委員会情報
委員会審査状況
県民環境委員会
( 委 員 会 )
日 時 令和7年3月12日(水) 午後0時58分~
会 場 第6委員会室
出 席 者
平松利英、村嶌嘉将 正副委員長
坂田憲治、伊藤辰夫、青山省三、いなもと和仁、ますだ裕二、柳沢英希、
高木ひろし、河合洋介、園山康男、阿部武史 各委員
県民文化局長、県民生活部長、学事振興監、人権推進監、女性の活躍促進監、
文化部長、関係各課長等
<付託案件等>
○ 議 案
第 1 号 令和7年度愛知県一般会計予算
第1条(歳入歳出予算)の内
歳 出
第3款 県民環境費の内
第1項 県民生活総務費
第2項 文化学事振興費
第3項 社会活動推進費
第4項 統計調査費
第9款 教育・スポーツ費の内
第8項 大学費
第9項 私立学校費
第3条(債務負担行為)の内
愛知県芸術劇場等運営等実施契約
芸術文化センター施設設備整備工事
芸術大学施設設備整備工事
第 19 号 地方独立行政法人愛知県美術館機構評価委員会条例の制定について
第 32 号 愛知県青少年保護育成条例の一部改正について
第 33 号 暴走族等の追放の促進に関する条例の一部改正について
第 48 号 地方独立行政法人愛知県美術館機構の設立について
(結 果)
全員一致をもって原案を可決すべきものと決した議案
第1号、第19号、第32号、第33号及び第48号
○ 請 願
第 70 号 「小中高生の新型コロナワクチン接種後体調不良者への対応を求める」について(県民関係)
(結 果)
賛成者なしをもって不採択とすべきものと決した請願
第70号
<会議の概要>
1 開 会
2 議案審査(5件)
(1)理事者の説明
(2)質 疑
(3)採 決
3 請願審査(1件)
4 一般質問
5 閉 会
(主な質疑)
《議案関係》
【委員】
予算に関する説明書120ページ、3款2項文化学事振興費、2目文化財費の(8)文化財保存修理費補助金のうち、イの県指定文化財補助金について伺う。
令和7年度予算では3,627万7,000円の予算が計上されているが、今回の修復の内容と愛知県内の有形文化財にはどういった修理、補修が何件存在しているのか。
【理事者】
令和7年度の県指定文化財補助金の対象は6件であり、その内訳は、建造物では住宅の屋根等の修理はじめ2件、美術工芸品は絵画の欠損部分の修復はじめ2件、有形民俗文化財は祭礼用具の修理が2件となっている。
【委員】
県指定文化財補助金の予算額は、近年どのように推移しているのか、また過去5年間の推移を教えてほしい。
【理事者】
県指定文化財補助金は、要望のあった事業に対し、ヒアリング等を通じて文化財としての価値を維持するために必要な修理等であるかを確認し、補助対象に該当するものは全て補助している。このため、補助金の予算額は毎年度増減しており、過去5年間の予算額は、2020年度は2,117万4,000円、2021年度は2,278万7,000円、2022度は2,306万2,000円、2023年度は3,362万円、今年度は2,141万2,000円である。
【委員】
その年に上がってくる修理、補修によって金額が変わるため、2,000万円から大体3,000万円台と多少のばらつきがあるのだと思う。
次に、愛知県の有形文化財の指定件数の推移と、現在の指定件数を伺う。
【理事者】
県指定の有形文化財は、過去5年間では、2020年度に3件、2021年度に10件、2022年度に1件、2023年度に2件、2024年度に7件指定している。過去5年間の年平均では4.6件となっており、県指定の有形文化財は、2025年2月現在で、建造物44件、美術工芸品413件のほか、有形民俗文化財が25件で、合計すると482件である。
【委員】
県指定の有形文化財の指定件数は、増えることはあっても減ることはよほどないと思う。
指定件数が増えていくことを考えると、文化財の修理や補修に携わる職人自体の数が減っていくこともあり、今後、物価の高騰に合わせて人件費も上がっていくと予測できる。
そこで、愛知県に存在する有形の文化財の修理について、点検等を含めどのような考え方で進めているのか伺う。
【理事者】
文化財は過去から大切に受け継がれてきたものであり、これからも元の価値を保ったまま保存していくため、修理に当たっては極力従来と品種や品質が同じ資材を用い、同じ製法、工法で行っていく必要がある。そのためには、所有者による日頃からの自主的な点検を踏まえ、その文化財の由来や変遷を調査し、専門家の意見を聴きながら修理を行うかどうか、どのような修理を行うかを決めていく必要がある。
しかし、一言で有形文化財といっても、建造物、美術工芸品、有形民俗文化財等に分かれており、相談すべき専門家もそれぞれ異なる。また、固有の由来や変遷があり、年代や工法、使用している資材の種類も様々である。このため、文化財の修理は一つ一つ個別に相談してもらい、毀損していない部分は極力そのまま残すという方針のもと、直す部分も新しいものへの置き換えを避け、できるだけ古い材料を生かすなど、もともとの形を損なわないような修理を検討していくこととなる。
県としては、県民の財産である県指定の文化財を未来に継承していくため、それぞれの文化財の特性に応じた適切な修理が行えるよう、今後とも一つずつ丁寧に相談を聞き、補助金により支援していきたい。
【委員】
文化財が持つ価値を保つため、今まで使われていた資材をできるだけ使いながら保存していく考えとのことだが、物価高騰や技術者の減少もあり、補修や維持管理に必要なお金は今後右肩上がりに増加していくことが懸念される。今後も文化財が増えていくことを考えると、DX化を進め、修復内容や修復履歴のデータを蓄積し、デジタル技術の発展やAIを活用することで、スムーズに中長期的な予算組みができると思う。そうしたことも念頭に置き、できる限り維持管理の仕方をアナログからデジタルに変えていきながら、文化財が広く県民に長く見てもらえるよう、しっかりと取り組んでほしい。
【委員】
議案書237ページ、第32号議案、愛知県青少年保護育成条例の一部改正について、これは先日の本会議一般質問で公明党の木藤俊郎議員からも質問があったが、確認の意味で質問する。
愛知県青少年保護育成条例の一部改正に至った経緯を改めて説明してほしい。
また、今回の条例改正では30万円以下の罰則規定が設けられているが、刑法の16歳未満の者に対する面会要求等で科される罰則との違いがあるのか、特に16歳未満の者に要求した場合は刑法と条例が重複すると思うが、どのような扱いになるのか伺う。
【理事者】
まず、条例の一部改正に至った経緯についてであるが、近年、スマートフォンの普及により、SNSなどを通じて知り合った相手から18歳未満の青少年がだまされる、脅されるなどして、自分の裸体等の撮影画像を送らされる、いわゆる自画撮り被害が多発している。青少年が送らされた画像データは、インターネット上に流出すると、将来にわたって画像の拡散などの不安にさいなまれることになるため、青少年の人格形成にとって大きな障害となり、被害が深刻化することになる。
また、自画撮り画像の要求手口は、匿名性などのインターネットの特性が悪用され、青少年と同性、同年代を装うなどの狡猾な手段が用いられており、被害者は心理的に拒否できない状況に追い込まれることで多くの被害に遭っている。
こうした現状に対し、被害を未然に防止するため、2023年7月に刑法が一部改正され、16歳未満の者に対する面会要求等の罪が新設されたが、16歳、17歳が保護の対象外となっているため、青少年の保護をする観点からは不十分な状況にあった。
そこで、刑法では保護の対象外となった16歳、17歳を保護するとともに、多発する青少年に対する自画撮り被害を未然に防止するため、本条例を改正し、18歳未満の者に対し児童ポルノ等の提供を求める行為を禁止する規定を新設することとした。
続いて、条例と刑法の罰則の違いと16歳未満の者に要求した場合の取扱いについてであるが、刑法では、16歳未満の者に自画撮り画像の送信を要求した場合には1年以下の懲役、または50万円以下の罰金を科すこととしているが、条例では18歳未満の者に欺きなどの不当な手段を用いて自画撮り画像を要求した場合に限り、30万円以下の罰金を科すこととしている。
刑法の罰金が50万円に対して、条例の罰金が30万円となっており、刑法の罰則に比べて量刑が軽くなっているが、これは本県の青少年保護育成条例において設けられている他の罰則との均衡や、他の都道府県の同様の行為を禁止する条例の罰則を勘案して設定したものである。
なお、16歳未満の者に自画撮り画像の送信を要求した場合には刑法が優先して適用され、1年以下の拘禁刑、または50万円以下の罰金が科されることになる。
【委員】
この条例では、不当な手段を用いてとあるが、不当な手段とは何か。
【理事者】
青少年の未熟な判断力に付け込んで、その判断を誤らせるような態様を不当な手段としており、その類型は、拒まれたにもかかわらず、威迫、欺き、困惑、対償を供与、供与の申込み、供与の約束の七つとしている。
なお、ここでいう威迫とは、学校生活の相談に乗るなど青少年からの信頼を得て、私生活上の秘密を聞き出した後に態度を豹変させ、秘密をばらされたくなければ裸の画像を送れなどと要求するケースのことであり、欺きとは青少年と同年代、同じ性を装い、体の成長の悩みを相談する過程などで要求するケースのことをいう。
また、困惑としては、画像を送ってくれないと死んでしまうなどと要求するケース、対償を供与とはお金を支払った見返りに要求するなどのケース、供与の申込みとは画像を送ってくれたらお金をあげるなどと要求するケース、供与の約束とはお金をあげることなどを約束した上で要求するケースのことを指している。
【委員】
今の説明によると、16歳、17歳の高校生カップルが恋愛感情から相手の自画撮り画像を要求した場合には、これは不当な手段ではないので罰則の適用もないが、どのように防止するのか。
【理事者】
青少年同士が恋愛感情から要求する場合であっても、関係の破綻後、嫌がらせの感情などを抱いて画像を拡散させたリベンジポルノの事例もあることから、新年度、全学校に配布する啓発チラシではこのような事例も紹介し、条例が求めるいかなる理由があっても自画撮り画像を要求してはならないことを青少年に対してもしっかりと周知し、被害の未然防止を図る。
【委員】
罰則がないことで被害が出ることをとても心配している。青少年が犯罪に巻き込まれることのないよう、周知徹底を要望する。
【委員】
予算に関する説明書の119ページ、美術品等共同収蔵庫整備推進費について伺う。
昨年9月の本委員会で、美術品等を含む文化財の保管場所について質問した。当時は出土した埋蔵文化財に限った質問をしたが、それについては保管場所がなく、廃校になった学校等で保管していく方向性を示す答弁だった。この保管場所は全国的に課題であり、9月の質問の際に例とした奈良県立民俗博物館では、空調の予算が通らなかったことで、県民からの提供で収蔵していた民俗文化財をデジタルアーカイブ化して廃棄しなければならない事態に至ってしまったことを取り上げ、保管場所の必要性をうたった。
美術品は、出土した埋蔵文化財と違い、ある程度の保管技術が確立されているが、そういった中でも温度や湿度を適切に維持し、照明のLED化をしていかなければ、美術品の劣化につながってしまうため、ある程度の場所と、管理するための学芸員の配置が必要になる。
こうした中、県として愛知県美術館と愛知県陶磁美術館、そして愛知県立芸術大学の美術品等の収蔵庫を新たに整備する方針を示したことは大変評価したいが、幾つかの課題があると認識している。
現在の収蔵庫では作品を何件管理しており、現状どのような課題があると認識しているのか。
【理事者】
各施設の収蔵状況であるが、愛知県美術館では約8,900件、愛知県陶磁美術館では約8,400件、愛知県立芸術大学では約1,800件、3施設の合計で約1万9,000件の作品が保管されている。
委員の述べたとおり、美術館等の収蔵庫不足は全国的な課題であり、県の3施設の収蔵庫もほぼ満杯の状態、収蔵率は約9割以上となっている。また、現代美術では大型の作品が増えており、現在の収蔵庫では受入れ困難な作品も出てきている。
このため、作品の大きさにかかわらず、今後も各施設としてふさわしい作品を収集、保管していくに当たり、早急に収蔵スペースを確保する必要がある。
【委員】
今回の計画では、収蔵庫を現在の各施設から離れた場所に設置することも聞いた。全国的にも通常は収蔵庫と施設が隣接しており、遠隔地につくる事例はほぼないと思う。
収蔵庫と施設が隣にあることで、例えば、学芸員が収蔵している美術品等に何かあったとしても、すぐに劣化等に気づき、様々な目が行き届きやすくなる。また、移動距離が少なくなることで、リスクを回避して展示物の入替えをスムーズに行えるメリットもあり、美術館等の施設に隣接した形で収蔵庫を設置するのが普通だと思う。
全国に施設と収蔵庫が離れた場所にある事例はあるのか、また遠隔地に収蔵庫を整備して管理や運営に支障はないのか。
【理事者】
美術館等の施設と収蔵庫が離れた場所にある施設として、例えば東京都内のブリヂストン美術館を前身とするアーティゾン美術館や東京藝術大学大学美術館などがあり、管理や運営の検討に際して、こうした事例も参考にしていきたい。
また、今回は離れた場所というだけでなく、共同収蔵庫としては全国初の事例となる。これら3施設の所蔵の管理方針等が異なるため、検討しなければならない事項は多い。
来年度、整備計画の策定に当たっては、3施設の学芸員の意見を十分に反映させるなど、しっかり現場と調整しながら効率的な管理運営方法を検討していきたい。
【委員】
共同収蔵庫としては全国的に初めての事例であり、これが全国のモデルケースになるように期待したい。
県民の重要な美術品等を管理するに当たっては、収蔵庫が遠隔地にあると目が行き届かなくなってしまうため、学芸員等の専門員の配置や収蔵庫の機能を今まで以上に充実させる必要がある。
共同収蔵庫の場所や機能、人員の配置についてはどのように考えているのか。
【理事者】
まず、場所についてであるが、共同収蔵庫の候補地選定に当たっては、敷地面積やアクセス、インフラのほか、時代や地域を象徴する唯一無二の美術品を適切に保存、管理する施設となることから、水害等の災害危険性も考慮し、多角的に検討していく。
また、収蔵庫内の温度、湿度管理などの施設機能及び美術品等を適切に管理するための人員体制についても、3施設の収蔵環境等を踏まえながら、離れた場所で管理する場合における適切な施設整備や専門員の配置等を検討していく。
本事業では、3施設共同の収蔵庫というスケールメリットを生かして、各施設の共通課題を広域的に解決しながら、収蔵庫問題を抱える他の自治体にも参考にしてもらえるような収蔵施設を整備し、引き続き県民の貴重な財産である美術作品を適切に守って次代にきちんと継承していきたい。
【委員】
予算に関する説明書(1)の118ページ、人権推進事業費のうちのインターネットモニタリング事業費について伺う。
これは、愛知県に人権に関わる条例を制定したことをきっかけに始まった事業と理解しているが、これまでにこのインターネットモニタリング事業を実施した結果、どのような問題投稿や問題情報が発見され、それらをどのように処理したのか伺う。
【理事者】
本県では、委員の指摘のように、2022年4月に施行した愛知県人権尊重の社会づくり条例、そして条例の基本計画として2024年3月に策定したあいち人権推進プランに基づき、インターネットによる人権侵害に対する取組を実施している。
インターネットモニタリング事業については、条例の制定に少し先駆けて2021年8月から実施しており、現在、部落差別、外国人、障害者、新型コロナウイルス感染症、そして性的少数者の五つの人権課題を対象に実施をしている。
2021年8月から本年2月末までの約3年半の間の件数等をまとめると、2,440件の差別的な書き込みを把握している。このうち悪質で違法性の高い213件については、本県から名古屋法務局に削除要請を行い、そのうち119件の削除を確認している。
なお、新型コロナウイルス感染症の人権課題については、その他の感染者の流行によって医療従事者等への過剰な誹謗中傷等が新たに生じるおそれがあることから、来年度からは感染症へと対象を拡大して実施する。
【委員】
もう数年にわたり実施している事業のため、この間にもインターネット上の問題情報はいろいろな分野に広がり、人権に関わる差別情報はもちろん、それ以外にも犯罪に結びつくような情報や、あるいは他人や有名人の画像を勝手に使った投資詐欺といった、ありとあらゆる有害情報がインターネット上に氾濫している。
国では、こういったネット上の情報について有害なものをプロバイダの責任において制限させる、削除させる特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律、いわゆるプロバイダ責任制限法を整備したと聞いているが、プロバイダ責任制限法とはどういった仕組みなのか。
【理事者】
プロバイダ責任制限法は、昨年改正され、プロバイダのところに違法な有害情報があると被害者から申告がある場合に、プロバイダで対応して被害情報の削除等を検討していく法律である。
そして、大規模プラットフォーム事業者に措置を講ずるとのことで、特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律、いわゆる情報流通プラットフォーム対処法に名称が改められた。
【委員】
インターネットモニタリング事業実施の結果、119件の情報が実際に名古屋法務局によって削除されたとのことだが、大きな問題はプロバイダを介在しなければ、なかなか差別情報を拡散しようと思ってもできないため、この規制が差別情報の問題、規制に関してもポイントになると思っている。数年間続けてきた差別的な情報に対する県のインターネットモニタリング事業の結果を踏まえ、今後これをどのように運用しようとしているのか、課題の認識について伺う。
【理事者】
これまで3年半の間、違法な情報を捉えて、名古屋法務局に削除要請をして削除されるに至った。そして、今後、大規模プラットフォーム事業者に対するいろいろな義務を盛り込んだ情報流通プラットフォーム対処法が、この2025年5月に施行される。
県としては、そうした国の法律の強化された対応をしっかりと見て、県でもできる限りの対応を考えて、引き続きインターネットモニタリング事業を実施したい。
【委員】
さきの本会議一般質問で、増田成美議員が国勢調査について質問していた。
そのときの答弁では、国勢調査は非常に重要だが、多くの市町村から調査員の確保が難しいとの声が寄せられているとのことだった。私は国勢調査の調査員を過去に2回経験したが、以前は非常に厳しくて、朝から自分の受持ちの地区の全担当は一軒一軒回って調査票が提出されていることを確認し、最後に封まで確認してもらい納めた。5年前は、新型コロナウイルス感染症の関係からか大分簡素化されて、インターネットでの回答も可能になり、調査員も一度確認に行き、その訪問先が回答したといえば了承していた。
今後、調査員に対する説明会が各地区で開かれると思うが、今年の10月の国勢調査はどのようになっていくのか。また、今回の国勢調査では、インターネット回答はどのようになっていくのか。
【理事者】
国勢調査については、5年前と同様に、調査票の提出に当たってはできるだけ簡素に実施されるよう国で計画されている。郵送、インターネット、調査員への提出の三つの方法の中から一つを選んで提出という点は前回と変わっていない。
インターネットでの回答は、国は積極的に推進しており、先ほど委員が述べたとおり、インターネット回答であれば調査員が回収に行かなくてよいことになり、調査員にとっても、また回答者にとっても、24時間いつでも回答ができ、便利であるため、双方にとってメリットがあるインターネット回答を推奨している。
【委員】
確かにインターネットで回答すると楽ではあるが、調査員にしてみれば、本当に回答を出したか出していないか分からず、そこまで強要して確認しろとなると、また調査員に負担がかかってしまう。回答したかを一度聞いて確認する程度であればよいが、きちんと本人にもう一度会って、何度も念を押すとなると、調査員が大変だと思うので、これから各地区で説明会が始まるが、そこでは調査員に負担のかからないような調査の仕方になっていることを、しっかりと伝達してほしい。
《請願関係》
なし
《一般質問》
【委員】
第30回あいち国際女性映画祭2025について伺う。
先日、公益財団法人あいち男女共同参画財団が、毎年9月に開催するあいち国際女性映画祭のアンバサダーに女性監督の三島有紀子氏を委嘱したとの報道を見た。あいち国際女性映画祭は、女性監督による作品、女性に着目した作品を集めた国内唯一の国際女性映画祭であり、1996年のウィルあいち(愛知県女性総合センター)開館以来、ウィルあいちを主会場として国内外の女性監督作品やジェンダー平等に資するえりすぐりの作品が毎年上映されている。昨年度は、招待作品の上映後にトークイベントを実施したほか、中京テレビの恩田千佐子アナウンサーの講演会などもあり、会場は大きな盛り上がりを見せたと聞いている。
恩田千佐子アナウンサーは、その実力や実績のみならず、地域密着型の報道姿勢と地元愛が視聴者との強い結びつきと報道人としての信頼を生んでいるが、何よりも恩田千佐子アナウンサー自身の困難を乗り越える姿勢が多くの共感を呼んでいる。恩田千佐子アナウンサーは、病気で配偶者を失い、シングルマザーとして2人の子育てをする中で乳がんに罹患したが、本県の愛知県がんセンターでの告知から入院、手術までの過程がドキュメンタリーとして放送された。そして、職場復帰後から現在に至るまでの過程を、すべてが生きる糧という講演項目で映画祭でも話し、大いに花を添えた。
今年は記念すべき第30回とのことで、先ほど紹介した三島有紀子アンバサダーによる周知、広報など、様々な企画が予定されている。就任に当たり三島有紀子監督は、性別は関係ないという言葉もよく目にするが、無意識に判断していることはたくさんあり、その関係性を誠実に見詰めていくことでしか性別から自由になる道はないのではないか。この30年で何が変わって何が変われないでいるのか、この映画祭が30年続いた意味と、これから続けていく意味を今一度きちんと見詰めていきたいとコメントを寄せている。
三島有紀子監督の言葉にもあるように、県当局においては、30年の重みをかみしめながらも、映画祭の盛り上げを通じて広く一般県民に男女共同参画意識の普及、啓発をしっかりと行ってほしい。
第30回あいち国際女性映画祭2025は、公益財団法人あいち男女共同参画財団が主催であると承知しているが、どのような企画内容で、また周知広報を図っていくためどのように取り組んでいくのか。
【理事者】
あいち国際女性映画祭は、来年度30回目の記念の年となることから、これまでの4日間の開催から1日拡大して9月11日から15日までの5日間の開催とし、海外映画祭と連携した国際シンポジウムの開催などの記念事業を企画するとともに、日本初公開の作品や国内外の著名なゲストによるトークイベントを増やすなど、内容を充実していく。
また、あいち国際女性映画祭の周知、広報を強化するため、委員が述べたとおり、映画監督の三島有紀子氏に、第30回あいち国際女性映画祭2025のアンバサダーに就任してもらった。三島有紀子監督には、本年7月に予定している記者説明会や映画祭前日の合同記者会見への出席、会期中における対談やシンポジウムへの参加、映画祭公式ウェブサイト等による情報発信を行ってもらう。
このほか、男性や若者等を含めた幅広い層に向け、当映画祭の周知、広報を図るため、SNS広告を活用した広報宣伝活動や映画館における映画祭の予告編動画の上映などを行う。
こうした取組により、あいち国際女性映画祭をこれまで以上に盛り上げていくとともに、映画という親しみやすい素材を通じて広く県民に、性別にかかわらず、あらゆる立場や世代の人々が個性と能力を発揮できる男女共同参画社会について理解促進を図っていきたい。
【委員】
続いて、あいち男女共同参画プラン2025における評価と課題について伺う。
1999年に男女共同参画社会基本法が制定されてから25年ほどになるが、この間、男女共同参画に向けた様々な施策が進められてきた。また、国際連合で採択された持続可能な開発目標であるSDGsが進展したこともあり、ジェンダーギャップに関する問題は広く認知されるようになった。加えて、男女共同参画はジェンダー平等の問題にとどまらず、人口減少、少子高齢化の日本にとっては支え手不足に対応するための鍵でもある。男性も女性も柔軟に働き、育児や介護を分担できる環境を整えることで生産年齢人口の活用が最大化され、社会全体が持続可能になる。
令和7年4月1日からは改正育児・介護休業法が施行され、柔軟な働き方を実現するための措置として、例えば子の看護休暇が小学校就学の4月前までだったのが、小学校3年生修了まで延長される。また、従業員300人を超える企業には、育児休業等の取得状況の公表が義務づけられることになった。
こういった政策から、男性の育児休業を促進したい政府の意図も感じられる。男女共同参画社会基本法は、男女の人権を尊重し、社会情勢の変化に対応できる社会を実現することに、その目的があるが、現代では分野を超えて働き方などにも及びまさに時代の要請にまでなった。
一方で、男女共同参画の進展において、私たちを取り巻く環境は依然として大変厳しいものがある。例えば、元SMAPの中居正広氏の女性トラブルをめぐる問題は、フジテレビの広告主撤退や経営問題にまで発展した。この問題は、職場文化とジェンダーの不平等や組織の権力構造が女性への不適切な扱いを助長していた可能性などを浮き彫りにし、報道機関としての信頼の低下にもつながるなど、男女共同参画社会における課題を浮き彫りにした。
また、持続可能な開発目標報告2024において、日本は上位18位の達成状況にあるものの、目標5のジェンダー平等を実現しようについては、深刻な課題があると最低の評価であった。こういった現状は、あいち男女共同参画プラン2025の中でも、男女共同参画をめぐる現状と課題の中での認識と重なるものであるが、本県が目指す、すべての人が生涯輝く、多様性に富んだ社会をめざしてという将来像を見据えれば、このギャップを乗り越え、より一層の男女共同参画の推進、女性活躍への環境整備が求められている。
そこで、現行のあいち男女共同参画プラン2025における現時点の評価と課題はどのようなものか伺う。
【理事者】
あいち男女共同参画プラン2025は、2021年3月に策定され、2025年度までの5年間の計画となっている。プランでは、男女共同参画社会の実現を目指し、あらゆる分野における女性の活躍の促進、男女共同参画社会の実現に向けての意識改革、安心して暮らせる社会づくりの三つの重点目標を掲げ、それぞれに関連する42の進捗管理指標を設け、施策に取り組んできた。
42の進捗管理指標のうち、数値目標を設定している35の項目について、本年1月現在での進捗状況を評価したところ、目標に達したものが、女性の活躍促進宣言企業数など5項目、目標未達成だがプラン策定時の数値を上回ったものが、あいち女性輝きカンパニー認証企業数や企業における管理的職業従事者に占める女性の割合など23項目、プラン策定時の数値を下回ったものが、ウィルあいち情報ライブラリーの利用者数など7項目となった。
こうしたことから、プランは一定程度進捗しているものの、来年度が計画期間の最終年度となることから、県としては引き続き目標達成に向け、しっかりと取り組んでいきたい。
【委員】
あいち男女共同参画プランのさらなる充実を通じて、施策のアップデートに向けた取組を要望する。
現在、急速に国際競争力を失っている我が国において、さらなる女性活躍推進は待ったなしの問題である。株式会社パーソル総合研究所の女性活躍推進に関する定量調査報告書では女性活躍施策への厳しい指摘がなされているが、例えば男性が育休を取りやすい状況は会社の未来展望を明るいものにし、その展望へのポジティブさが女性の管理職昇進意欲を上昇させているとも分析されている。
こうした現状とのギャップを埋めていくためにも、学識経験者やシンクタンク、パーソナリティー、あいち女性輝きカンパニーの現職の女性管理職などと、男性の育休取得や女性管理職登用などについて率直な意見交換が必要ではないかとも思っている。もちろん、愛知県男女共同参画審議会での議論の内容についても議事録を公表しているが、より現場目線に近い意見集約の場の創設についても時代の変化に応えるためには必要ではないか。
その意味でも、来年度策定される新たなあいち男女共同参画プランについては、時代の変化に対応できるような計画や達成に向けた進捗管理を盛り込むよう要望する。そして、何よりも、現状は厳しいことも多いと承知してはいるが、明るい未来展望を男女問わず本県で働く人々、企業とともに一緒になって何度でも描き直していくことが重要だと思う。
恩田千佐子アナウンサーではないが、どうか県当局と愛知県で働く人々が時代の困難を乗り越える力となってもらえるよう、より一層の施策の充実を要望する。
【委員】
消費生活相談について伺う。
2024年8月7日に独立行政法人国民生活センターが公表している2023年度の全国の消費生活相談の状況から傾向と特徴を見ていくと、相談件数は全国で約89万件であり、2022年度の89万9,000件に比べ、約9,000件減少したとのことである。契約当事者の年代は依然として70歳以上の割合が最も高く24.2パーセント、また商品や役務等別で見ると、2022年度に比べ、一つ目に身に覚えのない商品が届いたという相談、不正利用の相談などといった商品一般について、二つ目にサポート詐欺の相談などといった他の役務サービス、三つ目に中古自動車の購入後に不具合が見つかったという四輪自動車、四つ目にアフィリエイトで稼げると言われて副業の契約をしたが辞めたいという内職や副業その他についてのもの、五つ目に美容整形の無料カウンセリング時に高額な契約を勧誘されたという医療サービスの増加が目立っている。
販売購入形態別では、通信販売の割合が最も高く全体の約4割、38.8パーセントを占め、契約購入金額は合計金額が4,295億円、平均金額が88万円、既支払金額は、合計金額が1,861億円、平均金額は48万円であり、2022年度に比べ、いずれも増加となっている。
販売方法・手口別で見ると、インターネット販売と定期購入では、化粧品や健康食品の定期購入に関する相談が多く、家庭訪問販売では屋根工事や修理サービスに関する相談、電話勧誘販売ではインターネット接続回線に関する相談、かたり商法、身分詐称では架空請求の相談が多いとなっている。また、消費者庁が出している令和6年版消費者白書を見ると、架空請求に関する相談件数は約1万6,000件と、直近20年で最少になったと言われている。
消費生活相談とは、事業者との間で生じた消費生活上のトラブルについて相談する窓口であると認識しているが、本県ではどのように相談内容が変化してきているのか、また、県民文化局ではどのように県民からの相談に対応してきたのか。
【理事者】
本県及び市町村の消費生活相談窓口に寄せられた相談件数は、2023年度は4万4,783件で、2014年度以降、年間約4万5,000件で推移している。
この間の相談内容を見ると、利用した覚えのない請求が届いたがどうしたらよいかという架空請求に関する相談が多く寄せられているほか、インターネット通販で化粧品や健康食品を一回限りのつもりで購入したところ、実際には定期購入になっていたという相談件数が大きく増加している。また、近年、SNSに関する相談件数が増加している。
本県として、相談に対しては、消費生活相談員が、クーリング・オフや中途解約が可能な契約については、解約方法を案内するなどの助言を行うほか、必要に応じて相談者と事業者の間に入って調整し、解決を図るあっせんにより救済に向けた支援を行っている。
【委員】
これまで県として取り組んできた啓発活動やその成果をどのように認識しているか。
【理事者】
本県では、消費者トラブル情報あいちクリオ通信や消費生活情報あいち暮らしっくなどを活用して、様々な消費者トラブル解決に向けた啓発に取り組んでいる。こうした情報は、新聞でも数多く記事として取り上げられている。
この結果、消費生活情報あいち暮らしWEBへのアクセス件数やSNSのフォロワー数も増加し、こうしたことが成果だと考えている。
【委員】
また、2022年4月には成年年齢が18歳に引き下げられたが、若年層の被害の未然防止のために県はどのように対処しているのか。
【理事者】
成年年齢の引下げにより未成年者取消権による保護がなくなったことで、特に18歳及び19歳の消費者被害が増加することが懸念されることから、本県では2021年11月に成年年齢引下げに伴う注意点等を分かりやすく呼びかけるメッセージ動画を制作してユーチューブにより広く配信し、消費者被害の未然防止を図っている。
また、オンラインゲームでの課金など、小中学生が契約当事者となるトラブルの相談も増加していることから、児童生徒の発達段階に応じた、より早い時期からの消費者教育の充実・強化を図るため、2022年度から小中学生向け消費者教育教材「消費者教育教材かしこい消費者のススメ」を作成しており、毎年度、県内全ての小学校5年生と中学校2年生に配布するとともに、学校からの希望に応じて消費者教育の専門家を講師として派遣し、この教材を活用した出前授業を実施している。
【委員】
県として、しっかりと若年層への被害の未然防止のために活動していることが分かった。
先ほど私が述べた中で、高齢者の相談件数が多いと話したが、高齢化の進行により高齢者の消費者被害の深刻化も懸念している。高齢者の消費者被害防止についてはどのように取り組んでいるのか。
【理事者】
高齢者は、被害に遭っていることを認識していない、独り暮らしで相談する人がいないなど、被害が表面化しにくい傾向があるため、地域で見守ることが必要になる。そこで、本県では高齢者の被害の防止を図るため、市町村において消費者安全法に定める消費者安全確保地域協議会、いわゆる見守りネットワークの設置を促進してきた。
見守りネットワークは、地方公共団体の消費者行政部局と福祉部局などの関係者が連携して高齢者等を消費者被害から守る仕組みだが、県では市町村への個別訪問を通じて、市町村にその意義を説明して設置を働きかけてきた。その結果、本年2月末現在で39市町が設置しており、県内人口のカバー率では94パーセントとなっている。
【委員】
消費者トラブルの未然防止については、今後どのように取り組んでいくのか。
【理事者】
消費者トラブルの未然防止については、今後もあいちクリオ通信やあいち暮らしっくなどを活用し、あらゆる機会を通じて広く啓発に努めるとともに、小中学生向け消費者教育教材を作成、配布するなどの取組を実施していく。
また、高齢者等の見守りについては、引き続き見守りネットワークの設置促進に取り組むとともに、地域において実効性のある見守りが行われるよう、見守り活動のポイントをまとめたポケットマニュアルや見守り活動時に高齢者に渡すための啓発資料を新たに作成し、配布することで、市町村の見守り活動を支援していく。
こうした取組を着実に実施することで、今後も消費者トラブルの未然防止に向けてしっかりと取り組んでいく。
【委員】
インターネット社会が進展し、良くも悪くも多くの情報を入手できる時代になった。その情報の出どころや真偽を確かめるのも利用者の責務だが、適切に判断ができるよう引き続き情報提供に取り組み、併せて県民に対して情報リテラシーを高めていくことも考える必要があると思う。
この問題は、社会全体で対処していかなければならない問題であると感じている。2月28日に発行された日本屋根経済新聞に一般社団法人全日本瓦工事業連盟が悪質業者撃退作戦として、警察との連携や新聞広告の活用など、消費者保護に力を入れていくのは地元業者の信頼回復にもつながるとのことで、今回は新たに我が家の屋根は点検済みと記載がされたステッカーを作成して、訪問販売による詐欺の未然防止に取り組んでいる。
非常によい取組だと思ったため、県においても今後はぜひとも、世の中にある様々な団体ともしっかりと情報交換し、利用者側だけでなく、団体も含め全方位的に詐欺や悪質業者に対処してほしいと要望する。
【委員】
国際芸術祭あいち2025について伺う。
9月13日の開幕まで約半年となり、準備もいよいよ佳境に差しかかってきた。2月13日にはボランティアの募集、あるいはパートナーシップ・プログラムの募集についての記者発表もあった。2月26日には参加アーティスト全60組が全て公表され、いよいよというところだが、何点か確認したい。
まず、ボランティアについて伺う。
国際芸術祭あいち2025のパンフレットも非常に格好よく、よくできていると思うが、そこにボランティアの実際の活動内容も書いてあった。締切りを6月3日として、既に募集をスタートしているが、このボランティアの活動内容はどのようなものか。また、昨今インバウンド需要はいろいろあるが、外国人向けの通訳等もこのボランティアに含まれているのかを併せて伺う。
国際芸術祭あいち2025では、ボランティアを会場運営サポート、対話型鑑賞ツアー、ラーニングの三つの区分で募集している。このうち、ラーニングは新たに設けた区分となる。
これは、これまでのボランティア経験者にヒアリングを行った結果、ボランティアがより積極的に芸術祭に参加できるようにしてほしいとの要望があったことから、ボランティア自らが企画し、作家、作品、会場となるまちの魅力などを調査し、発信する活動区分を今回新たに設けた。これにより、ボランティアがより積極的に芸術祭に参加できるようにしていきたい。
また、ボランティアの外国人向けの活動などについては、ボランティア登録の際に特技や資格等を聞いており、例えば語学の得意なボランティアには外国人来場者への案内サポートをしてもらうなど、それぞれの活動区分の中で、ボランティア本人の希望も聞きながら、様々な形で芸術祭を支えてほしい。
【委員】
今の答弁のとおり、外国人向けのサポートもぜひ意識しながら募集の際にも対応してもらえればと思う。今回からラーニングの区分も新たに設けるとのことだが、今後の芸術祭のテーマ設定は非常に難解だが大変興味深いテーマでもあるので、こうした部分をしっかりと噛み砕いて、来場者に向けて説明してもらえるような内容になればよいと思う。
今回のボランティアの募集規模が約1,000人だとパンフレットに書いてあった。前回、前々回など、過去のボランティア募集と比べて、どのような規模感か。
【理事者】
前回の国際芸術祭あいち2022では983人、また前々回のあいちトリエンナーレ2019では1,219人がボランティア登録し、芸術祭を盛り上げてくれた。今回もこれまでと同規模の1,000人程度のボランティアを募集し、芸術祭を盛り上げてほしい。
【委員】
1,000人規模ということだが、1,000人ぴったりで先着で締め切るのではなく、ある程度弾力的に募集するとの認識でよいのか。あるいは応募多数の場合は選考があるのか。
【理事者】
募集人数の1,000人については、あくまで目安であり、対話型鑑賞ツアー以外の区分に選考等はないため、積極的に申し込んでほしい。
【委員】
一部を除き、選考形式ではなく、希望者がいれば広く募るとのことなので、我々としても引き続き締切りまで様々なところで周知したいと思う。
恐らく芸術祭という性質上、募集していきなりボランティアが集まるというよりは、経験者がリピーターとして応募するケースも多いだろうし、県内の文化芸術系学部の学生も大変興味を持つかと思う。県内県外を問わず募集していると思うが、どのような方法で周知やボランティアの募集を行っているのか。
【理事者】
ボランティアの募集に当たっては、県内の芸術大学をはじめとする各大学を個別に訪問し、学生に対する周知を依頼しているほか、市町村広報紙への掲載依頼、県や市町村、公民館や図書館等でのチラシの配架やポスターの掲示、またウェブサイトやSNSでの情報発信を行っている。
これまでのボランティア経験者に加え、新しい人にも参加してもらえるよう、引き続き周知していく。
【委員】
学生にとってもよい経験になるだろうし、様々な県の事業との連携という意味でも、ぜひこういった結びつきを続けてほしい。いろいろな面もあると思うが、文化芸術に興味を持つ人たちにぜひ関心を高く持ってもらい、広く募ってほしいと思う。
会場地だけでなく、県内全域での盛り上がりも大事だと感じており、プレスリリースを見ると、巡回展示ポップ・アップ!という催しもあるようだが、これはどのようなものか。
【理事者】
巡回展示ポップ・アップ!は、国際芸術祭あいち2025の会期中の週末を中心に豊田市、設楽町、大府市及び豊川市の4市町を巡る巡回展示である。国際芸術祭あいち2025参加作家のうち、10組程度の作家の本展とは別の作品を展示するほか、アーティストによるワークショップ、学芸員スタッフによるガイドツアーなども開催する予定である。
また、開催地については、県内市町村に意向調査を行い、展示場所の候補地を下見調査し、地域バランスも考慮した上で決定した。
【委員】
県全体で盛り上がっていないと、3年に一度の祭典という感じがしないため、県内4市町とのことだが、ぜひ巡回展示ポップ・アップ!でそれぞれの地域も盛り上げてほしい。
パートナーシップ・プログラムも今回募集がスタートしたと聞いているが、これはどのようなものか。
【理事者】
パートナーシップ・プログラムは、国際芸術祭あいち2025の会期中に民間企業や自治体、地元の文化芸術団体などが県内で行う文化芸術事業の公募を行い、60件程度のプログラムを選定の上、相互に広報協力を行うものである。
広報協力の内容としては、選定プログラムを掲載したチラシを作成し、芸術祭の会期中に会場内で来場者へ配布するとともに、国際芸術祭あいち2025公式ウェブサイトへの掲載、また各申請者が作成したチラシも会場内で配架するなど、相互の事業の盛り上げを図っていきたい。
【委員】
60組を採択し、相互に広報協力を行うとのことだが、プログラムを実施する団体への予算の面での補助はないのか。
【理事者】
補助はない。
【委員】
あくまでも相互広報とのことだが、60組に限定しているのは何か意味があるのか。国際芸術祭あいち2025にふさわしい地元で行われるイベントがあり、パートナーシップ・プログラムとして採択されれば、イベントを行う個人や団体にとっては箔がついてよいと思うが、どのようなイベントでも応募できるのか。
【理事者】
60組に限定しているのは、チラシを作る際に全部の事業を紹介できるようにするためである。また、文化芸術事業であれば応募することは可能である。
【委員】
地元も含めて、いろいろな団体にしっかり周知して、たくさん手を挙げてもらえるよう我々としても広報していきたい。
国際芸術祭あいち2025を県全体で盛り上げていくためには、巡回展示ポップ・アップ!やパートナーシップ・プログラムの充実が非常に大事だと思う。そこで、県として巡回展示ポップ・アップ!やパートナーシップ・プログラムのどのような部分に期待しているのか伺う。
【理事者】
巡回展示ポップ・アップ!については、会場地以外で展示を行い、より身近に現代アートに触れてもらうことで、本展への誘客につなげていきたい。また、パートナーシップ・プログラムについては、同時期に開催される県内各地の文化芸術プログラムを紹介することにより、県内全域の文化芸術活動の活発化を図っていきたい。
この巡回展示ポップ・アップ!及びパートナーシップ・プログラムを実施することにより、芸術祭の開催目的の一つでもある地域の魅力の向上を図り、県内全域での盛り上げにつなげていきたい。
【委員】
我々としても大いに期待しており、盛り上がる国際芸術祭になるよう応援している。
国際芸術祭あいち2025は、9月13日から11月30日の79日間開催するとのことだが、3年前の開催時にはあいち県民の日が制定されていなかったため、今回が、あいち県民の日が制定されて以降、初の国際芸術祭になる。11月30日が国際芸術祭あいち2025の開催期限であれば、最終盤に、あいち県民の日、あるいはあいちウィークが入ってくるので、コラボレーションもぜひ考えてほしい。
国際芸術祭あいちは、ラーケーションや親子で学ぶために、学校を休んで出かけるのに非常に適しているイベントだと思うため、ぜひ相乗効果を狙ってほしいが、あいち県民の日との連携についてどのように考えているか。
【理事者】
国際芸術祭あいちは、開催目的の一つとして、文化芸術の活動の活発化による地域の魅力の向上を掲げており、あいち県民の日条例にある県民が地域の自然、歴史、風土、文化、産業等についての理解と関心を深め、愛知への愛着及び県民としての誇りを持つ契機とするというあいち県民の日を制定した目的と相通ずるものがある。
国際芸術祭あいちは、県民が地域の歴史や文化を学び、愛知の魅力を再発見する大変よい機会であるため、しっかりと連携を図っていく必要がある。具体的な連携として、国際芸術祭あいちは、もともと中学生以下の料金を無料としており、県民の日学校ホリデーなどを活用し、来場しやすいイベントだと考えている。
あいちウィークは11月21日から27日までの7日間であるが、来年度はそのうち愛知県美術館や愛知県陶磁美術館の休館日に当たる11月25日の火曜日について臨時開館する方向で調整を進めている。これにより、より多くの県民に来場してもらえるよう取り組んでいきたい。
【委員】
あいちウィーク、あいち県民の日と一緒になって愛知県美術館や愛知県陶磁美術館を臨時開館するとの答弁があったが、非常によい取組だと思う。特に、県民の日は県政150周年を記念して設定されて以降、今回が初の国際芸術祭あいちの開催だが、今後も必ず3年に一度はこのタイミングでコラボレーションできる時期が訪れることになるので、ぜひ連携してほしい。
県民の日を所管する県民総務課からも、国際芸術祭あいち2025との連携についての考えを伺いたい。
【理事者】
あいち県民の日条例では、あいちウィーク期間中に県民の日にふさわしい事業を実施するものとされており、事業者や市町村からの協力のほか、県庁各局が実施するイベントや施設サービスを通じて様々な連携事業を行っている。
国際芸術祭との関連では、昨年度と今年度の2回にわたり、国際芸術祭地域展開事業の中で県民の日との連携を図っている。具体的には地域展開事業で作成されたチラシや公式ウェブサイトにおいて県民の日のロゴマークを掲載し、あいち県民の日連携事業として位置づけている。
あいち県民の日を所管する県民総務課としては、あいち県民の日条例の目的の一つである郷土理解や、愛知への愛着や誇りを持つ契機とするため、国際芸術祭あいち2025との連携は重要であると考えており、あいちウィーク期間中に行うあいちウィークフェスタやあいち県民の日記念イベント等において、国際芸術祭あいち2025を積極的にPRしていきたい。
【委員】
国際芸術祭あいち2025の開催まで半年だが、灰と薔薇のあいまにというテーマが発表されてから、このテーマを何とか少しでも理解したいと思い、アドニスの詩から始まるフール・アル・カシミ芸術監督のテーマ・コンセプトを何回も読んでいるが、何回読んでもよく分からない。難解だが非常によいテーマだと思うので、このテーマ・コンセプトをぜひ多くの人に知ってもらうことが、国際芸術祭あいち2025を盛り上げる上で重要だと思うが、どのように県民に周知していくのか。
【理事者】
フール・アル・カシミ芸術監督が掲げるテーマ、灰と薔薇のあいまには、人間と自然や環境との関係を見つめ直し、人間と自然とが共存していく道を探っていくことをコンセプトとしている。
人間と環境の間に浮上している様々な深刻な問題について、破壊や絶望をイメージさせる灰、それに繁栄や希望をイメージさせる薔薇の、灰か薔薇かといった極端な二項対立的な考え方から離れ、アート作品を通じて、そのあいまにある幅のある考え方を探求するものである。
国際芸術祭あいち2025では、世界の様々な地域から参加する多様な背景を持つアーティストたちがこのテーマ・コンセプトに呼応し、アーティストならではの視点からの作品が展開される。そのため、テーマ・コンセプトを知っておくことは、作品への理解を深める上で大きな一助になる。
テーマ・コンセプトの趣旨については、これまでも芸術監督による記者会見やシンポジウム、あるいはメディアの取材などを通じて説明や情報発信を行ってきた。また、今年1月には、灰と薔薇のあいまにの解釈と題してテーマに関するトークイベントも開催している。今後もトークイベントなどでテーマ・コンセプトの周知を図るとともに、会期中には芸術監督による作品解説やキュレータートーク、アーティストトークなどの機会に、テーマ・コンセプトと作品との関連について解説してもらうほか、メディアも通じて発信していきたい。
そうした取組により、来場者がテーマ・コンセプトや作品への理解を深め、人間と自然や環境との関係について考え、会場となる瀬戸市の陶磁文化や歴史などについて学ぶ機会となるよう取り組んでいきたい。
【委員】
県の文化財登録制度について伺う。
国が文化財保護法を改正したタイミングで、それに呼応して愛知県が文化財登録制度をつくり、積極的に文化財を掘り起こし、登録していると認識している。
そうした中で、無形である形のない技を登録していくことの必要性について、昨年12月の本委員会で質問した。なぜかというと、経済産業省が所管している伝統的工芸品は100年以上の歴史を有していることや、一定の地域で地域産業として成立していることなど、かなり高いハードルをクリアして指定されているが、これも技の集結によって作られているものであるため、この技自体を残していくことが、伝統的工芸品を残していくことにつながっていくのではないかとの視点で質問した。
そのときの私の質問に対し、技の無形文化財としての登録に向けて準備を進めているとの答弁があったが、その後2月に有松・鳴海絞の製作工程のうち、手括り技術を無形文化財として登録したことは非常に評価したい。また、今までは個人の技を無形文化財として登録していたと思うが、今回は、制度開始以降初めて、技の保持団体を認定して無形文化財の登録をしたとのことで、新たに伝統的工芸品を次の世代に残していくために0から1を生みだしたことは本当にありがたいことであり、伝統的工芸品がこれによってまた後世へと引き継がれていくのではないかと思う。
( 委 員 会 )
日 時 令和7年3月12日(水) 午後0時58分~
会 場 第6委員会室
出 席 者
平松利英、村嶌嘉将 正副委員長
坂田憲治、伊藤辰夫、青山省三、いなもと和仁、ますだ裕二、柳沢英希、
高木ひろし、河合洋介、園山康男、阿部武史 各委員
県民文化局長、県民生活部長、学事振興監、人権推進監、女性の活躍促進監、
文化部長、関係各課長等
委員会審査風景
<付託案件等>
○ 議 案
第 1 号 令和7年度愛知県一般会計予算
第1条(歳入歳出予算)の内
歳 出
第3款 県民環境費の内
第1項 県民生活総務費
第2項 文化学事振興費
第3項 社会活動推進費
第4項 統計調査費
第9款 教育・スポーツ費の内
第8項 大学費
第9項 私立学校費
第3条(債務負担行為)の内
愛知県芸術劇場等運営等実施契約
芸術文化センター施設設備整備工事
芸術大学施設設備整備工事
第 19 号 地方独立行政法人愛知県美術館機構評価委員会条例の制定について
第 32 号 愛知県青少年保護育成条例の一部改正について
第 33 号 暴走族等の追放の促進に関する条例の一部改正について
第 48 号 地方独立行政法人愛知県美術館機構の設立について
(結 果)
全員一致をもって原案を可決すべきものと決した議案
第1号、第19号、第32号、第33号及び第48号
○ 請 願
第 70 号 「小中高生の新型コロナワクチン接種後体調不良者への対応を求める」について(県民関係)
(結 果)
賛成者なしをもって不採択とすべきものと決した請願
第70号
<会議の概要>
1 開 会
2 議案審査(5件)
(1)理事者の説明
(2)質 疑
(3)採 決
3 請願審査(1件)
4 一般質問
5 閉 会
(主な質疑)
《議案関係》
【委員】
予算に関する説明書120ページ、3款2項文化学事振興費、2目文化財費の(8)文化財保存修理費補助金のうち、イの県指定文化財補助金について伺う。
令和7年度予算では3,627万7,000円の予算が計上されているが、今回の修復の内容と愛知県内の有形文化財にはどういった修理、補修が何件存在しているのか。
【理事者】
令和7年度の県指定文化財補助金の対象は6件であり、その内訳は、建造物では住宅の屋根等の修理はじめ2件、美術工芸品は絵画の欠損部分の修復はじめ2件、有形民俗文化財は祭礼用具の修理が2件となっている。
【委員】
県指定文化財補助金の予算額は、近年どのように推移しているのか、また過去5年間の推移を教えてほしい。
【理事者】
県指定文化財補助金は、要望のあった事業に対し、ヒアリング等を通じて文化財としての価値を維持するために必要な修理等であるかを確認し、補助対象に該当するものは全て補助している。このため、補助金の予算額は毎年度増減しており、過去5年間の予算額は、2020年度は2,117万4,000円、2021年度は2,278万7,000円、2022度は2,306万2,000円、2023年度は3,362万円、今年度は2,141万2,000円である。
【委員】
その年に上がってくる修理、補修によって金額が変わるため、2,000万円から大体3,000万円台と多少のばらつきがあるのだと思う。
次に、愛知県の有形文化財の指定件数の推移と、現在の指定件数を伺う。
【理事者】
県指定の有形文化財は、過去5年間では、2020年度に3件、2021年度に10件、2022年度に1件、2023年度に2件、2024年度に7件指定している。過去5年間の年平均では4.6件となっており、県指定の有形文化財は、2025年2月現在で、建造物44件、美術工芸品413件のほか、有形民俗文化財が25件で、合計すると482件である。
【委員】
県指定の有形文化財の指定件数は、増えることはあっても減ることはよほどないと思う。
指定件数が増えていくことを考えると、文化財の修理や補修に携わる職人自体の数が減っていくこともあり、今後、物価の高騰に合わせて人件費も上がっていくと予測できる。
そこで、愛知県に存在する有形の文化財の修理について、点検等を含めどのような考え方で進めているのか伺う。
【理事者】
文化財は過去から大切に受け継がれてきたものであり、これからも元の価値を保ったまま保存していくため、修理に当たっては極力従来と品種や品質が同じ資材を用い、同じ製法、工法で行っていく必要がある。そのためには、所有者による日頃からの自主的な点検を踏まえ、その文化財の由来や変遷を調査し、専門家の意見を聴きながら修理を行うかどうか、どのような修理を行うかを決めていく必要がある。
しかし、一言で有形文化財といっても、建造物、美術工芸品、有形民俗文化財等に分かれており、相談すべき専門家もそれぞれ異なる。また、固有の由来や変遷があり、年代や工法、使用している資材の種類も様々である。このため、文化財の修理は一つ一つ個別に相談してもらい、毀損していない部分は極力そのまま残すという方針のもと、直す部分も新しいものへの置き換えを避け、できるだけ古い材料を生かすなど、もともとの形を損なわないような修理を検討していくこととなる。
県としては、県民の財産である県指定の文化財を未来に継承していくため、それぞれの文化財の特性に応じた適切な修理が行えるよう、今後とも一つずつ丁寧に相談を聞き、補助金により支援していきたい。
【委員】
文化財が持つ価値を保つため、今まで使われていた資材をできるだけ使いながら保存していく考えとのことだが、物価高騰や技術者の減少もあり、補修や維持管理に必要なお金は今後右肩上がりに増加していくことが懸念される。今後も文化財が増えていくことを考えると、DX化を進め、修復内容や修復履歴のデータを蓄積し、デジタル技術の発展やAIを活用することで、スムーズに中長期的な予算組みができると思う。そうしたことも念頭に置き、できる限り維持管理の仕方をアナログからデジタルに変えていきながら、文化財が広く県民に長く見てもらえるよう、しっかりと取り組んでほしい。
【委員】
議案書237ページ、第32号議案、愛知県青少年保護育成条例の一部改正について、これは先日の本会議一般質問で公明党の木藤俊郎議員からも質問があったが、確認の意味で質問する。
愛知県青少年保護育成条例の一部改正に至った経緯を改めて説明してほしい。
また、今回の条例改正では30万円以下の罰則規定が設けられているが、刑法の16歳未満の者に対する面会要求等で科される罰則との違いがあるのか、特に16歳未満の者に要求した場合は刑法と条例が重複すると思うが、どのような扱いになるのか伺う。
【理事者】
まず、条例の一部改正に至った経緯についてであるが、近年、スマートフォンの普及により、SNSなどを通じて知り合った相手から18歳未満の青少年がだまされる、脅されるなどして、自分の裸体等の撮影画像を送らされる、いわゆる自画撮り被害が多発している。青少年が送らされた画像データは、インターネット上に流出すると、将来にわたって画像の拡散などの不安にさいなまれることになるため、青少年の人格形成にとって大きな障害となり、被害が深刻化することになる。
また、自画撮り画像の要求手口は、匿名性などのインターネットの特性が悪用され、青少年と同性、同年代を装うなどの狡猾な手段が用いられており、被害者は心理的に拒否できない状況に追い込まれることで多くの被害に遭っている。
こうした現状に対し、被害を未然に防止するため、2023年7月に刑法が一部改正され、16歳未満の者に対する面会要求等の罪が新設されたが、16歳、17歳が保護の対象外となっているため、青少年の保護をする観点からは不十分な状況にあった。
そこで、刑法では保護の対象外となった16歳、17歳を保護するとともに、多発する青少年に対する自画撮り被害を未然に防止するため、本条例を改正し、18歳未満の者に対し児童ポルノ等の提供を求める行為を禁止する規定を新設することとした。
続いて、条例と刑法の罰則の違いと16歳未満の者に要求した場合の取扱いについてであるが、刑法では、16歳未満の者に自画撮り画像の送信を要求した場合には1年以下の懲役、または50万円以下の罰金を科すこととしているが、条例では18歳未満の者に欺きなどの不当な手段を用いて自画撮り画像を要求した場合に限り、30万円以下の罰金を科すこととしている。
刑法の罰金が50万円に対して、条例の罰金が30万円となっており、刑法の罰則に比べて量刑が軽くなっているが、これは本県の青少年保護育成条例において設けられている他の罰則との均衡や、他の都道府県の同様の行為を禁止する条例の罰則を勘案して設定したものである。
なお、16歳未満の者に自画撮り画像の送信を要求した場合には刑法が優先して適用され、1年以下の拘禁刑、または50万円以下の罰金が科されることになる。
【委員】
この条例では、不当な手段を用いてとあるが、不当な手段とは何か。
【理事者】
青少年の未熟な判断力に付け込んで、その判断を誤らせるような態様を不当な手段としており、その類型は、拒まれたにもかかわらず、威迫、欺き、困惑、対償を供与、供与の申込み、供与の約束の七つとしている。
なお、ここでいう威迫とは、学校生活の相談に乗るなど青少年からの信頼を得て、私生活上の秘密を聞き出した後に態度を豹変させ、秘密をばらされたくなければ裸の画像を送れなどと要求するケースのことであり、欺きとは青少年と同年代、同じ性を装い、体の成長の悩みを相談する過程などで要求するケースのことをいう。
また、困惑としては、画像を送ってくれないと死んでしまうなどと要求するケース、対償を供与とはお金を支払った見返りに要求するなどのケース、供与の申込みとは画像を送ってくれたらお金をあげるなどと要求するケース、供与の約束とはお金をあげることなどを約束した上で要求するケースのことを指している。
【委員】
今の説明によると、16歳、17歳の高校生カップルが恋愛感情から相手の自画撮り画像を要求した場合には、これは不当な手段ではないので罰則の適用もないが、どのように防止するのか。
【理事者】
青少年同士が恋愛感情から要求する場合であっても、関係の破綻後、嫌がらせの感情などを抱いて画像を拡散させたリベンジポルノの事例もあることから、新年度、全学校に配布する啓発チラシではこのような事例も紹介し、条例が求めるいかなる理由があっても自画撮り画像を要求してはならないことを青少年に対してもしっかりと周知し、被害の未然防止を図る。
【委員】
罰則がないことで被害が出ることをとても心配している。青少年が犯罪に巻き込まれることのないよう、周知徹底を要望する。
【委員】
予算に関する説明書の119ページ、美術品等共同収蔵庫整備推進費について伺う。
昨年9月の本委員会で、美術品等を含む文化財の保管場所について質問した。当時は出土した埋蔵文化財に限った質問をしたが、それについては保管場所がなく、廃校になった学校等で保管していく方向性を示す答弁だった。この保管場所は全国的に課題であり、9月の質問の際に例とした奈良県立民俗博物館では、空調の予算が通らなかったことで、県民からの提供で収蔵していた民俗文化財をデジタルアーカイブ化して廃棄しなければならない事態に至ってしまったことを取り上げ、保管場所の必要性をうたった。
美術品は、出土した埋蔵文化財と違い、ある程度の保管技術が確立されているが、そういった中でも温度や湿度を適切に維持し、照明のLED化をしていかなければ、美術品の劣化につながってしまうため、ある程度の場所と、管理するための学芸員の配置が必要になる。
こうした中、県として愛知県美術館と愛知県陶磁美術館、そして愛知県立芸術大学の美術品等の収蔵庫を新たに整備する方針を示したことは大変評価したいが、幾つかの課題があると認識している。
現在の収蔵庫では作品を何件管理しており、現状どのような課題があると認識しているのか。
【理事者】
各施設の収蔵状況であるが、愛知県美術館では約8,900件、愛知県陶磁美術館では約8,400件、愛知県立芸術大学では約1,800件、3施設の合計で約1万9,000件の作品が保管されている。
委員の述べたとおり、美術館等の収蔵庫不足は全国的な課題であり、県の3施設の収蔵庫もほぼ満杯の状態、収蔵率は約9割以上となっている。また、現代美術では大型の作品が増えており、現在の収蔵庫では受入れ困難な作品も出てきている。
このため、作品の大きさにかかわらず、今後も各施設としてふさわしい作品を収集、保管していくに当たり、早急に収蔵スペースを確保する必要がある。
【委員】
今回の計画では、収蔵庫を現在の各施設から離れた場所に設置することも聞いた。全国的にも通常は収蔵庫と施設が隣接しており、遠隔地につくる事例はほぼないと思う。
収蔵庫と施設が隣にあることで、例えば、学芸員が収蔵している美術品等に何かあったとしても、すぐに劣化等に気づき、様々な目が行き届きやすくなる。また、移動距離が少なくなることで、リスクを回避して展示物の入替えをスムーズに行えるメリットもあり、美術館等の施設に隣接した形で収蔵庫を設置するのが普通だと思う。
全国に施設と収蔵庫が離れた場所にある事例はあるのか、また遠隔地に収蔵庫を整備して管理や運営に支障はないのか。
【理事者】
美術館等の施設と収蔵庫が離れた場所にある施設として、例えば東京都内のブリヂストン美術館を前身とするアーティゾン美術館や東京藝術大学大学美術館などがあり、管理や運営の検討に際して、こうした事例も参考にしていきたい。
また、今回は離れた場所というだけでなく、共同収蔵庫としては全国初の事例となる。これら3施設の所蔵の管理方針等が異なるため、検討しなければならない事項は多い。
来年度、整備計画の策定に当たっては、3施設の学芸員の意見を十分に反映させるなど、しっかり現場と調整しながら効率的な管理運営方法を検討していきたい。
【委員】
共同収蔵庫としては全国的に初めての事例であり、これが全国のモデルケースになるように期待したい。
県民の重要な美術品等を管理するに当たっては、収蔵庫が遠隔地にあると目が行き届かなくなってしまうため、学芸員等の専門員の配置や収蔵庫の機能を今まで以上に充実させる必要がある。
共同収蔵庫の場所や機能、人員の配置についてはどのように考えているのか。
【理事者】
まず、場所についてであるが、共同収蔵庫の候補地選定に当たっては、敷地面積やアクセス、インフラのほか、時代や地域を象徴する唯一無二の美術品を適切に保存、管理する施設となることから、水害等の災害危険性も考慮し、多角的に検討していく。
また、収蔵庫内の温度、湿度管理などの施設機能及び美術品等を適切に管理するための人員体制についても、3施設の収蔵環境等を踏まえながら、離れた場所で管理する場合における適切な施設整備や専門員の配置等を検討していく。
本事業では、3施設共同の収蔵庫というスケールメリットを生かして、各施設の共通課題を広域的に解決しながら、収蔵庫問題を抱える他の自治体にも参考にしてもらえるような収蔵施設を整備し、引き続き県民の貴重な財産である美術作品を適切に守って次代にきちんと継承していきたい。
【委員】
予算に関する説明書(1)の118ページ、人権推進事業費のうちのインターネットモニタリング事業費について伺う。
これは、愛知県に人権に関わる条例を制定したことをきっかけに始まった事業と理解しているが、これまでにこのインターネットモニタリング事業を実施した結果、どのような問題投稿や問題情報が発見され、それらをどのように処理したのか伺う。
【理事者】
本県では、委員の指摘のように、2022年4月に施行した愛知県人権尊重の社会づくり条例、そして条例の基本計画として2024年3月に策定したあいち人権推進プランに基づき、インターネットによる人権侵害に対する取組を実施している。
インターネットモニタリング事業については、条例の制定に少し先駆けて2021年8月から実施しており、現在、部落差別、外国人、障害者、新型コロナウイルス感染症、そして性的少数者の五つの人権課題を対象に実施をしている。
2021年8月から本年2月末までの約3年半の間の件数等をまとめると、2,440件の差別的な書き込みを把握している。このうち悪質で違法性の高い213件については、本県から名古屋法務局に削除要請を行い、そのうち119件の削除を確認している。
なお、新型コロナウイルス感染症の人権課題については、その他の感染者の流行によって医療従事者等への過剰な誹謗中傷等が新たに生じるおそれがあることから、来年度からは感染症へと対象を拡大して実施する。
【委員】
もう数年にわたり実施している事業のため、この間にもインターネット上の問題情報はいろいろな分野に広がり、人権に関わる差別情報はもちろん、それ以外にも犯罪に結びつくような情報や、あるいは他人や有名人の画像を勝手に使った投資詐欺といった、ありとあらゆる有害情報がインターネット上に氾濫している。
国では、こういったネット上の情報について有害なものをプロバイダの責任において制限させる、削除させる特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律、いわゆるプロバイダ責任制限法を整備したと聞いているが、プロバイダ責任制限法とはどういった仕組みなのか。
【理事者】
プロバイダ責任制限法は、昨年改正され、プロバイダのところに違法な有害情報があると被害者から申告がある場合に、プロバイダで対応して被害情報の削除等を検討していく法律である。
そして、大規模プラットフォーム事業者に措置を講ずるとのことで、特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律、いわゆる情報流通プラットフォーム対処法に名称が改められた。
【委員】
インターネットモニタリング事業実施の結果、119件の情報が実際に名古屋法務局によって削除されたとのことだが、大きな問題はプロバイダを介在しなければ、なかなか差別情報を拡散しようと思ってもできないため、この規制が差別情報の問題、規制に関してもポイントになると思っている。数年間続けてきた差別的な情報に対する県のインターネットモニタリング事業の結果を踏まえ、今後これをどのように運用しようとしているのか、課題の認識について伺う。
【理事者】
これまで3年半の間、違法な情報を捉えて、名古屋法務局に削除要請をして削除されるに至った。そして、今後、大規模プラットフォーム事業者に対するいろいろな義務を盛り込んだ情報流通プラットフォーム対処法が、この2025年5月に施行される。
県としては、そうした国の法律の強化された対応をしっかりと見て、県でもできる限りの対応を考えて、引き続きインターネットモニタリング事業を実施したい。
【委員】
さきの本会議一般質問で、増田成美議員が国勢調査について質問していた。
そのときの答弁では、国勢調査は非常に重要だが、多くの市町村から調査員の確保が難しいとの声が寄せられているとのことだった。私は国勢調査の調査員を過去に2回経験したが、以前は非常に厳しくて、朝から自分の受持ちの地区の全担当は一軒一軒回って調査票が提出されていることを確認し、最後に封まで確認してもらい納めた。5年前は、新型コロナウイルス感染症の関係からか大分簡素化されて、インターネットでの回答も可能になり、調査員も一度確認に行き、その訪問先が回答したといえば了承していた。
今後、調査員に対する説明会が各地区で開かれると思うが、今年の10月の国勢調査はどのようになっていくのか。また、今回の国勢調査では、インターネット回答はどのようになっていくのか。
【理事者】
国勢調査については、5年前と同様に、調査票の提出に当たってはできるだけ簡素に実施されるよう国で計画されている。郵送、インターネット、調査員への提出の三つの方法の中から一つを選んで提出という点は前回と変わっていない。
インターネットでの回答は、国は積極的に推進しており、先ほど委員が述べたとおり、インターネット回答であれば調査員が回収に行かなくてよいことになり、調査員にとっても、また回答者にとっても、24時間いつでも回答ができ、便利であるため、双方にとってメリットがあるインターネット回答を推奨している。
【委員】
確かにインターネットで回答すると楽ではあるが、調査員にしてみれば、本当に回答を出したか出していないか分からず、そこまで強要して確認しろとなると、また調査員に負担がかかってしまう。回答したかを一度聞いて確認する程度であればよいが、きちんと本人にもう一度会って、何度も念を押すとなると、調査員が大変だと思うので、これから各地区で説明会が始まるが、そこでは調査員に負担のかからないような調査の仕方になっていることを、しっかりと伝達してほしい。
《請願関係》
なし
《一般質問》
【委員】
第30回あいち国際女性映画祭2025について伺う。
先日、公益財団法人あいち男女共同参画財団が、毎年9月に開催するあいち国際女性映画祭のアンバサダーに女性監督の三島有紀子氏を委嘱したとの報道を見た。あいち国際女性映画祭は、女性監督による作品、女性に着目した作品を集めた国内唯一の国際女性映画祭であり、1996年のウィルあいち(愛知県女性総合センター)開館以来、ウィルあいちを主会場として国内外の女性監督作品やジェンダー平等に資するえりすぐりの作品が毎年上映されている。昨年度は、招待作品の上映後にトークイベントを実施したほか、中京テレビの恩田千佐子アナウンサーの講演会などもあり、会場は大きな盛り上がりを見せたと聞いている。
恩田千佐子アナウンサーは、その実力や実績のみならず、地域密着型の報道姿勢と地元愛が視聴者との強い結びつきと報道人としての信頼を生んでいるが、何よりも恩田千佐子アナウンサー自身の困難を乗り越える姿勢が多くの共感を呼んでいる。恩田千佐子アナウンサーは、病気で配偶者を失い、シングルマザーとして2人の子育てをする中で乳がんに罹患したが、本県の愛知県がんセンターでの告知から入院、手術までの過程がドキュメンタリーとして放送された。そして、職場復帰後から現在に至るまでの過程を、すべてが生きる糧という講演項目で映画祭でも話し、大いに花を添えた。
今年は記念すべき第30回とのことで、先ほど紹介した三島有紀子アンバサダーによる周知、広報など、様々な企画が予定されている。就任に当たり三島有紀子監督は、性別は関係ないという言葉もよく目にするが、無意識に判断していることはたくさんあり、その関係性を誠実に見詰めていくことでしか性別から自由になる道はないのではないか。この30年で何が変わって何が変われないでいるのか、この映画祭が30年続いた意味と、これから続けていく意味を今一度きちんと見詰めていきたいとコメントを寄せている。
三島有紀子監督の言葉にもあるように、県当局においては、30年の重みをかみしめながらも、映画祭の盛り上げを通じて広く一般県民に男女共同参画意識の普及、啓発をしっかりと行ってほしい。
第30回あいち国際女性映画祭2025は、公益財団法人あいち男女共同参画財団が主催であると承知しているが、どのような企画内容で、また周知広報を図っていくためどのように取り組んでいくのか。
【理事者】
あいち国際女性映画祭は、来年度30回目の記念の年となることから、これまでの4日間の開催から1日拡大して9月11日から15日までの5日間の開催とし、海外映画祭と連携した国際シンポジウムの開催などの記念事業を企画するとともに、日本初公開の作品や国内外の著名なゲストによるトークイベントを増やすなど、内容を充実していく。
また、あいち国際女性映画祭の周知、広報を強化するため、委員が述べたとおり、映画監督の三島有紀子氏に、第30回あいち国際女性映画祭2025のアンバサダーに就任してもらった。三島有紀子監督には、本年7月に予定している記者説明会や映画祭前日の合同記者会見への出席、会期中における対談やシンポジウムへの参加、映画祭公式ウェブサイト等による情報発信を行ってもらう。
このほか、男性や若者等を含めた幅広い層に向け、当映画祭の周知、広報を図るため、SNS広告を活用した広報宣伝活動や映画館における映画祭の予告編動画の上映などを行う。
こうした取組により、あいち国際女性映画祭をこれまで以上に盛り上げていくとともに、映画という親しみやすい素材を通じて広く県民に、性別にかかわらず、あらゆる立場や世代の人々が個性と能力を発揮できる男女共同参画社会について理解促進を図っていきたい。
【委員】
続いて、あいち男女共同参画プラン2025における評価と課題について伺う。
1999年に男女共同参画社会基本法が制定されてから25年ほどになるが、この間、男女共同参画に向けた様々な施策が進められてきた。また、国際連合で採択された持続可能な開発目標であるSDGsが進展したこともあり、ジェンダーギャップに関する問題は広く認知されるようになった。加えて、男女共同参画はジェンダー平等の問題にとどまらず、人口減少、少子高齢化の日本にとっては支え手不足に対応するための鍵でもある。男性も女性も柔軟に働き、育児や介護を分担できる環境を整えることで生産年齢人口の活用が最大化され、社会全体が持続可能になる。
令和7年4月1日からは改正育児・介護休業法が施行され、柔軟な働き方を実現するための措置として、例えば子の看護休暇が小学校就学の4月前までだったのが、小学校3年生修了まで延長される。また、従業員300人を超える企業には、育児休業等の取得状況の公表が義務づけられることになった。
こういった政策から、男性の育児休業を促進したい政府の意図も感じられる。男女共同参画社会基本法は、男女の人権を尊重し、社会情勢の変化に対応できる社会を実現することに、その目的があるが、現代では分野を超えて働き方などにも及びまさに時代の要請にまでなった。
一方で、男女共同参画の進展において、私たちを取り巻く環境は依然として大変厳しいものがある。例えば、元SMAPの中居正広氏の女性トラブルをめぐる問題は、フジテレビの広告主撤退や経営問題にまで発展した。この問題は、職場文化とジェンダーの不平等や組織の権力構造が女性への不適切な扱いを助長していた可能性などを浮き彫りにし、報道機関としての信頼の低下にもつながるなど、男女共同参画社会における課題を浮き彫りにした。
また、持続可能な開発目標報告2024において、日本は上位18位の達成状況にあるものの、目標5のジェンダー平等を実現しようについては、深刻な課題があると最低の評価であった。こういった現状は、あいち男女共同参画プラン2025の中でも、男女共同参画をめぐる現状と課題の中での認識と重なるものであるが、本県が目指す、すべての人が生涯輝く、多様性に富んだ社会をめざしてという将来像を見据えれば、このギャップを乗り越え、より一層の男女共同参画の推進、女性活躍への環境整備が求められている。
そこで、現行のあいち男女共同参画プラン2025における現時点の評価と課題はどのようなものか伺う。
【理事者】
あいち男女共同参画プラン2025は、2021年3月に策定され、2025年度までの5年間の計画となっている。プランでは、男女共同参画社会の実現を目指し、あらゆる分野における女性の活躍の促進、男女共同参画社会の実現に向けての意識改革、安心して暮らせる社会づくりの三つの重点目標を掲げ、それぞれに関連する42の進捗管理指標を設け、施策に取り組んできた。
42の進捗管理指標のうち、数値目標を設定している35の項目について、本年1月現在での進捗状況を評価したところ、目標に達したものが、女性の活躍促進宣言企業数など5項目、目標未達成だがプラン策定時の数値を上回ったものが、あいち女性輝きカンパニー認証企業数や企業における管理的職業従事者に占める女性の割合など23項目、プラン策定時の数値を下回ったものが、ウィルあいち情報ライブラリーの利用者数など7項目となった。
こうしたことから、プランは一定程度進捗しているものの、来年度が計画期間の最終年度となることから、県としては引き続き目標達成に向け、しっかりと取り組んでいきたい。
【委員】
あいち男女共同参画プランのさらなる充実を通じて、施策のアップデートに向けた取組を要望する。
現在、急速に国際競争力を失っている我が国において、さらなる女性活躍推進は待ったなしの問題である。株式会社パーソル総合研究所の女性活躍推進に関する定量調査報告書では女性活躍施策への厳しい指摘がなされているが、例えば男性が育休を取りやすい状況は会社の未来展望を明るいものにし、その展望へのポジティブさが女性の管理職昇進意欲を上昇させているとも分析されている。
こうした現状とのギャップを埋めていくためにも、学識経験者やシンクタンク、パーソナリティー、あいち女性輝きカンパニーの現職の女性管理職などと、男性の育休取得や女性管理職登用などについて率直な意見交換が必要ではないかとも思っている。もちろん、愛知県男女共同参画審議会での議論の内容についても議事録を公表しているが、より現場目線に近い意見集約の場の創設についても時代の変化に応えるためには必要ではないか。
その意味でも、来年度策定される新たなあいち男女共同参画プランについては、時代の変化に対応できるような計画や達成に向けた進捗管理を盛り込むよう要望する。そして、何よりも、現状は厳しいことも多いと承知してはいるが、明るい未来展望を男女問わず本県で働く人々、企業とともに一緒になって何度でも描き直していくことが重要だと思う。
恩田千佐子アナウンサーではないが、どうか県当局と愛知県で働く人々が時代の困難を乗り越える力となってもらえるよう、より一層の施策の充実を要望する。
【委員】
消費生活相談について伺う。
2024年8月7日に独立行政法人国民生活センターが公表している2023年度の全国の消費生活相談の状況から傾向と特徴を見ていくと、相談件数は全国で約89万件であり、2022年度の89万9,000件に比べ、約9,000件減少したとのことである。契約当事者の年代は依然として70歳以上の割合が最も高く24.2パーセント、また商品や役務等別で見ると、2022年度に比べ、一つ目に身に覚えのない商品が届いたという相談、不正利用の相談などといった商品一般について、二つ目にサポート詐欺の相談などといった他の役務サービス、三つ目に中古自動車の購入後に不具合が見つかったという四輪自動車、四つ目にアフィリエイトで稼げると言われて副業の契約をしたが辞めたいという内職や副業その他についてのもの、五つ目に美容整形の無料カウンセリング時に高額な契約を勧誘されたという医療サービスの増加が目立っている。
販売購入形態別では、通信販売の割合が最も高く全体の約4割、38.8パーセントを占め、契約購入金額は合計金額が4,295億円、平均金額が88万円、既支払金額は、合計金額が1,861億円、平均金額は48万円であり、2022年度に比べ、いずれも増加となっている。
販売方法・手口別で見ると、インターネット販売と定期購入では、化粧品や健康食品の定期購入に関する相談が多く、家庭訪問販売では屋根工事や修理サービスに関する相談、電話勧誘販売ではインターネット接続回線に関する相談、かたり商法、身分詐称では架空請求の相談が多いとなっている。また、消費者庁が出している令和6年版消費者白書を見ると、架空請求に関する相談件数は約1万6,000件と、直近20年で最少になったと言われている。
消費生活相談とは、事業者との間で生じた消費生活上のトラブルについて相談する窓口であると認識しているが、本県ではどのように相談内容が変化してきているのか、また、県民文化局ではどのように県民からの相談に対応してきたのか。
【理事者】
本県及び市町村の消費生活相談窓口に寄せられた相談件数は、2023年度は4万4,783件で、2014年度以降、年間約4万5,000件で推移している。
この間の相談内容を見ると、利用した覚えのない請求が届いたがどうしたらよいかという架空請求に関する相談が多く寄せられているほか、インターネット通販で化粧品や健康食品を一回限りのつもりで購入したところ、実際には定期購入になっていたという相談件数が大きく増加している。また、近年、SNSに関する相談件数が増加している。
本県として、相談に対しては、消費生活相談員が、クーリング・オフや中途解約が可能な契約については、解約方法を案内するなどの助言を行うほか、必要に応じて相談者と事業者の間に入って調整し、解決を図るあっせんにより救済に向けた支援を行っている。
【委員】
これまで県として取り組んできた啓発活動やその成果をどのように認識しているか。
【理事者】
本県では、消費者トラブル情報あいちクリオ通信や消費生活情報あいち暮らしっくなどを活用して、様々な消費者トラブル解決に向けた啓発に取り組んでいる。こうした情報は、新聞でも数多く記事として取り上げられている。
この結果、消費生活情報あいち暮らしWEBへのアクセス件数やSNSのフォロワー数も増加し、こうしたことが成果だと考えている。
【委員】
また、2022年4月には成年年齢が18歳に引き下げられたが、若年層の被害の未然防止のために県はどのように対処しているのか。
【理事者】
成年年齢の引下げにより未成年者取消権による保護がなくなったことで、特に18歳及び19歳の消費者被害が増加することが懸念されることから、本県では2021年11月に成年年齢引下げに伴う注意点等を分かりやすく呼びかけるメッセージ動画を制作してユーチューブにより広く配信し、消費者被害の未然防止を図っている。
また、オンラインゲームでの課金など、小中学生が契約当事者となるトラブルの相談も増加していることから、児童生徒の発達段階に応じた、より早い時期からの消費者教育の充実・強化を図るため、2022年度から小中学生向け消費者教育教材「消費者教育教材かしこい消費者のススメ」を作成しており、毎年度、県内全ての小学校5年生と中学校2年生に配布するとともに、学校からの希望に応じて消費者教育の専門家を講師として派遣し、この教材を活用した出前授業を実施している。
【委員】
県として、しっかりと若年層への被害の未然防止のために活動していることが分かった。
先ほど私が述べた中で、高齢者の相談件数が多いと話したが、高齢化の進行により高齢者の消費者被害の深刻化も懸念している。高齢者の消費者被害防止についてはどのように取り組んでいるのか。
【理事者】
高齢者は、被害に遭っていることを認識していない、独り暮らしで相談する人がいないなど、被害が表面化しにくい傾向があるため、地域で見守ることが必要になる。そこで、本県では高齢者の被害の防止を図るため、市町村において消費者安全法に定める消費者安全確保地域協議会、いわゆる見守りネットワークの設置を促進してきた。
見守りネットワークは、地方公共団体の消費者行政部局と福祉部局などの関係者が連携して高齢者等を消費者被害から守る仕組みだが、県では市町村への個別訪問を通じて、市町村にその意義を説明して設置を働きかけてきた。その結果、本年2月末現在で39市町が設置しており、県内人口のカバー率では94パーセントとなっている。
【委員】
消費者トラブルの未然防止については、今後どのように取り組んでいくのか。
【理事者】
消費者トラブルの未然防止については、今後もあいちクリオ通信やあいち暮らしっくなどを活用し、あらゆる機会を通じて広く啓発に努めるとともに、小中学生向け消費者教育教材を作成、配布するなどの取組を実施していく。
また、高齢者等の見守りについては、引き続き見守りネットワークの設置促進に取り組むとともに、地域において実効性のある見守りが行われるよう、見守り活動のポイントをまとめたポケットマニュアルや見守り活動時に高齢者に渡すための啓発資料を新たに作成し、配布することで、市町村の見守り活動を支援していく。
こうした取組を着実に実施することで、今後も消費者トラブルの未然防止に向けてしっかりと取り組んでいく。
【委員】
インターネット社会が進展し、良くも悪くも多くの情報を入手できる時代になった。その情報の出どころや真偽を確かめるのも利用者の責務だが、適切に判断ができるよう引き続き情報提供に取り組み、併せて県民に対して情報リテラシーを高めていくことも考える必要があると思う。
この問題は、社会全体で対処していかなければならない問題であると感じている。2月28日に発行された日本屋根経済新聞に一般社団法人全日本瓦工事業連盟が悪質業者撃退作戦として、警察との連携や新聞広告の活用など、消費者保護に力を入れていくのは地元業者の信頼回復にもつながるとのことで、今回は新たに我が家の屋根は点検済みと記載がされたステッカーを作成して、訪問販売による詐欺の未然防止に取り組んでいる。
非常によい取組だと思ったため、県においても今後はぜひとも、世の中にある様々な団体ともしっかりと情報交換し、利用者側だけでなく、団体も含め全方位的に詐欺や悪質業者に対処してほしいと要望する。
【委員】
国際芸術祭あいち2025について伺う。
9月13日の開幕まで約半年となり、準備もいよいよ佳境に差しかかってきた。2月13日にはボランティアの募集、あるいはパートナーシップ・プログラムの募集についての記者発表もあった。2月26日には参加アーティスト全60組が全て公表され、いよいよというところだが、何点か確認したい。
まず、ボランティアについて伺う。
国際芸術祭あいち2025のパンフレットも非常に格好よく、よくできていると思うが、そこにボランティアの実際の活動内容も書いてあった。締切りを6月3日として、既に募集をスタートしているが、このボランティアの活動内容はどのようなものか。また、昨今インバウンド需要はいろいろあるが、外国人向けの通訳等もこのボランティアに含まれているのかを併せて伺う。
国際芸術祭あいち2025チラシ
国際芸術祭あいち2025では、ボランティアを会場運営サポート、対話型鑑賞ツアー、ラーニングの三つの区分で募集している。このうち、ラーニングは新たに設けた区分となる。
これは、これまでのボランティア経験者にヒアリングを行った結果、ボランティアがより積極的に芸術祭に参加できるようにしてほしいとの要望があったことから、ボランティア自らが企画し、作家、作品、会場となるまちの魅力などを調査し、発信する活動区分を今回新たに設けた。これにより、ボランティアがより積極的に芸術祭に参加できるようにしていきたい。
また、ボランティアの外国人向けの活動などについては、ボランティア登録の際に特技や資格等を聞いており、例えば語学の得意なボランティアには外国人来場者への案内サポートをしてもらうなど、それぞれの活動区分の中で、ボランティア本人の希望も聞きながら、様々な形で芸術祭を支えてほしい。
【委員】
今の答弁のとおり、外国人向けのサポートもぜひ意識しながら募集の際にも対応してもらえればと思う。今回からラーニングの区分も新たに設けるとのことだが、今後の芸術祭のテーマ設定は非常に難解だが大変興味深いテーマでもあるので、こうした部分をしっかりと噛み砕いて、来場者に向けて説明してもらえるような内容になればよいと思う。
今回のボランティアの募集規模が約1,000人だとパンフレットに書いてあった。前回、前々回など、過去のボランティア募集と比べて、どのような規模感か。
【理事者】
前回の国際芸術祭あいち2022では983人、また前々回のあいちトリエンナーレ2019では1,219人がボランティア登録し、芸術祭を盛り上げてくれた。今回もこれまでと同規模の1,000人程度のボランティアを募集し、芸術祭を盛り上げてほしい。
【委員】
1,000人規模ということだが、1,000人ぴったりで先着で締め切るのではなく、ある程度弾力的に募集するとの認識でよいのか。あるいは応募多数の場合は選考があるのか。
【理事者】
募集人数の1,000人については、あくまで目安であり、対話型鑑賞ツアー以外の区分に選考等はないため、積極的に申し込んでほしい。
【委員】
一部を除き、選考形式ではなく、希望者がいれば広く募るとのことなので、我々としても引き続き締切りまで様々なところで周知したいと思う。
恐らく芸術祭という性質上、募集していきなりボランティアが集まるというよりは、経験者がリピーターとして応募するケースも多いだろうし、県内の文化芸術系学部の学生も大変興味を持つかと思う。県内県外を問わず募集していると思うが、どのような方法で周知やボランティアの募集を行っているのか。
【理事者】
ボランティアの募集に当たっては、県内の芸術大学をはじめとする各大学を個別に訪問し、学生に対する周知を依頼しているほか、市町村広報紙への掲載依頼、県や市町村、公民館や図書館等でのチラシの配架やポスターの掲示、またウェブサイトやSNSでの情報発信を行っている。
これまでのボランティア経験者に加え、新しい人にも参加してもらえるよう、引き続き周知していく。
【委員】
学生にとってもよい経験になるだろうし、様々な県の事業との連携という意味でも、ぜひこういった結びつきを続けてほしい。いろいろな面もあると思うが、文化芸術に興味を持つ人たちにぜひ関心を高く持ってもらい、広く募ってほしいと思う。
会場地だけでなく、県内全域での盛り上がりも大事だと感じており、プレスリリースを見ると、巡回展示ポップ・アップ!という催しもあるようだが、これはどのようなものか。
【理事者】
巡回展示ポップ・アップ!は、国際芸術祭あいち2025の会期中の週末を中心に豊田市、設楽町、大府市及び豊川市の4市町を巡る巡回展示である。国際芸術祭あいち2025参加作家のうち、10組程度の作家の本展とは別の作品を展示するほか、アーティストによるワークショップ、学芸員スタッフによるガイドツアーなども開催する予定である。
また、開催地については、県内市町村に意向調査を行い、展示場所の候補地を下見調査し、地域バランスも考慮した上で決定した。
【委員】
県全体で盛り上がっていないと、3年に一度の祭典という感じがしないため、県内4市町とのことだが、ぜひ巡回展示ポップ・アップ!でそれぞれの地域も盛り上げてほしい。
パートナーシップ・プログラムも今回募集がスタートしたと聞いているが、これはどのようなものか。
【理事者】
パートナーシップ・プログラムは、国際芸術祭あいち2025の会期中に民間企業や自治体、地元の文化芸術団体などが県内で行う文化芸術事業の公募を行い、60件程度のプログラムを選定の上、相互に広報協力を行うものである。
広報協力の内容としては、選定プログラムを掲載したチラシを作成し、芸術祭の会期中に会場内で来場者へ配布するとともに、国際芸術祭あいち2025公式ウェブサイトへの掲載、また各申請者が作成したチラシも会場内で配架するなど、相互の事業の盛り上げを図っていきたい。
【委員】
60組を採択し、相互に広報協力を行うとのことだが、プログラムを実施する団体への予算の面での補助はないのか。
【理事者】
補助はない。
【委員】
あくまでも相互広報とのことだが、60組に限定しているのは何か意味があるのか。国際芸術祭あいち2025にふさわしい地元で行われるイベントがあり、パートナーシップ・プログラムとして採択されれば、イベントを行う個人や団体にとっては箔がついてよいと思うが、どのようなイベントでも応募できるのか。
【理事者】
60組に限定しているのは、チラシを作る際に全部の事業を紹介できるようにするためである。また、文化芸術事業であれば応募することは可能である。
【委員】
地元も含めて、いろいろな団体にしっかり周知して、たくさん手を挙げてもらえるよう我々としても広報していきたい。
国際芸術祭あいち2025を県全体で盛り上げていくためには、巡回展示ポップ・アップ!やパートナーシップ・プログラムの充実が非常に大事だと思う。そこで、県として巡回展示ポップ・アップ!やパートナーシップ・プログラムのどのような部分に期待しているのか伺う。
【理事者】
巡回展示ポップ・アップ!については、会場地以外で展示を行い、より身近に現代アートに触れてもらうことで、本展への誘客につなげていきたい。また、パートナーシップ・プログラムについては、同時期に開催される県内各地の文化芸術プログラムを紹介することにより、県内全域の文化芸術活動の活発化を図っていきたい。
この巡回展示ポップ・アップ!及びパートナーシップ・プログラムを実施することにより、芸術祭の開催目的の一つでもある地域の魅力の向上を図り、県内全域での盛り上げにつなげていきたい。
【委員】
我々としても大いに期待しており、盛り上がる国際芸術祭になるよう応援している。
国際芸術祭あいち2025は、9月13日から11月30日の79日間開催するとのことだが、3年前の開催時にはあいち県民の日が制定されていなかったため、今回が、あいち県民の日が制定されて以降、初の国際芸術祭になる。11月30日が国際芸術祭あいち2025の開催期限であれば、最終盤に、あいち県民の日、あるいはあいちウィークが入ってくるので、コラボレーションもぜひ考えてほしい。
国際芸術祭あいちは、ラーケーションや親子で学ぶために、学校を休んで出かけるのに非常に適しているイベントだと思うため、ぜひ相乗効果を狙ってほしいが、あいち県民の日との連携についてどのように考えているか。
【理事者】
国際芸術祭あいちは、開催目的の一つとして、文化芸術の活動の活発化による地域の魅力の向上を掲げており、あいち県民の日条例にある県民が地域の自然、歴史、風土、文化、産業等についての理解と関心を深め、愛知への愛着及び県民としての誇りを持つ契機とするというあいち県民の日を制定した目的と相通ずるものがある。
国際芸術祭あいちは、県民が地域の歴史や文化を学び、愛知の魅力を再発見する大変よい機会であるため、しっかりと連携を図っていく必要がある。具体的な連携として、国際芸術祭あいちは、もともと中学生以下の料金を無料としており、県民の日学校ホリデーなどを活用し、来場しやすいイベントだと考えている。
あいちウィークは11月21日から27日までの7日間であるが、来年度はそのうち愛知県美術館や愛知県陶磁美術館の休館日に当たる11月25日の火曜日について臨時開館する方向で調整を進めている。これにより、より多くの県民に来場してもらえるよう取り組んでいきたい。
【委員】
あいちウィーク、あいち県民の日と一緒になって愛知県美術館や愛知県陶磁美術館を臨時開館するとの答弁があったが、非常によい取組だと思う。特に、県民の日は県政150周年を記念して設定されて以降、今回が初の国際芸術祭あいちの開催だが、今後も必ず3年に一度はこのタイミングでコラボレーションできる時期が訪れることになるので、ぜひ連携してほしい。
県民の日を所管する県民総務課からも、国際芸術祭あいち2025との連携についての考えを伺いたい。
【理事者】
あいち県民の日条例では、あいちウィーク期間中に県民の日にふさわしい事業を実施するものとされており、事業者や市町村からの協力のほか、県庁各局が実施するイベントや施設サービスを通じて様々な連携事業を行っている。
国際芸術祭との関連では、昨年度と今年度の2回にわたり、国際芸術祭地域展開事業の中で県民の日との連携を図っている。具体的には地域展開事業で作成されたチラシや公式ウェブサイトにおいて県民の日のロゴマークを掲載し、あいち県民の日連携事業として位置づけている。
あいち県民の日を所管する県民総務課としては、あいち県民の日条例の目的の一つである郷土理解や、愛知への愛着や誇りを持つ契機とするため、国際芸術祭あいち2025との連携は重要であると考えており、あいちウィーク期間中に行うあいちウィークフェスタやあいち県民の日記念イベント等において、国際芸術祭あいち2025を積極的にPRしていきたい。
【委員】
国際芸術祭あいち2025の開催まで半年だが、灰と薔薇のあいまにというテーマが発表されてから、このテーマを何とか少しでも理解したいと思い、アドニスの詩から始まるフール・アル・カシミ芸術監督のテーマ・コンセプトを何回も読んでいるが、何回読んでもよく分からない。難解だが非常によいテーマだと思うので、このテーマ・コンセプトをぜひ多くの人に知ってもらうことが、国際芸術祭あいち2025を盛り上げる上で重要だと思うが、どのように県民に周知していくのか。
【理事者】
フール・アル・カシミ芸術監督が掲げるテーマ、灰と薔薇のあいまには、人間と自然や環境との関係を見つめ直し、人間と自然とが共存していく道を探っていくことをコンセプトとしている。
人間と環境の間に浮上している様々な深刻な問題について、破壊や絶望をイメージさせる灰、それに繁栄や希望をイメージさせる薔薇の、灰か薔薇かといった極端な二項対立的な考え方から離れ、アート作品を通じて、そのあいまにある幅のある考え方を探求するものである。
国際芸術祭あいち2025では、世界の様々な地域から参加する多様な背景を持つアーティストたちがこのテーマ・コンセプトに呼応し、アーティストならではの視点からの作品が展開される。そのため、テーマ・コンセプトを知っておくことは、作品への理解を深める上で大きな一助になる。
テーマ・コンセプトの趣旨については、これまでも芸術監督による記者会見やシンポジウム、あるいはメディアの取材などを通じて説明や情報発信を行ってきた。また、今年1月には、灰と薔薇のあいまにの解釈と題してテーマに関するトークイベントも開催している。今後もトークイベントなどでテーマ・コンセプトの周知を図るとともに、会期中には芸術監督による作品解説やキュレータートーク、アーティストトークなどの機会に、テーマ・コンセプトと作品との関連について解説してもらうほか、メディアも通じて発信していきたい。
そうした取組により、来場者がテーマ・コンセプトや作品への理解を深め、人間と自然や環境との関係について考え、会場となる瀬戸市の陶磁文化や歴史などについて学ぶ機会となるよう取り組んでいきたい。
【委員】
県の文化財登録制度について伺う。
国が文化財保護法を改正したタイミングで、それに呼応して愛知県が文化財登録制度をつくり、積極的に文化財を掘り起こし、登録していると認識している。
そうした中で、無形である形のない技を登録していくことの必要性について、昨年12月の本委員会で質問した。なぜかというと、経済産業省が所管している伝統的工芸品は100年以上の歴史を有していることや、一定の地域で地域産業として成立していることなど、かなり高いハードルをクリアして指定されているが、これも技の集結によって作られているものであるため、この技自体を残していくことが、伝統的工芸品を残していくことにつながっていくのではないかとの視点で質問した。
そのときの私の質問に対し、技の無形文化財としての登録に向けて準備を進めているとの答弁があったが、その後2月に有松・鳴海絞の製作工程のうち、手括り技術を無形文化財として登録したことは非常に評価したい。また、今までは個人の技を無形文化財として登録していたと思うが、今回は、制度開始以降初めて、技の保持団体を認定して無形文化財の登録をしたとのことで、新たに伝統的工芸品を次の世代に残していくために0から1を生みだしたことは本当にありがたいことであり、伝統的工芸品がこれによってまた後世へと引き継がれていくのではないかと思う。
県登録無形文化財「有松・鳴海絞手括り技術」縫い巻上絞
今回、有松・鳴海絞の製作工程のうち、なぜ手括りの技術を登録したのか、またどのような団体を技の保持者として認定したのかを伺う。
【理事者】
今回登録した文化財の所在地である名古屋市緑区の有松・鳴海地区では、江戸時代から絞り製品が製作されてきたが、その製作工程としては、図案、型紙彫り、下絵刷り、括り、染色、糸抜き、仕上げ整理の順に進行する。その中で、図案に沿って生地に綿糸を通して締め上げる括りは最も中核的な工程の一つであり、括られた部分だけ染料が染み込まないことによってち密で多様な模様が生み出される。百数十種類と言われる括り方のうち、巻上絞、三浦絞、鹿の子絞は特に古くから広範囲に行われた技術であるため、今回この三つの技術を登録した。
次に、無形文化財の登録においては、技を保持する個人または団体を認定することで、その技の継承を図っている。技を保持する人が複数いる場合には、その人々が主たる構成員となっている団体を保持団体として認定することとしており、今回は、愛知県絞工業組合が育成した技術者で構成され、伝統的な手括り技術を保存・継承している有松・鳴海絞手括り技術保存会を保持団体として認定した。
【委員】
県内には、このように優れた伝統的工芸品が多くあり、国の高いハードルをクリアしたものが、今、15件指定されており、この有松・鳴海絞も、その一つだと認識している。
しかし、担い手不足に悩まされている団体も非常に多くあるため、伝統的工芸品を作る技は今後も積極的に保護と継承を図る必要がある。そのためには、有松・鳴海絞のように、技を文化財として登録していくことが有効だと思う。
伝統的工芸品の技の県の文化財としての登録について、今後県としてどのように取り組んでいくのか。
【理事者】
本県としても、無形の工芸技術は将来に継承していくべきものが多くあると認識しており、文化財登録を積極的に行っていきたい。
中でも伝統的工芸品は、今回登録した有松・鳴海絞以外も、生産者が一定の地域に集まり、伝統的な技術、技法によって製造されており、その地域にはそうした技を保持し、継承されている人々がいる。今回の有松・鳴海絞手括り技術については、どのような技が登録にふさわしいか、そして保持団体は技の保存と継承を実施していけるような体制となっているかなどについて検討を行い、愛知県文化財保護審議会に諮問した結果、登録を妥当とする答申があり、文化財として登録することとなった。
今後とも審議会の委員に相談しながら、登録対象とする技の精査や検証に向けた組織体制の調査を積極的に行い、登録を進めていきたい。
【委員】
ぜひ積極的な登録を行ってほしい。
12月の委員会でも指摘したが、登録文化財に対する補助制度がある。これは、20万円を上限として対象経費の3分の1を補助する制度になっているが、活用実績が一例もないとのことだった。補助率を2分の1に上げてはどうかという話も所有者から漏れ聞こえてくる。
そこで、例えば補助上限は20万円のままで補助率を2分の1に上げるなど、所有者や保持者が使いやすい制度にする必要があると思うが、県としての考えはいかがか。
【理事者】
登録文化財に対する補助制度については、委員が述べたとおり、文化財の公開や伝承、記録作成事業について補助対象経費の3分の1、20万円を上限に補助する制度としているが、制度の開始から2年目となる現在まで、まだ活用の実績がない。
今後は、登録文化財の増加とともに、補助金が活用される機会も増加すると考えているが、補助金交付の対象となる文化財の所有者などに個別に聞き取ったところ、補助率が3分の1では所有者側の負担が大きいなどの意見があった。
県としては、補助金が積極的に活用され、登録文化財の価値や魅力を多くの人に知ってもらう取組を促進していくためには、補助率の変更について検討が必要と考えている。また、補助率を変更する場合は、補助金が活用できる期間が登録された年度、またはその翌年度から3年以内となっており、これまでに文化財を登録した人々も活用できるよう、できるだけ早い時期に実施したい。
【委員】
ただいまの答弁にもあったが、今、開始から2年目の制度であり、補助率が変わったときにも、登録を受けてから3年間は使える制度になっていると思うので、県の文化財登録制度が開始された年に登録を受けた人々にも、補助率が変わったときには周知し、この補助金を活用して後継者育成などの事業に活用してもらえる、使いやすい制度にしていくことを要望する。
【委員】
昨年12月の本委員会でも話題にしたが、県が行っている文化活動事業費補助金について再度取り上げる。
この制度は、開始から30年ほど経過しており、この間の変化について、さきの委員会でも資料を出してもらったが、改めて紹介すると、愛知芸術文化センターができた1990年初め頃、この頃に鈴木礼治元知事の英断によって2億5,000万円の規模で地元の文化芸術活動に対する補助金制度として始まった。しかし、それからは財政危機等により削減される一方であり、ここのところの文化活動事業費補助金額は、制度開始時の10分の1の規模の2,500万円程度となっている。
この間に1回変化があった。たしか2010年だったと思うが、第1回あいちトリエンナーレが神田真秋元知事のもとで始まった。海外の芸術家を招いて大規模な国際芸術祭を3年ごとに開催するかなり壮大な構想であったため、それに応じて地元の文化芸術活動に対する補助金も一挙に2,800万円から2倍以上に増え、6,800万円となった。ただし、これは1年限りのことで、またそれから補助金額はどんどん下がっていき、結局2,500万円程度に張りついている。
私も付き合いがある地元の文化芸術に携わる人々から様々な意見を聴くため、前回の委員会ではどういった基準でどういった事業に対して補助をするのかという選考方法や、選考委員の苦労なども聞きながら選考の在り方についても問題提起したが、そもそも原資が少な過ぎるのではないかということにたどり着き、他の都道府県の地元の文化芸術活動に対する補助金制度なども調べた。
ちなみに、東京都は地域芸術文化活動応援助成制度を持っており、区分1、2と分かれているが、総額が5億7,900万円である。それから、神奈川県も、一般の文化活動団体事業補助金が885万円ほどであるが、マグネット・カルチャーという独特のカテゴリーで、地域の民俗芸能や障害者の事業といった、特色あるカルチャーを地元で育てるコンセプトの補助もあり、これは2億8,200万円である。福岡県は、本県に似ているが、文化芸術活動助成として上限30万円で、1億6,643万円である。いずれも億単位の地元の文化活動に対する助成制度を持っている。
本県のあいちトリエンナーレや国際芸術祭といった取組を一切批判するつもりはないが、地域で行われている文化芸術活動に対する助成と、国際芸術祭に投じられる10億円を超える予算とのアンバランスが、地元の文化芸術活動に取り組んでいる人の中にも不満としてあるのではないかと感じる。
県としては、現行の文化活動事業費補助制度が、同じような形式や金額でここ10年以上続いてきているが、この制度について今後どのように取り組んでいこうとしているのか。
【理事者】
文化活動事業費補助制度については、文化団体の財政的な支援はもとより、支援を受けた団体の活動が県民の文化芸術の鑑賞の機会の充実や拡大につながることを目的として、これまで実施してきた。
1991年に本制度を創設して以降、その時々の社会情勢を踏まえ、補助メニューをはじめ、補助対象経費の範囲や補助金の算定基礎額などの見直しを行い、少しでも多くの文化団体に補助金を交付できるよう努めてきた。
今後も、関係者の意見などを踏まえながら、様々な文化団体が補助金を活用し、また県民の皆様が様々な文化芸術に参加、鑑賞できるよう補助対象要件や補助金額を必要に応じて見直すなど、引き続き文化芸術団体の活動に対してしっかりと支援していく。
【委員】
補助制度の金額を今すぐどうこうするのは当然難しいため、その答弁はなかなか期待し得ないが、来年度の新規事業の中に目を引く文化芸術活動に対する支援があった。それは、県営住宅の1階の空きスペースを利用して映像や彫刻といった、ある程度の広さが必要な作品を作る場所がなくて困っている人々に団地の空きスペースを提供する事業である。こういった、新たにお金を配ることとは違い、既存の県の所持するインフラや条件を活用して、若手の芸術家や地域の芸術家に役立てる発想は大変よいと思う。
全体の事業予算をもっと大きくしてほしい思いはあるが、このように県有施設等の空きスペースを文化芸術家の創作の場に当てるといった類いの工夫がもっとあり得るのではないかと思う。こういった支援として今後どのようなことを考えているのか。
【理事者】
本県では、これまでも文化活動事業費補助金以外にも様々な事業に取り組んできた。新たな取組の紹介をすると、本県の伝統文化の継承を図るため伝統芸能の鑑賞体験イベントを実施した。こういったイベントについては、これまでのように文化単独の事業として実施するのではなく、全庁的な大規模イベントと連携して開催することで、県内の伝統文化団体の活動や魅力をより多くの人に知ってほしい。
それから、先ほど委員が述べた新規事業として実施するアーティスト活動支援事業では、若手アーティストを対象に県営住宅等に併設された空き店舗を活用して、創作から発表まで一連の活動を支援していく。
今後も、社会情勢や県民のニーズに応じて、文化芸術団体や個人に対して様々な支援を行うことで、本県の文化芸術の振興にしっかりと取り組んでいきたい。
【委員】
改めて言うまでもないが、本県には愛知県立芸術大学がある。音楽や絵画の面で非常に長い歴史があり、有名な芸術家を輩出している。都道府県でこういった芸術大学を持っている県はそんなにないと思う。芸術文化を大事にして育てる県の姿勢を、地域に根づいている文化芸術活動への支援にさらに結びつけ、力強くこれを支援することを要望する。
【委員】
ロシアがウクライナに侵攻して、今年2月で3年になる。当初、報道で毎日のように戦況を見ていたが、3年たって徐々にこうしたニュースも減ってきた中で、先月、ゼレンスキー大統領とトランプ大統領が会談をして、何らかの合意になるかと誰もが期待したと思うが、残念ながら1回目の会談はけんか別れになった。
ちょうど先月の2月24日で丸3年となる中、当初戦禍を逃れて、この愛知県に逃れてきたウクライナ避難民は何人いて、3年たった今、何人が避難生活をしているのか。
【理事者】
本県で生活しているウクライナ避難民の人数は、2023年12月1日現在の127人をピークに若干減少しているものの横ばいの状態が続いており、直近の今月1日時点の調査では88世帯124人となっている。
ここ1年の毎月の変動を見ると、新規受入れと、県外や国外への転出がそれぞれ数人程度の状況が続いており、直近では、1月は新規受入れが2世帯4人、転出が3世帯4人、2月は新規受入れが3世帯3人で、転出はなかった。
【委員】
来年度もこういった支援の事業の予算がついており、2022年度からこうした難民の支援事業を行っているが、具体的にどのような支援を今まで行ってきたのか。
【理事者】
ウクライナ避難民支援事業では、生活一時金の支給、日本語学習支援、企業等から寄せられた寄附物品の配送を2022年度から継続して実施している。
具体的には、生活一時金は本県に新規に避難してきた際に1世帯当たり20万円、1世帯の人数が2人を超える場合は3人目以降1人増えるごとに10万円を加算した額を支給している。また、日本語学習の支援として、学習に必要なタブレット端末の貸出しとデータ通信用のプリペイドSIMカードを1人につき5枚支給している。このほか、2022年度から開催しているオンライン日本語教室には、これまでに避難民が48人参加した。
なお、寄附金の募集も行っており、これまでに集まった寄附金1,776万円は、生活一時金とプリペイドSIMカードの財源として活用している。さらに、企業等から寄せられた生活用品等の寄附物品を避難民の自宅に配送しており、これまでに12回、延べ671世帯に配送を行っている。
【委員】
先般、新聞にも載っていた公益財団法人日本財団のウクライナ避難民へのアンケートによると、できるだけ長く日本に滞在したいと回答した人が44.4パーセントで、ウクライナの状況が落ち着くまでしばらく日本にいたいと回答した人が27.1パーセントであり、7割程度の人が日本にいたいと回答したと報道されていたが、本県のウクライナ避難民がどのような意向かを把握しているなら、その状況を教えてほしい。
【理事者】
本県で生活する避難民の世帯主を対象として、今月、メールでアンケートを行ったところ、33人から回答があり、できるだけ長く日本に滞在したいと回答した人が64パーセント、ウクライナの状況が落ち着くまでしばらく日本に滞在したいと回答した人が24パーセント、未定、分からないと回答した人が12パーセント、できるだけ早く帰国したいと回答した人はいなかった。
9割近くが、引き続き日本に滞在したいとの回答結果となっており、全国を対象として実施した日本財団のアンケート以上に、日本での滞在を希望する人が多い結果となっている。
【委員】
当然、不安な情勢の中に帰りたい人は少なく、治安のよい日本で暮らしたい、できるだけいたいというのは当然だと思う。そうなれば、例えばお金を配る、いろんな仕事をあっせんするだけではなく、これから愛知に住む上で生活できる状況をつくっていくことが、これからの最も重要な支援策だと思うが、来年度以降そういった取組はあるのか。
【理事者】
県が今月実施したアンケートでは、日本語能力や就労状況についても質問しており、日本語能力については、話ができ日常生活の日本語を聞き取れる、もしくは少し話ができ簡単な日本語を聞き取れると回答した人が68パーセント、それから就労状況については、フルタイム雇用が33パーセント、パート・アルバイトが30パーセントとの回答結果だった。6割以上の人が収入を得ながら社会生活を送っていることから、本県の取組が一定の支援につながったものと考えている。
また、仕事をするために必要な支援を聞いたところ、日本語学習の支援が73パーセントと最も多い結果だった。こうしたことから、来年度も日本語学習をはじめとした支援をこれまでと同様に行うとともに、ウクライナ避難民の人々に自立した生活を送ってもらえるよう、レベルに応じた地域日本語教室や学習教材の提供、情報提供を行うなど、寄り添った支援を行っていきたい。
【委員】
新聞報道によると、これはウクライナ政府の発表のため、実際はもっと多いと思うが、ウクライナの戦争で亡くなった人が4万5,000人、それから負傷者が40万人を超えている。そんな状況で祖国に帰りたいという人も、先ほどのアンケートどおり、なかなかいないと思う。
これからは、いろいろな支援やお金を配ることがなくても生活できる状況をつくっていくことが行政の本当の仕事だと思うため、まずは生活の安定ができる支援をしっかりしていき、いずれは支援がなくても彼らが暮らしていけるような状況にしてもらいたいと要望する。