愛知県衛生研究所

キノコの話題

2004/11/8

スギヒラタケの写真

最近、スギヒラタケを食べた、腎疾患の中高年者の中から急性脳症を発症する患者さんがみられたことから、10 月22 日には厚生労働省による注意喚起が発表されています。10 月27 日までに新潟、山形、秋田、岐阜県などで合わせて40 人(うち死者12 人)の発症が報告されています。スギヒラタケは、夏から秋にかけて北陸、中部、東北地方を中心に自生する食用キノコで、これまでに毒性は報告されていません。スギヒラタケと急性脳症の因果関係は、現在、国立医薬品食品衛生研究所などで調査中ですが、厚生労働省は、安全性が確認されるまではスギヒラタケの摂取を控えるように勧告しています。

日本は「キノコの国」

さて、日本にキノコは何種類くらいあるでしょうか。現在、種名の付けられたものがおよそ1500種あるといわれていますが、実際にはこの2〜3倍の種類はあると見られています。図鑑に載っていない“名無し”の種類もまだまだ多いということです。日本は温帯モンスーンといわれる温暖湿潤な気候に恵まれた国で、植物の種類がたいへん豊富な地域です。日本には樹木だけでも1000種を超える種類があるといわれ、同時に、日本はキノコの種類も豊富な地域といえます。キノコがたくさん発生することと樹木の種類の豊富なこととは無関係ではありません。そうです、日本は「キノコの国」なのです。

キノコは以前、植物の仲間であるといわれてきましたが、現在では、動物や植物とはまったく別の「菌類」に分類されています。その本体は菌糸といわれる、糸くずのかたまりのようなもので、そのほとんどが土の中や朽ち木に隠れています。通常見えているのは、子実体とよばれる部分で、それを私たちはキノコと呼んでいるのです。

キノコを食べると

ツキヨタケの写真
ツキヨタケ[写真提供:(社)農林水産技術情報協会]

古くから、「色の派手なキノコは毒がある」、「柄が縦にきれいに裂けないのは毒がある」、「虫の食べた跡のあるキノコには毒がない」、あるいは、「どんな毒キノコでも塩漬けして毒抜きすれば食べられる」などといわれていますが、これらはすべて非科学的な迷信です。食用のキノコが選別できるには、それなりの経験が必要となります。

ドクツルタケの写真
ドクツルタケ[写真提供:(社)農林水産技術情報協会]

しかし、日本に産する1500種類を超えるキノコのうち少量食べただけで死ぬような強い毒を持つキノコはごく限られています。注意が必要な種類は中毒例の多いツキヨタケやドクツルタケをはじめ50種程度ともいわれています。無毒の種類のほうが多数派なのです。それでも野外で採集したキノコを食用にする場合は十分な安全策をとりましょう。
食用かどうか自信のないときは絶対口にしないでください。どうしてもキノコを食べたい方は、まず、毒キノコを覚えましょう。多くのキノコ入門書には主な毒キノコの特徴が記されています。

キノコの効用

キノコ類の主要成分は水分、たんぱく質、繊維質、無機質、ビタミン類です。シイタケに代表される食用キノコはビタミンと食物繊維が豊富な低カロリー健康食品といえます。

効用その1…ビタミンの効果

シイタケを例にとると、疲労回復に役立つビタミンB群や、カルシウムの吸収を促進するビタミンDが多く含まれています。シイタケにはエルゴステロールという物質が含まれており、紫外線を当てるとビタミンDに変化します。このため干しシイタケには生シイタケの約9倍のビタミンDが含まれていて、調理前に1−2時間太陽の光をあてることにより、さらにビタミンDの量が増加します。カルシウムは日本人に不足している栄養素で、骨の成長に必要なばかりでなく、不足すると骨が弱くなり、骨粗しょう症の原因にもなります。丈夫な骨を作るためには、カルシウムの多い食品とビタミンDの多い食品を一緒にとり、適度な運動をして骨を刺激するようにしましょう。

効用その2…食物繊維の効果

成人が1日に22g程度必要とされる食物繊維です。食物繊維は腸内細菌を整え、コレステロールの排出をうながし、便秘を予防する他、大腸がんを予防する働きもあります。キノコには食物繊維が多く、100g中の食物繊維の量は、レタスが1.4g、ニンジンが2.4g、ゴボウが8.5gなのに対して生シイタケは4.1g、干しシイタケはなんと42.5gも含まれています。

効用その3…微量成分の効果

シメジ、エノキタケ、シイタケ、マイタケ、アガリクスなどの食用キノコにはβ−グルカンという多糖類が含まれていて、それがナチュラルキラー細胞(NK細胞)やTリンパ球といった重要な免疫細胞の活性を高めることが知られています。こうした性質を利用して、キノコの成分から制がん剤が作られています。また、シイタケにはエリタデニンという物質が含まれ、コレステロール値を下げ、血栓を防ぐ働きがあるとされています。

みなさんも山野を歩く時には、一度キノコの世界をのぞいてはいかがでしょうか。

キノコに関する一般情報
奈良県のキノコ