委員会情報
委員会審査状況
経済労働委員会
( 委 員 会 )
日 時 令和6年10月2日(水) 午後1時~
会 場 第7委員会室
出 席 者
林 文夫、山口 健 正副委員長
神戸洋美、須崎かん、石井芳樹、近藤裕人、政木りか、丹羽洋章、
谷口知美、天野正基、鳴海やすひろ、大久保真一、喚田孝博 各委員
経済産業局長、経済産業推進監、経済産業局技監、産業部長、
中小企業部長、革新事業創造部長、
労働局長、就業推進監、技能五輪・アビリンピック推進監、
観光コンベンション局長、観光推進監、
労働委員会事務局長、同次長兼審査調整課長、関係各課長等
<付託案件等>
○ 議 案
第128号 令和6年度愛知県一般会計補正予算(第3号)
第1条(歳入歳出予算の補正)の内
歳 出
第5款 経済労働費
第133号 中小企業者等向け融資の損失補償に係る回収納付金を受け取る権利の放棄に関する条例の一部改正について
第179号 令和6年度愛知県一般会計補正予算(第4号)
第1条(歳入歳出予算の補正)の内
歳 出
(結 果)
全員一致をもって原案を可決すべきものと決した議案
第128号、第133号及び第179号
○ 請 願
第 34 号 「業務上コロナワクチンを接種し、健康被害を受けた労働者に労災認定の可能性がある事の周知を求める」について
(結 果)
賛成者なしをもって不採択とすべきものと決した請願
第34号
<会議の概要>
1 開 会
2 議案審査(3件)
(1)理事者の説明
(2)質 疑
(3)休 憩(午後1時47分)
(4)再 開(午後1時57分)
(5)質 疑
(6)採 決
3 請願審査(1件)
4 一般質問
5 休 憩(午後3時04分)
6 再 開(午後3時14分)
7 閉 会
(主な質疑)
《議案関係》
【委員】
予算に関する説明書15ページの東海研究開発1号ファンド(仮称)に対する出資について伺う。
我が国のスタートアップ・エコシステムは、人材事業、資金などの面でまだまだ課題があり、現在、好循環が生まれているとはいえない状況である。
そのスタートアップ・エコシステムの中で資金供給面であるが、スタートアップへの投資額を諸外国、特にアメリカと我が国を比較すると、まだ大きな差があると言われている。スタートアップに投資するベンチャーキャピタル(VC)についても、諸外国と比較してファンドサイズもディールサイズもまだまだ小さいと言われている。また、国内スタートアップに対して海外投資家からの投資も限定的であると言われており、これは2年前の段階であるが、グローバルトップVCの視点が日本にはまだ存在しておらず、国内スタートアップへのリスクマネーの供給を増やすためにも、海外VCの呼び込みも含めて海外投資家からの投資をもっと増やすべきではないかというような議論、意見もある。
さらに、日本におけるVCのシード期やプレシード期への投資は限定的であって、新しい技術の実用化や商用化といった面からも、プレシード、シード期への投資を増やす必要性があるとも言われていた。
スタートアップの急激な成長を支えていくために、リスクマネーの供給を拡大する必要があると言われ続けてきたが、現実的には十分な状態には程遠いと言われている。
その中で、今回、ファンドへの出資によって大学発の研究シーズの社会実装やディープテックスタートアップの成長を促進するとして、5億円の予算が計上されている。
そこで、幾つかの点について伺うが、日本のVCは首都圏を中心にほかにも実績のあるファンドがある中、今回、このファンドを新規に立ち上げて、運用実績のない株式会社セントラルジャパンイノベーションキャピタル(仮称)が運用するこのファンドに県が出資するが、その理由は何か伺う。
細かいことだが、このファンドは誰が運用するのか。運用に関する人物、ファンドマネジャーは今まで実績があるのか。簡単に言えば、目利きができるのか。親会社、元の会社が大学発スタートアップ、大学の開発機構で、大学発スタートアップに手前味噌な出資、投資になりはしないのかを危惧する。その辺りもどのようになっているのかを含めて伺う。
【理事者】
県が出資する理由であるが、我々愛知県としては資金調達に対する支援は、スタートアップの成長を支援する上でアクセラレーションプログラムとかコミュニティーの形成などと並んで非常に重要である。
愛知県のスタートアップへの投資環境について説明すると、スタートアップの資金調達動向に関する資料であるジャパン・スタートアップ・ファイナンス2023というものがあり、この調査レポートによると、2023年の国内のスタートアップへの投資金額は7,536億円である。このうち、愛知県のスタートアップへの投資額は92億円で全体の1.2パーセントである。一方、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、いわゆる1都3県、こちらのスタートアップへの投資額は6,365億円、約84.5パーセントであり、こういったものを見ると愛知県のスタートアップへの投資環境は決して恵まれた状態ではない。
こうした中で、東海国立大学機構が孫会社を通じてこの秋に新たにファンドを設立して、東海地域に大きなインパクトを与え得るスタートアップへの投資を行うことになったので、県としてもスタートアップの資金調達環境を充実させて、大学発研究シーズの社会実装やディープテックスタートアップの成長を促進することを目的として先導的に出資することにした。
また、このファンドには名古屋市も県と同様に5億円の出資を行う予定である。こうした愛知県と名古屋市とで自治体が出資することにより、一定のファンドサイズを確保することで、地元企業や金融機関から出資を呼び込み、当地域の強みであるディープテックスタートアップへの投資の増加につなげてスタートアップの成長支援を加速させていきたい。
続いて、ファンドマネジャーがどういう人たちなのかであるが、こういう人々については、今現在ではファンド側が詳細を公表していない状況であり、個人が特定できるような情報については答えることができないが、複数のスタートアップの設立や、自身が主導したプログラムにおいて時価総額100億円のスタートアップを創出した経験を有する代表者に加えて、自身でスタートアップを創業したり、ベンチャーキャピタルにおける投資業務に従事したり、大手投資会社においてアナリストを務めた経験を有するなど、様々な経歴や知見を有するメンバー4人、合わせて5人を中核として運用するものである。
少しそれぞれについて簡単に経歴を紹介すると、代表者は複数のスタートアップの設立に参画した経験を有している。さらに、この人が主導したプログラムにおいて10社を超えるスタートアップが創出され、中には時価総額100億円を超えるようなスタートアップも生まれている。
ほかのメンバー、1人目であるが、アメリカの戦略コンサルティングファームで経営コンサルティングに従事した経験や、ヘルスケア専門のベンチャーキャピタルにおいて投資業務に従事している。
2人目は、米国グローバルIT大手のベンチャーキャピタルで投資業務に従事し、日本、欧州、アメリカで研究機関においてスタートアップを創業している。
3人目は、アメリカの投資会社においてアナリストとして1,000社以上の企業の投資分析に従事し、IT企業においてM&Aやベンチャー投資、コーポレートベンチャーキャピタルの設立に従事している。
4人目、最後であるが、アメリカ大手の戦略投資部門の日本代表として技術ベンチャー投資やM&Aを担当し、半導体分野やモビリティ分野を中心としたディープテックスタートアップの設立、経営に参画している。
最後に、名古屋大学、岐阜大学が主体になることで手前味噌にならないかだが、名古屋大学は、トンガリというこの地域のスタートアップの起業を支援する取組をしているが、今回のファンドについては、トンガリに参加している大学も含めて様々な大学の研究シーズから事業開発に向けた投資をやっていくので、必ずしも名古屋大学や岐阜大学に限った投資が行われるものではないと承知している。
【委員】
今の答弁では、スタートアップ・エコシステムを形成していく中で、資金供給面の部分が脆弱である。国内のスタートアップへの投資金額約7,500億円の内、首都圏に6,365億円の約84.5パーセントが集中しており、県内に対しては92億円の1.2パーセントであるならば、今までの運用実績がないVCに5億円出資するのではなく、別のVCに見てもらい、もっと積極的に出資してもらうような働きかけをすることも可能であるし、引き続きそういったことをやるのではないか。
ファンドマネジャーは一定の実績がある人が来て、会社をつくって、その人々が運用するが、ほかにもあまたとはいわないが、幾つかあるVCの中で、新会社にあえて県が5億円を出資することがいま一つよく分からない。今の答弁だといま一つ伝わってこない。
トンガリにはスタートアップの関係で、私も5年ぐらい前に行ったことがある。いろいろなものを事業化しようとしていることはそのときも勉強したが、どうしてもそこだけに特化した出資になっていく、投資になっていくだろうと思わざるを得ない。そこにあえて県が5億も出資して50億のファンドを組んで投資していくところの意味合い、理由、その辺りをもう少し教えてもらいたい。
【理事者】
様々なファンドがある中で、なぜ新設のファンドに投資するのかであるが、今回の東海研究開発1号ファンドについては、東海地方をまさにめがけて投資することで、この地域で大きなインパクトを与え得るスタートアップへの投資を行うことを、目的として明確に掲げている。
我々としても、先ほど説明したとおり、愛知県のスタートアップへの投資環境が決して恵まれている状況ではない中で、この地域のスタートアップに投資すると名言しているファンドに出資することで、まさにスタートアップの成長につながっていくのではないかと考えている。
なお、他地域のファンドは、そもそも首都圏に集中していることもあり、見ているところも、そういったところになるので、ぜひこの新設のファンドに投資して頑張ってもらいたい。
【委員】
東海地方のスタートアップに投資していくことを明言しているから、まずここに県として5億を出資することは分かる。何度も言うが、こだわらずに海外のVCを引っ張ってきたってよいわけである。そうしたところからお金を引っ張ってくることだって考え得ることだから、言葉はよいのか悪いのか、呼び水的にまずはやることで理解するが、それに限らず資金面での支援をいろいろと考えてもらいたい。
もう一つ伺う。スタートアップ支援の中でも資金面の支援で出資するが、今回5億円という金額になる。この5億円という金額は、株式投資よりもハイリスクであると言われている、スタートアップ企業への、それも今回はシード期、アーリー期も含めてファンドを通じて投資していく。
そもそも愛知県の公金の運用について株式投資は行っていない、基本的に債券や預金などのローリスクの運用先で運用していると財政課から聴いている。その中で、スタートアップ支援という切り口でいえば、確かに資金の支援だろうが、5億円をハイリスクのスタートアップを投資先にするファンドで運用するという言い方もできる。
そこで伺うが、この5億円という金額を含めて、このファンドに県が出資することの妥当性をどのように考えているのか。
【理事者】
今回の出資については、スタートアップへの資金調達環境の充実のほか、ほかからの出資を呼び込む呼び水効果も狙っている。そういった呼び水もあるが、このファンドは民間も含めて幅広く出資者を募ることにしており、今回の50億円ファンドの規模では、その1割の5億円を出資することにした。
参考にほかの地域で、ファンドに対して自治体が出資している最近の例を見ると、幅があり8パーセントから33パーセントまであるが、十数パーセント、1割強が中央値となっている。個別の自治体名まではいえないが、幾つか紹介すると、一つは3年ほど前に設立されたもので、ファンド規模250億円に対して20億円の出資、これは8パーセントである。大きいものでいうと、ファンド規模300億円に対して100億円の出資、これは33.3パーセントである。ほかには、ファンド規模が152億円に対して20億円の出資、これは13.2パーセントになっている。
【委員】
基本的な企業生存率、創業して例えば5年たったときにどれだけの企業が残っているかというのは82パーセントぐらいだったと思うので、約2割の企業は創業後5年ぐらいすると市場から退場していく状況の中にあるわけである。
このスタートアップはハイリスクであると言われており、さらに言うと、今回はシード期、アーリー期、どうなるかよく分からないところにもお金を出していき、損失補塡や元本保証もされてない中で県のお金を5億入れていく。最悪幾ばくかの損失も覚悟の上で、それでもスタートアップ支援の名の下で出資していくことを理解できないわけではないが、県のお金を入れていく以上、そういったリスクとかも鑑みてやっていかなければならないと思っている。資金調達面を充実させていくのに、ほかにも手法、手段はまだある。
こうしたハイリスクなファンドに今回出資するが、今後スタートアップ支援の名の下で際限なく幾らでもお金を入れ込んでいく、予算化していくことは考えづらいが、どのような考え方でこういったファンドへの出資等々の可否を判断していくのか。
【理事者】
今後のファンドの出資については、愛知のスタートアップの成長につながるのかどうかをはじめ、運営者の陣容、どういう人たちが運営するのか、ファンドの規模、県の出資額も含めたところを総合的に勘案して個別に判断していく。
愛知県のスタートアップの成長につながるのか否かについては、例えばどの地域のスタートアップを中心に投資していくつもりなのか、どのような分野に投資を考えているのか、または投資実行後の投資先への支援はどうかを中心に見て決めていく。
【委員】
最終的には個別判断をその都度していくと理解したが、ハイリスクであるのは間違いないわけであり、必ずしもリターンが返ってくる保証があるわけではないお金であるから、際限なくスタートアップ支援だからと予算計上し、執行していくことは、慎重になってもらいたい面もある。
【委員】
東海研究開発1号ファンドについて、愛知県の立場を確認したい。
例えばスタートアップの支援拠点のSTATION Aiのメンバー企業を対象に投資するSTATION Aiセントラルジャパン1号ファンドについては、これは愛知県が主体的に関わっていると思うが、今回のファンドについては全く外部の団体への出資となることで、今回のファンドにおける愛知県の立場がどうなるのか、具体的にどのような立場なのか、VCでもない中で、愛知県の立場はどういうものなのか説明してほしい。
【理事者】
今回、愛知県が出資する東海研究開発1号ファンド(仮称)は、投資事業有限責任組合契約に関する法律に基づいて設立するものであり、正式な名称は東海研究開発1号投資事業有限責任組合という。
投資事業有限責任組合契約に関する法律の、投資事業有限責任組合とは、無限責任組合員と有限責任組合員から成る組合をいうと規定されており、二つの立場の組合員により組成するものである。
一つ目の無限責任組合員、これは一般的にGP、ジェネラル・パートナーと呼ばれており、ファンドの運営者を指す。もう一つの有限責任組合員はLP、リミテッド・パートナーと呼ばれており、ファンドへの出資者を指す。今回の東海研究開発1号ファンド(仮称)における愛知県の立場は、先ほどのLP、有限責任組合員になる。
【委員】
そのLPについてもう少し説明してほしい。
【理事者】
投資事業有限責任組合契約に関する法律では、組合の業務は、無限責任組合員が決定し、これを執行すると規定している。一方でLP、有限責任組合員の責任は、出資額を限度として組合の債務を弁済することと、ファンド側からの報告を受けて組合運営全体に対するチェックを行うというものがある。
県はLP、有限責任組合員として、ファンド側が目的に応じた投資案件の選定をしているか、投資先へのサポートをしっかり行っているか、そういったファンドの活動をしっかりとチェックし、必要に応じて意見を言っていく立場になる。
【委員】
チェックしていく立場は分かった。それ以前に、例えば県民への説明責任や出資に伴う県の利益をどのように考えているのか確認する。
【理事者】
説明責任では、ファンドの運営の実態については公表する部分と公表されない部分があるが、公表が可能な情報については積極的に発信するように求めていき、県としてもファンドが行う情報発信に対し積極的に協力して説明責任を果たしていきたい。
もう一つの県の利益、メリットでは、今回、このファンドに出資する目的は、愛知県のスタートアップが成長することがその最大の目的であり、同時に県にとっても最大の利益である。さらに、こういうスタートアップの世界では、成功した起業家自身が事業を立ち上げた地域の後輩起業家に対してサポートする文化がある。この地域から育った起業家が次の世代のスタートアップを育てていくことで、この地域のスタートアップ・エコシステムの一翼を担ってくれると期待している。
ファンドでいうと、投資したスタートアップが成長することでファンドに対してリターンがあれば、応分の配分が県にもある。
【委員】
私も今のファンド出資について伺う。メリットをスタートアップが成長することによる地域の活性化と捉えたが、5億円を出資するので、有限責任の立場ではあるが、どれだけで何パーセントか戻ってくるといった契約はあると思うがどうか。
【理事者】
必ず何パーセント返ってくるものではない。数字は公表されていないのでいえないが、ファンドの規模を超えるような収入があれば返ってくることはある。
【委員】
期間はどうか。
【理事者】
このファンドの存続期間は10年である。
【委員】
スタートアップが成長してしっかりとした収益を出して地域に根差すのに、10年ぐらいで果たして成果が出るものかどうか。あるいは出るとすれば、相当早くから出ると思う。
5億円でスタートアップがたくさん発展すれば愛知県のメリットになることは分かるが、5億円を出資するのに、先ほどから答弁を聞いていると、細かいことは言えない、公表できない、そのような話ばかりである。
呼び水という表現を先ほど委員がしたが、呼び水ではもちろんあるし、スタートアップを私も大変応援したいと思っているが、以前からスタートアップ自体の拠点を、ここ愛知県に絶対設けなければならないわけではない話はしている。もう少ししっかりとした形で説明してもらわないと、本当に心配する人々への対応が難しい。
もう一つ伺うが、先ほど委員の質問に対する答弁で、ほかの自治体の実績として、250億円のファンドに対して20億円を出資した、そういう話があった。これも自治体名を明かさないが、これはほかの自治体の議会で諮っているのか。
【理事者】
当然諮っていると思う。
【委員】
議会で諮り議事録が残っているような話を何で隠すのか。何かを隠しているようにしか思えない。
【理事者】
ファンドそのものは、どの企業がどのぐらい出しているかについて、基本的には公表していない。それぞれの自治体においては、このファンドに対してこれぐらい出すと諮っていると思う。
【委員】
議会で諮っているなら、その議会は議事録を残しているのではないか。
【理事者】
残していると思う。
【委員】
都道府県名を教えてもらうことで、我々はそこをチェックできる。少なくとも、そういったことを安心材料として提示してもらわないと、何でも隠していることになり、我々も不安が募る。
委員長、これは提案だが、後々、委員にその内容を教えてもらうようにお願いしてほしい。
【委員長】
只今の委員の発言について、理事者は本件を答弁するよう求める。
【理事者】
質問のあった他の自治体の事例について答える。
最近立ち上げたファンドが四つあるので、それについて答える。
そのうち三つは東京都で、あと一つが兵庫・神戸である。大きい順に言うと、東京都が2024年の10月に設立したものがファンド規模300億円、東京都が100億、率にして33パーセント。それから、これも東京都が2021年の12月に設立した250億円規模のファンドがあり、東京都が20億円、率にして8パーセント。それから、最後、これも東京都が2024年3月に152億円規模のファンドを立ち上げて、東京都が20億円、率にして13パーセント。加えて兵庫県と神戸市が関与したファンドがあり、ファンド規模が11億円、兵庫県が2億円、神戸市が1億円といった形で他の事例がある。
補足だが、このベンチャーキャピタルの仕組みは、何パーセントを担保する、そういう形のものではないことをまず伝える。そういう意味において、委員が指摘したハイリスク・ハイリターンといった仕組みである。
ただ、その仕組みの中でポートフォリオというが、複数のスタートアップに投資することで、多くはもしかしたら駄目になるかもしれないが、少数でも成功すれば、スタートアップは急激な成長をするので、そこでリターンが発生する。我々はVCの制度もよく承知しており、ハイリスク・ハイリターンであることは重々承知しながら、今回については、先月、STATION Aiと名古屋大学が連携協定、基本合意書を締結したことからも分かるように、STATION Aiのオープンを機に東海国立大学機構がこのファンドを立ち上げた。そういう経緯もあるので、スタートアップを成長させていく、この勢いをさらに推進するために、今回5億円を出資すると、そういった考えで今回提案している。
《請願関係》
なし
《一般質問》
【委員】
アントレプレナーシップ教育事業について伺う。
昨日、STATION Aiの内覧会へ参加した。多くの起業家がその可能性を開花させて、県内産業のイノベーションを創出していくことを期待している。
そのイノベーションを創出していく部分で一つの観点として、柔軟な発想と行動力のある人材が非常に求められる部分において、愛知県や教育委員会としても来年度から明和高校、津島高校、半田高校、刈谷高校、それぞれで中高一貫校を立ち上げる。その目的としては、チャレンジメーカーという言葉を使っていたが、社会的な課題を解決する人材を育成するというところで、アントレプレナーシップ教育に対して中高6年間時間をしっかり使って、人材を育てていくと認識しているわけだが、そういう部分で起業家を目指す若年層の裾野を広げていくことは、長期的に見て非常に意味のあることだと思う。
経済産業局としても2022年から、あいちスタートアップスクールを実施していると認識をしているが、あいちスタートアップスクールは、小、中、高、高専向けの起業家精神育成プログラムで、若年層の段階から起業家精神を育むことを目的とするものであり、今年度も8月に開催、実施したと承知している。このあいちスタートアップスクールの今年度の実施状況を伺う。
【理事者】
あいちスタートアップスクールは、小学生、中学生、高専生・高等専修学生を含む高校生向けのプログラムであり、それぞれ内容が異なっている。
まず、小学生向けのプログラムは、3時間で完結する2種類のプログラムを実施している。一つは、様々な切り口から自分の心が動いた事柄を書き出して、それを組み合わせて誰も見たことがない自由研究のテーマを見つけていくものである。もう一つは、卵を落としても割れないプロテクターの開発を、チームを組んで行うものである。これについては、県内の4会場、大府市、日進市、岡崎市、豊川市で開催して、合計215人が参加している。事後のアンケートによると、今まで起業という言葉や考え方を知らなかったが、起業に興味が湧いたとか、起業は大変なことだと思っていたけど、やりたいことがやれることが分かったとか、チームのみんなと協力してプロテクターを作るのが楽しかったことで、起業やほかの人と協調して取り組むことに対して、ポジティブな印象に変化した子供が多かった。
次に、中学生向けのプログラムは、こちらは2日間の日程で、身の回りの不、不便とか不満とか不安とかの不をテーマにチームで解決したい課題を設定して、解決するアイデアを検討してまとめて発表するものである。これも小学生向けのプログラムと同様に、県内4か所で開催して30人が参加した。アンケートによると、起業は自分の今後の人生の選択肢の中にあると回答した子供がおよそ半数に上っている。
最後に高校生向けのプログラム、こちらは3日間で行う基礎編と4日間の応用編があり、基礎編ではチームを組んで疑似的に株式会社を立ち上げて実際にビジネスをつくる体験をするもので、3会場、日進市、岡崎市、豊川市で開催して合計14人が参加して、先ほどと同じで、起業は自分の今後の人生の選択肢の中にあると回答した生徒が半数を超えている。
応用編については12月に開催する予定だが、内容は自分が実現したい事業アイデアをメンタリングによりブラッシュアップして、実現性の高いプランに仕上げてプレゼンを行うものである。こちらは11月30日まで参加者を募集している。このプログラムについては、より多くの子供たちに参加してもらいたいと思っているので、県内全ての小学校・中学校・高校に児童・生徒全員分のチラシを配布するなどして周知を図っている。
【委員】
県内の4会場や3会場でバランスを取って開催し、若年層に目を向けた、こうした裾野を広げる取組は非常に重要である。
何しろ続けていかないと、なかなか身にならないし、2022年から始め続けていく中で課題等も出てくる。そうした部分で新しいことに取り組んでいく必要も出てくるかと思うが、こうした実施状況を踏まえて新たに取り組んでいることがあれば教えてほしい。
【理事者】
我々は起業家教育を行っているが、起業家教育は、起業家や経営者だけに必要な教育ではなくて、他者と協調しながら新しい価値を創造するなど、これからの時代を生きていくためには必要なものである。
そこで、多様なキャリアの選択肢を知ることによって、どのような職業に就いても必要となるチャレンジ精神や創造性といった、いわゆるアントレプレナーシップの重要性を理解してもらうことで様々なフィールドで活躍できる人材を育成したい。
そういった目的において、今年度から新たに県内の高校を対象として総合的な学習の時間帯で起業家教育の授業、例えば起業や事業創出に携わった人の体験を聞く高校生出張授業を実施している。今年度から始めたものだが、公立、私立高校15校から申込みがあり、準備が整った学校から順次実施しており、これまでに4校で開催して合計323人が参加している。この授業を通じて、起業への興味の有無にかかわらず、アントレプレナーシップの重要性を理解してもらいたい。
【委員】
また、大学生ともなると、より現実的に起業を考えている人も出てくる。昨日の内覧会でも、起業家育成を目的とした学生のプログラム、STATION Ai Program for Students(STAPS)があり、こちらも2023年からスタートをして、事業の開発やアイデアの検討、メンターとのミーティングなどを通じてスタートアップのノウハウを学ぶ機会を提供しているプログラムだと承知している。
まず、そのSTAPSの今年度の実施状況と、このプログラムを通して実際に起業した人がどれぐらいいるか伺う。
【理事者】
「起業を当たり前の選択肢に」をテーマに掲げて、主に起業を志す大学生をターゲットにしている。学生が参加しやすいよう、夏と春の年2期に分けて開催している。
内容としては、学生がチームを組んで参加して、1か月半の短期間の中でメンタリングを受けながら事業開発や仮説検証に取り組み、その成果をピッチコンテストの場で発表するものである。
今年度夏のSTAPSでは、県内・県外から27チーム62人が参加した。優秀者にはPRE-STATION Aiの入居権を付与しており、今回参加した中では県外から参加した高校生が受賞することもあって、起業家の誘引や創出につながっている。
参加者からは、起業を決断するきっかけになった、共同創業するメンバーが見つかった、顧客へのヒアリングや課題解決の基礎を学ぶことで顧客ファーストの事業創出の大切さに気づくことができたとの前向きな反応があった。
これまでに、2023年度の夏と春、そして今年の夏と3回開催しているが、この中から8人がPRE-STATION Aiのメンバーとなり、そのうち6人が起業している。
【委員】
STAPSから、プログラムに参加した人から6人が起業したとの答弁であった。そういった形が見える、成果が見える事業で、今後もより充実したプログラムを行ってもらいたい。また、あいちスタートアップスクールにあっては、そういった意味ではなかなか成果が目に見える形として現れてこないが、種をまき続かないと実にはならない意味においては、やはり長期的に続けていくことが非常に大事だと考えるので、どうかそういった観点で長期的に継続して取り組んでいってもらいたい。
【委員】
中小企業におけるBCP策定について伺う。
昨年の6月2日、3日の東三河における豪雨災害もあり、また8月末の10号台風の影響等もあった。そうした中で、近年、自然災害は頻発化、激甚化する傾向になっている。また、これまでの新型コロナウイルス感染症や、サイバー攻撃等々の様々な予期せぬ緊急事態に対して、企業経営においては被害を最小限に抑え、速やかに事業を回復するための事前対策として、事業継続計画としてのBCP策定の重要性が増している。
そこで、県内における中小企業、小規模事業者のBCP策定状況はどのようか伺う。
【理事者】
県内における中小・小規模事業者のBCPの策定率について答える。本県では、県内の中小企業に対して景況調査を例年四半期ごとに実施している。この調査の中でトピックス調査として、2年に1度、BCPの策定状況を調査している。この結果によると、調査を開始した2008年には、策定済みが2.5パーセント、策定中が2.4パーセントだったものが、直近の2024年の調査では、策定済みと回答した企業が13.9パーセント、策定中と回答した企業が10.4パーセントとなっている。なお、前回、2022年の調査では、策定済みが13.5パーセント、策定中が8.2パーセントとなっている。
【委員】
県の景況調査、独自の調査によると、この直近の2024年1月からの3月期においては、策定済みが13.9パーセント、策定中が10.4パーセント、2008年からの統計では、2008年当時の策定済みが2.5パーセント、策定中が2.4パーセントであった。これまでに16年ほどたっており、10パーセント以上増えてはいるが、必ずしもまだ十分だというところまでは行ってない。
その上で、9月11日の中日新聞の記事に、大手保険会社の中小企業を対象にしたBCP策定調査の結果が掲載されていた。全国平均が12.4パーセントに対して、愛知県では15パーセント、岐阜県が13.1パーセント、三重県が14.5パーセントと、東海3県はいずれも全国平均を上回った策定率との報道であった。
この調査においても、まだまだなのかというのが実感としてあるが、先ほどの答弁であった策定率の実績とこの保険会社の数値に、若干ではあるが差異がある。県独自の調査がどういう形で行われたものなのか伺う。
【理事者】
県独自の調査は、四半期ごとに実施している中小企業景況調査において、2年に1度、トピックス調査としてBCPの策定状況を中小企業に尋ねるものである。
この調査で対象とする中小企業は、中小企業基本法で定義する業種ごとの規模に準じており、県内に本社を置く小規模事業者を含む中小企業から無作為抽出した2,000社を対象としている。例えば製造業であれば、資本金3億円以下、または従業員300人以下の範囲で無作為に抽出を行っている。
その一方で、質問の保険会社による調査では、同社の契約企業を中心に全国の企業経営者7,553社に調査を行った結果であるため、回答する企業の規模等が県独自の調査と必ずしも一致しないことから、その結果も異なるものと考えている。
【委員】
県の景況調査、独自のトピックス調査として、2,000社を対象、これは無作為の抽出した企業で行っているとのことであった。
実際は全数調査でもないので、もう少し実質少ないのではないかと思うが、ただ一方で、私もいろいろな事業者の人に話を聞くと、このBCPの必要性を非常に感じていると肌身で感じている。その上で、何人かの経営者の人から言われるのが、余裕がなかなかない、必要性は感じていてもどこから手をつけたらいいかよく分かってない、また、お金も十分かけられない。こういった声を聞くことがあった。
そこで、県当局においても、このBCP策定に向けて啓発事業等、様々な取組をしていると思うが、これまでの取組と実績について伺う。
【理事者】
本県では、中小・小規模事業者へのBCPの普及啓発を目的に、2007年度に中小・小規模事業者向けのBCP策定マニュアルである、あいちBCPモデルを作成、公表しており、以降、工業団地向けの団地版あいちBCPモデルや新型コロナウイルス感染症対策あいちBCPモデルなどを順次追加している。
あいちBCPモデルは、記入例を参考に項目に沿って選択、記入していくことでBCPを策定できるマニュアルとなっており、文章での記載箇所を極力減らし、チェック式、選択式を多用していることから、ノウハウやマンパワーが不足している中小・小規模事業者にも利用しやすいものとしている。
あわせて、BCPの普及啓発を目的としたセミナーや出前講座を開催しており、昨年度までに、セミナーについては計28回延べ1,233人、出前講座については計93回延べ3,739人の人々が参加した。
なお、2016年度には東京海上日動火災保険株式会社との間で事業継続計画策定支援に関する連携協定を締結し、それ以降は同社と共催の形でセミナーを開催している。
このほか、名古屋市、名古屋大学等と2017年に設立した、あいち・なごや強靭化共創センターにおいても、BCP策定の考え方、方法、取組事例などを学ぶ講座を開催している。
【委員】
2007年からあいちBCPモデルとしてウェブ上でも公表しているので、私も見たが、非常に分かりやすい形になっていると思う。
これまでの取組状況等について伺ったが、策定に向かってどの程度つながっているのか、実績がまだまだ不十分な点もあると感じている。BCP、これをつくることがあくまでも目的ではない。いかに実効性のあるものにしていくかが大事だと思う。
その上で、作成した事業者の人と話している中で、より実効性のあるものにしていくためには、物品等、必要な備品等がどうしても必要になってくるとのことであった。東京都では1事業所当たり1,500万円を上限にして2分の1の助成をする、BCP実践促進助成金を設けていた。私も東京都の関係者の人に聞いて、大変大きな金額だと思ったが、それでもこういったものが、一つ実効性のあるものに取り組む、インセンティブが働くものにもなっていると感じたところでもあるので、愛知県として、ここのところの取組ができていないと思うが、どのような考えになっているか伺う。
【理事者】
BCPの策定そのものがゴールではなく、その内容がいかに実効性のあるものかが大変重要なポイントである。東京都にヒアリングしたところ、当該助成金については、保存食、保存水などの備蓄品やポータブル蓄電池が申請事案として多く、1件当たりの平均交付額は約90万円だった。
本県としては、商業振興事業費補助金において協同組合や商工会などが実施する事業の中で防災に関する取組を補助対象としているほか、げんき商店街推進事業費補助金においても市町村がまちづくり計画等に基づき実施する事業の中で防災対策事業を補助対象としている。
こうした取組に加えて、次年度に向けて中小企業のBCP策定率向上に直結する取組をさらに加速していけるよう検討を進めていく。
【委員】
愛知県としては、協同組合、商工会において、商業振興事業費補助金、また、げんき商店街推進事業費補助金、こういったものを使いながら防災対策事業費としての補助はしていることが分かった。それでも東京都のようにBCPを策定した、その一事業者に対してダイレクトではない。今後、検討していくとのことなので、ぜひお願いしたい。
そうした中で、2019年より中小企業庁が事業継続力強化計画認定制度、通称ジギョケイを創設している。BCPとの違い、制度の特徴と、併せてジギョケイを県としてどのように捉えているのか伺う。
【理事者】
BCPは、会社を取り巻くリスクの整理、重要業務の絞り込み、復旧計画の策定など網羅すべき範囲が幅広い一方、事業継続力強化計画、いわゆるジギョケイについては、BCP策定の前段階となる防災・減災に対する事前対策の検討と実行が中心となるため、BCPと比べて作成が容易なことが最大の特徴である。
また、ジギョケイは経済産業省が計画を認定する仕組みがあり、その認定を受けた中小企業は税制措置や金融支援、国の補助金の加点措置などの支援策が受けられるメリットがあることも特徴である。
本県におけるジギョケイの認定件数は本年8月末現在の累計で5,006件となっており、東京都や大阪府に次いで全国第3位となっている。BCPよりも策定が容易なジギョケイはBCP策定に向けた有効な最初のステップであることから、企業の実情などに応じて具体のBCP策定を支援するあいちBCPモデルと連携して活用することにより、より効率的な支援につながるものと考えている。
【委員】
この中小企業庁が進めている事業継続力強化計画認定制度、ジギョケイを県当局においても大変よいものとして、推奨している立場であった。私も先日、中部経済産業局産業部経営支援課に行って、ジギョケイについて伺った。
全国で3番目の状況で、昨年も5,006件の実績が県内にある。その中で担当者の人から、BCPの簡易版ではあるが、低利の融資制度を受けられることが非常にメリットになっていると感じている話を聞いた。ここは大事なことだと思う。
BCP自体の重要性を、それぞれの企業経営者の人も感じているが、時間がないとか、それぞれ理由がある。低利の融資制度を受けられることが、自身の経営にも資するメリットとして感じてもらえれば、一つの取り組むきっかけになっていく。事実そういう状況がある。
その上で、愛知県のBCPのホームページを見てみると、先ほどのあいちモデルはあるわけだが、ジギョケイはなかった。推奨していく立場でもあると思うので、できれば県のホームページに中小企業庁のジギョケイに飛べるようなリンクを貼って、BCPをつくる前に、この簡易版のジギョケイに取り組んでいくような、そういう流れをつくってもよいのではないかと感じたので、ぜひともホームページに追記、または紹介してもらえるような取組をお願いしておくと同時に、考えを聞いておきたい。
それと、このBCPを進めていく上で、ジギョケイがまずは入門、最初に取りかかりやすいものである。あわせて、認定制度があるので、私は県の様々な公契約において入札事業者の人々にも、ジギョケイをつくっている、この認定をもらっている人については、こうした競争入札等の審査の加点するような取組をしていくと、また少し取組の率が上がっていくのではないかと思うところがあるので、その二点、どのように考えるのか。
【理事者】
本県では、BCPの普及啓発セミナーにおいて、2022年度以降、ジギョケイの策定をテーマの一部に取り入れたカリキュラムを実施しているほか、県の融資制度においてもジギョケイの認定を受けた中小企業に対する低利の融資メニューを設けている。
ジギョケイはBCP策定の第一歩として、その策定率の向上につながる有効な取組であると考えているので、県のウェブページにおいても積極的にPRしていきたい。
また、本県としても、ジギョケイの認定を受けた事業者に対する新たなメリットとして、企画競争や入札参加資格審査などにおいて、ジギョケイの認定を受けていることを加点措置として評価するよう調整したい。まずは局内での事案において、次年度以降から適用できるよう取り組んでいきたい。
【委員】
先日の一般質問では、防災面でドローン等の最新技術は災害時にも活用できるツールであることと、発災時には被災者の救援に即座に役立つものであるため、ぜひ活用してもらいたいと質問した。それを踏まえて今度は物流の運用など、開発面から質問する。
経済産業局としては、今回、あいちモビリティイノベーションプロジェクト、空と道がつながる愛知モデル2030で、ドローンを活用した物流サービスの長期事業化調査の実施について、本土と離島間の多頻度配送の検証をすることになっている。ドローンや空飛ぶクルマ等の次世代空モビリティの社会実装の早期化を図るとともに、自動運転との陸モビリティと同時制御により創出する新しいモビリティ社会、愛知モデルの構築や、次世代空モビリティの基幹産業化を目指し取組を推進しており、物流ドローンの社会実装初期のビジネスモデルとなるローンチモデルの実現に向け、物流ドローンを活用した配送サービスをユーザーへ約1か月間、10月7日から11月5日まで提供すると聞いている。実際の社会実装を想定した課題の抽出や分析を行うとしているが、目視外の飛行を行う予定なので、様々な課題が予見される。そこで懸念することを幾つか伺いたい。
まず、ドローンは通信環境の安定が必要となってくるが、風や天候の変化により影響を大きく受け、通信が途絶えた場合にどうするのか伺う。
【理事者】
ドローンの飛行の安全性の確保について、まず前提として、ドローンの運航を行う事業者は、機体の点検や整備、操縦士の操縦練習や操縦のルールの遵守、安全確保のための体制構築をはじめ、飛行方法や飛行場所に応じて生じる飛行リスクを事前に検証するなど、安全に万全を期して調査を行っている。
通信に関しては、今回の事業化調査ではドローンは複数の電波により操縦士と通信可能となっていることに加えて、万が一、いずれの電波も通信できない場合には、ドローンが自己位置に基づいてあらかじめ決められた飛行ルートを飛行するようプログラムしている。
【委員】
飛行リスクの観点から複数の電波で飛ばすとのことだが、運航上の注意点や現時点での課題については、どの辺りが課題と思っているのか。
【理事者】
今回の事業化調査での注意点、課題については、愛知県として1か月にわたる長期の事業化調査は初であり、期間を通じてドローンを安全に飛行させていきながら、物流ドローンのビジネス化に向けた運航オペレーションを確立していくことが重要と考えている。
特に運航オペレーションに関しては、人を配置することでより安全な体制を構築することができるが、他方で費用のかかる体制となる。そのため、調査期間を通じて省人化につながる技術等を採用しながら、安全性と運用コストの検証をしていく。
【委員】
物流ドローンの運航オペレーションで人を配置することについては、省人化ができるように考えていくということだが、実際ドローンで運搬された荷物に対して、ドローンを飛ばすときの人、物を積み込んで飛ばした先での受け取り、着陸した後の受け取りを誰かが行うのか。そこにはどうしても人を配置せざるを得ないと思うが、その辺り、誰が行うのか、荷物を受け取った後、配送先まで持っていくのは誰がするのか教えてほしい。
【理事者】
今回については、ドローンで運搬された荷物の受け取りに関しては、ドローンによる荷物が離着陸場に到着後、発注を行った事業者が離着陸場に来て荷物を受け取り、各事業所に自ら運ぶことを想定している。
なお、調査の初期段階においては運航事業者が配置され、荷物の受け取りの補助を行う予定であるが、後半では運航事業者は配置せず、荷物を受け取る事業者だけで対応する予定である。
【委員】
発注を行った事業者が荷物を受け取るが、今回、医療品も配送するので、温度管理など様々考えられると思うが、その辺りはどのように考えるのか。
【理事者】
医療品に関しては、温度管理や、それ以外にも配慮すべきことがあるので、ドローンで運べるものと運べないものを分けつつ、ドローンで運べるものはドローンを使って運び、受け取りは診療所の看護師が受け取るオペレーションを考えている。
【委員】
逆に診療所の看護師だと、また負担が増えてしまうと心配である。飛行上や運航上のトラブルが起こったときに、どういう形で対応できるのか心配であるが、試行期間の前半は運航事業者がついている。しかし、後半はそういう人がいない中での運航となると、飛行トラブルがあったときの対応が気になる。離島まで運搬していく、海の上を越えていくことを考えると、そういったところも考えておかなければいけないと思うが、その辺りはいかがか。
【理事者】
運航上のトラブル、配送中の荷物の損傷といったトラブルも考えられるので、それらについては運航事業者が補償を行い、次の便での配送などの対応を行う予定である。
このほかにも、ドローンもしくは配送した荷物の盗難も考えられると思うが、今回、離着陸場に置かれたドローンもしくは荷物について、佐久島側では離着陸場がフェンスで囲まれているため施錠により管理を行う。また、一色漁港側については人の配置を行っており、人の配置や倉庫への保管によって対応しようとしている。これら以外にも様々なトラブルが生じることを念頭に置きながら、ドローンの飛行環境や飛行状態を常時複数で確認しながら必要な対応を行うことにより、万全を期して事業化調査を進めていきたいと思っている。
1か月にわたる調査期間中に生じるトラブルに対しては、そのような課題の抽出も、今回の事業化調査の、調査の目的であるので、安全を第一としながら、県としても運航事業者とともに対応して、併せて技術面や運用面での検証を行い、今後の物流ドローンの事業化を見据えて取り組んでいきたいと思っている。
【委員】
ドローン、機体としては、大きなバッテリーを乗せ込むことができないと想定しており、20分ぐらいしか飛行できないのではないかと想像するが、電源の供給や安定した通信の確保について伺う。
【理事者】
バッテリーに関しては、今回、一色漁港から佐久島までが大体15分から20分ぐらいの飛行になる。バッテリーの減りを考えると、荷物は5キロぐらいまでで運用しようと思っているが、1回、1往復まで行かず、片道でバッテリー交換しなくてはいけないので、今回だと日用品や食料品の配送を担う農業協同組合のJA西三河佐久島支店の人にバッテリーの交換も行ってもらうオペレーションを考えている。充電は、そのバッテリーの予備をJA西三河佐久島支店に置いているので、JA西三河佐久島支店側で充電し、それを交換するオペレーションを考えている。
先ほどの通信に関しては、複数と言ったが、3本で冗長性を担保していると考えている。
【委員】
ドローンのバッテリー交換は、片道で取り換えないといけない、1往復するだけの電力供給ができない状況での社会実装を目指した実験で、省人化からすると、その辺も課題かと今の答弁でよく分かった。どうしても自動で行えないところをどうするのかも、今後、社会実装が早くできるようにするためには大きな課題と思う。国土交通省も3次元データの活用などを推進している。早く社会実装ができるように、できるだけ前倒しに検証していくよう願い質問を閉じる。
【委員】
知の拠点あいちについて伺う。付加価値の高いモノづくりを支援する研究開発拠点として、モリコロパークの近くに整備された。あいち産業科学技術総合センター、あいちシンクロトロン光センター、それから実証研究エリア、この三つがある。
万博の跡地利用、正確に言うと万博の跡地ではないと思うが、2012年にあいち産業科学技術総合センターがオープン、翌年にあいちシンクロトロン光センターがオープン、3年後ぐらいに実証研究エリアができたが、それぞれの施設について、これまでの成果を検証したいので質問する。これまでの実績と今後についてどういう考えか、端的に答えてほしい。
【理事者】
知の拠点あいちの三つの施設の成果と今後の考え方について回答する。
まず、あいち産業科学技術総合センターについて、こちらでは依頼試験等の業務を行っている。県内8か所の技術センター、試験場全体の依頼試験等の件数は、昨年度15万7,694件、技術相談・指導件数については4万7,701件となっている。このうち6から7割が、中小・小規模企業の利用となっている。このほかにも、各産業分野の技術課題に取り組む研究を65のテーマで実施している。
具体的な成果としては、刈谷市の産業技術センターにおいて、県内のプラスチックリサイクルメーカーである株式会社イハラ合成との共同研究により、技術課題を解決し自動車部品の廃材から3Dプリンター用のフィラメントを開発した事例がある。
次に、あいちシンクロトロン光センターについて、具体的な成果について回答する。
リチウムイオン電池について、充放電を1,000回繰り返した場合と長期間保持した場合の、それぞれの電池の容量の低下の原因を突き止めて、電池の能力向上に貢献した。
また、実証研究エリアについては、知の拠点あいちで実施している重点研究プロジェクト第4期、現在行っているプロジェクトにおいて、セミクローズド温室でのトマトの栽培について、光合成におけるCO2の利用効率を最大化することで、高収量、高品質なトマト栽培とカーボンニュートラルの実現を後押しし、製品化の前段階に当たる技術確立の段階に至っている。
続いて、各施設の今後の考え方について答える。
まず、あいち産業科学技術総合センターについては、今後もより多くの中小企業に利用してもらうために、センターでの研究成果の報告会や技術普及セミナーで優良事例を紹介するなど、引き続きセンターの有用性のPRに努めていく。
あいちシンクロトロン光センターについては、2013年3月のオープンから10年以上が経過しており、設備全般のオーバーホールが必要となっていることから、必要な修繕を進めていく。また、技術の進歩に合わせた機器の高度化への対応も急務となっており、例えば原子レベルでの二次電池の評価・分析ニーズの高まりを受けて、電池評価に特化したビームラインの新設等についても検討していきたい。
最後に、実証研究エリアについては、次世代バッテリーに関連した取組を県としても昨年11月から始めたが、企業ニーズの高い二次電池の安全性試験、充放電試験施設について民間活力を活用した設置の検討など、さらなる有効利用について検討していく。
今後も、知の拠点あいちが本県企業にとって研究や技術開発の総合支援拠点となるように、STATION Aiと連携を図りながら業務内容の充実に努めていく。
【委員】
あいち科学技術総合センターに業務依頼された内容が15万7,000件余、それから技術支援が4万7,000件余で、中小・小規模企業が頼ってきており、モノづくりの愛知、大手だけでなく中小企業、いわゆる子会社、孫会社、そういったところにまで行き届く支援ができていると思う。
先ほどの成功事例として、3Dプリンター用のフィラメントに自動車部品の廃材を利用できたような話があったが、重点研究プロジェクト計画期間の第5期になると思うが、このプロジェクトがいろいろ多岐にわたる内容で研究されて、企業も絡んでいろいろな形でやってきたと思う。いま一歩のところまで来ているものがどのぐらいあるなど、そういった内容を伺う。
【理事者】
知の拠点あいちで実施している重点研究プロジェクトの成果について、製品化の手前まで来ているものがどのぐらいあるか回答する。
第1期から第3期までは、製品化に至ったものが合計で64件ある。現在行っている第4期のプロジェクトは、2022年度から24年度、今年度が3年目、最終年度となっている。このうち昨年度末の状況であるが、製品化の一歩手前の技術確立の段階に至っている件数は31件となっている。今年度はまだ研究期間が残っているので、製品化に向けて現在プロジェクトを進めている。
【委員】
既に製品化が相当できていることを聞いて、本当にこの施設の有効性、正解だったことが理解できた。第5期に向けて、また新たな研究をやっていくことになるが、しっかりとやってもらいたい。
先ほど今後の取組内容の中で、より多くの人に周知する報告会や、事例紹介を引き続き実施するという話があった。これまではホームページ上で出し、経済産業局が発送するメールマガジンなど、そういったところに事例紹介をやっていたと思うが、最近はDX社会になっており、広げようがあると思うので、その辺の考えを伺う。
【理事者】
知の拠点あいちでのデジタル技術を活用した、より一層の普及啓発であるが、先ほど近藤裕人委員からウェブページでの情報発信やメールマガジンを使った情報発信の話があった。少しDXとずれるが、例えば重点研究プロジェクトだと、実際に作った試作品や各研究テーマの研究実績などは、各センターで展示をして情報発信等も行っている。
また、DXについては、成果報告会や技術普及セミナー等の実施で、対面と併せてオンラインでの参加も実施しており、より多くの人に聴講してもらえるように現在もしている。今後もそういった、また新たな方法等も含めて、より普及ができるように検討していく。
【委員】
次に、シンクロトロン光センターについて伺う。
先ほどリチウムイオン電池についてかなりの研究成果があった。実績を見ても相当利用されており、施設を使ってもらえるのは大変よいことだと思う。一方で、私が一番心配したのは物が古びてしまう、計測施設はどこに行っても大体型落ちになってしまうという表現をする。以前のヒアリングでは、シンクロトロン光センター自体はそのようなことにはならないが、周りの施設を高度化していかなければならないと聞いたので、予算のかかる話ではあるが、モノづくり愛知のために、この物の更新についてしっかりとやってもらいたい。
運営について確認するが、シンクロトロン光センターは公益財団法人の科学技術交流財団が運営しており、会員制で、運営自体はきちんとやっているが、横の広がりという意味でクラブをつくり、法人会員が10万円や3万円といった募集もしていると聞いている。シンクロトロン光センターでの測定だけなのかどうかよく分からないが、先ほどのあいち産業科学技術総合センターの話と同様に、せっかくの研究成果なので、より多くの人たちに知ってもらうことが本当に大事だと思う。
シンクロトロン光センターでは、クラブとしてやっているが、一つのアイデアとして、昨日、内覧会があったSTATION Aiをより深くリンクさせて、愛知県のモノづくりのコアな技術、すばらしい技術をスタートアップで活用してもらえる、そういうことをしてもらえるとよいと思うが、そういった考えについて何かあれば教えてほしい。
【理事者】
モノづくり企業について、STATION Aiと知の拠点との連携だと思うが、私どもも、昨日、入居が始まったSTATION Aiとの連携は非常に大切なものだと考えている。どういった連携をしていくかは、今後、検討していく段階ではあるが、例えば先ほどあった重点研究プロジェクトなどについても、スタートアップ企業の人にも賛同してもらい、できるだけ多く参加してもらいたいと思っているし、そうした場合に知の拠点にある高度計測分析機器やシンクロトロン光センターを利用してもらうとともに、STATION Aiの、様々なプログラムをうまく活用しながら進めていけるような連携を今後考えていきたい。
【委員】
すぐリンクするのはなかなか難しいが、アイデアとして思うのは、あいち産業科学技術総合センターの建物の中で、昨日のSTATION Aiのようなフリースペースを置いておいて、科学技術交流財団がやっているクラブのような、自由に出入りができるようなスペースをつくって、企業勤めの人、技術者が交流し、ふとしたことでとてもすばらしいアイデアが出てくる、これがまさにオープンイノベーションだと私は思っているが、このことがここでできてもよいのではないか、別にSTATION Aiだけではなくてもよいのではないかと思う。ここでやっている研究成果は、拾ってみればすごい宝石、すばらしいものになると思うので、ぜひとも検討してもらいたい。
あわせて、実証研究エリアについては、スペースも広いが、企業ニーズの高い次世代バッテリーの二次電池の安全性試験充放電試験施設について民間活力を活用した設置に検討など、さらなる有効利用について検討していくという説明があった。これも当局でいろいろなことを考えていると思っている。
私はヒアリングの中で、先ほど委員が取り上げたドローンをここでもやるのかと聞いたら、少し狭いとの話であったが、こういったスペースがあることを知らない企業もひょっとするとあるかもしれない。こういった平場でいろいろなことができることもぜひ周知してほしい。先ほどの公益財団法人の科学技術交流財団でやったような内容について、6月と7月にAichi Sky Expoで展示会があった。6月はAXIA EXPO 2024、水素・アンモニア次世代エネルギー展があったし、それから7月にはニュースダイジェスト社の主催でロボットテクノロジージャパン2024が開催された。それぞれ当局も参加して絡んでいるが、この展示会では、本当にすごい熱気を感じることができ、財団の絡みですばらしい企業の研究成果が形になっていると思う。観光コンベンション局も集客について一生懸命やっていると思うので、しっかりと連動して、愛知県が発展するような活動を要望する。
【委員】
私は亜炭について質問する。
亜炭は岩木とも呼ばれ、およそ2000万年前、地域の植物が火山活動や地殻変動により地中に埋まり、強い圧力や地熱などの影響で炭化したものであり、褐炭の一種で炭化度合いが低く、不純物や水分を含めた発熱量は低いが、家庭用の暖房や燃料として重宝され、この東海地方では日本最大の亜炭の産地と言われ、この地域を代表する産業である陶磁器、または繊維産業等々含めて、生産に関しても亜炭は産業を支える安価な重要なエネルギーの資源であった。
その亜炭生産の中心であった尾張炭田といわれる愛知県と、美濃炭田といわれる岐阜県で、日本の亜炭の約40パーセント前後を産出したともいわれ、愛知県に関しては名古屋市名東区、守山区、小牧市、春日井市、長久手市、日進市、尾張旭市など尾張東部に広く分布している。その亜炭も1960年から70年にかけて原油による代替エネルギーにより燃料としてのその需要を失い、炭鉱は次々と閉山されていったが、広大な面積に及ぶ亜炭の跡の正確な把握は難しく、現在でも尾張東部地域では亜炭の陥没事故が相次いでいる。
まず、ここ10年で亜炭の陥没事例はどの地域で何件発生したのか伺う。
【理事者】
国において、地表から深さ50メートル以内の亜炭鉱の採掘に起因する採掘跡、または坑道跡の崩壊による局所的な陥没を特定鉱害と整理しており、現在は国が指定した指定法人が特定鉱害の復旧工事費を補助する特定鉱害復旧事業が運用されている。
愛知県では、2014年から2023年までの10年間で、この特定鉱害に59件が認定されており、認定件数の多い順に、小牧市、春日井市、尾張旭市、長久手市、名古屋市、豊田市、日進市、犬山市の8市で発生している。
【委員】
私は長久手市なので、4年連続1件ずつ毎年のように発生しているし、過去にはたしか2002年か2003年だったか、マンションごと倒壊した事例もあるし、万博の際には、原因不明だが、グリーンロードが陥没した事例もある。その中で、住民の人たちから、もし陥没したときや、何か発見したときにはどうすればよいのかというような質問等が多々ある。
次に、それらの陥没事例が発生した場合に、国と県と市町村、どのような役割分担をして、そしてどのような手順で認定かつ復旧工事が進められていくのか伺う。
【理事者】
この特定鉱害復旧事業においては、陥没事案が発生した場合に、陥没箇所の土地の所有者がまずは所在する市町村に連絡を行う。そして、その市町村から指定法人である、あいち産業振興機構に連絡が入った後、国、県、該当市町村及びあいち産業振興機構の4者によって現地の合同調査を行い、特定鉱害に当たるかどうかを確認した上で国が最終的には認定の是非を判断する。
この認定結果については、指定法人であるあいち産業振興機構から該当の市町村に通知され、亜炭鉱跡の特定鉱害に当たる陥没被害と認定されたら市町村によって復旧工事が実施される。市町村が要した費用については、あいち産業振興機構から市町村に対して補助金を支払うような流れになっている。
【委員】
これは、きちんと図面にしないと分からない。市民の人たちの第一義的な窓口は市町村になるが、例えば春日井市だとホームページにしっかりとフローチャートが描いてある、何かあったときにはここでとあるが、長久手市に関してはなかなか分かりにくいし、どのような流れでどのような復旧作業が行われるかを、ほとんどの住民の人たちが知らないにもかかわらず、この10年で59件も起こっているのは、ある意味、どこが責任者か皆分からない、市なのか、国なのか、産業機構なのか。基礎自治体の市町村に、県からでも国からでもいいが、しっかりと指示して、ホームページでまずきちんと開示して、何かあればここでこのようになるとすべきだと思うが、県から指導はできないのか。
【理事者】
まずは、この事業は国が鉱業権の採掘権の許認可を持っているので、国が情報を持っている。
市町村は、実際には、それぞれどこに亜炭鉱があるかというのは、通常の事務では、情報は入手することができない。国と市町村が直接やり取りするのも難しいこともあるので、本県としては、国と県と市町村と指定法人であるあいち産業振興機構、4者が定期的に会議を開催して集まり、そこで、国の亜炭鉱に対する鉱害の対策事業の状況とか、それぞれの関係する市町で起きた、そういう陥没事案についてどのように対応したかは情報を共有しており、その場で必要に応じて議論するなど、情報をやり取りするようなことを進めている。
【委員】
もう一個、お金の流れであるが、基金をつくって修繕作業することで、国が73パーセント、県が26パーセントを出資して約1億2,000万円の基金を積み立てながら、それを崩しながら行っていくとのことだが、この10年ぐらいで特定鉱害復旧事業等基金は、県から幾ら支出しているのか、また併せて当初の1億2,000万円ぐらいが残金として今どれぐらいあるのか伺う。
【理事者】
現在、ここ10年でいうと、2014年から2023年度の10年間における復旧工事費等に費やした補助の事業費は3,494万5,000円余りとなっている。そして、もともと総額として1億2,490万円で積み立てた基金について、現在、支出を除いた残高は令和5年度末で8,161万9,000円余りとなっている。
【委員】
まだあるが、もし、なくなった場合はどうなるか。
【理事者】
まだ支出実績を見ると、ここ数年ですぐなくなるわけではないが、他県の事例を見ると、枯渇したときには、国に要望して国でまた基金を積むような予算を組んでもらい、それについて県も同調して対応している事例があるので、そういったものを中心に検討していく。
【委員】
先ほど、国の中部経済産業局資源エネルギー環境部資源・燃料課が鉱区の有無や採択実績を把握しており、県や市は把握していないとあった。各基礎自治体が情報共有することはできないのか。
【理事者】
この事業については、国が鉱業権を持っており、どこに採掘の申請があったのかは国で把握しており、それを常時オンタイムで、国、県、市町村とで共有しているわけではない。だが、そういったものが必要である市町村があると思うので、今後とも国に働きかけていきたい。
【委員】
東日本大震災の際にも、宮城県など東北地方で、亜炭鉱の採掘跡が大きく揺れたときに数百か所、ネットで見ると300か所以上のような書き方をしているが、陥没事例が発生して大変皆が困った事例もある。愛知県においても、南海トラフの巨大地震を危惧する中で、同じようなことが起こる可能性がある。だから、ある意味しっかりとしたハザードマップを県と市町村が協力して作っておいたほうがよいと思うが、県の考えはどうか。
【理事者】
愛知県の市長会議や関係市が、鉱業権の許認可権を持つ国への働きかけを要望していることから、亜炭鉱に対する防災事業として、亜炭鉱跡の実態を把握するための調査及び、それに伴い必要となる重点工事を一体的に行う事業を実施することについて国への要請を行っている。
【委員】
過日、ほかの会議で春日井市の市長が、事前予防ができないかと、技術開発や予算を含めて、しっかりとお願いしたいといっていた。そういう意味では、ハザードマップを作るのが大事な中で、国で何か補助金がないかと調べていたら、国では令和3年度、南海トラフ巨大地震に備えた亜炭鉱跡対策事業として総額80億円、期間が令和3年3月から令和7年3月まで、国が10分の9、県が10分の1で地盤調査や陥没防止工事ができる予算づけを行っていた。それは、令和3年から令和7年なので来年で終わるが、県の実情、状況はどうなっているか。
【理事者】
当該事業は、調査や工事を行う市町村に対して国と県が補助金を交付するものである。2021年からこれまでに本県における市町村からの申請がなかったため、本県ではこれに対して予算措置等の対応は行っていない。
一方、国では、2025年度から28年度の4年間で、総額72億円となる南海トラフ巨大地震旧鉱物採掘区域防災対策強化事業を現在概算要求している。このような事業について、応募要件等の詳細を国から入手し次第、先ほど説明したような国、県、あいち産業振興機構で構成する連絡会議等を通じて情報提供していきたい。
【委員】
基金の執行状況、これもネットによる情報なのでどこまでが本当か分からないが、80億円もつけて、たしか採択は1件ぐらいしかなかった。ほとんどのお金が余っている。でも、先ほどの春日井市長みたいに、本来ならこのお金を使って、調査、予防や工事をやりたい人たちがいる。申込みがなかったのは、この制度が何かおかしいと思う。
この制度を申し込むに当たり、その必須条件か何か、ハードルがあるような気がするが、この制度の申込み概要を教えてほしい。ハザードマップをつけなければならないというのもたしかあったと思うが、それらも含めて教えてほしい。
【理事者】
概算要求が出たばかりで、あまり詳細は分かっていない。分かっているのは国が公募を行ったときに県が申請して、それについて国が補助金の10分の9、県が10分の1を持つことである。
【委員】
今の質問は、令和3年からの事業、80億円の質問で、何かハードルがあるから申し込めないというものである。
【理事者】
令和3年度からの事業の公募要件について答える。
詳細な公募要項は、今手元に持っていないので把握していないが、国に聞いたところによると、調査や工事というのが今回のこの補助事業の対象ではあるが、そこに至る前段階で、ある程度ハザードマップ的なものの整備が必要なニュアンスの答えであったので、そういったものを整備しているところが対象になると推測している。
【委員】
うがった見方をすれば、ハザードマップを持っているところは予算をつけるが、あとのとこはつけないと、ある特定の地域だけの補助金のような話ではいけなくて、南海トラフの巨大地震の対策をするための補助で80億円もついて、今度また72億円もつけるのであれば、しっかり愛知県にそのお金を落としてもらいたい。たまたま委員会のメンバーを見たら、小牧市、春日井市、日進市、長久手市と4人もいるので、80億円がほとんど未執行、また72億円がついても岐阜県にしっかりとついてしまう話、それはそれでいいが、我々の県でも10年間で59件も陥没事例がある以上は、しっかりとそのお金を使えなければいけない。
国に対して、県から、我々も一緒に頑張っていきたいと思う。共に力を合わせていきたいと思うがどうか。
【理事者】
我々としても対応できるところは対応していきたい。
【委員】
本会議の答弁で知事から、2年後、大河ドラマ豊臣兄弟!の放送があるので、歴史観光を推進していきたいとあった。現在、愛知県で展開しているあいち歴史観光デジタルスタンプラリーについて伺う。
あいち歴史観光デジタルスタンプラリーについては、1コース約2か月間でテーマに沿って約10か所を回って、そこに設置されたスポットでデジタルスタンプを集めるもので、時期をずらしながら10コース展開予定で、現在、4コースが展開中である。奥三河地方もコースに入っていて、スマートフォンでも情報が見れて、なかなか楽しいものだと感じている。さらにコース達成賞も何種類かあって景品が当たるなど、参加型として面白いのではないかと思う。
7月1日から順次始まり、現在6コース目が始まっているが、まず参加状況について伺う。
【理事者】
あいち歴史観光デジタルスタンプラリーは7月から順次始まっており、既に2コースは終わっている。現在4コースが実施中、今後4コースをスタートする予定である。
既に終わった二つのコースの状況について、コース1は、7月1日から8月31日に実施し、小牧・長久手の戦いをテーマに関連する10のスポットを巡るもので、520人が参加し、平均でコース内全10スポットのうち7.2スポットを訪問してもらった。7月16日から9月15日まで実施したコース2は、桶狭間の戦いをテーマにしたもので、438人が参加して、平均で11スポットのうち8.2スポットを訪問してもらった。現在、コース3以降を実施中であるが、現在のところ、参加者数はコース1、コース2を上回るペースである。
なお、この参加者の傾向を分析すると、8月までの状況ではあるが、県内からの参加者がおおむね9割、男性が6割ぐらい、あと40代、50代、60代が合計で7割から8割ぐらいの状況である。
【委員】
県内からの参加者がほとんどだが、この現状についてどのように認識しているのか。
【理事者】
県外からの参加者が大体1割ぐらいである。参考に、昨年度、一昨年度実施したどうする家康を活用したスタンプラリーは、県外からの参加者が大体2割ぐらいであった。これに比べて今回県外からの参加者の割合が減った理由としては、昨年はどうする家康の放送があったこともあり、今年度は2か月間という比較的限られた期間の中でコース内の広範囲に点在するスポットを回る必要があるので、これまでよりも難易度が上がった結果、県外から参加しにくい面もあった。とはいえ、少しでも多くの人に県外から参加してもらえるように、県外へのPRにも努めていきたい。
一方で、愛知は歴史の宝庫であることについて県民にも改めて理解を深めてもらいたい思いもあるので、そういった意味で多くの県民に参加してもらえたこともよい傾向だと思っている。
【委員】
この歴史観光に限らず、県民も、県内のまだ知らないことがあるので、いろいろ情報をもらえるとありがたいと言っている人もいた。そういう点では、いろいろ情報があって県民が喜ぶのはよいことだと思うが、反面、観光振興という点でいくと、県外の人に来てもらうことも大事かと思うが、このあいち歴史観光デジタルスタンプラリーについては、どのような形で情報提供を行っているのか。
【理事者】
あいち歴史観光デジタルスタンプラリーは、県の公式観光サイトや今年度新たに開設した歴史観光推進協議会の特設サイト、県や市町村等の公式SNSなどで情報発信を行っているほか、県内、あるいは岐阜県、三重県、静岡県、長野県などのJR東海在来線の車内広告、首都圏向けに首都圏の歴史好きをターゲットとしたインターネット広告の配信、歴史ファンが購読する月刊誌への広告掲載など、様々な方法で県外も含めてPRしている。
今後も県外でのPRとして、例えば首都圏や関西圏で開催する観光展など、様々な機会でしっかりPRしていきたい。
【委員】
どうする家康のときも、かなりPRをしたと思うが、数字的に見ると、県外から2割だったのかという気もしないでもない。PRに工夫が必要ではないか、歴史観光以外にも愛知県を見てもらうことも必要ではないかと思うが、そうしたとき、どうする家康から歴史観光に関しては、いえやすくんなど、結構派手な色合いで目にとどまるようなキャラクターを作っているが、このキャラクターをもう少しうまく活用できないのか。
例えば、ほかの県を持ち出して申し訳ないが、熊本県のくまモンは使い勝手がよく、申請すれば、熊本に関係すれば使えるみたいなところで、あれを見れば熊本がすぐ出てくると思う。愛知県で、使い勝手がいいキャラクター、みんなが使いたくなるようなキャラクター、みんなが知っているキャラクターがどれだけあるのか、あまりないのではないかと思うところがあり、例えば歴史観光のいえやすくんなどのキャラクターは今後良い活用ができないかと思うが、活用の方法や現在、展開を考えているところがあれば伺いたい。
【理事者】
2年前に、大河ドラマどうする家康を活用した誘客促進の取組の一つとしてキャラクターを五つ作った。いえやすくん、のぶながくん、ひでよしくん、ただつぐくん、おだいちゃんの5体である。大河ドラマどうする家康は終了したが、武将、お城、街道を絡めた歴史観光の推進に取り組むこととし、2年前に作ったキャラクターを一部リニューアルして歴史観光のPRキャラクターとして使っている。現在は、ウェブサイト、パンフレット、ノベルティなどで活用している。歴史観光推進協議会の構成員である市町村等も、このキャラクターを自由に使えるようになっている。
これらのキャラクターは幅広く愛知の歴史観光を周知する上で効果的だと考えており、今後、いえやすくんなどのキャラクターを見れば愛知の歴史観光が思い浮かぶよう、具体的にはこれからになるが、県でも積極的に使い、市町村等にも積極的に使ってもらえるように促していきたい。
さらに、再来年には大河ドラマ豊臣兄弟!の制作が決まっている。こういうところにもキャラクターを何らかの形で活用できないか検討していきたい。
【委員】
ほかにも、例えばユーチューブを見ていると、あいち歴史観光デジタルスタンプラリーについて一般の人が紹介しているようなことがあり、県内外に発信しようと思うと、ユーチューブの活用なども重要になってくるかと思うが、現在どのように活用しているのか、今後の展開について伺う。
【理事者】
ユーチューブを活用した情報発信は、県内外に幅広くPRする上で効果的である。歴史観光関係では、これまで、徳川家康と服部半蔵忍者隊やサムライ・ニンジャフェスティバルでもユーチューブを活用している。例えば、徳川家康と服部半蔵忍者隊では、オンラインツアーとユーチューブで県内の歴史関係を含む観光スポットを紹介する動画を毎月配信している。
全国の武将隊、忍者隊が集結するサムライ・ニンジャフェスティバルでは、イベントの様子をライブで配信している。ほかにも愛知の観光のPR動画の中で、名古屋城をはじめとするお城や有松などの歴史観光のスポットも併せて紹介している。
今後、ユーチューブの活用について、例えば、徳川家康と服部半蔵忍者隊は、毎月オンラインツアーを行っているので、その中で歴史観光のスタンプラリーやキャラクターなどを紹介することもいいと思っているし、ほかにもユーチューブの効果的な活用がないか検討していきたい。
【委員】
いろいろあるが、もう少しシンボリックなものがあるとそこから入っていけると、答弁を聞いて感想を持ったので、発信の仕方については、これから工夫してもらいたい。
今だとデジタル技術を使って仮想空間や拡張空間など、いろいろな技術があるので、そうしたシンボリックなものプラス、デジタル技術を使って、そこに行くと本当に楽しいよと思うことで実際に足を運んでもらうことなど、もっともっと観光の面でも技術を使って発信したり楽しんでもらったりすることができるかと思っているので、今回、あいち歴史観光デジタルスタンプラリーのことから歴史観光や観光全体の話をさせてもらったが、これからもいろいろ工夫してもらいたい。
【委員】
先ほど委員から亜炭鉱についての要望があり、春日井市の件にも触れた。ハザードマップについては、20年前から春日井市長と毎年ずっと要望してきたが、国から回答でずっとスルーされてきた。今回、この件を機に、ぜひよい方向へ進むよう私からも強く要望したい。
私はワーク・ライフ・バランスの推進について伺う。
日本の人口がどんどん減少する中で、労働力人口も減っていくわけだが、この人材確保のために注目されているのは定年延長と女性雇用だと思う。65歳以上の高齢者は、昨年度、統計で3,625万人、日本の総人口に占める割合は29.3パーセントで過去最高を記録したといわれている。就業している人も914万人で、現役で仕事している人は20年連続で増え続けている。私もそのうちの一人である。
女性雇用に目を向けると、日本女性特有のM字カーブ、結婚や子育てで離職する人が多いと言われる30歳から34歳で一番労働力が減って落ち込むM字カーブも、かなり緩やかになってきた。40年以上前になるが、私が結婚した頃は結婚や妊娠で女性が仕事を辞めるのは当たり前の時代であった。それから徐々に女性も自分の能力を生かそう、仕事を続けようという女性が増えてきた。ただ、日本の現状は、家事・育児の負担が女性に偏っていて、それが少子化につながっているのが現実である。
誰もが能力を最大限に発揮し、生き生きと働き続けられる社会を実現するためには、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて、多様で柔軟な働き方が選択できるようワーク・ライフ・バランスを推進していく必要があると考える。特に出産を機に、いまだ3割程度の女性が離職するなど仕事と育児の両立が課題であり、国においても本年5月に育児・介護休業法が改正され、育児期の労働者が柔軟に働ける職場環境づくりが企業に求められている。
そこで、仕事と育児の両立支援に向けて県としてどのように取り組んでいるのか伺う。
【理事者】
仕事と育児の両立支援に向けては、県はもちろんのこと、経済団体や労働団体等とともに地域全体で取組を進めることが重要である。このため県では労使団体等を構成員とする協議会を設置し、官民一体となって、あいちワーク・ライフ・バランス推進運動を展開している。
この運動は、毎年7月から11月までの期間に、仕事と育児との両立支援などワーク・ライフ・バランスの実現に資する八つの取組を企業に呼びかけ賛同を募るものであり、昨年度は4万6,523事業所の人たちが賛同した。
また、従業員の両立支援に積極的に取り組む企業を愛知県ファミリー・フレンドリー企業として登録し、その取組を専用サイトで発信している。さらに、登録企業の中で特に優れた取組を行う企業を表彰する制度に子育て両立応援部門を設け、テレワークを活用した柔軟な働き方の推進や男性の育児参画に向けた支援、部下のワーク・ライフ・バランスを応援する上司の育成など、子育て世代の男女が安心して働ける職場環境整備を企業に働きかけている。
このほか、男性従業員が育児休業を通算14日以上取得した場合に50万円、通算28日以上取得した場合に100万円の奨励金を支給する制度を昨年度から開始し、男性の育児休業取得促進に取り組む中小企業等を支援している。
【委員】
県における2023年度の男性育児休暇取得率は25.7パーセント、近年上昇傾向にあるものと伺っている。ただし、女性の取得率97.3パーセントと比較すると大きな乖離があると数字に表れている。今、八つの取組やファミリー・フレンドリー企業への参画を進めていると伺ったが、企業の規模別に男性の育児休暇取得率の状況を見ると、従業員が500人以上では全国平均で34.2パーセント、100人から500人未満で31.1パーセントとなっている。一方、5人から30人未満では26.2パーセントと、企業規模が小さいほうが、取得率が低い傾向にある。どうしても中小企業では代替要員の確保が難しく、取得しづらい現状が数字に表れていると思う。
近年、共働き世帯が増加する中で、今なお女性に偏っている育児負担を軽減し、男女が共に仕事と育児を両立しながら働き続けるためには、男性の育児休暇取得を支援することが重要な取組の一つであると思う。
あるコンサルティング会社の人がここ最近の状況を、今の若年層は育休を取ることに積極的であり、取得期間も数日育休を取るような、とるだけ育休ではなく、数か月取得することが前提の夫婦共に育児を行うための育休になっている。労働力が不足する中で、企業がどう対応するかで優秀な人材を採れるかが決まってくる。ぎりぎりの人員の頑張りで耐え抜く職場ではなく、働き盛りの男性が数か月単位で抜けても回るような職場にしていくことが重要だと言っている。
こうした傾向は女性の視点から見れば大歓迎で、特に核家族で夫婦しかいないとなると、出産で倒れている奥さんを誰がサポートするか、旦那さんしかいないわけである。せっかくこうやって若い人たちの意識が変わってきた今をプラスと考えて、大きくそれを後押しすべきだと考える。
県では、昨年度から中小企業等を対象とした男性育児休業取得奨励金制度を実施しているが、これまでの実績と、また、男性の育児休業取得促進に向け今後どう取り組んでいくのかを伺う。
【理事者】
中小企業男性育児休業取得促進奨励金は、昨年9月から申請受付を開始し、昨年度の支給件数は50万円が147件、100万円が450件の計597件、支給金額は5億2,350万円となっている。また、今年度の支給決定件数は、9月末現在で50万円が75件、100万円が285件の計360件、支給決定金額は3億2,250万円となっている。このうち、従業員30人以下の企業は、昨年度は33パーセント、今年度は38パーセントとなっており、規模の小さい企業にも多く活用してもらっている。
次に、男性の育児休業取得促進に向けた今後の取組について、まずは、中小企業が男性の育児休業取得促進に取り組むきっかけとなるよう引き続き奨励金制度を周知するとともに、あいち働くパパ応援サイトにおいて男性の育休取得促進に関する企業の取組事例を広く発信していく。
また、個々の企業の実情に応じた支援を行うため専門家を企業に派遣し、職場の理解促進や属人化した業務の見直しなどへの助言を行う伴走支援を実施するほか、企業経営者等を対象としたセミナーを通じて企業が男性の育休取得促進に取り組む意義などについて周知、啓発していく。
また、男性の育児休業取得を促進することは、休業者本人の仕事と育児の両立をかなえるだけでなく、企業のイメージアップ、人材の確保、定着につながるなど、企業にとっても様々なメリットがある。今後とも国や経済団体等の関係機関と連携しながら、男性が育児休業を取得しやすい職場環境づくりを中小企業等に促していく。
【委員】
かなりの金額と件数が出ているのが分かって、中小企業の数字も33パーセントから38パーセントに上がってきているので、これをずっと継続してもらいたい。
昔は、夫は外で働き、妻は家庭を守るべきと考えている人が多く、特に47都道府県では愛知県がトップだった。そういう堅い考えの人たちが多かった。それが日本女性特有のM字カーブをつくっていたと思うが、現在では、結婚しても出産しても仕事を続ける女性が少しずつ増えてきて、社会の常識は変化している。
夫は外で働き妻は家庭を守るべきという意識に異議を唱える人が増えてきて、その考えに反対という人が、10代から40代は60パーセント、全体でももう50パーセントを超えたそうである。20年前とはかなり意識が変わってきた。
23年度に募集した、はがき1枚からの男女共同参画の最優秀作品の中から子供たちの言葉を紹介する。これは子供たちが応募したものである。「男、女なんて関係ない、できる人がやればいい。」「なんでもえらべる社会へ。」「好きなことを『らしくない』で分類しないで。」これらの言葉を見たときに、若い世代の意識変革にとても頼もしいなと感じた。それでも現状は、女性の視点から見て、いまだに子育てや家事の分担、親の介護、また給料面においてもまだ格差が非常に大きく、女性ばかりの負担が多いという不満を抱えている。
先日の本会議一般質問で、大村秀章知事は、子育て世代は10年間で着実に増加し、中小企業への取組として大学で個別に説明会を開催し、女性が元気に働き続ける愛知を目指すと答弁している。
男女が共に子育てや介護などライフステージの各段階において、多様で柔軟な働き方を選択でき、安心して働き続けられる職場環境のより一層の整備を要望する。これは言い続けないと駄目だと思う。県の人たちも今しっかり取り組んで数字が上がってきているので、さらにこれがより一層伸びるように要望する。
( 委 員 会 )
日 時 令和6年10月2日(水) 午後1時~
会 場 第7委員会室
出 席 者
林 文夫、山口 健 正副委員長
神戸洋美、須崎かん、石井芳樹、近藤裕人、政木りか、丹羽洋章、
谷口知美、天野正基、鳴海やすひろ、大久保真一、喚田孝博 各委員
経済産業局長、経済産業推進監、経済産業局技監、産業部長、
中小企業部長、革新事業創造部長、
労働局長、就業推進監、技能五輪・アビリンピック推進監、
観光コンベンション局長、観光推進監、
労働委員会事務局長、同次長兼審査調整課長、関係各課長等
委員会審査風景
<付託案件等>
○ 議 案
第128号 令和6年度愛知県一般会計補正予算(第3号)
第1条(歳入歳出予算の補正)の内
歳 出
第5款 経済労働費
第133号 中小企業者等向け融資の損失補償に係る回収納付金を受け取る権利の放棄に関する条例の一部改正について
第179号 令和6年度愛知県一般会計補正予算(第4号)
第1条(歳入歳出予算の補正)の内
歳 出
(結 果)
全員一致をもって原案を可決すべきものと決した議案
第128号、第133号及び第179号
○ 請 願
第 34 号 「業務上コロナワクチンを接種し、健康被害を受けた労働者に労災認定の可能性がある事の周知を求める」について
(結 果)
賛成者なしをもって不採択とすべきものと決した請願
第34号
<会議の概要>
1 開 会
2 議案審査(3件)
(1)理事者の説明
(2)質 疑
(3)休 憩(午後1時47分)
(4)再 開(午後1時57分)
(5)質 疑
(6)採 決
3 請願審査(1件)
4 一般質問
5 休 憩(午後3時04分)
6 再 開(午後3時14分)
7 閉 会
(主な質疑)
《議案関係》
【委員】
予算に関する説明書15ページの東海研究開発1号ファンド(仮称)に対する出資について伺う。
我が国のスタートアップ・エコシステムは、人材事業、資金などの面でまだまだ課題があり、現在、好循環が生まれているとはいえない状況である。
そのスタートアップ・エコシステムの中で資金供給面であるが、スタートアップへの投資額を諸外国、特にアメリカと我が国を比較すると、まだ大きな差があると言われている。スタートアップに投資するベンチャーキャピタル(VC)についても、諸外国と比較してファンドサイズもディールサイズもまだまだ小さいと言われている。また、国内スタートアップに対して海外投資家からの投資も限定的であると言われており、これは2年前の段階であるが、グローバルトップVCの視点が日本にはまだ存在しておらず、国内スタートアップへのリスクマネーの供給を増やすためにも、海外VCの呼び込みも含めて海外投資家からの投資をもっと増やすべきではないかというような議論、意見もある。
さらに、日本におけるVCのシード期やプレシード期への投資は限定的であって、新しい技術の実用化や商用化といった面からも、プレシード、シード期への投資を増やす必要性があるとも言われていた。
スタートアップの急激な成長を支えていくために、リスクマネーの供給を拡大する必要があると言われ続けてきたが、現実的には十分な状態には程遠いと言われている。
その中で、今回、ファンドへの出資によって大学発の研究シーズの社会実装やディープテックスタートアップの成長を促進するとして、5億円の予算が計上されている。
そこで、幾つかの点について伺うが、日本のVCは首都圏を中心にほかにも実績のあるファンドがある中、今回、このファンドを新規に立ち上げて、運用実績のない株式会社セントラルジャパンイノベーションキャピタル(仮称)が運用するこのファンドに県が出資するが、その理由は何か伺う。
細かいことだが、このファンドは誰が運用するのか。運用に関する人物、ファンドマネジャーは今まで実績があるのか。簡単に言えば、目利きができるのか。親会社、元の会社が大学発スタートアップ、大学の開発機構で、大学発スタートアップに手前味噌な出資、投資になりはしないのかを危惧する。その辺りもどのようになっているのかを含めて伺う。
【理事者】
県が出資する理由であるが、我々愛知県としては資金調達に対する支援は、スタートアップの成長を支援する上でアクセラレーションプログラムとかコミュニティーの形成などと並んで非常に重要である。
愛知県のスタートアップへの投資環境について説明すると、スタートアップの資金調達動向に関する資料であるジャパン・スタートアップ・ファイナンス2023というものがあり、この調査レポートによると、2023年の国内のスタートアップへの投資金額は7,536億円である。このうち、愛知県のスタートアップへの投資額は92億円で全体の1.2パーセントである。一方、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、いわゆる1都3県、こちらのスタートアップへの投資額は6,365億円、約84.5パーセントであり、こういったものを見ると愛知県のスタートアップへの投資環境は決して恵まれた状態ではない。
こうした中で、東海国立大学機構が孫会社を通じてこの秋に新たにファンドを設立して、東海地域に大きなインパクトを与え得るスタートアップへの投資を行うことになったので、県としてもスタートアップの資金調達環境を充実させて、大学発研究シーズの社会実装やディープテックスタートアップの成長を促進することを目的として先導的に出資することにした。
また、このファンドには名古屋市も県と同様に5億円の出資を行う予定である。こうした愛知県と名古屋市とで自治体が出資することにより、一定のファンドサイズを確保することで、地元企業や金融機関から出資を呼び込み、当地域の強みであるディープテックスタートアップへの投資の増加につなげてスタートアップの成長支援を加速させていきたい。
続いて、ファンドマネジャーがどういう人たちなのかであるが、こういう人々については、今現在ではファンド側が詳細を公表していない状況であり、個人が特定できるような情報については答えることができないが、複数のスタートアップの設立や、自身が主導したプログラムにおいて時価総額100億円のスタートアップを創出した経験を有する代表者に加えて、自身でスタートアップを創業したり、ベンチャーキャピタルにおける投資業務に従事したり、大手投資会社においてアナリストを務めた経験を有するなど、様々な経歴や知見を有するメンバー4人、合わせて5人を中核として運用するものである。
少しそれぞれについて簡単に経歴を紹介すると、代表者は複数のスタートアップの設立に参画した経験を有している。さらに、この人が主導したプログラムにおいて10社を超えるスタートアップが創出され、中には時価総額100億円を超えるようなスタートアップも生まれている。
ほかのメンバー、1人目であるが、アメリカの戦略コンサルティングファームで経営コンサルティングに従事した経験や、ヘルスケア専門のベンチャーキャピタルにおいて投資業務に従事している。
2人目は、米国グローバルIT大手のベンチャーキャピタルで投資業務に従事し、日本、欧州、アメリカで研究機関においてスタートアップを創業している。
3人目は、アメリカの投資会社においてアナリストとして1,000社以上の企業の投資分析に従事し、IT企業においてM&Aやベンチャー投資、コーポレートベンチャーキャピタルの設立に従事している。
4人目、最後であるが、アメリカ大手の戦略投資部門の日本代表として技術ベンチャー投資やM&Aを担当し、半導体分野やモビリティ分野を中心としたディープテックスタートアップの設立、経営に参画している。
最後に、名古屋大学、岐阜大学が主体になることで手前味噌にならないかだが、名古屋大学は、トンガリというこの地域のスタートアップの起業を支援する取組をしているが、今回のファンドについては、トンガリに参加している大学も含めて様々な大学の研究シーズから事業開発に向けた投資をやっていくので、必ずしも名古屋大学や岐阜大学に限った投資が行われるものではないと承知している。
【委員】
今の答弁では、スタートアップ・エコシステムを形成していく中で、資金供給面の部分が脆弱である。国内のスタートアップへの投資金額約7,500億円の内、首都圏に6,365億円の約84.5パーセントが集中しており、県内に対しては92億円の1.2パーセントであるならば、今までの運用実績がないVCに5億円出資するのではなく、別のVCに見てもらい、もっと積極的に出資してもらうような働きかけをすることも可能であるし、引き続きそういったことをやるのではないか。
ファンドマネジャーは一定の実績がある人が来て、会社をつくって、その人々が運用するが、ほかにもあまたとはいわないが、幾つかあるVCの中で、新会社にあえて県が5億円を出資することがいま一つよく分からない。今の答弁だといま一つ伝わってこない。
トンガリにはスタートアップの関係で、私も5年ぐらい前に行ったことがある。いろいろなものを事業化しようとしていることはそのときも勉強したが、どうしてもそこだけに特化した出資になっていく、投資になっていくだろうと思わざるを得ない。そこにあえて県が5億も出資して50億のファンドを組んで投資していくところの意味合い、理由、その辺りをもう少し教えてもらいたい。
【理事者】
様々なファンドがある中で、なぜ新設のファンドに投資するのかであるが、今回の東海研究開発1号ファンドについては、東海地方をまさにめがけて投資することで、この地域で大きなインパクトを与え得るスタートアップへの投資を行うことを、目的として明確に掲げている。
我々としても、先ほど説明したとおり、愛知県のスタートアップへの投資環境が決して恵まれている状況ではない中で、この地域のスタートアップに投資すると名言しているファンドに出資することで、まさにスタートアップの成長につながっていくのではないかと考えている。
なお、他地域のファンドは、そもそも首都圏に集中していることもあり、見ているところも、そういったところになるので、ぜひこの新設のファンドに投資して頑張ってもらいたい。
【委員】
東海地方のスタートアップに投資していくことを明言しているから、まずここに県として5億を出資することは分かる。何度も言うが、こだわらずに海外のVCを引っ張ってきたってよいわけである。そうしたところからお金を引っ張ってくることだって考え得ることだから、言葉はよいのか悪いのか、呼び水的にまずはやることで理解するが、それに限らず資金面での支援をいろいろと考えてもらいたい。
もう一つ伺う。スタートアップ支援の中でも資金面の支援で出資するが、今回5億円という金額になる。この5億円という金額は、株式投資よりもハイリスクであると言われている、スタートアップ企業への、それも今回はシード期、アーリー期も含めてファンドを通じて投資していく。
そもそも愛知県の公金の運用について株式投資は行っていない、基本的に債券や預金などのローリスクの運用先で運用していると財政課から聴いている。その中で、スタートアップ支援という切り口でいえば、確かに資金の支援だろうが、5億円をハイリスクのスタートアップを投資先にするファンドで運用するという言い方もできる。
そこで伺うが、この5億円という金額を含めて、このファンドに県が出資することの妥当性をどのように考えているのか。
【理事者】
今回の出資については、スタートアップへの資金調達環境の充実のほか、ほかからの出資を呼び込む呼び水効果も狙っている。そういった呼び水もあるが、このファンドは民間も含めて幅広く出資者を募ることにしており、今回の50億円ファンドの規模では、その1割の5億円を出資することにした。
参考にほかの地域で、ファンドに対して自治体が出資している最近の例を見ると、幅があり8パーセントから33パーセントまであるが、十数パーセント、1割強が中央値となっている。個別の自治体名まではいえないが、幾つか紹介すると、一つは3年ほど前に設立されたもので、ファンド規模250億円に対して20億円の出資、これは8パーセントである。大きいものでいうと、ファンド規模300億円に対して100億円の出資、これは33.3パーセントである。ほかには、ファンド規模が152億円に対して20億円の出資、これは13.2パーセントになっている。
【委員】
基本的な企業生存率、創業して例えば5年たったときにどれだけの企業が残っているかというのは82パーセントぐらいだったと思うので、約2割の企業は創業後5年ぐらいすると市場から退場していく状況の中にあるわけである。
このスタートアップはハイリスクであると言われており、さらに言うと、今回はシード期、アーリー期、どうなるかよく分からないところにもお金を出していき、損失補塡や元本保証もされてない中で県のお金を5億入れていく。最悪幾ばくかの損失も覚悟の上で、それでもスタートアップ支援の名の下で出資していくことを理解できないわけではないが、県のお金を入れていく以上、そういったリスクとかも鑑みてやっていかなければならないと思っている。資金調達面を充実させていくのに、ほかにも手法、手段はまだある。
こうしたハイリスクなファンドに今回出資するが、今後スタートアップ支援の名の下で際限なく幾らでもお金を入れ込んでいく、予算化していくことは考えづらいが、どのような考え方でこういったファンドへの出資等々の可否を判断していくのか。
【理事者】
今後のファンドの出資については、愛知のスタートアップの成長につながるのかどうかをはじめ、運営者の陣容、どういう人たちが運営するのか、ファンドの規模、県の出資額も含めたところを総合的に勘案して個別に判断していく。
愛知県のスタートアップの成長につながるのか否かについては、例えばどの地域のスタートアップを中心に投資していくつもりなのか、どのような分野に投資を考えているのか、または投資実行後の投資先への支援はどうかを中心に見て決めていく。
【委員】
最終的には個別判断をその都度していくと理解したが、ハイリスクであるのは間違いないわけであり、必ずしもリターンが返ってくる保証があるわけではないお金であるから、際限なくスタートアップ支援だからと予算計上し、執行していくことは、慎重になってもらいたい面もある。
【委員】
東海研究開発1号ファンドについて、愛知県の立場を確認したい。
例えばスタートアップの支援拠点のSTATION Aiのメンバー企業を対象に投資するSTATION Aiセントラルジャパン1号ファンドについては、これは愛知県が主体的に関わっていると思うが、今回のファンドについては全く外部の団体への出資となることで、今回のファンドにおける愛知県の立場がどうなるのか、具体的にどのような立場なのか、VCでもない中で、愛知県の立場はどういうものなのか説明してほしい。
【理事者】
今回、愛知県が出資する東海研究開発1号ファンド(仮称)は、投資事業有限責任組合契約に関する法律に基づいて設立するものであり、正式な名称は東海研究開発1号投資事業有限責任組合という。
投資事業有限責任組合契約に関する法律の、投資事業有限責任組合とは、無限責任組合員と有限責任組合員から成る組合をいうと規定されており、二つの立場の組合員により組成するものである。
一つ目の無限責任組合員、これは一般的にGP、ジェネラル・パートナーと呼ばれており、ファンドの運営者を指す。もう一つの有限責任組合員はLP、リミテッド・パートナーと呼ばれており、ファンドへの出資者を指す。今回の東海研究開発1号ファンド(仮称)における愛知県の立場は、先ほどのLP、有限責任組合員になる。
【委員】
そのLPについてもう少し説明してほしい。
【理事者】
投資事業有限責任組合契約に関する法律では、組合の業務は、無限責任組合員が決定し、これを執行すると規定している。一方でLP、有限責任組合員の責任は、出資額を限度として組合の債務を弁済することと、ファンド側からの報告を受けて組合運営全体に対するチェックを行うというものがある。
県はLP、有限責任組合員として、ファンド側が目的に応じた投資案件の選定をしているか、投資先へのサポートをしっかり行っているか、そういったファンドの活動をしっかりとチェックし、必要に応じて意見を言っていく立場になる。
【委員】
チェックしていく立場は分かった。それ以前に、例えば県民への説明責任や出資に伴う県の利益をどのように考えているのか確認する。
【理事者】
説明責任では、ファンドの運営の実態については公表する部分と公表されない部分があるが、公表が可能な情報については積極的に発信するように求めていき、県としてもファンドが行う情報発信に対し積極的に協力して説明責任を果たしていきたい。
もう一つの県の利益、メリットでは、今回、このファンドに出資する目的は、愛知県のスタートアップが成長することがその最大の目的であり、同時に県にとっても最大の利益である。さらに、こういうスタートアップの世界では、成功した起業家自身が事業を立ち上げた地域の後輩起業家に対してサポートする文化がある。この地域から育った起業家が次の世代のスタートアップを育てていくことで、この地域のスタートアップ・エコシステムの一翼を担ってくれると期待している。
ファンドでいうと、投資したスタートアップが成長することでファンドに対してリターンがあれば、応分の配分が県にもある。
【委員】
私も今のファンド出資について伺う。メリットをスタートアップが成長することによる地域の活性化と捉えたが、5億円を出資するので、有限責任の立場ではあるが、どれだけで何パーセントか戻ってくるといった契約はあると思うがどうか。
【理事者】
必ず何パーセント返ってくるものではない。数字は公表されていないのでいえないが、ファンドの規模を超えるような収入があれば返ってくることはある。
【委員】
期間はどうか。
【理事者】
このファンドの存続期間は10年である。
【委員】
スタートアップが成長してしっかりとした収益を出して地域に根差すのに、10年ぐらいで果たして成果が出るものかどうか。あるいは出るとすれば、相当早くから出ると思う。
5億円でスタートアップがたくさん発展すれば愛知県のメリットになることは分かるが、5億円を出資するのに、先ほどから答弁を聞いていると、細かいことは言えない、公表できない、そのような話ばかりである。
呼び水という表現を先ほど委員がしたが、呼び水ではもちろんあるし、スタートアップを私も大変応援したいと思っているが、以前からスタートアップ自体の拠点を、ここ愛知県に絶対設けなければならないわけではない話はしている。もう少ししっかりとした形で説明してもらわないと、本当に心配する人々への対応が難しい。
もう一つ伺うが、先ほど委員の質問に対する答弁で、ほかの自治体の実績として、250億円のファンドに対して20億円を出資した、そういう話があった。これも自治体名を明かさないが、これはほかの自治体の議会で諮っているのか。
【理事者】
当然諮っていると思う。
【委員】
議会で諮り議事録が残っているような話を何で隠すのか。何かを隠しているようにしか思えない。
【理事者】
ファンドそのものは、どの企業がどのぐらい出しているかについて、基本的には公表していない。それぞれの自治体においては、このファンドに対してこれぐらい出すと諮っていると思う。
【委員】
議会で諮っているなら、その議会は議事録を残しているのではないか。
【理事者】
残していると思う。
【委員】
都道府県名を教えてもらうことで、我々はそこをチェックできる。少なくとも、そういったことを安心材料として提示してもらわないと、何でも隠していることになり、我々も不安が募る。
委員長、これは提案だが、後々、委員にその内容を教えてもらうようにお願いしてほしい。
【委員長】
只今の委員の発言について、理事者は本件を答弁するよう求める。
【理事者】
質問のあった他の自治体の事例について答える。
最近立ち上げたファンドが四つあるので、それについて答える。
そのうち三つは東京都で、あと一つが兵庫・神戸である。大きい順に言うと、東京都が2024年の10月に設立したものがファンド規模300億円、東京都が100億、率にして33パーセント。それから、これも東京都が2021年の12月に設立した250億円規模のファンドがあり、東京都が20億円、率にして8パーセント。それから、最後、これも東京都が2024年3月に152億円規模のファンドを立ち上げて、東京都が20億円、率にして13パーセント。加えて兵庫県と神戸市が関与したファンドがあり、ファンド規模が11億円、兵庫県が2億円、神戸市が1億円といった形で他の事例がある。
補足だが、このベンチャーキャピタルの仕組みは、何パーセントを担保する、そういう形のものではないことをまず伝える。そういう意味において、委員が指摘したハイリスク・ハイリターンといった仕組みである。
ただ、その仕組みの中でポートフォリオというが、複数のスタートアップに投資することで、多くはもしかしたら駄目になるかもしれないが、少数でも成功すれば、スタートアップは急激な成長をするので、そこでリターンが発生する。我々はVCの制度もよく承知しており、ハイリスク・ハイリターンであることは重々承知しながら、今回については、先月、STATION Aiと名古屋大学が連携協定、基本合意書を締結したことからも分かるように、STATION Aiのオープンを機に東海国立大学機構がこのファンドを立ち上げた。そういう経緯もあるので、スタートアップを成長させていく、この勢いをさらに推進するために、今回5億円を出資すると、そういった考えで今回提案している。
《請願関係》
なし
《一般質問》
【委員】
アントレプレナーシップ教育事業について伺う。
昨日、STATION Aiの内覧会へ参加した。多くの起業家がその可能性を開花させて、県内産業のイノベーションを創出していくことを期待している。
そのイノベーションを創出していく部分で一つの観点として、柔軟な発想と行動力のある人材が非常に求められる部分において、愛知県や教育委員会としても来年度から明和高校、津島高校、半田高校、刈谷高校、それぞれで中高一貫校を立ち上げる。その目的としては、チャレンジメーカーという言葉を使っていたが、社会的な課題を解決する人材を育成するというところで、アントレプレナーシップ教育に対して中高6年間時間をしっかり使って、人材を育てていくと認識しているわけだが、そういう部分で起業家を目指す若年層の裾野を広げていくことは、長期的に見て非常に意味のあることだと思う。
経済産業局としても2022年から、あいちスタートアップスクールを実施していると認識をしているが、あいちスタートアップスクールは、小、中、高、高専向けの起業家精神育成プログラムで、若年層の段階から起業家精神を育むことを目的とするものであり、今年度も8月に開催、実施したと承知している。このあいちスタートアップスクールの今年度の実施状況を伺う。
【理事者】
あいちスタートアップスクールは、小学生、中学生、高専生・高等専修学生を含む高校生向けのプログラムであり、それぞれ内容が異なっている。
まず、小学生向けのプログラムは、3時間で完結する2種類のプログラムを実施している。一つは、様々な切り口から自分の心が動いた事柄を書き出して、それを組み合わせて誰も見たことがない自由研究のテーマを見つけていくものである。もう一つは、卵を落としても割れないプロテクターの開発を、チームを組んで行うものである。これについては、県内の4会場、大府市、日進市、岡崎市、豊川市で開催して、合計215人が参加している。事後のアンケートによると、今まで起業という言葉や考え方を知らなかったが、起業に興味が湧いたとか、起業は大変なことだと思っていたけど、やりたいことがやれることが分かったとか、チームのみんなと協力してプロテクターを作るのが楽しかったことで、起業やほかの人と協調して取り組むことに対して、ポジティブな印象に変化した子供が多かった。
次に、中学生向けのプログラムは、こちらは2日間の日程で、身の回りの不、不便とか不満とか不安とかの不をテーマにチームで解決したい課題を設定して、解決するアイデアを検討してまとめて発表するものである。これも小学生向けのプログラムと同様に、県内4か所で開催して30人が参加した。アンケートによると、起業は自分の今後の人生の選択肢の中にあると回答した子供がおよそ半数に上っている。
最後に高校生向けのプログラム、こちらは3日間で行う基礎編と4日間の応用編があり、基礎編ではチームを組んで疑似的に株式会社を立ち上げて実際にビジネスをつくる体験をするもので、3会場、日進市、岡崎市、豊川市で開催して合計14人が参加して、先ほどと同じで、起業は自分の今後の人生の選択肢の中にあると回答した生徒が半数を超えている。
応用編については12月に開催する予定だが、内容は自分が実現したい事業アイデアをメンタリングによりブラッシュアップして、実現性の高いプランに仕上げてプレゼンを行うものである。こちらは11月30日まで参加者を募集している。このプログラムについては、より多くの子供たちに参加してもらいたいと思っているので、県内全ての小学校・中学校・高校に児童・生徒全員分のチラシを配布するなどして周知を図っている。
【委員】
県内の4会場や3会場でバランスを取って開催し、若年層に目を向けた、こうした裾野を広げる取組は非常に重要である。
何しろ続けていかないと、なかなか身にならないし、2022年から始め続けていく中で課題等も出てくる。そうした部分で新しいことに取り組んでいく必要も出てくるかと思うが、こうした実施状況を踏まえて新たに取り組んでいることがあれば教えてほしい。
【理事者】
我々は起業家教育を行っているが、起業家教育は、起業家や経営者だけに必要な教育ではなくて、他者と協調しながら新しい価値を創造するなど、これからの時代を生きていくためには必要なものである。
そこで、多様なキャリアの選択肢を知ることによって、どのような職業に就いても必要となるチャレンジ精神や創造性といった、いわゆるアントレプレナーシップの重要性を理解してもらうことで様々なフィールドで活躍できる人材を育成したい。
そういった目的において、今年度から新たに県内の高校を対象として総合的な学習の時間帯で起業家教育の授業、例えば起業や事業創出に携わった人の体験を聞く高校生出張授業を実施している。今年度から始めたものだが、公立、私立高校15校から申込みがあり、準備が整った学校から順次実施しており、これまでに4校で開催して合計323人が参加している。この授業を通じて、起業への興味の有無にかかわらず、アントレプレナーシップの重要性を理解してもらいたい。
【委員】
また、大学生ともなると、より現実的に起業を考えている人も出てくる。昨日の内覧会でも、起業家育成を目的とした学生のプログラム、STATION Ai Program for Students(STAPS)があり、こちらも2023年からスタートをして、事業の開発やアイデアの検討、メンターとのミーティングなどを通じてスタートアップのノウハウを学ぶ機会を提供しているプログラムだと承知している。
まず、そのSTAPSの今年度の実施状況と、このプログラムを通して実際に起業した人がどれぐらいいるか伺う。
【理事者】
「起業を当たり前の選択肢に」をテーマに掲げて、主に起業を志す大学生をターゲットにしている。学生が参加しやすいよう、夏と春の年2期に分けて開催している。
内容としては、学生がチームを組んで参加して、1か月半の短期間の中でメンタリングを受けながら事業開発や仮説検証に取り組み、その成果をピッチコンテストの場で発表するものである。
今年度夏のSTAPSでは、県内・県外から27チーム62人が参加した。優秀者にはPRE-STATION Aiの入居権を付与しており、今回参加した中では県外から参加した高校生が受賞することもあって、起業家の誘引や創出につながっている。
参加者からは、起業を決断するきっかけになった、共同創業するメンバーが見つかった、顧客へのヒアリングや課題解決の基礎を学ぶことで顧客ファーストの事業創出の大切さに気づくことができたとの前向きな反応があった。
これまでに、2023年度の夏と春、そして今年の夏と3回開催しているが、この中から8人がPRE-STATION Aiのメンバーとなり、そのうち6人が起業している。
【委員】
STAPSから、プログラムに参加した人から6人が起業したとの答弁であった。そういった形が見える、成果が見える事業で、今後もより充実したプログラムを行ってもらいたい。また、あいちスタートアップスクールにあっては、そういった意味ではなかなか成果が目に見える形として現れてこないが、種をまき続かないと実にはならない意味においては、やはり長期的に続けていくことが非常に大事だと考えるので、どうかそういった観点で長期的に継続して取り組んでいってもらいたい。
【委員】
中小企業におけるBCP策定について伺う。
昨年の6月2日、3日の東三河における豪雨災害もあり、また8月末の10号台風の影響等もあった。そうした中で、近年、自然災害は頻発化、激甚化する傾向になっている。また、これまでの新型コロナウイルス感染症や、サイバー攻撃等々の様々な予期せぬ緊急事態に対して、企業経営においては被害を最小限に抑え、速やかに事業を回復するための事前対策として、事業継続計画としてのBCP策定の重要性が増している。
そこで、県内における中小企業、小規模事業者のBCP策定状況はどのようか伺う。
【理事者】
県内における中小・小規模事業者のBCPの策定率について答える。本県では、県内の中小企業に対して景況調査を例年四半期ごとに実施している。この調査の中でトピックス調査として、2年に1度、BCPの策定状況を調査している。この結果によると、調査を開始した2008年には、策定済みが2.5パーセント、策定中が2.4パーセントだったものが、直近の2024年の調査では、策定済みと回答した企業が13.9パーセント、策定中と回答した企業が10.4パーセントとなっている。なお、前回、2022年の調査では、策定済みが13.5パーセント、策定中が8.2パーセントとなっている。
【委員】
県の景況調査、独自の調査によると、この直近の2024年1月からの3月期においては、策定済みが13.9パーセント、策定中が10.4パーセント、2008年からの統計では、2008年当時の策定済みが2.5パーセント、策定中が2.4パーセントであった。これまでに16年ほどたっており、10パーセント以上増えてはいるが、必ずしもまだ十分だというところまでは行ってない。
その上で、9月11日の中日新聞の記事に、大手保険会社の中小企業を対象にしたBCP策定調査の結果が掲載されていた。全国平均が12.4パーセントに対して、愛知県では15パーセント、岐阜県が13.1パーセント、三重県が14.5パーセントと、東海3県はいずれも全国平均を上回った策定率との報道であった。
この調査においても、まだまだなのかというのが実感としてあるが、先ほどの答弁であった策定率の実績とこの保険会社の数値に、若干ではあるが差異がある。県独自の調査がどういう形で行われたものなのか伺う。
【理事者】
県独自の調査は、四半期ごとに実施している中小企業景況調査において、2年に1度、トピックス調査としてBCPの策定状況を中小企業に尋ねるものである。
この調査で対象とする中小企業は、中小企業基本法で定義する業種ごとの規模に準じており、県内に本社を置く小規模事業者を含む中小企業から無作為抽出した2,000社を対象としている。例えば製造業であれば、資本金3億円以下、または従業員300人以下の範囲で無作為に抽出を行っている。
その一方で、質問の保険会社による調査では、同社の契約企業を中心に全国の企業経営者7,553社に調査を行った結果であるため、回答する企業の規模等が県独自の調査と必ずしも一致しないことから、その結果も異なるものと考えている。
【委員】
県の景況調査、独自のトピックス調査として、2,000社を対象、これは無作為の抽出した企業で行っているとのことであった。
実際は全数調査でもないので、もう少し実質少ないのではないかと思うが、ただ一方で、私もいろいろな事業者の人に話を聞くと、このBCPの必要性を非常に感じていると肌身で感じている。その上で、何人かの経営者の人から言われるのが、余裕がなかなかない、必要性は感じていてもどこから手をつけたらいいかよく分かってない、また、お金も十分かけられない。こういった声を聞くことがあった。
そこで、県当局においても、このBCP策定に向けて啓発事業等、様々な取組をしていると思うが、これまでの取組と実績について伺う。
【理事者】
本県では、中小・小規模事業者へのBCPの普及啓発を目的に、2007年度に中小・小規模事業者向けのBCP策定マニュアルである、あいちBCPモデルを作成、公表しており、以降、工業団地向けの団地版あいちBCPモデルや新型コロナウイルス感染症対策あいちBCPモデルなどを順次追加している。
あいちBCPモデルは、記入例を参考に項目に沿って選択、記入していくことでBCPを策定できるマニュアルとなっており、文章での記載箇所を極力減らし、チェック式、選択式を多用していることから、ノウハウやマンパワーが不足している中小・小規模事業者にも利用しやすいものとしている。
あわせて、BCPの普及啓発を目的としたセミナーや出前講座を開催しており、昨年度までに、セミナーについては計28回延べ1,233人、出前講座については計93回延べ3,739人の人々が参加した。
なお、2016年度には東京海上日動火災保険株式会社との間で事業継続計画策定支援に関する連携協定を締結し、それ以降は同社と共催の形でセミナーを開催している。
このほか、名古屋市、名古屋大学等と2017年に設立した、あいち・なごや強靭化共創センターにおいても、BCP策定の考え方、方法、取組事例などを学ぶ講座を開催している。
【委員】
2007年からあいちBCPモデルとしてウェブ上でも公表しているので、私も見たが、非常に分かりやすい形になっていると思う。
これまでの取組状況等について伺ったが、策定に向かってどの程度つながっているのか、実績がまだまだ不十分な点もあると感じている。BCP、これをつくることがあくまでも目的ではない。いかに実効性のあるものにしていくかが大事だと思う。
その上で、作成した事業者の人と話している中で、より実効性のあるものにしていくためには、物品等、必要な備品等がどうしても必要になってくるとのことであった。東京都では1事業所当たり1,500万円を上限にして2分の1の助成をする、BCP実践促進助成金を設けていた。私も東京都の関係者の人に聞いて、大変大きな金額だと思ったが、それでもこういったものが、一つ実効性のあるものに取り組む、インセンティブが働くものにもなっていると感じたところでもあるので、愛知県として、ここのところの取組ができていないと思うが、どのような考えになっているか伺う。
【理事者】
BCPの策定そのものがゴールではなく、その内容がいかに実効性のあるものかが大変重要なポイントである。東京都にヒアリングしたところ、当該助成金については、保存食、保存水などの備蓄品やポータブル蓄電池が申請事案として多く、1件当たりの平均交付額は約90万円だった。
本県としては、商業振興事業費補助金において協同組合や商工会などが実施する事業の中で防災に関する取組を補助対象としているほか、げんき商店街推進事業費補助金においても市町村がまちづくり計画等に基づき実施する事業の中で防災対策事業を補助対象としている。
こうした取組に加えて、次年度に向けて中小企業のBCP策定率向上に直結する取組をさらに加速していけるよう検討を進めていく。
【委員】
愛知県としては、協同組合、商工会において、商業振興事業費補助金、また、げんき商店街推進事業費補助金、こういったものを使いながら防災対策事業費としての補助はしていることが分かった。それでも東京都のようにBCPを策定した、その一事業者に対してダイレクトではない。今後、検討していくとのことなので、ぜひお願いしたい。
そうした中で、2019年より中小企業庁が事業継続力強化計画認定制度、通称ジギョケイを創設している。BCPとの違い、制度の特徴と、併せてジギョケイを県としてどのように捉えているのか伺う。
【理事者】
BCPは、会社を取り巻くリスクの整理、重要業務の絞り込み、復旧計画の策定など網羅すべき範囲が幅広い一方、事業継続力強化計画、いわゆるジギョケイについては、BCP策定の前段階となる防災・減災に対する事前対策の検討と実行が中心となるため、BCPと比べて作成が容易なことが最大の特徴である。
また、ジギョケイは経済産業省が計画を認定する仕組みがあり、その認定を受けた中小企業は税制措置や金融支援、国の補助金の加点措置などの支援策が受けられるメリットがあることも特徴である。
本県におけるジギョケイの認定件数は本年8月末現在の累計で5,006件となっており、東京都や大阪府に次いで全国第3位となっている。BCPよりも策定が容易なジギョケイはBCP策定に向けた有効な最初のステップであることから、企業の実情などに応じて具体のBCP策定を支援するあいちBCPモデルと連携して活用することにより、より効率的な支援につながるものと考えている。
【委員】
この中小企業庁が進めている事業継続力強化計画認定制度、ジギョケイを県当局においても大変よいものとして、推奨している立場であった。私も先日、中部経済産業局産業部経営支援課に行って、ジギョケイについて伺った。
全国で3番目の状況で、昨年も5,006件の実績が県内にある。その中で担当者の人から、BCPの簡易版ではあるが、低利の融資制度を受けられることが非常にメリットになっていると感じている話を聞いた。ここは大事なことだと思う。
BCP自体の重要性を、それぞれの企業経営者の人も感じているが、時間がないとか、それぞれ理由がある。低利の融資制度を受けられることが、自身の経営にも資するメリットとして感じてもらえれば、一つの取り組むきっかけになっていく。事実そういう状況がある。
その上で、愛知県のBCPのホームページを見てみると、先ほどのあいちモデルはあるわけだが、ジギョケイはなかった。推奨していく立場でもあると思うので、できれば県のホームページに中小企業庁のジギョケイに飛べるようなリンクを貼って、BCPをつくる前に、この簡易版のジギョケイに取り組んでいくような、そういう流れをつくってもよいのではないかと感じたので、ぜひともホームページに追記、または紹介してもらえるような取組をお願いしておくと同時に、考えを聞いておきたい。
それと、このBCPを進めていく上で、ジギョケイがまずは入門、最初に取りかかりやすいものである。あわせて、認定制度があるので、私は県の様々な公契約において入札事業者の人々にも、ジギョケイをつくっている、この認定をもらっている人については、こうした競争入札等の審査の加点するような取組をしていくと、また少し取組の率が上がっていくのではないかと思うところがあるので、その二点、どのように考えるのか。
【理事者】
本県では、BCPの普及啓発セミナーにおいて、2022年度以降、ジギョケイの策定をテーマの一部に取り入れたカリキュラムを実施しているほか、県の融資制度においてもジギョケイの認定を受けた中小企業に対する低利の融資メニューを設けている。
ジギョケイはBCP策定の第一歩として、その策定率の向上につながる有効な取組であると考えているので、県のウェブページにおいても積極的にPRしていきたい。
また、本県としても、ジギョケイの認定を受けた事業者に対する新たなメリットとして、企画競争や入札参加資格審査などにおいて、ジギョケイの認定を受けていることを加点措置として評価するよう調整したい。まずは局内での事案において、次年度以降から適用できるよう取り組んでいきたい。
【委員】
先日の一般質問では、防災面でドローン等の最新技術は災害時にも活用できるツールであることと、発災時には被災者の救援に即座に役立つものであるため、ぜひ活用してもらいたいと質問した。それを踏まえて今度は物流の運用など、開発面から質問する。
経済産業局としては、今回、あいちモビリティイノベーションプロジェクト、空と道がつながる愛知モデル2030で、ドローンを活用した物流サービスの長期事業化調査の実施について、本土と離島間の多頻度配送の検証をすることになっている。ドローンや空飛ぶクルマ等の次世代空モビリティの社会実装の早期化を図るとともに、自動運転との陸モビリティと同時制御により創出する新しいモビリティ社会、愛知モデルの構築や、次世代空モビリティの基幹産業化を目指し取組を推進しており、物流ドローンの社会実装初期のビジネスモデルとなるローンチモデルの実現に向け、物流ドローンを活用した配送サービスをユーザーへ約1か月間、10月7日から11月5日まで提供すると聞いている。実際の社会実装を想定した課題の抽出や分析を行うとしているが、目視外の飛行を行う予定なので、様々な課題が予見される。そこで懸念することを幾つか伺いたい。
まず、ドローンは通信環境の安定が必要となってくるが、風や天候の変化により影響を大きく受け、通信が途絶えた場合にどうするのか伺う。
【理事者】
ドローンの飛行の安全性の確保について、まず前提として、ドローンの運航を行う事業者は、機体の点検や整備、操縦士の操縦練習や操縦のルールの遵守、安全確保のための体制構築をはじめ、飛行方法や飛行場所に応じて生じる飛行リスクを事前に検証するなど、安全に万全を期して調査を行っている。
通信に関しては、今回の事業化調査ではドローンは複数の電波により操縦士と通信可能となっていることに加えて、万が一、いずれの電波も通信できない場合には、ドローンが自己位置に基づいてあらかじめ決められた飛行ルートを飛行するようプログラムしている。
【委員】
飛行リスクの観点から複数の電波で飛ばすとのことだが、運航上の注意点や現時点での課題については、どの辺りが課題と思っているのか。
【理事者】
今回の事業化調査での注意点、課題については、愛知県として1か月にわたる長期の事業化調査は初であり、期間を通じてドローンを安全に飛行させていきながら、物流ドローンのビジネス化に向けた運航オペレーションを確立していくことが重要と考えている。
特に運航オペレーションに関しては、人を配置することでより安全な体制を構築することができるが、他方で費用のかかる体制となる。そのため、調査期間を通じて省人化につながる技術等を採用しながら、安全性と運用コストの検証をしていく。
【委員】
物流ドローンの運航オペレーションで人を配置することについては、省人化ができるように考えていくということだが、実際ドローンで運搬された荷物に対して、ドローンを飛ばすときの人、物を積み込んで飛ばした先での受け取り、着陸した後の受け取りを誰かが行うのか。そこにはどうしても人を配置せざるを得ないと思うが、その辺り、誰が行うのか、荷物を受け取った後、配送先まで持っていくのは誰がするのか教えてほしい。
【理事者】
今回については、ドローンで運搬された荷物の受け取りに関しては、ドローンによる荷物が離着陸場に到着後、発注を行った事業者が離着陸場に来て荷物を受け取り、各事業所に自ら運ぶことを想定している。
なお、調査の初期段階においては運航事業者が配置され、荷物の受け取りの補助を行う予定であるが、後半では運航事業者は配置せず、荷物を受け取る事業者だけで対応する予定である。
【委員】
発注を行った事業者が荷物を受け取るが、今回、医療品も配送するので、温度管理など様々考えられると思うが、その辺りはどのように考えるのか。
【理事者】
医療品に関しては、温度管理や、それ以外にも配慮すべきことがあるので、ドローンで運べるものと運べないものを分けつつ、ドローンで運べるものはドローンを使って運び、受け取りは診療所の看護師が受け取るオペレーションを考えている。
【委員】
逆に診療所の看護師だと、また負担が増えてしまうと心配である。飛行上や運航上のトラブルが起こったときに、どういう形で対応できるのか心配であるが、試行期間の前半は運航事業者がついている。しかし、後半はそういう人がいない中での運航となると、飛行トラブルがあったときの対応が気になる。離島まで運搬していく、海の上を越えていくことを考えると、そういったところも考えておかなければいけないと思うが、その辺りはいかがか。
【理事者】
運航上のトラブル、配送中の荷物の損傷といったトラブルも考えられるので、それらについては運航事業者が補償を行い、次の便での配送などの対応を行う予定である。
このほかにも、ドローンもしくは配送した荷物の盗難も考えられると思うが、今回、離着陸場に置かれたドローンもしくは荷物について、佐久島側では離着陸場がフェンスで囲まれているため施錠により管理を行う。また、一色漁港側については人の配置を行っており、人の配置や倉庫への保管によって対応しようとしている。これら以外にも様々なトラブルが生じることを念頭に置きながら、ドローンの飛行環境や飛行状態を常時複数で確認しながら必要な対応を行うことにより、万全を期して事業化調査を進めていきたいと思っている。
1か月にわたる調査期間中に生じるトラブルに対しては、そのような課題の抽出も、今回の事業化調査の、調査の目的であるので、安全を第一としながら、県としても運航事業者とともに対応して、併せて技術面や運用面での検証を行い、今後の物流ドローンの事業化を見据えて取り組んでいきたいと思っている。
【委員】
ドローン、機体としては、大きなバッテリーを乗せ込むことができないと想定しており、20分ぐらいしか飛行できないのではないかと想像するが、電源の供給や安定した通信の確保について伺う。
【理事者】
バッテリーに関しては、今回、一色漁港から佐久島までが大体15分から20分ぐらいの飛行になる。バッテリーの減りを考えると、荷物は5キロぐらいまでで運用しようと思っているが、1回、1往復まで行かず、片道でバッテリー交換しなくてはいけないので、今回だと日用品や食料品の配送を担う農業協同組合のJA西三河佐久島支店の人にバッテリーの交換も行ってもらうオペレーションを考えている。充電は、そのバッテリーの予備をJA西三河佐久島支店に置いているので、JA西三河佐久島支店側で充電し、それを交換するオペレーションを考えている。
先ほどの通信に関しては、複数と言ったが、3本で冗長性を担保していると考えている。
【委員】
ドローンのバッテリー交換は、片道で取り換えないといけない、1往復するだけの電力供給ができない状況での社会実装を目指した実験で、省人化からすると、その辺も課題かと今の答弁でよく分かった。どうしても自動で行えないところをどうするのかも、今後、社会実装が早くできるようにするためには大きな課題と思う。国土交通省も3次元データの活用などを推進している。早く社会実装ができるように、できるだけ前倒しに検証していくよう願い質問を閉じる。
【委員】
知の拠点あいちについて伺う。付加価値の高いモノづくりを支援する研究開発拠点として、モリコロパークの近くに整備された。あいち産業科学技術総合センター、あいちシンクロトロン光センター、それから実証研究エリア、この三つがある。
万博の跡地利用、正確に言うと万博の跡地ではないと思うが、2012年にあいち産業科学技術総合センターがオープン、翌年にあいちシンクロトロン光センターがオープン、3年後ぐらいに実証研究エリアができたが、それぞれの施設について、これまでの成果を検証したいので質問する。これまでの実績と今後についてどういう考えか、端的に答えてほしい。
【理事者】
知の拠点あいちの三つの施設の成果と今後の考え方について回答する。
まず、あいち産業科学技術総合センターについて、こちらでは依頼試験等の業務を行っている。県内8か所の技術センター、試験場全体の依頼試験等の件数は、昨年度15万7,694件、技術相談・指導件数については4万7,701件となっている。このうち6から7割が、中小・小規模企業の利用となっている。このほかにも、各産業分野の技術課題に取り組む研究を65のテーマで実施している。
具体的な成果としては、刈谷市の産業技術センターにおいて、県内のプラスチックリサイクルメーカーである株式会社イハラ合成との共同研究により、技術課題を解決し自動車部品の廃材から3Dプリンター用のフィラメントを開発した事例がある。
次に、あいちシンクロトロン光センターについて、具体的な成果について回答する。
リチウムイオン電池について、充放電を1,000回繰り返した場合と長期間保持した場合の、それぞれの電池の容量の低下の原因を突き止めて、電池の能力向上に貢献した。
また、実証研究エリアについては、知の拠点あいちで実施している重点研究プロジェクト第4期、現在行っているプロジェクトにおいて、セミクローズド温室でのトマトの栽培について、光合成におけるCO2の利用効率を最大化することで、高収量、高品質なトマト栽培とカーボンニュートラルの実現を後押しし、製品化の前段階に当たる技術確立の段階に至っている。
続いて、各施設の今後の考え方について答える。
まず、あいち産業科学技術総合センターについては、今後もより多くの中小企業に利用してもらうために、センターでの研究成果の報告会や技術普及セミナーで優良事例を紹介するなど、引き続きセンターの有用性のPRに努めていく。
あいちシンクロトロン光センターについては、2013年3月のオープンから10年以上が経過しており、設備全般のオーバーホールが必要となっていることから、必要な修繕を進めていく。また、技術の進歩に合わせた機器の高度化への対応も急務となっており、例えば原子レベルでの二次電池の評価・分析ニーズの高まりを受けて、電池評価に特化したビームラインの新設等についても検討していきたい。
最後に、実証研究エリアについては、次世代バッテリーに関連した取組を県としても昨年11月から始めたが、企業ニーズの高い二次電池の安全性試験、充放電試験施設について民間活力を活用した設置の検討など、さらなる有効利用について検討していく。
今後も、知の拠点あいちが本県企業にとって研究や技術開発の総合支援拠点となるように、STATION Aiと連携を図りながら業務内容の充実に努めていく。
【委員】
あいち科学技術総合センターに業務依頼された内容が15万7,000件余、それから技術支援が4万7,000件余で、中小・小規模企業が頼ってきており、モノづくりの愛知、大手だけでなく中小企業、いわゆる子会社、孫会社、そういったところにまで行き届く支援ができていると思う。
先ほどの成功事例として、3Dプリンター用のフィラメントに自動車部品の廃材を利用できたような話があったが、重点研究プロジェクト計画期間の第5期になると思うが、このプロジェクトがいろいろ多岐にわたる内容で研究されて、企業も絡んでいろいろな形でやってきたと思う。いま一歩のところまで来ているものがどのぐらいあるなど、そういった内容を伺う。
【理事者】
知の拠点あいちで実施している重点研究プロジェクトの成果について、製品化の手前まで来ているものがどのぐらいあるか回答する。
第1期から第3期までは、製品化に至ったものが合計で64件ある。現在行っている第4期のプロジェクトは、2022年度から24年度、今年度が3年目、最終年度となっている。このうち昨年度末の状況であるが、製品化の一歩手前の技術確立の段階に至っている件数は31件となっている。今年度はまだ研究期間が残っているので、製品化に向けて現在プロジェクトを進めている。
【委員】
既に製品化が相当できていることを聞いて、本当にこの施設の有効性、正解だったことが理解できた。第5期に向けて、また新たな研究をやっていくことになるが、しっかりとやってもらいたい。
先ほど今後の取組内容の中で、より多くの人に周知する報告会や、事例紹介を引き続き実施するという話があった。これまではホームページ上で出し、経済産業局が発送するメールマガジンなど、そういったところに事例紹介をやっていたと思うが、最近はDX社会になっており、広げようがあると思うので、その辺の考えを伺う。
【理事者】
知の拠点あいちでのデジタル技術を活用した、より一層の普及啓発であるが、先ほど近藤裕人委員からウェブページでの情報発信やメールマガジンを使った情報発信の話があった。少しDXとずれるが、例えば重点研究プロジェクトだと、実際に作った試作品や各研究テーマの研究実績などは、各センターで展示をして情報発信等も行っている。
また、DXについては、成果報告会や技術普及セミナー等の実施で、対面と併せてオンラインでの参加も実施しており、より多くの人に聴講してもらえるように現在もしている。今後もそういった、また新たな方法等も含めて、より普及ができるように検討していく。
【委員】
次に、シンクロトロン光センターについて伺う。
先ほどリチウムイオン電池についてかなりの研究成果があった。実績を見ても相当利用されており、施設を使ってもらえるのは大変よいことだと思う。一方で、私が一番心配したのは物が古びてしまう、計測施設はどこに行っても大体型落ちになってしまうという表現をする。以前のヒアリングでは、シンクロトロン光センター自体はそのようなことにはならないが、周りの施設を高度化していかなければならないと聞いたので、予算のかかる話ではあるが、モノづくり愛知のために、この物の更新についてしっかりとやってもらいたい。
運営について確認するが、シンクロトロン光センターは公益財団法人の科学技術交流財団が運営しており、会員制で、運営自体はきちんとやっているが、横の広がりという意味でクラブをつくり、法人会員が10万円や3万円といった募集もしていると聞いている。シンクロトロン光センターでの測定だけなのかどうかよく分からないが、先ほどのあいち産業科学技術総合センターの話と同様に、せっかくの研究成果なので、より多くの人たちに知ってもらうことが本当に大事だと思う。
シンクロトロン光センターでは、クラブとしてやっているが、一つのアイデアとして、昨日、内覧会があったSTATION Aiをより深くリンクさせて、愛知県のモノづくりのコアな技術、すばらしい技術をスタートアップで活用してもらえる、そういうことをしてもらえるとよいと思うが、そういった考えについて何かあれば教えてほしい。
【理事者】
モノづくり企業について、STATION Aiと知の拠点との連携だと思うが、私どもも、昨日、入居が始まったSTATION Aiとの連携は非常に大切なものだと考えている。どういった連携をしていくかは、今後、検討していく段階ではあるが、例えば先ほどあった重点研究プロジェクトなどについても、スタートアップ企業の人にも賛同してもらい、できるだけ多く参加してもらいたいと思っているし、そうした場合に知の拠点にある高度計測分析機器やシンクロトロン光センターを利用してもらうとともに、STATION Aiの、様々なプログラムをうまく活用しながら進めていけるような連携を今後考えていきたい。
【委員】
すぐリンクするのはなかなか難しいが、アイデアとして思うのは、あいち産業科学技術総合センターの建物の中で、昨日のSTATION Aiのようなフリースペースを置いておいて、科学技術交流財団がやっているクラブのような、自由に出入りができるようなスペースをつくって、企業勤めの人、技術者が交流し、ふとしたことでとてもすばらしいアイデアが出てくる、これがまさにオープンイノベーションだと私は思っているが、このことがここでできてもよいのではないか、別にSTATION Aiだけではなくてもよいのではないかと思う。ここでやっている研究成果は、拾ってみればすごい宝石、すばらしいものになると思うので、ぜひとも検討してもらいたい。
あわせて、実証研究エリアについては、スペースも広いが、企業ニーズの高い次世代バッテリーの二次電池の安全性試験充放電試験施設について民間活力を活用した設置に検討など、さらなる有効利用について検討していくという説明があった。これも当局でいろいろなことを考えていると思っている。
私はヒアリングの中で、先ほど委員が取り上げたドローンをここでもやるのかと聞いたら、少し狭いとの話であったが、こういったスペースがあることを知らない企業もひょっとするとあるかもしれない。こういった平場でいろいろなことができることもぜひ周知してほしい。先ほどの公益財団法人の科学技術交流財団でやったような内容について、6月と7月にAichi Sky Expoで展示会があった。6月はAXIA EXPO 2024、水素・アンモニア次世代エネルギー展があったし、それから7月にはニュースダイジェスト社の主催でロボットテクノロジージャパン2024が開催された。それぞれ当局も参加して絡んでいるが、この展示会では、本当にすごい熱気を感じることができ、財団の絡みですばらしい企業の研究成果が形になっていると思う。観光コンベンション局も集客について一生懸命やっていると思うので、しっかりと連動して、愛知県が発展するような活動を要望する。
【委員】
私は亜炭について質問する。
亜炭は岩木とも呼ばれ、およそ2000万年前、地域の植物が火山活動や地殻変動により地中に埋まり、強い圧力や地熱などの影響で炭化したものであり、褐炭の一種で炭化度合いが低く、不純物や水分を含めた発熱量は低いが、家庭用の暖房や燃料として重宝され、この東海地方では日本最大の亜炭の産地と言われ、この地域を代表する産業である陶磁器、または繊維産業等々含めて、生産に関しても亜炭は産業を支える安価な重要なエネルギーの資源であった。
その亜炭生産の中心であった尾張炭田といわれる愛知県と、美濃炭田といわれる岐阜県で、日本の亜炭の約40パーセント前後を産出したともいわれ、愛知県に関しては名古屋市名東区、守山区、小牧市、春日井市、長久手市、日進市、尾張旭市など尾張東部に広く分布している。その亜炭も1960年から70年にかけて原油による代替エネルギーにより燃料としてのその需要を失い、炭鉱は次々と閉山されていったが、広大な面積に及ぶ亜炭の跡の正確な把握は難しく、現在でも尾張東部地域では亜炭の陥没事故が相次いでいる。
まず、ここ10年で亜炭の陥没事例はどの地域で何件発生したのか伺う。
【理事者】
国において、地表から深さ50メートル以内の亜炭鉱の採掘に起因する採掘跡、または坑道跡の崩壊による局所的な陥没を特定鉱害と整理しており、現在は国が指定した指定法人が特定鉱害の復旧工事費を補助する特定鉱害復旧事業が運用されている。
愛知県では、2014年から2023年までの10年間で、この特定鉱害に59件が認定されており、認定件数の多い順に、小牧市、春日井市、尾張旭市、長久手市、名古屋市、豊田市、日進市、犬山市の8市で発生している。
【委員】
私は長久手市なので、4年連続1件ずつ毎年のように発生しているし、過去にはたしか2002年か2003年だったか、マンションごと倒壊した事例もあるし、万博の際には、原因不明だが、グリーンロードが陥没した事例もある。その中で、住民の人たちから、もし陥没したときや、何か発見したときにはどうすればよいのかというような質問等が多々ある。
次に、それらの陥没事例が発生した場合に、国と県と市町村、どのような役割分担をして、そしてどのような手順で認定かつ復旧工事が進められていくのか伺う。
【理事者】
この特定鉱害復旧事業においては、陥没事案が発生した場合に、陥没箇所の土地の所有者がまずは所在する市町村に連絡を行う。そして、その市町村から指定法人である、あいち産業振興機構に連絡が入った後、国、県、該当市町村及びあいち産業振興機構の4者によって現地の合同調査を行い、特定鉱害に当たるかどうかを確認した上で国が最終的には認定の是非を判断する。
この認定結果については、指定法人であるあいち産業振興機構から該当の市町村に通知され、亜炭鉱跡の特定鉱害に当たる陥没被害と認定されたら市町村によって復旧工事が実施される。市町村が要した費用については、あいち産業振興機構から市町村に対して補助金を支払うような流れになっている。
【委員】
これは、きちんと図面にしないと分からない。市民の人たちの第一義的な窓口は市町村になるが、例えば春日井市だとホームページにしっかりとフローチャートが描いてある、何かあったときにはここでとあるが、長久手市に関してはなかなか分かりにくいし、どのような流れでどのような復旧作業が行われるかを、ほとんどの住民の人たちが知らないにもかかわらず、この10年で59件も起こっているのは、ある意味、どこが責任者か皆分からない、市なのか、国なのか、産業機構なのか。基礎自治体の市町村に、県からでも国からでもいいが、しっかりと指示して、ホームページでまずきちんと開示して、何かあればここでこのようになるとすべきだと思うが、県から指導はできないのか。
【理事者】
まずは、この事業は国が鉱業権の採掘権の許認可を持っているので、国が情報を持っている。
市町村は、実際には、それぞれどこに亜炭鉱があるかというのは、通常の事務では、情報は入手することができない。国と市町村が直接やり取りするのも難しいこともあるので、本県としては、国と県と市町村と指定法人であるあいち産業振興機構、4者が定期的に会議を開催して集まり、そこで、国の亜炭鉱に対する鉱害の対策事業の状況とか、それぞれの関係する市町で起きた、そういう陥没事案についてどのように対応したかは情報を共有しており、その場で必要に応じて議論するなど、情報をやり取りするようなことを進めている。
【委員】
もう一個、お金の流れであるが、基金をつくって修繕作業することで、国が73パーセント、県が26パーセントを出資して約1億2,000万円の基金を積み立てながら、それを崩しながら行っていくとのことだが、この10年ぐらいで特定鉱害復旧事業等基金は、県から幾ら支出しているのか、また併せて当初の1億2,000万円ぐらいが残金として今どれぐらいあるのか伺う。
【理事者】
現在、ここ10年でいうと、2014年から2023年度の10年間における復旧工事費等に費やした補助の事業費は3,494万5,000円余りとなっている。そして、もともと総額として1億2,490万円で積み立てた基金について、現在、支出を除いた残高は令和5年度末で8,161万9,000円余りとなっている。
【委員】
まだあるが、もし、なくなった場合はどうなるか。
【理事者】
まだ支出実績を見ると、ここ数年ですぐなくなるわけではないが、他県の事例を見ると、枯渇したときには、国に要望して国でまた基金を積むような予算を組んでもらい、それについて県も同調して対応している事例があるので、そういったものを中心に検討していく。
【委員】
先ほど、国の中部経済産業局資源エネルギー環境部資源・燃料課が鉱区の有無や採択実績を把握しており、県や市は把握していないとあった。各基礎自治体が情報共有することはできないのか。
【理事者】
この事業については、国が鉱業権を持っており、どこに採掘の申請があったのかは国で把握しており、それを常時オンタイムで、国、県、市町村とで共有しているわけではない。だが、そういったものが必要である市町村があると思うので、今後とも国に働きかけていきたい。
【委員】
東日本大震災の際にも、宮城県など東北地方で、亜炭鉱の採掘跡が大きく揺れたときに数百か所、ネットで見ると300か所以上のような書き方をしているが、陥没事例が発生して大変皆が困った事例もある。愛知県においても、南海トラフの巨大地震を危惧する中で、同じようなことが起こる可能性がある。だから、ある意味しっかりとしたハザードマップを県と市町村が協力して作っておいたほうがよいと思うが、県の考えはどうか。
【理事者】
愛知県の市長会議や関係市が、鉱業権の許認可権を持つ国への働きかけを要望していることから、亜炭鉱に対する防災事業として、亜炭鉱跡の実態を把握するための調査及び、それに伴い必要となる重点工事を一体的に行う事業を実施することについて国への要請を行っている。
【委員】
過日、ほかの会議で春日井市の市長が、事前予防ができないかと、技術開発や予算を含めて、しっかりとお願いしたいといっていた。そういう意味では、ハザードマップを作るのが大事な中で、国で何か補助金がないかと調べていたら、国では令和3年度、南海トラフ巨大地震に備えた亜炭鉱跡対策事業として総額80億円、期間が令和3年3月から令和7年3月まで、国が10分の9、県が10分の1で地盤調査や陥没防止工事ができる予算づけを行っていた。それは、令和3年から令和7年なので来年で終わるが、県の実情、状況はどうなっているか。
【理事者】
当該事業は、調査や工事を行う市町村に対して国と県が補助金を交付するものである。2021年からこれまでに本県における市町村からの申請がなかったため、本県ではこれに対して予算措置等の対応は行っていない。
一方、国では、2025年度から28年度の4年間で、総額72億円となる南海トラフ巨大地震旧鉱物採掘区域防災対策強化事業を現在概算要求している。このような事業について、応募要件等の詳細を国から入手し次第、先ほど説明したような国、県、あいち産業振興機構で構成する連絡会議等を通じて情報提供していきたい。
【委員】
基金の執行状況、これもネットによる情報なのでどこまでが本当か分からないが、80億円もつけて、たしか採択は1件ぐらいしかなかった。ほとんどのお金が余っている。でも、先ほどの春日井市長みたいに、本来ならこのお金を使って、調査、予防や工事をやりたい人たちがいる。申込みがなかったのは、この制度が何かおかしいと思う。
この制度を申し込むに当たり、その必須条件か何か、ハードルがあるような気がするが、この制度の申込み概要を教えてほしい。ハザードマップをつけなければならないというのもたしかあったと思うが、それらも含めて教えてほしい。
【理事者】
概算要求が出たばかりで、あまり詳細は分かっていない。分かっているのは国が公募を行ったときに県が申請して、それについて国が補助金の10分の9、県が10分の1を持つことである。
【委員】
今の質問は、令和3年からの事業、80億円の質問で、何かハードルがあるから申し込めないというものである。
【理事者】
令和3年度からの事業の公募要件について答える。
詳細な公募要項は、今手元に持っていないので把握していないが、国に聞いたところによると、調査や工事というのが今回のこの補助事業の対象ではあるが、そこに至る前段階で、ある程度ハザードマップ的なものの整備が必要なニュアンスの答えであったので、そういったものを整備しているところが対象になると推測している。
【委員】
うがった見方をすれば、ハザードマップを持っているところは予算をつけるが、あとのとこはつけないと、ある特定の地域だけの補助金のような話ではいけなくて、南海トラフの巨大地震の対策をするための補助で80億円もついて、今度また72億円もつけるのであれば、しっかり愛知県にそのお金を落としてもらいたい。たまたま委員会のメンバーを見たら、小牧市、春日井市、日進市、長久手市と4人もいるので、80億円がほとんど未執行、また72億円がついても岐阜県にしっかりとついてしまう話、それはそれでいいが、我々の県でも10年間で59件も陥没事例がある以上は、しっかりとそのお金を使えなければいけない。
国に対して、県から、我々も一緒に頑張っていきたいと思う。共に力を合わせていきたいと思うがどうか。
【理事者】
我々としても対応できるところは対応していきたい。
【委員】
本会議の答弁で知事から、2年後、大河ドラマ豊臣兄弟!の放送があるので、歴史観光を推進していきたいとあった。現在、愛知県で展開しているあいち歴史観光デジタルスタンプラリーについて伺う。
あいち歴史観光デジタルスタンプラリーについては、1コース約2か月間でテーマに沿って約10か所を回って、そこに設置されたスポットでデジタルスタンプを集めるもので、時期をずらしながら10コース展開予定で、現在、4コースが展開中である。奥三河地方もコースに入っていて、スマートフォンでも情報が見れて、なかなか楽しいものだと感じている。さらにコース達成賞も何種類かあって景品が当たるなど、参加型として面白いのではないかと思う。
7月1日から順次始まり、現在6コース目が始まっているが、まず参加状況について伺う。
【理事者】
あいち歴史観光デジタルスタンプラリーは7月から順次始まっており、既に2コースは終わっている。現在4コースが実施中、今後4コースをスタートする予定である。
既に終わった二つのコースの状況について、コース1は、7月1日から8月31日に実施し、小牧・長久手の戦いをテーマに関連する10のスポットを巡るもので、520人が参加し、平均でコース内全10スポットのうち7.2スポットを訪問してもらった。7月16日から9月15日まで実施したコース2は、桶狭間の戦いをテーマにしたもので、438人が参加して、平均で11スポットのうち8.2スポットを訪問してもらった。現在、コース3以降を実施中であるが、現在のところ、参加者数はコース1、コース2を上回るペースである。
なお、この参加者の傾向を分析すると、8月までの状況ではあるが、県内からの参加者がおおむね9割、男性が6割ぐらい、あと40代、50代、60代が合計で7割から8割ぐらいの状況である。
【委員】
県内からの参加者がほとんどだが、この現状についてどのように認識しているのか。
【理事者】
県外からの参加者が大体1割ぐらいである。参考に、昨年度、一昨年度実施したどうする家康を活用したスタンプラリーは、県外からの参加者が大体2割ぐらいであった。これに比べて今回県外からの参加者の割合が減った理由としては、昨年はどうする家康の放送があったこともあり、今年度は2か月間という比較的限られた期間の中でコース内の広範囲に点在するスポットを回る必要があるので、これまでよりも難易度が上がった結果、県外から参加しにくい面もあった。とはいえ、少しでも多くの人に県外から参加してもらえるように、県外へのPRにも努めていきたい。
一方で、愛知は歴史の宝庫であることについて県民にも改めて理解を深めてもらいたい思いもあるので、そういった意味で多くの県民に参加してもらえたこともよい傾向だと思っている。
【委員】
この歴史観光に限らず、県民も、県内のまだ知らないことがあるので、いろいろ情報をもらえるとありがたいと言っている人もいた。そういう点では、いろいろ情報があって県民が喜ぶのはよいことだと思うが、反面、観光振興という点でいくと、県外の人に来てもらうことも大事かと思うが、このあいち歴史観光デジタルスタンプラリーについては、どのような形で情報提供を行っているのか。
【理事者】
あいち歴史観光デジタルスタンプラリーは、県の公式観光サイトや今年度新たに開設した歴史観光推進協議会の特設サイト、県や市町村等の公式SNSなどで情報発信を行っているほか、県内、あるいは岐阜県、三重県、静岡県、長野県などのJR東海在来線の車内広告、首都圏向けに首都圏の歴史好きをターゲットとしたインターネット広告の配信、歴史ファンが購読する月刊誌への広告掲載など、様々な方法で県外も含めてPRしている。
今後も県外でのPRとして、例えば首都圏や関西圏で開催する観光展など、様々な機会でしっかりPRしていきたい。
【委員】
どうする家康のときも、かなりPRをしたと思うが、数字的に見ると、県外から2割だったのかという気もしないでもない。PRに工夫が必要ではないか、歴史観光以外にも愛知県を見てもらうことも必要ではないかと思うが、そうしたとき、どうする家康から歴史観光に関しては、いえやすくんなど、結構派手な色合いで目にとどまるようなキャラクターを作っているが、このキャラクターをもう少しうまく活用できないのか。
例えば、ほかの県を持ち出して申し訳ないが、熊本県のくまモンは使い勝手がよく、申請すれば、熊本に関係すれば使えるみたいなところで、あれを見れば熊本がすぐ出てくると思う。愛知県で、使い勝手がいいキャラクター、みんなが使いたくなるようなキャラクター、みんなが知っているキャラクターがどれだけあるのか、あまりないのではないかと思うところがあり、例えば歴史観光のいえやすくんなどのキャラクターは今後良い活用ができないかと思うが、活用の方法や現在、展開を考えているところがあれば伺いたい。
【理事者】
2年前に、大河ドラマどうする家康を活用した誘客促進の取組の一つとしてキャラクターを五つ作った。いえやすくん、のぶながくん、ひでよしくん、ただつぐくん、おだいちゃんの5体である。大河ドラマどうする家康は終了したが、武将、お城、街道を絡めた歴史観光の推進に取り組むこととし、2年前に作ったキャラクターを一部リニューアルして歴史観光のPRキャラクターとして使っている。現在は、ウェブサイト、パンフレット、ノベルティなどで活用している。歴史観光推進協議会の構成員である市町村等も、このキャラクターを自由に使えるようになっている。
これらのキャラクターは幅広く愛知の歴史観光を周知する上で効果的だと考えており、今後、いえやすくんなどのキャラクターを見れば愛知の歴史観光が思い浮かぶよう、具体的にはこれからになるが、県でも積極的に使い、市町村等にも積極的に使ってもらえるように促していきたい。
さらに、再来年には大河ドラマ豊臣兄弟!の制作が決まっている。こういうところにもキャラクターを何らかの形で活用できないか検討していきたい。
【委員】
ほかにも、例えばユーチューブを見ていると、あいち歴史観光デジタルスタンプラリーについて一般の人が紹介しているようなことがあり、県内外に発信しようと思うと、ユーチューブの活用なども重要になってくるかと思うが、現在どのように活用しているのか、今後の展開について伺う。
【理事者】
ユーチューブを活用した情報発信は、県内外に幅広くPRする上で効果的である。歴史観光関係では、これまで、徳川家康と服部半蔵忍者隊やサムライ・ニンジャフェスティバルでもユーチューブを活用している。例えば、徳川家康と服部半蔵忍者隊では、オンラインツアーとユーチューブで県内の歴史関係を含む観光スポットを紹介する動画を毎月配信している。
全国の武将隊、忍者隊が集結するサムライ・ニンジャフェスティバルでは、イベントの様子をライブで配信している。ほかにも愛知の観光のPR動画の中で、名古屋城をはじめとするお城や有松などの歴史観光のスポットも併せて紹介している。
今後、ユーチューブの活用について、例えば、徳川家康と服部半蔵忍者隊は、毎月オンラインツアーを行っているので、その中で歴史観光のスタンプラリーやキャラクターなどを紹介することもいいと思っているし、ほかにもユーチューブの効果的な活用がないか検討していきたい。
【委員】
いろいろあるが、もう少しシンボリックなものがあるとそこから入っていけると、答弁を聞いて感想を持ったので、発信の仕方については、これから工夫してもらいたい。
今だとデジタル技術を使って仮想空間や拡張空間など、いろいろな技術があるので、そうしたシンボリックなものプラス、デジタル技術を使って、そこに行くと本当に楽しいよと思うことで実際に足を運んでもらうことなど、もっともっと観光の面でも技術を使って発信したり楽しんでもらったりすることができるかと思っているので、今回、あいち歴史観光デジタルスタンプラリーのことから歴史観光や観光全体の話をさせてもらったが、これからもいろいろ工夫してもらいたい。
【委員】
先ほど委員から亜炭鉱についての要望があり、春日井市の件にも触れた。ハザードマップについては、20年前から春日井市長と毎年ずっと要望してきたが、国から回答でずっとスルーされてきた。今回、この件を機に、ぜひよい方向へ進むよう私からも強く要望したい。
私はワーク・ライフ・バランスの推進について伺う。
日本の人口がどんどん減少する中で、労働力人口も減っていくわけだが、この人材確保のために注目されているのは定年延長と女性雇用だと思う。65歳以上の高齢者は、昨年度、統計で3,625万人、日本の総人口に占める割合は29.3パーセントで過去最高を記録したといわれている。就業している人も914万人で、現役で仕事している人は20年連続で増え続けている。私もそのうちの一人である。
女性雇用に目を向けると、日本女性特有のM字カーブ、結婚や子育てで離職する人が多いと言われる30歳から34歳で一番労働力が減って落ち込むM字カーブも、かなり緩やかになってきた。40年以上前になるが、私が結婚した頃は結婚や妊娠で女性が仕事を辞めるのは当たり前の時代であった。それから徐々に女性も自分の能力を生かそう、仕事を続けようという女性が増えてきた。ただ、日本の現状は、家事・育児の負担が女性に偏っていて、それが少子化につながっているのが現実である。
誰もが能力を最大限に発揮し、生き生きと働き続けられる社会を実現するためには、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて、多様で柔軟な働き方が選択できるようワーク・ライフ・バランスを推進していく必要があると考える。特に出産を機に、いまだ3割程度の女性が離職するなど仕事と育児の両立が課題であり、国においても本年5月に育児・介護休業法が改正され、育児期の労働者が柔軟に働ける職場環境づくりが企業に求められている。
そこで、仕事と育児の両立支援に向けて県としてどのように取り組んでいるのか伺う。
【理事者】
仕事と育児の両立支援に向けては、県はもちろんのこと、経済団体や労働団体等とともに地域全体で取組を進めることが重要である。このため県では労使団体等を構成員とする協議会を設置し、官民一体となって、あいちワーク・ライフ・バランス推進運動を展開している。
この運動は、毎年7月から11月までの期間に、仕事と育児との両立支援などワーク・ライフ・バランスの実現に資する八つの取組を企業に呼びかけ賛同を募るものであり、昨年度は4万6,523事業所の人たちが賛同した。
また、従業員の両立支援に積極的に取り組む企業を愛知県ファミリー・フレンドリー企業として登録し、その取組を専用サイトで発信している。さらに、登録企業の中で特に優れた取組を行う企業を表彰する制度に子育て両立応援部門を設け、テレワークを活用した柔軟な働き方の推進や男性の育児参画に向けた支援、部下のワーク・ライフ・バランスを応援する上司の育成など、子育て世代の男女が安心して働ける職場環境整備を企業に働きかけている。
このほか、男性従業員が育児休業を通算14日以上取得した場合に50万円、通算28日以上取得した場合に100万円の奨励金を支給する制度を昨年度から開始し、男性の育児休業取得促進に取り組む中小企業等を支援している。
【委員】
県における2023年度の男性育児休暇取得率は25.7パーセント、近年上昇傾向にあるものと伺っている。ただし、女性の取得率97.3パーセントと比較すると大きな乖離があると数字に表れている。今、八つの取組やファミリー・フレンドリー企業への参画を進めていると伺ったが、企業の規模別に男性の育児休暇取得率の状況を見ると、従業員が500人以上では全国平均で34.2パーセント、100人から500人未満で31.1パーセントとなっている。一方、5人から30人未満では26.2パーセントと、企業規模が小さいほうが、取得率が低い傾向にある。どうしても中小企業では代替要員の確保が難しく、取得しづらい現状が数字に表れていると思う。
近年、共働き世帯が増加する中で、今なお女性に偏っている育児負担を軽減し、男女が共に仕事と育児を両立しながら働き続けるためには、男性の育児休暇取得を支援することが重要な取組の一つであると思う。
あるコンサルティング会社の人がここ最近の状況を、今の若年層は育休を取ることに積極的であり、取得期間も数日育休を取るような、とるだけ育休ではなく、数か月取得することが前提の夫婦共に育児を行うための育休になっている。労働力が不足する中で、企業がどう対応するかで優秀な人材を採れるかが決まってくる。ぎりぎりの人員の頑張りで耐え抜く職場ではなく、働き盛りの男性が数か月単位で抜けても回るような職場にしていくことが重要だと言っている。
こうした傾向は女性の視点から見れば大歓迎で、特に核家族で夫婦しかいないとなると、出産で倒れている奥さんを誰がサポートするか、旦那さんしかいないわけである。せっかくこうやって若い人たちの意識が変わってきた今をプラスと考えて、大きくそれを後押しすべきだと考える。
県では、昨年度から中小企業等を対象とした男性育児休業取得奨励金制度を実施しているが、これまでの実績と、また、男性の育児休業取得促進に向け今後どう取り組んでいくのかを伺う。
【理事者】
中小企業男性育児休業取得促進奨励金は、昨年9月から申請受付を開始し、昨年度の支給件数は50万円が147件、100万円が450件の計597件、支給金額は5億2,350万円となっている。また、今年度の支給決定件数は、9月末現在で50万円が75件、100万円が285件の計360件、支給決定金額は3億2,250万円となっている。このうち、従業員30人以下の企業は、昨年度は33パーセント、今年度は38パーセントとなっており、規模の小さい企業にも多く活用してもらっている。
次に、男性の育児休業取得促進に向けた今後の取組について、まずは、中小企業が男性の育児休業取得促進に取り組むきっかけとなるよう引き続き奨励金制度を周知するとともに、あいち働くパパ応援サイトにおいて男性の育休取得促進に関する企業の取組事例を広く発信していく。
また、個々の企業の実情に応じた支援を行うため専門家を企業に派遣し、職場の理解促進や属人化した業務の見直しなどへの助言を行う伴走支援を実施するほか、企業経営者等を対象としたセミナーを通じて企業が男性の育休取得促進に取り組む意義などについて周知、啓発していく。
また、男性の育児休業取得を促進することは、休業者本人の仕事と育児の両立をかなえるだけでなく、企業のイメージアップ、人材の確保、定着につながるなど、企業にとっても様々なメリットがある。今後とも国や経済団体等の関係機関と連携しながら、男性が育児休業を取得しやすい職場環境づくりを中小企業等に促していく。
【委員】
かなりの金額と件数が出ているのが分かって、中小企業の数字も33パーセントから38パーセントに上がってきているので、これをずっと継続してもらいたい。
昔は、夫は外で働き、妻は家庭を守るべきと考えている人が多く、特に47都道府県では愛知県がトップだった。そういう堅い考えの人たちが多かった。それが日本女性特有のM字カーブをつくっていたと思うが、現在では、結婚しても出産しても仕事を続ける女性が少しずつ増えてきて、社会の常識は変化している。
夫は外で働き妻は家庭を守るべきという意識に異議を唱える人が増えてきて、その考えに反対という人が、10代から40代は60パーセント、全体でももう50パーセントを超えたそうである。20年前とはかなり意識が変わってきた。
23年度に募集した、はがき1枚からの男女共同参画の最優秀作品の中から子供たちの言葉を紹介する。これは子供たちが応募したものである。「男、女なんて関係ない、できる人がやればいい。」「なんでもえらべる社会へ。」「好きなことを『らしくない』で分類しないで。」これらの言葉を見たときに、若い世代の意識変革にとても頼もしいなと感じた。それでも現状は、女性の視点から見て、いまだに子育てや家事の分担、親の介護、また給料面においてもまだ格差が非常に大きく、女性ばかりの負担が多いという不満を抱えている。
先日の本会議一般質問で、大村秀章知事は、子育て世代は10年間で着実に増加し、中小企業への取組として大学で個別に説明会を開催し、女性が元気に働き続ける愛知を目指すと答弁している。
男女が共に子育てや介護などライフステージの各段階において、多様で柔軟な働き方を選択でき、安心して働き続けられる職場環境のより一層の整備を要望する。これは言い続けないと駄目だと思う。県の人たちも今しっかり取り組んで数字が上がってきているので、さらにこれがより一層伸びるように要望する。