安城市榎前町自主防災会(えのきまえちょうじしゅぼうさいかい)

安城市榎前町自主防災会は、町内の子供会、老人クラブ、消防団、ボランティア団体、その他各種協力団体と一体となって様々な取組を行っています。また、防災以外のイベントについても、防災の要素を取り入れるなど、独自の工夫も見られます。
そんな榎前町自主防災会会長の加藤さんにお話を伺いました。


松本さん、斉藤さん、坂田さん
 (写真:自主防災会会加藤さん)

―榎前町自主防災会の体制について教えてください。

町内会長が自主防災会の会長です。役員は、民生委員、老人クラブ、子供会、ボランティア団体など各種協力団体から選出された人が就きますので、イベントでは、役員から各種協力団体に協力を依頼することができます。

また、榎前町の活動は「OB会」という組織と、ボランティア団体である「ボランティアふれあい「えのき」」の存在なくしては語ることができません。

OB会は、任期が2年間である町内会役員のOBを公民館協力員と位置付け、それを組織化したものです。

ボランティアふれあい「えのき」は、平成11年度に結成されたボランティア団体で、榎前町で防災に限らず色々な地域活動をしています。

町内会の活動にOB会、ボランティアふれあい「えのき」が協力することによって、これまでは2年ごとに途切れていた活動につながりができることになりました。

―OB会やボランティアふれあい「えのき」は防災に関してはどのような役割を担っていますか?

OB会は、町内会の役員業務からは開放され、負担が軽減しますが、公民館協力員として、各種行事で町内会をサポートする組織です。榎前町で行う防災訓練では、例えば防災資材を軽トラックで運搬して、テントを組み立て、本部を設営するなど2年間の町内会役員で培った知識や経験を活かした推進役的な存在です。

ボランティアふれあい「えのき」は、主に防災のイベントの企画を受け持つことが多いです。先ほどの防災訓練を例に出すと、訓練会場で、防災クイズコーナーを実施したり、空き缶を使用したコンロ作り(※)と炊き出しを実施したりしています。

(※)空き缶コンロ:カットして高さ調整した空き缶に食用油を入れ、ティッシュペーパーを芯とすることで、簡易コンロとして使用することができます。
 (写真:空き缶コンロ作りの風景)

―榎前町で行っている防災の取組について何がありますか?

毎年行っている取組として、中学生防災学習会と町内の防災訓練があります。

―中学生防災学習会とはどういったものですか?

榎前町は、町内に大きな工場などの働き場がないですし、専業で農業をやっている人も多くありません。ということは、平日昼間は人が極端に少なくなります。逆に残っている人は、災害時に支援が必要な人たちである確立も高い。そのような状況では、地元にある中学校の生徒にも力を借りなければいけないと思います。そこで、中学1年生を対象に、防災力を高めるための各種カリキュラムを毎年8月に実施しています。

内容は、その年ごとにボランティアふれあい「えのき」といっしょになって企画していまして、例えば、応急手当法や救命救急のしかたを学んだり、榎前町の地図を使用した災害図上訓練、いわゆるDIG(※)を実施したりしています。

(※)災害図上訓練 DIG(ディグ):地震などの大災害を想定し、地図に交通網の状況、防災施設、被災予測等を書き込み、参加者全員で災害時の状況をイメージしながら、対応策を検討するという訓練手法です。地図を使用するため、災害の状況を視覚的にイメージできること、参加者全員が主体的に対応策等を検討できること等が利点と言えます。

 (写真:中学生防災学習会。AEDを使用した救命救急講習)

また、防災学習会に参加した中学生は、その年の12月に実施する榎前町の防災訓練に参加する流れになっています。

―その防災訓練ですが、特徴的なやり方をしていると聞きましたが?

「発災対応型防災訓練」を実施しています。これは、簡単に言うと事前準備なしで行う訓練です。

まず避難訓練。訓練参加者である町内の住民には、訓練の詳細は知らせず、実際に災害が発生したという仮定で、とるべき対応を自分で考えてもらいます。

具体的には、住民には事前には「サイレンを合図に、各班で決められた場所に集合して、安否確認の後、避難場所へ避難してください。」ということだけを連絡しておきます。ちなみに、各班は近所同士およそ12〜15世帯で構成されています。

訓練が開始されると、各班の班長が中心となって班内各世帯へ電話等で安否確認をします。最近の訓練では、特に各世帯の災害時要援護者の状況についてケアするようにしています。

安否確認後、班ごとに避難場所へ集合するわけですが、その時には、避難場所までの経路の被災状況を調査し、決められた様式に状況を記入するようにします。そうすることで、避難場所の現地本部には地域の情報が集まってくる仕組みです。

また、倒壊家屋、火災現場、負傷者などを事前に仕込んでありまして、それらの状況に出くわした住民は、どうすべきかその場で判断をしなければなりません。例えば倒壊家屋に下敷きになっている人を見つければ、避難場所の現地本部に応援を要請する、といった具合ですね。


 (写真:発災対応型防災訓練で、負傷者を搬送している様子。)

―避難訓練における自主防災会の役割は?

避難場所の現地本部の設営及び運営を行います。これらについても、「発災対応型」で実施していまして、本部に必要なテントなどの資材は事前に準備せず、訓練開始後に町内の防災倉庫から、OB会が個人持ちの軽トラックで運び出して設営を行っています。ですから当然バタバタして、段取りが悪いですが、災害時はこれ以上にうまくいかないわけで、実態に即した訓練になっていると思います。

―避難者が集合してからはどのような訓練をしているのですか?

炊出し訓練や、消防団の協力による消火訓練、救出・救護訓練、その他ボランティアふれあい「えのき」と中学生による防災啓発活動などを行います。ここでも事前準備なしの「発災対応型」の考え方を取り入れいて、炊出し訓練では食材を用意せず、近所の一般の民家から調達していますし、救出・救護訓練についても、避難訓練時に住民が避難経路で見つけた負傷者をガレキの下から救出しに行くということをやっています。

―徹底していますね。こういった難しい訓練ができるのも町内の住民の皆さんに防災がすでに浸透しているからでしょうね。
このように地域防災を活発化させるにはどういった事が大事なんだと思いますか?

やっぱり楽しんでやるという事じゃないでしょうか。自主防災会の役員も、仮に2年が任期なら、どうせやるなら楽しんでやるべきだと思います。一方で、防災を体験する一般の住民の人たちも楽しんでもらえるように工夫する必要があると思います。そのひとつの方法として、防災以外のイベントに防災を取り入れてみるのも良いのではないでしょうか。

榎前町では、町内行事として子供会や老人クラブと協力して「三世代グラウンドゴルフ大会」というのをやっているんですが、このイベントが午前・午後をまたがるものでしたので、昼ごはん用に、非常食の炊き出しをやってみました。この時はハイゼックスと呼ばれる災害時に活用されることの多い炊飯袋を使って本格的にやったのですが、その後、子供会主催のキャンプでもハイゼックスを使用して炊飯をしたみたいです。こうやって「楽しみ」を入れると、防災も浸透しやすいんでしょう。

(平成20年8月19日 安城市榎前町内会事務所)

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