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病害虫図鑑 ムギうどんこ病

ページID:0271771 掲載日:2020年4月1日更新 印刷ページ表示

1 病原菌 
 学名 Blumeria graminis (de Candolle) Speer f.sp. tritici Marchal(糸状菌/子のう菌類)

2 被害の様子
 4月中旬頃に下葉にやや紅味を帯びた白色粉状の病斑として現れるが、ところによっては、秋に発病して冬の間は消え、春早く再び発生することもある。病斑は初め点々と白いカビ状であるが、後にその名のごとく小麦粉をまいたような塊になり、さらにすすんで葉一面に広がる。やがて灰色に汚れてきて、そのうちにこのカビの中に黒い小粒の子のう殻ができる。病斑は下葉から発生し、しだいに上位葉に移り、激しい時には葉鞘、茎、穂又は芒まで進展する。罹病葉は早く枯れあがり、稔実が悪く、細粒を多く生じ、30%くらいの減収になる。ビールムギなどの大粒種ほど充実不良の影響が強く現れ、整粒歩合が低下し、検査等級が落ち、大きな損失を受ける。

3 病原菌の生態
 うどんこ病は、子のう菌類に属するカビの一種、うどんこ病菌によって起こされる。病原菌の菌体は、糸状の菌糸からなり、分生胞子と子のう殻(子のう胞子)をつくる。うどんこ病菌は、菌糸が葉の外表皮をはって蔓延する外部寄生菌である。感染部から放射状に菌糸が伸び、白色斑点状の菌叢をつくるが、拡大して楕円形となり、さらに蔓延して不定形となり、寄主植物体全体に広がる。菌糸は植物体の内部には侵入せず、カニのような形をした吸器を寄主の表皮細胞内にさし込んで養分を吸収する。菌糸から多数の分生子柄を出し、その先に10~20個の分生胞子をじゅず状に形成する。これが白いカビ、又は粉にみえる。分生胞子はやや乾いているときに多く形成され、風で飛散して付近に伝染する。飛散は昼間に多く、胞子の生存期間は一週間程度である。 胞子の発芽とムギの感染には20℃前後が好適である。胞子はかなり乾いた空気の中でも発芽できる。発病までの潜伏期間は3~5日である。葉の上で発芽した分生胞子は菌糸を伸ばして病斑をつくり、そこにできた分生胞子がまた飛散して伝染をくり返す。
 ムギの成熟期近くに菌叢上に形成される子のう殻は、わらについて残るか、地面に落ちて一部が夏の終わりに成熟して子のう胞子を放出するが、一部は越冬して春先に成熟する。春に放出された子のう胞子は、その年の伝染源になる。また、こぼれムギや早播きムギに、越夏した菌糸や子のう胞子による感染で秋期発生がみられ、その大部分は冬の間に消滅するが、よく繁茂した株では越冬して、春の伝染源の一部となる。
 ムギのうどんこ病は、オオムギ、コムギのほかにライムギやエンバクなどにも発生するが、病菌はそれぞれ異なる生態種に属していて、オオムギ菌はコムギを侵さず、コムギ菌はオオムギを侵さない。各生態種の中には、品種に対する病原性を異にするレースがあり、オオムギうどんこ病菌では、わが国では11種のレースが認められている。

4 発生しやすい条件
・春が温暖で雨が多く、ムギが早くからよく繁茂した年に発病が多い。
・風通しや日当たりの悪い畑に発生しやすい。
・遅蒔き、窒素肥料の多施、追肥時期の遅れなどで軟弱過繁茂になったものに発生しやすい。

5 防除対策
・品種によって耐病性が異なるから、強い品種を選んで栽培する。
・極端な厚まきや遅まきを避ける。
・窒素肥料の過多を避けるとともに、風通しをよくするように播種の方向、うね間をとり、ムギが強く、健全に生育するようにする。
・残桿の処理を完全にし、被害桿をそのまますき込まないようにする。薬剤防除は、発病の初期に行うのが効果的である。

コムギうどんこ病