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平成24年度 人にやさしい街づくり賞 講評

総評

 私事で恐縮だが、私は今、右大腿部頸部骨折のため入院治療中である。手術後一週間が過ぎ松葉杖歩行の練習も始まり、車椅子の助けを借りれば、ほぼ自立生活が可能である。だが、自立できない。何ともはがゆい。何とかしたい。そこで、人にやさしい街づくり活動を実践することにした。体は不自由だが口は元気、すこぶる多弁である。これを活用しない手はない。
 介助してもらう度に「あそこがこうだったらいいな」、「ここがもっとこうなっていたら自分で顔が洗えるよ」などと、“あったらいいな”を連発している。そして、あらゆる施設が「人にやさしい街づくりの推進に関する条例」に適合すれば、患者だけでなく、看護や介護する側の負担も大きく減少するだろうと身にしみて感じている。
 改めて考えた。なぜ、人にやさしい街づくりを進める必要があるのだろうか。その必要性は、社会正義の実現と資源の有効活用という2つの観点から考えることができよう。前者は、すべての人に等しく諸権利を保障し社会参加を可能にするという社会の「優しさ」の現れであり、後者は、あらゆる人の能力を総動員することができる「優れた」社会の創出である。この2つの観点に立脚する時、人にやさしい街づくり活動に、交流とビジネスという新たな要素が付け加わることとなる。社会参加は交流を生む。そこで発生する異文化交流は人材を発掘し、新たなビジネスの芽を生み出し育てる力となる。もちろん、いろいろな支援が必要なことはいうまでもない。市場経済に屈服することなく、市場経済と調和しつつ、人にやさしい街づくりを推進し発展させたいものである。
 今年度の受賞対象の選定においては、当事者意識に基づいた地道な継続的活動に加え、このような新たな視点からの挑戦を大きく評価した。その結果、応募件数30件の内、「株式会社 チックトラベルセンター ハートTOハート(福祉部門)」、「JAあぐりタウンげんきの郷 すくすくヶ丘」の2件を特別賞に選定し、「岡崎市図書館交流プラザ」、「Ponte Cafe 匠」、「めだかの学校」の3件を賞に選定した。
 最後になったが、第18回人にやさしい街づくり賞に応募いただいた皆様に、審査員一同心より感謝している。私事が先になり皆様への謝辞が最後となる非礼をお詫びして、ペンを置く。
(森田 優己)

第18回 人にやさしい街づくり賞
特別賞株式会社 チックトラベルセンター ハートTOハート(福祉部門)活動名古屋市
JAあぐりタウンげんきの郷 すくすくヶ丘もの大府市
岡崎市図書館交流プラザもの岡崎市
Ponte Cafe 匠活動安城市
めだかの学校活動蒲郡市

人にやさしい街づくり特別賞

株式会社チックトラベルセンター ハートTOハート(福祉部門)

データ
所在地 名古屋市中区錦1-20-19名神ビル6F
活動開始 平成8年9月

講評
 「ハートTOハート」は、株式会社チックトラベルセンターの福祉部門として、1996年に設立され、障がいのある方や車いすを利用する方の旅行をサポートしてきた。立ち上げ以来、国内外のツアーの数はすでに800本を超え、ツアー以外にも、利用者の要望に応じる手配旅行も手掛けている。身体障がい、知的障がい、難病、内部疾患のある方とその家族などで構成された会員は約6,000名にもなり、最近では、年間の利用者は1,000名前後にものぼる。
 「旅に出ること」は、誰にとっても、いつもと違う景色や人々との出会い等わくわくする魅力を持つものである。しかし、障がいのある方とその家族にとって、事情がわからない国や地域への旅行となると、移動手段、宿泊先、トイレ事情や食事など、越えなくてはならない多くのバリアが想定される。確かな情報収集を行い、誰もが旅を楽しめるためのサポートを行う「ハートTOハート」の試みは、何らかの障がいを抱えた人たちとその家族が、新しい世界に一歩を踏む出す後押しをするような試みであると言えよう。一方で、「ハートTOハート」の実践は、障がいのある方たちをゲストとして受け入れる側が、日常のサービスを点検することになり、自らの改善や発展につなげる可能性を拡げることにもなることを示している。
 「ハートTOハート」で蓄積された経験は、1つの旅行会社の実践に留まらない。セミナー等を通して、障がいのある方の旅行サポートに不慣れな他の旅行会社へ貴重なノウハウを伝えたり、福祉情報誌の旅のコラムなどを通して情報発信を続けている。
 障がいという言葉を忘れさせてくれるような感動と楽しさ満喫の旅作りを目指す「ハートTOハート」の活動は、まさに誰にとってもやさしい街づくりに寄与する活動につながるものであり、その確かな実践の積み重ねと蓄積されたノウハウの情報発信力を高く評価したい。
(坂本 真理子)

JAあぐりタウンげんきの郷 すくすくヶ丘

JAあぐりタウンげんきの郷 すくすくヶ丘

既存施設(写真奥)に隣接したすくすくヶ丘 / 子どもたちが遊ぶ、じゃぶじゃぶふんすい / 中庭と室内をつなぐ回廊 (写真:(株)センターフォト・(株)三橋設計)

データ
所在地 大府市吉田町正右エ門新田1-1
施設 地上1階 鉄骨造 
延べ面積 1086.46平方メートル
竣工 平成24年2月
設計  株式会社 三橋設計

講評
 
本施設は、「アグリルネッサンス構想」のもとで、若年層、特に子育て中のファミリーをターゲットにして計画し、オープンした商業施設である。「農と食」や「環境」をテーマに、ファーマーズマーケットやレストラン、温浴施設等からなり、年間200万人が来訪する既存施設の10周年に際して、新たな展開を期して、隣接する敷地に本施設が計画された。
 子どもたちの様子を見守りながら親がゆっくりと食事ができる。そんな場所を求めて複数の配置案が検討された。最終的に飲食や購買のためのスペースが中庭を取り囲む「ドーナツ型」の空間構成が採用され、建物の隅部の透過性を高めて死角をなくすことで、親がお茶やスイーツを楽しみながらでも中庭を走り回る子どもたちの姿を視認できるようになっている。イスやテーブルの選択でも、ここでゆったりと過ごすことができるようにとの配慮がうかがえ、商業施設でありながら、周囲に広がる田園風景と子どもたちの姿、そして自然の恵みをゆっくり楽しむ設えが用意されている。
 丘陵地に立地する条件から、特に冬期の伊吹おろし(強風)の対策が必要となったが、この平面形のおかげで冬期でも中庭は比較的暖かな場所になり、外で遊ぶ子どもたちの姿が見られることは想像に難くない。
 このように子どもたちがいきいきと過ごす姿や美味しい農産物を楽しめる場所が、大人たちを引きつけない訳がない。現地調査の日にも、近くでデイサービスを受けている高齢者のグループが来訪している姿を見かけた。
 隣接する既存施設とより調和した建物形態や、周囲の田園風景にマッチした外壁の色彩選択もあったのではないかとも感じたが、安全安心な農と子育てという今日的なテーマをうまく一致させながら、この施設を実現させた関係者の慧眼と尽力に拍手を送りたい。
(小松 尚) 

人にやさしい街づくり賞

岡崎市図書館交流プラザ

岡崎市図書館交流プラザ

建物全景 / 館内の主要動線であるお堀通り / 自然光あふれる閲覧スペース (写真:(株)エスエス名古屋)

データ
所在地 岡崎市康生通西4丁目71
施設 地上3階 鉄筋コンクリート造一部鉄骨、鉄骨鉄筋コンクリート造
延べ面積 23,980.14平方メートル
竣工 平成20年9月
設計 佐藤総合・千里建築設計特定設計業務共同企業体

講評
 
岡崎市民が自主的に保存する、岡崎城から大樹寺へのビスタラインの邪魔をすることがないよう「りぶら」はあえて低層の建物として建てられた。館内には歴史の文脈に配慮したという二つの主動線を配し、1階から見上げるとかなりの高さと空間ボリュームを感じる図書館である。年500万人利用・年間200万冊の貸し出し状況は、計画段階からの市民参加の表れであろうか。一部のトイレはオストメイト対応、大人も横になれるシートを設置し多くの人への配慮を感じる。広めの書架間通路・様々なタイプの閲覧室等は使い勝手の良さを感じさせ、広いガラス部から目に入る外景は、館内の圧迫感のない色使いと相まって長時間の読書に快適性をもたらしてくれるだろう。又、街の歴史をアピールする「徳川文庫」「内田修ジャズコレクション展示室」の設置は、より幅広い来館者を招くキーワード部分であろう。ホール・スタジオ・カフェレストラン等も併設するこの施設は、元々「一日過ごせる図書館」として計画されたという。主動線「お堀通り」の階段や空間ボリュームを生かしたイベント等様々な企画展開により、多くの人々の集いの場となることが予想される。計画段階からの市民との関わりを益々高めて頂き、多種の活用が期待できる人にやさしい施設としての未来形が楽しみな図書館でもある。
(星田 博子)

Ponte Cafe 匠

Ponte Cafe 匠

Ponte Cafe 匠のスタッフ / 安城養護学校の生徒によるタペストリー / 彩りよく並ぶ前菜・おかずバイキング (写真:(株)アイエスエフネットハーモニー)

データ
所在地 安城市桜井町塔見塚47-2
活動開始 平成24年

講評
 
東京の株式会社が運営するPonte Cafe 匠に着いたのはお昼頃。お店の中に入ると元気な声と笑顔が私たちを迎え入れてくれました。前菜・おかずバイキングが彩りよく盛り付けられている横を通りながら二階に上がると、養護学校の学生が描いた絵や小物が展示されており、思わず触れてみたくなるような細部まで手の行き届いた可愛らしいコーナーになっていました。
 店名の「Ponte」はイタリア語で架け橋を意味しているとのこと。地域社会との架け橋であり、障がいのある方、そうでない方、全ての人々との架け橋になれたらとの思いが込められた店名です。お店の近くに安城養護学校があり、障害者の就労支援に力を入れている(株)アイエスエフネットハーモニーと養護学校とが連携した実習の場であり雇用の場でもあります。現在このカフエで働く10名のうち7名が知的障がい者と精神障がい者で、その半分が安城養護学校の卒業生です。保護者の側からは「生きた体験の出来る場がほしい」との声もあり、地域の農家や食材企業とも連携して、養護学生が丹精込めて作ったお米を地元の製粉会社が粉にし、その米粉でピザを焼いたりしていました。また地元の食材を利用して桜花学園大学辻岡ゼミの学生がメニューを考えたのが、最初に目に飛び込んできたあの彩りよいおかずバイキングで、パスタセットが大好評とのことです。
 コーヒーはこのお店の売りになっているそうで、「コーヒーハンターとも言われる川島良彰氏直伝のドリップは安城一、いや愛知一です!」と店長は胸を張って言います。
 しかし、そこにも課題があり、一つは“飲食店の経営と福祉との両立が難しいこと”、一つは“障がい者雇用のバランスが難しいこと”が挙げられます。4時間雇用するとなると集中力の維持が難しいため、2時間勤務毎に休憩をとりながらの勤務となること。また、お店が繁盛しお客さんが増えてくるとパニックを起こしてしまうスタッフがいること。全体のバランスを考えると難しいこともたくさんあるようです。
 しかし、ここで働いていた生徒の中には企業に勤める人や自立者も増えていると聞きます。もっともっと多くの卒業生の就労の場としての架け橋となってくれることを期待しています。
(村居 多美子)

めだかの学校

めだかの学校

体験会での学識経験者による講演 / 文化祭での補聴器・器具体験コーナー ☆ / 月刊誌(平成24年9月号 一部抜粋)(☆を除く写真:めだかの学校)

データ
所在地 蒲郡市竹島町27-19
活動開始 平成17年

講評
 
めだかの学校は、聴覚に障害がある方や聴覚が衰えた方々が、学術研究者との積極的な交流を通じ、自ら「聞こえ」を支援する体験会や相談会の開催、広報誌の配信などを続けている。
 聴覚に不自由を感じている方は、音声でのコミュニケーションに極めて不便を感じ、特に、病気や事故、ストレスなどで、成長してから聴力が下がった方や加齢により聴覚が衰えた方は、相手に気を遣い、聞こえないことを我慢して相槌を打ったりして、周りの人に聞こえていないことが気づかれないことも多い。また、聴力の程度や聞こえない音域は様々で、例えば日常会話は聞こえても、離れた場所からの音やスピーカーの音が聞こえにくいなど、それぞれ違った悩みを持っている。
 めだかの学校では、小型アンプにイヤホンとマイクを付けて補聴器の機能を補う機器や、市販のワイヤレスマイクやボイスレコーダーを活用する方法を紹介している。また、自宅に磁気ループを設けたり、コイルで作った小さなループを補聴器に付ける方法なども紹介し、これらが放送関係者の目に留まって、NHK教育テレビでも紹介されている。これは、多くの方が「聞こえ」のアドバイスを切望している証であろう。
 難聴者自身が「聞こえ」のバリアを克服するための支援活動を続けていることを高く評価するとともに、聴覚に不自由を感じる方にもっと聞くことに積極的になっていただき、日常の生活や会話を楽しもうという思いが広がっていくことを期待したい。
(松井 宏夫)

問合せ

愛知県 建設部 建築担当局住宅計画課 街づくり事業グループ
電話:052-954-6590
E-mail: jutakukeikaku@pref.aichi.lg.jp