平成16年1月6日更新

 平成14年11月に中国広東省で発生したと考えられるSARS(重症急性呼吸器症候群:Severe Acute Respiratory Syndrome)は、世界的に患者の発生が確認されていますが、現時点では治療法、感染経路等については明確になっていません。こうしたことから、不確定な情報が氾濫し、一部では必要以上に過敏となることも危惧されるため、正確な情報提供が必要と考えられます。
 このページでは、SARSに関する情報や愛知県のSARS対策についてご紹介します。

   愛知県SARS対応行動計画(4訂版)を策定しました。ダウンロードはこちらから。  

○SARSとは
○SARSの現状
○SARSに関するQ&A
○愛知県のSARS対策
○SARS不安者行動マニュアル
○リンク集

○SARSとは
 SARSとは、アジア、北アメリカ、ヨーロッパで患者発生が報告されている原因不明の疾患です。SARSの潜伏期間は通常2〜7日ですが、10日におよぶ場合もあります。
 症状は多くの場合、38度以上の高熱、悪寒、戦慄等で、その他の症状(頭痛、全身倦怠、筋肉痛など)を伴います。発症時には軽度の呼吸器症状を呈した症例もみられました。数例の患者で、有熱前駆期に下痢を伴ったとの報告がありますが、典型的な例では発疹、神経学的症状、消化器症状などは見られません。
 原因となる病原体について、WHOは新種のコロナウイルスであると発表しました。
 いまのところ有効な治療法はなく、対症療法が取られています。

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○SARSの現状
 平成15年7月11日現在のWHOのまとめによると、可能性例を含むSARS患者数は8,437人、うち死亡者数は812人となっています。回復例は7,452人です。
 WHOによりSARSが地域内で伝播しているとされている地域は次のとおりです。なお、赤い網掛けの地域は、WHOが不要不急の旅行を延期するよう勧告している地域ですが、6月24日付けで北京に出されていた渡航延期勧告が解除されました。よって、現時点では渡航延期勧告が出されている国・地域はありません。

<最近の地域内伝播状況>

地域 5月 6月

7月 

10〜 13 14〜 17〜 20 21〜 23 24〜 25〜 30〜 13〜 17〜 23 24〜

2〜

5〜

カナダ トロント

B

B

 

 

 

 

 

 

B

B

C

C

C

C

 

 

中国 北京

C

C

C

C

C

C

C

C

C

C

C

C

C

 

 

 

広東省

C

C

C

C

C

C

C

C

C

C

 

 

 

 

 

 

河北省

 

B

B

B

B

B

B

B

B

B

 

 

 

 

 

 

香港

C

C

C

C

C

C

C

B

B

B

B

B

 

 

 

 

湖北省

 

A

A

A

A

A

A

A

A

A

 

 

 

 

 

 

内モンゴル自治区

不明

C

C

C

C

C

C

C

C

C

 

 

 

 

 

 

吉林省

 

B

B

B

B

B

B

B

B

B

 

 

 

 

 

 

江蘇省

 

A

A

A

A

A

A

A

A

A

 

 

 

 

 

 

山西省

C

C

C

C

C

C

C

C

C

C

 

 

 

 

 

 

陝西省

 

A

A

A

A

A

A

A

A

A

 

 

 

 

 

 

天津

不明

C

C

C

C

C

C

C

C

C

 

 

 

 

 

 

台湾

台北 C

C

C

C

C

台湾 C

C

C

C

C

B

B

B

B

B

 

フィリピン マニラ

B

B

B

B

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シンガポール シンガポール

B

B

B

B

B

B

B

B

B

 

 

 

 

 

 

 

 WHOは、感染の発生した環境にかかわらず、最近20日以内にその地域内での感染が最も強く疑われる複数のSARS「可能性例」が報告された場合を「最近の地域内伝播」が起こったとしています。

流行の指標

定 義

A

輸入されたSARSの「可能性例」患者と直接個人的な接触があった人達の間にだけ二次感染による「可能性例」患者が発生しているパターン

B

パターンAによる二次感染「可能性例」患者から、これらの患者との接触が前もって確認されていた人達の間に、さらに「可能性例」患者が発生しているパターン

C

「可能性例」患者との接触が前もって確認されていない人達の間にも「可能性例」患者が発生しているパターン

不明

地域の特定もしくは地域内での感染の程度に関して十分な情報が得られていない場合

(参考)5月9日までの伝播確認地域は以下のとおりです。

日付

カナダ

シンガポール

中国

アメリカ

イギリス

ベトナム

モンゴル

フィリピン

3/16〜 トロント バンクーバー シンガポール 広東省                   香港                ハノイ          
3/18 トロント バンクーバー シンガポール 広東省                   香港 台湾            ハノイ          
3/19〜 トロント        シンガポール 広東省                   香港 台湾            ハノイ          
3/27〜 トロント          シンガポール 広東省 山西省 北京          香港 台湾             ハノイ          
4/1〜 トロント          シンガポール 広東省 山西省              香港 台湾             ハノイ          
4/11 トロント          シンガポール 広東省 山西省 北京          香港 台湾             ハノイ          
4/12〜 トロント          シンガポール 広東省 山西省 北京          香港 台湾 アメリカ ロンドン ハノイ         
4/19〜 トロント          シンガポール 広東省 山西省 北京 内モンゴル自治区    香港 台湾 アメリカ ロンドン ハノイ         
4/28〜 トロント          シンガポール 広東省 山西省 北京 内モンゴル自治区    香港 台湾 アメリカ ロンドン             
5/1 トロント          シンガポール 広東省 山西省 北京 内モンゴル自治区 天津 香港 台湾               ウランバートル  

5/2〜

++

  

++

+++

+++

+++

不明

不明

+++

++

        

+

 

5/7

++

  

++

+++

+++

+++

不明

不明

+++

台北++

        

+

++

5/8

++

  

++

+++

+++

+++

不明

不明

+++

++

        

+

マニラ++

5/9

++

  

++

+++

+++

+++

不明

不明

+++

+++

        

+

++

流行の指標

定 義

+

SARS「可能性例」の輸入症例が、直接的個人的接触により地域内で感染伝播し、二次感染による「可能性例」が発生した場合。

++

地域内で二次感染かそれ以上の感染によるSARS「可能性例」がみられるが、すべての症例がSARS「可能性例」の既知の接触者として、事前に確認され、経過観察下にあったものからの発症である場合。

+++

上記「+」や「++」で説明されたものとは異なる形式の伝播が見られる場合。

不明

地域の特定もしくは地域内での感染の程度に関して十分な情報が得られていない場合

(注)
1 
WHO発表資料に基づいて作成しています。
2 毎週日曜日はWHOによる情報の更新がありません。また、6月7日以降は毎週土曜日の更新もなくなりました。
3 アメリカは国としての報告はありますが、アメリカ国内の特定地域の指定はありません。
4 5月2日から伝播確認地域の表記方法が変更され、国・地域名に加えて地域内の伝播の程度が表記されるようになりました。
5 台湾(台北)については、5月7日まで「台湾」として指定されており、5月8日から「台北」と指定されました。
6 フィリピンについては、5月7日に「フィリピン(地域は指定されていない)」として指定され、5月8日から「マニラ」と指定されました。


 上の表を含めた発生状況について、こちらからダウンロードできます(エクセルファイルです)。

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○SARSに関するQ&A
 SARSという病気についての概要や感染予防法などについてまとめています(平成15年5月6日 3訂版。データは随時更新)。

1.SARSってどんな病気?
Q1 :そもそもSARSって何?
Q2 :この病気の病原体は?
Q3 :コロナウイルスって何ですか?
Q4 :いつごろからSARSが流行し始めたの?
Q5 :SARSは、どんな症状がある病気ですか?
Q6 :SARSと診断されるのは、どんな人?
Q7 :SARSはどうやって人から人へ感染しているの?
Q8 :「飛沫感染」と「空気感染」ってどう違うの?
Q9 :SARSの感染力はどれくらいですか?
Q10:SARS患者が他人に病気を移す可能性のある期間は?
Q11:こういう人が感染しやすいという傾向はありますか?
Q12:消毒方法はあるの?
Q13:SARSの死亡率はどれくらい?
Q14:SARSの治療法は?
Q15:SARSの検査はどこでできるの?
Q16:これまでに、どれぐらい患者が出ていますか?
Q17:何カ国からSARSの報告がされていますか?
Q18:SARSが国内に入ってきたらどうしよう?
2.予防方法は?
Q19:ワクチンはありますか?
Q20:予防方法はありますか?
Q21:マスクは有効ですか?
Q22:手洗いやうがいはどのようにすればよいですか?
Q23:SARSが流行している地域から持ち込まれた物に触っても大丈夫ですか?
3.海外旅行に出かけても大丈夫?
Q24:どこへ旅行するとSARSに感染することがありますか?
Q25:今、香港や中国の北京等に旅行しても大丈夫ですか?
Q26:今、香港や中国の北京等以外の国や地域に旅行しても大丈夫ですか?
Q27:もし、同じ航空機に患者が乗っていても移らない?
4.SARSかもしれない。どうしたらいい?
Q28:医療機関を受診した方がよいのは、どんな場合ですか?
Q29:どれくらい経てば安心なの?
Q30:医療費はどうなるの?

1.SARSってどんな病気?
Q1:そもそもSARSって何?
・SARSはSevere Acute Respiratory Syndromeの略で、日本では「重症急性呼吸器症候群」と呼ばれ、中国広東省に端を発し、香港、北京など中国の他の地域にも拡大し、また、台湾、カナダ、シンガポール、ベトナムなど世界中のいくつかの国でも大きな問題となっている、新しく発見された感染症のことです。

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Q2:この病気の病原体は?
・WHOは平成15年4月16日、これまで疑われていた新種のコロナウイルスがSARSの病原体であると断定し、このウイルスを「SARSウイルス」と命名しました。

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Q3:コロナウイルスって何ですか?
・電子顕微鏡で見た場合に、ウイルス表面から花弁状の突起が出ていて、太陽のコロナのように見えるウイルスをまとめてコロナウイルスと言っています。今までも、ヒトにかぜ様症状をおこすコロナウイルスがあることは知られていましたが、症状は軽度〜中等度であり、SARSのように重症な病気をおこすものは知られていませんでした。また動物では、たとえばブタ、マウス、ニワトリ、七面鳥などに呼吸器系、消化管、肝臓、神経系などの病気をおこすコロナウイルスが知られていました。
・しかし、SARSコロナウイルスは、従来知られているコロナウイルスとは遺伝子的にかなり異なるものです。SARSコロナウイルス、すなわち新型のコロナウイルスがどのようにして出現したかは、不明です。しかし、コロナウイルスのなかで、本来ヒト以外の動物にだけ感染するはずのものが、変異をおこしてヒトに感染するようになることはあり得ます。あるいは、もともとヒトに感染していたコロナウイルスがやはり変異をおこして、今までより病原性が強くなる、すなわち重症な病気をおこすようになる可能性もあります。この新型のコロナウイルスのさらなる解析が進めば、この理由が明らかになるものと期待されます。

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Q4:いつごろからSARSが流行し始めたの?
・平成15年2月に、上海と香港を訪れてベトナム・ハノイに行った一人の人が呼吸器症状を示し、そこで入院しましたが、その後に病院スタッフが同様な症状で発症し、その数は3月12日の時点で40人以上に上りました。また香港の病院でも、おそらく中国本土からの旅行者をきっかけとし、病院のスタッフが同様な症状を示しましたが、その数は3月16日の時点で40人以上に上りました。これを元にWHOは全世界に向けて警告を発しました。
・一方、中国広東省では、平成14年11月16日から2月下旬までに、同様な症例が300人以上発生しており、肺炎クラミジアによる可能性があると発表されていました。そこで、これがSARSの始まりだったのではないかとの疑いが持たれるようになりました。そのため、WHOの調査チームが広東省で調査を行い、「SARSは平成14年11月から中国広東省で始まった」との結論を出しました。

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Q5:SARSは、どんな症状がある病気ですか?
・主な症状としては、38℃以上の発熱、咳、呼吸困難などで、胸部レントゲン写真で肺炎または呼吸窮迫症候群の所見(スリガラスのような影)が見られます。また、頭痛、悪寒戦慄、食欲不振、全身倦怠感、下痢、意識混濁などの症状が見られることもあります。

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Q6:SARSと診断されるのは、どんな人?
・新しい感染症であり、まだ完全にその臨床像が明らかになったわけではありませんので、明確な「診断」とは言えない状況で、現在、下記の世界保健機関(WHO)による「疑い例」と「可能性例」との、症状によって定められた報告基準(症候群サーベイランス)により、世界各国から報告されています。
・現在までに分かっている情報から、症状としては38℃以上の発熱、咳、呼吸困難などで、胸部レントゲン写真で肺炎または呼吸窮迫症候群の所見(スリガラスのような影)が見られます。また、頭痛、悪寒戦慄、食欲不振、全身倦怠感、下痢、意識混濁などの症状が見られることもあります。しかし、同様の呼吸器症状を示す感染症は他にもあるので、SARSの確定診断には、病原体検出や血清検査などのいわゆる実験室的診断を行うことになります。しかし、SARSコロナウイルスの検査も現状では完全とは言えないことから、基本的には他疾患の除外による診断となります。

○SARS疑い例

(1)

 平成14年11月1日以降に、38℃以上の急な発熱及び咳、呼吸困難等の呼吸器症状を示して受診した者のうち、次のいずれか1つ以上の条件を満たす者

 

 発症前10日以内に、SARSの「疑い例」・「可能性例」を看護若しくは介護していた者、同居していた者又は気道分泌物若しくは体液に直接触れた者

 

 発症前、10日以内に、SARSの発生が報告されている地域(WHOが公表したSARS伝播確認地域)へ旅行した者

 

 発症前、10日以内に、SARSの発生が報告されている地域(WHOが公表したSARS伝播確認地域)へ居住していた者

(2)  平成14年11月1日以降に死亡し、病理解剖が行われていない者のうち、次のいずれか1つ以上の条件を満たす者
 

 発症前10日以内に、SARSの「疑い例」・「可能性例」を看護若しくは介護していた者、同居していた者又は気道分泌物若しくは体液に直接触れた者

 

 発症前、10日以内に、SARSの発生が報告されている地域(WHOが公表したSARS伝播確認地域)へ旅行した者

 

 発症前、10日以内に、SARSの発生が報告されている地域(WHOが公表したSARS伝播確認地域)へ居住していた者


○SARS可能性例

 SARS疑い例のうち、次のいずれかの条件を満たす者

 

 胸部レントゲン写真で肺炎、または呼吸窮迫症候群の所見を示す者

 

 病理解剖所見が呼吸窮迫症候群の病理所見として矛盾せず、はっきりとした原因がない者

 

 SARSコロナウイルス検査の1つ又はそれ以上で陽性となった者


○除外基準

 他の診断によって症状が説明できる場合は除外する。

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Q7:SARSはどうやって人から人へ感染しているの?
・SARSウイルスは、SARSにかかっている人から周囲の人へ感染すると考えられ、動物を介して感染することを示す証拠はありません。これまでの疫学的検討から、最も感染の危険性が高いと考えられることは、SARS患者の看護・介護をしたか、それと同居をしたか、またはその体液や気道分泌物に直接触れたなど「SARS患者との濃厚な(密接な)接触があったこと」です。
・感染経路としては、患者さんに咳や肺炎などの呼吸器症状があることから、気道分泌物の「飛沫感染」が、最も重要と考えられますが、種々のSARSの集団発生事例を疫学的に検討すると、それ以外の感染経路もありうると考えられます。
・これまでに、SARSウイルスは人間の体内から出ても1日以上生き続け、従来のコロナウイルスより生命力が強いことが解ってきました。排泄物中のウイルスは室温で1〜2日間生存し、下痢の患者の排泄物では、生存期間が4日間まで延びることも明らかとなっています。一方で、消毒液などにさらされると、ウイルスは短時間で感染力を失うことも確認されました。

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Q8:「飛沫感染」と「空気感染」ってどう違うの?
・咳やくしゃみなどをしたときには、鼻やのどから分泌物が飛沫(しぶき)の形で飛散します。これはある程度の大きさがあるので、どこまでも飛んで行くのでなく、通常1m程度で落下します。これが落下する前に直接吸い込んで、鼻やのどの粘膜から感染するのが飛沫感染です。飛沫は結膜に感染する場合もあります。インフルエンザや流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)などはこのタイプです。
・これに対して、飛沫の水分が蒸発するなどして、非常に小さく軽いエロゾール粒子(飛沫核)となった場合には空中に長時間漂い、また空気の流れに乗って長距離まで到達しますが、これが空気感染です。麻疹(はしか)、水痘(水ぼうそう)、肺結核などはこのタイプです。

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Q9:SARSの感染力はどれくらいですか?
・現在分かっている範囲では、感染した人の飛沫、体液を通じて感染すると考えられています。従って、感染した人と濃厚な接触をしなければ、人から人に伝播しないと考えられています。どの位の量の病原体によって感染が引き起こされるのかは、はっきり分かっていません。
・SARSの患者さんと同じ航空機に乗った人の中で、SARSを発症した人があることが報告されており、うつる可能性はないとは言えませんが、その場合の多くは近くの座席に座っていた人であり、同じ航空機の同乗者全てに同じような危険があるわけではありません。また、毎日、多くの人が航空機に乗っていますが、このようなことが原因で報告される患者は非常に少数であり、大多数の人は、SARS患者の看護・介護をしたか、それと同居をしたか、またはその体液や気道分泌物に直接触れたことなどが原因です。ただし、念のため10日間ほどは健康状態に注意し、異常が認められた場合には、電話連絡の上、医療機関を受診してください。
・また、香港のマンションでSARSの集団感染事例が報告されています。この事例については、平成15年4月18日に香港政府がWHOに調査結果の報告を提出しています。それによると、SARSの院内感染が問題になった病院に通院していた男性が感染源となり、トイレの汚水管と合流する排水管から水蒸気に付いたウイルスが各部屋の浴室に広がったのが原因で、空気や飲料水などによる感染の可能性には否定的な見解を示しています。この調査結果に対し、WHOは「一定の説得力はある」としながらも、「こういった調査を積み重ねることによって、この感染症がどのような環境条件が整えば感染するのか、解明されるだろう」と評価するにとどまり、原因の特定には至っていません。

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Q10:SARS患者が他人に病気を移す可能性のある期間は?
・これまでの知見では、熱や咳等の症状がある患者が最も感染させやすいことが示唆されています。しかし、発症前、治癒後いずれにおいても、どれくらいの期間、人に感染させる可能性があるか、明確になっていません。ただし、潜伏期間や症状がなくなってからうつることはあるとしても、その可能性は極めて少ないと考えられています。

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Q11:こういう人が感染しやすいという傾向はありますか?
・これまでにSARSと診断された患者さんの多くは25〜70歳とされています。これは、医療従事者と彼らの家族、このような人々の社会生活上の接触者、そして国際旅行をする人々は比較的若い者が多いことを反映していると思われます。
・また、男女間には明らかな差が見られません。現在までの報告では小児の患者さんは少ないのですが、その原因はよく分かってはいません。

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Q12:消毒方法はあるの?
・国内においては、今のところSARS対策として特別な消毒は必要ないと考えられますが、一般的な消毒用の薬品としては、次亜塩素酸ナトリウムやエタノールがよいでしょう。
・消毒薬としては次亜塩素酸ナトリウムが望ましいのですが、人の皮膚や粘膜などに使うことはできず、また金属を腐食させます。そのような場合には、70%以上の消毒用アルコール(エタノール)も有効と思われます。コロナウイルスはエンベロープと呼ばれる構造を持っているので、アルコールで死滅すると考えられています。

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Q13:SARSの死亡率はどれくらいですか?
・結論から言えば、正確な死亡率は現在のところ不明です。それは、信頼性の高い検査方法がまだ開発されていないため、SARSに感染したことを検査で確認できない以上、感染者が何人いたのか、科学的に正確な数を把握できないからです。
・現在の報告は「除外診断」と言い、症状や渡航歴等で診断しています。WHOはこうした診断方法により、SARSを発症した人のうち、約97%は治癒するとしており(ただし、10〜20%の患者がレスピレータによる人工呼吸器が必要になるとも言われています。)、およそ3%の方が亡くなっていると報告しています。ただし、WHOのデータによれば、平成15年5月7日現在で、全体的な推定死亡率は14〜15%程度となっています。
・また、香港のマンションでの集団感染事例の患者については、他と症状が異なるという報告もあります。つまり、通常集中的な治療が必要になるのは、他のケースでは10%程度であるのに対して、マンションの集団感染患者では20%程度が集中的な治療が必要になるほど症状が悪化し、若くて持病が特にない者であっても死亡する者がいました。また、他のケースよりも高い確率で下痢が見られるとのことです。なぜ、このようになるのかについては、まだ解明されていません。

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Q14:SARSの治療法は?
・有効な根治的治療法はまだ確立されていません。とくに初期には、SARSとSARS以外の肺炎との鑑別が困難なので、一般の細菌性肺炎を対象として、抗生物質を中心とした治療を行うことになります。また、肺病変が進行する場合には、酸素療法や人工呼吸器での管理が必要なこともあります。
・海外、とくに香港では抗ウイルス剤であるリバビリンの静脈内注射とステロイド剤の併用療法を行い、効果が期待できるとの意見も出ました。しかし、明確な効果が科学的に証明されたと言える段階ではありません。

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Q15:SARSの検査はどこでできるの?
・現在までに抗体検査法、分子生物学的検査法、細胞培養法等の方法が開発されていますが、これらの検査方法はいずれも問題点があり、まだ一般の医療機関では検査はできません。

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Q16:これまでに、どれぐらい患者が出ていますか?
・平成14年11月1日から平成15年7月11日の間に、812例の死亡者を含む8,437例が報告されています。わが国では平成15年7月4日までに「疑い例」52名、「可能性例」16名が厚生労働省に報告されていますが、確定された者はいません。
・世界中でこの病気の危険性に対する認識が高まり、公衆衛生当局の関心が深まったことで、サーベイランスが充実し、迅速で正確な報告が行われるようになりました。しかし、報告された者のすべてがSARSと証明されたわけではありません。SARSの報告患者数と、死亡者数の累計、及び伝播地域は、WHOのホームページで常に更新されていますし、健康対策課のホームページでもデータを随時更新したものが入手できます(注 WHOのホームページへは、衛生研究所や健康対策課のホームページからリンクされています)。

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Q17:何カ国からSARSの報告がされていますか?
・これまでに30以上の国・地域から報告がありました。詳しくは、健康対策課のホームページからダウンロードできるファイルを御覧ください。

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Q18:SARSが国内に入ってきたらどうしよう?
・SARSは確かに特別な注意を要する感染症ですが、すでに封じ込めに成功した国があります。ベトナムは平成15年4月28日、SARSの封じ込めに成功したと発表しました。WHOはその声明の中で、ベトナムが実施した有効な手段として、
@ SARS患者と、その行動及び接触状況について迅速に把握したこと
A SARS患者を、効果的に病院に隔離したこと
B これらの患者の治療にあたる医療従事者が感染することから適切に防止したこと
C 「疑い例」を完全に把握し、隔離したこと
D 出国する国際線の旅客のふるいわけを実施したこと
E 他国の政府、行政機関と情報を共有し、適切な時期に適切な形で報告を行ったこと
を挙げています。
・重要なことは、パニックにならず、ベトナムを見習って、上に挙げた項目を確実に実施することです。

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2.予防方法は?
Q19:ワクチンはありますか?
・ワクチンはまだありません。実際にワクチンが使用される前には、動物実験や有効性、安全性を含めた検査が必要で、実用化されるには数年を要すると思われます。

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Q20:予防方法はありますか?
・国内においては、今のところ必要ないと考えられますが、SARSの流行地域における感染予防対策としては以下のことを実施することをお勧めします。
 @ 健康的な生活をし、抵抗力をつけておく。
 A 物に触れたり、トイレに行った後等にこまめに手洗いをする。
 B 人に出会ったり、外出した後にこまめにうがいをする。
 C 人ごみを避ける。
 D マスクを着用する。
 E コップ等を共用しない。

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Q21:マスクは有効ですか?
・日本国内ではSARSの確定患者がまだいませんので、一般の方がSARS感染防止を目的としてマスクをする必要はありません。
・SARSの予防に関してのデータはありませんが、患者さんと接触する場合や、伝播確認地域で人混みに出る場合などでは、通常のマスクでも何枚か重ねて使用すれば、飛沫感染に対してある程度の予防効果があるものと推測されます。もちろん、一つのマスクをいつまでも使っていると、そこに付着しているウイルスによる危険も考えなくてはならず、状況に応じて頻繁に変えることが必要です。
・しかし、病院内での防止対策のように、ゴーグルや手袋をはめているわけではありませんので、マスクだけで完全に防御できるとは言えないと思われます。

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Q22:手洗いやうがいはどのようにすればよいですか?
・基本的に時間をかけて丁寧に実施すればよいのですが、一般的な手順を下記に示しておきます。

・手洗い方法
 @ 30秒程度、流水で洗う。
 A せっけんを手にとって、よくあわ立てる。
 B 両手をよくこする。指の間は手を組むようにして洗う。(親指やつめの間等、洗い残しがないように気をつけましょう。)
 C ぬめりがなくなるまでよく水で洗い落とす。
 D 清潔なタオルや、70%アルコールで湿らせたティッシュ等で拭く。

・うがい方法
 @ うがい液を口に含み、食べかす等を洗い流すために口を濯ぐ。
 A 上を向いてのどの奥までうがい液が接触するようにして15秒程度うがいをする。
 B 2回目と同様に15秒程度うがいをする。

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Q23:SARSが流行している地域から持ち込まれた物に触っても大丈夫ですか?
・WHOは、平成15年4月11日、SARSの伝播確認地域から積み出された物品や、製品や、動物との接触がSARS感染に繋がったと言う疫学的情報は無いので、問題はないと発表しています。

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3.海外旅行に出かけても大丈夫?
Q24:どこへ旅行するとSARSに感染することがありますか?
 WHOが平成15年7月5日現在で伝播確認地域としている地域はありません。

・SARSは航空機の国際的な旅客により、世界へ感染が拡大しました。したがって、このような地域への旅行があれば、感染し、日本へ帰国してSARSが国内へ侵入することがあり得ると思われます。上記の地域のうち、WHOは不要不急の旅行の延期を勧告する地域として、中国の北京を対象地域としています。これらの地域については、延期について十分検討されてから旅行することをお勧めします。(6月24日に北京への渡航延期勧告は解除されました)

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Q25:今、香港や中国の北京等に旅行しても大丈夫ですか?
・WHOは、中国の北京へ旅行する者に対して、どうしても必要な旅行で無い限り、旅行の延期を考慮するよう勧告しています。(この勧告は、各地の国際空港で単に乗り継ぎをするだけの旅行者には適応されません。)ただし、旅行を禁止する法的根拠はありませんので、企業の出張等どうしても必要な旅行であれば、最終的には個人の判断及び責任で旅行していただくことになります。(6月24日に北京への渡航延期勧告は解除されました)
・いずれにせよ、発熱や咳等の症状が生じた者で、SARSと診断された人と濃厚な接触をしたか、SARSが拡大している地域に最近旅行した人は、Q26を参考にして、医療機関を受診してください。上記の症状が見られる旅行者は、完全に回復するまで移動しない方がよいでしょう。

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Q26:今、香港や中国の北京等以外の国や地域に旅行しても大丈夫ですか?
・SARSを取り巻く状況については、刻々と変化しており、それに対応するため、各国のSARS対策も変化していくものと考えられます。したがって、現段階では安全であっても、滞在期間中に状況が変化することはあり得ると思われますので、まずは、渡航先の感染症の情報について検疫所等で確認し、現地到着後においても、SARS関連の情報には注意すべきです。

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Q27:もし、同じ航空機に患者が乗っていても移らない?

Q9参照

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4.SARSかもしれない。どうしたらいい?
Q28:医療機関を受診した方がよいのは、どんな場合ですか?
・感染が心配されるのは、まとめると、以下のような項目を満たす方です。
 @ 38℃以上の急な発熱がある。
 A 咳や呼吸困難感がある。
 B 10日以内に伝播確認地域に渡航したか、SARSの患者に接触した。
 これら3つの項目を満たす方は、医療機関での受診をお勧めします。
・なお、受診する際は、X線写真を撮影できる医療機関(内科や呼吸器科)を受診し、SARSへの感染を心配していることを予め医療機関へ伝えておいてください。その上で、マスク等の感染予防対策をしてから医療機関に行きましょう。
・受診したら、@渡航地域、A渡航期間、BSARS患者との接触の有無について、医師に伝えてください。症状がなければあまり心配する必要はありませんが、症状が出たら速やかに受診するようにしましょう。
・詳しくは、健康対策課のホームページからダウンロードできる、「SARS不安者行動マニュアル」を参考にして、適切に行動してください。

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Q29:どれくらい経てば安心なの?
・潜伏期間は通常2〜7日間で、一部の例外を除きほぼ10日以内と考えられています。したがって、11日以上経っていて何の症状もなければ、殆ど心配はないものと思われます。

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Q30:医療費はどうなるの?
・自治体(県知事、政令指定都市は市長)から入院の勧告を受けた場合に限り、勧告を受けた時点から全額公費負担となります。

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※このQ&Aは以下の情報源からの情報を取りまとめて作成しました。また、新しい知見により、今後随時改定する予定です。
WHOのホームページ
CDCのホームページ
国立感染症研究所のQ&A
香港特別行政局衛生部のホームページ

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○愛知県のSARS対策

1.情報収集及び提供
 SARSについてのWHO(世界保健機関)等の知見は日々更新されていることから、積極的に正確な情報を収集し、愛知県ホームページ等により、速やかに提供します。

2.愛知県衛生研究所における検査体制
 SARS「可能性例」については、患者から採取された血液等の検体を、愛知県衛生研究所において、コロナウイルス、パラミクソウイルス等に関する検査を実施するとともに、検体を国立感染症研究所に送付して更に高度な検査を依頼します。

3.医療機関における適切な医療の提供
(1)「疑い例」
 SARSの「疑い例」については、一般の医療機関等における受診が原則となりますが、受診に当たっては、事前に受診を希望する医療機関に連絡してください。

(2)「可能性例」
 SARSの「可能性例」の治療については、原則として、次の7医療機関で行います。

医療機関名 所在地 感染症病床数
名古屋市立東市民病院 名古屋市

10床

公立陶生病院 瀬戸市

6床

愛知県立尾張病院 一宮市

6床

春日井市民病院 春日井市

6床

厚生連知多厚生病院 知多郡美浜町

6床

県立愛知病院 岡崎市

6床

豊橋市民病院 豊橋市

10床


(3)「確定例」
 厚生労働省に通報した「可能性例」のうち、SARSと確定された「確定例」については、厚生労働省と協議の上対応します。

4.患者移送方法
 「確定例」については、必要に応じ患者隔離搬送装置(外部への病原体汚染を防止できる患者収容カプセル)を使用して移送します。移送に使用する車両は、患者収容部分を防水性素材でカーテン状に囲い、周囲への病原体の拡散を防ぎます。
 なお、患者隔離搬送装置については、5月23日に整備しました。

5.二次感染防止
 医療機関においては、WHOの「SARSの管理ガイドライン」に基づいて二次感染の防止を図ります。
また、患者との接触者に対しては、保健所において健康状態の確認等の指導を行います。

 「愛知県SARS対応行動計画(4訂版)」はこちらからダウンロードできます(PDFファイルです。約1メガあります)。
 

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○SARS感染不安者行動マニュアル

「もしかして私はSARSに感染しているのでは?」という不安がある方で、どうしたらよいか分からない方は、以下の手順を参考に対応することをお勧めします。
対応手順は、まとめると以下の3項目になります。
@自己確認
A医療機関の受診
Bそれぞれの場合の対応

@自己確認
 SARSの「疑い例」に該当するか、まず本人が確認します。該当するのは、以下の基準をすべて満たす方です。

(1)38℃以上の急な発熱がある。
(2)咳または呼吸困難感がある。
(3)10日以内に伝播確認地域(※)に渡航したか、SARSの患者に接触した。

※この地域はWHOが毎日更新しているので、注意が必要です。厚生労働省WHOのホームページ等で確認しましょう。なお、平成15年7月5日現在では、該当地域はありません。

A医療機関の受診
 上の基準を全て満たした方は、「疑い例」に該当する可能性が高いと言えますので、速やかに医療機関を受診します。その際、医療機関へ直接受診することは避け、まず電話で連絡してください。連絡する内容には、以下の点を含めるようにしてください。

(1)SARS感染を不安に思っていること
(2)SARSの「疑い例」に該当すると考えるに至った根拠
(3)エックス線写真を撮影できるかどうかの確認
(4)受診に際して、注意すべき点(マスクの装着等)の確認

Bそれぞれの場合の対応

(1)「可能性例」
 受診した結果、エックス線写真で肺炎症状が認められると、「可能性例」となります。この場合、医療機関から保健所へ報告していただき、県から、治療の協力について承諾をいただいている医療機関を紹介させていただきます。本人の了解が得られれば、その医療機関で治療を受けることになります。

(2)「疑い例」
 エックス線写真で肺炎症状はないけれども、「疑い例」であることが確認された場合についても、医療機関から保健所へ報告していただくことになります。この場合、治療は一般の医療機関となります。潜伏期間は最大でも10日となっていますので、最低この期間は体温をチェックするなど健康状態に気をつけていただき、肺炎症状を発症する等症状が悪化すれば、再度医療機関を受診しましょう。その際の手順は、Aと同じです。

(3)どちらにも該当しない
 SARSに感染している可能性は低いと考えられます。

注1 SARSとの関連性にかかわらず、健康状態に不安があれば、医療機関を受診しましょう。
注2 平成15年4月30日 愛知県健康福祉部健康対策課作成(2訂版)
注3 この「SARS感染不安者行動マニュアル」はこちらからダウンロードできます。(ワードファイルです)

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○リンク集
 愛知県衛生研究所
 厚生労働省ホームページ SARS関連情報
 厚生労働省検疫所(FORTH)ホームページ
 感染症情報センターホームページ SARS関連情報
 外務省 海外安全ホームページ
 WHOホームページ SARS関連情報
 CDC(米疾病対策センター)