委員会情報
委員会審査状況
県民環境委員会
( 委 員 会 )
日 時 令和6年10月2日(水) 午後0時58分~
会 場 第6委員会室
出 席 者
平松利英、村嶌嘉将 正副委員長
坂田憲治、伊藤辰夫、青山省三、いなもと和仁、ますだ裕二、
柳沢英希、高木ひろし、河合洋介、園山康男、阿部武史 各委員
県民文化局長、県民生活部長、学事振興監、人権推進監、
女性の活躍促進監、文化部長、関係各課長等
<付託案件等>
○ 議 案
なし
○ 請 願
第 17 号 「小中高生の新型コロナワクチン接種後体調不良者への合理的配慮を求める」について(県民関係)
(結 果)
賛成者なしをもって不採択すべきものと決した請願
第17号
<会議の概要>
1 開 会
2 請願審査(1件)
3 一般質問
4 閉 会
(主な質疑)
《一般質問》
【委員】
私からは多文化共生について質問する。
昨今の日本の労働力事情は刻々と変化しており、少子化による人口減少により、多くの分野の企業が人材確保に苦労しており、海外の労働力に頼らざるを得なくなった。現状においては、様々な国の外国人労働者を労働力の一つとして日本に呼び込み、多くの業種で仕事をしてもらっているが、それと並行して、日本人と外国人の宗教や文化、生活習慣などの違いにより発生するトラブルや問題、地域に溶け込めない外国人の困り事なども増加しているのが実情である。また、外国人同士の間で起きている問題、課題もあると考える。
愛知県は、モノづくり産業が国内でも非常に多く集積している地域であり、それに伴って技能実習生等を含めた外国人労働者やその家族も非常に多く生活し、その恩恵を得ている地域の一つである。外国を訪れた者は、生まれた国との文化や習慣、宗教の違いなど見知らぬ地で生活していく上で生じるストレスを、自助努力によって減らしていくことがまずは必要であり、また、外国人を同じ労働者として受け入れていく国や地域は、自国の文化や習慣、考え方などを外国人にしっかりと学んでもらう機会をつくり、同じ地域で暮らすことで発生する問題や課題を少しでも減らしていく努力をしていかなければならない。文化や習慣、宗教と様々な違いはあっても同じ人間であり、勇気を出して接してみれば、意外と同じ思考や人としての優しさもある。
ここで、私が10代後半に経験した、1年間、オーストラリアへ語学留学した話をする。初めは、現地オーストラリア人のホストファミリーと生活しており、日本の文化や日本人の習慣なども深く学び、理解していたため、温かく留学生である私を受け入れてくれた。オーストラリアでの生活の仕方や食文化、休日の過ごし方の違いをはじめ、第二次世界大戦での日本とオーストラリアとの戦争の話などもしてくれて、現地だからこそ学べる様々なことを教わることもできた。5か月後に同じ大学に通っていたタイ人や韓国人、インドネシア人とシェアハウスをした際は、言語の違いは当然あるものの、お互いの文化や生活スタイルの違いはあっても、それぞれがそれぞれを尊重し、理解することに努めることで楽しく生活できていたことを、今でもよい思い出として記憶している。
そのように生活できたのも、互いに尊重するといった気持ちや考えがあったからであり、そのような気持ちや考えをなくしては、どこであっても誰であっても幸せには暮らせないと思っている。今の日本を含めた先進国では、国内で足りない労働力を、外国人の力を借りて補わなければならない現状があり、また、労働力として来日する外国人には、日本の進んだ点や優れた点を学び、自国の成長に役立てたいという考えがあると思うので、互いに足りないところを補い合ってメリットを生み出し、互いにウィン・ウィンの関係性を構築できたらよいと考える。
しかしながら、現状はなかなかうまくいかず、国・県・市町村において多文化共生の取組を進めているところでもあると思う。
そこで伺うが、まず、愛知県内におけるここ数年の外国人の県民数は、どのように変化しているのか。また、国籍別で数字を把握していたら教えてほしい。
【理事者】
当県の外国人県民数は、新型コロナウイルス感染症の影響により、2020年6月末以降、減少傾向が続いていたが、2022年6月末以降は、増加に転じ、昨年末時点で、過去最高の31万845人となっている。国籍別では、最も多いのがブラジルの6万1,566人だが、近年、ベトナムが急増し、2022年6月末時点で中国を抜いて2位となり、昨年末時点では、5万8,076人にまで増加している。このほかネパール、インドネシアなど、アジア圏の増加も顕著となっている。
【委員】
コロナ禍後は、円安事情がありながらも、顕著に外国人の来日が増えている。新たにベトナムをはじめネパールやインドネシアの方が伸びてきており、以前より一層、複雑化してきている現状である。県内で外国人が増加し、複雑化してきている中で、県の設置している相談窓口には、どのような内容、困り事での問合せがあるのか。
【理事者】
県では、愛知県国際交流協会内に多言語による一元的相談窓口、あいち多文化共生センターを設置しており、昨年度は、3,489件の相談があった。相談内容は、出産、育児、結婚、離婚や住宅関係といった生活に関する相談が多く、全体の約5割を占めている。次いで多いのは医療、福祉で約2割であるほか、在留、労働、教育がそれぞれ約1割となっている。
【委員】
国籍が多様化しており、まずは第一である生活に直結する困り事が多いが数字から読み取れるので、その生活地域に身近な市町村への問合せが多いと思う。一昔前のように、日本と昔からゆかりのある南米、特にブラジルや中国、フィリピンといった国だけではなく、今日では、様々な国から来日する人が多い。例えば、高浜市には多文化共生コミュニティセンターがあるが、外国人県民の一次相談の窓口として対応する市町村、またNPO団体と、県はどのように連携しているのか。
【理事者】
県内の市町村では、外国人が集住している地域を中心に、36市町において多言語による相談窓口を設置しているが、対応できない言語で相談があった場合や多言語相談に対応してない場合は、市町村の窓口からあいち多文化共生センターに電話してもらい、三者通話による通訳支援を行っている。
また、相談内容に応じて、日常的に連携している外国人支援を行うNPO団体等を紹介するなど、相談者に寄り添った支援をしている。
【委員】
各自治体、NPO団体とも連携して、外国人に寄り添った形で相談に当たっているようだが、現在、愛知県では第4次あいち多文化共生推進プランを進めており、第1次から第4次までの間に刻々と時代が変化し、来日する外国人の国籍も変わり、増えてきている中で、取り組むべき課題も変化しているかと思う。現在、特に愛知県として力を入れている課題、取組には、どのようなものがあるのか。
【理事者】
2022年に策定した第4次あいち多文化共生推進プランに沿って様々な取組を推進しているが、中でも最も大きな課題が言葉の壁であると考えており、持続可能な地域日本語教育推進体制づくりに力を入れて取り組んでいる。具体的には、県が市町村と連携して、ほとんど日本語が分からない大人向けの日本語教室をモデル的に開催する初期日本語教室モデル事業を2018年度から実施しており、2023年度からは、従来の1市町村から3市町村に対象を拡大して実施している。
また、日本語教育の専門家である総括コーディネーターも、今年度から1人増員して、2人体制で地域日本語教育の推進に取り組む市町村を支援している。
【委員】
日本語をしっかりと習得してもらえるようにという話である。先ほど述べたように、私の留学時は、語学の習得が目的であったので、あまり不便を感じなかったのかもしれない。現在、来日している大半は、まず仕事が目的で来日している人が多いと考えると、日本語がままならない状態で来日し、言葉があまり通じないことによって、生活にさらに支障が出てしまっているのは、よく理解できる。言葉の壁から発生してしまう相談事を減らすためにも、日本語が少しでも習得できるように、引き続き尽力してほしい。
多文化共生という考えは、日本国民への周知や考え方のグローバル化への対応や理解を促すだけではなく、来日する外国人にも、訪れる国の宗教や文化、生活習慣などの違いをしっかりと理解してもらわないと両立しないものだと考える。一つの地域に多くの同一外国籍の人々が流入した場合、その地域は、その人々の国の文化や考え一色になってしまうことが考えられる。そうすると、昔からその地域に住んでいた日本人のほうが肩身が狭くなり、最悪のケースでは、日本人が別の地域に転出を考えなければならないことも懸念される。それが、今、ネットでも取り上げられている埼玉県川口市の問題であると思う。
愛知県内でも、同じようにならないことが大切であり、もし一つの国の外国人が多くなっても、しっかりと日本の文化や習慣、ルールを守ってもらえるように指導でき、多文化共生を理解して、その地域で核となる外国人を育て、増やしていかなければならないと考える。愛知県では、そういった面からの人材育成などをどのように考えて取り組んでいるのか。
【理事者】
多文化共生社会づくりには、日本人県民と外国人県民が、互いの文化や習慣の違いを理解し合い、外国人県民にも、地域の担い手として活躍もらうことが大切だと考えている。こうしたことからも、県が設置促進に取り組んでいる地域の日本語教室は、地域で暮らす外国人と日本人が交流し、互いに異なる国の文化や生活習慣などの違いを理解し合うとともに、外国人が生活に必要な様々な知識を学ぶ上で、大変有効な場である。
また、県では、毎年11月をあいち多文化共生月間と定め、多文化共生の理解促進を目的としたイベントである多文化共生フォーラムあいちを毎年開催している。今年度は、一宮市との共催で11月4日に開催を予定しており、市内に住む外国人キーパーソンにも、トークセッションのパネラーとして登壇してもらう予定である。このほか小中学生向けに多文化共生理解のための教材を作成しており、県内の小中学校で活用してもらえるよう働きかけを行っている。
【委員】
ここからは所管外なのかもしれないが、要望したい。
現状、日本では、多くの外国人が多くの職種に就いている。そこには、無論、接客業なども多くある。コロナ明けによるインバウンド需要の高まりもあり、海外からの来日外国人が増加してオーバーツーリズムになっており、各観光地でも多くのトラブルが発生している現状がある。
また、愛知県においても、これからアジア・アジアパラ競技大会、そして技能五輪国際大会などの開催が控えているので、ますます諸外国から来日する人々も増えてくると思う。現在、取り組んでいるそのキーパーソン育成について、そういった課題解決の一つの糸口として、そして、懸念する大規模災害の発生時にも地域で活躍する日本人と外国人の間の架け橋となるように、そういった人材を一人でも多く育てることをお願いして、質問を終わる。
【委員】
私からは、女性活躍に積極的に取り組むあいち女性輝きカンパニーと県内の女子大学生との間で実施された交流会について質問する。
今月初旬に、一般質問の準備で防災DXについて調査するためにデジタル庁を視察した際、一緒に女性活躍推進についても話を聞いた。台風が来たため、オンラインでの1対1での視察となったが、デジタル庁のインナーコミュニケーション、組織文化をつくっていく女性の担当者に話を聞いた。
ちょうど県内視察でも株式会社アイシンを視察し、株式会社アイシンには株式会社アイシンのカラーや組織文化があるように、例えば、株式会社ユニクロであれば株式会社ユニクロの特徴などがあると思うが、視察の担当者が、そういった組織文化をつくっていくチームの担当者であった。
デジタル庁は、できてまだ3年程度の若い組織だが、中央省庁は、どうしても国会の答弁作成などで長時間労働になりがちである上、デジタル業界、IT業界自体が、システムを組むなどで、かなり長時間労働になりがちであり、ワーク・ライフ・バランスには、相当気を配っているようであった。
話を聞きながら、女性活躍推進が目覚ましいポテトチップスのカルビー株式会社の例などを話題にして、様々な意見交換をした。例えば、カルビー株式会社では、女性の役員が、子育てのために率先して16時に帰って長時間労働を撲滅する企業文化があり、デジタル庁でも勤務時間の管理には、相当気を配って取り組んでいるとのことであった。
近年、ビジネスの世界では、心理的安全性という言葉が注目を集め、この言葉に関する本が、数々出版されている。心理的安全性は、自分の考えや意見などを、組織のメンバーの誰とでも率直に言い合える状態のことを指す。カルビー株式会社などでは、例えば、女性の工場長が、子育てと仕事の両立について、三交代制で回っている工場の中で、どうやってチーム、組織をつくっていけばよいのかといった悩みに直面するそうである。そこで、オンラインの女性班長限定のコミュニティーを開設し、その場ではどんなことでも話しても構わないという心理的安全宣言をして、育児の裏技や子供の教育のアドバイス、そして、ほかでもない仕事の悩みなどを、女性の班長同士が一緒に悩みながら互いに助け合って成長していく、そんな場ができているそうである。
全く逆の状態をサッカーのJリーグの例でいえば、負ければ降格し、自分も解雇される、クビになってしまうという失敗が許されない状況だと、チームもぎすぎすして、プレーも萎縮してしまう。うまくいっていない組織、倒産の危険が潜んでいる企業などは、言うべきだけど言いにくいことが言えなくなってしまう。
だからこそ、デジタル庁では、様々な官公庁からの寄せ集めの組織だという現実を踏まえて、心理的安全性を保ち、お互いに理解しながらチームとしてつながれる取組をしているとのことである。
私も、仕事や職場で様々な失敗を経験して痛感したが、例えば、女性が給湯室などで話すことなどにも耳を傾けなければならないし、そういったことを率直にオープンに言える場所、言ってもらえる場所、心理的な安全性が確保されている場が大事だと、まさしく組織を構築している途中のデジタル庁で話を聞いて思った。
県では、あいち女性輝きカンパニーと県内の女子大学生との間で交流会を実施しているが、まさしく学生と社会人とで心理的安全性が確保され、率直に話ができる環境が整った本当によい会だと、ネットでの報告記事を読んで感じている。
そこで、女子大学生とあいち女性輝きカンパニーの交流会について、その具体的な取組内容について伺う。
【理事者】
女子大学生とあいち女性輝きカンパニーの交流会については、女性が生き生きと働く県内企業の魅力を発信するとともに、業種・業界の理解を深め、学生の選択肢を増やすために、昨年度から今年度の2か年で、椙山女学園大学や中京大学など延べ6大学において開催し、参加者は、合計で約230人であった。具体的な内容としては、まず、参加企業の人事担当者から会社概要などを説明した後、各企業の女性社員が、自己紹介を兼ねて自らの業務内容を伝えるとともに、入社前のイメージと入社後のギャップ、仕事のやりがいなどをテーマとしたパネルディスカッションを行った。その後、女子大学生と女性社員との直接の意見交換を行う交流タイムを設けることで、相互の交流を深めてもらった。
【委員】
各大学を回って、学生たちがどんなことに迷ったり知りたがったりしていたのか、輝きカンパニーである企業側が、それにどのように答えていたのか、その印象を伺う。
【理事者】
交流会の中で行われた意見交換では、参加した女子大学生から、働き続けるためにはどうしたらよいかとの質問に対して、カンパニーの女性社員から、自分に合う仕事を見つけることや、得意なことを見つけ諦めずに続けることといった回答があった。また、産休・育休からスムーズに復帰できるかとの質問に対しては、仕事が属人化しておらずマニュアル化しており問題はないなどといったやり取りがあった。交流会全体として、女子大学生ならではの率直な質問に対し、年齢の近い女性社員が自らの体験を交えて回答しており、女子大学生にとって、今後の職業生活における不安や疑問を和らげる機会になった。
【委員】
続けて、出産・育児の支援の観点から質問する。
私が大学生のとき、恥ずかしい話だが、卒業単位が足りず、女性学の教授が主催する女性と仕事研究所というNPO法人でインターンをすれば単位をもらえることとなり、一時期、手伝いをしたことがある。20年前の当時を振り返っても、女性の就労継続に関する意識は高いものの、結婚や出産・育児を機に仕事を辞めてしまうことが課題であった。私は46歳だが、就職氷河期世代で、せっかく手に入れたキャリアのために結婚や出産を諦めた女性の友人も目の当たりにしてきた。
社会人になると仕事以外では友達もできにくいのも現実であり、そういう意味では、本県が取り組んでいる婚活支援などは、実は、こういう出会いの機会が欲しかったと渇望している人が多いのではないかと思う。
もちろん多様性が図られるべきで、男性も女性も結婚を選ばないという選択肢が尊重される社会であるべきではあるが、県内企業の女性活躍を推進するには、出産や育児などライフイベントに合わせたサポートが重要であり、企業がそれを大切にする組織文化を育めるよう、女性活躍推進法の趣旨・目的に照らしても、県には後押しをしてほしいと思っている。
そこで、県内企業の女性活躍推進のためには、出産・育児など女性のライフイベントに合わせたサポートが重要だと考えるが、県民文化局としてどのように取り組んでいくのか伺う。
【理事者】
本県では、女性が元気に働き続けられる愛知の実現に向け、女性副知事をリーダーとするあいち女性の活躍促進プロジェクトチームを設置し、女性のライフイベントに合わせた仕事と家庭の両立支援が図られるよう、ワーク・ライフ・バランスの推進や保育サービスの一層の充実、女性の再就職支援などを全庁横断的に取り組んでいる。そのうち県民文化局としては、仕事と家庭の両立支援に関する優良取組事例を紹介した冊子やウェブサイトを通じて広く県内企業等に周知をしている。
また、あいち女性輝きカンパニーの認証項目に、育児や介護に関する休業後の復帰に当たっての支援を行っていることや有給休暇取得日数を増やす、残業時間を減らす取組を行っていることなどの項目を設定し、県内企業における取組を促している。こうしたことにより、今後とも女性のライフイベントに合わせたサポートを行うとともに、県内企業における女性の活躍に向けた気運の醸成に取り組んでいきたい。
【委員】
一点要望する。
先週の日曜日に北名古屋市の青年会議所(JC)の10周年創立記念会があり、いろいろな話をした。7年から8年くらい前、SDGsが今のように皆に市民権を得るほど有名になる前に、青年会議所の人々がSDGsと言っており、当時、私は市議会議員であったが、市役所にSDGsと投げかけても、何だそれというような空気があった。それが、青年会議所はじめいろいろな人々の取組でこれだけ大きな流れが起きて、今に至っていると思う。
女性の活躍の流れをつくるには、世の中で一つ一つ取り組んでいき、積み重ねで大きく流れを変えていくことが大事である。そのような中で、とりわけ愛知県の果たす役割は大きいと思うので、世の中の流れに敏感になって、少しでも女性が活躍できる社会、そして、何よりも愛知県が女性から選ばれる都市になるよう、引き続きの尽力をお願いする。
【委員】
私からは、愛知県美術館と愛知県陶磁美術館の地方独立行政法人化と、埋蔵文化財の保管とデジタル化について質問する。
先月、私たち委員会の県外調査で、全国に二つしかないと言われている薬の博物館である中冨記念くすり博物館を視察した。建物の規模からすると入館料が非常に安く、とてもこの入館料だけでは賄えておらず、地域の人々の支えと教育機関との連携があって、初めてこの博物館が成り立っていることがよく分かった。委員は薬剤師であり、その場でもすばらしい知見を披露してくれ、私たちも大変勉強になったので感謝したい。
こうした中、奈良県内の約4万5,000点の民俗資料を収蔵している奈良県立民俗博物館が休館するというニュースを目にした。そこで、当時、その館長に話を聞きに行ったが、建物が老朽化し、その空調設備の改修費用の予算が議会を通らなかったことが原因で、県立の民俗博物館を休館するということであった。先ほど述べたとおり、4万5,000点という多くの収蔵品があり、この温度や湿度管理が大変重要であるので、そうした観点から、今後は保管ができないため、処分も含めて検討していくという衝撃的なニュースであった。
そこの学芸員にも話を聞き、私は大きく二つの要因があると感じた。
まず一つ目は、奈良県は、非常に文化財の多い地域であるが、その文化財に対して学芸員等の専門家の人数が少な過ぎることであり、その知見を活用して博物館の必要性を訴えることができなかったことが一つ目の問題である。
そして、二つ目は、この民俗資料の数の割に保管できる場所が非常に少なく、どうしてもこの県立民俗博物館に収蔵品が集まってしまう関係上、収蔵するスペースが足りなくなってしまい、処分せざるを得なくなってしまったこと。この大きな二つの問題点があった。
この学芸員が言うには、これは未然に防げる可能性があったとのことなので、私もこの県議会で取り上げたいと思って、今回質問する。
まず、一つ目の問題、これは、人の問題である。学芸員等の専門家の人材育成には、今回の県美術館と県陶磁美術館のいわゆる地方独立行政法人化が大きく影響してくると思う。美術館の専門人材について聞くが、組織として人員を確保して体制を充実させることも必要であるが、学芸員は、現場で経験を積み、そして、次の人材を育成していくことが重要である。現在、愛知県美術館、愛知県陶磁美術館においては、4月に公表した愛知県文化施設活性化基本計画を基に、運営面を改善するため、2026年4月を目途に、2館一体としての地方独立行政法人化を目指している。まずはこの計画の進捗状況について伺う。
【理事者】
本県では、県美術館と芸術劇場を設置する複合文化施設である愛知芸術文化センター及び愛知県陶磁美術館について、両施設が持つポテンシャルを生かし、ブランドイメージの向上、利用者層の拡大、にぎわいの創出を図るための方策を2022年度から検討してきた。本年4月には、両施設の今後の望ましい運営手法や経営形態、民間活力の活用の方向性などを愛知県文化施設活性化基本計画として取りまとめ、公表した。
現在は、この計画に基づき、愛知県文化芸術センターの建物管理及び芸術劇場へのコンセッション方式や公募型の指定管理の導入、県美術館及び陶磁美術館の地方独立行政法人化について、その可能性や効果などの具体的な検討を進めている。このうち美術館の地方独立行政法人化に向けては、民間の調査会社に委託し、地方独立行政法人化による効果に関する整理などを行うとともに、各美術館の学芸員と定期的に打合せを行い、地方独立行政法人化による課題などの検証を進めている。
【委員】
現在、美術館では、独立行政法人化による効果の具体的な検討を行っているとのことであるが、地方独立行政法人化によりどのような効果が得られるのか。
【理事者】
一般論として、地方独立行政法人化した場合は、地方自治法や地方公務員法の適用がなくなり、予算や人事面において、県直営と比較して、柔軟かつ効率的な運営が可能とされている。具体的には、県直営の場合、予算の執行に単年度の制約があり、年度をまたいだ運営企画が難しいが、地方独立行政法人では、5年間の中期計画に基づき、中長期を見据えた戦略的な予算執行が可能となる。
また、現在、美術館の事務職員は、県の人事異動の制度により数年で異動することが多く、美術館特有の広報や経理などに強い専門人材の育成に課題を抱えているが、地方独立行政法人化により、広報などの専門人材を美術館の判断により採用し、配置することができる。
こうしたことから、地方独立行政法人化により、魅力の向上や来館者の増加につながる経営や運営が期待できる。
【委員】
美術館には、戦略的な予算執行や広報、経理等の専門人材も必要であるが、やはり学芸員が中心的な存在であると考える。地方独立行政法人化により学芸員の人材育成や人材確保についてはどのような効果があるのか。
【理事者】
現在、美術館の学芸員は、本来業務の傍ら美術展の広報など専門外の業務にも携わり、時間を取られているが、先ほど答弁したとおり、地方独立行政法人化により、広報等の専門人材を採用し、配置できるようになることで、作品の収集や研究といった学芸員本来の業務に専念できるようになる。
さらに、地方独立行政法人の職員は、県職員と異なり職務専念義務の制約を受けないことから、特に学芸員においては、講演、講義、執筆活動などをはじめとした積極的な学芸活動が可能となり、学芸活動における柔軟性の確保が期待できることから、学芸員の能力向上や人材育成に効果がある。
また、より学芸活動が行いやすい環境となることで、有望な人材を集めやすくなるので、結果として、学芸員の人材確保においても効果がある。
こうしたことから、県美術館、陶磁美術館については、引き続き見込まれる効果の検証を行い、美術館がさらに魅力的な施設となるよう、地方独立行政法人化の検討を進めたい。
【委員】
この人材育成について一つ要望したい。先ほど答弁にあったように、県直営のときは単年度予算であったものが5年間の中期計画に基づき予算を組めるために中長期計画も可能になること、加えて、学芸員の職務に対しての専念義務が外されること、これは、人材育成やノウハウを次の時代の人間に継承していくことができると思う。
私も全国の様々な事例を研究し、地方独立行政法人化は、本当に理にかなった制度であり、非常によいのではないかと思うが、まず比較されるのが、大阪市の博物館だと思う。
これは、民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律(PFI法)上のコンセッション方式で行っているが、コンセッション方式とした以上、どうしても美術館として利益を上げようとして、例えば、外車のディーラーの商談会をその美術館で行っていたりすることがある。そうすると、本来の美術館の果たす役割からそれてしまうので、できれば地方独立行政法人化で進めてほしい。
なぜかというと、所蔵品のうち、県美術館は77パーセント、県陶磁美術館は87パーセントが、県民からの寄贈によるもので、そういった寄贈者の気持ちに寄り添った形の美術館運営を今後もしてもらいたい。
次に、二つ目の問題として、その文化財等の保管場所の問題である。
これは、民俗資料に限らず、美術館、博物館の資料を保管する収蔵スペースの確保は、冒頭に言ったとおり、全国的な問題となっている。中でも出土品と言われる埋蔵文化財は、文化財であると認められたもので所有者が判明しないものは、原則として愛知県に帰属することとなっている。これはどういうことかというと、文化財保護法上、地中から見つかったものは、まず警察に届けられた後に都道府県の教育委員会に行き、教育委員会がこれは文化財だと認めたものに対しては、6か月間の猶予期間の間に所有者が出てこなければ、県の教育委員会に所有が移ってしまうので、どうしても物が集まってくる傾向にある。
展示等の活用のために譲渡を希望する市町村には、引き渡しているということだが、各都道府県においては、開発行為に伴う発掘調査も増加する中、年々、確実に増え続けていく。愛知県埋蔵文化財調査センター等でも、文化財の保管場所が課題になることが推察される。
そこで、愛知県において、埋蔵文化財である出土品はどれくらいあるのか、また、どのように保管しているのか伺う。
【理事者】
県が実施した発掘調査で出土した埋蔵文化財については、愛知県帰属埋蔵文化財管理要綱においてその取扱いを定めている。愛知県では、文化財室が文化財業務を担当しているところ、出土品については、将来的に研究対象として活用される可能性があることから全て保管しており、展示中のものを除き、通常はコンテナに入れて管理している。
保管場所は、愛知県埋蔵文化財調査センターのほか、あいち朝日遺跡ミュージアム、旧県立常滑高校の廃校舎の3か所である。このうち愛知県埋蔵文化財調査センター内の収蔵庫では、展示・公開に活用するものなど約1万2,600箱を保管している。あいち朝日遺跡ミュージアムでは、朝日遺跡からの出土品のうち、重要文化財2,028点及び主要な出土品約5,100箱を保管している。旧県立常滑高校の廃校舎では、それ以外の約3万8,700箱を保管しており、3か所の合計で約5万6,400箱である。
【委員】
埋蔵文化財は、埋蔵文化財調査センター、あいち朝日遺跡ミュージアム、そして、旧常滑高校の廃校の3か所で全て出土品を保管していることが分かった。
私は、その一方で、埋蔵文化財のデジタル化を進めていく必要があると考えている。参考までに、私が話を聞いた奈良県立民俗博物館では、約4万5,000点の民俗資料の収蔵品がある。奈良県は、今後、その収蔵品全ての3Dデジタルアーカイブ化を盛り込んだ、民俗資料の収集・保存の奈良モデルを策定し、取り組んでいくとのことであった。
そこで、愛知県の埋蔵文化財のデジタル化の状況を伺う。
【理事者】
県が保管している埋蔵文化財は、先ほど答弁した愛知県帰属埋蔵文化財管理要綱で定める出土品管理簿を用いて記録している。この出土品管理簿は、デジタル化されており、遺跡や出土品の種別ごとに検索・抽出することが可能である。
また、あいち朝日遺跡ミュージアムにおいては、2020年11月の開館以降、収蔵品のデジタル撮影等の取組を進めている。
また、埋蔵文化財の記録保存のための発掘調査については、公益財団法人愛知県教育・スポーツ振興財団愛知県埋蔵文化財センターに委託して実施しており、その発掘調査の際に発見した遺物や遺構について、同財団の職員が最新のソフトを活用して3Dデータ化を行っている。
【委員】
埋蔵文化財について、デジタル化を進められているとのことであった。せっかくそうしてデジタル化を進めているのであれば、内部での管理に利用するだけではもったいないのではないか。埋蔵文化財の活用という点では、著作権の問題もあるが、データを用いた調査研究、インターネット公開など、幾つかの活用方法があると考えられる。
さきに挙げた奈良県の民俗資料の収集・保存の奈良モデルでも、3Dデジタルアーカイブを整備した後は、インターネット公開も行っていくと言っていた。
愛知県としても、このような取組を研究し、埋蔵文化財をデジタル化して管理するだけではなく、県民に広く公開して活用していくべきであると思うが、どのような考えなのか。
【理事者】
公益財団法人愛知県教育・スポーツ振興財団愛知県埋蔵文化財センターにおいては、6遺跡から出土した埋蔵文化財20点の3Dデータをウェブサイトに掲載している。閲覧する人は、出土品データの回転や拡大等を自由に行うことができる。
また、同財団が実施する体験イベントでは、近年、鋳型にべっこうあめを流し込んで銅鐸をつくる鋳込みの体験なども行っており、この鋳型には銅鐸の3Dデータを活用しており、大変好評とのことである。
一方で、委員の言うとおり、ここ数年、発掘調査が増加している。これに伴い、県の埋蔵文化財業務に占める発掘調査の比重が大きくなっており、3Dデータ化等の取組は、全体の資料のごく一部にとどまっている。県としては、今後、奈良県の取組も参考にしながら、埋蔵文化財のデジタル化について研究していきたい。
【委員】
最後に要望する。
昨年、博物館法が2022年4月に改正され、博物館DX化を進めやすい環境が整った。それを受けて、東京国立博物館では、メタバースの博物館として、3D化したデータ等をメタバース空間で見られる環境を整え、また、そのメタバース空間で展示している国宝29点の3Dデータを非代替性トークン(NFT)証明書として販売し、大変好評であったと言われている。NFTは、とても価値が上がる場合もあり、今、ブロックチェーンの問題もあって、非常に効果が上がっている。文化財は、保存よりもどちらかというと活用するほうが難しいので、ぜひともこういう先進事例等を見習い、愛知県内でも活用できる環境を整備するよう要望する。
【委員】
私からは、愛知県青少年保護育成条例について伺う。
まず、この愛知県青少年保護育成条例について、昭和36年に制定されているが、その条例自体の制定のいきさつと、今年に至るまでの様々な経緯、条例の概要を伺う。
【理事者】
愛知県青少年保護育成条例については、昭和36年に青少年の健全な育成を阻害するおそれのある行為を防止し、青少年の保護と健全育成を図ることを目的に制定された。これまでに条例の一部改正を19回実施し、直近では、平成30年の青少年インターネット環境整備法の一部改正に伴い、スマートフォン等のフィルタリングに関する新たな規定の整備を行った。条例の目的を果たすため、有害図書類に関する規制、有害玩具類に関する規制、青少年の深夜外出に関する規制、インターネット利用における青少年有害情報の閲覧等の防止や、有害役務営業を営む者等の禁止行為などを定めている。
【委員】
まず昭和36年に制定し、19回改正して、直近では平成30年にインターネット関係など、いろいろな改正を繰り返している。概要としては、有害図書類の指定や有害玩具、あるいは夜間の外出の禁止など、例えば、未成年が異性に対して接客する業務に対する禁止など、様々な規定があると分かった。第1条の総則のど真ん中だが、この青少年の健全な育成を阻害するおそれのある行為とは、一体何を指しているのか。
【理事者】
青少年の健全な育成を阻害するおそれのある行為とは、青少年が心身ともに健やかに成長する上で悪影響を与えるおそれのある大人の行為を指すもので、青少年自身の行為は含まれない。このような考え方から、この条例は、直接、青少年の行為を制限したり罰したりする方法を取らず、全ての大人に対して反省と自粛を促し、その自覚と責任において青少年を健全に育成していこうとするもので、このことがこの条例全体を通じた基本理念となっている。
【委員】
非常にぐさっとくる話で、青少年を直接何か罰するわけではなく、大人の反省と自粛を促す趣旨だと理解した。この条例の中で、先ほどから有害図書類や有害役務あるいは有害玩具といった言葉が出てくるが、今回は、有害図書類についてクローズアップしていろいろ聞きたいと思う。
まず、この条例の第6条、第7条に、有害図書類の指定やその取扱いについての規制が書かれている。ここで示す有害図書類とは一体どういうものなのか。
【理事者】
有害図書類とは、主に愛知県青少年保護育成条例第6条第1項に基づき、書籍、雑誌等の内容が著しく性的感情を刺激するもの、著しく残虐性を有するもの、自殺または犯罪を誘発するおそれがあるものを指している。
【委員】
著しく性的なもの、著しく残虐なもの、そして、著しく犯罪を促すような行為、この三つに当たるとされると有害図書類に指定されるという話である。では、この有害図書類について、罰則は一体どうなっているのか。その罰則は、誰が対象になるのか。見た人か、事業者のうち売った人か、生産した人か、作者か、販売した人か。その辺はどうなっているのか。
【理事者】
罰則の対象は、図書類の取扱いを業とする者であり、例えば、書店やコンビニなど一般の人に図書類を販売する者となる。有害図書類として指定されると、図書類取扱業者は、青少年へ販売することだけでなく閲覧させることも禁止されることになり、この規定に違反すると、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金となる。
また、図書類取扱業者に対しては、有害図書類を青少年が閲覧できないように包装すること、一般の図書類とは別の場所に陳列すること、成人向けコーナー等の表示を掲示することが義務づけられている。これらの包装、区分陳列、掲示義務の違反者が改善命令に従わない場合は、30万円以下の罰金となる。
【委員】
罰則は、販売した者、取扱業者が罰則を受け、実際に売るだけではなく、見せてもいけないということである。これは、包装や陳列に関しても、細かい規定があると今聞いた。
では、この有害図書類の指定に関して、いろいろな規定があって、本の何パーセント以上に例えば全裸や、性的な行為について映像であれば連続何分間という基準があって、それを超えるものは、包括指定として自動的に指定されると記載してあった。それとは別に、個別指定もあると書いてある。この有害図書類の個別指定に関しては、どのように行われているのか。また、実際にどういったものが何件ほど指定されているのか。近年の傾向についても併せて伺う。
【理事者】
有害図書類の個別指定に関しては、県が審議会に諮問し、有害図書類の基準に該当すると認められるとの答申が得られた場合に、知事による指定を行っている。昨年度は、実話ナックルズ6冊、裏モノジャパン12冊の計18冊を個別指定しており、これらの雑誌については、著しく性的感情を刺激する内容や、犯罪の手段・方法を詳細かつ刺激的に描写する内容、また、暴力団・暴走族等の社会道徳や刑罰法令に反する団体を賛美するような内容であることから指定に至った。
また、一昨年度は、実話ナックルズ6冊、裏モノジャパン12冊に加え、人殺し大百科という書籍を個別指定しており、計19冊となる。人殺し大百科については、他県で個別指定されたことを参考に当課で内容を確認したところ、殺人を陰惨な表現で描写し、殺人の手段や方法を詳細に教示する内容であったことから、審議会の意見を聴いた上で個別指定した。
なお、近年の個別指定の傾向は、青少年の非行化を防ぐ観点から、成長段階にある青少年に規範意識の低下等の悪影響や反社会組織に対する憧れなど、誤った認識を与えるおそれのある書籍や雑誌を個別指定している。
【委員】
実際に指定された本の名称など、人殺し大百科というのは怖い、聞いたことがなかったが、そういったものが指定されているとの答弁であった。審議会の意見を聴いた上で個別指定しているとのことで、審議会に上がってくるものはどのように選定しているのか伺う。
【理事者】
他県での指定状況や県民からの情報提供を参考に、社会活動推進課の担当者が月に1回程度、書店等に赴き、有害図書類の指定の可能性のある書籍や雑誌等を購入している。購入後は、当課で複数の担当者が内容を確認し、有害図書類の個別指定の要件の該当性を判断した上で審議会に諮っている。
【委員】
職員が月に1回程度、本屋に実際に行っているとのことであった。他県の状況、例えば東京都は非常に多いらしく、複数の職員が実際に本屋などに行き、表紙等で確認して、これは大丈夫なのかというものを100冊ほど集めてきて、審議会に上げているようである。
少し古いが、2021年にこども家庭庁が発表したデータでは、全国で最多の指定があったのは宮城県の41件で、和歌山県が32件、山梨県が30件、岩手県と愛知県が21件であり、愛知県もある程度多いほうである。この全国最多だった宮城県では、県警察から派遣された県の職員1人から2人が、事前に書店やコンビニで15点ほど購入し、中身を確認して、審議会にかけるようである。もちろん、先ほどの包括指定で有害図書類と指定されたものは自動的に入るが、個別指定と言われるものは、そういった職員が実際に審議会に上げるものを持ってくる。愛知県では、この審議会に上がるものはどれくらいあるのか。
【理事者】
審議会に意見を聴いたものが全て指定されるとは限らず、審議会から有害図書類と認められるとの答申が得られた場合のみ、有害図書類として指定されることになる。昨年度においては、実話ナックルズ6冊、裏モノジャパン12冊の計18冊が審議会に諮られ、その全てが有害図書類に指定された。
【委員】
もちろん専門家がメンバーだと思うので、これは大丈夫、これはよくないといった判断をするのが審議会だと思う。少し意地悪な質問になったかもしれないが、私が言いたいのは、審議会に上がってしまえばもう指定されるという状態は、準決勝、決勝ではないか、決勝に上がればもう確実に優勝といったイメージがしてならない。予選と言ってよいのか分からないが、その予選で何冊上がっているのか。前回では18冊上がって18冊が指定されたが、これが他県ではもっと多いのではないかと思っている。この辺りについて、愛知県では、何冊といった歩留りのようなものがあるか。
【理事者】
本県においては、必ずしも審議会の意見を聴いたものが全て指定されるとは限らないが、基本的に審議会に諮問したものについては全て指定されている状況で、昨年度については、18冊の書籍が指定される結果となっている。
【委員】
年間で18冊上がって18冊指定。他県なら、例えば月間で十何冊、月に100冊という予選を経て指定に至っていると思い、質問した。
それでは、この有害図書類に指定されたものは、県民あるいは事業者などにどのように公開しているのか。先ほど答弁にあった書店やコンビニ、あるいは販売業者というとインターネット業者もあると思うので、こうした事業者に対して、どのように通知しているのか伺う。
【理事者】
指定された有害図書類については、愛知県広報やホームページに掲載して公開しているほか、県内の図書類取扱業者へのはがきによる通知や、一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会を通じて県内のコンビニに通知を行っている。
また、本条例の規定は、愛知県内における青少年に対して有害図書類の販売等を規制するものであり、インターネットでの販売にまで効力が及ぶものではないことから、ネット販売の業者には通知していない。
【委員】
インターネットは対象になっていないということだが、これも実は、様々、物議を呼んでいる。鳥取県が2020年に有害図書類の指定に関してインターネット業者も対象とした際には、もちろん県内の青少年に対して見せてはいけないという規制だが、その有害図書類に指定されたものに業界団体が非常に厳しい対応をした。これは、実は東京都でも似た話がある。
例えば、アマゾンジャパン合同会社などのインターネット大手の販売業者は、有害図書類あるいは不健全図書等に指定されると自主的にそもそも取扱いをやめるという現象も起こり、それは作家たちに対してどうなのかと物議を醸したが、今、答弁があった内容に関しては理解した。先ほどから私は有害図書類という言葉を使っているが、不健全図書という言葉も出した。他の都道府県の条例においては、この同様の趣旨の図書類に関してどのような呼称になっているのか伺う。
【理事者】
有害図書類に関する規定を設けている都道府県は、長野県を除く46都道府県であり、その自治体の多くが有害図書類の名称を用いていると認識しているが、東京都では、不健全な図書類という名称を用いている。
【委員】
私も調べたが、答弁にあったとおり、45の道府県では有害図書類と指定し、東京都1都だけは不健全図書という呼称を使っている。
私が、今回、質問しようとしたきっかけは、今年の3月頃に、公益社団法人日本漫画家協会が、あしたのジョーのちばてつや先生や、名探偵コナンの青山剛昌先生、はじめの一歩の森川ジョージ先生など有志112人の連名で、東京都に対して、この不健全図書という名称の変更について様々な要望したことである。青少年に対して不健全、東京以外であれば、青少年に対して有害という条例の趣旨は分かるが、成人向けに対しても同様の風評被害が出ていたりレッテルが貼られたりして、先ほど述べたように大手通販サイトなどが自主的に取扱いをやめるなど、作家に実害が出ているのではないか、あるいは、出版業界に対しても実害が出ているのではないかということで、名称変更の要望を出した。
これは、東京都でも物議を呼び、いろいろと紆余曲折あったが、この9月に不健全図書という名称を対外的に使用するのをやめ、変更したという報道があった。私も、友人の東京都議にいろいろないきさつについて話を聞いた。これは、都民ファーストの会や立憲民主党が取り上げており、立憲民主党が独自にパブリックコメントしたところ、都民から268件の意見が来て、そのうちの8割以上が、名称変更の趣旨に関しては賛成であった。
愛知県の条例でいうと第6条の指定について、東京都青少年の健全な育成に関する条例の第8条にこの不健全図書の指定の規定があるため、第8条の規定による図書で、8条指定図書という表現にこれから改めていこうとしているようだ。
これは、実は、業界にとってはすごく大きな動きだと捉えられている。公益社団法人日本漫画家協会を中心にした様々な出版業界からも、風評被害が少しでもなくなればよい、こうした東京都の動きが全国に波及してほしい、といったコメントが上がっている。私も子供を持つ親として子供に見せたくない本があるというのは、重々理解できる。しかしながら、私は、不健全である、有害であるといったレッテルを貼ることが、本当にこの条例の趣旨を社会に生かしていくことになるのかという問題意識を持ったため、今日質問した。
東京都は、60年間にわたってこの不健全図書という名称を使用しており、今回も実は、条例改正には至っていない。条例は、不健全図書という名称のままだが、外向けには8条指定図書という呼称の使用について検討し、これから変更するよう動いている。こうした動きについて、県及び担当課として、どのように受け止めているのか伺う。
【理事者】
報道によれば、東京都では、漫画家有志による不健全という名称の変更を求める要望などを踏まえ、条例上の不健全な図書類の文言は変えずに、ホームページや公報においては、東京都青少年の健全な育成に関する条例第8条の規定により指定された図書類と表記するとのことである。本県では有害という名称を用いているが、本条例に基づき指定された図書類については、青少年の健全な育成を阻害するおそれのある有害な図書類であると考えており、この有害という表現自体は、条例の目的に照らして適切なものと考えている。
【委員】
有害という表現をめぐっては、私も全国の動きを注視していきたいと思う。今日何かをもって名称の変更を迫っているわけではないが、私自身は、これから必ず全国へ波及すると思う。
今回、東京都と大きく違うのは、愛知県はコミック類の指定を今現在していない状況にあることだと思う。他県ではそうではない。コミック類の指定も多い。愛知県も、今は指定していないだけであり、スキームとしては、コミック類も指定できる条例の構えになっているので、私自身の考えとしては、今後、検討を行っていく必要があると強く思っている。
今回、この条例をいろいろと勉強して思ったことが二つある。
一つは、昭和30年代、他県では古いと20年代に制定された条例もあるそうだが、この有害図書という言葉を現在に照らし合わせて使用していくことが、本当に社会、時代としてふさわしいのかどうか。
もう一つは、そもそものこの条例の形骸化を心配する、時代に合っていない表現が多々あることである。条例は全7章立てで、第7章は罰則であり、中身に関しては第1章総則から様々あるが、大きな章である第4章では、例えば、テレホンクラブの営業に関わる利用カードの販売の規制、多分これはテレホンカードのことだと思う。当時、課題になったことをずっと継ぎはぎしているのでそうなるのかもしれないが、今現在で言えば、もっと大きな青少年に対しての社会課題があると思う。直近で平成30年にインターネットフィルタリングの法改正に伴って条例を少し改正したようだが、スマートフォンあるいはインターネットのゲーム、あるいは頂き女子、オーバードーズの問題など、青少年が抱えている様々な問題を、本当にこれがカバーできているのか、非常に疑問をもった。
最後に、私自身は、先ほど述べた名称の変更については6条指定図書などに変更したほうがよいと思っており、条例の中身自体も本当に実態と合っているのかと強く感じている。
もう一つ付け加えるならば、先ほど私は有害図書の予選と言ったが、予算の範囲ももちろんあるものの、世の中にごまんと出回っている出版物の中で18分の18では、愛知県として個別指定が少ないのではないかと思う。恐らく過去に遡っても、審議会ではじかれるケースはほとんどないと思うので、実態に伴う条例の運用をしてほしい。今言ったのは名称の変更と、時代に合っているかどうか、あとは実態と合っているかどうかである。この辺りを踏まえて、最後に、私は条例改正も含めて様々検討してほしいと思うが、受け止めについて伺う。
【理事者】
有害図書類は、青少年の成長にとって有害となり得るため、青少年への販売等は規制されているが、18歳以上の者が閲覧することや、図書類取扱業者が18歳以上の者に販売することを妨げるものではない。
本県においては、有害図書類という名称は長く用いられており、有害図書類が青少年の健全な育成に悪影響を及ぼすことは、広く浸透しているものと考えている。また、有害図書類という名称を変更することによって、青少年にとって好ましくないものであるというメッセージが伝わりにくくなることも懸念される。
このため、本県においては、現在のところ、有害図書類の名称を変更することは考えていないが、他県の状況や業界団体の動向を引き続き注視したいと考えている。
また、先ほど委員から話のあった、条例の中身が実態に合っていないのではないかという点について、これまでも19回条例改正してきたが、同様に他県の状況や業界団体の動向などを引き続き注視したい。
【委員】
非常に苦しい答弁であり、気持ちは分かる。しかしながら、私は、有害図書という表現が長く用いられているから今後も使う、浸透しているから使うというのは全くもって違うと思う。これは、社会や時代をしっかり見ていかないといけない。青少年とは18歳未満の子供たちである。昭和三十何年にできた条例を少しずつ継ぎはぎしており、はっきり言って大変時代遅れな条例だと思っている。
姪っ子を見ていると、あまり個別名称を出してはいけないかもしれないが、エーペックスやフォートナイトといったインターネットの人をばんばん殺すゲームで、殺し方を学び、ヘッドショットがいい、頭狙って打ってといったことを子供たち同士がクラスで話し合っている。私はそちらのほうがよほど健全ではない、有害であると思う。例えば、私たちは本を買うのも40パーセント、50パーセント近くがインターネットで買っている。書店やコンビニで閲覧できるかどうかや、ゾーニングして18禁ののれんをつけてその奥に行かないと見られないというのは、もう時代遅れである。
他県の状況を注視するという答弁はよく聞く。私は本当に注視しているのかと思うときがあるが、本当に注視してほしい。東京都の動きが全国に広がることを期待しているという多くの声がある。愛知県は、本来、率先して動かなければいけない県だと私は思っているので、ぜひその辺りは強く要望したい。よろしくお願いする。
【委員】
一般質問でも取り上げたが、旧優生保護法に基づき、本人の意思とは関わりなく強制的に生殖機能を除去する不妊手術を施したことに対して、本年7月に最高裁の判決が確定した。
この法律は国会において、昭和23年に全会一致で制定された。法律そのものが、制定当時から、その前年に制定された憲法の第13条、第14条に違反しているという厳しい認定が確定し、さらには、違法性は認めながらも賠償請求に対しては20年の除斥期間が過ぎているため賠償しなくてもよいという国の主張についても、国が除斥期間を主張すること自体が不正義だと全面的に退けた。これは非常に厳しい判断である。この判決があった後、政府は、原告や被害者への全面的な謝罪と賠償に加え、この根本にある優生思想そのものを克服する取組を行うと宣言し、今、その手続が始まっている。
本会議では保健医療局に答弁してもらったが、本来、これは言うまでもなく非常に重大な人権侵害の事件であるので、この問題に関して改めて、人権行政を所管する本委員会において人権推進課に県の見解を尋ねたい。人権問題としてこの問題をどのように認識しているのか。
【理事者】
本年7月3日の旧優生保護法訴訟の最高裁判決によると、正当な理由なく特定の障害のある人たちを手術の対象にし、障害のない人と区別することは、合理的な根拠に基づかない差別的な取扱いだということであった。本件については、知事が9月18日の定例記者会見で、法律に基づいた機関委任事務として行っていたが、国・県が関わったことは大変重いことであり、大きな人権侵害があったと言わざるを得ないと発言しており、当課としてもこうした不妊手術の強制は、重大な人権問題であったと認識している。
【委員】
本県の人権施策上の今後の取扱いについてであるが、愛知県人権尊重の社会づくり条例と基本計画であるあいち人権推進プランを、我々の委員会が所管する局において推進しているものの、優生思想、あるいは障害者が子孫をつくる権利といったことが、現在のところ、このプランの中に直接的に入っていない。これだけ大きな人権問題として浮上した以上、この人権施策全般を包括する立場で、何らか位置づけし、取り込む必要があると考えるがどうか。
【理事者】
あいち人権推進プランは、条例に基づく基本計画として、人権施策の総合的かつ計画的な推進を図るために全庁を挙げて策定したものである。現在、保健医療局等が中心となって取り組んでいる旧優生保護法に係る人権問題の解消については、委員の指摘のとおり、現在、そうしたプランには含まれていない。
こうした中、今後、国や保健医療局等が用意する啓発資料をあいち人権センターで配架するほか、ウェブページに掲載するとともに、旧優生保護法に係る人権問題の解消に資する啓発用の図書を購入するなど、関係局と連携を図りながら人権課題の解消を図っていきたい。
【委員】
私の一般質問の中で、県立高校で実際に採用されていた高校の保健体育の教科書の記述を紹介した。教育長にも、この問題について学校教育の中で、これから結婚や出産に直面する高校生たちに、どういう考え方を教えていくのか尋ねた。教育委員会としては、教員を中心にした研究会で、実際に起きた不妊手術や、それを受けた人の痛み、思想の問題点などについて具体的に研究し、学校教育の中に生かしていきたいという話も聞き、期待している。
今の答弁にあった、本県が設置するあいち人権センターでの図書の配架やウェブページの記載内容に盛り込むだけではなく、例えば、職員をはじめ一般県民の啓発や研修に、これをどのように生かしていくのか、もう少し補強して答弁してほしい。
【理事者】
当課では、企業で働く人や学校の教職員及び生徒、県内の行政職員など、広く県民に向けて愛知県の人権に関する取組を説明するとともに、日常生活の中にある様々な人権問題全体の話題を通して、人権について考えるきっかけとなるように、人権研修を、昨年度は70回、今年度も8月末までに35回実施している。
今後、こうした人権研修を行う際には、旧優生保護法の下で行われた不妊手術の強制は、重大な人権問題であったことを説明していきたい。こうした取組を進めながら、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現を目指したい。
【委員】
最後に要望する。私も今回この問題を取り上げるに当たって、原告や裁判を支援してきた弁護士など、いろいろな人から話を聞き、資料を読んで、改めてこの優生思想という問題の深刻さを知った。そして、露骨な記載こそなくなったが、実際には、現在もまだ優生思想と思われる、例えば、障害のある人が結婚や出産をしようとしたときに立ちはだかる周囲のいろいろな圧力や障害について知った。特に、原告の尾上夫妻の話を聞くと、一般的に知的障害や精神障害と言われるが、今回、裁判の中で本当に勇気を持って立ち上がった人々の多くは、聴覚障害者である。もともと問題になったときには、聴覚障害者がそれほど多く比重を占めているとは、必ずしも考えられていなかった。
自らの体験があまり人前にさらしたくない話でも、裁判しようと立ち上がって、この不当性を訴える先頭に立ち、一般財団法人全日本ろうあ連盟が組織的に取り組むことで何百件という実例を発掘した。この中には、いわゆる優生保護審査会での審査によって、法令上は強制的ではなく同意という形を取って手術した人が、むしろ主である。裁判として法廷で争われ、最高裁判所が、これは根本的に憲法違反だと認定した対象は、かなり広がっている。旧優生保護法の第4条と第7条の規定が、本人の同意に基づかないで手術した例であるが、それ以外にも、この聴覚障害者の例のように、優生保護法があるために、優生思想に基づいて一応同意という形を取らされて手術をした、あるいは、中絶手術に関してもこの対象に含めると、最高裁判所の判決の影響が今どんどん広がっている。
なので、この根本になる優生思想に関しても、今もなお、例えば、出生前診断の問題などは、命の選別に関わり、どこまでのことが許されるのか。生命倫理上の問題もあって、これは非常に深く影響がある。
片や、過去の例を見ると、近年では、元職員による神奈川県立津久井やまゆり園の障害者の虐殺事件があった。一人の特異な人間の犯罪ではあるが、この元職員は、一番身近で重度障害者の現状を見ていながら、この人たちは、もう生きていること自体が不幸だという独断で勝手な判断をして、あのような虐殺に至った。
その根本には、例えば、かつてのナチスドイツのユダヤ人虐殺は非常に有名であるが、優秀なドイツ民族をこれから繁栄させていこうという考え方の下に、ユダヤ人を虐殺する前の段階で、まず彼らが目をつけたのは実は障害者である。障害者に対し、断種手術はもちろん、障害者自体を抹殺していき、それが結局、ユダヤ人にどんどん拡大されてあの悲劇を生んだ。根本にあったのは優生思想である。
優生思想は一見すると、科学的な根拠を少しでも示されれば、そういう子は生まれないほうがよい、そんな不幸な子はもともと産まないほうがよいのではないかといった方向に行きがちな非常に難しい問題を抱えている。単に本人の同意もなく手術をしたのはいけないというだけの話ではないという意味で、優秀な民族、優秀な子孫を残そうという意図が、そのような極端な悲劇につながったことまで遡って、その影響の恐ろしさ、危険性を相当深く理解しないといけない。
これは、本当にいろいろな実例や映画もある。新川の近くで聴覚障害者の連盟がつくった沈黙の50年という映画の上映があったので、私もそれを見に行ったが、本当にショックを受けた。聾学校に通いながら、聴覚障害同士で結婚することも結構多い。それに対して、結婚までは阻止できないが、出産する、子供をつくることに対して、いかに周りからの強制があって、泣く泣く同意という形で不妊手術をしたという話が、映画の中ではいろいろな人の実例で赤裸々に描かれていた。こういった視聴覚教材もいろいろあるので、そういったものを幅広く収集して、特に若い人たちの心に本当に届くような啓発に取り組んでほしい。
【委員】
私は、先ほどの委員の質問にも関連するが、愛知県の図書館の利用状況について、これからより多くの人に来てもらい、利用してもらうための取組について幾つか伺う。
愛知芸術文化センターや愛知県陶磁美術館、愛知県図書館などの文化施設の利用者が今、年間200万人ほどいると言われている。2022年12月に策定されたあいち文化芸術振興計画2027では、こういった文化施設の来場者を、毎年度270万人以上にする目標があると聞いている。2022年というと、ちょうどコロナ禍の最中で利用者が減ったときだが、陶磁美術館などではいろいろな催しをしており、そのときの催事によって入場者数にも随分差があると聞く。
図書館では、あまりそういうこともなく、ある程度一定だと思う。私の学生時代には、図書館で勉強してくると言えば、家を出ていく理由があったというだけであって、本当に行ったのか行かなかったのかは分からないが、外出する口実となったところが図書館であって、私にとっては非常に都合のよい場所であった。まず、愛知県図書館のここ数年の利用状況についてどうなっているのか伺う。
【理事者】
県図書館では、新型コロナウイルス感染症の影響を受ける前の2019年度以前は、毎年50万人を超える来館があった。しかしながら、感染の拡大に伴い、国や県独自の緊急事態宣言による不要不急の外出の自粛要請の影響や、約3か月間にも及ぶ臨時休業の措置を講じたため、2020年度は、34万1,146人と大きく減少した。その後は回復傾向にあるが、2023年度は41万1,533人となっており、コロナ前の水準には戻っていない。
【委員】
当然コロナ禍の影響によって来館者が大幅に減少したことは、当たり前のことであるが、その中において、2021年1月から、わざわざ来館しなくても済む電子図書サービスが開始された。愛知県が2022年7月に実施した愛知県図書館の利用状況サービスをテーマとした県政世論調査においては、県図書館が今後どのような図書館であってほしいかという問いに対して、電子書籍やデジタル化資料の閲覧など、図書館へ行かなくてもよい、いわゆるウェブサイトで資料が閲覧できる図書館がよいという回答が上位を占めたと聞いている。
そこで、電子書籍サービスの電子書籍の冊数から閲覧回数など、利用状況について伺う。
【理事者】
県図書館では、民間の電子書籍サービスを活用し、モノづくり文化、健康医療、地域資料の三つの分野を中心に、本年8月末現在、6,403冊の閲覧サービスを提供している。閲覧回数については、2021年度の導入直後は月7,000件を超える利用があったが、2022年度以降は月5,000件台の利用となっており、横ばいの状態となっている。
【委員】
まだまだ来館者がコロナ前の水準に戻っていない。そして、新たに導入した電子書籍サービスの閲覧者数も、最近は横ばいであるが、県図書館のさらなる利用者の拡大に向けて、今後、どのような取組をするのか、特に何か目新しいことがあれば教えてほしい。
【理事者】
県図書館のさらなる利用拡大に向け、幾つかの観点から答弁する。
まず、来館者全体に向けた取組としては、図書館1階のエントランスのヨッテコにおいて、これまで実施している企画展示や講演会、イベントの充実に加え、新たに金融機関と連携してビジネスセミナーを開催するなど、さらなるにぎわいの創出を図っていく。
また、視覚障害者には、録音図書や展示図書の貸出し、対面朗読サービスなどにより読書を楽しむことができる環境をこれまでも整備してきたが、この4月に館内に読書バリアフリー推進チームを立ち上げたので、さらなる取組や啓発活動を実施していく。
さらに、来館しない人に対応する取組として、先ほど委員が言ったとおり、電子書籍サービスの冊数の充実を図るとともに、このサービスの使い方講座の開催や、県図書館のSNSなどを通じた利用促進を図っている。
加えて、県図書館が所蔵する著作物の一部をデータ化して利用者に提供する公衆送信サービスを、国や関係団体の動向を注視しながら準備を進めている。
こうした取組により、県民に開かれた図書館として、県民の誰もが質の高い図書サービスを享受できるようにこれからも努めていく。
( 委 員 会 )
日 時 令和6年10月2日(水) 午後0時58分~
会 場 第6委員会室
出 席 者
平松利英、村嶌嘉将 正副委員長
坂田憲治、伊藤辰夫、青山省三、いなもと和仁、ますだ裕二、
柳沢英希、高木ひろし、河合洋介、園山康男、阿部武史 各委員
県民文化局長、県民生活部長、学事振興監、人権推進監、
女性の活躍促進監、文化部長、関係各課長等
委員会審査風景
<付託案件等>
○ 議 案
なし
○ 請 願
第 17 号 「小中高生の新型コロナワクチン接種後体調不良者への合理的配慮を求める」について(県民関係)
(結 果)
賛成者なしをもって不採択すべきものと決した請願
第17号
<会議の概要>
1 開 会
2 請願審査(1件)
3 一般質問
4 閉 会
(主な質疑)
《一般質問》
【委員】
私からは多文化共生について質問する。
昨今の日本の労働力事情は刻々と変化しており、少子化による人口減少により、多くの分野の企業が人材確保に苦労しており、海外の労働力に頼らざるを得なくなった。現状においては、様々な国の外国人労働者を労働力の一つとして日本に呼び込み、多くの業種で仕事をしてもらっているが、それと並行して、日本人と外国人の宗教や文化、生活習慣などの違いにより発生するトラブルや問題、地域に溶け込めない外国人の困り事なども増加しているのが実情である。また、外国人同士の間で起きている問題、課題もあると考える。
愛知県は、モノづくり産業が国内でも非常に多く集積している地域であり、それに伴って技能実習生等を含めた外国人労働者やその家族も非常に多く生活し、その恩恵を得ている地域の一つである。外国を訪れた者は、生まれた国との文化や習慣、宗教の違いなど見知らぬ地で生活していく上で生じるストレスを、自助努力によって減らしていくことがまずは必要であり、また、外国人を同じ労働者として受け入れていく国や地域は、自国の文化や習慣、考え方などを外国人にしっかりと学んでもらう機会をつくり、同じ地域で暮らすことで発生する問題や課題を少しでも減らしていく努力をしていかなければならない。文化や習慣、宗教と様々な違いはあっても同じ人間であり、勇気を出して接してみれば、意外と同じ思考や人としての優しさもある。
ここで、私が10代後半に経験した、1年間、オーストラリアへ語学留学した話をする。初めは、現地オーストラリア人のホストファミリーと生活しており、日本の文化や日本人の習慣なども深く学び、理解していたため、温かく留学生である私を受け入れてくれた。オーストラリアでの生活の仕方や食文化、休日の過ごし方の違いをはじめ、第二次世界大戦での日本とオーストラリアとの戦争の話などもしてくれて、現地だからこそ学べる様々なことを教わることもできた。5か月後に同じ大学に通っていたタイ人や韓国人、インドネシア人とシェアハウスをした際は、言語の違いは当然あるものの、お互いの文化や生活スタイルの違いはあっても、それぞれがそれぞれを尊重し、理解することに努めることで楽しく生活できていたことを、今でもよい思い出として記憶している。
そのように生活できたのも、互いに尊重するといった気持ちや考えがあったからであり、そのような気持ちや考えをなくしては、どこであっても誰であっても幸せには暮らせないと思っている。今の日本を含めた先進国では、国内で足りない労働力を、外国人の力を借りて補わなければならない現状があり、また、労働力として来日する外国人には、日本の進んだ点や優れた点を学び、自国の成長に役立てたいという考えがあると思うので、互いに足りないところを補い合ってメリットを生み出し、互いにウィン・ウィンの関係性を構築できたらよいと考える。
しかしながら、現状はなかなかうまくいかず、国・県・市町村において多文化共生の取組を進めているところでもあると思う。
そこで伺うが、まず、愛知県内におけるここ数年の外国人の県民数は、どのように変化しているのか。また、国籍別で数字を把握していたら教えてほしい。
【理事者】
当県の外国人県民数は、新型コロナウイルス感染症の影響により、2020年6月末以降、減少傾向が続いていたが、2022年6月末以降は、増加に転じ、昨年末時点で、過去最高の31万845人となっている。国籍別では、最も多いのがブラジルの6万1,566人だが、近年、ベトナムが急増し、2022年6月末時点で中国を抜いて2位となり、昨年末時点では、5万8,076人にまで増加している。このほかネパール、インドネシアなど、アジア圏の増加も顕著となっている。
【委員】
コロナ禍後は、円安事情がありながらも、顕著に外国人の来日が増えている。新たにベトナムをはじめネパールやインドネシアの方が伸びてきており、以前より一層、複雑化してきている現状である。県内で外国人が増加し、複雑化してきている中で、県の設置している相談窓口には、どのような内容、困り事での問合せがあるのか。
【理事者】
県では、愛知県国際交流協会内に多言語による一元的相談窓口、あいち多文化共生センターを設置しており、昨年度は、3,489件の相談があった。相談内容は、出産、育児、結婚、離婚や住宅関係といった生活に関する相談が多く、全体の約5割を占めている。次いで多いのは医療、福祉で約2割であるほか、在留、労働、教育がそれぞれ約1割となっている。
【委員】
国籍が多様化しており、まずは第一である生活に直結する困り事が多いが数字から読み取れるので、その生活地域に身近な市町村への問合せが多いと思う。一昔前のように、日本と昔からゆかりのある南米、特にブラジルや中国、フィリピンといった国だけではなく、今日では、様々な国から来日する人が多い。例えば、高浜市には多文化共生コミュニティセンターがあるが、外国人県民の一次相談の窓口として対応する市町村、またNPO団体と、県はどのように連携しているのか。
【理事者】
県内の市町村では、外国人が集住している地域を中心に、36市町において多言語による相談窓口を設置しているが、対応できない言語で相談があった場合や多言語相談に対応してない場合は、市町村の窓口からあいち多文化共生センターに電話してもらい、三者通話による通訳支援を行っている。
また、相談内容に応じて、日常的に連携している外国人支援を行うNPO団体等を紹介するなど、相談者に寄り添った支援をしている。
【委員】
各自治体、NPO団体とも連携して、外国人に寄り添った形で相談に当たっているようだが、現在、愛知県では第4次あいち多文化共生推進プランを進めており、第1次から第4次までの間に刻々と時代が変化し、来日する外国人の国籍も変わり、増えてきている中で、取り組むべき課題も変化しているかと思う。現在、特に愛知県として力を入れている課題、取組には、どのようなものがあるのか。
【理事者】
2022年に策定した第4次あいち多文化共生推進プランに沿って様々な取組を推進しているが、中でも最も大きな課題が言葉の壁であると考えており、持続可能な地域日本語教育推進体制づくりに力を入れて取り組んでいる。具体的には、県が市町村と連携して、ほとんど日本語が分からない大人向けの日本語教室をモデル的に開催する初期日本語教室モデル事業を2018年度から実施しており、2023年度からは、従来の1市町村から3市町村に対象を拡大して実施している。
また、日本語教育の専門家である総括コーディネーターも、今年度から1人増員して、2人体制で地域日本語教育の推進に取り組む市町村を支援している。
【委員】
日本語をしっかりと習得してもらえるようにという話である。先ほど述べたように、私の留学時は、語学の習得が目的であったので、あまり不便を感じなかったのかもしれない。現在、来日している大半は、まず仕事が目的で来日している人が多いと考えると、日本語がままならない状態で来日し、言葉があまり通じないことによって、生活にさらに支障が出てしまっているのは、よく理解できる。言葉の壁から発生してしまう相談事を減らすためにも、日本語が少しでも習得できるように、引き続き尽力してほしい。
多文化共生という考えは、日本国民への周知や考え方のグローバル化への対応や理解を促すだけではなく、来日する外国人にも、訪れる国の宗教や文化、生活習慣などの違いをしっかりと理解してもらわないと両立しないものだと考える。一つの地域に多くの同一外国籍の人々が流入した場合、その地域は、その人々の国の文化や考え一色になってしまうことが考えられる。そうすると、昔からその地域に住んでいた日本人のほうが肩身が狭くなり、最悪のケースでは、日本人が別の地域に転出を考えなければならないことも懸念される。それが、今、ネットでも取り上げられている埼玉県川口市の問題であると思う。
愛知県内でも、同じようにならないことが大切であり、もし一つの国の外国人が多くなっても、しっかりと日本の文化や習慣、ルールを守ってもらえるように指導でき、多文化共生を理解して、その地域で核となる外国人を育て、増やしていかなければならないと考える。愛知県では、そういった面からの人材育成などをどのように考えて取り組んでいるのか。
【理事者】
多文化共生社会づくりには、日本人県民と外国人県民が、互いの文化や習慣の違いを理解し合い、外国人県民にも、地域の担い手として活躍もらうことが大切だと考えている。こうしたことからも、県が設置促進に取り組んでいる地域の日本語教室は、地域で暮らす外国人と日本人が交流し、互いに異なる国の文化や生活習慣などの違いを理解し合うとともに、外国人が生活に必要な様々な知識を学ぶ上で、大変有効な場である。
また、県では、毎年11月をあいち多文化共生月間と定め、多文化共生の理解促進を目的としたイベントである多文化共生フォーラムあいちを毎年開催している。今年度は、一宮市との共催で11月4日に開催を予定しており、市内に住む外国人キーパーソンにも、トークセッションのパネラーとして登壇してもらう予定である。このほか小中学生向けに多文化共生理解のための教材を作成しており、県内の小中学校で活用してもらえるよう働きかけを行っている。
【委員】
ここからは所管外なのかもしれないが、要望したい。
現状、日本では、多くの外国人が多くの職種に就いている。そこには、無論、接客業なども多くある。コロナ明けによるインバウンド需要の高まりもあり、海外からの来日外国人が増加してオーバーツーリズムになっており、各観光地でも多くのトラブルが発生している現状がある。
また、愛知県においても、これからアジア・アジアパラ競技大会、そして技能五輪国際大会などの開催が控えているので、ますます諸外国から来日する人々も増えてくると思う。現在、取り組んでいるそのキーパーソン育成について、そういった課題解決の一つの糸口として、そして、懸念する大規模災害の発生時にも地域で活躍する日本人と外国人の間の架け橋となるように、そういった人材を一人でも多く育てることをお願いして、質問を終わる。
【委員】
私からは、女性活躍に積極的に取り組むあいち女性輝きカンパニーと県内の女子大学生との間で実施された交流会について質問する。
今月初旬に、一般質問の準備で防災DXについて調査するためにデジタル庁を視察した際、一緒に女性活躍推進についても話を聞いた。台風が来たため、オンラインでの1対1での視察となったが、デジタル庁のインナーコミュニケーション、組織文化をつくっていく女性の担当者に話を聞いた。
ちょうど県内視察でも株式会社アイシンを視察し、株式会社アイシンには株式会社アイシンのカラーや組織文化があるように、例えば、株式会社ユニクロであれば株式会社ユニクロの特徴などがあると思うが、視察の担当者が、そういった組織文化をつくっていくチームの担当者であった。
デジタル庁は、できてまだ3年程度の若い組織だが、中央省庁は、どうしても国会の答弁作成などで長時間労働になりがちである上、デジタル業界、IT業界自体が、システムを組むなどで、かなり長時間労働になりがちであり、ワーク・ライフ・バランスには、相当気を配っているようであった。
話を聞きながら、女性活躍推進が目覚ましいポテトチップスのカルビー株式会社の例などを話題にして、様々な意見交換をした。例えば、カルビー株式会社では、女性の役員が、子育てのために率先して16時に帰って長時間労働を撲滅する企業文化があり、デジタル庁でも勤務時間の管理には、相当気を配って取り組んでいるとのことであった。
近年、ビジネスの世界では、心理的安全性という言葉が注目を集め、この言葉に関する本が、数々出版されている。心理的安全性は、自分の考えや意見などを、組織のメンバーの誰とでも率直に言い合える状態のことを指す。カルビー株式会社などでは、例えば、女性の工場長が、子育てと仕事の両立について、三交代制で回っている工場の中で、どうやってチーム、組織をつくっていけばよいのかといった悩みに直面するそうである。そこで、オンラインの女性班長限定のコミュニティーを開設し、その場ではどんなことでも話しても構わないという心理的安全宣言をして、育児の裏技や子供の教育のアドバイス、そして、ほかでもない仕事の悩みなどを、女性の班長同士が一緒に悩みながら互いに助け合って成長していく、そんな場ができているそうである。
全く逆の状態をサッカーのJリーグの例でいえば、負ければ降格し、自分も解雇される、クビになってしまうという失敗が許されない状況だと、チームもぎすぎすして、プレーも萎縮してしまう。うまくいっていない組織、倒産の危険が潜んでいる企業などは、言うべきだけど言いにくいことが言えなくなってしまう。
だからこそ、デジタル庁では、様々な官公庁からの寄せ集めの組織だという現実を踏まえて、心理的安全性を保ち、お互いに理解しながらチームとしてつながれる取組をしているとのことである。
私も、仕事や職場で様々な失敗を経験して痛感したが、例えば、女性が給湯室などで話すことなどにも耳を傾けなければならないし、そういったことを率直にオープンに言える場所、言ってもらえる場所、心理的な安全性が確保されている場が大事だと、まさしく組織を構築している途中のデジタル庁で話を聞いて思った。
県では、あいち女性輝きカンパニーと県内の女子大学生との間で交流会を実施しているが、まさしく学生と社会人とで心理的安全性が確保され、率直に話ができる環境が整った本当によい会だと、ネットでの報告記事を読んで感じている。
そこで、女子大学生とあいち女性輝きカンパニーの交流会について、その具体的な取組内容について伺う。
【理事者】
女子大学生とあいち女性輝きカンパニーの交流会については、女性が生き生きと働く県内企業の魅力を発信するとともに、業種・業界の理解を深め、学生の選択肢を増やすために、昨年度から今年度の2か年で、椙山女学園大学や中京大学など延べ6大学において開催し、参加者は、合計で約230人であった。具体的な内容としては、まず、参加企業の人事担当者から会社概要などを説明した後、各企業の女性社員が、自己紹介を兼ねて自らの業務内容を伝えるとともに、入社前のイメージと入社後のギャップ、仕事のやりがいなどをテーマとしたパネルディスカッションを行った。その後、女子大学生と女性社員との直接の意見交換を行う交流タイムを設けることで、相互の交流を深めてもらった。
【委員】
各大学を回って、学生たちがどんなことに迷ったり知りたがったりしていたのか、輝きカンパニーである企業側が、それにどのように答えていたのか、その印象を伺う。
【理事者】
交流会の中で行われた意見交換では、参加した女子大学生から、働き続けるためにはどうしたらよいかとの質問に対して、カンパニーの女性社員から、自分に合う仕事を見つけることや、得意なことを見つけ諦めずに続けることといった回答があった。また、産休・育休からスムーズに復帰できるかとの質問に対しては、仕事が属人化しておらずマニュアル化しており問題はないなどといったやり取りがあった。交流会全体として、女子大学生ならではの率直な質問に対し、年齢の近い女性社員が自らの体験を交えて回答しており、女子大学生にとって、今後の職業生活における不安や疑問を和らげる機会になった。
【委員】
続けて、出産・育児の支援の観点から質問する。
私が大学生のとき、恥ずかしい話だが、卒業単位が足りず、女性学の教授が主催する女性と仕事研究所というNPO法人でインターンをすれば単位をもらえることとなり、一時期、手伝いをしたことがある。20年前の当時を振り返っても、女性の就労継続に関する意識は高いものの、結婚や出産・育児を機に仕事を辞めてしまうことが課題であった。私は46歳だが、就職氷河期世代で、せっかく手に入れたキャリアのために結婚や出産を諦めた女性の友人も目の当たりにしてきた。
社会人になると仕事以外では友達もできにくいのも現実であり、そういう意味では、本県が取り組んでいる婚活支援などは、実は、こういう出会いの機会が欲しかったと渇望している人が多いのではないかと思う。
もちろん多様性が図られるべきで、男性も女性も結婚を選ばないという選択肢が尊重される社会であるべきではあるが、県内企業の女性活躍を推進するには、出産や育児などライフイベントに合わせたサポートが重要であり、企業がそれを大切にする組織文化を育めるよう、女性活躍推進法の趣旨・目的に照らしても、県には後押しをしてほしいと思っている。
そこで、県内企業の女性活躍推進のためには、出産・育児など女性のライフイベントに合わせたサポートが重要だと考えるが、県民文化局としてどのように取り組んでいくのか伺う。
【理事者】
本県では、女性が元気に働き続けられる愛知の実現に向け、女性副知事をリーダーとするあいち女性の活躍促進プロジェクトチームを設置し、女性のライフイベントに合わせた仕事と家庭の両立支援が図られるよう、ワーク・ライフ・バランスの推進や保育サービスの一層の充実、女性の再就職支援などを全庁横断的に取り組んでいる。そのうち県民文化局としては、仕事と家庭の両立支援に関する優良取組事例を紹介した冊子やウェブサイトを通じて広く県内企業等に周知をしている。
また、あいち女性輝きカンパニーの認証項目に、育児や介護に関する休業後の復帰に当たっての支援を行っていることや有給休暇取得日数を増やす、残業時間を減らす取組を行っていることなどの項目を設定し、県内企業における取組を促している。こうしたことにより、今後とも女性のライフイベントに合わせたサポートを行うとともに、県内企業における女性の活躍に向けた気運の醸成に取り組んでいきたい。
【委員】
一点要望する。
先週の日曜日に北名古屋市の青年会議所(JC)の10周年創立記念会があり、いろいろな話をした。7年から8年くらい前、SDGsが今のように皆に市民権を得るほど有名になる前に、青年会議所の人々がSDGsと言っており、当時、私は市議会議員であったが、市役所にSDGsと投げかけても、何だそれというような空気があった。それが、青年会議所はじめいろいろな人々の取組でこれだけ大きな流れが起きて、今に至っていると思う。
女性の活躍の流れをつくるには、世の中で一つ一つ取り組んでいき、積み重ねで大きく流れを変えていくことが大事である。そのような中で、とりわけ愛知県の果たす役割は大きいと思うので、世の中の流れに敏感になって、少しでも女性が活躍できる社会、そして、何よりも愛知県が女性から選ばれる都市になるよう、引き続きの尽力をお願いする。
【委員】
私からは、愛知県美術館と愛知県陶磁美術館の地方独立行政法人化と、埋蔵文化財の保管とデジタル化について質問する。
先月、私たち委員会の県外調査で、全国に二つしかないと言われている薬の博物館である中冨記念くすり博物館を視察した。建物の規模からすると入館料が非常に安く、とてもこの入館料だけでは賄えておらず、地域の人々の支えと教育機関との連携があって、初めてこの博物館が成り立っていることがよく分かった。委員は薬剤師であり、その場でもすばらしい知見を披露してくれ、私たちも大変勉強になったので感謝したい。
こうした中、奈良県内の約4万5,000点の民俗資料を収蔵している奈良県立民俗博物館が休館するというニュースを目にした。そこで、当時、その館長に話を聞きに行ったが、建物が老朽化し、その空調設備の改修費用の予算が議会を通らなかったことが原因で、県立の民俗博物館を休館するということであった。先ほど述べたとおり、4万5,000点という多くの収蔵品があり、この温度や湿度管理が大変重要であるので、そうした観点から、今後は保管ができないため、処分も含めて検討していくという衝撃的なニュースであった。
そこの学芸員にも話を聞き、私は大きく二つの要因があると感じた。
まず一つ目は、奈良県は、非常に文化財の多い地域であるが、その文化財に対して学芸員等の専門家の人数が少な過ぎることであり、その知見を活用して博物館の必要性を訴えることができなかったことが一つ目の問題である。
そして、二つ目は、この民俗資料の数の割に保管できる場所が非常に少なく、どうしてもこの県立民俗博物館に収蔵品が集まってしまう関係上、収蔵するスペースが足りなくなってしまい、処分せざるを得なくなってしまったこと。この大きな二つの問題点があった。
この学芸員が言うには、これは未然に防げる可能性があったとのことなので、私もこの県議会で取り上げたいと思って、今回質問する。
まず、一つ目の問題、これは、人の問題である。学芸員等の専門家の人材育成には、今回の県美術館と県陶磁美術館のいわゆる地方独立行政法人化が大きく影響してくると思う。美術館の専門人材について聞くが、組織として人員を確保して体制を充実させることも必要であるが、学芸員は、現場で経験を積み、そして、次の人材を育成していくことが重要である。現在、愛知県美術館、愛知県陶磁美術館においては、4月に公表した愛知県文化施設活性化基本計画を基に、運営面を改善するため、2026年4月を目途に、2館一体としての地方独立行政法人化を目指している。まずはこの計画の進捗状況について伺う。
【理事者】
本県では、県美術館と芸術劇場を設置する複合文化施設である愛知芸術文化センター及び愛知県陶磁美術館について、両施設が持つポテンシャルを生かし、ブランドイメージの向上、利用者層の拡大、にぎわいの創出を図るための方策を2022年度から検討してきた。本年4月には、両施設の今後の望ましい運営手法や経営形態、民間活力の活用の方向性などを愛知県文化施設活性化基本計画として取りまとめ、公表した。
現在は、この計画に基づき、愛知県文化芸術センターの建物管理及び芸術劇場へのコンセッション方式や公募型の指定管理の導入、県美術館及び陶磁美術館の地方独立行政法人化について、その可能性や効果などの具体的な検討を進めている。このうち美術館の地方独立行政法人化に向けては、民間の調査会社に委託し、地方独立行政法人化による効果に関する整理などを行うとともに、各美術館の学芸員と定期的に打合せを行い、地方独立行政法人化による課題などの検証を進めている。
【委員】
現在、美術館では、独立行政法人化による効果の具体的な検討を行っているとのことであるが、地方独立行政法人化によりどのような効果が得られるのか。
【理事者】
一般論として、地方独立行政法人化した場合は、地方自治法や地方公務員法の適用がなくなり、予算や人事面において、県直営と比較して、柔軟かつ効率的な運営が可能とされている。具体的には、県直営の場合、予算の執行に単年度の制約があり、年度をまたいだ運営企画が難しいが、地方独立行政法人では、5年間の中期計画に基づき、中長期を見据えた戦略的な予算執行が可能となる。
また、現在、美術館の事務職員は、県の人事異動の制度により数年で異動することが多く、美術館特有の広報や経理などに強い専門人材の育成に課題を抱えているが、地方独立行政法人化により、広報などの専門人材を美術館の判断により採用し、配置することができる。
こうしたことから、地方独立行政法人化により、魅力の向上や来館者の増加につながる経営や運営が期待できる。
【委員】
美術館には、戦略的な予算執行や広報、経理等の専門人材も必要であるが、やはり学芸員が中心的な存在であると考える。地方独立行政法人化により学芸員の人材育成や人材確保についてはどのような効果があるのか。
【理事者】
現在、美術館の学芸員は、本来業務の傍ら美術展の広報など専門外の業務にも携わり、時間を取られているが、先ほど答弁したとおり、地方独立行政法人化により、広報等の専門人材を採用し、配置できるようになることで、作品の収集や研究といった学芸員本来の業務に専念できるようになる。
さらに、地方独立行政法人の職員は、県職員と異なり職務専念義務の制約を受けないことから、特に学芸員においては、講演、講義、執筆活動などをはじめとした積極的な学芸活動が可能となり、学芸活動における柔軟性の確保が期待できることから、学芸員の能力向上や人材育成に効果がある。
また、より学芸活動が行いやすい環境となることで、有望な人材を集めやすくなるので、結果として、学芸員の人材確保においても効果がある。
こうしたことから、県美術館、陶磁美術館については、引き続き見込まれる効果の検証を行い、美術館がさらに魅力的な施設となるよう、地方独立行政法人化の検討を進めたい。
【委員】
この人材育成について一つ要望したい。先ほど答弁にあったように、県直営のときは単年度予算であったものが5年間の中期計画に基づき予算を組めるために中長期計画も可能になること、加えて、学芸員の職務に対しての専念義務が外されること、これは、人材育成やノウハウを次の時代の人間に継承していくことができると思う。
私も全国の様々な事例を研究し、地方独立行政法人化は、本当に理にかなった制度であり、非常によいのではないかと思うが、まず比較されるのが、大阪市の博物館だと思う。
これは、民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律(PFI法)上のコンセッション方式で行っているが、コンセッション方式とした以上、どうしても美術館として利益を上げようとして、例えば、外車のディーラーの商談会をその美術館で行っていたりすることがある。そうすると、本来の美術館の果たす役割からそれてしまうので、できれば地方独立行政法人化で進めてほしい。
なぜかというと、所蔵品のうち、県美術館は77パーセント、県陶磁美術館は87パーセントが、県民からの寄贈によるもので、そういった寄贈者の気持ちに寄り添った形の美術館運営を今後もしてもらいたい。
次に、二つ目の問題として、その文化財等の保管場所の問題である。
これは、民俗資料に限らず、美術館、博物館の資料を保管する収蔵スペースの確保は、冒頭に言ったとおり、全国的な問題となっている。中でも出土品と言われる埋蔵文化財は、文化財であると認められたもので所有者が判明しないものは、原則として愛知県に帰属することとなっている。これはどういうことかというと、文化財保護法上、地中から見つかったものは、まず警察に届けられた後に都道府県の教育委員会に行き、教育委員会がこれは文化財だと認めたものに対しては、6か月間の猶予期間の間に所有者が出てこなければ、県の教育委員会に所有が移ってしまうので、どうしても物が集まってくる傾向にある。
展示等の活用のために譲渡を希望する市町村には、引き渡しているということだが、各都道府県においては、開発行為に伴う発掘調査も増加する中、年々、確実に増え続けていく。愛知県埋蔵文化財調査センター等でも、文化財の保管場所が課題になることが推察される。
そこで、愛知県において、埋蔵文化財である出土品はどれくらいあるのか、また、どのように保管しているのか伺う。
【理事者】
県が実施した発掘調査で出土した埋蔵文化財については、愛知県帰属埋蔵文化財管理要綱においてその取扱いを定めている。愛知県では、文化財室が文化財業務を担当しているところ、出土品については、将来的に研究対象として活用される可能性があることから全て保管しており、展示中のものを除き、通常はコンテナに入れて管理している。
保管場所は、愛知県埋蔵文化財調査センターのほか、あいち朝日遺跡ミュージアム、旧県立常滑高校の廃校舎の3か所である。このうち愛知県埋蔵文化財調査センター内の収蔵庫では、展示・公開に活用するものなど約1万2,600箱を保管している。あいち朝日遺跡ミュージアムでは、朝日遺跡からの出土品のうち、重要文化財2,028点及び主要な出土品約5,100箱を保管している。旧県立常滑高校の廃校舎では、それ以外の約3万8,700箱を保管しており、3か所の合計で約5万6,400箱である。
【委員】
埋蔵文化財は、埋蔵文化財調査センター、あいち朝日遺跡ミュージアム、そして、旧常滑高校の廃校の3か所で全て出土品を保管していることが分かった。
私は、その一方で、埋蔵文化財のデジタル化を進めていく必要があると考えている。参考までに、私が話を聞いた奈良県立民俗博物館では、約4万5,000点の民俗資料の収蔵品がある。奈良県は、今後、その収蔵品全ての3Dデジタルアーカイブ化を盛り込んだ、民俗資料の収集・保存の奈良モデルを策定し、取り組んでいくとのことであった。
そこで、愛知県の埋蔵文化財のデジタル化の状況を伺う。
【理事者】
県が保管している埋蔵文化財は、先ほど答弁した愛知県帰属埋蔵文化財管理要綱で定める出土品管理簿を用いて記録している。この出土品管理簿は、デジタル化されており、遺跡や出土品の種別ごとに検索・抽出することが可能である。
また、あいち朝日遺跡ミュージアムにおいては、2020年11月の開館以降、収蔵品のデジタル撮影等の取組を進めている。
また、埋蔵文化財の記録保存のための発掘調査については、公益財団法人愛知県教育・スポーツ振興財団愛知県埋蔵文化財センターに委託して実施しており、その発掘調査の際に発見した遺物や遺構について、同財団の職員が最新のソフトを活用して3Dデータ化を行っている。
【委員】
埋蔵文化財について、デジタル化を進められているとのことであった。せっかくそうしてデジタル化を進めているのであれば、内部での管理に利用するだけではもったいないのではないか。埋蔵文化財の活用という点では、著作権の問題もあるが、データを用いた調査研究、インターネット公開など、幾つかの活用方法があると考えられる。
さきに挙げた奈良県の民俗資料の収集・保存の奈良モデルでも、3Dデジタルアーカイブを整備した後は、インターネット公開も行っていくと言っていた。
愛知県としても、このような取組を研究し、埋蔵文化財をデジタル化して管理するだけではなく、県民に広く公開して活用していくべきであると思うが、どのような考えなのか。
【理事者】
公益財団法人愛知県教育・スポーツ振興財団愛知県埋蔵文化財センターにおいては、6遺跡から出土した埋蔵文化財20点の3Dデータをウェブサイトに掲載している。閲覧する人は、出土品データの回転や拡大等を自由に行うことができる。
また、同財団が実施する体験イベントでは、近年、鋳型にべっこうあめを流し込んで銅鐸をつくる鋳込みの体験なども行っており、この鋳型には銅鐸の3Dデータを活用しており、大変好評とのことである。
一方で、委員の言うとおり、ここ数年、発掘調査が増加している。これに伴い、県の埋蔵文化財業務に占める発掘調査の比重が大きくなっており、3Dデータ化等の取組は、全体の資料のごく一部にとどまっている。県としては、今後、奈良県の取組も参考にしながら、埋蔵文化財のデジタル化について研究していきたい。
【委員】
最後に要望する。
昨年、博物館法が2022年4月に改正され、博物館DX化を進めやすい環境が整った。それを受けて、東京国立博物館では、メタバースの博物館として、3D化したデータ等をメタバース空間で見られる環境を整え、また、そのメタバース空間で展示している国宝29点の3Dデータを非代替性トークン(NFT)証明書として販売し、大変好評であったと言われている。NFTは、とても価値が上がる場合もあり、今、ブロックチェーンの問題もあって、非常に効果が上がっている。文化財は、保存よりもどちらかというと活用するほうが難しいので、ぜひともこういう先進事例等を見習い、愛知県内でも活用できる環境を整備するよう要望する。
【委員】
私からは、愛知県青少年保護育成条例について伺う。
まず、この愛知県青少年保護育成条例について、昭和36年に制定されているが、その条例自体の制定のいきさつと、今年に至るまでの様々な経緯、条例の概要を伺う。
【理事者】
愛知県青少年保護育成条例については、昭和36年に青少年の健全な育成を阻害するおそれのある行為を防止し、青少年の保護と健全育成を図ることを目的に制定された。これまでに条例の一部改正を19回実施し、直近では、平成30年の青少年インターネット環境整備法の一部改正に伴い、スマートフォン等のフィルタリングに関する新たな規定の整備を行った。条例の目的を果たすため、有害図書類に関する規制、有害玩具類に関する規制、青少年の深夜外出に関する規制、インターネット利用における青少年有害情報の閲覧等の防止や、有害役務営業を営む者等の禁止行為などを定めている。
【委員】
まず昭和36年に制定し、19回改正して、直近では平成30年にインターネット関係など、いろいろな改正を繰り返している。概要としては、有害図書類の指定や有害玩具、あるいは夜間の外出の禁止など、例えば、未成年が異性に対して接客する業務に対する禁止など、様々な規定があると分かった。第1条の総則のど真ん中だが、この青少年の健全な育成を阻害するおそれのある行為とは、一体何を指しているのか。
【理事者】
青少年の健全な育成を阻害するおそれのある行為とは、青少年が心身ともに健やかに成長する上で悪影響を与えるおそれのある大人の行為を指すもので、青少年自身の行為は含まれない。このような考え方から、この条例は、直接、青少年の行為を制限したり罰したりする方法を取らず、全ての大人に対して反省と自粛を促し、その自覚と責任において青少年を健全に育成していこうとするもので、このことがこの条例全体を通じた基本理念となっている。
【委員】
非常にぐさっとくる話で、青少年を直接何か罰するわけではなく、大人の反省と自粛を促す趣旨だと理解した。この条例の中で、先ほどから有害図書類や有害役務あるいは有害玩具といった言葉が出てくるが、今回は、有害図書類についてクローズアップしていろいろ聞きたいと思う。
まず、この条例の第6条、第7条に、有害図書類の指定やその取扱いについての規制が書かれている。ここで示す有害図書類とは一体どういうものなのか。
【理事者】
有害図書類とは、主に愛知県青少年保護育成条例第6条第1項に基づき、書籍、雑誌等の内容が著しく性的感情を刺激するもの、著しく残虐性を有するもの、自殺または犯罪を誘発するおそれがあるものを指している。
【委員】
著しく性的なもの、著しく残虐なもの、そして、著しく犯罪を促すような行為、この三つに当たるとされると有害図書類に指定されるという話である。では、この有害図書類について、罰則は一体どうなっているのか。その罰則は、誰が対象になるのか。見た人か、事業者のうち売った人か、生産した人か、作者か、販売した人か。その辺はどうなっているのか。
【理事者】
罰則の対象は、図書類の取扱いを業とする者であり、例えば、書店やコンビニなど一般の人に図書類を販売する者となる。有害図書類として指定されると、図書類取扱業者は、青少年へ販売することだけでなく閲覧させることも禁止されることになり、この規定に違反すると、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金となる。
また、図書類取扱業者に対しては、有害図書類を青少年が閲覧できないように包装すること、一般の図書類とは別の場所に陳列すること、成人向けコーナー等の表示を掲示することが義務づけられている。これらの包装、区分陳列、掲示義務の違反者が改善命令に従わない場合は、30万円以下の罰金となる。
【委員】
罰則は、販売した者、取扱業者が罰則を受け、実際に売るだけではなく、見せてもいけないということである。これは、包装や陳列に関しても、細かい規定があると今聞いた。
では、この有害図書類の指定に関して、いろいろな規定があって、本の何パーセント以上に例えば全裸や、性的な行為について映像であれば連続何分間という基準があって、それを超えるものは、包括指定として自動的に指定されると記載してあった。それとは別に、個別指定もあると書いてある。この有害図書類の個別指定に関しては、どのように行われているのか。また、実際にどういったものが何件ほど指定されているのか。近年の傾向についても併せて伺う。
【理事者】
有害図書類の個別指定に関しては、県が審議会に諮問し、有害図書類の基準に該当すると認められるとの答申が得られた場合に、知事による指定を行っている。昨年度は、実話ナックルズ6冊、裏モノジャパン12冊の計18冊を個別指定しており、これらの雑誌については、著しく性的感情を刺激する内容や、犯罪の手段・方法を詳細かつ刺激的に描写する内容、また、暴力団・暴走族等の社会道徳や刑罰法令に反する団体を賛美するような内容であることから指定に至った。
また、一昨年度は、実話ナックルズ6冊、裏モノジャパン12冊に加え、人殺し大百科という書籍を個別指定しており、計19冊となる。人殺し大百科については、他県で個別指定されたことを参考に当課で内容を確認したところ、殺人を陰惨な表現で描写し、殺人の手段や方法を詳細に教示する内容であったことから、審議会の意見を聴いた上で個別指定した。
なお、近年の個別指定の傾向は、青少年の非行化を防ぐ観点から、成長段階にある青少年に規範意識の低下等の悪影響や反社会組織に対する憧れなど、誤った認識を与えるおそれのある書籍や雑誌を個別指定している。
【委員】
実際に指定された本の名称など、人殺し大百科というのは怖い、聞いたことがなかったが、そういったものが指定されているとの答弁であった。審議会の意見を聴いた上で個別指定しているとのことで、審議会に上がってくるものはどのように選定しているのか伺う。
【理事者】
他県での指定状況や県民からの情報提供を参考に、社会活動推進課の担当者が月に1回程度、書店等に赴き、有害図書類の指定の可能性のある書籍や雑誌等を購入している。購入後は、当課で複数の担当者が内容を確認し、有害図書類の個別指定の要件の該当性を判断した上で審議会に諮っている。
【委員】
職員が月に1回程度、本屋に実際に行っているとのことであった。他県の状況、例えば東京都は非常に多いらしく、複数の職員が実際に本屋などに行き、表紙等で確認して、これは大丈夫なのかというものを100冊ほど集めてきて、審議会に上げているようである。
少し古いが、2021年にこども家庭庁が発表したデータでは、全国で最多の指定があったのは宮城県の41件で、和歌山県が32件、山梨県が30件、岩手県と愛知県が21件であり、愛知県もある程度多いほうである。この全国最多だった宮城県では、県警察から派遣された県の職員1人から2人が、事前に書店やコンビニで15点ほど購入し、中身を確認して、審議会にかけるようである。もちろん、先ほどの包括指定で有害図書類と指定されたものは自動的に入るが、個別指定と言われるものは、そういった職員が実際に審議会に上げるものを持ってくる。愛知県では、この審議会に上がるものはどれくらいあるのか。
【理事者】
審議会に意見を聴いたものが全て指定されるとは限らず、審議会から有害図書類と認められるとの答申が得られた場合のみ、有害図書類として指定されることになる。昨年度においては、実話ナックルズ6冊、裏モノジャパン12冊の計18冊が審議会に諮られ、その全てが有害図書類に指定された。
【委員】
もちろん専門家がメンバーだと思うので、これは大丈夫、これはよくないといった判断をするのが審議会だと思う。少し意地悪な質問になったかもしれないが、私が言いたいのは、審議会に上がってしまえばもう指定されるという状態は、準決勝、決勝ではないか、決勝に上がればもう確実に優勝といったイメージがしてならない。予選と言ってよいのか分からないが、その予選で何冊上がっているのか。前回では18冊上がって18冊が指定されたが、これが他県ではもっと多いのではないかと思っている。この辺りについて、愛知県では、何冊といった歩留りのようなものがあるか。
【理事者】
本県においては、必ずしも審議会の意見を聴いたものが全て指定されるとは限らないが、基本的に審議会に諮問したものについては全て指定されている状況で、昨年度については、18冊の書籍が指定される結果となっている。
【委員】
年間で18冊上がって18冊指定。他県なら、例えば月間で十何冊、月に100冊という予選を経て指定に至っていると思い、質問した。
それでは、この有害図書類に指定されたものは、県民あるいは事業者などにどのように公開しているのか。先ほど答弁にあった書店やコンビニ、あるいは販売業者というとインターネット業者もあると思うので、こうした事業者に対して、どのように通知しているのか伺う。
【理事者】
指定された有害図書類については、愛知県広報やホームページに掲載して公開しているほか、県内の図書類取扱業者へのはがきによる通知や、一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会を通じて県内のコンビニに通知を行っている。
また、本条例の規定は、愛知県内における青少年に対して有害図書類の販売等を規制するものであり、インターネットでの販売にまで効力が及ぶものではないことから、ネット販売の業者には通知していない。
【委員】
インターネットは対象になっていないということだが、これも実は、様々、物議を呼んでいる。鳥取県が2020年に有害図書類の指定に関してインターネット業者も対象とした際には、もちろん県内の青少年に対して見せてはいけないという規制だが、その有害図書類に指定されたものに業界団体が非常に厳しい対応をした。これは、実は東京都でも似た話がある。
例えば、アマゾンジャパン合同会社などのインターネット大手の販売業者は、有害図書類あるいは不健全図書等に指定されると自主的にそもそも取扱いをやめるという現象も起こり、それは作家たちに対してどうなのかと物議を醸したが、今、答弁があった内容に関しては理解した。先ほどから私は有害図書類という言葉を使っているが、不健全図書という言葉も出した。他の都道府県の条例においては、この同様の趣旨の図書類に関してどのような呼称になっているのか伺う。
【理事者】
有害図書類に関する規定を設けている都道府県は、長野県を除く46都道府県であり、その自治体の多くが有害図書類の名称を用いていると認識しているが、東京都では、不健全な図書類という名称を用いている。
【委員】
私も調べたが、答弁にあったとおり、45の道府県では有害図書類と指定し、東京都1都だけは不健全図書という呼称を使っている。
私が、今回、質問しようとしたきっかけは、今年の3月頃に、公益社団法人日本漫画家協会が、あしたのジョーのちばてつや先生や、名探偵コナンの青山剛昌先生、はじめの一歩の森川ジョージ先生など有志112人の連名で、東京都に対して、この不健全図書という名称の変更について様々な要望したことである。青少年に対して不健全、東京以外であれば、青少年に対して有害という条例の趣旨は分かるが、成人向けに対しても同様の風評被害が出ていたりレッテルが貼られたりして、先ほど述べたように大手通販サイトなどが自主的に取扱いをやめるなど、作家に実害が出ているのではないか、あるいは、出版業界に対しても実害が出ているのではないかということで、名称変更の要望を出した。
これは、東京都でも物議を呼び、いろいろと紆余曲折あったが、この9月に不健全図書という名称を対外的に使用するのをやめ、変更したという報道があった。私も、友人の東京都議にいろいろないきさつについて話を聞いた。これは、都民ファーストの会や立憲民主党が取り上げており、立憲民主党が独自にパブリックコメントしたところ、都民から268件の意見が来て、そのうちの8割以上が、名称変更の趣旨に関しては賛成であった。
愛知県の条例でいうと第6条の指定について、東京都青少年の健全な育成に関する条例の第8条にこの不健全図書の指定の規定があるため、第8条の規定による図書で、8条指定図書という表現にこれから改めていこうとしているようだ。
これは、実は、業界にとってはすごく大きな動きだと捉えられている。公益社団法人日本漫画家協会を中心にした様々な出版業界からも、風評被害が少しでもなくなればよい、こうした東京都の動きが全国に波及してほしい、といったコメントが上がっている。私も子供を持つ親として子供に見せたくない本があるというのは、重々理解できる。しかしながら、私は、不健全である、有害であるといったレッテルを貼ることが、本当にこの条例の趣旨を社会に生かしていくことになるのかという問題意識を持ったため、今日質問した。
東京都は、60年間にわたってこの不健全図書という名称を使用しており、今回も実は、条例改正には至っていない。条例は、不健全図書という名称のままだが、外向けには8条指定図書という呼称の使用について検討し、これから変更するよう動いている。こうした動きについて、県及び担当課として、どのように受け止めているのか伺う。
【理事者】
報道によれば、東京都では、漫画家有志による不健全という名称の変更を求める要望などを踏まえ、条例上の不健全な図書類の文言は変えずに、ホームページや公報においては、東京都青少年の健全な育成に関する条例第8条の規定により指定された図書類と表記するとのことである。本県では有害という名称を用いているが、本条例に基づき指定された図書類については、青少年の健全な育成を阻害するおそれのある有害な図書類であると考えており、この有害という表現自体は、条例の目的に照らして適切なものと考えている。
【委員】
有害という表現をめぐっては、私も全国の動きを注視していきたいと思う。今日何かをもって名称の変更を迫っているわけではないが、私自身は、これから必ず全国へ波及すると思う。
今回、東京都と大きく違うのは、愛知県はコミック類の指定を今現在していない状況にあることだと思う。他県ではそうではない。コミック類の指定も多い。愛知県も、今は指定していないだけであり、スキームとしては、コミック類も指定できる条例の構えになっているので、私自身の考えとしては、今後、検討を行っていく必要があると強く思っている。
今回、この条例をいろいろと勉強して思ったことが二つある。
一つは、昭和30年代、他県では古いと20年代に制定された条例もあるそうだが、この有害図書という言葉を現在に照らし合わせて使用していくことが、本当に社会、時代としてふさわしいのかどうか。
もう一つは、そもそものこの条例の形骸化を心配する、時代に合っていない表現が多々あることである。条例は全7章立てで、第7章は罰則であり、中身に関しては第1章総則から様々あるが、大きな章である第4章では、例えば、テレホンクラブの営業に関わる利用カードの販売の規制、多分これはテレホンカードのことだと思う。当時、課題になったことをずっと継ぎはぎしているのでそうなるのかもしれないが、今現在で言えば、もっと大きな青少年に対しての社会課題があると思う。直近で平成30年にインターネットフィルタリングの法改正に伴って条例を少し改正したようだが、スマートフォンあるいはインターネットのゲーム、あるいは頂き女子、オーバードーズの問題など、青少年が抱えている様々な問題を、本当にこれがカバーできているのか、非常に疑問をもった。
最後に、私自身は、先ほど述べた名称の変更については6条指定図書などに変更したほうがよいと思っており、条例の中身自体も本当に実態と合っているのかと強く感じている。
もう一つ付け加えるならば、先ほど私は有害図書の予選と言ったが、予算の範囲ももちろんあるものの、世の中にごまんと出回っている出版物の中で18分の18では、愛知県として個別指定が少ないのではないかと思う。恐らく過去に遡っても、審議会ではじかれるケースはほとんどないと思うので、実態に伴う条例の運用をしてほしい。今言ったのは名称の変更と、時代に合っているかどうか、あとは実態と合っているかどうかである。この辺りを踏まえて、最後に、私は条例改正も含めて様々検討してほしいと思うが、受け止めについて伺う。
【理事者】
有害図書類は、青少年の成長にとって有害となり得るため、青少年への販売等は規制されているが、18歳以上の者が閲覧することや、図書類取扱業者が18歳以上の者に販売することを妨げるものではない。
本県においては、有害図書類という名称は長く用いられており、有害図書類が青少年の健全な育成に悪影響を及ぼすことは、広く浸透しているものと考えている。また、有害図書類という名称を変更することによって、青少年にとって好ましくないものであるというメッセージが伝わりにくくなることも懸念される。
このため、本県においては、現在のところ、有害図書類の名称を変更することは考えていないが、他県の状況や業界団体の動向を引き続き注視したいと考えている。
また、先ほど委員から話のあった、条例の中身が実態に合っていないのではないかという点について、これまでも19回条例改正してきたが、同様に他県の状況や業界団体の動向などを引き続き注視したい。
【委員】
非常に苦しい答弁であり、気持ちは分かる。しかしながら、私は、有害図書という表現が長く用いられているから今後も使う、浸透しているから使うというのは全くもって違うと思う。これは、社会や時代をしっかり見ていかないといけない。青少年とは18歳未満の子供たちである。昭和三十何年にできた条例を少しずつ継ぎはぎしており、はっきり言って大変時代遅れな条例だと思っている。
姪っ子を見ていると、あまり個別名称を出してはいけないかもしれないが、エーペックスやフォートナイトといったインターネットの人をばんばん殺すゲームで、殺し方を学び、ヘッドショットがいい、頭狙って打ってといったことを子供たち同士がクラスで話し合っている。私はそちらのほうがよほど健全ではない、有害であると思う。例えば、私たちは本を買うのも40パーセント、50パーセント近くがインターネットで買っている。書店やコンビニで閲覧できるかどうかや、ゾーニングして18禁ののれんをつけてその奥に行かないと見られないというのは、もう時代遅れである。
他県の状況を注視するという答弁はよく聞く。私は本当に注視しているのかと思うときがあるが、本当に注視してほしい。東京都の動きが全国に広がることを期待しているという多くの声がある。愛知県は、本来、率先して動かなければいけない県だと私は思っているので、ぜひその辺りは強く要望したい。よろしくお願いする。
【委員】
一般質問でも取り上げたが、旧優生保護法に基づき、本人の意思とは関わりなく強制的に生殖機能を除去する不妊手術を施したことに対して、本年7月に最高裁の判決が確定した。
この法律は国会において、昭和23年に全会一致で制定された。法律そのものが、制定当時から、その前年に制定された憲法の第13条、第14条に違反しているという厳しい認定が確定し、さらには、違法性は認めながらも賠償請求に対しては20年の除斥期間が過ぎているため賠償しなくてもよいという国の主張についても、国が除斥期間を主張すること自体が不正義だと全面的に退けた。これは非常に厳しい判断である。この判決があった後、政府は、原告や被害者への全面的な謝罪と賠償に加え、この根本にある優生思想そのものを克服する取組を行うと宣言し、今、その手続が始まっている。
本会議では保健医療局に答弁してもらったが、本来、これは言うまでもなく非常に重大な人権侵害の事件であるので、この問題に関して改めて、人権行政を所管する本委員会において人権推進課に県の見解を尋ねたい。人権問題としてこの問題をどのように認識しているのか。
【理事者】
本年7月3日の旧優生保護法訴訟の最高裁判決によると、正当な理由なく特定の障害のある人たちを手術の対象にし、障害のない人と区別することは、合理的な根拠に基づかない差別的な取扱いだということであった。本件については、知事が9月18日の定例記者会見で、法律に基づいた機関委任事務として行っていたが、国・県が関わったことは大変重いことであり、大きな人権侵害があったと言わざるを得ないと発言しており、当課としてもこうした不妊手術の強制は、重大な人権問題であったと認識している。
【委員】
本県の人権施策上の今後の取扱いについてであるが、愛知県人権尊重の社会づくり条例と基本計画であるあいち人権推進プランを、我々の委員会が所管する局において推進しているものの、優生思想、あるいは障害者が子孫をつくる権利といったことが、現在のところ、このプランの中に直接的に入っていない。これだけ大きな人権問題として浮上した以上、この人権施策全般を包括する立場で、何らか位置づけし、取り込む必要があると考えるがどうか。
【理事者】
あいち人権推進プランは、条例に基づく基本計画として、人権施策の総合的かつ計画的な推進を図るために全庁を挙げて策定したものである。現在、保健医療局等が中心となって取り組んでいる旧優生保護法に係る人権問題の解消については、委員の指摘のとおり、現在、そうしたプランには含まれていない。
こうした中、今後、国や保健医療局等が用意する啓発資料をあいち人権センターで配架するほか、ウェブページに掲載するとともに、旧優生保護法に係る人権問題の解消に資する啓発用の図書を購入するなど、関係局と連携を図りながら人権課題の解消を図っていきたい。
【委員】
私の一般質問の中で、県立高校で実際に採用されていた高校の保健体育の教科書の記述を紹介した。教育長にも、この問題について学校教育の中で、これから結婚や出産に直面する高校生たちに、どういう考え方を教えていくのか尋ねた。教育委員会としては、教員を中心にした研究会で、実際に起きた不妊手術や、それを受けた人の痛み、思想の問題点などについて具体的に研究し、学校教育の中に生かしていきたいという話も聞き、期待している。
今の答弁にあった、本県が設置するあいち人権センターでの図書の配架やウェブページの記載内容に盛り込むだけではなく、例えば、職員をはじめ一般県民の啓発や研修に、これをどのように生かしていくのか、もう少し補強して答弁してほしい。
【理事者】
当課では、企業で働く人や学校の教職員及び生徒、県内の行政職員など、広く県民に向けて愛知県の人権に関する取組を説明するとともに、日常生活の中にある様々な人権問題全体の話題を通して、人権について考えるきっかけとなるように、人権研修を、昨年度は70回、今年度も8月末までに35回実施している。
今後、こうした人権研修を行う際には、旧優生保護法の下で行われた不妊手術の強制は、重大な人権問題であったことを説明していきたい。こうした取組を進めながら、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現を目指したい。
【委員】
最後に要望する。私も今回この問題を取り上げるに当たって、原告や裁判を支援してきた弁護士など、いろいろな人から話を聞き、資料を読んで、改めてこの優生思想という問題の深刻さを知った。そして、露骨な記載こそなくなったが、実際には、現在もまだ優生思想と思われる、例えば、障害のある人が結婚や出産をしようとしたときに立ちはだかる周囲のいろいろな圧力や障害について知った。特に、原告の尾上夫妻の話を聞くと、一般的に知的障害や精神障害と言われるが、今回、裁判の中で本当に勇気を持って立ち上がった人々の多くは、聴覚障害者である。もともと問題になったときには、聴覚障害者がそれほど多く比重を占めているとは、必ずしも考えられていなかった。
自らの体験があまり人前にさらしたくない話でも、裁判しようと立ち上がって、この不当性を訴える先頭に立ち、一般財団法人全日本ろうあ連盟が組織的に取り組むことで何百件という実例を発掘した。この中には、いわゆる優生保護審査会での審査によって、法令上は強制的ではなく同意という形を取って手術した人が、むしろ主である。裁判として法廷で争われ、最高裁判所が、これは根本的に憲法違反だと認定した対象は、かなり広がっている。旧優生保護法の第4条と第7条の規定が、本人の同意に基づかないで手術した例であるが、それ以外にも、この聴覚障害者の例のように、優生保護法があるために、優生思想に基づいて一応同意という形を取らされて手術をした、あるいは、中絶手術に関してもこの対象に含めると、最高裁判所の判決の影響が今どんどん広がっている。
なので、この根本になる優生思想に関しても、今もなお、例えば、出生前診断の問題などは、命の選別に関わり、どこまでのことが許されるのか。生命倫理上の問題もあって、これは非常に深く影響がある。
片や、過去の例を見ると、近年では、元職員による神奈川県立津久井やまゆり園の障害者の虐殺事件があった。一人の特異な人間の犯罪ではあるが、この元職員は、一番身近で重度障害者の現状を見ていながら、この人たちは、もう生きていること自体が不幸だという独断で勝手な判断をして、あのような虐殺に至った。
その根本には、例えば、かつてのナチスドイツのユダヤ人虐殺は非常に有名であるが、優秀なドイツ民族をこれから繁栄させていこうという考え方の下に、ユダヤ人を虐殺する前の段階で、まず彼らが目をつけたのは実は障害者である。障害者に対し、断種手術はもちろん、障害者自体を抹殺していき、それが結局、ユダヤ人にどんどん拡大されてあの悲劇を生んだ。根本にあったのは優生思想である。
優生思想は一見すると、科学的な根拠を少しでも示されれば、そういう子は生まれないほうがよい、そんな不幸な子はもともと産まないほうがよいのではないかといった方向に行きがちな非常に難しい問題を抱えている。単に本人の同意もなく手術をしたのはいけないというだけの話ではないという意味で、優秀な民族、優秀な子孫を残そうという意図が、そのような極端な悲劇につながったことまで遡って、その影響の恐ろしさ、危険性を相当深く理解しないといけない。
これは、本当にいろいろな実例や映画もある。新川の近くで聴覚障害者の連盟がつくった沈黙の50年という映画の上映があったので、私もそれを見に行ったが、本当にショックを受けた。聾学校に通いながら、聴覚障害同士で結婚することも結構多い。それに対して、結婚までは阻止できないが、出産する、子供をつくることに対して、いかに周りからの強制があって、泣く泣く同意という形で不妊手術をしたという話が、映画の中ではいろいろな人の実例で赤裸々に描かれていた。こういった視聴覚教材もいろいろあるので、そういったものを幅広く収集して、特に若い人たちの心に本当に届くような啓発に取り組んでほしい。
【委員】
私は、先ほどの委員の質問にも関連するが、愛知県の図書館の利用状況について、これからより多くの人に来てもらい、利用してもらうための取組について幾つか伺う。
愛知芸術文化センターや愛知県陶磁美術館、愛知県図書館などの文化施設の利用者が今、年間200万人ほどいると言われている。2022年12月に策定されたあいち文化芸術振興計画2027では、こういった文化施設の来場者を、毎年度270万人以上にする目標があると聞いている。2022年というと、ちょうどコロナ禍の最中で利用者が減ったときだが、陶磁美術館などではいろいろな催しをしており、そのときの催事によって入場者数にも随分差があると聞く。
図書館では、あまりそういうこともなく、ある程度一定だと思う。私の学生時代には、図書館で勉強してくると言えば、家を出ていく理由があったというだけであって、本当に行ったのか行かなかったのかは分からないが、外出する口実となったところが図書館であって、私にとっては非常に都合のよい場所であった。まず、愛知県図書館のここ数年の利用状況についてどうなっているのか伺う。
【理事者】
県図書館では、新型コロナウイルス感染症の影響を受ける前の2019年度以前は、毎年50万人を超える来館があった。しかしながら、感染の拡大に伴い、国や県独自の緊急事態宣言による不要不急の外出の自粛要請の影響や、約3か月間にも及ぶ臨時休業の措置を講じたため、2020年度は、34万1,146人と大きく減少した。その後は回復傾向にあるが、2023年度は41万1,533人となっており、コロナ前の水準には戻っていない。
【委員】
当然コロナ禍の影響によって来館者が大幅に減少したことは、当たり前のことであるが、その中において、2021年1月から、わざわざ来館しなくても済む電子図書サービスが開始された。愛知県が2022年7月に実施した愛知県図書館の利用状況サービスをテーマとした県政世論調査においては、県図書館が今後どのような図書館であってほしいかという問いに対して、電子書籍やデジタル化資料の閲覧など、図書館へ行かなくてもよい、いわゆるウェブサイトで資料が閲覧できる図書館がよいという回答が上位を占めたと聞いている。
そこで、電子書籍サービスの電子書籍の冊数から閲覧回数など、利用状況について伺う。
【理事者】
県図書館では、民間の電子書籍サービスを活用し、モノづくり文化、健康医療、地域資料の三つの分野を中心に、本年8月末現在、6,403冊の閲覧サービスを提供している。閲覧回数については、2021年度の導入直後は月7,000件を超える利用があったが、2022年度以降は月5,000件台の利用となっており、横ばいの状態となっている。
【委員】
まだまだ来館者がコロナ前の水準に戻っていない。そして、新たに導入した電子書籍サービスの閲覧者数も、最近は横ばいであるが、県図書館のさらなる利用者の拡大に向けて、今後、どのような取組をするのか、特に何か目新しいことがあれば教えてほしい。
【理事者】
県図書館のさらなる利用拡大に向け、幾つかの観点から答弁する。
まず、来館者全体に向けた取組としては、図書館1階のエントランスのヨッテコにおいて、これまで実施している企画展示や講演会、イベントの充実に加え、新たに金融機関と連携してビジネスセミナーを開催するなど、さらなるにぎわいの創出を図っていく。
また、視覚障害者には、録音図書や展示図書の貸出し、対面朗読サービスなどにより読書を楽しむことができる環境をこれまでも整備してきたが、この4月に館内に読書バリアフリー推進チームを立ち上げたので、さらなる取組や啓発活動を実施していく。
さらに、来館しない人に対応する取組として、先ほど委員が言ったとおり、電子書籍サービスの冊数の充実を図るとともに、このサービスの使い方講座の開催や、県図書館のSNSなどを通じた利用促進を図っている。
加えて、県図書館が所蔵する著作物の一部をデータ化して利用者に提供する公衆送信サービスを、国や関係団体の動向を注視しながら準備を進めている。
こうした取組により、県民に開かれた図書館として、県民の誰もが質の高い図書サービスを享受できるようにこれからも努めていく。