<愛知県出展参加基本構想>

■ 愛知県出展参加基本構想 ■
21世紀最初の国際博覧会は、「自然の叡智」をテーマに、私たちの愛知県で開催されます。
 この「愛知県出展参加基本構想」は、2005年日本国際博覧会(「愛知万博」)において、開催地元である本県が出展参加するために、出展参加の意義を明らかにした上で、出展参加のテーマや展開の視点、展示・催事の基本的考え方、出展成果の継承など、愛知県の出展参加の骨格について、地域の各界各層の代表者等及び有識者の21名を構成員とする「愛知県出展参加懇談会」において検討していただき、愛知万博での出展参加の成果が、地域の発展に向けた"未来へのかけ橋"となることをめざすものとして、取りまとめたものです。
 この基本構想の策定に際しては、愛知万博のテーマである「自然の叡智」や本県の長期的目標・施策の方向等を示した「愛知2010年計画」の視点を踏まえるとともに、県民アンケートなど幅広い県民の意見の反映等に配慮しました。
 なお、今後、基本計画、基本設計、実施設計と出展参加の具体化を進めていく中で、様々な形の幅広い県民の参加をめざしていきます。
 最後になりましたが、この基本構想の策定に当たり、熱心にご検討いただきました「愛知県出展参加懇談会」の委員の皆様を始め、ご協力いただきました多くの関係者の方々に心からお礼申し上げます。

平成12年6月

愛知県知事 神 田 真 秋



−目次−

1 出展参加がめざすもの
2 出展参加のテーマ
3 テーマ展開の視点
4 出展参加の主体
5 展示・催事の基本的考え方
6 展示・催事の構成
7 施設の位置及び規模
8 出展成果の継承


 1:出展参加がめざすもの

 人類は、産業革命以降、科学・技術の飛躍的な進歩のもと世界が競って経済成長を追い求め、大量生産・大量消費・大量廃棄型の物質的な豊かさを手に入れる一方で、資源の枯渇、廃棄物の蓄積、廃棄物による汚染等、多くの地球的規模の諸課題に直面することとなり、現在、これからの人類の発展にとって大きな岐路に立っています。
 こうした中で「自然の叡智」をテーマとする愛知万博は、これらの地球的諸課題について一人ひとりが考える機会を提供するとともに、世界の英知を集め、21世紀型産業、文化のあり方や循環型・省エネルギー社会のモデルづくりなど、来るべき時代のひな形を創造し、その成果を世界に発信、次世代に継承していくことをめざしています。

この愛知万博に出展参加する愛知県は、気候・風土・景観などの恵まれた「自然環境」、 モノづくりの知恵に支えられた世界的な「産業技術の集積」など、多様な地域資源を有しています。 そこで、愛知県の出展参加は、これらの地域特性を十分に活かしながら、新しい時代に向け、 夢と希望がふくらむ新しい姿の地域形成をめざす契機としてとらえ、その地域形成の姿を『エコ・コミュニティ』と 位置づけます。
 『エコ・コミュニティ』とは、毎日の暮らしが地球環境に影響を及ぼしていると認識し、 リサイクルの推進やエネルギーの節約に努め、緑や水、空気を大切に守り、さまざまな生物が共に生きていくことを めざす循環型社会です。
 愛知県の出展参加は、この『エコ・コミュニティ』を新しい地球創造の担い手にしなければならないと提案していきます。

また、愛知県は、陸・海・空の総合的な交通基盤が整いつつあるとともに、 多様な自然や歴史・文化資源、世界的な産業技術を有しながら、国際的には非常に知名度が低いのが現実です。 その意味では、愛知万博は国際的に「Aichi」をアピールする絶好の機会であり、多様な交流の場となります。 愛知が誇る魅力を余すことなく紹介し、開催地元県として来場者を誠心誠意もてなすことにより、世界との交流を深め、 この地域の一層の発展に繋げていくことをめざします。

愛知万博への出展参加は、地域の"未来へのかけ橋"であり、県内の参加者や内外の人々に夢や希望に満ちた体験の場を 提供することが必要です。
来場者の記憶に深く刻みこむため、空間構成、演出等は期待、驚き、感動など五感・情感にアピールし、楽しさ、刺激性、 革新性を追求します。


(1)21世紀の地域社会づくりのモデルとして、『エコ・コミュニティ』を提案
 『エコ・コミュニティ』を21世紀の愛知がめざす地域づくりの柱のひとつとするとともに、 その形成は自然の保全・回復や、環境負荷を低減する資源の循環やエネルギーの省力化等をものさしに、 地域社会を構成するNPO等を含む県民の主体的な行動と、企業、行政等の連携、協働によるさまざまな取組を柱とします。 そこで愛知県の出展参加は、愛知県の将来ビジョンである『エコ・コミュニティ』づくりを内外に宣言するとともに、 愛知万博の開催に向け、全県を巻き込んで取り組まれる自然の保全・回復や環境への負荷の少ない循環システムを取り入れた ライフスタイルなど、その成果をモデルとして世界に提示します。

○愛知県の自然の豊かさを再認識し、県民、企業、行政などのさまざまな主体が互いに知恵を共有し協調しあうことで、 自然環境の保全や循環型社会をめざす地域づくりにチャレンジしていきます。
○モノづくり県として培ってきた技術の蓄積を活かし、環境への負荷の軽減に資する商品・サービスを開発したり、 さまざまな社会経済活動を環境保全型のものに変革させる上で役立つ技術やシステムを提供する等、 21世紀の愛知の産業を牽引する環境ビジネスの創造を支援します。

(2)主体的な県民参加で県民一人ひとりがつくる愛知万博
 『エコ・コミュニティ』の実践には、環境を地球的な視野で考え、地域で実践する地球市民として参加することが必要です。 21世紀最初の国際博である愛知万博では、この『エコ・コミュニティ』づくりに向け、NPO・NGOなどの市民組織や 個々の県民自身が国際博への「入場者」という受動の位置にとどまることなく、愛知県の出展参加の担い手として、 主体的な参加を試みる場と位置づけます。そしてその過程で生まれた参加の仕組みそのものが、出展参加を契機とした新たな 『エコ・コミュニティ』づくりに継承、発展していく大きな「ムーブメント」を育てていきます。

○出展の計画段階から、県民が主体的に参加し、その責任をも担うという仕組みづくりに取り組みます。
○NPO等を含む県民・企業・行政といったさまざまな立場からの参加を求め、それぞれの機能が有効に発揮できる場と 機会を提供し、連携・協働によるレベルの高い出展成果の形成をめざします。

(3)時代に先駆けた提案により、国際社会における愛知をアピール
 国際博覧会は、新しい文明を創り出すため世界の英知を集め、競い合い、交流する場です。
 この地域は、世界経済の約1%の規模を占め、世界の繁栄に貢献できるポテンシャルがあります。 21世紀最初に開催される愛知万博は、人類の共通の課題である「環境問題」に向き合い、新しい世界の「ひな形」を 世界に発信していく絶好の機会と考えています。そうした愛知万博の開催地元県として、時代に先駆けた取組を 提案することにより、国際社会での知名度を高め、地位の向上をはかります。

○ モノづくり県の特性を活かした先端的な環境技術などの提示や全県民の『エコ・コミュニティ』づくりへの取組が、国際社会、とりわけ近隣のアジア諸国での環境問題の解決に先導的な役割を果たすことをめざします。
○ 世界の人々との交流を通じて、さまざまな伝統や生活様式等の多様性を学ぶことにより、県民が取り組む『エコ・コミュニティ』づくりに新たな価値を付加するとともに、その成果を普遍的な価値あるメッセージとして世界に提示することにつなげます。
○ 気候や風土、物産、文化、伝統工芸、観光資源などの紹介を通じて、国内はもとより海外の人々に、愛知県の歴史、現在、そして未来の姿を伝え、愛知への理解を深めることにより、より活発な交流の促進をはかります。


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 2:出展参加のテーマ

愛知県の出展参加は、今日世界が直面する課題に対して、地域の視点から解決をめざす『エコ・コミュニティ』を提案します。 県民一人ひとりが地球規模の課題を身近な地域社会において考え、解決の道を探ることによって、全県民が国際的な視野で 社会に貢献する地球市民へと成長することにつなげます。そのために県民が準備段階から主体的に参加できるシステムの 確立をはかり、この出展参加を通じて、国際社会への貢献をめざす愛知の取組を世界にアピールします。
 以上の出展意義を表現するテーマフレーズは、あらゆる方に理解され共感を呼び、未来への夢や希望を提供できるものを 選定しました。

「チャレンジ」
  〜人に自然にやさしい、エコ・コミュニティの実現〜


 3:テーマ展開の視点

懇談会での検討や県民アンケートでは、「アピールすべき愛知らしさ」について、産業・技術、自然・風景、歴史、 祭り・芸能といった分野に意見が集中しています。また、地域の資産は何よりそこに住む人であり、多様な県民の参加を 促進し、さまざまな主体の連携・協働をはかり、人材育成の契機となることも望まれています。
 これらのアンケート結果などを念頭に、愛知県の有する資産を最大限に活用するために、「人・ひと」「産業と技術」 「生活と文化」「自然と人間」の4つの視点からアプローチします。

(1) 「人・ひと ネットワークからムーブメントへ」
愛知県のいちばんの資産は、およそ700万を数える県民の力です。
 一人ひとりの県民、市民団体の新しい姿として活躍が期待されるNPO・NGO組織、 さらに県内88市町村の主体的な参加を原動力とした出展参加をめざします。そして、NPOを含む県民と行政である 市町村の新しい関係の共同意識のもと、それぞれの機能が有効に発揮され、企業を含めたさまざまな主体が密接に 連携・協働することにより、県の将来像『エコ・コミュニティ』づくりはもとより、その地域づくりの取組を愛知万博の 開催地元県の愛知から発信し、内外に向けた大きな「ムーブメント」となっていくよう工夫します。

(2) 「産業と技術 モノづくりの知恵」
モノづくり県としてこれまでの産業技術を見つめ直し、技術が人間のライフスタイルにどのような影響を与えるかを過去、 現在、未来に渡って展望します。
これは「人間は何をつくってきたか」「技術は人間をどう変えたのか」「日本人とテクノロジーの関わり」等について 考える機会となり、『エコ・コミュニティ』における技術の役割、課題の探究に結びつきます。 さらに人と自然が共生するライフスタイルという視点を重ね、「動く」「装う」「食べる」「住む」「つながる」 といった身近な人間の行動別の分類により考察することによって、『エコ・コミュニティ』における技術の役割、 課題の探究に結びつけていきます。
特に次代を担う子供たちを対象に、モノづくりの楽しさや喜びを体験できる場づくりをはかります。 子供たちの知的好奇心を刺激し、遊びを通して、素直な感動につながるよう演出や仕掛けを工夫します。

(3) 「生活と文化 隠された共生の知恵」
愛知県には、花祭・鬼祭・農村歌舞伎など、全国的に著名で民俗学的にも興味深い祭礼や伝統芸能が数多く伝えられており、 また陶芸や和紙工芸など世界に誇りうる伝統工芸を生みだしてきました。そうした祭礼や伝統工芸、 その背景となった神話や昔話には、現代生活の中で忘れがちな自然への素朴な感謝の気持ちや畏敬の念が込められており、 人と自然の共生を実現する上で重要な知恵が隠されています。
風土や伝統の中で育まれてきた生活文化の象徴的存在である、祭礼や伝統工芸、神話や昔話の根底に隠された知恵に理性的に アプローチし、生活に根ざした人と自然が共生するための知恵を探究します。
古来から自然は子供たちの身近な存在であり、鎮守の森での遊びや川遊びなど、自然と遊ぶなかで共生の知恵を教えてくれる 存在でした。そんな懐かしい体験や楽しい思い出をもう一度新たな気持ちで掘り起こすことから、 子供たちの豊かな創造力を育む場を提供します。

(4) 「自然と人間 生き物としての人間」
自然の中での人間のあり方について考えるにあたっては、身近な自然から発想することが大切です。 山・川・海、湿地や干潟など、人間の日常生活と自然が近接する愛知の特性は、人と自然の共生を考える上で最適な条件を 備えています。
 こうした身近な生物の視点から自然を見つめることで、人間中心の自然観の見直しをはかり、 生物としての人間が自然の中で生きるとはどういうことかを探究し、人間が地球環境の一員であるという意識を育てます。


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 4:出展参加の主体

 『エコ・コミュニティ』の実践は、地球市民としての意識に支えられた地域の人々の具体的な行動が原動力です。 愛知万博の出展参加は、そうした県民の活動や成果を内外にアピールすることをめざしています。従って、 計画段階から出展成果の継承に至るまで、「県民総参加型ムーブメント」として事業を推進します。
出展参加の主体は、愛知県と、県内88市町村、県民が中心となったNPO・NGOをはじめとする諸団体、 企業や学術分野の団体等です。こうした地域づくりへの県民の主体的活動が、活力ある地域社会の形成に貢献するよう 取り組みます。 ○ 具体的な仕組みは、県内88市町村を基礎的単位として捉え、関係団体等の協力によりスムーズな推進体制を整備します。
各地域の特性を活かしつつ、競争原理を導入することによって、より早く、より意識の高い参加活動を促進します。 そのなかで、大企業はもちろん中小の企業が持てるノウハウを提供し、大学をはじめとする学術機関が専門的な裏付けや 教育プログラムの実施等による支援を行い、文化・芸術団体が展示や表現の場で活躍するなど、 さまざまな主体がその特性を活かしつつ連携・協同していくことをめざします。

○88市町村等の活動や事業、ノウハウ等の成果は、愛知県出展参加の中で発表・表現され、関係団体相互の、 また来場者との情報交換・交流の機会となります。
 あわせて、代表的あるいは参考的な事業も推進し、その成果を展示や映像などによって発表し、 国際社会に向けて印象的にアピールします。

○愛知県は、主体間の協議・調整や対外的な折衝支援、多様な意見を取り入れた参加プログラムのとりまとめ、 役割分担や権限の明確化、マスメディアの協力やインターネット等を活用した広報活動など、さまざまな支援を行います。

○なお、県域を越えた自治体の共同出展については、それぞれの自治体の意向を踏まえ、 その体制について今後検討していくものとします。


 5:展示・催事の基本的考え方

愛知県の特性を活用して来場者をもてなし、参加体験を通じて『エコ・コミュニティ』が21世紀のライフスタイルとして 実感でき、また将来に博覧会の成果を伝えていくことができるよう、以下の視点で手法・内容を工夫します。

(1) 手法
○最先端の情報通信技術を多面的に活用

 準備段階の連携・協働、内外のネットワーク形成、会期中における情報の受発信、提案手法、成果の継承等、 あらゆる段階で最先端の情報通信技術を活用します。
 会期中には、時を越え空間を越えたリアリティに満ちた演出表現、参加型・体験型の装置、 五感に訴える演出手法などにより、説得力のある提案・発信を行います。また、最先端の情報受発信技術を活用することに より、会場外からの参加の仕組みづくりにも積極的に取り組みます。

  ○難しいことをやさしく、深く伝えることに配慮
 人と自然が共生するライフスタイルを確立するには、より多くの人が当事者となり、考え行動していくことが求められます。 よって展示・催事の手法は、特定の人だけでなく、より多くの層に理解を促し、行動へと結びつけることが求められます。
 さまざまな要素が複雑にからみ合う環境問題に対しては、解決法を一方的に提示するのではなく、来場者が自ら問題を発見し、 それぞれが答えを見いだすといった、参加・体験型の手法を取り入れ、真の理解を得るよう努めます。
 それぞれの課題には平易な解説を加えるとともに、多様な来場者の興味や意見に対して柔軟な対応ができる、 双方向型のコミュニケーション技術等を活用するなど、来場者にやさしく、かつ深く伝えるよう配慮します。

  ○驚きや楽しさなどエンターテインメント性の高い展示・催事
 展示・催事化に際しては、驚きや楽しさに満ちたエンターテインメント性の高い手法で、 わかりやすく印象的に伝えることを心掛けます。
そのために参加性、体験性、双方向性を重視し、リアル・バーチャル両面でのさまざまなコミュニケーション技術を 活用します。特に次代を担う子供たちに対し、次世代型エネルギーの利活用方法、自然の素晴らしさなどをわかりやすく アピールし、『エコ・コミュニティ』実践に向けた行動への契機となることをめざします。
例えば、巨大な映像や3D(立体)シミュレーター、光・音・香りなどを相乗的に活用した幻想的な空間等により、 五感に訴え、感動を与え、子供たちの記憶に深く刻みこまれるドラマティックな演出をはかります。

  ○「和の知恵」をもてなしの心として表現
 日本の文化は、日本人独特の自然との接し方を象徴的に表現しています。四季折々の風情が、茶道や華道、短歌や俳句など、 繊細で洗練された文化を生みだしたのです。こうした自然と調和して生きる心が、「和の知恵」の基本であり、 一期一会の心を表現しています。こうした「和の知恵」を国内外からの来場者に対するもてなしの演出に取り入れ、 日本人独特の自然との接し方への理解を体験的に促します。

  ○施設・運営面での環境配慮を優先
 『エコ・コミュニティ』を提案する以上は、出展参加施設自体が、4R(Refuse:不要なものは断る、 Reduce:ごみや使用するエネルギー量を減らす、Reuse:再利用する、Recycle:再資源化する)を具現化することが求められ ます。
 そのため施設づくりにあたっては、リサイクル材料の利用、自然環境の保全や景観への配慮、循環型エネルギーの採用、 廃棄物の減量化等に取り組み、運営にあたっても、徹底した省エネルギーに取り組むなど、環境負荷の低減に努めます。  また、そこで使われている技術やシステムを来場者にわかりやすく提示し、その取組をアピールしていきます。


(2) 内容
○生きる豊かさ・歓びを体現

 人と自然が共生する21世紀のライフスタイルは、「生きる豊かさ・歓び」といった新たな生活価値観を 提案・発信することが、精神面の強い基盤となります。
 出展参加の準備段階から会期中に至るまでに展開される、県民・企業・行政等のさまざまな主体の新たな 連携・協働は、まさに「生きる豊かさ・歓び」を実感させるものです。特に次代を担う子供たちに対し、 世界の子供たちとの出会いの場が新たな価値観を創造し、地球市民へ成長する糧となるよう働きかけます。

  ○人と自然の共生する社会に向けて、モノづくりの貢献を提示
 技術の発展は、暮らしに多くの利便性をもたらし、繁栄の牽引役となってきました。 ゆきすぎた経済競争は地球規模での課題を生じさせましたが、これまでの産業技術を問い直すことからも、 新時代にふさわしい創造的な技術への道が拓けます。モノづくりの先進地域として日本の産業をリードしてきた愛知県こそ、 こうした問い直しをする価値があり、その成果は環境ビジネスの創造等、愛知の産業のさらなる発展への契機となります。
 伝統的な技から最先端技術の紹介を通じて、「人間は何をつくってきたか」 「新しい技術が環境にどんな貢献ができるのか」等について理解を促し、21世紀を支える技術を展望します。

  ○アジアからの視座で、人と自然が共生する社会実現のための意識を提案
 日本は、アジアの近隣諸国と長い歴史を通じて、互いの文化形成に影響を及ぼしあってきました。 自然と人間が濃密な関わりをもってきた日本をはじめとするアジア各国の文化の根底には、自然との親和性や自然への 畏敬の念があります。古くは欧米の社会にも、このような人と自然が共生する自然観がありました。
 アジアに今も生きる自然観を祭や伝説などをモチーフに、欧米の自然観と対比しながらできるだけ合理的にわかりやすく 解説し、普遍的で価値あるメッセージとして発信し、21世紀のライフスタイルを支える意識を育みます。

  ○生態系全体から、人と自然の共生を探究
 地球の豊かさは、希少な種から私たちの身近な植物、微生物まで含めた生物の多様性に支えられてます。 生き物たちの視点で世界や自然を見つめることは、生態系全体から人と自然との共生を見直し、豊かな自然の価値を再認識 することにつながります。
 最新の表現技術を活用し、例えば「昆虫の視点から見た自然」「生態系における人間活動の影響」等について、 愛知県の身近な自然やアジアの自然をモチーフに、ミクロ・マクロの視点でリアルに探究します。また「人間の内なる自然」 にも着目し、私たちのからだを支える生命システムの驚異を伝え、生態系の一員としての人間を見直します。

  ○陶芸など、自然素材を活かした「暮らしのわざ」の価値を訴求
 愛知県は、土と炎の1300年の歴史を有する瀬戸の陶磁器を始め、土や木などの自然の素材を活かした陶芸や和紙工芸 などが盛んな地域です。これらは身近な生活道具であるとともに、生活の彩りの一つとして長い間愛用され、 ときには芸術の域にまで高まった「暮らしのわざ」であり、貴重な地域の資産です。
 こうした自然の素材と職人の繊細な技術が融合した「暮らしのわざ」を展示紹介するとともに、 来場者に制作等の実体験の場を提供し、自然と共生してきた文化や人間の持つ繊細な技の価値をアピールします。

  ○多様性のある愛知の魅力を印象的に紹介
 愛知県は、モノづくりの集積や豊かな自然、祭礼、歌舞伎など、産業、歴史・文化、芸術の分野で、 多様な魅力がバランスよく存する地域です。
 こうした愛知の魅力ある資源を、県内88市町村それぞれの特性を活かした手法による紹介と交流によって、 愛知の魅力をより一層高めていくとともに、世界からの来場者に対して印象的にアピールし、深い理解を獲得するとともに、 愛知の知名度の向上につなげます。


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 6:展示・催事の構成

展示構成については、来場者の導入部であるエントランス機能、出展参加の中心となるテーマ展開機能、 地域を越えて多様な交流を深めるイベント機能、地域の魅力を紹介する地域紹介機能、ホスト県としてのおもてなしを するサービス機能の5つの機能が必要になってきますが、具体的な構成については、基本計画の中で検討を行います。
(1) エントランスゾーン
導入部であるエントランスゾーンは、来場者にこれから体験する非日常的な空間に対する期待感を醸成する場です。  愛知県のさまざまな風景や県民の生活シーン等が垣間見える中で、テーマゾーンへのガイダンスを行いながら、 来場者のわくわくどきどきする気持ちを高めていきます。また、来場者を調整する待合いエリアとしても機能させます。

(2) テーマゾーン
テーマゾーンは、愛知県の出展参加のテーマを直接来場者に語りかける場です。
 テーマゾーンの入り口であるシンボルエリアは、テーマを象徴的にイメージ化して伝達します。
 テーマ展示エリアは、各々の展示内容に対応した最適な展示手法で表現する、中核となるエリアです。 体験型の展示手法や、問題に対する解決法を押し付けるのではなく、来場者が解決法を探索できる展示手法を用います。

(3) イベントゾーン
イベントゾーンは、交流と喜びの場です。
 県民参加によるイベント・祭り等を可能とするステージ機能などを提供します。

(4) アピールゾーン
アピールゾーンは、来場者が愛知を知る場です。
 県内88市町村がそれぞれの地域の魅力を、様々な手法で来場者に語りかけます。

(5) サービスゾーン
サービスゾーンは、もてなしとくつろぎの場です。
 人をもてなす「和の知恵」が表現された開放的なくつろぎの空間とし、来場者・参加者の交流の場、にぎわいの場として機能させます。


 7:施設の位置及び規模

施設の位置は、海上地区、青少年公園地区それぞれの地区の性格付けを踏まえ、会場計画が策定されていく中で、 愛知県の出展参加として適切な位置を検討していきます。施設の規模については、開催地元県としてふさわしいものとします。


 8:出展成果の継承

愛知万博を一過性のイベントに終わらせず、地域にとって貴重な財産として将来に活かし、発展させていくため、 次のような取組を進めていきます。
出展施設と成果の恒久的な利活用
愛知県の出展参加の施設及び展示・催事等の成果は、会期終了後も引き続き地域づくりの中で 継承・発展させるための拠点施設として恒久利用をはかるとともに、国内はもとより、世界に情報発信していくことを めざしていきます。

『エコ・コミュニティ』づくりを継承・発展
 愛知万博を契機に大きく花開く『エコ・コミュニティ』づくりは、まだまだ緒についたばかりであり、 愛知万博で得た技術、ノウハウ、人的ネットワークといった成果を活かしつつ、県民を含めたさまざまな主体の役割に 応じた取組によって、『エコ・コミュニティ』を深めていきます。

県民の主体的な参加方式の確立
愛知県の出展参加の場で形づくられた県民の主体的な参加の仕組みを引き続き『エコ・コミュニティ』づくりに継承し、 地域に浸透させていく一方で、この仕組みをモデルに他の場面にも展開、普及し、次第に定着させていきます。  こうした地域づくりへの県民の主体的参加が、活力ある地域社会の形成に貢献することをめざします。


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