半田市岩滑区自主防災会(はんだしやなべくじしゅぼうさいかい)

半田市岩滑区は、平成23年1月26日(水)に第15回防災まちづくり大賞の一般部門で「災害時要援護者の支援から平時のつながりへ−高齢社会に向けた優しいまちづくり」として平成22年度の総務大臣賞を受賞されました。その受賞の報告に平成23年2月10日(木)、岩滑区区長の後藤さんと自主防災会防災・安全部会長の森さんが愛知県防災局長を訪問されました。

愛知県防災局ご訪問の際に、半田市岩滑区自主防災会について伺いました。


 (左から中野防災局長・後藤区長・森会長・熊田防災危機管理課長)

昭和40年4月1日に岩滑区防災会を発足し、平成16年に自主防災会を再編して、発足されたと伺っていますが、そのいきさつを教えてください。

それまでの自主防災会は、自治区の役員や町内会長、組長が自動的に自主防災会の役員になり、年1回、総合防災訓練をやっていて、特別なことがなければそれで終わりというものでした。当時から岩滑区はコミュニティ活動が活発で、住民の横のつながりもありましたが、たまたま平成15年に当時の半田市の防災監から新しいスタイルの防災会に再編したいので、一度、岩滑区がモデルとしてやりませんかという提案がありました。その提案を受け、1年間にわたる準備委員会をやっていく中で、防災会の役員を兼務では、実際の時には忙しすぎてなかなか機能しないので、自主防災会は独立した組織でやろうということになり、岩滑区全住民参加の独立した組織として設立することにしました。

会長だけは、区長が兼任で、他の副会長や専門のスタッフは、自治区の役員ではなく、日赤奉仕団等各種団体からの推薦や、自治区の役員OBで地域の事情を良く分っている人たちを中心に人選を進めました。

自主防災会の組織については、もともと岩滑区はコミュニティの歴史の中で、主としてスポーツ行事が多く、運動会やソフトボール大会等ブロック対抗で7つの区域割ができていましたので、その組織を活用して7つのブロック防災会とし、平成16年に正式に現在の自主防災会が発足しました。

                    

今回の防災まちづくり大賞の受賞では、災害時要援護者の対策を中心に取り組んだことが評価されています。はじめに、災害時の安否の確認体制について教えてください。

岩滑区では、いざ有事の場合、まず隣組で災害時要援護者の対応をすることにしています。「隣組=近助(きんじょ)。向こう三軒両隣で助け合い、近くで助ける。」この言葉をある人から聞いて、面白い言葉だと思いました。隣組は7軒、8軒で一つの組織がありますので、この人たちが全員情報を共有し合うことで、隣組長だけに任せるのではなくて、いざという場合には、7軒、8軒の人たちが全員協力し合うことで、安否確認ができると考えています。

岩滑区では災害時要援護者のいるお宅の確認のために町内住民簿兼防災会台帳があるそうですが、それはどのようなものですか。

岩滑区には、もともと区独自で住民票を区民に書いてもらい、それを区が1部だけ持っていて、敬老会の対象になる人を調べる等に利用していました。平成16年に自主防災会ができた時に、区の住民票とは別に防災会台帳を作りました。その内容は各世帯で、自主防災会の組織の中にある情報班、消火班、救出・救護班等の各班の中のどれか一つに協力してもらうよう希望を書くようになっています。それと同時に、外国語が話せるとか、重機を持っているといった特殊な技能等があれば書いてもらうようになっています。

災害時要援護者については、支援希望を記入する欄があり、そこへ「○」を付けてもらうことで把握しています。区の住民票と自主防災会の防災会台帳について、4、5年前に区の住民も家族構成、生年月日等、同じものを2回書くのは大変なので、一緒にしようということで、町内住民簿兼防災会台帳になりました。

岩滑区では助けを必要とされる災害時要援護者が約150人、その人たちを助ける側の人が約300人いるそうですが、例えば、ある人を助けようとする場合、誰が助けると人となるのか決まっているのですか。

町内住民簿兼防災会台帳を整理する中で、例えばAさんという要援護者がいる場合、そこへBさん、Cさんの2人を助けに行く人として決めています。原則として助けに行く2人を依頼に行くのは、区から直接依頼するのではなく、各ブロックの防災会の役員にお願いしています。各ブロックの役員は、自分たちのブロックで助けて欲しいと手を挙げている人について、近所の方に助ける側の2人をお願いしています。助けに行く人は隣組長の場合もあれば、要援護者の隣の人等さまざまです。どうしても助けに行く人がいない場合には、町内会長にお願いする等して対応しています。

災害時要援護者に対する一つの試みとして家具固定を行う転防隊を作ったそうですが、どのような目的ですか。

家具の転倒防止が目的ではなくても、誰が要援護者の登録をしているか知る必要があるので、助けに行く人との日頃の交流を深めるために、一度おじゃまして、対面してみようというのが発端になりました。やはり、お互いに知り合わないといざというときに、あなたはどこの誰という話になってしまい、非常に他人行儀になってしまうこともありえます。

                    

家具固定の転防隊の活動内容は、どのようなものですか。

6年前に愛知県建設部の防災まちづくりマネジメントシステムのモデル地区になったときに、家具固定をするための工具や電動ドリルを3組とL字金具等を購入しました。その3組を自主防災会が管理して、いつでも自由に貸し出すようにしました。自分で家具固定ができる人はそれでもいいのですが、高齢者の多くの方は家具固定ができない人がほとんどです。そういう人に対して、半田市へ申告してもらうと半田市が自治区へ来て、自治区はボランティアコーディネーターの方たちが区長と一緒に訪問して家具固定してくれるシステムがありますが、それとは別に区のブロックの役員が、高齢者や障害者の顔を見ながら、自分たちもよかったら家具固定できるよという活動をしようかということで始めました。

しかし、家具固定のための道具や金具があっても、素人ばかりでやり方がわかりませんでした。そこで「家具転倒防止講習会」を開催し、地元の建築士や大工に指導してもらいました。最初は、建築士や大工もブロックの役員と一緒に行って、実際に家具固定のやり方を指導しながら行いました。そうした経験を重ねることで自信がつき、現在では岩滑区で家具固定のできる人が50〜60人います。


 (家具転倒防止講習会の様子)

自主防災会の日常の活動について教えてください。

7つのブロックごとに情報班、消火班、避難誘導班、救出・救護班、給食・給水班があります。この各班にはそれぞれ班員が20〜30人います。自主防災会の活動に協力しますと手を挙げてくれた方々に対して最低1回又は2回、訓練や研修をすることが、自主防災会の日常活動としてあります。訓練や研修は各ブロックでもやってもらいますが、ブロックの中には、そこまでなかなか手が回らないところもあります。そこで、年1回全部のブロックの班員を集めて合同の班員研修を毎年行っています。例えば、救出・救護班の合同研修を行う等、そのときには市にいろいろとご協力をお願いしています。また、給食・給水班の研修では、水やご飯の炊き出しに限らず、もっと広く、防災的な知識や全体的な内容で研修をやってもらおうと考えています。

うれしいのは、一つの班の合同研修を行うと、班員の半分にあたる100人ぐらいが参加していただけます。5つ班がありますから、全体では約500名の方々が毎年研修を受けていることになります。「昨年は参加できなかったが、今年は初めて参加した。」等、防災に前向きな人たちに参加していただいています。毎年新しい企画で研修を行う際は、専門委員の方々を中心に行われ、それが現在は比較的うまく機能していますので、今後も研修内容を充実した内容で行っていきたいと考えています。それが岩滑区の住民に対してのモチベーションを維持することにつながっていると思っています。


(救出・救護班員研修会)      (消火班員研修会)

岩滑区合同防災訓練について教えてください。

平成22年度は11月14日(日)に実施し、600名以上の区民に参加していただきました。

訓練内容も前年と同一の内容もありますが、何か違ったものを行うということで、昨年は煙道体験を行いました。

今年度は、消防団員と住民による共同消火訓練において、訓練当日に消防団から何も手伝いませんから、自主防災会の会長である区長が号令をかけて全部やって欲しいと言われて、どうしようか戸惑いました。しかし、こういうこともいつか必要になると思い、自主防災会の会長と役員で協力してホースを20本、400メートルぐらいつないで、的に向かって放水しました。何とか自分たちだけで行うことができて、やはりこういう訓練も必要だと実感しました。

また、全世帯の住民の安否確認の訓練も行いました。災害が起きたという想定で、午前8時30分から各隣組長が自分の担当する隣組世帯を回って異常がないかどうか、そこの世帯には何人いるか、あるいは留守で連絡がつかなかったとか、防災安否確認シートを隣組長が自分のところの町内会長に渡して、町内会長がブロック長に出して、それをいかに早く集計できるかという訓練を行っています。毎年、隣組長は変わりますので、初めての経験になります。しかし、都合で訓練当日隣組長が不在のため安否確認ができない場合もあります。その時は、代わりの人が安否確認を行うように、例えば前年の隣組長とか、緊急の場合は町内会長が代役で行うとか、そういうこともやらなければいけないこともよく分かります。安否確認訓練の後、近くの指定避難場所へ集合し、そこから行列をなして、訓練の最終指定避難場所となっている岩滑小学校まで、避難・誘導係の先導で移動しました。安否確認も毎年行っていると、いろいろな問題点が出て、修正していかなければいけないことが何となくわかってきます。

その他、消火班ブロック対抗消防操法大会も行っています。ホースをつないで、蛇口を開けて、放水を行って的を倒すまで、どれだけ時間がかかるかを競います。その際に、消防団員が審査員として時間を計り、どこがいいのか悪いのか、そういう講評をもらったりして今後の励みになっています。


(安否確認の様子)      (消火班ブロック対抗操法大会)

今後の課題・抱負等ありましたら最後にお願いします。

課題としては、自主防災会の役員には長くやってもらいたいと思っています。岩滑区では1年だけですぐに交代するのではなく、区長を3年やった後、次の3年は防災関係の運営委員長をやってもらって移行していきます。やはり、長く従事してもらう必要性を理解してもらわないと、自主防災組織はうまく維持できないと考えています。また、これは希望でもありますが、我々も自主防災会活動だけをやっているわけではありません。当然、会長はいろいろな業務があります。ですから防災に関するきめ細かな情報等を、県や市からもらわないと、どうしてもマンネリに陥ってしまう可能性があります。今までいろいろな支援の制度や、こういうことにチャレンジしてみてはとか、いろいろと情報をもらいましたので、それが活動の励みになる部分もありました。

岩滑区では、市から何か提案があった場合に、まず断ることはありません。そのようなことは岩滑区では受けられませんとか、区会でそのような話は出来ませんということはありません。むしろ、市からの提案を受けることで自分たちの勉強になると前向きに考えています。非常に勉強熱心な方が多く、「自分たちのためになるからやろう。」という声が、まずあがってきます。

また、他県からも岩滑区を視察に来てくれます。受け入れのために準備も必要ですが、「やりましょうよ。」という話は出ても、断る話は出てきません。視察に来てもらった方に、岩滑区の状況を話すと、視察相手がどういう現状にあるかもわかり、お互いの勉強にもなりますので、視察についてはあまねく受けようと考えています。

                    

今後も岩滑区の安心・安全のために皆さんと連携して取り組んでいきます。

                    

(平成23年2月10日 愛知県防災局))

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