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愛知県における外部監査(平成20年度テーマ2)

ページID:0020901 掲載日:2008年12月25日更新 印刷ページ表示

「内陸用地造成事業及び臨海用地造成事業における造成土地の管理について」(結果の概要)

第1 外部監査の概要

1 選定した特定の事件

内陸用地造成事業及び臨海用地造成事業における造成土地の管理について

2 事件を選定した理由

愛知県では、地域の産業振興と工場の適正配置を目的として、工業用地を中心とした土地造成事業を行っています。工業用地の販売については、ここ数年は上向いているものの、年度間の変動が大きく、一部には未売却地が残っています。

また、総務省の「新地方公会計制度実務研究会報告書」においては、地方公営企業も含めた連結財務書類の作成を推奨しています。この報告書では、その基礎となる公営企業会計の「貸借対照表」を作成する際には、販売目的の土地の評価基準は「地方公共団体の財政の健全化に関する法律」における将来負担比率を算定する際の評価基準を用いることとしています。

用地造成事業については、平成13年度において包括外部監査の対象となっていますが、用地造成事業を取り巻く環境が変化しているため、造成土地の管理について調査する必要性を認めました。

第2 外部監査の結果

1 内陸用地造成事業及び臨海用地造成事業の概要

愛知県では、「愛知県公営企業の設置等に関する条例」において、県民生活の向上と産業の振興を図るため、内陸用地造成事業及び臨海用地造成事業を設置しています。(同条例第1条第3項、第4項)

内陸用地造成事業及び臨海用地造成事業は公営企業であることから、常に企業の経済性を発揮するとともに、公共の福祉を増進するように運営されなければならない、とされています。(同条例第3条)

財務に関しては、地方公営企業法第2条第3項及び地方公営企業法施行令第1条第2項の規定に基づいて、地方公営企業法を適用しています。(同条例第2条)

内陸用地造成事業及び臨海用地造成事業の造成目標は、愛知県公営企業の設置等に関する条例で定められており、平成18年度から平成27年度までの10年間に、内陸用地造成事業は10,500千平方メートル、臨海用地造成事業は5,500千平方メートルを造成することとしています。(同条例第3条第4項)

また、これまでの事業実績は表1及び表2のとおりです。
表1 内陸用地造成事業の平成19年度末現在の造成処分状況(単位:千平方メートル)

種別

取得

面積

処分

面積

リース面積

分譲

予定分

公共分

備考

工業用地(71地区)

23,668

21,529

147

1,109

883

処分完了

59地区

住宅用地(9地区)

2,275

2,275

-

-

-

処分完了

トラックターミナル用地(1地区)

656

656

-

-

-

処分完了

その他(6地区)

5,182

3,748

-

-

1,434

処分完了

5地区

合計(87地区)

31,781

28,208

147

1,109

2,318

(注) 1 取得面積及び処分面積は、交換及び替地によるものを含みます。

2 再取得、再処分等は除きます。
表2 臨海用地造成事業の平成19年度末現在の造成処分状況(単位:千平方メートル)

地区名及び種別

取得

面積

造成済面積

処分

面積

リース面積

分譲

予定分

公共分

備考

造成済

未造成

衣浦地区

工業用地など

(15地区)

12,839

(472)

12,643

(-)

12,465

(472)

4

-

(-)

78

(-)

292

(-)

処分完了

14地区

ふ頭用地

(4地区)

1,540

1,540

1,519

-

-

-

21

処分完了

衣浦地区計

14,379

(472)

14,183

(-)

13,984

(472)

4

-

(-)

78

(-)

313

(-)

三河地区

工業用地など

(12地区)

20,978

17,934

17,047

42

777

2,251

860

処分完了

7地区

ふ頭用地

(3地区)

1,700

1,700

1,700

-

-

-

-

処分完了

三河地区計

22,678

19,634

18,748

42

777

2,251

860

中部臨空都市

空港島

1,067

576

392

48

72

63

空港対岸部

1,231

588

467

50

29

42

中部臨空都市計

2,298

1,164

860

98

101

105

合計

39,356

(472)

34,981

(-)

33,591

(472)

145

879

(-)

2,329

(-)

1,278

(-)

(注) 1 取得面積及び処分面積は、交換及び替地によるものを含みます。取得面積とは、公有水面埋立免許又は同竣功認可に基づく確定面積に用地買収済の面積を加えたものをいいます。

2  再取得、再処分等は除きます。

3  中部臨空都市の公共分面積は、造成済分のみを計上しています。

4 ( )は、公有水面埋立権の管理換え面積を示し、外数です。

  (資料源泉:企業庁作成資料)

2 過去5年間の経営成績及び財政状態の推移

内陸用地造成事業会計及び臨海用地造成事業会計の経営成績及び財政状態の推移は表3から表6のとおりです。
表3 内陸用地造成事業会計の過去5年間の損益計算書(単位:百万円)

項目

15年度

16年度

17年度

18年度

19年度

営業収益

2,786

18,875

8,160

17,996

4,257

営業費用

3,130

24,016

9,408

9,260

3,391

営業利益(△は損失)

△ 343

△ 5,140

△ 1,248

8,736

866

営業外収益

57

70

120

123

241

営業外費用

596

570

409

328

292

経常利益(△は損失)

△ 882

△ 5,640

△ 1,538

8,531

816

当年度純利益(△は損失)

△ 882

△ 5,640

△ 1,538

8,531

816

前年度繰越利益剰余金

16,440

15,558

9,917

8,379

12,645

当年度未処分利益剰余金

15,558

9,917

8,379

16,910

13,461

(注)平成18年度の当年度未処分利益剰余金と平成19年度の前年度繰越利益剰余金の金額が異なっているのは、平成18年度の剰余金処分による減債積立金の繰入4,265百万円によるものです。

 (資料源泉:企業庁作成資料)

 

 

表4 内陸用地造成事業会計の過去5年間の貸借対照表(単位:百万円)

 項目

15年度

16年度

17年度

18年度

19年度

資産の部

固定資産

1,119

1,102

1,101

1,103

1,106

宅地造成資産

78,793

55,517

46,942

44,282

43,236

 うち完成宅地

63,242

44,098

41,071

33,773

30,677

 うち未成宅地

15,550

11,418

5,871

10,509

12,559

流動資産

3,916

11,868

12,574

17,745

19,105

資産合計

83,830

68,488

60,618

63,131

63,448

負債の部

固定負債

49,819

39,850

33,519

27,378

26,417

流動負債

311

580

577

702

1,162

負債合計

50,130

40,430

34,097

28,080

27,580

資本の部

資本金

16,372

18,106

18,106

18,106

18,106

剰余金

17,327

9,952

8,414

16,945

17,761

 うち資本剰余金

35

35

35

35

35

 うち利益剰余金

17,292

9,917

8,379

16,910

17,726

資本合計

33,699

28,058

26,520

35,051

35,867

負債資本合計

83,830

68,488

60,618

63,131

63,448

(注) 処分済宅地とは、割賦で販売されたもので未回収のものであり、企業庁では、代金の回収に応じて収益と原価を計上しています。

 (資料源泉:企業庁作成資料)

平成18年度以降は黒字となっているものの、平成15年度から平成17年度までの営業損失から見てとれるように、内陸用地造成事業の損益状況は必ずしも良好とはいえない状態にあります。その要因は、地価の下落及び長引く不況や製造業を中心とした企業の海外移転に伴う用地需要の落ち込みにより、当初の見込みより大幅に宅地売却収益が減少しているためです。現在、地価はいくぶん回復基調にありますが、今後も、厳しい経営環境が継続すると見込まれます。

財政状態に関しては、新たな宅地造成を抑制してきたため、未処分宅地が減少しています。宅地の処分により回収された資金を企業債、他会計借入金の返済に充ててきたことにより、企業債、他会計借入金が減少しています。
表5 臨海用地造成事業会計の過去5年間の損益計算書(単位:百万円)

項目

 15年度

 16年度

 17年度

 18年度

 19年度

営業収益

15,172

11,859

18,975

20,521

5,182

営業費用

15,238

12,065

18,474

17,966

4,686

営業利益(△は損失)

△65

△205

501

2,555

496

営業外収益

74

144

134

317

456

営業外費用

293

641

663

1,096

977

経常利益(△は損失)

△284

△702

△27

1,777

△25

当年度純利益(△は損失)

△284

△702

△27

1,777

△25

前年度繰越利益剰余金

11,261

10,977

10,274

10,247

10,247

当年度未処分利益剰余金

10,977

10,274

10,247

12,024

10,221

(注) 平成18年度の当年度未処分利益剰余金と平成19年度の前年度繰越利益剰余金の金額が異なっているのは、平成18年度の剰余金処分による減債積立金の繰入1,777百万円によるものです。

(資料源泉:企業庁作成資料)
表6 臨海用地造成事業会計の過去5年間の貸借対照表 (単位:百万円)

項目

15年度

16年度

17年度

18年度

19年度

資産の部

固定資産

17,060

11,005

10,944

882

828

宅地造成資産

155,203

163,456

151,028

140,522

133,776

うち完成宅地

14,499

60,572

53,388

49,424

46,363

うち未成宅地

140,704

102,884

97,639

91,097

87,413

流動資産

24,252

21,045

26,881

35,908

38,781

資産合計

196,516

195,507

188,854

177,313

173,386

負債の部

固定負債

146,282

151,574

145,598

132,380

127,895

流動負債

7,594

2,025

1,376

1,275

1,859

負債合計

153,877

153,599

146,974

133,655

129,754

資本の部

資本金

30,599

31,608

31,608

31,608

31,608

剰余金

12,040

10,299

10,272

12,049

12,024

うち資本剰余金

54

25

25

25

25

うち利益剰余金

11,986

10,274

10,247

12,024

11,998

資本合計

42,639

41,907

41,880

43,657

43,632

負債資本合計

196,516

195,507

188,854

177,313

173,386

(資料源泉:企業庁作成資料)

平成17年度以降の営業損益は利益となっているものの、臨海用地造成事業も、必ずしも損益状況が良いとはいえない状況にあります。その要因は地価の下落及び長引く不況や製造業を中心とした企業の海外移転に伴う用地需要の落ち込みにより、当初の見込みに比して売却収益が著しく減少したことにあります。

財政状態に関しては、長引く不況による企業の投資意欲の減退を受け、造成を抑制し、宅地の販売促進が進められました。その結果、宅地の処分が進み、他会計貸付金が償還されたこともあり、手許資金が増加しています。

3 平成19年度末の宅地造成資産の内訳

平成19年度の内陸用地造成事業会計に係る宅地造成資産のうち、完成宅地残高は30,677百万円であり、そのうち、7,352百万円(24.0%)が割賦販売による代金未回収相当額に係るもの、6,862百万円(22.4%)が貸付宅地に係るものであり、残りの16,462百万円(53.7%)が、未だ分譲されていない未処分宅地となっています。

未処分宅地はいずれも完成年度から5年以上経過しており、完成年度から10年以上経過したものは額田南部など4地区、全体の40.8%を占めています。完成年度から10年超経過した地区における分譲対象面積に占める未処分宅地の割合は表7のとおりです。豊橋石巻西川では、未処分宅地の割合が約30%、額田南部では実に90%超となっており、完成したもののなかなか分譲に至らない物件を抱えていることが読み取れます。
表7 10年超経過した地区における未処分地の割合(単位:千平方メートル)

地区名

完成年度

販売開始年度

分譲対象面積

未処分宅地面積

未処分宅地 の割合

額田南部

H6

H6

138 

127

91.5%

三好黒笹

H7

H7

165

20

12.5%

刈谷大津崎

H7

H7

97

7

7.8%

豊橋石巻西川

H8

H8

76

22

29.9%

 (資料源泉:企業庁作成資料)

また、平成19年度末の内陸用地造成事業会計に係る未成宅地残高は12,559百万円であり、そのうち、日進東部(2,057百万円)、日進中部(2,507百万円)、設楽清崎(436百万円)及び幡豆(5,471百万円)は土地の先行取得に係るものであり、取得から相当期間が経過しているものの、今後の開発予定は未定となっています。なお、未成宅地には、7,439百万円の含み益があります。

平成19年度の臨海用地造成事業会計の宅地造成資産に関しては、最終完成年度を迎えた地区はありません。平成19年度末の完成宅地の残高(46,363百万円)のうち、2,318百万円(5.0%)は割賦販売による代金未回収相当額によるもの、6,921百万円(14.9%)は貸付宅地に係るものであり、残りの37,123百万円(80.1%)が、未だ活用されていない未処分宅地に係るものとなっています。田原1区は販売開始時期(昭和44年)から40年近くが経過していますが、造成済面積5,722千平方メートルのうち、未処分宅地が639千平方メートル、御津2区は、販売開始時期(昭和57年)から25年ほど経過していますが、造成済面積1,967千平方メートルのうち、未処分宅地が180千平方メートルとなっています。また、平成19年度末の未成宅地残高は87,413百万円であり、未成宅地には、28,645百万円の含み益があります。

4 平成19年度末の完成宅地に係る含み損の発生状況について

平成19年度末の内陸用地造成事業会計に係る完成宅地の含み損の金額は表8のとおりです。
表8 完成宅地の含み損の状況(単位:百万円)

地区名

処分済宅地

貸付宅地

未処分宅地

合計

棚卸

金額

含み損

棚卸

金額

含み損

棚卸

金額

含み損

棚卸

金額

含み損

含み損

割合

額田南部

448

269

-

-

4,637

2,799

5,086

3,069

60.3%

刈谷大津崎

733

99

989

111

546

61

2,269

272

12.0%

日進機織池

991

384

-

-

-

-

991

384

38.7%

豊橋石巻西川

-

-

448

68

734

156

1,183

225

19.0%

春日井明知

1,078

157

-

-

-

-

1,078

157

14.6%

豊田花本

463

60

1,408

384

-

-

1,871

445

23.8%

豊橋若松

874

120

3,112

476

2,141

365

6,128

961

15.7%

田原浦鬼塚

103

7

-

-

-

-

103

7

6.8%

犬山高根洞

1,618

220

-

-

2,889

526

4,508

746

16.6%

6,311

1,318

5,959

1,041

10,950

3,908

23,221

6,269

27.0%

(注) 1 処分済宅地の含み損は、棚卸金額が平地分及び法面分の翌年度以降の収入額を上回る部分であり、土地代金の回収に応じて、損失として認識されます。

   2 貸付宅地及び未処分宅地の含み損は棚卸金額が平地分及び法面分の平成19年度での売却見込額での評価を上回る金額として計算されており、当該土地が売却された段階で損失として認識されます。

(資料源泉:企業庁作成資料)

愛知県企業庁財務規程第117条では、宅地造成資産について、「宅地造成資産として造成を行う用地及び附帯施設については、造成に要した直接費及び間接費を宅地造成資産勘定で投資台帳により整理しなければならない。」とされており、原価主義を採用しています。原価主義は、地方公営企業法施行規則第4条1項に定められている評価方法であり、宅地造成資産については、期末における正味売却価額(いわゆる時価)が取得価額を下回っていても、取得価額で評価されています。しかし、表8をみてわかるように、含み損の割合は、完成宅地の額の25%を超えています。完成宅地を取得原価で評価する場合、完成宅地が売却されるまで、含み損が貸借対照表及び損益計算書に反映されず、実質的には損失が繰り延べられることになります。

【意見】

現在は、平成13年度の包括外部監査の結果を受けて、宅地造成資産には低価基準による含み損を含んでいる旨が貸借対照表の注記として記載されていますが、宅地造成資産は費用性資産であり、将来の収益獲得能力の観点から、時価が取得原価を下回った場合には、売却可能価額で評価し、財務諸表に反映させることが望まれます。

一方、臨海用地造成事業会計では、完成宅地の含み損は注記されていません。

現在、原価計算は地区別に行われていることから、地区毎の平方メートルあたりの完成宅地の単価を、平成19年度の売却単価と比較したところ、衣浦14号地については、表9のとおり売却単価が原価単価を下回っていましたが、臨海地区全体では含み損となっていないことから、「低価基準による含み損」の注記の対象にはしていないとのことでした。

【意見】

内陸用地造成事業との処理の統一性の観点から、実質的な原価算定単位(地区別)に着目し、臨海用地造成事業に関しても、地区ごとに含み損が発生している場合には、「低価基準による含み損」の金額(197百万円)を貸借対照表に反映させることが適切であると考えます。

表9 低価基準による含み損の試算(単位:平方メートル、百万円)

地区名

面積

帳簿金額

時価

含み損

衣浦

14号地

処分済宅地

11,570.02

470

326

143

貸付宅地

4,125.01

167

114

53

15,695.03

637

441

197

(資料源泉:企業庁作成資料)

5 売上原価の計上方法の変更に伴う影響額について

(1)貸借対照表注記「包括外部監査結果に基づく差額(差益)」の記載の経緯と現在の会計処理

企業庁では、平成12年度迄は事業終結精算方式を採用しており、各事業年度には、分譲売上時に予定原価で売上損益を計上し、予定原価と地区別実績原価との原価差額(以下、「売上済売上原価調整差額」という。) は事業終結時まで棚卸資産 (宅地造成資産の未成宅地) に計上して繰り越す会計処理をしていました。このような原価計算方法が採用されてきたのは、企業庁が地区別の採算性よりも工業用地全体での採算性に重点を置いてきたためです。

しかし、企業庁では、平成13年度の包括外部監査の意見を受けて、平成13年度から売上原価の計上方法を変更するとともに、低価基準による含み損の額を注記することとしましたが、平成12年度までに繰延べられていた売上済売上原価調整差額等の含み益の会計処理が問題となりました。

企業庁では、今後の未処分在庫保有地の金利負担等を考慮して、会計方針の変更によって認識された純差益の額を取り崩して利益計上することを見送り、包括外部監査結果に基づく差額(差益)及び低価基準による含み損の額を貸借対照表に注記する方針とし、平成13年度以降の決算書において、差益部分について内陸用地造成事業会計では、「包括外部監査結果に基づく差額(差益)7,439百万円」、臨海用地造成事業会計では、「包括外部監査結果に基づく差額(差益)28,645百万円」と注記しています。

 

(2) 完成宅地資産の含み損と売上済売上原価調整差額の推移

内陸用地造成事業における完成宅地資産に含まれる含み損の金額の推移は表10のとおりです。

表10 完成宅地資産の含み損の金額の推移(内陸用地) (単位:百万円)

 項目

13年度

14年度

15年度

16年度

17年度

18年度

19年度

完成宅地資産(A)

50,294

54,000

63,242

44,098

41,071

33,773

30,677

含み損(B)

5,130

5,894

10,264

8,085

7,516

6,764

6,269

(B/A)

10.2%

10.9%

16.2%

18.3%

18.3%

20.0%

20.4%

売上済売上原価調整差額(C)

△7,439

△7,439

△7,439

△7,439

△7,439

△7,439

△7,439

純差損益(B+C)

△2,309

△1,544

2,824

645

76

△674

△1,170

(注) 1 完成宅地資産の残高は、各年度の貸借対照表に計上されている残高であり、含み損のない宅地に係る残高も含まれます。

2 含み損は、含み益との相殺前の金額です。

(資料源泉:企業庁作成資料)

平成13年度から平成15年度にかけて、工業用地価格の下落に伴い含み損も増加しましたが、平成16年度に多額の含み損を抱えていた伊勢神地区を売却したことにより約22億円の含み損が損失として実現しました。その後は完成宅地資産残高の減少に伴い含み損も金額的には減少傾向にありますが、その後も工業用地価格の下落傾向は止まらず、平成18年度で一旦は下げ止まりの様相を呈したものの、再び不安定な動きをしています。

次に、含み損と売上済売上原価調整差額との純差損益を見ると、平成13年度から平成14年度と平成18年度から平成19年度は純差益ですが、平成15年度から平成17年度は純差損となっています。平成13年度の包括外部監査において、平成12年度末現在の宅地造成資産には、低価基準による評価損控除後の純差益が約5億円含まれており、これが純差益である間は取り崩さず、財務諸表の注記による開示も検討すべき旨の意見がありました。

この意見を受けて、企業庁では、平成12年度末現在保有する宅地造成資産の帳簿残高のうち、未成宅地資産(その他用地)に含まれていた事業中止土砂採取地区の調査費等(約22億円)を特別損失処理し、これを除いた差益7,439百万円を貸借対照表に注記する形式を採用しました。

【意見】

企業庁では平成13年度から毎事業年度同様の注記を継続して実施していますが、含み損と売上済売上原価調整差額との純差損益が差損となった平成15年度から平成17年度においても、売上済売上原価調整差額を取り崩して評価損を計上する処理は行われませんでした。平成18年度以降、含み損益の金額は、再び、含み益に転じてはいますが、本来は、これらの処理は注記として処理する性質のものではなく、棚卸資産の金額に反映させるべきものです。

地方公共団体の財政の健全化に関する法律に基づいた財政指標、公会計制度改革に基づいて作成されることとなった財務書類4表において、資産の適切な評価は欠かすことのできない要素です。平成20年9月19日には地方公営企業法施行規則が改正され、「販売を目的として所有する土地については、事業年度の末日における時価が帳簿価額より低い場合には、時価をもって帳簿価額とすることができる。」とされました。現在は、必須規定とはされていないものの、適切な棚卸資産の評価の観点からは、時価評価が望ましい処理であるといえます。

内陸用地造成事業、臨海用地造成事業ともに、過去における売上済売上原価調整差額は利益として計上したうえで、適切な棚卸資産の評価を行い、評価損については評価損として決算書類に反映させることが適切です。

6 先行取得用地について

(1)先行取得用地の概要

内陸用地造成事業において、「工業用地」造成目的で用地の先行取得を行ったものの、事業計画が中断されている用地の保有地区は、日進東部地区、日進中部地区、設楽清崎地区、幡豆地区の4地区であり、その取得年度、面積及び平成19年度末の帳簿価額は表11のとおりです。これら4物件の帳簿価額は10,472百万円となり、平成19年度末総資産(63,448百万円)の16.5%に及んでいます。
表11  先行取得用地の概要(単位:ha、百万円)

地区名

取得年度

面積

帳簿価額

日進東部

平成2年度

  8.1

2,057

日進中部

平成2年度

 10.1

2,507

設楽清崎

平成6年度

 25.6

436

幡豆

平成10年度

 143.4

5,471

合計

187.4

10,472

(資料源泉:企業庁作成資料)

ア 日進東部地区・日進中部地区

日進東部地区及び日進中部地区の土地の形状、平成19年度末の状況及び今後の見込みは次のとおりです。

(ア) 日進東部地区

この地区は、「日進町の森林に関する基本方針」で「自然緑地帯として保全を図る地域」に指定されており、保安林解除は現時点では極めて困難であると判断されています。日進東部地区では、地区内に市道が建設中であることから、その周辺での開発を検討することとされています。

【意見】

県としては、市道の開通にあわせた開発を計画していますが、現状は、山間部にあるアクセスが不便な飛び地であり、有効利用・売却ともに極めて難しいと思われます。飛び地を交換により集約するなどの具体的な対策が望まれます。

 

(イ) 日進中部地区

先行取得を決定した段階では、日進市(当時は日進町)が林野庁に提出した「日進町の森林に関する基本方針」もあり、保安林解除には時間を要すると予想されていましたが、当該地区及びその地区周辺が「あいち学術研究開発ゾーン構想」に位置付けられており、それらに基づいた開発も想定されていたこと、また、市(当時は町)として、両地区周辺は開発が進んでおり、今後保安林の解除が止むを得ないとの見解をもっていたことから、関係部局との協議が進展するものとの判断を行っていました。しかし、「日進町の森林に関する基本方針」で「必要最小限の開発を除き、極力保存する地域」に指定され、保安林解除は相当厳しいものと判断されることとなりました。このことから、今後については公共施設の誘致等も視野にいれ多目的土地利用を検討していくとされています。

【意見】

県としては、今後、公共施設の誘致も視野に入れ、多目的土地利用を検討するとしていますが、取得後、県としての有効利用が図られていない状況であり、活用に向けての具体的な対応が望まれます。

 

イ 設楽清崎地区

当該地区は、ダム建設のため地元の要望に応えるかたちで取得されたものであり、当初から事業化は難しいとの見方はあったものの、まず、土地を取得した上で、交通アクセスなど工業用地の基盤整備を経て、事業化を検討しようと考えられた物件でした。

県では、地域振興部なども含めて活用方法を検討しています。地域振興部では、水源地域整備計画等の案を作成するにあたり、県庁内部の連絡調整等を図るため、平成16年2月に「設楽ダム水源地域整備計画等庁内連絡会議」を設置しており、不定期ではあるものの、毎年同連絡会議のメンバーと連絡調整を図っています。

しかし、水源地域整備計画案では、本地区の整備は、課題事業として位置づけられているものの、その整備内容は未定となっています。今後、その立地条件を考慮し、森林の利活用も含めた土地利用を検討していくこととしています。

【意見】

本地区は、事業化が難しいと考えられた物件ですが、取得から15年経過し、平成13年度の外部監査から7年が経過した現在も、具体的な計画には至っていません。県の事業との関連で土地取得の必要性が認識され、適切な決裁を経て取得が行われたとはいえ、多額の資金を投入して取得した土地が長期にわたって利用されないままとなっています。売却を含め、具体的な対応を検討すべきであると考えます

 

ウ 幡豆地区

(ア)取得の経緯と経過

幡豆地区は中部国際空港建設に係る埋立用土砂約5千万立方メートルの採取及び、跡地の宅地造成を目的として用地買収を行ったものです。当初の事業期間は平成10年度から平成19年度までとなっていましたが、保安林解除予定告示後の利害関係者意見への対応等が難航したこともあり、土砂採取事業が、空港の埋立てスケジュールに間に合わなくなり、空港会社からの埋立用土砂のキャンセルがありました。当該事業は、造成事業に伴い発生する土砂を埋立てに利用することを前提として採算性が検討されていたため、宅地造成事業も、平成13年1月31日に事業の中止が決定されました。

【意見】

平成14年度に利活用に関する基本構想が策定され、翌年、実現可能性が検討されましたが、法規制、上位計画、企業の用地需要及び事業採算性に問題があり、実現は困難との結論に達しました。当該利活用検討の調査にあたり、直接費と間接費を合わせて57,930千円の費用が認識され、未成宅地勘定に計上されました。利活用に関する調査費は、特定の用地に関連して発生した費用であるとはいえ、利活用は困難であるとの結論に至っており、土地の価値増加にもつながっていないことから、このような追加費用を用地原価に加算することは、含み損の内蔵につながり適切でないため、発生時の期間費用として処理することが適切です。

当面は造成工事を伴わない圃場跡地などの暫定的な利活用、地区の維持管理を行い、本格的な活用については、県全体で取り組む方向となっています。

幡豆地区に関しては、保安林解除予定告示後の対応などが難航したことから、事業中止となり、開発事業が成り立たない土地を抱える結果となりました。日進の土地でも見られたように、環境への配慮から、保安林解除は、ますます難しくなることが予想されます。

【意見】

幡豆地区は規模も大きく、主な関連法規制(都市計画法、森林法、土砂災害防止法)からも数々の課題を抱えており、検討委員会が設置されているとはいえ、具体的な対策には至っていないのが現状です。とはいえ、当該地区が未利用であることによって、50億円を超える資金が拘束されたままとなっていること、また、維持管理費が追加発生していることは事実であり、企業庁の経営に圧迫を与えている状況が続いています。経営の改善のためにも、現状のままでの売却を含めた幅広い検討が必要であると考えます。

【意見】

必要な用地の確保は、事業実施に当たっての重要命題ではありますが、保安林解除予定告示後の対応などの難航により中止となるなど、事業の不確定要素から発生するリスクへの対策を前もって十分にたてておくことが望まれます。このことは、幡豆地区の土地のみでなく、用地取得にとっての重要な課題です。

 

(2)先行取得地区の土地の評価について

未成宅地は取得価額で計上されており、不動産(土地)の鑑定評価が行われていないため、時価を算定し、含み損益の状況を表12で検討しました。

表12  含み損益の概要 (単位:百万円)

地区名 

取得年度

帳簿価額

時価

含み益
(△は損)

騰落率

日進東部

平成2年度

2,057

1,084

△ 972

△47.3%

日進中部

平成2年度

2,507

1,322

△ 1,184

△47.3%

設楽清崎

平成6年度

436

39

△ 396

△90.9%

幡豆

平成10年度

5,471

3,283

△ 2,187

△40.0%

 

10,472

5,730

△ 4,741

△45.3%

(注) 時価は、各地区の用地費に用地を取得した土地の地価公示価格の変動率を乗じて算出しています。なお、設楽清崎地区については、設楽町内に地価ポイントがないため、設楽町の最近の取引事例で算出しています。

(資料源泉:企業庁作成資料)

【意見】

一般に、地価の公示価格は平成3年をピークとして、平成18年までは下落傾向が認められています。棚卸資産は、本来、必要な用地の取得を行い、適正期間内に造成を終えて、売却されるべきものですが、これらの先行取得用地に関しては、当初目的が果たせず、在庫として資金を拘束している間に、上記のような含み損が発生しました。

今回の時価は簡便な方法に基づいており、実際の取引価格とはある程度の乖離が発生すると思われますが、試算の結果では、これらの4物件では最も少ない幡豆で40%、設楽清崎では90%の含み損が認識され、4物件の合計では4,739百万円となります。過去5年間の内陸用地造成事業における経常利益の年平均が257百万円であることからも、この含み損は、相当の影響があると推測されます。現在、未成宅地については、貸借対照表の「低価基準による評価損」の注記の対象とされていませんが、本来は、未成宅地についても、時価を算定の上、低価基準による評価損を計上することが適切です。

7 保有が長期化している未処分宅地の販売方針について

内陸用地造成事業及び臨海用地造成事業の平成19年度末の未処分宅地のうち、平成14年度以前に完成し、販売開始から5年以上経過している地区の未処分宅地の面積及び金額は表13及び表14のとおりです。
表13 内陸用地造成事業の販売開始から5年以上経過している未処分宅地

地区名

販売開始時期

未処分宅地

面積(千平方メートル)

金額(百万円)

額田南部

平成6年度

127

4,637

三好黒笹

平成7年度

20

797

刈谷大津崎

平成7年度

7

546

豊橋石巻西川

平成8年度

22

734

新城南部

平成11年度

232

4,714

豊橋若松

平成10年度

49

2,141

犬山高根洞

平成14年度

64

2,889

 

524

16,462

(注) 面積は、法面を含む分譲対象面積です。  

  (資料源泉:企業庁作成資料)

表14 臨海用地造成事業の販売開始から5年以上経過している未処分宅地

地区名

販売開始時期

未処分宅地

面積(千平方メートル)

金額(百万円)

御津2区

昭和57年度

180

3,084

田原1区(1区)

昭和44年度

639

4,435

田原1区(ふ頭)

 

819

7,520

  (資料源泉:企業庁作成資料)

 

【意見】 

企業庁では、未処分宅地として長期化している地区であっても、道路アクセスが改善されることによって、一気に販売が進む場合もあると考えています。企業が立地を決定するにあたっては、用地価格も重要な判断要素ですが、流通コストも重要であり、流通の利便性は重要性の高い項目であると考えられます。建設部等の関連部署との一層の連携を図り、より効果的に企業誘致を進めることが望まれます。

【意見】

 地区別の販売促進策を、きめ細かく検討することが望まれます。

8 退職給与引当金について

企業庁では経営における負担の程度を勘案し、内陸用地造成事業会計、臨海用地造成事業会計については、平成15年度から平成34年度までの20年間で必要額を手当てできるよう、企業庁全職員の退職給与引当金の計上を行うこととしています。

各年度の退職給与引当金の繰り入れは、退職金の年間予算額から、実際の退職金支払額を差し引いた残額で計上されます。

なお、各年度の退職金の年間予算額は以下の算式により算定しています。

各年度の退職金の年間予算額=((全職員が平成34年度末に退職した場合の退職金-前年度末の退職給与引当金)+平成34年度までに実際に支払う退職手当)÷平成34年度までの残存年数

内陸用地造成事業会計と臨海用地造成事業会計の平成19年度末時点の退職給与引当金の金額(簡便法による退職給付債務の額)及び計上不足額は表15のとおりです。

表15 平成19年度末 退職給与引当金残高と計上不足額

 

平成19年度末

退職給付要支給額(1)

平成19年度末

退職給与引当金残高(2)

計上不足額

(1)-(2)

不足割合

(1)-(2)/(1)

内陸用地造成事業会計

533,417千円

90,924千円

442,493千円

83.0%

臨海用地造成事業会計

1,053,277千円

310,540千円

742,737千円

70.5%

(資料源泉:企業庁作成資料)

【意見】 

企業庁では、退職給与金の平準化のため、過年度分の調整(会計基準変更時差異)と当年度発生費用とをあわせて予算化し、年間予算額から実際の退職金を差し引いた残額を引当金として計上しています。その結果、現在は団塊の世代の大量退職を迎えていることから、人数的には大きな変化がないものの、ここ数年間は、要支給額に対する引当金の割合はあまり増加していません。調整期間として20年を採用していることも、残存勤務年数を考慮したとしてもかなり長いと思われるます。過去の引当不足の償却年数を含め、民間企業の事例を参考に再検討を行い、より健全な引当方針への対応を進めることが望まれます。

第3 監査結果に添えて提出する意見

1 宅地造成資産の評価に関する事項

愛知県企業庁財務規程第117条では、宅地造成資産について、「宅地造成資産として造成を行う用地及び附帯施設については、造成に要した直接費及び間接費を宅地造成資産勘定で投資台帳により整理しなければならない。」とされており、宅地造成資産について低価法は適用されておらず、平成13年度の包括外部監査結果に基づいて、貸借対照表に「宅地造成資産には、低価基準による含み損××円を含む。」旨の注記がされています。

平成20年9月19日には地方公営企業法施行規則が改正され、「販売を目的として所有する土地については、事業年度の末日における時価が帳簿価額より低い場合には、時価をもって帳簿価額とすることができる。」とされました。これは、本来、棚卸資産(宅地造成資産)が費用性資産であることから、将来の収益獲得能力に応じた資産評価を取り入れたものであり、現在は、「できる」規定ではあるものの、規則の改正の趣旨からは、適用が望まれるものと思われます。

企業会計においては、企業会計基準委員会から平成18年7月5日に「棚卸資産の評価に関する会計基準」が公表され、平成20年度からは、通常の販売目的で保有する棚卸資産に関しては、「取得原価をもって貸借対照表価額とし、期末における正味売却価額が取得原価よりも下落している場合には、当該正味売却価額をもって貸借対照表価額とする。」ものとされています。

土地開発公社についても、平成17年1月21日に「土地開発公社経理基準要綱」が改正されており、これによれば、土地造成による土地等の評価方法について、次のとおり定められています。

(土地造成事業にかかる土地等の評価方法)

第25条 特定土地、特定造成事業に係る土地または代替地(法第17条第1項第1号に係る代替地のうち、前条第1項の取得原価相当による再取得等が見込まれるものを除く。)については、その時価が取得原価より著しく下落したときは、近い将来明らかに回復する見込みがあると認められる場合を除き、時価をもって貸借対照表価額としなければならない。

2 前項において、時価が取得原価に比べておおむね50%以上下落している場合には、著しく下落しているものとする。

3 前2項の時価は、売却時価を基礎とした正味実現可能価額とし、次に掲げるところにより算定した価額とする。

現に販売の用に供することができる土地については、その販売見込額から販売経費等見込額を控除した価額

未だ販売の用に供することができない土地については、その完成後販売見込額から造成及び建設工事原価の今後発生見込額並びに販売経費等見込額を控除した価額。

4 第1項の規定により、時価をもって貸借対照表価額とした場合は、その旨及び当該評価換えを行った年月日、当該評価換え前の帳簿価額並びに評価損に係る会計処理の方法を貸借対照表に注記しなければならない。

ただし、改正に関して、直ちに実施に移すことが困難な場合は、当分の間、従来の方法によることも差し支えないものとする。とされています。

愛知県企業庁の場合、過去の開発において蓄積されてきた含み益の取り扱いとの関連から、平成13年度の包括外部監査の意見を受けて、現在は、注記方式を採用していますが、その後、7年近くが経過し、造成物件の内容も変化しています。また、平成13年度の包括外部監査では、過去の売上済売上原価調整差額と含み損とを合算した含み益がプラスであることを前提として、注記方式も考えられるのではないか、との意見でしたが、実際には、平成15年には、売上済売上原価調整差額と含み損との合算した金額が含み損に転じたにもかかわらず、評価損の計上は行われず、注記方式による対応が平成19年度まで続いています。

この数年で、地方公共団体を取り巻く環境も大きく変化し、地方公共団体財政健全化法に基づいた財政指標、公会計制度改革に基づいて作成されることとなった財務書類4表においても、資産の適切な評価は欠かすことができない要素です。とりわけ、棚卸資産の資産に占める割合が高い宅地造成事業においては、棚卸資産を正しく評価することは、極めて重要な事項であると思われます。地価変動の状況、原価計算制度変更前からの造成物件の完成の状況を検討のうえ、売上済売上原価調整差額を利益として認識したうえで、本来あるべき評価基準及び評価方法に基づいて棚卸資産を評価し、評価損については評価損として決算書類に反映することが適切です。

なお、現在は、未成宅地については鑑定評価を行っていないことから、完成宅地のみが含み損の把握の対象となっていますが、先行取得された幡豆の物件をはじめとして、未成宅地についても多額の評価損を抱えています。適切な資産評価の観点からは、本来、未成宅地に関しても、時価相当額を把握し、評価に反映させることが適切です。

2 先行取得用地への対応について

企業庁では、平成19年度末現在で、日進東部、日進中部、設楽清崎及び幡豆の4地区で先行取得用地を保有しています。

先行取得用地のうち、日進東部地区及び日進中部地区は企業庁の判断において取得したものの開発されていない土地、設楽清崎地区は県の施策で、企業庁への取得要請に基づいて取得したものの利活用方法を検討している土地、幡豆地区は中部国際空港建設で必要となる土砂採取と跡地における工業団地開発を目的として取得したものの土砂採取事業が中止となり、利活用方法を検討している土地です。 

これらの土地に関しては、平成13年度の包括外部監査において、既に未利用土地として認識され、利活用のための検討の必要性についての意見がありましたが、その後も、状況に変化はありません。

先行取得用地の平成19年度末の帳簿価額及び時価は表1のとおりです。

表1 先行取得用地の帳簿価額及び時価(単位:百万円)

 地区名

取得年度

帳簿価額

時価

含み益
(△は損)

騰落率

日進東部

平成2年度

2,057

1,084

△ 972

△47.3%

日進中部

平成2年度

2,507

1,322

△ 1,184

△47.3%

設楽清崎

平成6年度

436

39

△ 396

△90.9%

幡豆

平成10年度

5,471

3,283

△ 2,187

△40.0%

 

10,472

5,730

△ 4,741

△45.3%

 (注) 時価は、各地区の用地費に用地を取得した土地の地価公示価格の変動率を 乗じて算出しています。なお、設楽清崎地区については、設楽町内に地価ポイントがないため、設楽町の最近の取引事例で算出しています。

(資料源泉:企業庁作成資料)

 

表1のとおり、先行取得用地は、いずれも相当額の含み損を抱えています。愛知県内陸用地造成事業会計の平成19年度末における負債資本合計は63,448百万円、有利子負債(企業債)の残高は18,610百万円であることから、負債資本合計に占める有利子負債の割合は29.3%、平成19年度末の企業債残高にかかる平均利率は1.27%です。先行取得用地の取得資金のうち、この割合で有利子負債による資金調達が行われていたとすると、平成19年度において、この先行取得用地にかかる支払利息の額は、39百万円となります。この他、前述の通り、設楽清崎に関しては0.4百万円、幡豆に関しては3.7百万円の維持管理費用も発生していることから、概算ではありますが、これらの土地の保有のために年間で40百万円を超えるコストを負担していることとなり、このことからも、未利用土地が経営に与えている影響は相当のものであることがわかります。資金回収されれば、負債の返済や資産運用に充てられるにもかかわらず、未利用地として長期にわたって保有せざるをえないことは、経営にとっても大きな問題であり、この点からも、これらの未利用土地の利活用について、売却を含めた幅広い議論を進めることが望まれます。

3 地方公共団体による土地造成の方向性について

平成18年度の地方公営企業年鑑では、宅地造成の概要及び沿革は次のように記載されています。

宅地造成事業とは、臨海土地造成事業、内陸工業用地等造成事業、流通業務団地造成事業、都市開発事業(土地区画整理事業、市街地再開発事業)及び住宅用地造成事業の各事業の総称したものをいいます。

宅地造成事業は、地域の計画的開発と既成都市の再開発を目的とする事業であり、昭和34年度の地方債計画における港湾整備事業債(臨海部の工業団地造成事業に係るもの)及び宅地造成事業債(現在の土地区画整理事業)を起源としています。その後、我が国の社会経済情勢の急速な進展に伴う地域開発事業に対する要請の高まりに対応し、昭和38年度に港湾整備事業のうち臨海部の工業団地造成事業、内陸部の工業団地造成事業(工業団地及び流通業務団地の造成事業)及び住宅用地造成事業(土地区画整理事業及び住宅用地の造成事業)を総称した地域開発事業債が創設され、以降、昭和47年度に市街地再開発事業を追加、昭和50年度に、それまでの住宅用地造成事業を細分化し、土地区画整理事業及び住宅用地造成事業として、現在の事業が行われています。

地域によっては需要の低迷等により計画どおりに造成地等の処分が進まないなどの影響が見受けられることから、今後の課題として、「1宅地造成事業については、社会経済情勢の変化等に対応して、適時適切な計画の見直し等を行うこと、2事業の実施に当たっては、抜本的な造成地等の利用計画、処分方法の見直しを行うとともに、区画の細分化や分割払い方式の導入等により土地売却を促進する措置を引き続き講ずること、3新規の事業計画の策定に当たっては、必要性、造成地の需要等の動向、採算性を十分に検討の上、慎重に対処すること」が挙げられています。

平成18年度の都道府県が経営主体となる宅地造成事業の事業数は、臨海が43都道府県、その他が33都道府県でした。指定都市・市町村・事務組合を含む合計では、平成16年度は622事業、平成17年度は537事業、平成18年度は521事業であり、減少傾向が認められます。

地方公営企業年鑑でも取り上げられているとおり、近年では、長引く不況による投資の抑制、産業構造の変化による民間企業の海外への移転、環境配慮の観点からの開発に対する規制強化など、宅地造成・分譲のための環境は必ずしも良いとは言えません。

物件の開発の観点からは、大規模な造成を効果的に行えるようなまとまった土地は少なくなってきています。また、バブル崩壊後、下落傾向を示していた地価も下げ止まったかに思われましたが、平成20年には再び不安定な様相を呈しており、開発上、リスクが増すことが懸念されます。

このような状況の下、宅地造成について、方向転換を進めている事例も見受けられます。たとえば、千葉県では、平成18年3月に「企業庁新経営戦略プラン」を策定しており、土地造成整備事業に関しては、独立採算を堅持しながら、平成24年度に事業を円滑に収束させるものとしており、主に次の取組を行うものとしています。

(1)保有土地の処分の促進

分譲促進のための柔軟な取組や分譲を保留している土地の見直しなどにより、収入を確保します。

(2)土地貸付の見直し

無償又は減額貸付の見直しにより、収入を確保します。

(3)公共施設等の早期引継ぎ

市町村等との協議を推進し、早期に引き継ぎます。

(4)課題・懸案等への対応

各種課題や懸案について、取組を強化し、早期解決を目指します。

 

愛知県は、企業庁を活用した宅地造成を継続することを想定しています。

地方公営企業は、地方公営企業法で定められている経費負担の原則により、一般会計が負担すべき経費を除いて、収益でその経費のすべてを賄う必要があります。したがって、将来にわたって、独立採算性の原則に基づいた企業運営をできることが重要です。

県の宅地造成は、雇用の確保や企業の誘致を通じて、県の財政への貢献をもたらします。従って、造成資産が適切な期間内に販売されなければ、県の財政への貢献は果たせず、投下資金も拘束されたままとなってしまいます。

バブル崩壊後、地価は低迷しており、従前から保有していた土地に関しては、含み損を抱えているのが現実であり、今後も、大幅な販売価格の上昇は見込めないものと推測されます。従って、在庫の投下資金回収の観点からも、企業ニーズに応じた宅地の提供がより重要となります。そのためには、アクセス道路の整備など、他の部局との連携を図りながら、開発した用地をより魅力あるものとし、販売に努めることが望まれます。

また、現在行われている、豊田・岡崎地区研究開発施設用地造成事業のような、オーダーメイド方式の受注を拡大できれば、企業庁のリスク低減の観点からも有効です。オーダーメイド方式の場合、対象企業が見えていることから、進出企業の希望に沿った開発を効率的に実現できると共に、企業庁としては、開発物件の滞留のリスクを負うことなく、事業を推進することができると考えられます。

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