日本顎口虫(がっこうちゅう)症
外来種のブラックバス(オオクチバス)の刺し身を食べた秋田市内の女性(60)が、寄生虫病の一種「日本顎口虫(がっこうちゅう)症」を発症していたことが4日までに分かった。ブラックバスによる寄生虫発症の確認は国内初。

確認した秋田大医学部寄生虫学教室によると、女性が食べたのは、昨年5月に秋田市郊外の農業用貯水池で釣られたブラックバス。3週間ほどして腹部に幅2、3mmの数本のミミズばれができ、最長で約40cmほどになった。駆虫剤を飲ませ、症状は約2カ月後に治まったという。
女性が自宅で冷凍保存していた残りの魚肉を検査したところ、寄生虫の幼虫を確認した。その後、同じ池で釣った9匹のうち、6匹からも寄生虫が見つかった。
日本顎口虫は皮膚の下などを移動し、引っ掻いたような皮膚の炎症を起こす。重症化するケースはないというが、同教室は「絶対に生で食べないで」と、注意を呼びかけている。
在来魚などを食べるブラックバス問題は各地に広がっている。秋田県水産振興センターの杉山秀樹・内水面利用部長は「釣って、食べ、駆除しようという運動が全国で進んでいる。今後の駆除活動にどう影響するかが心配だ」と話している。
こんな記事がインターネット上で発信されていましたが...
(日本)顎口虫症(Gnathostomiasis)とは一体どんな病気?
日本顎口虫は、有棘顎口虫、剛棘顎口虫、ドロレス顎口虫などの顎口虫の仲間で、日本全国、特に中部地方から南の地方に多く分布しているとされています。これらの顎口虫は一般にイヌやネコそれにブタやイタチの胃や食道の壁に寄生しますが、中間宿主としてライギョ、フナ、コイ、ドジョウ、ナマズ、ヘビなどに寄生しています。成虫は赤みを帯びた太く短い寄生虫で長さ1〜5cmほどです。
第二次世界大戦前後には、ライギョの生食による被害がけっこうあったそうです。また、1980年代以降には、輸入されたドジョウの「踊り食い」で剛棘顎口虫に罹った例が、これまでに約100件報告されています。最近10年間でも、国内産のドジョウや淡水魚が原因となった例として、日本顎口虫症が10件、ドロレス顎口虫症は20件ほどが報告されています。
顎口虫の一生(生活環)
先ず宿主から排泄された虫卵は、ケンミジンコなどの第1中間宿主に食べられ、次ぎにライギョやドジョウなどの第2中間宿主の魚に食べられることによって魚への寄生が成立します。そして約1月も経つと、長さ3〜4mmの幼虫になり、やがて皮膜に包まれた直径1mm程度の皮嚢幼虫に成長します。魚の筋肉……つまりは、刺し身などで食べるところ……内に寄生します。従って、ヒトへの寄生はこれらの幼虫が生存している魚の(筋)肉を食べることによって発生します。魚の種類としては特に、ライギョ、フナの生食が原因の場合が多いようですが、以前には輸入ドジョウの生食による多発例や、ヘビの生食による症例も報告されています。
ヒトの体の中に入った幼虫は、胃の壁を食い破って肝臓に達し、その後は体内を自由に動き回ってしまいます。そして、身体の表面に近い部位に移動することにより皮膚に顎口虫症特有の移動性限局性腫脹の皮膚病変が出現します。

症状

多くの例では痒み程度ですが時として非常な痛みを伴う皮膚爬行症(ひふはこうしょう)、あるいは皮膚顎口虫症などと呼ばれる(一般に体内移行症ともいう)病態が出現します。また、体内を自由に動きまわれることから、幼虫の侵入部位によっては重篤な症状を呈し、目の中に入り込んでしまい失明した事例、咽頭浮腫により(喉の中に入り込み喉が腫れてしまい)呼吸困難に陥った事例、頭蓋腔(頭の中)に入り込む脳障害を来した例なども報告されています。
治療としては、虫体を外科的に摘出することが1番の方法とされていますが、なかなか難しいようです。薬物としては、アルベンダゾールやイベルメクチンなどが使われています。
予防法
淡水魚などの生食を避けること。特に、これらの顎口虫が広く、高密度に現在も分布している東南アジア諸国では、たとえ高級ホテルで出されたものでもライギョなどの刺し身はかなりの危険が伴いますので、淡水魚の刺し身は避けた方が賢明でしょう。また、お酢で調理しただけではこれらの虫は死にませんので、くれぐれも御注意下さい。
「ゲテモノ食い(過剰なグルメ志向?)」は、少なからず危険が伴うことがあります。十分注意されることが賢者の生き方ではないでしょうか。