一が必要であると考えている。
以上のことを実現していくために、社会実験の現状等について、9月定例議会農林水産委員会での喚田孝博委員の答弁を踏まえて何点か伺う。
一点目、現在、三河湾で実施している水質の保全と豊かな海の実現に向けた社会実験の実施状況について伺う。
年度の途中だが、特に今年度は9月から実施していること、そして、6月の第2回栄養塩管理検討会議で示された2022年度社会実験の実施結果からの考察で、ノリの色調、アサリの現存量及び肥満度に対する効果があったと考えられたが、アサリでは現存量が多くなると肥満度が低下するなど、増加した資源量を維持するために必要な窒素、リンの供給量には達していない可能性があると示唆されていたことについて、特にリンについて、今年は昨年度と比べて排出濃度が上限値に近いところでコントロールができているのか。
【理事者】
今年度の社会実験については、9月から前倒しで2年目を実施している。
水質や漁業の効果については現在調査中のため、これまでどうだったかは示すことができないが、現在、水質への悪影響は見られずに、おおむね順調に推移している。
また、放流濃度については下水道課で行っているため、まだ報告はもらっていない。2月に開催予定の栄養塩管理検討会議で明らかにしてもらうよう、下水道課と調整を図る。
【委員】
栄養塩についての社会実験の結果を検証するとともに、漁業生産に必要な栄養塩管理の在り方を検証するために設置されている愛知県栄養塩管理検討会議のこれまでの開催状況と、その中の議論で、漁業者の構成員からどのような意見が出ているのか伺う。
【理事者】
栄養塩管理検討会議の開催状況は、昨年度は1回、今年は6月26日に開催している。
6月26日に開催した2回目の会議では、1年目の社会実験の効果の検証を行った。漁業者の委員からの意見は、冬場のアサリの生き残りがよくなっており、漁業現場でも社会実験の効果を感じているため、2年で社会実験が終わることなく、継続してやってもらいたいこと、また、三河湾だけでなく、伊勢湾にも目を向けてもらい、三河湾、伊勢湾ともに豊かな海になるよう取り組んでほしいとの強い意見をもらっている。
【委員】
10月23日の公営企業会計決算特別委員会で、峰野修委員からも建設局に指摘しているが、矢作川浄化センターについて、先日、下水道課や公益財団法人愛知水と緑の公社に改めて話を聞きに行った。そこで昨年2022年11月から本年3月までの放流水のリンの負荷と窒素の負荷について、日、時間ごとの推移が分かる資料を見て、流入してくる下水の水質が日や時間などの様々な原因によって異なり、薬品を入れる量のコントロールが非常に大変だったことが、乱高下するグラフを見て感じた。
期間中に総量規制基準値を超えたのは12月の1日だけだったそうだが、薬品の効果が出るのに五時間、六時間のタイムラグがあるため、日間平均の場合は、日中に高い数字だった場合、24時までに挽回をしなければいけないことから、水質担当職員が、昨年度は二十回、三十回夜中に指示を出している、例えば12月は7回、2月は6回、勤務時間外に対応している。今年度は、窒素についても未経験の9月から実験を行っているとのことで、微生物の動き等が異なってくるため、さらに負担感があると思う。日間平均の値で管理するための微妙なコントロールは経験則によるものであり、代わりの者が対応するのも非常に難しいことから、相当なプレッシャーがあり、上限値ぎりぎりを狙って取り組むにも日間平均の管理に限界がある。
検討会議でも議論が出たと思うが、週単位、期間単位、期間平均などの運用改善が必要である。環境省令に係る制度上の問題で、本県の社会実験だけ特例扱いは難しいと承知しているが、建設局、環境局を含む県全体で職員の働き方改革の観点からも、運用改善を要望する。
2点目、来年2月の検討会議で報告される数値シミュレーションはどのようなもので、どのようなデータを使い、どのような範囲のものか、海域にどのぐらいの濃度が必要で、漁業生産に必要な栄養塩濃度がどのぐらいか、その海域で豊かな海と水質の両立が取れるベストバランスが分かるものになるのか、そして、その結果をどう取り扱うのか伺う。
【理事者】
現在、水産試験場で取り組んでいる数値シミュレーションについて、まず、水産試験場の調査データなどを基に、海の流れや水質、生物など、三河湾の環境をコンピューター上で再現する。そして、今回の社会実験における放流口からの栄養塩の拡散範囲やアサリの餌になる植物プランクトンの分布状況などを計算するとともに、浄化センターから放流する栄養塩濃度や増加させる期間を変えた場合などの様々な変化を把握しようとするものである。これについても様々なシミュレーションで得られた結果を基に、今後、漁業生産に必要な望ましい栄養塩管理の在り方の検討に活用していく。
【委員】
放流された後にどこにどのように到達して、アサリやノリの養殖にどのような効果があったか分かるものであれば、2月に報告される環境審議会の水質環境部会報告時に説得力が強まると思う。また、昨年の社会実験の実施結果の中に、漁業の状況、ノリ、アサリの状況報告があったが、むしろここが一番大事であるため、強調してもらいたい。審議会の議論についてもしっかりと確認したい。
続いて、伊勢湾について伺う。
先日、愛知県漁業協同組合連合会の人から伊勢湾の状況を聞いたが、常滑、鬼崎、小鈴谷、野間など、アサリが大変よくない状態で、社会実験の前の一色干潟のような状態とのことであった。
伊勢湾は、本県だけではないため、より広域的な調整も必要だと承知しているが、昨年10月には国土交通省中部地方整備局と愛知県主催、そして、本年9月には、中部地方整備局と三重県主催で、伊勢湾・三河湾の水産資源に必要な栄養管理や生息場、気候変動等に関するシンポジウムを開催しており、伊勢湾での機運も高まっていると思うが、三河湾の社会実験の一定の成果が確認された段階で、伊勢湾の栄養塩管理検討会議のような会議体を立ち上げてはどうか。
そこで、県内で行われている常滑市、東海市及び知多市の浄化センター、県の日光川下流浄化センターで行われているリンの増加管理運転の実施状況、現時点での効果及び次年度以降の考えについて伺う。
【理事者】
伊勢湾沿岸で行われている栄養塩管理運転の実績について、昨年度は、愛知県漁業協同組合連合会の要望を受け、県から3市に協力要請を行って了解が得られたため、四つの浄化センターで、現在の規制基準値を変えずにその範囲内でリンの増加運転を行った。実施した時期は、11月末に要請したため、準備が整った段階からとして、常滑市は10月から既に実施していたため、その他の知多市と東海市と日光川下流浄化センターについては、準備が整い次第開始し、3月末まで管理運転を行ってもらった。
管理運転の効果は、現在の規制基準値を変えずにその範囲内での管理運転であったため、目立った効果は確認できなかったが、水質の悪影響等は見られず、順調に管理運転を行ってもらった。また、調査結果は、関係の市を招いて報告会を開催し、説明するなど情報共有に努めた。
今年度は、先ほどの3市と県の日光川下流浄化センターのさらなる協力を得て、三河湾での社会実験と同様に9月から3月までの計画で行われている。その効果については現在調査中である。来年以降は、また報告会を開催し、その場で継続を依頼していきたい。
【委員】
協力してもらっている関係自治体には感謝するが、漁業や、特にアサリ、ノリにどのような効果があったのかを含めて市に報告できるように、水産試験場の人的、予算的な制限があることは承知しているが、ぜひその辺りも検討してもらいたい。
最後に、この社会実験は本年度で終了する予定であるが、豊かな伊勢湾及び三河湾の実現に向けて来年度以降はどのように考えているのか、決意を含めて伺う。
【理事者】
今後の伊勢湾を含む栄養塩管理運転については、栄養塩管理検討会議での意見や今後の社会実験の効果検証に係る議論を踏まえて検討していく。漁業者からは継続への非常に強い要望をもらっているため、我々も尽力したい。
また、来年度以降は、2027年度の第10次総量削減計画の策定を見据え、海域ごとの漁業生産に必要な栄養塩濃度の提案、管理方策、漁業生産に必要な望ましい栄養塩管理の在り方を検討していく。引き続き豊かな海の実現に向けてしっかりと取り組む。
【委員】
前置きで話した課題を一つずつ解決していくために、引き続き全力で取り組んでほしい。また、複数局にまたがる話のため、ぜひ積極的に働きかけ、県庁全体での方向性を固めてもらいたい。
続いて、養殖漁業の支援策について伺う。
今年の土用の丑の7月30日、スーパー店頭での国産のかば焼き価格は、2022年よりも一割、二割高い値段だった。1枚2,980円で、昨年より400円高い。ウナギの料理店やかば焼き店でも値上げが行われるところが多かったと聞いている。
7月26日の日本経済新聞で、熊本県の日本養鰻漁業協同組合連合会、日本養鰻漁業協同組合連合会の木下優喜代表理事会長が、「養殖に使う電気代や餌となるカタクチイワシの魚粉の価格が高騰し、コストが例年の3倍、経費は年々上昇傾向で、価格を上げざるを得ない」と話していた。結果、養殖コストの高騰が卸値に転嫁され、日本鰻輸入組合によると、養殖事業者からの池出し価格は、国産が1キログラム4,500円と、前年同期に比べて300円程度高くなった。
少し掘り下げると、大きな原因の一つがシラスウナギの価格高騰である。地元の一色うなぎ漁業協同組合によると、シラスウナギの取引価格も、10年から15年前は1キログラム80万円だったが、今は200万円から250万円まで値上がりしており、特に今年の水産庁の資料でも、前年比14パーセント上がり、1キログラム250万円になっており、5年ぶりの高値になっている。
もう一つは、先ほどのカタクチイワシの魚粉価格についてである。特にウナギ用の配合飼料は七割から八割が魚粉のため、飼料の原料となる魚粉の金額に大きく左右されるが、多くを輸入に頼らざるを得ないため、円安が大きく影響していること、中国での需要の高まりがあること、また、エルニーニョ現象により、魚粉の主な輸入先のペルー沖の海面水温が上昇し、魚粉の原料となるカタクチイワシの漁獲量が減少し、ペルーで例年4月下旬から7月末頃まで行われている冬漁が、生育の遅れから操業が行われなかったことが国際価格に大きく影響していると言われている。
財務省発表の魚粉輸入実績によると、10月分の市販ベース価格は1キログラム252円、前月の9月分は257円で、4月の約210円から値上がりが続いており、これは2021年1月が140円以下だったものの値上がりが続いている状況である。10年前と比べるとおよそ2倍となっており、中でも養魚飼料の指標となるペルー産プライムグレード魚粉の国内取引価格は、6月中旬時点で1キログラム320円から340円であり、中心値は6月上旬までに比べ17パーセント高く、記録を遡ることができる2014年9月以降、約8年半ぶりに最高値を更新し、2020年初めの直近安値に比べて約9割高い状況である。
一色うなぎ漁業協同組合で実際に配合飼料の販売価格を聞いたところ、10年前は1袋が20キログラムで6,500円だった配合飼料が、今は1袋9,500円から1万円で、3,000円近い値上がりとのことであり、養殖事業者がコストの大幅な増加に直面していることを確認した。
これらのシラスウナギの仕入価格と配合飼料の状況を、一色うなぎ漁業協同組合の場合、個人の養鰻業者の平均的な池入れが35キログラムであるため、シラスウナギの仕入れの時点で、昔と比べると1キログラム80万円が250万になったため、約170万円プラス35キログラムを掛けると5,950万円の負担増である。1キログラムのシラスウナギについては、約0.2グラムで5,000尾程度で、出荷するためには1,000倍の200グラムから250グラムまで育てるため、餌の飼料効率から考えると、1キログラムのシラスウナギを1トンまで育てるには約1,400キログラム、つまり70袋以上が必要だと言われている。そのため、1袋6,500円が9,500円に3,000円値上がりしたとすると、1キログラム当たりのシラスウナギで21万円の負担増、35キログラムを掛けると735万円の負担増である。平均的な事業者で、光熱や資材、人件費の値上がり分以外で約6,685万円の負担増となる。
このような状況を受け、本年5月には、一色うなぎ漁業組合、そして、豊橋養鰻漁業者組合等で構成される愛知県養鰻漁業者協会から県に対し、養鰻業における飼料価格高騰対策を求める要望書が提出されている。
本県においては、ウナギだけでなく、日本一の生産量を誇る豊川市を中心とした養殖鮎や絹姫サーモンが有名だが、マスの養殖も盛んである。全国養鱒振興協会の会長理事であり、愛知県淡水養殖漁業協同組合の代表理事組合長である小堀彰彦会長は、6月13日の日本経済新聞の記事で、「魚粉の割合変更や代替品利用の取組を紹介した上で、打てる手は全て打ってきたが、なすすべがないのが現状である、養殖魚の需要は高いが、さらなる値上げも避けられないのではないか」とコメントしている。
このように多くの県内の養殖事業者がコストの大幅な増加に直面し、大変厳しい状況となっている環境について県としてどのように現状を把握し、どう認識しているのか。
【理事者】
養殖用配合飼料の価格は今年4月頃から急激に上昇し、9月の平均価格は、前年同月と比較して約2割増しとなっている。配合飼料の価格上昇は、原料となる海外産イワシ類の不漁や急速な円安などが要因と言われており、このまま続いた場合、養殖業者の経営への影響が大きい。
飼料価格高騰が経営に及ぼす影響を緩和するため、国では、漁業経営セーフティネット構築事業を推進している。県においても、養殖業者の経営安定のため必要な支援を検討している。
【委員】
活鰻の価格が上がると、外国産にも負けることになり、消費者の負担も増える。買い控えが起これば、業界全体が沈下することとなる。
本年2月13日の記事によると、共同通信の取材に対し、21県が、魚粉飼料の価格高騰に対して養殖業者が購入する配合飼料高騰分を独自で助成支援すると明らかにしており、私が確認しただけでも、これまで国の交付金等を活用して、静岡県、岐阜県、東京都、宮城県、福島県、長野県、滋賀県、和歌山県、佐賀県など、多くの都道府県で独自の支援策が展開されている。内容として多いものが、上限額の範囲内、対象期間内での国のセーフティネット事業補塡分を差し引いた額に対しての一定割合の補助や対象期間中の飼料購入料に対し、1キログラム当たりの支援単価と支援割合が設定された補助だと認識している。
一色うなぎ漁業協同組合では、養殖用配合飼料の漁業経営セーフティネットは大多数が既に利用しているとのことであるため、ぜひ他県の事例等を参考にし、交付金等を活用し、養殖業者にとって今後も前向きな事業を経営できる制度設計をお願いしたい。
最後に、10月末にはクロマグロの完全養殖で有名な近畿大学の水産研究所が、水産総合研究センターの飼育技術を活用し、ウナギの完全養殖に成功したとの報道があった。最も難しい卵からシラスウナギまで育てる技術は、現段階では小型の水槽のみで、大量生産できるめどは立っていないとのことであったが、ぜひ本県の内水面漁業研究所も、環境体制を整えて、ウナギの人工飼育の生産研究にもこれからさらに力を入れてもらいたい。
【委員】
大きく二つ伺う。
まず一つ目に、施設園芸における農業用諸資材の高騰対策について伺う。
これは、先日、中村竜彦議員からもうかる農業に変えるための施策についてとの一般質問があった。まさにこれからの農業のあるべき姿として、生産性の向上、省力化、環境への負荷軽減を図りつつ、持続可能なもうかる農業を推進していく必要があるものと私も同感の思いである。
一方で、外部的要因による急激的な経営への影響については、急場しのぎであったとしても、しっかりと対応してもらわなければならない。
現下の物価高騰による農業用諸資材の高騰対策は必要不可欠である。施設園芸は、とりわけこうした燃油価格をはじめとした農業用諸資材の高騰が与える影響は大変大きい。本県の農業産出額の約3割を有する施設園芸を守るためにも、しっかりとした対応が必要である。
そこで、現在の燃油価格の動向についてどのような状況か伺う。
【理事者】
野菜、花き、果樹の施設園芸が盛んな本県では、園芸用施設、いわゆるハウスの設置実面積は2,576ヘクタール、2020年度だが、そのうち加温設備、暖房の設備があるものについては1,798ヘクタールで、約7割を占めている。こうした暖房に用いる主要な燃料である農業用A重油の価格は、世界情勢や為替などの影響を受けやすく、上昇と下落を繰り返しているが、特に2021年以降は、ウクライナ情勢や円安の影響によって価格が上昇している。
具体的には、暖房の需要期である10月から翌年3月までの6か月間の全国の農業用A重油の価格を比較すると、2020年から2021年は1リットル当たり75円から87円台であったが、翌年の2021年10月から2022年3月には100円から111円台へと急騰した。2022年から2023年3月までは107円から108円台で高止まりしており、直近の本年10月については111.8円で、2020年の同月比で47パーセント高となっており、高い水準が続いている。
【委員】
直近10月は1リットル当たり111.8円とのことで、高止まりの状況にある。
これまでにも、こうした燃油高騰対策として、国では施設園芸等燃料高騰対策事業、また、県独自として、臨時的措置だが、施設園芸用燃料価格高騰対策支援金として取り組んでいる。
今、燃料の需要期を迎えており、これは生産者も危惧している。県としてどのように考えているのか。
【理事者】
施設園芸については、冬季の暖房に多くの燃油を使用して、経費に占める燃料費の割合が高く、高騰の影響は大きいため農業経営を圧迫している。このため、施設園芸農家を支援する必要がある。
具体的な対策として、まず、燃油価格高騰の影響を受けにくい経営構造への転換を図る必要があることから、国の産地生産基盤パワーアップ事業や県独自のあいち型産地パワーアップ事業により、ヒートポンプや保温のための二重被覆など、燃油の使用量の削減に効果的な設備の導入に対し支援を行っている。
また、燃油価格の高騰が経営に及ぼす影響を緩和するため、燃料価格が一定の基準を超えた場合、国と農家が積み立てた基金から補塡金を交付する国の施設園芸等燃油価格高騰対策・セーフティネット構築事業を県として推進している。この事業により、2021年度には828戸、約5億4,000万円、2022年度は905戸、約6億5,900万円が交付された。今年度も936戸が参加をしており、燃油が高騰し始めた2020年度の358戸から約2.6倍と、大幅に参加農家が増加している。
さらに、2021年度、2022年度には、国の新型コロナウイルス臨時交付金を活用し、県独自の愛知県施設園芸用燃油価格高騰対策支援金を補正予算により実施し、園芸用施設の暖房に使用した燃油購入費用の一部に支援を行った。それぞれ延べ約7,000件の申請があり、2021年度は約7億3,300万円、2022年度は約8億7,700万円の支援金を交付した。
なお、本年度は、政府が令和5年度の補正予算に物価高騰影響緩和対策を盛り込んだことを踏まえ、本県も、燃油価格高騰の影響を受ける施設園芸農家に必要な支援について検討する。
【委員】
前向きに検討しているとのことであるため、成果をお願いしたい。
また、こうした燃油高の高騰だけでなく、ミカン用のマルチなどの資材も3割ほど上昇しており、生産者にとって厳しい状況であるため、こうした資材等の対策についても善処してもらえるようお願いする。
続いて、2点目の地域の漁港、漁村の活性化対策としての海業の推進について伺う。
令和4年3月に閣議決定された、新たな水産基本計画並びに漁業漁場整備長期計画において、漁港における海業の推進への新たな制度が示された。聞き慣れない海業であるが、この長期計画では、令和8年までの成果目標として、漁村の活性化により都市漁村交流人口をおおむね200万人増加させる。漁港における新たな海業等の取組をおおむね500件としており、昨年度、全国で12地区がモデル地区として選定されている。
そこで、海業とはどのような事業なのか、その概要について伺う。
【理事者】
海業とは、漁村の人々が海や漁村の価値や魅力を活用することにより、地域のにぎわい創出や所得の向上、雇用機会の確保などを図り、漁村の活性化につなげる取組である。
具体的には、漁港内における漁協や民間企業が運営する地元の魚の直売所や食堂、養殖や漁業体験などの取組が挙げられる。
【委員】
こうした取組は、これまでもそれぞれの漁港について、漁港の活性化あるいは水産振興として様々な事業が行われている。漁港における海業の推進を目的とした漁港漁場整備法の一部改正によってどのようなことが可能になったのか。
【理事者】
漁港漁場整備法の一部改正により、従来認められていなかった漁港施設の貸付けや漁港内の用地や水域の長期にわたる占用が可能となり、漁港で海業が安定的に取り組めるようになった。
【委員】
漁港施設としての防波堤、岸壁、荷さばき場等、水面等を長期間にわたって活用した事業が行えるとのことである。特にこうした漁港関連の行政財産が通常貸付けをしようとすると、普通財産に変えなければ貸付けができないものが、行政財産のまま、民間事業者等に貸付けができるようになったとのことで、民間活力を用いた取組ができるようになっていくと思う。
しかし、あくまでも漁港であるため、漁業上の利用を前提とした事業でなければならない。漁業活動に支障があるようなものは当然認められないと思うが、海業を進めていく上で、新たな事業を行う事業者と漁を営む漁業者と漁港管理者との間の調整が必要になってくる。具体的に事業を進める上でどのような事業のフローとなっていくのか。
【理事者】
海業を進めるには、まず、漁港管理者が漁業者の意見を聞き、漁港施設等に関する活用推進計画を策定する。そして、次に、計画に沿った海業を実施しようとする事業者が具体的な事業計画を作成し、漁港管理者へ申請を行い、認定を受けることで事業が進められる。
【委員】
こうした海業を、昨年度、全国のモデル地区として12か所が選定されているが、県内ではどのような動向にあるのか。
【理事者】
モデル地区とは、これから海業に率先して取り組む意欲ある地区について、今年1月、水産庁が募集し、選定したものである。
本県では、市町や漁協等に周知や照会をしたが応募がなかったことから、モデル地区はない。
【委員】
私も地元の漁業協同組合に行き、海業についてどのような認識にあるのか聞いた。組合長は知っていたが、現場の人々をはじめ、漁師はそのようなことは知らないとのことであり、まだ一部の人しか知らないのではないか。
ただし、海業の事業を進めていく上で、漁村あるいは漁港のいろいろな活性化の取組が見えてくる部分が多くあると思うが、県として、海業の推進をどのように図っていくのか。
【理事者】
漁村のにぎわい創出や所得の向上、雇用機会の確保などは水産振興上重要な課題と考える。
このため県では、昨年度、水産庁の職員を招き、漁業関係者を対象に海業に関する説明会を2回開催し、制度の周知に取り組んでいる。今後の海業の推進に当たっては、関係市町や漁業協同組合をサポートするとともに、漁業協同組合等が実施する施設整備への支援など、漁村の活性化に向けしっかりと取り組む。
【委員】
海業という事業がしっかりと伝わってない部分もあると思うし、これからいろいろな機会を設けて取り組んでもらえると思うが、12月4日に、水産庁から新たな海業の推進に取り組む地区の募集が発表されている。
愛知県内における漁港、漁村の地区においても、本当にいろいろな形での取組の可能性があると思えるところが多くあるため、これを機会にしっかりと周知してもらいながら、漁港の活性化に向けた取組をお願いする。
【委員】
気候変動による愛知の海の異変と影響への対応について伺う。
2023年の日本は、災害級とも言われる猛暑に見舞われ、地球温暖化ではなく、地球沸騰化という言葉も飛び出した。日本近海では、世界平均よりも水温の上昇率が高くなっているとの話もあり、この気候変動により農産物や水産物への影響も大変危惧される。
本県でも、本来は南方に生息し、三河湾の海には生息しないはずの魚の水揚げが増えたとの話も聞くため、今、愛知県の海で何が起こっているのか、三河湾、伊勢湾の海水温の変化や生息する水産動植物の状況など、どのような異変が起きているのか。
【理事者】
国の報告によると、日本近海の平均海面水温は、2020年までの100年間で1.19度上昇している。また、本県沿岸でも、県が三河湾に設置した自動観測ブイの観測結果から水温の上昇が認められ、特にノリ養殖が始まる秋季には平均海面水温が10年当たり0.5度と、顕著に上昇している。こうした海水温の上昇など近年の海洋環境の変動により、水温の低い冬に行われるノリ養殖では養殖期間が短くなっている。
また、魚類では、暖かい海を好むマダイやサワラなどが増加する一方、冷たい海を好むイカナゴが大きく減少するなど、採れる魚や採れる場所が変化している。
【委員】
確実に異変が起きていることは、今の答弁で理解できた。
これらの海の異変が漁業、養殖業に与える影響は大きいと推察するが、海の異変によって漁業経営者からは、例えば、漁獲量の変化や経営状況など、どのような意見があるのか。
また、漁業関係者の海の変化への対応について取組などがあれば伺う。
【理事者】
ノリ養殖については、秋の水温低下が遅れていることから、養殖開始時期が25年前と比較して10日ほど遅れ、養殖期間が短くなっているとともに、ノリを食べる魚が漁場にとどまり、食害が増加しているなどの影響が見られている。海の栄養塩不足とも相まって、ノリの生産量は減少しており、漁業者からは、今後の経営に対する不安の声が聞こえている。このような海の変化への漁業者の対応について、ノリ養殖では、高水温に強い品種の使用や、ノリが魚に食べられないよう防除する網の設置などが行われている。一方で、漁船漁業の漁業者からも海の変化を実感する声を聞いている。
今後の取組について、漁業者は、今増えているマダイやサワラなどの大きな魚を漁獲できるよう網目を大きくする、イワシ類については、限られた資源を有効に利用するため、大きく成長するのを待って漁獲するなど、資源管理に取り組んでいる。
【委員】
地球温暖化の影響がいかに深刻かつ広範囲に及んでいるかが浮き彫りになっている。
県として、気候変動による水産業への影響に今後どのような対応をしていくのか。
【理事者】
県の取組について、漁業者が漁場環境の変化を的確に把握し、効率的な操業ができるよう、自動観測ブイにより連続観測した水温、塩分など漁場環境情報や、調査船による水産資源の動向をウェブページで迅速に発信するなどの支援を行っている。
ノリ養殖では、国の研究機関と連携したより高水温に強い品種の開発や、効果的な食害対策手法の開発などの研究を行っている。また、漁業協同組合が行う食害防除網の導入も支援している。
イワシ類を採る漁業では、効率的な操業が行えるように、人工衛星のデータを活用した漁場の予測技術の開発に今年度から取り組んでいる。さらに、アサリやカキ、ワカメ養殖の導入による経営の多角化の推進にも取り組んでいる。
これらの取組により、海洋環境の変動に対応できる、安定した漁家経営の実現を目指していく。
【委員】
いろいろな取組をしていることを初めて知った。地球温暖化の海水温の上昇は続くと思うため、いろいろな形で施策を推進してもらうようお願いする。
【委員】
豚熱の発生状況とアフリカ豚熱の対策について伺う。
2018年に国内で26年ぶりに発生した豚熱により、2020年、再び清浄国認定を取り消された。そこで、豚及び野生イノシシにおける豚熱の発生状況について伺う。
【理事者】
全国の豚での豚熱発生状況については、2018年8月の岐阜県での発生を皮切りにして、20都県で89事例が発生しており、36万頭以上の豚が殺処分されている。直近では、本年8月に佐賀県で、九州では初となる事例が発生している。
本県では、2019年2月の豊田市での発生をはじめとし、12月の田原市での発生まで、断続的に18事例の発生があり、約6万5,000頭の豚が殺処分されたが、その後は、豚熱ワクチンの接種や、国が定めた飼養管理衛生基準の遵守徹底により、2019年12月を最後に4年間、新たな発生はない。
【理事者】
全国の野生イノシシでの豚熱発生状況については、農林水産省の公表資料によると、2018年9月に岐阜県で発生以降、先月末時点で、北海道、青森県、千葉県、岡山県、愛媛県、九州7県及び沖縄県の13道県を除く34都府県で、6,593頭の陽性個体が確認されている。
本県では、2018年12月に犬山市で最初の発生が確認されてから、2023年12月8日までの累計で、陽性個体数が186頭、陽性率は3.7パーセントである。
今年度4月1日からでは、陽性個体数が12頭、陽性率が1.7パーセントであり、陽性率は低下している。なお、野生イノシシの生育域が本県とつながっている岐阜県や静岡県でも、感染確認が続いており、本県でも、豚熱検査や経口ワクチンの散布など、豚熱対策を引き続き継続する。
【委員】
豚は直近の発生はなく、イノシシは、近隣県を含め確認されているとのことだが、国の疫学調査の結果によれば、違法に持ち込まれた食品が家庭ごみとして廃棄される、行楽地などで廃棄されることにより、野生イノシシが豚熱に感染した可能性が否定できないとされている。2018年の岐阜県での発生は、豚熱発生国由来のハム、ソーセージ等輸入禁止品の持込みによるものと推測されているが、現在でも野生イノシシの感染が確認されている地域では、イノシシ由来のウイルスが人や作業器具、あるいは野生動物を介して養豚場内に侵入し、発生するリスクを抱えている状況にあるとのことで、9月定例議会の本委員会でも峰野修委員より野生イノシシの対策に関する質問があり、野生イノシシ対策としては、経口ワクチン散布にしっかり取り組む話があった。
また、養豚場対策としても、豚へのワクチン接種及び飼養衛生管理基準の遵守により徹底を行うことで、引き続き野生イノシシと養豚場の両方で豚熱対策を推進してもらいたいが、現在、豚熱と症状は似ているものの、全く異なる病原ウイルスによるアフリカ豚熱がアジア圏で猛威を振るっている状況である。東アジアの近隣諸国で感染が確認されていないのは、日本をはじめとする数か国だけだと聞く。有効なワクチンもなく、万が一、国内で感染が広がれば、殺処分するしかない状況である。
コロナ禍も明け、中部国際空港では、コロナ禍前までとはいかないものの、国際線の乗降客数が増加しており、再来年にはアジア競技大会が本県で開催される予定となっているため、アジア圏から多くの人が訪れる。
そこで、アフリカ豚熱について、中部国際空港でウイルスの発見が数件あったことも聞いているが、愛知県での確認状況と今後の豚、イノシシにおける対策について伺う。
【理事者】
アフリカ豚熱について、国内の養豚場、野生イノシシともにウイルスは確認されていない。
しかし、空港や港に設置されている国の動物検疫所では、不正に持ち込まれた豚肉製品の一部からアフリカ豚熱のウイルスが検出されている。動物検疫所のホームページによると、中部国際空港では2018年10月以降、20例の遺伝子検査陽性事例が確認されており、そのうち2例については感染力のあるウイルスが確認されている。
今後の対策としては、養豚場では、豚熱対策と同様に、養豚関係者に対して発生国への渡航自粛の啓発を行うとともに、養豚場の飼養衛生管理基準を遵守するよう指導を行う。また、必要に応じて、家畜飼養衛生管理強化対策費補助金により、養豚場の野生動物侵入防止柵等の設置を支援している。
一方、農林水産省に対しては、本年7月5日に、大村秀章知事から勝俣孝明農林水産副大臣へ水際対策の強化を要望した。
【理事者】
野生イノシシ対策については、アフリカ豚熱が国内に侵入した場合の対策となることから、国は、昨年度より、ヨーロッパ諸国の先行事例を参考に、野生イノシシにおける防疫措置の具体化のための基本方針を現在策定中であり、今年度中に公表される予定である。これを受けて、野生イノシシの生息が確認されている各都道府県は、マニュアルを作成し、万一の発生に備えた防疫体制の強化を図ることとされている。
国の基本方針では、特に感染確認後の防疫措置として、感染した死体の速やかな回収と処分、陽性個体確認地点周辺での積極的な死体捜索という、野生イノシシでは新たな対応が示されると聞く。こうしたことから、作業実態を確認するために十分な演習が必要である。
来年度は、国の野生動物アフリカ豚熱防疫対策構築事業を活用し、本県でも、現地演習を計画するとともに、演習の課題を踏まえ、本県版のマニュアルを速やかに作成し、公表する方向で検討している。今後は関係機関と連携し、本県の実情に合った体制強化に向けて早急に取組を進める。
【委員】
豚、イノシシともに感染はなく、それぞれ対策を講じているとのことだが、一点要望する。
地元の養豚業者、養豚場でも、靴底の消毒マットの設置や車両の消毒をはじめとした飼養衛生管理基準の徹底など、ウイルスの侵入を防ぐための厳格な対策が実施されている中で、養豚、農場をはじめ様々な業種で技能実習生や特定技能の外国人労働者が非常に増加している。この人たちが、郵便の検疫では引っかかるものの、母国の家族から食品が送られているとも聞く。異文化背景を持つ労働者に対する適切な情報提供と教育は、疾病管理の効果をさらに高めるために必要不可欠だと考える。県としても、国内にある外国人労働者の監理団体または特定支援機関に対して、アフリカ豚熱を国内に持ち込ませないよう、食品の持込みを防ぐための広告や周知活動を強化してもらうことを要望する。
【委員】
水産業における課題の抽出、解決に向けての取組について伺う。
先ほどから水産業でも漁獲量や担い手、新規就業者減についての様々な取組の話があったが、基本的な計画について伺う。
まず一つ目として、本県の水産業振興のために2021年3月に策定された愛知県漁業振興計画がどのような経緯で策定されたのか。
【理事者】
愛知県漁業振興計画策定の経緯について、本県の水産業を取り巻く環境が、水産資源の減少、漁場の喪失、後継者不足など厳しさを増しており、2020年12月に漁業法が改正され、水産資源の適切な管理、水産業の成長産業化の両立が求められるなど、時代の変化に対応した施策が必要となっていた。また、愛知県漁業協同組合連合会からも、漁業者の厳しい現状を切り開くため、水産施策の一層の充実を求める要望を受けていた。
愛知県漁業振興計画は、このような状況に対応し、将来に向けて、本県の水産業が持続的に発展していくため、食と緑の基本計画2025の個別計画として、2021年から10年間、重点的に取り組む水産振興施策として取りまとめたものである。
【委員】
愛知県漁業振興計画の位置づけとして、食と緑の基本計画2025の個別計画として、水産振興のために取り組む施策を示すこと、社会情勢や国の制度ごとの国の制度の改正で、また5年ごとの食と緑の基本計画の策定に伴って見直しをしていくこと、計画期間が2021年から2030年までと理解した。
愛知県漁業振興計画の第4章で、三つの柱として、豊かな水産資源を育む海づくり、漁業者がもうかる経営体づくり、そして、未来につながる水産業の構造改革がある。その三つの柱に、それぞれ課題解決として取り組むべき重点施策が12点あり、また、その下に25の個別項目があるが、特に成果があった主な項目の進捗状況について伺う。
【理事者】
一つ目の柱である豊かな水産資源を育む海づくりでは、新しい漁場づくりとして、干潟、浅場の造成面積を昨年度から倍増させ、毎年10ヘクタールを造成している。また、栽培漁業の強化として、ハマグリなど新たな魚種を生産、放流するため、県栽培漁業センターで新施設を建設する計画であり、昨年度は基本設計、本年度は実施設計、来年度は建設工事に着手して、2025年度の完成を目指している。
二つ目の柱である漁業者がもうかる経営体づくりでは、経営の安定化を図るため、カキやアサリの養殖技術の導入による複合経営の推進や、ノリ養殖における魚や鳥による食害対策、漁船など設備投資への支援を計画の初年度から進めている。
三つ目の柱である未来につながる水産業の構造改革では、漁業協同組合の合併を推進しており、来年4月1日には西尾市で1件の漁業協同組合合併が実現する。また、地域の拠点となる共同利用施設や漁港の整備などへの支援を強化しており、本年度から、南知多町で津波避難施設の整備への支援にも取り組んでいる。
計画に位置づけた主な施策は、いずれもおおむね順調に進捗している。
【委員】
愛知県漁業振興計画での2025年の目標として、産出額を現状の390億円から20億円増の410億円としているが、食と緑の基本計画2025において、この金額目標を設定した理由について伺う。
【理事者】
愛知県漁業振興計画は食と緑の基本計画2025の個別計画であるため、その目標値もそれに合わせている。漁業経営が不安定になっている中、漁業収入の増加、安定を目指すことから、目標値は、本県の漁業及び養殖業の総産出額としている。
本県では、海面及び内水面で漁業や養殖業が行われており、いずれの生産者も減少傾向にある中で、愛知県漁業振興計画に位置づけた施策によって、まず、海面で行う漁業や養殖業にあっては現状の産出額の10パーセント増、内水面で行う漁業や養殖業にあっては現状の産出額の維持を目標とし、これらを合わせた410億円を目標値として設定した。
【委員】
今回の愛知県漁業振興計画は、概要があるため課題などは見やすいが、漁場の整備面積、栽培漁業のセンターにおける種苗生産数量、海面漁業、養殖業の経営体当たりの産出額は、答弁のとおり目標値があるものの、重点施策12点の全体の方向性が網羅されているようには見ることができない。細かな個別項目ごとの目標値について、県としてどのような取組を考えているのか、どのように判断しているのか。
【理事者】
目標値について、数値で目標を立てることができるものは目標値を立てて推進している。今後、こうした410億円の目標に対しては重点的に推進していくべき課題があると思うが、まず、愛知県漁業振興計画の主な施策について引き続き着実に取り組む。
漁業者のニーズに対してスピード感を持って対応するため、幾つかの施策については今後、重点的に取り組んでいく。
漁業者にとって最大の関心事は、漁場の栄養塩不足による漁場の生産力の低下であり、現在行っている社会実験の効果を踏まえ、今後も重点的に取り組む。併せて水産資源の増大にも取り組むため、先ほど答弁した栽培漁業センターの新施設において、ハマグリ等の新規魚種の生産及びナマコ等の既存業種の増産を行う。
また、近年の環境変動に対応するため、漁業者はこれまで以上に資源管理や効率的な操業を行う必要があり、今後はこれらの取組に必要となる水温や塩分などの漁場環境情報を迅速に発信するなどの取組を強化する。
こうした施策を重点的に取り組むことにより、収入の増大や経営の安定化、さらには新規漁業者の就業者の確保にもつなげることで、本県の水産業の持続的な発展を目指す。
【委員】
最後に要望する。
動向調査資料として水産業の動き2023を出してもらっている。そこには、かなり細かな前年度の状況が出ている。その中で、愛知県漁業振興計画については、自治体で考えると総合計画のようなものだと思う。総合計画の中にはそれぞれ基本目標などがあり、その下にアクションプランがある。それが先ほどの25の個別項目であると考えると、その一つ一つの動きを水産業の動きに反映をしてもらえると、私たちだけでなく、漁業関係者にも、非常に見やすくなる。そのようなことなどを今後も水産業が明るくなるような形で進めてもらいたい。
【委員】
愛知県の農業イノベーションプロジェクトについて伺う。
6月定例議会、9月定例議会と続けて農地集約や新規就農、農業出荷額をいかに大きくするかを議論した。結局のところ、これらを減っていかないようにすることがまず一つであったため、そのような議論をしたが、逆に大きくしていく、新しく何かを付け加えていく動きをしなければならない。
そういった中で、農業総合試験場や水産試験場で新たな技術や研究を通じて、農家や漁業者にいろいろな情報を提供してもらっていると思うが、地球温暖化となると、今年の米の出来栄えはあまりよくなく、高温が原因であったと聞いている。農業総合試験場で品種改良してもらった愛知123号が、一等米の場合は愛ひとつぶと呼ばれているが、今回は一等米が非常に少ないとのことである。白濁しにくい品種というブランドをいかにしっかりと確立していくかが大切である。
農業総合試験場や水産試験場は、相当な時間をかけて新しいものを作っているが、現状では、あまりにも長い時間をかけていられないと思う。そのような意味では、県でほかの局と連携してやっている、あいち農業イノベーションプロジェクトがある。具体的には、スタートアップと農業総合試験場を絡めることなどだが、あいち農業イノベーションプロジェクトの現状と成果について伺う。
【理事者】
あいち農業イノベーションプロジェクトは、県農業総合試験場とスタートアップ等との共同研究体制の強化を図り、農業分野におけるイノベーションの創出を目指すものである。
2022年度に、スタートアップ等19社、18課題を公募して選定し、このうち6課題は先行的に昨年の10月から、残りの12課題は今年度から着手し、農業総合試験場を中核とする共同研究開発を進めている。まだ始めて間もないプロジェクトだが、収穫作業の負担を軽減する農業用アシストスーツのように、既に県内で生産者向けのテスト販売を開始している取組もある。
また、環境負荷の少ない栽培方法で生産された米の価値を消費者に分かりやすく伝えるための仕組みづくりに取り組む実証試験について、12月4日に知事から記者発表するなど、現場の実証に進む成果が幾つか出ている。
【委員】
まだ始めたばかりだが、19社のうちの18課題について、特にその6課題について、先行の研究開発が始まったとのことである。
収穫作業の際の農業用アシストスーツの販売も始めたとのことだが、スタートアップは県内の企業や農業者だけではないと思うが、その比率について伺う。
【理事者】
スタートアップ等については、県内の企業だけではなく、県外の企業も幾つかあり、約半数が県外の企業である。ただし、毎月ミーティングを行うなど情報交換は密にしており、また、スタートアップの人が、県内の農業総合試験場に来て実際に実証試験を行うなど、距離に関係なく、しっかり県内農業者のために試験をやってもらう体制を取っている。
【委員】
経済産業局でのスタートアップについて聞いたが、愛知県ではSTATION Aiという大きな拠点を作り、知見を集めようとしているが、ここで起業してもらわなければ意味がない。なるべく共同開発のように、研究している農業総合試験場でイニシアチブを取ってもらい、しっかりとした結果を残すようお願いする。
また、先ほど、事業として農業用アシストスーツの話があったが、本来は、効率化もさることながら、農業に向くような取組があるとよいと思うが、いずれにしても、イノベーションにはそれなりの時間もかかる。そのため、18課題のうちの6課題は研究開発が進んでいるとのことだが、まだ成果も出ていないものについても、いつ成果が出るのかは見えないと思う。
国家事業の予算を用いたプロジェクトだと承知しているが、いつまでやっていけるのか、プロジェクトの期限はあるのか。
【理事者】
現在、本事業は、デジタル田園都市国家構想交付金を財源に実施しており、来年度までの3年間で事業予算がついている。
その後、どのような形で行うかについては、現在、予算編成中であるが、本県ならではの取組を続けることにより、農業分野にイノベーションを次々と生み出す動きを止めることなく進めていきたい。
【委員】
今の話も当然のことながら継続してもらわないと成果が出ない。出るか分からないが、しなければならない。経済産業局の知の拠点でも、同じような研究開発を予算をつけてずっと続けている。
答弁の内容によると、少なくともあいち農業イノベーションプロジェクト自体は、国庫の補助をもらう交付金で行っている事業のため、交付金が切れてしまえば、何のためにこれまでやっていたのかとなる。
そのことについては、何らかの形で残していくべきである。国に交付金が継続してもらえるようお願いすることも一つだと思うが、なくなった場合のことを考え、県として単独で何か対応できるのか考えるべきだが、どうか。
【理事者】
本事業は、現在、交付金を財源として実施しているが、内容からも、交付金が止まった後は全てなくすのではなく、農業イノベーションを創出する事業は継続的にしっかりと行う必要があるため、交付金が終わった後も続けられる仕組みを考える。
【委員】
その考えの下で、予算はしっかりとした裏づけを持って進めてもらいたい。また、イノベーションに限らず、先ほどの農業総合試験場や水産試験場に対する費用も、予算をしっかり確保してもらい、新しいことをいきなり農業者のみではやれないため、愛知県としてしっかりバックアップしてもらうことが、新規就農者や後継者のやる気につながると思うため、そのような部分についても、来年度予算でしっかりと対応してもらうようお願いする。
( 委 員 会 )
日 時 令和5年12月11日(月) 午後0時59分~
会 場 第2委員会室
出 席 者
佐藤英俊、村瀬正臣 正副委員長
峰野 修、いなもと和仁、近藤裕人、柳沢英希、杉浦友昭、高橋正子、
長江正成、桜井秀樹、藤原 聖、井上しんや、喚田孝博 各委員
農業水産局長、農林水産推進監、農業水産局技監、農政部長、
畜産振興監兼畜産課長、
水産振興監、農林基盤局長、同技監、農地部長、林務部長、関係各課長等
委員会審査風景
<付託案件等>
○ 議 案
第118号 令和5年度愛知県一般会計補正予算(第5号)
第1条(歳入歳出予算の補正)の内
歳 出
第6款 農林水産費
第120号 令和5年度愛知県県有林野特別会計補正予算(第1号)
第134号 工事請負契約の締結について(たん水防除事業新大江
地区排水機場機械設備工事)
第143号 損害賠償の額の決定及び和解について(西部家畜保健
衛生所)
第156号 愛知県森林公園の公園施設の指定管理者の指定について
(結 果)
全員一致をもって原案を可決すべきものと決した議案
第118号、第120号、第134号、第143号及び第156号
○ 閉会中継続調査申出案件
1 農林水産業の振興について
2 農地関係の調整及び土地改良について
3 緑化の推進について
4 農業水産局、農林基盤局、海区漁業調整委員会及び内水面漁場管理
委員会の行政運営について
<会議の概要>
1 開 会
2 議案審査(5件)
(1)理事者の説明
(2)質 疑
(3)採 決
3 委員長報告の決定
4 一般質問
5 閉会中継続調査申出案件の決定
6 閉 会
(主な質疑)
《議案関係》
【委員】
豚熱の予防的なワクチン接種により生じた損害賠償の経緯について伺う。
【理事者】
家畜伝染予防法では、愛玩用の豚でも豚熱ワクチン接種の対象となっており、マイクロブタについては、現在、家畜保健衛生所の職員である家畜防疫員が接種を行っている。
本年4月に、常滑市内にあるマイクロブタと触れ合いができる施設に西部家畜保健衛生所の職員3人が訪問し、1人が豚を固定した上で、別の1人が耳の付け根部分に注射針を刺して豚熱ワクチンを接種した。接種直後に手足をばたつかせる神経症状と呼吸困難を起こしたため介抱したところ、落ち着きを取り戻したが、自力で起きることができなくなった。現場では治療ができなかったことから、施設の従業員がかかりつけの動物病院へ連れて行き、そのまま入院治療を受けることになった。当該豚は、退院後も首が左側に曲がったままで、自力歩行ができずに、食事と排せつにも人の介助が必要になった。
ワクチン接種は所定の用法・用量に従って行ったが、接種直後に異常を呈していることから、ワクチン接種と豚の異常には因果関係があり、職員が行った注射方法に過失があったと判断し、相手方に対して損害賠償を支払うこととなった。
【委員】
因果関係との話があったが、最終的に因果関係があるとどの点で判断したのか。
【理事者】
接種直後に手足をばたつかせる神経症状と呼吸困難が見られたこと、また、退院後も首が左側に曲がって起き上がれない状態だったが、介助により立ち上がることができるようになり、首の曲がりや症状が徐々に回復した可逆性を考えると、注射薬液による影響ではなく、注射針によって神経を物理的に傷つけたことが原因である可能性が高い。
【委員】
接種を行った人は、新人なのか、ベテランなのか。また、今回の支払い金額の妥当性と、過去にも同じような事案があったのか伺う。
【理事者】
まず、接種した職員の経験について、2019年10月に本県で豚熱ワクチン接種が開始された当初から4年以上経験した者であり、十分な経験を有していた。
次に、損害賠償額の妥当性について、実際に発生した損害を積み上げたものであり、その積算の内容は4項目である。
一つ目は、障害により販売価格が低下した当該豚の販売額と、同居していた同じ日齢の豚の販売額との差額、二つ目は入院治療費及び通院のための交通費、三つ目は退院後の介助に要した経費、四つ目は事故の発生を受けて2日間営業を休止・休業した営業補償となっている。以上の4項目について、県の顧問弁護士とも相談の上、賠償額を決定しており、妥当な額だと判断している。
最後に、過去、豚熱ワクチン接種に伴う同様の障害事案や死亡事故は、本案件以外にはない。
【委員】
今回と同様の事案は他県であったのか、また、今後の再発防止策は考えているのか。
【理事者】
まず、他県での状況について、国や静岡県、岐阜県、三重県に問い合わせたところ、同様の事案はないと確認している。ただし、東京都では令和3年度に、愛玩豚への豚熱ワクチン接種により軽い副反応が出た事例が4例あったと報告されている。
次に、今後の再発防止対策について、今回の事故を受け、改善策を3点考案し、家畜保健衛生所の職員に注意や教育を徹底している。
一つ目は、豚熱ワクチン接種時には、飼育者に対し、事前に副反応等のワクチンによるリスク等をリーフレットで丁寧に説明し、飼育者との信頼関係を構築するように努めている。二つ目は、緊急時の対応フローを作成し、救急セットを準備するとともに、現場で対応できるよう職員の教育を行っている。三つ目は、ワクチンを接種する場所について、通常は豚肉の商品価値が下がることを避けるために耳の後ろへ接種しており、今回も同様に行ったが、この事故以降は、マイクロブタの接種は、安全性が高い皮膚の下や臀部へ変更した。これらの取組により再発防止を図っている。
【委員】
先ほどの委員の質疑を踏まえて伺う。
答弁にもあったとおり、接種した当日は、家畜保健衛生所の経験のある獣医師が2人と、畜産職の職員1人、合計3人で先方に訪問し、4頭のうち1頭に症状があったと聞いている。接種した豚がその後回復したことは何よりであるが、注射の方法に過失があったことは、本当に不幸な出来事としか言いようがない。しかし、この飼養者が県へ納める金額は1頭280円であり、損害があった場合に県側が負う代償は決して小さくない。
愛玩用豚は、個人はほぼ1頭飼いであり、業者でも数頭のため、訪問の効率から考えて、例えば1回溶解した1バイアル当たり20ドーズとなっている豚熱ワクチンを廃棄せざるを得ないのではないか、また、接種までにかかる交通費や人件費等を勘案すると、280円に対する金額と実際の金額が全く釣り合っていないのではないかなど、そもそもの設定が家畜用になっていると感じる。
現在、家畜伝染予防法上に基づいて年1回の提出が義務となっている定期報告書から考えると、県内で愛玩用豚を飼養していると考えられるのは約132戸、175頭である。ペットとして飼われている愛玩用豚であるため取扱いに配慮が必要であり、飼養者にも家畜衛生の感覚が薄い中で、飼養上の指導として、屋外が駄目なことや移動の制限があることなどを細かく説明すること、また、豚熱のワクチン接種予定計画が4回であるため、飼養者ごとに4回の豚熱ワクチン接種時に連絡や日程調整し、一軒一軒戸別訪問をすること、さらに、定期報告書の書き方の指導等を行わなければならないことを考えると、家畜保健衛生所職員への負担が非常に大きい。
今後、県内で愛玩用豚の飼養者の増加が見込まれる中、引き続き県の家畜保健衛生所の職員がこれらに全て対応するのは困難であり、本来の業務や家畜伝染病発生時の対応等に支障が出る可能性があるのではないか。
また、今後、同様の事案があった場合に、本議案の損害賠償額が参考となる可能性もあるため、その点で県民の理解は得にくくなってくる。
そのため、愛玩用豚の購入を検討する時点から、丁寧な説明や、かかりつけの動物病院に担ってもらう役割もあると考えている。今回の事案を受け、参考事例を探したところ、2022年の農林水産省の豚熱制度指針改定により、東京都では都知事認定獣医師制度が制定され、知事から認定された獣医師は豚熱のワクチン接種ができるようになったこと、そして、東京都のホームページでは、原則、愛玩用豚飼養者は動物病院でのワクチン接種をお願いしていると記載されている。そして、現在、認定獣医師が勤務し、豚熱ワクチンの接種を受けられる動物病院が表にまとめられ、複数の動物病院がホームページに掲載されている。
今回のような事例をできるだけ減らしていくため、また、家畜保健衛生所の業務負担軽減を図るためにも、飼養者の理解や獣医師、獣医師会の協力は必要である。そこで、東京都のような仕組みを本県でも導入することを検討していないのか。
【理事者】
家畜伝染予防法では、愛玩用豚であっても豚熱ワクチン接種対象になっており、マイクロブタについて、本県では、現在、家畜保健衛生所職員である家畜防疫員が接種を行っている。養豚場では、産業動物の臨床獣医師、いわゆる大動物を扱っている畜産系の獣医師が知事認定獣医師として認定されており、接種の一部を担っている。
マイクロブタについても、愛玩動物の扱いに慣れた小動物臨床獣医師、いわゆる動物病院の獣医師を知事認定獣医師に認定し、接種をお願いしたいと考えており、本年9月に公益社団法人愛知県獣医師会に協力を依頼した。接種に前向きな小動物臨床獣医師のリストアップができたため、現在、個々にリストアップされた獣医師に対し、家畜保健衛生所から打診中である。
【委員】
先日、県内のマイクロブタカフェを訪問した。若い世代を中心に大変にぎわっており、豚の人懐っこさやかわいさは十分に理解できた。話を聞くと、多いときに月8頭ほど売れるときもあるとのことで、愛知県だけとは限らないが、今後、飼養者が増えていく可能性が十分にある。購入を検討する人に対してはしっかりと説明していて安心したが、事業者と連携している動物病院も既に複数あったため、購入のきっかけとなる事業者にも、獣医師を含めて協力依頼は可能ではないか。
公益財団法人愛知県獣医師会で話を聴いたところ、約7軒の動物病院が協力依頼に前向きだと聞いている。そのうち1軒に話を聞いたところ、講習を受けなければならない、届出をしなければならない、犬猫に比べて少し太い針が必要になることなど、課題はあるとのことだったが、既に日本脳炎や豚単独のワクチン接種等の経験があり、基本的には問題なく対応可能で、ほかのワクチンと同じ価格帯でできるのではないかとの話があった。
公益財団法人愛知県獣医師会とも引き続き話をしてもらい、家畜保健衛生所がリストアップしている獣医師と前向きに話をし、このような仕組みとなるようお願いする。
また、他県の家畜保健衛生所では、飼養者や購入元へのアンケートを通じて、愛玩用豚の現況を調査し、公表している事例もあるため、今後このようなことが増え、必要があれば実態把握することも重ねて要望する。
【委員】
愛知県森林公園の公園施設の指定管理者の指定について質問する。現在の指定管理は、理由があって3年になったとのことだが、通常の公募により、この業者に決まったのか。
【理事者】
今の指定管理者は、公募により3年の期間で指定している。
【委員】
アジア・アジアパラ競技大会での活用が見込まれたため3年で公募したものと理解しているが、今回の指定管理者の指定についても、アジア・アジアパラ競技大会の活用を見込んで公募にかけて株式会社ウッドフレンズとするのか。
【理事者】
アジア・アジアパラ競技大会の影響が見込まれたことから、今回については、1年間の任意指定とした。
【委員】
次からは、5年の指定管理で通常どおりに公募をかけるということか。
【理事者】
来年度は、公募による選定で検討する。
【委員】
指定管理の在り方についてはいろいろと議論する余地があると思うが、公募まで1年延びてしまったとなると、手を挙げようと思っていた業者が、この事業をやろうとか、やろうとしていたことの当てが外れることなどがあるといけないため、公平性を担保して公募してもらうよう要望する。
《一般質問》
【委員】
愛知県産農産物の需要拡大について伺う。
2020年における愛知県の総農家数が6万1,055戸となっており、2015年の7万3,833戸と比べると非常に減少している。純粋な人口の減少や高齢化、その他の理由も含め、減少自体は仕方ないことだが、農家として働いている人々を大切にすることで、今後の愛知県の農業が継続的に発展する中で、農家がもうかることが大切である。愛知県の農家が野菜を作り、売ることでもうかり、発展していく。そのような仕組みを作ることができる農家は長く続くと思うが、愛知県の新規就農者の割合を見たところ、約70パーセント以上が新規学卒者、もしくは新規参入者となっており、農家になった後に売れ続けるためのノウハウや経験、知識がまだない人がほとんどであると思う。
私の周りでも、脱サラして農家を始める人がいるが、農作物を作るものの、売り切れずに余ってしまう人もたくさんいる。個人に問題がある場合もあるとは思うが、新しく農業を始める人に対する入口の支援だけではなく、その後の需要をどう拡大していくのか、この点に愛知県からの支援があるのか。
一点目に、愛知県産農産物の需要拡大について、県外に向けた取組があれば伺う。
二点目に、地産地消の推進に関わる取組状況について伺う。
【理事者】
県では、県産農産物の魅力を広くPRするため、イベントの開催やSNSを活用した情報発信などに取り組んでいる。このうちイベント開催の取組については、例年、主要な取引先である首都圏の量販店で、知事と農業団体代表者によるトップセールスとして、県産農産物の販売促進フェアを開催し、キャベツやブロッコリー、トマトなどの本県が誇る農産物を首都圏の消費者に直接PRしている。
本年2月に、東京都品川区にあるスーパーマーケットでフェアを開催した結果、開催店舗における本県産農産物の売上げが対前年比156パーセントとなるなど、好評を博した。
次に、SNSを活用した情報発信の取組については、今年度、名古屋コーチンやみかわ牛、カンキツの新品種である夕焼け姫などが登場する3本のPR動画を新たに作成し、9月からユーチューブ上で配信を行っている。これら動画の合計再生回数は既に40万回を超えており、本県産農産物の魅力を全国の消費者に向けて広く発信できたと考えている。
続いて、地産地消の推進に係る取組について、本県では、1998年から本県独自の地産地消の取組である、いいともあいち運動を展開している。昨年度からは、これまでの取組に加え、SDGsや環境負荷低減に対する社会的関心の高まりを受け、地産地消がこれらの達成に貢献することを前面に押し出してPRする地産地消あいちSDGs推進キャンペーンを展開している。
この取組の一つとして、県民に地産地消を推進する店舗に足を運び、県産農林水産物を購入し、利用してもらうきっかけづくりを目的に、いいともあいち・地産地消デジタルスタンプラリーを実施している。本年度は500を超える店舗の参加を得て、来年2月までの5か月間にわたり実施しており、現時点で6,468人が参加している。参加店舗数、参加人数ともに昨年度を大きく上回るなど、盛り上がりを見せている。
このほか、県産農林水産物やその加工品を一堂に集めたあいちの農林水産フェアを、本年度は10月に安城産業文化公園デンパーク、11月に金山総合駅で実施するなど、イベント開催を通じた地産地消の推進にも取り組んでいる。これら地産地消の取組や県外に向けた取組により、県産農産物の需要拡大を図ることを通じて、本県農業の継続的な発展に寄与したい。
【委員】
愛知県の地産地消の取組について要望する。
愛知県産の農産物が県内、県外でどれだけ消費されたのかを数字で正確に把握するのは難しいと思う。また、答弁の内容から、イベント、SNSでのPRなどの情報発信をよく行っていると理解したが、実際にどのような効果があったかなどの振り返りも難しいと思う。
その中で、食と緑の基本計画2025では、県産農林水産物を優先して購入する県民の割合を示しており、目標値は、2020年の時点で15.4パーセント、2025年の時点では25パーセント以上と掲げている。2023年度の進捗は18.6パーセントであり、残り2年で目標値の25パーセントに達しなければならないが、現状は、県民の認知などまだ至らない部分がある。
ユーチューブの動画を見たが、非常にきれいな出来になっており、広告も出している分、認知されていると思う。その結果、しっかりと愛知県の農家がもうかっていく。県産農産物を優先して買うことに関しては、まだ課題がある。
愛知県の農家が作って、売る、要はもうかるように、今後も継続的に現在の取組を正しく振り返り、次年度の施策として生かしてもらえるよう要望する。
【委員】
地元西尾市の漁業者が抱える問題を、漁業者側の視点を含めて伺う。
10月30日に私の地元の衣崎漁業協同組合と吉田漁業協同組合の合併仮契約調印式が行われた。来春、衣崎漁業協同組合が吉田漁業協同組合を吸収合併し、将来を見据えた選択肢として、前向きに組織再編による経営基盤の強化に取り組んでいくことになる。調印式の中で、合併協議会会長である衣崎漁業協同組合の黒田勝春組合長が、「漁業者の高齢化と担い手となる若手漁業者の減少により、漁村活力の低下が著しく、また、アサリをはじめとする水産資源の減少や魚価の低迷や漁業を営む上での燃料などの経費高騰から、地域漁業の存続が危ぶまれるまでに弱体化している。今後もこの状況が続く限り、小規模漁業協同組合の存続を図ることは大変難しいと言わざるを得ない」と挨拶していたことがとても印象的だった。
先週、吸収される側の吉田漁業協同組合で唯一のノリの生産者となった中島万三樹組合長の工場で収穫したノリを、いろいろな機械を使って出荷まで準備する様子を見学したが、その中でも、吉田漁業協同組合では、40年前には約500軒あったノリの漁師が、今や1軒しかおらず、衣崎漁業協同組合でも約600軒あったものが、今や6軒であり、西三河は味沢支所、一色支所を足しても15軒しかいない。そして、後継者がいないところや、機械を更新してまで子供に跡を継がせるのは難しいと考えるところも多くある。社会実験をしてもらっているが、吉田の海面まで栄養塩が届いておらず、既に中島万三樹組合長も、衣崎側の海面でノリの養殖をしているとのことであった。
また、12月2日に半田市の海苔流通センターで行われたノリの初市を視察したところ、鬼崎漁業協同組合、大井漁業協同組合、篠島漁業協同組合、私の地元西尾市の西三河漁業協同組合味沢支所、一色支所、衣崎漁業協同組合、吉田漁業協同組合が、縦21センチメートル、横19センチメートルの単位で約380万枚を出荷した。平均価格は1枚約34円、最高値は西三河漁業協同組合一色支所の1枚157円であり、過去最高値でもあった。なお、昨年の初市では、最高値が初めて100円を超え111円、出荷数は366万枚であった。
愛知県漁業協同組合連合会によると、今年は、海水温の上昇や強風などが原因で凶作だった去年よりは期待できるとのことだったが、このところ愛知県全体では、ノリの生産量が40年前から7割減っており、昔は海苔流通センター1階の倉庫が全面天井までノリで埋まっていたものが、今は大変寂しい状況であると説明してもらい、愛知県漁業協同組合連合会役員からは、豊かな海を取り戻すのは、10年前の海ではなく、20年前の海に戻さないと、愛知県の漁業は成り立っていかないのではないかとの強い危機感を示されていた。
その一方で、2020年9月から管理運転を行ったあたりから、アサリが少しずつ年を越えて生き延びるようになり、ノリも10回摘採程度まではよい状態が続いて、その効果があること、また、放流濃度を高めてもアサリ等の二枚貝が増加すれば赤潮にはならないことも確認されており、来年度以降への強い期待と、改めて強い要望を受けた。
私も三河湾の再生はこれからが本番だと思っている。まずは、現在の社会実験が来年度も継続されるのか、総量規制基準上限に近い濃度で放流するために何がボトルネックになっているのか、社会実験の結果を踏まえた終了後の管理運転の方向性、漁業生産に必要な栄養塩類を確保するための栄養塩管理がどのようになっていくのか、さらには、現在、2022年に策定された2024年度を目標年度とする第9次水質総量削減に係る総量削減計画及び総量規制基準が運用されている中で、次期第10次計画策定時には、現在行われている社会実験の結果や漁業者の思いがしっかりと反映したものになるのか、さらには、現在Ⅱ類型となっている窒素、リンの環境基準の類型指定が、沿岸域や区画漁業権の範囲内の中だけでも現実的に漁業が営める類型指定に見直しされることがないのか、これは他局や国にも関係する大きな話であるが、まずは県庁内での見解の統一が必要であると考えている。
以上のことを実現していくために、社会実験の現状等について、9月定例議会農林水産委員会での喚田孝博委員の答弁を踏まえて何点か伺う。
一点目、現在、三河湾で実施している水質の保全と豊かな海の実現に向けた社会実験の実施状況について伺う。
年度の途中だが、特に今年度は9月から実施していること、そして、6月の第2回栄養塩管理検討会議で示された2022年度社会実験の実施結果からの考察で、ノリの色調、アサリの現存量及び肥満度に対する効果があったと考えられたが、アサリでは現存量が多くなると肥満度が低下するなど、増加した資源量を維持するために必要な窒素、リンの供給量には達していない可能性があると示唆されていたことについて、特にリンについて、今年は昨年度と比べて排出濃度が上限値に近いところでコントロールができているのか。
【理事者】
今年度の社会実験については、9月から前倒しで2年目を実施している。
水質や漁業の効果については現在調査中のため、これまでどうだったかは示すことができないが、現在、水質への悪影響は見られずに、おおむね順調に推移している。
また、放流濃度については下水道課で行っているため、まだ報告はもらっていない。2月に開催予定の栄養塩管理検討会議で明らかにしてもらうよう、下水道課と調整を図る。
【委員】
栄養塩についての社会実験の結果を検証するとともに、漁業生産に必要な栄養塩管理の在り方を検証するために設置されている愛知県栄養塩管理検討会議のこれまでの開催状況と、その中の議論で、漁業者の構成員からどのような意見が出ているのか伺う。
【理事者】
栄養塩管理検討会議の開催状況は、昨年度は1回、今年は6月26日に開催している。
6月26日に開催した2回目の会議では、1年目の社会実験の効果の検証を行った。漁業者の委員からの意見は、冬場のアサリの生き残りがよくなっており、漁業現場でも社会実験の効果を感じているため、2年で社会実験が終わることなく、継続してやってもらいたいこと、また、三河湾だけでなく、伊勢湾にも目を向けてもらい、三河湾、伊勢湾ともに豊かな海になるよう取り組んでほしいとの強い意見をもらっている。
【委員】
10月23日の公営企業会計決算特別委員会で、峰野修委員からも建設局に指摘しているが、矢作川浄化センターについて、先日、下水道課や公益財団法人愛知水と緑の公社に改めて話を聞きに行った。そこで昨年2022年11月から本年3月までの放流水のリンの負荷と窒素の負荷について、日、時間ごとの推移が分かる資料を見て、流入してくる下水の水質が日や時間などの様々な原因によって異なり、薬品を入れる量のコントロールが非常に大変だったことが、乱高下するグラフを見て感じた。
期間中に総量規制基準値を超えたのは12月の1日だけだったそうだが、薬品の効果が出るのに五時間、六時間のタイムラグがあるため、日間平均の場合は、日中に高い数字だった場合、24時までに挽回をしなければいけないことから、水質担当職員が、昨年度は二十回、三十回夜中に指示を出している、例えば12月は7回、2月は6回、勤務時間外に対応している。今年度は、窒素についても未経験の9月から実験を行っているとのことで、微生物の動き等が異なってくるため、さらに負担感があると思う。日間平均の値で管理するための微妙なコントロールは経験則によるものであり、代わりの者が対応するのも非常に難しいことから、相当なプレッシャーがあり、上限値ぎりぎりを狙って取り組むにも日間平均の管理に限界がある。
検討会議でも議論が出たと思うが、週単位、期間単位、期間平均などの運用改善が必要である。環境省令に係る制度上の問題で、本県の社会実験だけ特例扱いは難しいと承知しているが、建設局、環境局を含む県全体で職員の働き方改革の観点からも、運用改善を要望する。
2点目、来年2月の検討会議で報告される数値シミュレーションはどのようなもので、どのようなデータを使い、どのような範囲のものか、海域にどのぐらいの濃度が必要で、漁業生産に必要な栄養塩濃度がどのぐらいか、その海域で豊かな海と水質の両立が取れるベストバランスが分かるものになるのか、そして、その結果をどう取り扱うのか伺う。
【理事者】
現在、水産試験場で取り組んでいる数値シミュレーションについて、まず、水産試験場の調査データなどを基に、海の流れや水質、生物など、三河湾の環境をコンピューター上で再現する。そして、今回の社会実験における放流口からの栄養塩の拡散範囲やアサリの餌になる植物プランクトンの分布状況などを計算するとともに、浄化センターから放流する栄養塩濃度や増加させる期間を変えた場合などの様々な変化を把握しようとするものである。これについても様々なシミュレーションで得られた結果を基に、今後、漁業生産に必要な望ましい栄養塩管理の在り方の検討に活用していく。
【委員】
放流された後にどこにどのように到達して、アサリやノリの養殖にどのような効果があったか分かるものであれば、2月に報告される環境審議会の水質環境部会報告時に説得力が強まると思う。また、昨年の社会実験の実施結果の中に、漁業の状況、ノリ、アサリの状況報告があったが、むしろここが一番大事であるため、強調してもらいたい。審議会の議論についてもしっかりと確認したい。
続いて、伊勢湾について伺う。
先日、愛知県漁業協同組合連合会の人から伊勢湾の状況を聞いたが、常滑、鬼崎、小鈴谷、野間など、アサリが大変よくない状態で、社会実験の前の一色干潟のような状態とのことであった。
伊勢湾は、本県だけではないため、より広域的な調整も必要だと承知しているが、昨年10月には国土交通省中部地方整備局と愛知県主催、そして、本年9月には、中部地方整備局と三重県主催で、伊勢湾・三河湾の水産資源に必要な栄養管理や生息場、気候変動等に関するシンポジウムを開催しており、伊勢湾での機運も高まっていると思うが、三河湾の社会実験の一定の成果が確認された段階で、伊勢湾の栄養塩管理検討会議のような会議体を立ち上げてはどうか。
そこで、県内で行われている常滑市、東海市及び知多市の浄化センター、県の日光川下流浄化センターで行われているリンの増加管理運転の実施状況、現時点での効果及び次年度以降の考えについて伺う。
【理事者】
伊勢湾沿岸で行われている栄養塩管理運転の実績について、昨年度は、愛知県漁業協同組合連合会の要望を受け、県から3市に協力要請を行って了解が得られたため、四つの浄化センターで、現在の規制基準値を変えずにその範囲内でリンの増加運転を行った。実施した時期は、11月末に要請したため、準備が整った段階からとして、常滑市は10月から既に実施していたため、その他の知多市と東海市と日光川下流浄化センターについては、準備が整い次第開始し、3月末まで管理運転を行ってもらった。
管理運転の効果は、現在の規制基準値を変えずにその範囲内での管理運転であったため、目立った効果は確認できなかったが、水質の悪影響等は見られず、順調に管理運転を行ってもらった。また、調査結果は、関係の市を招いて報告会を開催し、説明するなど情報共有に努めた。
今年度は、先ほどの3市と県の日光川下流浄化センターのさらなる協力を得て、三河湾での社会実験と同様に9月から3月までの計画で行われている。その効果については現在調査中である。来年以降は、また報告会を開催し、その場で継続を依頼していきたい。
【委員】
協力してもらっている関係自治体には感謝するが、漁業や、特にアサリ、ノリにどのような効果があったのかを含めて市に報告できるように、水産試験場の人的、予算的な制限があることは承知しているが、ぜひその辺りも検討してもらいたい。
最後に、この社会実験は本年度で終了する予定であるが、豊かな伊勢湾及び三河湾の実現に向けて来年度以降はどのように考えているのか、決意を含めて伺う。
【理事者】
今後の伊勢湾を含む栄養塩管理運転については、栄養塩管理検討会議での意見や今後の社会実験の効果検証に係る議論を踏まえて検討していく。漁業者からは継続への非常に強い要望をもらっているため、我々も尽力したい。
また、来年度以降は、2027年度の第10次総量削減計画の策定を見据え、海域ごとの漁業生産に必要な栄養塩濃度の提案、管理方策、漁業生産に必要な望ましい栄養塩管理の在り方を検討していく。引き続き豊かな海の実現に向けてしっかりと取り組む。
【委員】
前置きで話した課題を一つずつ解決していくために、引き続き全力で取り組んでほしい。また、複数局にまたがる話のため、ぜひ積極的に働きかけ、県庁全体での方向性を固めてもらいたい。
続いて、養殖漁業の支援策について伺う。
今年の土用の丑の7月30日、スーパー店頭での国産のかば焼き価格は、2022年よりも一割、二割高い値段だった。1枚2,980円で、昨年より400円高い。ウナギの料理店やかば焼き店でも値上げが行われるところが多かったと聞いている。
7月26日の日本経済新聞で、熊本県の日本養鰻漁業協同組合連合会、日本養鰻漁業協同組合連合会の木下優喜代表理事会長が、「養殖に使う電気代や餌となるカタクチイワシの魚粉の価格が高騰し、コストが例年の3倍、経費は年々上昇傾向で、価格を上げざるを得ない」と話していた。結果、養殖コストの高騰が卸値に転嫁され、日本鰻輸入組合によると、養殖事業者からの池出し価格は、国産が1キログラム4,500円と、前年同期に比べて300円程度高くなった。
少し掘り下げると、大きな原因の一つがシラスウナギの価格高騰である。地元の一色うなぎ漁業協同組合によると、シラスウナギの取引価格も、10年から15年前は1キログラム80万円だったが、今は200万円から250万円まで値上がりしており、特に今年の水産庁の資料でも、前年比14パーセント上がり、1キログラム250万円になっており、5年ぶりの高値になっている。
もう一つは、先ほどのカタクチイワシの魚粉価格についてである。特にウナギ用の配合飼料は七割から八割が魚粉のため、飼料の原料となる魚粉の金額に大きく左右されるが、多くを輸入に頼らざるを得ないため、円安が大きく影響していること、中国での需要の高まりがあること、また、エルニーニョ現象により、魚粉の主な輸入先のペルー沖の海面水温が上昇し、魚粉の原料となるカタクチイワシの漁獲量が減少し、ペルーで例年4月下旬から7月末頃まで行われている冬漁が、生育の遅れから操業が行われなかったことが国際価格に大きく影響していると言われている。
財務省発表の魚粉輸入実績によると、10月分の市販ベース価格は1キログラム252円、前月の9月分は257円で、4月の約210円から値上がりが続いており、これは2021年1月が140円以下だったものの値上がりが続いている状況である。10年前と比べるとおよそ2倍となっており、中でも養魚飼料の指標となるペルー産プライムグレード魚粉の国内取引価格は、6月中旬時点で1キログラム320円から340円であり、中心値は6月上旬までに比べ17パーセント高く、記録を遡ることができる2014年9月以降、約8年半ぶりに最高値を更新し、2020年初めの直近安値に比べて約9割高い状況である。
一色うなぎ漁業協同組合で実際に配合飼料の販売価格を聞いたところ、10年前は1袋が20キログラムで6,500円だった配合飼料が、今は1袋9,500円から1万円で、3,000円近い値上がりとのことであり、養殖事業者がコストの大幅な増加に直面していることを確認した。
これらのシラスウナギの仕入価格と配合飼料の状況を、一色うなぎ漁業協同組合の場合、個人の養鰻業者の平均的な池入れが35キログラムであるため、シラスウナギの仕入れの時点で、昔と比べると1キログラム80万円が250万になったため、約170万円プラス35キログラムを掛けると5,950万円の負担増である。1キログラムのシラスウナギについては、約0.2グラムで5,000尾程度で、出荷するためには1,000倍の200グラムから250グラムまで育てるため、餌の飼料効率から考えると、1キログラムのシラスウナギを1トンまで育てるには約1,400キログラム、つまり70袋以上が必要だと言われている。そのため、1袋6,500円が9,500円に3,000円値上がりしたとすると、1キログラム当たりのシラスウナギで21万円の負担増、35キログラムを掛けると735万円の負担増である。平均的な事業者で、光熱や資材、人件費の値上がり分以外で約6,685万円の負担増となる。
このような状況を受け、本年5月には、一色うなぎ漁業組合、そして、豊橋養鰻漁業者組合等で構成される愛知県養鰻漁業者協会から県に対し、養鰻業における飼料価格高騰対策を求める要望書が提出されている。
本県においては、ウナギだけでなく、日本一の生産量を誇る豊川市を中心とした養殖鮎や絹姫サーモンが有名だが、マスの養殖も盛んである。全国養鱒振興協会の会長理事であり、愛知県淡水養殖漁業協同組合の代表理事組合長である小堀彰彦会長は、6月13日の日本経済新聞の記事で、「魚粉の割合変更や代替品利用の取組を紹介した上で、打てる手は全て打ってきたが、なすすべがないのが現状である、養殖魚の需要は高いが、さらなる値上げも避けられないのではないか」とコメントしている。
このように多くの県内の養殖事業者がコストの大幅な増加に直面し、大変厳しい状況となっている環境について県としてどのように現状を把握し、どう認識しているのか。
【理事者】
養殖用配合飼料の価格は今年4月頃から急激に上昇し、9月の平均価格は、前年同月と比較して約2割増しとなっている。配合飼料の価格上昇は、原料となる海外産イワシ類の不漁や急速な円安などが要因と言われており、このまま続いた場合、養殖業者の経営への影響が大きい。
飼料価格高騰が経営に及ぼす影響を緩和するため、国では、漁業経営セーフティネット構築事業を推進している。県においても、養殖業者の経営安定のため必要な支援を検討している。
【委員】
活鰻の価格が上がると、外国産にも負けることになり、消費者の負担も増える。買い控えが起これば、業界全体が沈下することとなる。
本年2月13日の記事によると、共同通信の取材に対し、21県が、魚粉飼料の価格高騰に対して養殖業者が購入する配合飼料高騰分を独自で助成支援すると明らかにしており、私が確認しただけでも、これまで国の交付金等を活用して、静岡県、岐阜県、東京都、宮城県、福島県、長野県、滋賀県、和歌山県、佐賀県など、多くの都道府県で独自の支援策が展開されている。内容として多いものが、上限額の範囲内、対象期間内での国のセーフティネット事業補塡分を差し引いた額に対しての一定割合の補助や対象期間中の飼料購入料に対し、1キログラム当たりの支援単価と支援割合が設定された補助だと認識している。
一色うなぎ漁業協同組合では、養殖用配合飼料の漁業経営セーフティネットは大多数が既に利用しているとのことであるため、ぜひ他県の事例等を参考にし、交付金等を活用し、養殖業者にとって今後も前向きな事業を経営できる制度設計をお願いしたい。
最後に、10月末にはクロマグロの完全養殖で有名な近畿大学の水産研究所が、水産総合研究センターの飼育技術を活用し、ウナギの完全養殖に成功したとの報道があった。最も難しい卵からシラスウナギまで育てる技術は、現段階では小型の水槽のみで、大量生産できるめどは立っていないとのことであったが、ぜひ本県の内水面漁業研究所も、環境体制を整えて、ウナギの人工飼育の生産研究にもこれからさらに力を入れてもらいたい。
【委員】
大きく二つ伺う。
まず一つ目に、施設園芸における農業用諸資材の高騰対策について伺う。
これは、先日、中村竜彦議員からもうかる農業に変えるための施策についてとの一般質問があった。まさにこれからの農業のあるべき姿として、生産性の向上、省力化、環境への負荷軽減を図りつつ、持続可能なもうかる農業を推進していく必要があるものと私も同感の思いである。
一方で、外部的要因による急激的な経営への影響については、急場しのぎであったとしても、しっかりと対応してもらわなければならない。
現下の物価高騰による農業用諸資材の高騰対策は必要不可欠である。施設園芸は、とりわけこうした燃油価格をはじめとした農業用諸資材の高騰が与える影響は大変大きい。本県の農業産出額の約3割を有する施設園芸を守るためにも、しっかりとした対応が必要である。
そこで、現在の燃油価格の動向についてどのような状況か伺う。
【理事者】
野菜、花き、果樹の施設園芸が盛んな本県では、園芸用施設、いわゆるハウスの設置実面積は2,576ヘクタール、2020年度だが、そのうち加温設備、暖房の設備があるものについては1,798ヘクタールで、約7割を占めている。こうした暖房に用いる主要な燃料である農業用A重油の価格は、世界情勢や為替などの影響を受けやすく、上昇と下落を繰り返しているが、特に2021年以降は、ウクライナ情勢や円安の影響によって価格が上昇している。
具体的には、暖房の需要期である10月から翌年3月までの6か月間の全国の農業用A重油の価格を比較すると、2020年から2021年は1リットル当たり75円から87円台であったが、翌年の2021年10月から2022年3月には100円から111円台へと急騰した。2022年から2023年3月までは107円から108円台で高止まりしており、直近の本年10月については111.8円で、2020年の同月比で47パーセント高となっており、高い水準が続いている。
【委員】
直近10月は1リットル当たり111.8円とのことで、高止まりの状況にある。
これまでにも、こうした燃油高騰対策として、国では施設園芸等燃料高騰対策事業、また、県独自として、臨時的措置だが、施設園芸用燃料価格高騰対策支援金として取り組んでいる。
今、燃料の需要期を迎えており、これは生産者も危惧している。県としてどのように考えているのか。
【理事者】
施設園芸については、冬季の暖房に多くの燃油を使用して、経費に占める燃料費の割合が高く、高騰の影響は大きいため農業経営を圧迫している。このため、施設園芸農家を支援する必要がある。
具体的な対策として、まず、燃油価格高騰の影響を受けにくい経営構造への転換を図る必要があることから、国の産地生産基盤パワーアップ事業や県独自のあいち型産地パワーアップ事業により、ヒートポンプや保温のための二重被覆など、燃油の使用量の削減に効果的な設備の導入に対し支援を行っている。
また、燃油価格の高騰が経営に及ぼす影響を緩和するため、燃料価格が一定の基準を超えた場合、国と農家が積み立てた基金から補塡金を交付する国の施設園芸等燃油価格高騰対策・セーフティネット構築事業を県として推進している。この事業により、2021年度には828戸、約5億4,000万円、2022年度は905戸、約6億5,900万円が交付された。今年度も936戸が参加をしており、燃油が高騰し始めた2020年度の358戸から約2.6倍と、大幅に参加農家が増加している。
さらに、2021年度、2022年度には、国の新型コロナウイルス臨時交付金を活用し、県独自の愛知県施設園芸用燃油価格高騰対策支援金を補正予算により実施し、園芸用施設の暖房に使用した燃油購入費用の一部に支援を行った。それぞれ延べ約7,000件の申請があり、2021年度は約7億3,300万円、2022年度は約8億7,700万円の支援金を交付した。
なお、本年度は、政府が令和5年度の補正予算に物価高騰影響緩和対策を盛り込んだことを踏まえ、本県も、燃油価格高騰の影響を受ける施設園芸農家に必要な支援について検討する。
【委員】
前向きに検討しているとのことであるため、成果をお願いしたい。
また、こうした燃油高の高騰だけでなく、ミカン用のマルチなどの資材も3割ほど上昇しており、生産者にとって厳しい状況であるため、こうした資材等の対策についても善処してもらえるようお願いする。
続いて、2点目の地域の漁港、漁村の活性化対策としての海業の推進について伺う。
令和4年3月に閣議決定された、新たな水産基本計画並びに漁業漁場整備長期計画において、漁港における海業の推進への新たな制度が示された。聞き慣れない海業であるが、この長期計画では、令和8年までの成果目標として、漁村の活性化により都市漁村交流人口をおおむね200万人増加させる。漁港における新たな海業等の取組をおおむね500件としており、昨年度、全国で12地区がモデル地区として選定されている。
そこで、海業とはどのような事業なのか、その概要について伺う。
【理事者】
海業とは、漁村の人々が海や漁村の価値や魅力を活用することにより、地域のにぎわい創出や所得の向上、雇用機会の確保などを図り、漁村の活性化につなげる取組である。
具体的には、漁港内における漁協や民間企業が運営する地元の魚の直売所や食堂、養殖や漁業体験などの取組が挙げられる。
【委員】
こうした取組は、これまでもそれぞれの漁港について、漁港の活性化あるいは水産振興として様々な事業が行われている。漁港における海業の推進を目的とした漁港漁場整備法の一部改正によってどのようなことが可能になったのか。
【理事者】
漁港漁場整備法の一部改正により、従来認められていなかった漁港施設の貸付けや漁港内の用地や水域の長期にわたる占用が可能となり、漁港で海業が安定的に取り組めるようになった。
【委員】
漁港施設としての防波堤、岸壁、荷さばき場等、水面等を長期間にわたって活用した事業が行えるとのことである。特にこうした漁港関連の行政財産が通常貸付けをしようとすると、普通財産に変えなければ貸付けができないものが、行政財産のまま、民間事業者等に貸付けができるようになったとのことで、民間活力を用いた取組ができるようになっていくと思う。
しかし、あくまでも漁港であるため、漁業上の利用を前提とした事業でなければならない。漁業活動に支障があるようなものは当然認められないと思うが、海業を進めていく上で、新たな事業を行う事業者と漁を営む漁業者と漁港管理者との間の調整が必要になってくる。具体的に事業を進める上でどのような事業のフローとなっていくのか。
【理事者】
海業を進めるには、まず、漁港管理者が漁業者の意見を聞き、漁港施設等に関する活用推進計画を策定する。そして、次に、計画に沿った海業を実施しようとする事業者が具体的な事業計画を作成し、漁港管理者へ申請を行い、認定を受けることで事業が進められる。
【委員】
こうした海業を、昨年度、全国のモデル地区として12か所が選定されているが、県内ではどのような動向にあるのか。
【理事者】
モデル地区とは、これから海業に率先して取り組む意欲ある地区について、今年1月、水産庁が募集し、選定したものである。
本県では、市町や漁協等に周知や照会をしたが応募がなかったことから、モデル地区はない。
【委員】
私も地元の漁業協同組合に行き、海業についてどのような認識にあるのか聞いた。組合長は知っていたが、現場の人々をはじめ、漁師はそのようなことは知らないとのことであり、まだ一部の人しか知らないのではないか。
ただし、海業の事業を進めていく上で、漁村あるいは漁港のいろいろな活性化の取組が見えてくる部分が多くあると思うが、県として、海業の推進をどのように図っていくのか。
【理事者】
漁村のにぎわい創出や所得の向上、雇用機会の確保などは水産振興上重要な課題と考える。
このため県では、昨年度、水産庁の職員を招き、漁業関係者を対象に海業に関する説明会を2回開催し、制度の周知に取り組んでいる。今後の海業の推進に当たっては、関係市町や漁業協同組合をサポートするとともに、漁業協同組合等が実施する施設整備への支援など、漁村の活性化に向けしっかりと取り組む。
【委員】
海業という事業がしっかりと伝わってない部分もあると思うし、これからいろいろな機会を設けて取り組んでもらえると思うが、12月4日に、水産庁から新たな海業の推進に取り組む地区の募集が発表されている。
愛知県内における漁港、漁村の地区においても、本当にいろいろな形での取組の可能性があると思えるところが多くあるため、これを機会にしっかりと周知してもらいながら、漁港の活性化に向けた取組をお願いする。
【委員】
気候変動による愛知の海の異変と影響への対応について伺う。
2023年の日本は、災害級とも言われる猛暑に見舞われ、地球温暖化ではなく、地球沸騰化という言葉も飛び出した。日本近海では、世界平均よりも水温の上昇率が高くなっているとの話もあり、この気候変動により農産物や水産物への影響も大変危惧される。
本県でも、本来は南方に生息し、三河湾の海には生息しないはずの魚の水揚げが増えたとの話も聞くため、今、愛知県の海で何が起こっているのか、三河湾、伊勢湾の海水温の変化や生息する水産動植物の状況など、どのような異変が起きているのか。
【理事者】
国の報告によると、日本近海の平均海面水温は、2020年までの100年間で1.19度上昇している。また、本県沿岸でも、県が三河湾に設置した自動観測ブイの観測結果から水温の上昇が認められ、特にノリ養殖が始まる秋季には平均海面水温が10年当たり0.5度と、顕著に上昇している。こうした海水温の上昇など近年の海洋環境の変動により、水温の低い冬に行われるノリ養殖では養殖期間が短くなっている。
また、魚類では、暖かい海を好むマダイやサワラなどが増加する一方、冷たい海を好むイカナゴが大きく減少するなど、採れる魚や採れる場所が変化している。
【委員】
確実に異変が起きていることは、今の答弁で理解できた。
これらの海の異変が漁業、養殖業に与える影響は大きいと推察するが、海の異変によって漁業経営者からは、例えば、漁獲量の変化や経営状況など、どのような意見があるのか。
また、漁業関係者の海の変化への対応について取組などがあれば伺う。
【理事者】
ノリ養殖については、秋の水温低下が遅れていることから、養殖開始時期が25年前と比較して10日ほど遅れ、養殖期間が短くなっているとともに、ノリを食べる魚が漁場にとどまり、食害が増加しているなどの影響が見られている。海の栄養塩不足とも相まって、ノリの生産量は減少しており、漁業者からは、今後の経営に対する不安の声が聞こえている。このような海の変化への漁業者の対応について、ノリ養殖では、高水温に強い品種の使用や、ノリが魚に食べられないよう防除する網の設置などが行われている。一方で、漁船漁業の漁業者からも海の変化を実感する声を聞いている。
今後の取組について、漁業者は、今増えているマダイやサワラなどの大きな魚を漁獲できるよう網目を大きくする、イワシ類については、限られた資源を有効に利用するため、大きく成長するのを待って漁獲するなど、資源管理に取り組んでいる。
【委員】
地球温暖化の影響がいかに深刻かつ広範囲に及んでいるかが浮き彫りになっている。
県として、気候変動による水産業への影響に今後どのような対応をしていくのか。
【理事者】
県の取組について、漁業者が漁場環境の変化を的確に把握し、効率的な操業ができるよう、自動観測ブイにより連続観測した水温、塩分など漁場環境情報や、調査船による水産資源の動向をウェブページで迅速に発信するなどの支援を行っている。
ノリ養殖では、国の研究機関と連携したより高水温に強い品種の開発や、効果的な食害対策手法の開発などの研究を行っている。また、漁業協同組合が行う食害防除網の導入も支援している。
イワシ類を採る漁業では、効率的な操業が行えるように、人工衛星のデータを活用した漁場の予測技術の開発に今年度から取り組んでいる。さらに、アサリやカキ、ワカメ養殖の導入による経営の多角化の推進にも取り組んでいる。
これらの取組により、海洋環境の変動に対応できる、安定した漁家経営の実現を目指していく。
【委員】
いろいろな取組をしていることを初めて知った。地球温暖化の海水温の上昇は続くと思うため、いろいろな形で施策を推進してもらうようお願いする。
【委員】
豚熱の発生状況とアフリカ豚熱の対策について伺う。
2018年に国内で26年ぶりに発生した豚熱により、2020年、再び清浄国認定を取り消された。そこで、豚及び野生イノシシにおける豚熱の発生状況について伺う。
【理事者】
全国の豚での豚熱発生状況については、2018年8月の岐阜県での発生を皮切りにして、20都県で89事例が発生しており、36万頭以上の豚が殺処分されている。直近では、本年8月に佐賀県で、九州では初となる事例が発生している。
本県では、2019年2月の豊田市での発生をはじめとし、12月の田原市での発生まで、断続的に18事例の発生があり、約6万5,000頭の豚が殺処分されたが、その後は、豚熱ワクチンの接種や、国が定めた飼養管理衛生基準の遵守徹底により、2019年12月を最後に4年間、新たな発生はない。
【理事者】
全国の野生イノシシでの豚熱発生状況については、農林水産省の公表資料によると、2018年9月に岐阜県で発生以降、先月末時点で、北海道、青森県、千葉県、岡山県、愛媛県、九州7県及び沖縄県の13道県を除く34都府県で、6,593頭の陽性個体が確認されている。
本県では、2018年12月に犬山市で最初の発生が確認されてから、2023年12月8日までの累計で、陽性個体数が186頭、陽性率は3.7パーセントである。
今年度4月1日からでは、陽性個体数が12頭、陽性率が1.7パーセントであり、陽性率は低下している。なお、野生イノシシの生育域が本県とつながっている岐阜県や静岡県でも、感染確認が続いており、本県でも、豚熱検査や経口ワクチンの散布など、豚熱対策を引き続き継続する。
【委員】
豚は直近の発生はなく、イノシシは、近隣県を含め確認されているとのことだが、国の疫学調査の結果によれば、違法に持ち込まれた食品が家庭ごみとして廃棄される、行楽地などで廃棄されることにより、野生イノシシが豚熱に感染した可能性が否定できないとされている。2018年の岐阜県での発生は、豚熱発生国由来のハム、ソーセージ等輸入禁止品の持込みによるものと推測されているが、現在でも野生イノシシの感染が確認されている地域では、イノシシ由来のウイルスが人や作業器具、あるいは野生動物を介して養豚場内に侵入し、発生するリスクを抱えている状況にあるとのことで、9月定例議会の本委員会でも峰野修委員より野生イノシシの対策に関する質問があり、野生イノシシ対策としては、経口ワクチン散布にしっかり取り組む話があった。
また、養豚場対策としても、豚へのワクチン接種及び飼養衛生管理基準の遵守により徹底を行うことで、引き続き野生イノシシと養豚場の両方で豚熱対策を推進してもらいたいが、現在、豚熱と症状は似ているものの、全く異なる病原ウイルスによるアフリカ豚熱がアジア圏で猛威を振るっている状況である。東アジアの近隣諸国で感染が確認されていないのは、日本をはじめとする数か国だけだと聞く。有効なワクチンもなく、万が一、国内で感染が広がれば、殺処分するしかない状況である。
コロナ禍も明け、中部国際空港では、コロナ禍前までとはいかないものの、国際線の乗降客数が増加しており、再来年にはアジア競技大会が本県で開催される予定となっているため、アジア圏から多くの人が訪れる。
そこで、アフリカ豚熱について、中部国際空港でウイルスの発見が数件あったことも聞いているが、愛知県での確認状況と今後の豚、イノシシにおける対策について伺う。
【理事者】
アフリカ豚熱について、国内の養豚場、野生イノシシともにウイルスは確認されていない。
しかし、空港や港に設置されている国の動物検疫所では、不正に持ち込まれた豚肉製品の一部からアフリカ豚熱のウイルスが検出されている。動物検疫所のホームページによると、中部国際空港では2018年10月以降、20例の遺伝子検査陽性事例が確認されており、そのうち2例については感染力のあるウイルスが確認されている。
今後の対策としては、養豚場では、豚熱対策と同様に、養豚関係者に対して発生国への渡航自粛の啓発を行うとともに、養豚場の飼養衛生管理基準を遵守するよう指導を行う。また、必要に応じて、家畜飼養衛生管理強化対策費補助金により、養豚場の野生動物侵入防止柵等の設置を支援している。
一方、農林水産省に対しては、本年7月5日に、大村秀章知事から勝俣孝明農林水産副大臣へ水際対策の強化を要望した。
【理事者】
野生イノシシ対策については、アフリカ豚熱が国内に侵入した場合の対策となることから、国は、昨年度より、ヨーロッパ諸国の先行事例を参考に、野生イノシシにおける防疫措置の具体化のための基本方針を現在策定中であり、今年度中に公表される予定である。これを受けて、野生イノシシの生息が確認されている各都道府県は、マニュアルを作成し、万一の発生に備えた防疫体制の強化を図ることとされている。
国の基本方針では、特に感染確認後の防疫措置として、感染した死体の速やかな回収と処分、陽性個体確認地点周辺での積極的な死体捜索という、野生イノシシでは新たな対応が示されると聞く。こうしたことから、作業実態を確認するために十分な演習が必要である。
来年度は、国の野生動物アフリカ豚熱防疫対策構築事業を活用し、本県でも、現地演習を計画するとともに、演習の課題を踏まえ、本県版のマニュアルを速やかに作成し、公表する方向で検討している。今後は関係機関と連携し、本県の実情に合った体制強化に向けて早急に取組を進める。
【委員】
豚、イノシシともに感染はなく、それぞれ対策を講じているとのことだが、一点要望する。
地元の養豚業者、養豚場でも、靴底の消毒マットの設置や車両の消毒をはじめとした飼養衛生管理基準の徹底など、ウイルスの侵入を防ぐための厳格な対策が実施されている中で、養豚、農場をはじめ様々な業種で技能実習生や特定技能の外国人労働者が非常に増加している。この人たちが、郵便の検疫では引っかかるものの、母国の家族から食品が送られているとも聞く。異文化背景を持つ労働者に対する適切な情報提供と教育は、疾病管理の効果をさらに高めるために必要不可欠だと考える。県としても、国内にある外国人労働者の監理団体または特定支援機関に対して、アフリカ豚熱を国内に持ち込ませないよう、食品の持込みを防ぐための広告や周知活動を強化してもらうことを要望する。
【委員】
水産業における課題の抽出、解決に向けての取組について伺う。
先ほどから水産業でも漁獲量や担い手、新規就業者減についての様々な取組の話があったが、基本的な計画について伺う。
まず一つ目として、本県の水産業振興のために2021年3月に策定された愛知県漁業振興計画がどのような経緯で策定されたのか。
【理事者】
愛知県漁業振興計画策定の経緯について、本県の水産業を取り巻く環境が、水産資源の減少、漁場の喪失、後継者不足など厳しさを増しており、2020年12月に漁業法が改正され、水産資源の適切な管理、水産業の成長産業化の両立が求められるなど、時代の変化に対応した施策が必要となっていた。また、愛知県漁業協同組合連合会からも、漁業者の厳しい現状を切り開くため、水産施策の一層の充実を求める要望を受けていた。
愛知県漁業振興計画は、このような状況に対応し、将来に向けて、本県の水産業が持続的に発展していくため、食と緑の基本計画2025の個別計画として、2021年から10年間、重点的に取り組む水産振興施策として取りまとめたものである。
【委員】
愛知県漁業振興計画の位置づけとして、食と緑の基本計画2025の個別計画として、水産振興のために取り組む施策を示すこと、社会情勢や国の制度ごとの国の制度の改正で、また5年ごとの食と緑の基本計画の策定に伴って見直しをしていくこと、計画期間が2021年から2030年までと理解した。
愛知県漁業振興計画の第4章で、三つの柱として、豊かな水産資源を育む海づくり、漁業者がもうかる経営体づくり、そして、未来につながる水産業の構造改革がある。その三つの柱に、それぞれ課題解決として取り組むべき重点施策が12点あり、また、その下に25の個別項目があるが、特に成果があった主な項目の進捗状況について伺う。
【理事者】
一つ目の柱である豊かな水産資源を育む海づくりでは、新しい漁場づくりとして、干潟、浅場の造成面積を昨年度から倍増させ、毎年10ヘクタールを造成している。また、栽培漁業の強化として、ハマグリなど新たな魚種を生産、放流するため、県栽培漁業センターで新施設を建設する計画であり、昨年度は基本設計、本年度は実施設計、来年度は建設工事に着手して、2025年度の完成を目指している。
二つ目の柱である漁業者がもうかる経営体づくりでは、経営の安定化を図るため、カキやアサリの養殖技術の導入による複合経営の推進や、ノリ養殖における魚や鳥による食害対策、漁船など設備投資への支援を計画の初年度から進めている。
三つ目の柱である未来につながる水産業の構造改革では、漁業協同組合の合併を推進しており、来年4月1日には西尾市で1件の漁業協同組合合併が実現する。また、地域の拠点となる共同利用施設や漁港の整備などへの支援を強化しており、本年度から、南知多町で津波避難施設の整備への支援にも取り組んでいる。
計画に位置づけた主な施策は、いずれもおおむね順調に進捗している。
【委員】
愛知県漁業振興計画での2025年の目標として、産出額を現状の390億円から20億円増の410億円としているが、食と緑の基本計画2025において、この金額目標を設定した理由について伺う。
【理事者】
愛知県漁業振興計画は食と緑の基本計画2025の個別計画であるため、その目標値もそれに合わせている。漁業経営が不安定になっている中、漁業収入の増加、安定を目指すことから、目標値は、本県の漁業及び養殖業の総産出額としている。
本県では、海面及び内水面で漁業や養殖業が行われており、いずれの生産者も減少傾向にある中で、愛知県漁業振興計画に位置づけた施策によって、まず、海面で行う漁業や養殖業にあっては現状の産出額の10パーセント増、内水面で行う漁業や養殖業にあっては現状の産出額の維持を目標とし、これらを合わせた410億円を目標値として設定した。
【委員】
今回の愛知県漁業振興計画は、概要があるため課題などは見やすいが、漁場の整備面積、栽培漁業のセンターにおける種苗生産数量、海面漁業、養殖業の経営体当たりの産出額は、答弁のとおり目標値があるものの、重点施策12点の全体の方向性が網羅されているようには見ることができない。細かな個別項目ごとの目標値について、県としてどのような取組を考えているのか、どのように判断しているのか。
【理事者】
目標値について、数値で目標を立てることができるものは目標値を立てて推進している。今後、こうした410億円の目標に対しては重点的に推進していくべき課題があると思うが、まず、愛知県漁業振興計画の主な施策について引き続き着実に取り組む。
漁業者のニーズに対してスピード感を持って対応するため、幾つかの施策については今後、重点的に取り組んでいく。
漁業者にとって最大の関心事は、漁場の栄養塩不足による漁場の生産力の低下であり、現在行っている社会実験の効果を踏まえ、今後も重点的に取り組む。併せて水産資源の増大にも取り組むため、先ほど答弁した栽培漁業センターの新施設において、ハマグリ等の新規魚種の生産及びナマコ等の既存業種の増産を行う。
また、近年の環境変動に対応するため、漁業者はこれまで以上に資源管理や効率的な操業を行う必要があり、今後はこれらの取組に必要となる水温や塩分などの漁場環境情報を迅速に発信するなどの取組を強化する。
こうした施策を重点的に取り組むことにより、収入の増大や経営の安定化、さらには新規漁業者の就業者の確保にもつなげることで、本県の水産業の持続的な発展を目指す。
【委員】
最後に要望する。
動向調査資料として水産業の動き2023を出してもらっている。そこには、かなり細かな前年度の状況が出ている。その中で、愛知県漁業振興計画については、自治体で考えると総合計画のようなものだと思う。総合計画の中にはそれぞれ基本目標などがあり、その下にアクションプランがある。それが先ほどの25の個別項目であると考えると、その一つ一つの動きを水産業の動きに反映をしてもらえると、私たちだけでなく、漁業関係者にも、非常に見やすくなる。そのようなことなどを今後も水産業が明るくなるような形で進めてもらいたい。
【委員】
愛知県の農業イノベーションプロジェクトについて伺う。
6月定例議会、9月定例議会と続けて農地集約や新規就農、農業出荷額をいかに大きくするかを議論した。結局のところ、これらを減っていかないようにすることがまず一つであったため、そのような議論をしたが、逆に大きくしていく、新しく何かを付け加えていく動きをしなければならない。
そういった中で、農業総合試験場や水産試験場で新たな技術や研究を通じて、農家や漁業者にいろいろな情報を提供してもらっていると思うが、地球温暖化となると、今年の米の出来栄えはあまりよくなく、高温が原因であったと聞いている。農業総合試験場で品種改良してもらった愛知123号が、一等米の場合は愛ひとつぶと呼ばれているが、今回は一等米が非常に少ないとのことである。白濁しにくい品種というブランドをいかにしっかりと確立していくかが大切である。
農業総合試験場や水産試験場は、相当な時間をかけて新しいものを作っているが、現状では、あまりにも長い時間をかけていられないと思う。そのような意味では、県でほかの局と連携してやっている、あいち農業イノベーションプロジェクトがある。具体的には、スタートアップと農業総合試験場を絡めることなどだが、あいち農業イノベーションプロジェクトの現状と成果について伺う。
【理事者】
あいち農業イノベーションプロジェクトは、県農業総合試験場とスタートアップ等との共同研究体制の強化を図り、農業分野におけるイノベーションの創出を目指すものである。
2022年度に、スタートアップ等19社、18課題を公募して選定し、このうち6課題は先行的に昨年の10月から、残りの12課題は今年度から着手し、農業総合試験場を中核とする共同研究開発を進めている。まだ始めて間もないプロジェクトだが、収穫作業の負担を軽減する農業用アシストスーツのように、既に県内で生産者向けのテスト販売を開始している取組もある。
また、環境負荷の少ない栽培方法で生産された米の価値を消費者に分かりやすく伝えるための仕組みづくりに取り組む実証試験について、12月4日に知事から記者発表するなど、現場の実証に進む成果が幾つか出ている。
【委員】
まだ始めたばかりだが、19社のうちの18課題について、特にその6課題について、先行の研究開発が始まったとのことである。
収穫作業の際の農業用アシストスーツの販売も始めたとのことだが、スタートアップは県内の企業や農業者だけではないと思うが、その比率について伺う。
【理事者】
スタートアップ等については、県内の企業だけではなく、県外の企業も幾つかあり、約半数が県外の企業である。ただし、毎月ミーティングを行うなど情報交換は密にしており、また、スタートアップの人が、県内の農業総合試験場に来て実際に実証試験を行うなど、距離に関係なく、しっかり県内農業者のために試験をやってもらう体制を取っている。
【委員】
経済産業局でのスタートアップについて聞いたが、愛知県ではSTATION Aiという大きな拠点を作り、知見を集めようとしているが、ここで起業してもらわなければ意味がない。なるべく共同開発のように、研究している農業総合試験場でイニシアチブを取ってもらい、しっかりとした結果を残すようお願いする。
また、先ほど、事業として農業用アシストスーツの話があったが、本来は、効率化もさることながら、農業に向くような取組があるとよいと思うが、いずれにしても、イノベーションにはそれなりの時間もかかる。そのため、18課題のうちの6課題は研究開発が進んでいるとのことだが、まだ成果も出ていないものについても、いつ成果が出るのかは見えないと思う。
国家事業の予算を用いたプロジェクトだと承知しているが、いつまでやっていけるのか、プロジェクトの期限はあるのか。
【理事者】
現在、本事業は、デジタル田園都市国家構想交付金を財源に実施しており、来年度までの3年間で事業予算がついている。
その後、どのような形で行うかについては、現在、予算編成中であるが、本県ならではの取組を続けることにより、農業分野にイノベーションを次々と生み出す動きを止めることなく進めていきたい。
【委員】
今の話も当然のことながら継続してもらわないと成果が出ない。出るか分からないが、しなければならない。経済産業局の知の拠点でも、同じような研究開発を予算をつけてずっと続けている。
答弁の内容によると、少なくともあいち農業イノベーションプロジェクト自体は、国庫の補助をもらう交付金で行っている事業のため、交付金が切れてしまえば、何のためにこれまでやっていたのかとなる。
そのことについては、何らかの形で残していくべきである。国に交付金が継続してもらえるようお願いすることも一つだと思うが、なくなった場合のことを考え、県として単独で何か対応できるのか考えるべきだが、どうか。
【理事者】
本事業は、現在、交付金を財源として実施しているが、内容からも、交付金が止まった後は全てなくすのではなく、農業イノベーションを創出する事業は継続的にしっかりと行う必要があるため、交付金が終わった後も続けられる仕組みを考える。
【委員】
その考えの下で、予算はしっかりとした裏づけを持って進めてもらいたい。また、イノベーションに限らず、先ほどの農業総合試験場や水産試験場に対する費用も、予算をしっかり確保してもらい、新しいことをいきなり農業者のみではやれないため、愛知県としてしっかりバックアップしてもらうことが、新規就農者や後継者のやる気につながると思うため、そのような部分についても、来年度予算でしっかりと対応してもらうようお願いする。