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2021年度 食と緑の基本計画推進会議【書面開催】 結果概要

ページID:0360645 掲載日:2021年9月30日更新 印刷ページ表示

開催日

2021年8月26日(木曜日)【書面開催】

 

議事

1 報告事項

   「食と緑のレポート2021」について

2 協議事項

   「食と緑の基本計画2025」の推進について

 

構成員からの御意見と県の回答

 
加藤 勇二 様(愛知県農業協同組合中央会)

(御意見)

(1)新規就農者の確保に向けた具体策及び里親農家制度について
 資料1の14ページ、15ページに記載のある新規就農者数について、5年間の平均では242人でA評価となっているが、2019年度からは2年連続で200人を下回っている。
 基本計画2025では、人材の確保を施策の柱の1番目に位置付けて、新規就農者を5年間で1,000人、年平均で200人確保していくことを目標としているが、新規就農者の確保に向けて具体的にどのように取り組んでいくのか伺いたい。
 また、新規就農に関してもう1点、伺いたい。新規就農者が、受入農家、いわゆる里親農家の元で栽培技術や農業経営を学ぶ担い手育成の仕組みが各地で取り組まれているが、里親農家は自身の経営も行いながら新規就農者への指導も行わなければならず、負担も大きいため、現場では確保に苦労している。里親農家へ支援を行う仕組みがあると、こういった取り組みが進んでいくと考えるが、県の見解をお伺いしたい。

(2)緊急プロジェクト 新型コロナ対策 輪ギクからスプレーギクへの品目転換について
 輪ギクについては、近年、需要が減少傾向であったところ、新型コロナウイルスの影響により、さらに需要が減少しているが、県として、輪ギクの品目転換を含め、どのような具体策をうっていくのかお伺いしたい。

(3)重点プロジェクト1 農業産出額の目標について
 昨年度の会議にて、農業産出額の目標達成には、必要な農家数や農地面積を整理することや、品目別、地域別にも整理することが大切である旨、意見を述べさせていただいた。
 直近の令和元年度の実績は2,949億円となっており、前年に比べ、野菜や畜産の産出額が大きく減少しているが、この結果をどう分析しているか。
 また、目標達成に向けて本県の主力である園芸品目や畜産でどのように産出額を回復させていくかを伺いたい。

(県の回答)

(1)新たな就農相談窓口として「農起業支援ステーション」を農業大学校に設置し、就農関連情報の一元化を図るとともに、定期的な就農相談会の開催やリモート相談の導入等により、農業改良普及課にある農起業支援センター8か所による就農相談体制を強化しています。さらに、相談開始から受入産地の決定まで双方が連携して一貫した支援を行い、多様な就農希望者のニーズに対応して新規就農者の確保に努めてまいります。
 里親農家への支援に関しては、新規就農者を雇用し、就農に必要な技術・経営ノウハウ等を習得させるために実践的な研修を行う場合、1人当たり年間最大120万円助成される「農の雇用事業」を一般社団法人全国農業会議所が実施しております。
 本県としては、次代の農業を担う新規就農者を育成するため、研修生を受け入れ、就農に必要な栽培技術等を習得させてくださる農業者の皆さんに対して、「農の雇用事業」の活用を御紹介しております。
 また、農業者の皆さんが新規就農希望者を受け入れて実施する研修は、ほ場での栽培技術を習得させることが中心になっていると思います。愛知県農業大学校では、新規就農希望者を対象としたニューファーマーズ研修を毎年実施しており、主に座学による栽培技術・経営等に関する研修を行っています。研修生にニューファーマーズ研修を受講させることにより、受入農業者の皆さんの負担軽減になると考えております。

(2)新型コロナウイルス感染拡大の影響を最も大きく受けている輪ギクにつきましては、まずは年間を通じた需給バランスを数値化することによって、農業団体を始め、生産者や流通関係者の皆様と現状をしっかりと把握し、対応策を協議してまいります。
 例えば、輪ギクを年間3回の生産をするところ、市場単価が低迷する春先に出荷する作付けを他の栽培品目に転換して需給均衡を図るなど、作型体系や栽培品目の検討については、関係の皆様と具体策を出し合い、役割分担を明確にして、密接に連携して進めてまいります。

(3)令和元年度の愛知県の野菜産出額は前年に比べ115億円減の1,010億円でした。(平成30年度野菜産出額1,125億円)
 これは、キャベツなどの生育が良好で価格が低く推移したこと等が影響したと思われます。
 本県では、食と緑の基本計画2025の野菜に係る個別計画として、2021年3月に愛知県野菜生産振興方針を策定しました。この方針では、2025年度に野菜産出額の目標を1,130億円としており、この目標を達成するために、二つの重点生産振興施策を展開することとしています。
 重点生産振興施策の一つ目は、「野菜産地の生産力強化」で、野菜産地を支える担い手の育成やスマート農業等の新技術を活用した生産力強化を行います。二つ目は、「多様なニーズへの対応」で、加工・業務用野菜の推進と安定供給やあいち野菜の魅力を伝える取組を行います。
 また、「いちご」、「なす」、「ブロッコリー」の3品目をあいちの園芸生産力の強化に向けた一体的支援プログラム対象品目と位置づけ、生産力の強化に向けた取組を集中的に実施することとしています。
 野菜の産出額は、販売価格と大きく関連しますので、県産農畜産物のブランド化など販売対策も含め、産出額の目標達成に向けて、農業団体の皆様とは連携して施策を展開してまいりたいと考えていますので、よろしくお願いします。
 畜産分野における農業産出額減少の主な要因としては、2019年2月に本県で発生した豚熱の影響で、豚の出荷頭数が大幅に減少したことがあげられます。
 県ではこれまで、豚熱発生農場の経営再開支援を中心に、豚熱に係る様々な対策を講じてきました。現在、豚熱発生農場においては、発生前の8割程度まで飼養頭数が回復してきています。
 また、畜産全般として、畜産クラスター事業の活用などにより畜産農家の規模拡大等を支援し、畜産の競争力強化を図ってまいります。
 さらに現在、畜産総合センターの豚舎と種鶏場を新たに整備しています。今後、JAあいち経済連を始め関係団体の御協力を得ながら、系統豚や名古屋コーチンといった本県が開発した優良種畜の供給を拡大してまいります。

 

 
加藤 與志和 様(愛知県農業経営士協会)

(御意見)

(1)重点プロジェクト4 県産花きの需要拡大について
 花の王国あいちの認知度は、資料1に記載されているように、公共施設での花の展示など関係機関の努力により、5年間で12.7%から33.5%と大きく向上し、生産者として心強く感じている。
 この動きを購入につなげていただきたいと感じており、コロナ禍における新しい生活様式の中、巣ごもり需要はあるが、これを一時的な需要とせず、いかにして愛知県産の花を継続的に購入してもらうかということが重要で、県として認知度の向上をどのように購入につなげ、さらに継続的に購入してもらうためにどのように取り組んでいかれるのかお伺いしたい。

(2)花の王国あいちのシンボルマークについて
 昨年の会議において鉢物についてはラベルに添付できることを確認したが、切り花についての表示やPRの仕方を、店舗や生産者にも周知が必要と考えているので対応をお願いしたい。

(3)あいち花マルシェの継続について
 花きの需要拡大には、消費者が継続的に花を購入してもらうことが必要であるが、一般の消費者には購入後の花の管理知識がないため、しっかり管理ができず、結果として継続購入につながらないことがある。花を扱う生産者や販売者は当然、管理を熟知しているので、マルシェのような対面販売であれば、消費者に対して管理方法を教えることができる。花と緑のイベントである「あいち花マルシェ」は消費者と直接交流できる良い機会であり、今後も継続して実施していただきたい。

(4)夏期高温期における労働環境対策について
 近年、地球温暖化が進んでおり、夏場の気温も以前と比べてずいぶん高くなったと感じている。夏場の施設内の異常高温は植物だけでなく、そこで働く人にも悪影響を与えている。夏の暑さが原因で辞めるパートもおり、環境改善が必要である。そこで、県として夏期高温期における労働環境対策について取組があれば情報提供していただきたい。
 また、雇用を継続的に確保することも喫緊の課題となっており、県内の雇用労力確保の取組についても情報があれば提供していただきたい。

(情報提供)
〇運送業者の就業規則の厳格化による物流への影響について
 これは県ではどうしようもないことを承知の上なので、何か回答を求めているわけではなく、情報提供であるが、花きだけではなく、各種流通における運送業者の就業規則が厳格化され、これまで1日で配送できた地域でもドライバーの休み時間の確保のため2日かかるような事態も見られるようになり、結果として運賃の値上げ、コスト増につながっている。さらに運送業界全体で人手不足もあり、今後、物流が滞るような局面も出てくるのではないかと危惧しており、どの業界でも人材の確保が重要と痛感している。

(県の回答)

(1)昨年度は、花の王国あいち県民運動実行委員会が国の「公共施設等における花きの活用拡大支援事業」を活用し、県産花きの装飾展示に取り組んでまいりました。
 今年度は、新型コロナウイルス感染症関連対策として「花きの消費回復対策事業」を創設し、県内の公共施設等における花きの装飾展示と新しい生活様式に対応した花き装飾の提案を行うことにより、花きの継続的な購入につなげてまいります。

(2)花の王国あいちのシンボルマークの切り花への活用につきましては、花の王国あいち県民運動実行委員会を構成する17団体の皆様に、県産花きの販売コーナーの設置や売り場ディスプレイへの積極的な活用を呼び掛けてまいります。

(3)「あいち花マルシェ」については、引き続き今年度も11月に開催する計画です。花きの主要消費地である名古屋市において、県産花きの販売やフラワーコンテストなどを実施するとともに、会場以外でも楽しめるようにWebサイトを開設してオンラインによる花の販売と情報発信を行うことで、花き業界全体の活性化につなげてまいります。

(4)夏の高温期の労働環境対策として、各農業改良普及課の普及指導員が巡回指導や現地研究会等において、農作業安全指導の一環として農業従事者等に熱中症予防を呼びかけ、注意喚起を図っています。
 夏期の高温対策として導入を進めている遮光資材やミストなどについては、作物や家畜の環境改善に加え、作業者の労働環境を改善する効果もあると考えられます。
 また、各農業改良普及課が推進している家族経営協定において、取り決め項目として労働衛生・健康管理を加えるよう助言しており、労働環境を見直す機会となっています。
 今後は、農業者の研修等における情報交換の場の設定などを検討していきます。
 なお、雇用労働力確保に向けた取組としては、JAグループの無料職業紹介事業や人材派遣業者による人材斡旋が行われているほか、近年では技術力のある外国人材の活用も進んでおりますので、各社が提供するサービスの利用をご検討ください。また、お近くの農林水産事務所農業改良普及課にも御相談ください。

 

 
杉山 範子 様(名古屋大学)

(御意見)

(1)農林水産業における脱炭素に向けた取組について
 昨年10月、菅総理大臣は2050年に温室効果ガス排出量実質ゼロの「カーボンニュートラル」、脱炭素社会の実現を目指すことを表明した。
 また、2021年4月に開催された気候サミットでは、2030年度において、温室効果ガスの削減目標を2013年度から46%とし、さらには50%削減を目指すことを宣言した。
 8月9日には、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が第6次報告書(WG1)を発表した。
 「気候危機」の時代、脱炭素は世界共通の課題であり、国や地方自治体、民間事業者、県民等が総力を挙げて、すべての分野で取り組む必要がある。
 農林水産業においても、脱炭素化を進めると同時に、持続可能な農林水産業へ転換していくことが求められる。愛知県においてどのように取り組んでいくのかお伺いしたい。気候変動への取組みは、適応策も含めて、他部局との連携が重要と考える。
 具体例として、資料2の1ページ目に記載のある製氷・貯氷施設などの補助事業で整備される施設におけるZEB(ネットゼロエネルギービル)に向けた対応や、愛知県で盛んな施設園芸における化石燃料の削減、ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)に関しどのように取り組んでいかれるのかお示しいただきたい。

(2)重点プロジェクト4 「半農半X」などによる農村地域への居住支援について
 昨今のコロナ禍で、都会から地方への移住を希望する人が多いというアンケート調査結果もでている。気候危機もコロナ禍も、持続不可能な現在の社会システムを変革するチャンスと捉え、優秀な人材や若者に、愛知県の農山漁村に移住してもらえるよう、積極的に進めていただきたいと思う。

(3)SDGsについて
 愛知県は2019年7月にSDGs未来都市に選定されている。食と緑のレポートには、SDGsの17のゴールのロゴが、関連のあるものについて入っている。2030年の目標年まであと10年をきったいま、新たな2025年までの計画では、SDGsの取組みをどのように進める予定でしょうか。
 県の将来ビジョンやローカルSDGs実現のための指標で、農林水産業に関わるもの、県独自のデータが得られるものがあれば、共有してはどうでしょうか。

(4)温室効果ガスの排出量及び削減について
 現在、国の地球温暖化対策計画(案)が発表され、パブリックコメント中である。国の計画(案)の温室効果ガス削減目標は、2030年に2013年比46%削減となっている。県の計画でも今後、削減目標を変えていく必要があるでしょう。
 いずれにしても、2050年には実質ゼロを目指すことに変わりはない。
 愛知県の農林水産業における温室効果ガスの排出量はどのくらいで、県の計画では2030年に向けてどのように削減していくのか。
 農林水産業の分野での脱炭素の取組みは重要である。脱炭素の取組みは、愛知県の農林水産物に新たな価値を生み出すものと思う。先送りすることなく、ギアを1つ上げていただきたいと思う。

(県の回答)

(1)(製氷・貯氷施設に関する取組について)
 製氷・貯氷施設に関しては、日間賀島漁業協同組合と大濱漁業協同組合が整備する施設に補助を行っております。両施設はネット・ゼロ・エネルギー・ビルの規格は達成しておりませんが、適正規模の設計や高性能断熱、高効率製氷機器の設備導入などにより、従来に比べて、それぞれ38%、32%の電力エネルギー消費を低減する計画です。
 また、今回導入する設備は、フロン排出抑制法に対応するフロンガスを使用しない製氷設備であり、今後も県といたしましては、環境に配慮した建築物の普及に努めてまいります。

(施設園芸に関する取組について)
 本県ではこれまで、国の「施設園芸等燃油価格高騰対策」を活用して、ヒートポンプや被覆カーテンなどの省エネ設備の導入を進め、化石燃料の削減に取り組んでまいりました。
 この対策では、農業者のグループが化石燃料の削減を目標に掲げた「省エネルギー等推進計画」を作成し、計画に基づき省エネ設備の導入を進め、その結果、県内で約5,200台のヒートポンプが導入されました。【削減目標:△3,513KL、△25.7%】
 なお、令和3年5月に農林水産省は、「みどりの食料システム戦略」を策定し、施設園芸については、2050年度までには、化石燃料を使用しない施設への完全移行を目指すこととしていることから、今後、農林水産省の動向を注視しつつ、化石燃料の削減に努めてまいりたいと考えております。

(営農型太陽光発電に関する取組について)
 営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)は、作物の販売収入に加え、売電による収入や発電電力の自家利用により、農業者の収入拡大による農業経営のさらなる規模拡大や6次産業化の推進が期待できます。
 営農型太陽光発電に取り組むに当たっては、発電事業を行う間、太陽光パネルの下部の農地で営農を継続する必要があり、設備の設置に当たっては、農地法に基づく一時転用許可が必要です。
 県といたしましては、国の通知に基づき、適切に転用許可事務を取り扱っているところです。
 県内における営農型太陽光発電の導入実績は109件(2020年度末)となっておりますが、当該農家における導入後の経営状況までは把握しておりません。
 今後とも営農型太陽光発電については、国の施策内容等を注視するとともに、農家の導入状況等の情報収集に努めてまいりたいと考えております。

(2)本県農山漁村地域においても少子高齢化が進行しており、今後、人口が減少し、地域コミュニティが衰退し、農山漁村の維持にも支障をきたすことが懸念されております。
 一方で、「田園回帰」による人の流れは、全国的な広がりを持ちながら継続しており、農村の持つ価値や魅力が国内外で再評価されているところであります。
 愛知県は、農業産出額全国8位の有数の農業県でありますが、三大都市圏の1つとして多様な産業が集積しており、半Xを確保するための選択肢が他の道府県と比較して相対的に豊富と考えられます。
 また、交通網が発達し、豊かな自然環境にも恵まれた「住みやすさ」という優位性もあると考えております。
 「食と緑の基本計画2025」では、地域住民や関係人口による活動の促進として「半農半Xに取り組む多様な人材への支援」を新たに掲げ、県がこれまで取り組んできた専業農家の確保・育成の取組に加えて、都市部から農村地域への人の流れを生み出す農村対策の一つとして、農村地域の活性化に資するものとなるよう取り組んでまいります。

(3)食と緑の基本計画2025の策定にあたっては、基本計画の施策がSDGsにどのように貢献できるのかを検討し、計画の58から59ページに「『食と緑の基本計画2025』のSDGs達成への貢献」として整理し、関連する施策を推進していくこととしています。
 具体的には、「ゴール2(飢餓をゼロに)」に関しては、生産性の向上に資するスマート農業技術の現場実装や新品種等の開発などに取り組み、農業の生産力や持続可能性の維持・向上を図っていきます。
 また、「ゴール8(働きがいも経済成長も)」に関しては、農業の労働力不足を解消するとともに、障害のある方が農業の分野で生き生きと活躍できる社会の実現に向けて農福連携を推進することや、「ゴール11(住み続けられるまちづくりを)」に関しては、県土や県民を地震や豪雨などによる被害から守るため、ハード・ソフトを適切に組み合わせた防災・減災対策を総合的に推進することとしています。
 このほか、「いいともあいち運動」による地産地消の推進や、水産資源管理の強化などによる水産資源の増大、森林資源の持続的な利用や森林の保全など、SDGsの達成に貢献できる施策に積極的に取り組み、その進捗については、計画に位置付けた目標や進捗管理指標により、毎年度状況を確認し、結果を公表してまいります。

(4)本県における直近(2018年度)の温室効果ガス総排出量は、79,540千t-CO2で、このうち二酸化炭素が75,137千t-CO2で9割以上を占めています(表1)。
 二酸化炭素排出量のうち、部門別の割合は表2のとおりとなっており、農林水産業にかかる排出量は産業部門(40,395千t-CO2)に含まれています。
 本県では、2017年度に「あいち地球温暖化防止戦略2030」を策定し、温室効果ガス削減目標を設定するとともに、今後の温室効果ガス削減策の方向性や気候変動の影響の適応策を位置付け、総合的かつ計画的に地球温暖化対策を進めているところです。
 この戦略における温室効果ガスの削減目標は、2030年度の排出量を2013年度から26%削減することを目標としており、農林水産業に関する取組としては、園芸用施設への省エネルギー設備の導入や漁船への燃料油消費削減機器の導入等を支援するほか、地球温暖化防止などに効果の高い営農活動を促進するため、環境にやさしい農業に取り組むエコファーマーの認定や、輸送に伴うエネルギー消費量の削減に資する地産地消の取組を推進していくこととしています。
 今後とも、これらの取組を推進するとともに、地球温暖化対策に関連する動向の変化に注視し、関係機関・部局と連携して脱炭素に向けた取組を加速化していきたいと考えております。

 

表1 県内の温室効果ガス総排出量の内訳等

                               (出典:愛知県環境局HP)

 

表2 部門別二酸化炭素排出量の経年変化

                              (出典:愛知県環境局HP)

 

 
鈴木 才将 様((公財)愛知県農業振興基金)

(御意見)

〇重点プロジエクト4 「半農半X」などによる農村地域への居住支援について
 農林水産省が進めている「人・農地など関連施策の見直し」において、地域における農地利用の青写真である「人・農地プラン」に位置付ける中心経営体として、現行の認定農業者等の担い手だけでなく、中小規模の農家や、農業を副業的に営む半農半Xの経営体などの多様な経営体も加える方向が示されている。
 こうした多様な経営体が存在することは、本県農業・農村の維持・発展に対して、農地の多様で健全な利活用を通じて産地や地域全体の農地の保全に貢献するだけでなく、農業に様々な形で関わる多くの人々がその地域に居住できるという点においても重要である。
 また、農業のみで生計を立てることが困難な中山間地域等においては、半農半Xのような経営体も地域を支える担い手として積極的に位置付け支援することは極めて重要である。
 県においては、この半農半Xについて、本年度は優良事例調査や有識者ヒアリング、PR動画の作成等を行う計画となっているが、調査やヒアリングに当たっては、上述の観点も念頭に置き、単なる移住対策で終わらせないよう取組を進めていただきたい。

(県の回答)

〇今年度実施する半農半Xの調査につきましては、半農半Xを志向する都市住民に実践の場として本県の農村地域を選んでもらうため、県内の優良事例を調査し、愛知の農村の魅力や住みやすさ、ライフスタイルとしてのイメージが持てるような事例集の作成やPR動画による情報発信等を行います。
 また、半農半Xを推進する専門家への有識者ヒアリングでは、半農半Xを促進する上での課題や都市住民等への普及の方策などを明らかにし、今後の取組に生かしていくこととしています。
 上記の取組に加え、愛知県で半農半Xの実践希望者を確保し、受け入れていくためには、市町村の協力も不可欠となりますので、本事業の推進につきまして、関係市町村とも密接に連携しながら、農村地域の活性化に資するものとなるよう、また、半農半Xの実践者の中から将来的には地域の担い手となる者もあらわれるよう取り組んでまいります。

 

 
竹下 伸二 様(愛知県土地改良事業団体連合会)

(御意見)

〇農業農村整備事業の推進について
 愛知県内には、農業用用排水路を始めとする農業用施設の多くが老朽化しています。また農業者の高齢化や労働者不足が懸念されます。そのため、生産基盤の整備と併せて、農地の集積・集約化を進め、生産力の強化を図ることが重要です。
 また、県内には400を超える排水機場があり、農地や農村だけでなく、地域住民の生命も守っています。2,000近くある農業用ため池は、農地に水を供給する以外に地域に潤いを与えています。しかし、災害時に被害を最小限にとどめるための対策は必要です。
 多面的機能支払制度は、農業活動と地域住民との生活を深める重要な事業と捉えています。農業用施設が地域の安全で豊かな暮らしに寄与していることを知ってもらうことは重要なことと考えます。
 これらのことを踏まえ、
 「食と緑の基本計画2025」の推進として、2021年度の取り組み内容が示されていますが、私どもが関連するところで言いますと、もちろん新型コロナウイルス対策をしながら進めていく必要はありますが、資料2P.2重点プロジェクト1 農業の生産力強化のひとつとして、右下 農地等基盤の整備と担い手への農地集積等の3つの取り組み、そしてP.6重点プロジェクト5 農山漁村地域の防災・減災対策として、左側にあります防災・減災機能の向上での排水機場や農業用ため池の耐震対策や更新整備、右側の農地の持つ多面的機能の維持のための多面的機能支払制度を活用した地域の共同活動の支援、その下のソフトとして排水機場やため池などを適切に管理、保全していくための取組が掲げられており、併せて21年度の活動計画がしっかりと示されています。
 2021年度の活動計画の達成に向け努力し、「食と緑の基本計画2025」の推進ができるよう、引き続き、県農林基盤局農地部と一緒になって進めていきたいと考えています。よろしくお願いします。

(県の回答)

〇「食と緑の基本計画2025」に位置づけられている土地改良に関する施策については、将来にわたり農業を支えるとともに、地域住民の生命を守り、農地や農村が有する多面的機能を維持・発揮していく重要なものです。
 県としましても、農業農村整備事業を着実かつ計画的に進めてまいる所存であり、施策の推進にあたっては、土地改良事業団体連合会との連携が不可欠でありますので、引き続き連携を密にして進めていきたいと考えております。

 

 
灘波 猛 様(トヨタ自動車(株))

(御意見)

(1)基本計画の目標値の現状について
 重点プロジェクトの目標で防災・減災対策の6,500haや水産業の干潟浅場の5haなど、目標値だけでは取組の規模感がつかめず、重点プロジェクトの目標達成に必要な事業量となっているか不明なため、重点プロジェクトの目標に対する現状について御説明いただきたい。

(2)プロジェクトの各種取組の優先順位について
 各プロジェクトについて、目標達成のための取組が網羅的に掲載されているが、目標達成のための核となる取組がどれなのかよくわからない。他県の計画を見せてもらうこともあるが、県によってはもっと重点を絞って取組を記載しているところもあるので、各重点プロジェクトの整理にあっては、それぞれの分野でとくに重点的に取り組んでいく事項をピックアップするなど記載方法を検討していただきたい。

(3)農産物の地域内流通網の構築促進について
 農産物の地域内流通網の構築促進は、地産地消を推進する重要な取組であるが、民間主導で県内生産者と飲食店等をマッチングさせることは難しく、最初の旗振り役として、自治体がやることに意味がある。

(県の回答)

(1)(防災・減災対策の目標値について)
 防災・減災対策6,500haの内訳としては、「農業用排水機場の耐震対策等を5年間で3,400ha」、「農業用ため池の耐震対策及び豪雨対策を5年間で1,100ha」、「治山施設の整備・機能の強化を5年間で2,000ha」となっています。
 このうち、農業用排水機場の耐震対策等については、排水機場を整備することでたん水被害等から護られる面積を計上しております。
 県内にある230か所の基幹的排水機場のうち、昨年度末時点において、55か所の対策が完了しています。計画期間である2025年度までに、22か所の農業用排水機場の対策を完了する予定としており、たん水被害等から護られる面積が3,400haとなる見込みです。
 また、農業用ため池については、ため池の決壊による被害から護られる面積を計上しています。決壊した場合に人的被害の発生のおそれがある「防災重点農業用ため池」1,035か所のうち、昨年度末時点において、462か所の対策が完了しています。計画期間である2025年度までに、46か所の防災重点農業用ため池の対策を完了する予定としており、ため池の決壊による被害から護られる面積が1,100haとなる見込みです。
 次に、治山施設の整備については、地域森林計画(10年)により、治山事業の計画量を年度あたり40地区としております。1地区あたりの整備面積は渓間工、山腹工合わせて10.3haであり、これらを掛け合わせることで治山事業による整備面積の目標を5年間で2,000haとしております。
 事業実施にあたっては、山地の崩壊により人家や公共施設に被害が及ぶおそれのあるところを「山地災害危険地区」に指定し、危険度並びに緊急性の高いところから優先的に治山施設の設置を進めてまいります。
(干潟浅場の目標5haについて)
 三河湾では、1945年から1978年の沿岸開発に伴う埋立により、1,260haの干潟が喪失しました。その後の研究により、干潟は貝類等多様な生物の生息場であるとともに、高い水質浄化の機能があることがわかってきたため、県では、干潟・浅場造成や覆砂事業により、1998年から2004年までに約620haの干潟・浅場を再生し、漁業生産力の回復や海域環境の改善を図ってまいりました。
 さらに、2014年に県が策定した「三河湾環境再生プロジェクト行動計画」では、当面の目標として、約600haの干潟・浅場などの造成を行うとしており、農業水産局では2005年から2020年までに71haの造成を行いましたが、造成材となる良質な砂の確保が課題となっております。
 2021年度は、国と連携した砂の確保により、5haを造成する予定ですが、2022年度から2025年度は、国との連携をさらに強化し、近年の造成実績の倍増となる毎年10haを計画しており、干潟・浅場の造成の拡充に取り組んでまいります。

(2)食と緑の基本計画2025では、「めざす姿」を踏まえて設定した目標を達成するため、関連する取組を効果的に組み合わせた5つの重点プロジェクトと、「新型コロナ対策」としての緊急プロジェクトを設定しました。
 その設定にあたっては、様々な取組の中から、計画期間中に重点的に取り組む施策をパッケージ化しており、その進捗を管理するため、本年度の取組の中から、重点的な取組をピックアップし、その状況を「取組状況確認表」に取りまとめました。
 今後も、プロジェクトの進捗を確認する際には、主な取組の中から、重点的な取組をピックアップし、その状況を簡潔に取りまとめてまいります。

(3)農産物の県内の流通では、生産者と飲食店等と個別にマッチングが成立している事例はありますが、広域で流通網を構築するためには、御意見のとおり自治体が旗振り役となり、推進していく必要があると考えています。
 このため、県では、3カ年計画で流通網構築に向けて取り組むこととしており、初年度となる今年度は、事業量調査や流通網の設計を行い、来年度以降、実証試験を進め、3年後には民間事業者による流通網が構築できるよう取り組んでまいります。

 

 
久田 泰一郎 様(津島市立神守中学校)

(御意見)

〇地元JAによる学校給食用の地元農産物の計画的提供について
 食農教育活動の一環として、平成22年度より地元JAから学校給食用として地元農産物を計画的に提供していただいてきた。
 あいち食育いきいきプラン2025では、学校給食において、全食品数に占める県産食品数の割合(45%以上)や年間に使用した県産食品の種類(60種類以上)の目標が定められている。県産食品を多く活用することにより、子ども達が地域の農産物や地産地消について理解を深め、食の大切さを学ぶ機会になると考えている。
 そのため、地産地消や食育の推進のためにも、JAさんには地元産食材の学校給食への活用充実を図る取組を引き続き支援していただきたい。

(情報提供)
〇津島市の伝統食材「津島麩」に関する取組について
 津島市で江戸時代から続く郷土料理の食材である「津島麩」は、約15年前に一度姿を消したが、200年の歴史があり、長年親しまれてきた「津島麩」を後世に伝えていくべく、市内の業者が2年前に「津島麩」を復活させた。昨年度、「学校給食にも出してはどうか」との話しがあったのをきっかけに、今年の6月には生産体制を整え、障がい者就労施設と連携して、9月から学校給食用に提供できる状況になっている。給食指導の一環として、「津島麩」を紹介する番組づくりなどについても実施の方向で検討に入っており、津島の伝統食材を知ってもらう取組を進めている。

〇「給食献立コンクール」の取組ついて
 津島市では、児童生徒が家族と一緒に給食の献立を考え応募する「給食献立コンクール」を平成27年度より実施している。夏休み中に審査が行われ、9月には入賞者が決定し、11月から月2作品の頻度で献立に採用している。今年度で7年目の取組であり、市のHPでもレシピを紹介している。例年500~600件の応募があり、常連もできるなど、この取組が定着してきている。
 また、既存の献立表の手直しなど、常に新しい取組にも心がけ、子ども達だけでなく、ご家庭の方にも給食に興味を持ってもらえるよう工夫している。

(愛知県農業協同組合中央会からの回答)

〇御意見のとおり学校給食は、地産地消や食育推進の要(かなめ)と、その重要性を認識しております。
 現在、地元農産物を納入する方法としては、JAが直接入札等により食材を納入する方法や食材納入業者を通じて納入する方法などがあり、JAにおいてはそれぞれの方法を活用しながら地元産食材の学校給食への活用に努めているところです。
 JAグループとしては、引き続き、県や市町村、教育委員会、食材納入業者等と連携協力して地元農産物の提供に努めてまいりたいと思いますので、校長先生の特段の御理解をお願いします。

(県の回答)

〇県では、子どもたちに食の大切さや地域の農林水産業に対する理解醸成を図り、地産地消を推進する観点から、市町村や県・市町村の教育委員会等と連携を図り、学校給食における県産農産物の導入促進に向けた取組を行っております。
 具体的には、県産農産物導入には安定的に使用量を確保することが課題となっており、市町村毎に学校給食の運営方法が異なることから、県内7つの農林水産事務所毎に市町村を抽出し、導入促進に向けた問題点や課題を把握し、関係者の相互理解を深めるための意見交換会を開催しております。
 また、本庁でも、関係機関、農業団体などとプロジェクトチームを設置し、県産農産物の供給体制に向けた検討を行っているところです。
 引き続き、教育委員会と連携して、学校給食における地元産食材の導入促進に向けた取組を実施してまいりますので、関係者の皆さんの御理解と御協力をお願いいたします。

 

 
前田 徹 様(愛知県森林組合連合会)

(御意見)

(1)間伐の推進について
 前回計画において森林林業関係は概ね目標を達成しているが、レポートの40、41ページにある森林の保全整備面積、間伐の実施面積は目標の4,000haに対して、5年間すべて目標を下回っているうえに、年々実績が下がり、2020年度は目標の65%にとどまっている。
 間伐は、優良な木材生産のための施業と捉えられているが、森林の持つ公益的機能の維持・増進のための施業といった部分も大きく、近年、林業の採算性が低下している中、森林所有者の自主的な取組としての間伐実施は難しいことから、森林組合などの事業体が森林所有者に代わって請負や補助といった方法で、国、県、市町村の事業により実施しているのが実態である。
 現計画でも引き続き4,000haを計画されているが、県として目標面積の達成のために、今後どのように取り組まれていくのかお伺いする。

(2)スマート林業、木材利用の促進について
 資料2の3ページ、重点プロジェクト2で示されているように、林業の生産力強化にはスマート林業の推進が不可欠である。
 スマート林業の基礎となる航空レーザ計測データの解析については、県が率先して実施されたので、今後は森林資源情報などのデータをいかに生かしていくかという段階に入っていく。
 貴重なデータをいかに生かしていくか、使いこなすのか、県を始め市町村や我々事業体が一体となって取り組む必要があると考えるが、市町村や事業体には知識、能力が足りていないのが現実である。
 県には、財政的支援に加えて、現場の実態に合ったシステムの構築やデータ活用のノウハウなど、強力な指導、リーダーシップをお願いしたい。
 また、林業の活性化のために県産木材の需要拡大は重要な取組である。近年は、カーボンニュートラルやSDGs、さらには県産木材利用促進条例の動きなど、木材の需要拡大に追い風が吹いていると感じている。このチャンスを逃さずにしっかりと県産木材利用の促進に取り組んでいただきたい。

(県の回答)

(1)前回計画の中で目標の4,000haを達成できなかった要因についてですが、間伐材の有効利用の観点から切り捨て間伐から利用間伐へシフトしたこと及び森と緑づくり事業において、林業活動では整備が困難な人工林のうち、防災減災対策として、道路・河川沿い、集落周辺を重点的に間伐することとしたことがあげられます。
 利用間伐及び防災減災対策は、切り捨て間伐と比べて、作業工程の増加や安全対策にかかる費用が多くなるため、施業コストが増大し間伐面積の減少につながったと考えています。
 今後は、目標に向けて、林内路網の整備や高性能林業機械の活用、スマート林業の導入など、森林施業の省力化、効率化に取り組み、コストの削減を図っていきます。
 また、2019年度より、森林所有者が管理できない森林を市町村が主体となって整備していく「森林経営管理制度」が始まっており、財源として森林環境譲与税が市町村にも譲与されています。市町村による間伐が着実に進むように、県としては、航空レーザ計測による森林情報の整備を進めるほか、各種研修による市町村職員のスキルアップやサポートセンターの設置、林業経営体の育成などに取り組み、しっかりと市町村の支援をしていきます。

(2)スマート林業の推進については、全国に先駆けて、航空レーザ計測データの取得、解析に取り組み、今年度末で全県の森林区域を終了する予定です。得られた詳細な地形情報、森林情報を共有し、有効に活用するため、市町村や事業体の皆さんの意見を聞きながら、森林情報クラウドシステムの開発を行います。
 あわせて、木材の生産情報と需要情報を共有する「木材需給情報システム」を導入し、木材生産、流通の効率化を図ることで、川上から川下までの事業者がWin-Winとなる関係を構築するとともに、県産木材の安定供給の実現を目指します。
 また、これらの新しい技術を現場でスムーズに活用していただくために、森林環境譲与税を活用した研修や普及指導員による直接のサポートなど、県の役割をしっかりと果たしてまいります。
 木材利用の促進については、今年度、都市部における木造・木質化を促進していく上での技術、流通、コスト面における課題を洗い出し、一つ一つを精査することによって、対応策の検討を行います。
 この対応策を基に、建築物のタイプに合わせて戦略的な働きかけを行うとともに、木造建築技術者の育成など木造・木質化を促進する取組を進めていきます。
 「スマート林業の推進」と「木材利用の促進」はどちらも欠くことのできない車の両輪でありますので、追い風に乗って、この二つを力強く進めていきます。

 

 
間瀬 堅一 様(愛知県漁業協同組合連合会)

(御意見)

〇漁業生産力の強化と新型コロナウイルスの影響への対応について
 漁業者は、資源の変動や漁場生産力の低下にともなう、所得の減少に苦しんでいる。特に西三河地域を主体とするあさりや、毎年の春の風物詩だったいかなごの減少が著しい。
 新しい計画では、海の生産力の回復に取り組むということで、干潟・浅場の造成や貝類増殖場の整備などを進めていただいているが、いまだ資源は回復途上にあり、漁場の造成は、さらなる強化が必要である。今年も実施していただく下水道の栄養塩増加運転については、漁業者はアサリやノリ養殖などへの効果を実感しており、今後も、引き続き、生産力の回復に取り組んでいただきたい。
 また、資源の変動に左右されない安定した漁業経営が重要であり、漁業経営が改善されれば、自分の子供に後を継がせることを前向きに考えてくれるし、陸に上がっていた漁業者は戻ってくると思う。
 新型コロナウイルスの拡大は水産業にも大きな影響があり、特に南知多など地場の観光業との結び付きが強い地区では、外出や旅行の自粛による消費の減退が魚価の下落をもたらし、地域の漁業者や漁協の経営は厳しい状況にある。国や県には様々な支援策に取り組んでいただいているが、引き続いての支援をお願いしたい。

(県の回答)

〇近年、本県の水産資源は、漁場環境の変化により変動が大きくなっていることから、漁業者は水揚げが安定せず、漁業経営が不安定になっています。また、昨年からのコロナ禍により、経営はさらに厳しさを増しており、漁業生産力の強化による資源の維持・増大と、経営の安定化は喫緊の課題となっています。
 このため、県といたしましては、2021年から2025年までの5年間で、干潟・浅場の造成面積の倍増など漁場造成の拡充に取り組むとともに、生産尾数の拡大や新規魚種の生産など栽培漁業の強化、漁業生産に必要な栄養塩レベルの解明など、漁業生産力の強化による資源の維持・増大を図っていきます。
 また、カキのシングルシード式養殖など新たな養殖業の導入による漁業経営の多角化や、水産物の鮮度を保持する製氷・貯氷施設整備による競争力の強化、漁業経営に必要な資金を支援する漁業金融制度の充実などの取組により、コロナ禍の厳しい社会情勢を乗り越えられる漁業経営体を育成し、水産業が持続的に発展をするよう、しっかりと施策の推進に取り組んでいきます。

 

 
山内 祐子 様(愛知県農村生活アドバイザー協会)

(御意見)

〇キクの定植機や価格的に負担の少ない農業機器等の開発・普及について
 田原市は外国人技能実習生の受け入れが多い地域ですが、コロナ禍により出入国制限がかかり、計画どおりに受け入れができなくなっています。短期雇用など代りの人材を確保しようとしても、なかなか直ぐには見つかりません。また雇用者等があると、ハウスや作業場での感染対策に神経を使うことも多く、気苦労が絶えない状況が続いています。
 こうしたコロナ禍の中で、我が家のような家族労力が中心の農業経営において、必要な労働力を安定的に確保していくためには、食と緑の基本計画の重点プロジェクトや緊急プロジェクトにも挙げられているように、省力化技術や機器の導入やスマート農業を行っていくことが必要だと思います。
 キクでは定植作業が重労働で、労力確保や規模拡大の妨げになっています。行政や民間などが協力して、キクの定植機を作っていただけると助かります。
 またスマート農業については、まだまだ現場では普及しておらず、農業者が使いやすく、価格的にも負担の少ない技術や機器等の開発・普及をお願いしたいと思います。

(県の回答)

〇キクの定植機は、野菜用セル苗定植機を特注改良した歩行型や乗用型のものが一部の農家に導入されています。
 しかしながら、これらはセル苗用機械がベースになっているため、東三河地域のキク挿し穂栽培に適したものではないのが現状です。
 そのため、今後、キクの挿し穂定植機の実用化に向けて、その課題や改善点について産地との情報交換を行い、メーカー等との協議を進めてまいります。
 また、スマート農業については、近年、民間企業において先端技術を用いたスマート農業機械が商品化されておりますが、コストの高さなどから導入をためらう農家が多いことが課題となっています。
 こうした中、農業総合試験場においては、民間企業や大学と共同で安くて使いやすい技術を開発し、現場検証を実施しながらスマート農業の推進を図っています。
 昨年12月に策定した「愛知県農林水産業の試験研究基本計画2025」においても、「高収益、省力生産を可能にするスマート農業の実現」を重点研究目標の一つに掲げるとともに、本年4月には研究戦略部と普及戦略部を新たに設置して、スマート農業技術の開発と現場への普及を強力に推し進めることとしています。
 今後も、試験研究と普及組織が一体となって、スマート農業技術の開発と普及に取り組んでまいります。

 

 
吉田 典子 様(愛知消費者協会)

(御意見)

〇普及指導員の指導スキルやコーディネート力の向上について
 愛知県の農業を持続的に発展させていくためには、「食と緑の基本計画2025」の柱の1つめに掲げられている「農業を支える多様な人材」を確保・育成していくことが必要であり、そのためには、農業技術の指導や経営相談を行う県の普及指導員が果たす役割が大きい。
 近年、新規就農者は昔のように農家の跡取りが大多数という状況ではなく、定年退職された方、他業種から転職される方など、多種多様な方が新たに就農されていると伺っている。
 農業に関する知識・経験や思いもそれぞれ千差万別な状況で、相手の事情に合わせた適切な普及指導を行う能力が求められる。
 さらに近年では新型コロナウイルスへの対応やスマート農業の普及など新たな課題への対応も必要となっているので、普及指導員には一層、指導スキルやコーディネート力を磨いていただき、多くの生産者を育成していただけるようお願いしたい。

(県の回答)

〇本県では、普及指導員の人材育成の取組を定めた「普及指導員育成計画」を策定し、これに基づいて、自己啓発を基本としつつ、OJT(職場で日常の業務を通して行う研修)を中心とし、OFFJT(日常の業務を一時的に離れて受ける集合研修等)において補完することにより資質の向上を図っています。
 また、普及組織の機能強化を図るため、2021年度から農業総合試験場に新たに設置した普及戦略部を普及組織の司令塔として、各農業改良普及課の普及指導員と一体的に活動を推進する体制としました。
 併せて、普及指導員に対する研修内容を見直し、スマート農業やコーディネート力向上などの内容を強化したところであり、これまで以上に普及指導員の資質向上に取り組んでまいります。

 

 
吉野 隆子 様(オーガニックファーマーズ名古屋)

(御意見)

(1)さらなる担い手の確保・育成について
 2020年の農林業センサスにおいて、基幹的農業従事者数のうち64歳以下の割合が約30%にまで減少しており、ショックを受けた。技術革新により生産性の向上を図ることは大事だが、若い人材を育成することも重要であるので、さらなる担い手の確保・育成に有効な施策に取り組んでいただけないものか。

(2)研修先農家の負担軽減について
 現行制度では、研修生に対しては次世代人材育成投資資金による支援があるが、研修を受け入れる側の農家に対しては支援がないため、研修先農家の負担軽減ができないか検討いただけないか。

(3)農業大学校における一般人向け有機農業の講義について
 有機農業の推進のため、愛知県の農業大学校で学生だけでなく、一般の人に向けても有機農業の講義を行っていただきたい。講師の派遣についてはあいち有機農業推進ネットワークのメンバーや私がコーディネートするので、学校のカリキュラムに有機農業の授業を加えることをご検討いただけないだろうか。

(4)有機農業の地域の理解を得るための取組支援について
 最近では、親は慣行農法だが、跡を継ぐ子どもが有機農業を希望するパターンが増えてきている。慣行農法でやってきた親の理解を得るのが難しい場合もあるようだが、すでに農業の基盤があるため、新規参入者と比べれば格段に取り組みやすい。
 一方で、過去の地域とのトラブルなどによって有機農業の受入に難色を示す地域もあるので、地域の理解を得るための取組も必要であると感じているので、消費者だけでなく、生産者にも有機農業への理解が深まるよう働きかけをお願いできないものか。

(県の回答)

(1)担い手の確保に関しては新たな就農相談窓口として「農起業支援ステーション」を農業大学校に設置し、就農関連情報の一元化を図るとともに、定期的な就農相談会の開催やリモート相談の導入により、農業改良普及課にある農起業支援センター8か所による就農相談体制を強化しています。さらに、相談開始から双方が連携して一貫した支援を行い、多様な就農希望者のニーズに対応して新規就農者の確保に努めてまいります。
 また、育成に関しては、農業大学校で実施している就農希望者向け研修への誘導や、産地の受入体制の支援を行ってまいります。

(2)研修生を受け入れてくださる農業者の皆さんが実施する研修は、ほ場での栽培技術を習得させることが中心になっていると思います。愛知県農業大学校では、新規就農希望者を対象としたニューファーマーズ研修を毎年実施しており、主に座学による栽培技術・経営等に関する研修を行っています。研修生にニューファーマーズ研修を受講させることにより、負担軽減になると考えております。

(3)農業大学校では教育部農学科の学生向けの共通教育カリキュラムの中に環境保全と農業に関する科目があり、環境に配慮した農業を学ぶ機会を設けています。
 また、現行の農業者向け研修の中ではさまざまな技術を取り上げて技術習得を推進してきた実績があり、今後、有機農業をテーマとした研修も検討してまいります。

(4)有機農業に限らず、農業生産を行うに当たっては地域の理解は必須と考えます。
 本県では、有機農業者の皆様の協力をいただき、地域において有機農業研修会を開催し、市町村や農協の参加も得て、広く情報交換に努めております。
 また、2020年度より、国費を活用して有機JAS認証制度の知識を有する職員の育成を図り、その知見や技術を高めております。
 これらの活動により、今後さらに、生産者を含む地域全体に対して、有機農業が身近に感じられる栽培技術の一つとして定着するよう、努めてまいります。

 

 
【座長総括】 徳田 博美様(名古屋大学)

(1)コロナ禍に対しては、緊急の対策(Withコロナ)とコロナ禍を契機とした社会の変化に対応した食・農林水産業のあり方(Afterコロナ)の2つの課題があると思う。
 当面は、需給のミスマッチの解消、農業労働力対策、農林水産業の現場での感染対策などの緊急対策が課題となるが、Afterコロナも近い将来、検討課題となってくることも考えられる。  
 まだAfterコロナで社会がどう変わるか(あるいは、変わるべきか)、具体的な姿はみえていないが、コロナ禍からの復興での経済のグリーン化の重視、短期的なコスト、効率性よりもレジリエンス(強靭性)の重視、ウッドショックといわれる木材価格の高騰、大豆、小麦などの農産物価格の上昇など農林水産物の国際市場の変化など、これまで潜在化していたものが一気に顕在化している。
 現段階でこれらを計画に盛り込むことは難しいが、いずれ、計画の大幅な見直しが求められる可能性も踏まえておくことも必要であろうと思う。

(2)温室効果ガス排出削減目標の引き上げ、SDGsへの関心の高まりなどを踏まえると、環境負荷軽減抜きに今後の農林水産業の展開はないであろう。
 環境負荷軽減対策では技術開発に焦点が当てられがちであるが、技術開発に限るべきではない。農林水産業経営の形態や社会との関わりなど、広い視野から環境負荷軽減対策の検討が求められている。

(3)スマート農業は、農林水産業技術の重要なキーワードとなっており、これまで技術開発や実証事業など、多くの取組みが行われてきた。
 しかし、具体的な技術体系やその効果はまだ定まっていないようにみえる。
 そろそろ、これまでの成果と課題を整理して、具体的なスマート農業の姿や普及の目標を明確にして、取組み内容も見直していく時期に来ているように思われる。

(4)担い手対策は喫緊の課題であるが、農林水産業を維持発展させていく上で必要な担い手を確保することは容易でない。
 地域の実情に応じて多様な担い手に対する支援を柔軟に進めていくことが必要であると思われる。
 新規就農者への支援は、担い手対策の重要な柱になるが、新規就農者を確保するだけでは、必要な担い手を確保することは難しいと思われる。
 現在いる農業就業者を含めて多くの者が農業に関われるような対策が求められる。

(5)農林水産物の需要対策は、コロナ禍などによる市場の変化を踏まえた取組みが課題となってくることが考えられる。
 例えば、これまで以上に地産地消が重視されてくると思われるし、その一方で、インバウンド需要は当面難しいし、Afterコロナでも、元に戻るのかは定かでないと思われる。

(6)今回のオリ・パラでも多様性が強調されたが、これからは多様性を尊重し、相互に理解するための対話が重視されるようになると思われる。
 食料、農林水産業に関する施策においても、消費者も含めた多様な関係者間での対話を進めながら、実施していくことが大切である。

 

 

会議資料

次第 [PDFファイル/68KB]

資料1-1 (表紙~第2章) [PDFファイル/4.17MB]

資料1-2 (第3章~裏表紙) [PDFファイル/2.02MB]

資料2 [PDFファイル/1.44MB]

 

 

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