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藻場再生技術

ページID:0434087 掲載日:2023年1月10日更新 印刷ページ表示

藻場再生

伊勢・三河湾の湾口に広がる沿岸岩礁域には、大型多年生コンブ目褐藻のサガラメとカジメから成る藻場が形成されています。これらはアワビ類の餌となり、魚介類の成育・産卵場を提供する以外にも、水中の有機物を分解し、栄養塩類や炭酸ガスを吸収し、酸素を供給するなど海水の浄化にも大きな役割を果たしています。特に、サガラメは、静岡県駿河湾西岸の御前崎周辺から四国徳島県沿岸の太平洋岸に分布し、漁業対象種としても重要で、知多半島先端では江戸時代から漁獲されていました。

 

愛知県沿岸岩礁域のサガラメ1 愛知県沿岸岩礁域のサガラメ2
​愛知県沿岸岩礁域のサガラメ

 

しかし、平成11年以降の高水温継続による生理障害とアイゴ・メジナなど魚類の食害により群落が大幅に減少した後、回復には至っていません(※1、2、3)

 


愛知県沿岸におけるサガラメの凋落 
愛知県沿岸におけるサガラメの凋落

 

そこで、水産試験場では藻場再生技術の開発に取り組んできました。平成22~24年には、農林水産技術会議の競争的資金を利用し、効率的に増殖させた配偶体または幼胞子体を、環境負荷の少ない素材を使って、既存の基盤に移植する低コストの藻場再生手法を、三重大学大学院、サカイオーベックス(株)、TBR(株)、及び(株)シャトー海洋調査との共同研究(※4)により開発しました。そこでは、

 

1 サガラメ配偶体の成熟を制御する物質を明らかにし(※5)、大量培養装置を開発して培養効率を4倍向上させました。

2 包帯や組紐(※6、7)がサガラメの移植基質に利用できることを把握し、ノリ養殖用鋼管に移植する試験を知多郡南知多町中洲 地先にて行いました。

3 サガラメ母藻からの遊走子拡散範囲を求め、1平方メートル当たり1個体のサガラメ群落を1ha再生するために800個体の母藻が必要であることを把握しました。

 

包帯や組紐を用いて移植した配偶体及び幼胞子体から生長したサガラメ
​包帯や組紐を用いて移植した配偶体及び幼胞子体から生長したサガラメ(2012年11月9日設置)

前年設置の生育状況2012年06月13日
​前年設置の生育状況(2012年6月13日撮影)

 

その結果、平成30年に実施した調査で、試験実施海域近辺だけではありますが、サガラメ藻場が大きく広がる様子を確認できています。(※8)
大きく広がるサガラメ藻場1 大きく広がるサガラメ藻場2
試験実地海域近辺のサガラメ藻場(2017年12月23日撮影)

 

 

 

参考文献

※1 伏屋 満・植村宗彦(1999)(2)有用藻類増殖試験サガラメ藻場実態調査.平成10年度愛知県水産試験場業務報告、58.

※2 蒲原 聡・伏屋 満・原田靖子・服部克也(2007):1997年から2005年までの愛知県岩礁域におけるサガラメEisenia arborea群落の様相.愛知水試研報、13、13-18.

※3 阿知波英明・落合真哉・芝 修一(2014):愛知県沿岸におけるサガラメ・カジメ分布面積の変動と衰退要因.愛知水試研報、19、38-43.

※4 農林水産省農林水産技術会議の「平成22~24年度新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業(課題名:既存着底基質への海藻種苗の移植による効率的な藻場再生技術の実証試験)」

※5 倉島 彰・山本清春(2012):ジベレリンとステビオサイドによるコンブ目3種配偶体の成熟と生長の制御.藻類、60(1)、9-14.

※6 伏屋 満・阿知波英明・落合真哉(2013):伸縮包帯とネット包帯を用いたサガラメとカジメのノリ養殖用鋼管柵への移植.愛知水試研報、18、33-34.

※7 阿知波英明・伏屋 満・青山 勧・山下 修(2013):組紐及び包帯を移植基質として用いた褐藻サガラメの生長.愛知水試研報、18、35-36.

※8 平井 玲・阿知波英明・二ノ方圭介(2020)アラメ藻場再生緊急技術開発試験.平成30年度愛知県水産試験場業務報告、16.

 

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