第2 地下水の水質調査結果

 
1 調査期間
  平成10年4月〜平成11年3月
2 調査機関
  愛知県、建設省、名古屋市、豊橋市、豊田市
3 調査目的
 概況調査           :県下の全体的な地下水質の概況把握調査
 定期モニタリング調査(定点) :同一地点における地下水質の経年的変化把握調査
 汚染井戸周辺地区調査     :概況調査において環境基準を超過した地点等におけ
                 る汚染範囲確認等調査
 定期モニタリング調査(監視) :過去に環境基準を超過した地点の継続的な監視調査
4 調査地点数
    地域
    概況調査
    定期モニタリング
    (定点)
    汚染井戸
    周辺地区
    定期モニタリング
    (監視)
    尾張
    40
    12
    5
    13
    西三河
    26
    5
    2
    3
    東三河
    15
    5
    1
    1
    81
    22
    8
    17

 
5 調査結果の概要
(1)概況調査
   環境基準が定められているカドミウム、鉛等23項目について、81地点で延べ
  3,109検体について実施した。その結果、73地点で環境基準に適合したが、
  8地点において新たに環境基準を超過したことが判明した。
 
   環境基準を超過した地点における概況調査の結果
    調査地点
    項目
    年間平均値
    (mg/l)
    環境基準
    (mg/l)
    三好町大字 
    0.011
    0.01以下
    祖父江町大字 
    砒素
    0.019
    0.01以下
    津島市 
    砒素
    0.027
    0.01以下
    立田村大字 
    砒素
    0.023
    0.01以下
    名古屋市緑区 
    砒素
    0.012
    0.01以下
    名古屋市緑区 二丁目
    総水銀
    0.0093
    0.0005以下
    幸田町大字 
    1,1‐ジクロロエチレン
    0.040
    0.02以下
    豊川市 
    テトラクロロエチレン
    0.11
    0.01以下

(2)定期モニタリング調査(定点)
   環境基準が定められている23項目について、22地点で延べ605検体を調査
  した。その結果、平和町において、地層・地質に由来すると推定される砒素が昨年
  度に引き続き環境基準を超過したが、その他の地点では環境基準に適合した。
(3)汚染井戸周辺地区調査
   概況調査で環境基準を超過した地点及び環境基準に適合したものの、1回の測定
  値でテトラクロロエチレンが環境基準を超過した大口町大字年間平均値0.0098mg/l
   : 環境基準 0.01mg/l以下)について、汚染範囲の確認等のため実施したが、その
  結果は以下のとおりであった。
  ア 鉛が確認された三好町大字明知では、周辺井戸においては検出されなかった。
   汚染の原因は、周辺に鉛を使用している事業場等がないこと、鉛製の給水管を使
   用していないことから、地層・地質に由来する自然的要因によるものではないか
   と推定された。
  イ 砒素が確認された地点のうち、津島市上新田町では、4本の周辺井戸において
   も環境基準を超過した。
    立田村大字森川では、3本の周辺井戸においても環境基準を超過した。
    名古屋市緑区大高町では、周辺井戸においては検出されなかった。
    これらの汚染の原因は、周辺に砒素を使用している事業場等がないこと、尾張
   地域には御岳山の火山噴出物を含む地層があり、この地層には砒素が多く含まれ
   ていることなどから、地層・地質に由来する自然的要因によるものと推定された。
    なお、祖父江町大字桜方については、周辺に砒素を使用している事業場等がな
   く、従来の調査結果から尾張地域のうち地層・地質に由来する砒素が地下水に溶
   出しやすいと推定されている地域に位置することなどから、周辺井戸の水質調査
   は実施しなかった。
  ウ 総水銀が確認された名古屋市緑区池上台二丁目では、周辺井戸4本においても
   環境基準を超過した。
    汚染の原因は、周辺に総水銀を使用している事業場等がないこと、当該地域の
   矢田川累層に含まれる亜炭層には通常より多く水銀が含まれているといわれてい
   ることなどから、地層・地質に由来する自然的要因によるものと推定された。
  エ 1,1-ジクロロエチレンが確認された幸田町大字大草では、周辺井戸において
   は検出されなかった。
    汚染の原因は、周辺に1,1-ジクロロエチレンを使用している事業場等がなく、
   過去に操業していた複数の事業場が1,1,1-トリクロロエタンを使用していたこと、
   1,1-ジクロロエチレンは1,1,1-トリクロロエタンが地中で分解されることによ
   って生成することから、過去の汚染によるものと考えられたが、特定するには至
   らなかった。
  オ テトラクロロエチレンが確認された豊川市下長山町では、周辺井戸1本におい
   ても環境基準を超過した。
    汚染の原因は、周辺にテトラクロロエチレンを使用している事業場等がなく、
   過去にテトラクロロエチレンを使用していた複数の事業場が存在したことから、
   過去の汚染によるものと考えられたが、特定するには至らなかった。
  カ テトラクロロエチレンが確認された大口町大字萩島では、周辺井戸1本におい
   てテトラクロロエチレン、トリクロロエチレン及び1,1-ジクロロエチレンが、
   また、別の周辺井戸1本においてテトラクロロエチレンが環境基準を超過した。
    汚染の原因は、周辺にこれらの物質を使用している事業場等がなく、過去にテ
   トラクロロエチレンを使用していた事業場、トリクロロエチレンを使用していた
   事業場、1,1,1-トリクロロエタンを使用していた事業場がそれぞれ存在し、また、
   1,1-ジクロロエチレンはこれらの物質が地中で分解されることによって生成す
   ることなどから、過去の汚染によるものと考えられたが、特定するには至らなか
   った。
    今回、環境基準を超過した井戸については、当該井戸の所有者及び周辺地区の
   住民に対して、広報等により飲用指導を実施した。
    これらの地点については、今後、定期モニタリング調査(監視)を実施してい
   く。
 
汚染井戸周辺地区調査の結果

調査地点
項目
調査 井戸数
検出濃度
(mg/l)
環境基準
超過井戸数
環境基準
(mg/l)
三好町大字明知
5(1)
<0.0050.005
0(0)
0.01以下
津島市上新田町
砒素
5(1)
0.0150.030
5(1)
0.01以下
立田村大字森川
砒素
5(1)
<0.0050.029
4(1)
0.01以下
名古屋市緑区
大高町
砒素
4(0)
<0.005
0(0)
0.01以下
名古屋市緑区
池上台二丁目
総水銀
8(1)
<0.00050.0095
5(1)
0.0005以下
幸田町大字大草
1,1‐ジクロロエチレン
7(1)
<0.0020.046
1(1)
0.02以下
豊川市下長山町
テトラクロロエチレン
8(1)
<0.00050.14
2(1)
0.01以下
大口町大字萩島
テトラクロロエチレン
7(1)
<0.00050.096
2(0)
0.01以下
トリクロロエチレン
7(1)
<0.0020.12
1(0)
0.03以下
1,1‐ジクロロエチレン
7(1)
<0.0020.027
1(0)
0.02以下

注( )内は、発端井戸を内数で示す。
(4)定期モニタリング調査(監視)
   過去の概況調査等において、環境基準を超過した17地点(鉛1地点、砒素9地
  点、総水銀4地点及びトリクロロエチレン等有機塩素系化合物3地点)について、
  発端井戸及び周辺井戸の計32井戸で実施した。
   その結果、藤岡町大字(鉛)、名古屋市中川区(砒素)、名古屋市南区(砒素)、
  小牧市一丁目(総水銀)及び安城市(1,1-ジクロロエチレン)の計5地点について
  は、発端井戸及び周辺井戸とも環境基準に適合したが、その他の地点では、濃度に
  変動はあるものの、概ね同程度で推移していた。
   なお、この調査は、今後も引き続き実施していくが、小牧市一丁目(総水銀)に
  ついては、平成7年度以降連続して不検出であることから、平成10年度で調査を
  終了する。