愛知県衛生研究所

輸入食品の放射能

1986年4月26日に、旧ソ連邦ウクライナ共和国キエフの北約100kmにあるチェルノブイリ原子力発電所4号炉において炉心溶融に至るまでの史上最大の事故が発生しました.旧ソ連政府は、原発周辺30km以内の住民には避難命令を出し、5月末には急性放射線障害による死者が23人になったと発表しました。

果たして、8000 kmも離れた日本にもチェルノブイリ原発事故によって放出された放射性物質が飛来しました.地上での原発事故であったため、揮発性の高い核種についての検出度が高く、特に注目されたのは、セシウム-137、セシウム-134、ヨウ素-131等でした.5月の初めに降った雨水や同月の大気浮遊じんの放射能濃度は、全国的に異常値が見られましたが、その後,日本における環境影響は、1年を経過した後には殆ど見られなくなりました。

しかし、食品について、その影響は長く尾を引くことになりました.国内産の食品については、事故直後は、牧草(牛乳)やお茶、葉菜等へのそれら放射性物質の沈着がとり沙汰されました.半減期が8日と短いヨウ素-131が環境中から消えて行くと同時に日本における深刻な食品汚染問題はなくなりましたが、輸入食品については大きな問題を抱え込むことになりました.セシウム−137の半減期は30年、セシウム−134の半減期は2.1年です.いずれにせよ、現地を中心にヨーロッパにおける放射性セシウムの土壌汚染は重大で、土壌成分に吸着しやすいために通常では移動しにくく、その物理学的半減期のみでしか減少しないからです。

食料の自給率の低い日本では、その35%を輸入食品に依存しており、そのうちの5%をヨーロッパから輸入しています。そこで、厚生省では1986年10月31日付けの通知で輸入食品中の放射能濃度の暫定限度をセシウム−134とセシウム−137の合計量で370Bq/kg以下としました。

厚生省は、1986年11月より各検疫所におけるヨーロッパからの輸入食品の放射能検査を開始し、現在も対象品目を絞って検査を継続しています。

愛知県衛生研究所では生活衛生課の依頼を受けて、1988年度より検査を開始し、現在も継続して実施しています.これまでには暫定限度を超えて検出されたものはありませんが、パスタやハーブ類、木の実のジャム類から検出限界を超えて検出された事例があります。

NaI(Tl)食品放射能測定器

NaI(Tl)食品放射能測定器

セシウム−134やセシウム−137はガンマー線を放出しますので、収去した輸入食品約500gから1kgを測定容器に均一に詰めて、ヨウ化ナトリウムの検出器をもつ測定器にて20000秒から80000秒かけて計測し、セシウム−134とセシウム−137の合計の放射能濃度を求めます。

いろいろな輸入食品

いろいろな輸入食品

こうして見ると、私たちはヨーロッパからの様々な食品を食べています。パスタ各種、ジャム類、果汁、ミネラルウォ−ター、チーズ&その他の乳製品、クッキー、ハーブ類・・・・

これまでの輸入食品の放射能検査結果