委員会情報
委員会審査状況
農林水産委員会
( 委 員 会 )
日 時 令和5年6月27日(火) 午後0時59分~
会 場 第2委員会室
出 席 者
佐藤英俊、村瀬正臣 正副委員長
峰野 修、いなもと和仁、近藤裕人、柳沢英希、杉浦友昭、高橋正子、
長江正成、桜井秀樹、藤原 聖、井上しんや、喚田孝博 各委員
農業水産局長、農林水産推進監、農業水産局技監、農政部長、
畜産振興監兼畜産課長、水産振興監、農林基盤局長、同技監、農地部長、
林務部長、関係各課長等
<付託案件等>
○ 議 案
第 81 号 令和5年度愛知県一般会計補正予算(第2号)
第1条(歳入歳出予算の補正)の内
歳 出
第6款 農林水産費
(結 果)
全員一致をもって原案を可決すべきものと決した議案
第81号
○ 閉会中継続調査申出案件
1 農林水産業の振興について
2 農地関係の調整及び土地改良について
3 緑化の推進について
4 農業水産局、農林基盤局、海区漁業調整委員会及び内水面漁場管理
委員会の行政運営について
<会議の概要>
1 開 会
2 議案審査(1件)
(1)理事者の説明
(2)質 疑
(3)採 決
3 委員長報告の決定
4 一般質問
5 閉会中継続調査申出案件の決定
6 閉会中の委員会活動について
7 閉 会
(主な質疑)
《議案関係》
【委員】
栽培漁業センター施設設備整備費について伺う。
水産資源減少の中、水産資源を積極的に増やす取組として、県では栽培漁業の取組を推進していると聞く。
栽培漁業は、魚や貝の死にやすい期間を人間が保護しながら飼育し、ある程度独り立ちできるようになったら自然の海に放流する取組で、県では田原市にある栽培漁業センターで、トラフグ、クルマエビ、ガザミ、ヨシエビ、アワビ、ナマコ、アユの7魚種の放流用種苗を生産している。これらにより、クルマエビやガザミでは全国1位の漁獲量となっており、漁業者の収入安定にも役立っており、重要な取組だと思う。
栽培漁業センターの長寿命化改修工事とはどのような内容なのか。
【理事者】
本県では、県有施設の老朽化対策として、愛知県庁舎等長寿命化計画を策定して改修工事を行っている。栽培漁業センターでも、1978年の開設から40年以上経過し、施設が老朽化しているため、本計画に基づいて昨年度から今年度にかけて改修工事を進めている。
工事の内容については、建物の外壁や屋根など本体構造に関するものや、電気設備や水回りなど建物内部に関するものなど建物の一般的な改修のほか、栽培漁業センターは魚の飼育を行う特殊な施設であるため、コンクリート水槽や配管などの改修も含まれている。
【委員】
アスベスト飛散防止対策に関する経費の増額とのことだが、長寿命化改修工事の当初設計時に見込むことはできなかったのか。
【理事者】
今回の補正予算については、長寿命化改修工事で古い配管の撤去を行うときに、配管の保温材にアスベストが使われていたため、大気汚染防止法に基づき飛散防止対策を行うものである。
アスベストの有無は保温材を取り出して分析するまで分からないため、その箇所を事前に把握することができず、当初設計には含められなかった。栽培漁業センターは魚を飼育することから、飼育内で配管が張り巡らされており、アスベストが使われていた保温材の箇所が1,300に上がることが判明したため補正予算を要求し、年度内に改修工事を完了させるものである。
【委員】
今年度の種苗生産に影響がないように工事を進めてもらいたい。
《一般質問》
【委員】
農業の担い手不足について伺う。
先日、農業水産局からもらった農業の動き2023を見ると、2015年と比較し、農業経営体数が25.5パーセントの減少となっており、販売金額では500万円未満の経営体で28.7パーセント、3,000万円以上の経営体数で6.5パーセントの減少となっている。農家数は17.3パーセントの減少であり、販売農家数は26.1パーセントの減少となっている。その反面、農業法人数については829法人で、前年より48法人の増加、2017年と比較しても138法人の増加となっている。
また、基幹的農業従事者は約4万人であり、2015年と比較して27.6パーセント、人口数では1万5,289人の減少となっている。
農家といっても幅広くあるが、農業を営む人が減少していくことは、食料自給率の低下や耕作放棄地の増加、農地の機能喪失などといった問題が生じてくるという懸念をしているので、これらのデータを踏まえ、愛知県の新規就農者の現状を伺う。
【理事者】
愛知県では、毎年5月2日から翌年の5月1日までの1年間で、新たに就農した人に関する実態調査を農業経営課で行っている。最新の新規就農者数は、2022年5月から2023年5月までの間に就農した64歳以下の数値であり、191人となっている。2021年5月から2022年5月までの間は181人であるため、10人増加している。
この191人の内訳は、農家出身で学校などを卒業してすぐ就農した新規学卒者が21人、農家出身で他産業に一旦就職した後に就農した人が55人、非農家出身の新規参入者が115人となっている。
【委員】
2021年の一般法人の農業参入数は、2020年と比較して28法人増加となっており、株式会社では97法人、特例有限会社が24法人、その他のNPO法人等で38法人となっているが、どのような法人が農業経営に新規で参入しているのか。
【理事者】
農業振興課では、農地の権利をリース方式で取得して農業に参入した法人の数を調査している。2020年末から2021年末にかけて増加した28法人の組織形態別の内訳は、株式会社が15法人、特例有限会社が5法人、その他、合同会社等の法人が8法人となっている。
業種別の内訳は、事業の多角化を目的とした農業を営む法人が19法人と、約7割を占めている。そのほかにも建設業を含む法人が3法人、福祉事業を営む法人が3法人と、他業種からの参入もある。
【委員】
いろいろな企業が参入しているのがよく分かる。
ところで、愛知県は、このような農業への新規参入者の確保、拡大に向けて、どのような取組を行っているのか。
【理事者】
愛知県では、2012年度から個人や企業などの新規参入希望に対する相談窓口として、県内8か所の農業改良普及課に農起業支援センターを設置している。その後、農業をやりたいという意向があっても、地域や作物など具体的なことが決まっていない相談者も増えてきたので、2021年度からは就農相談のワンストップ窓口として、県の農業大学校に新たに農起業支援ステーションを設け、就農に関する情報提供や具体的なビジョンづくりをサポートする体制を強化している。
具体的な就農希望地、作物等が決まったら、農起業支援センターを中心として、地域の農業者、市町村、農業協同組合等関係機関とも連携して、就農前の研修、就農時の農地、施設の確保、就農後のフォローアップまできめ細かにサポートする体制の構築を推進している。なお、農起業支援センターを設置した2012年度から2022年度までの11年間では、計2,511人が新たに就農している。
引き続き、これらの取組を通じて新規就農者の確保、育成を進め、農業の担い手不足の解消を図っていきたい。
【委員】
ぜひしっかりと進めてもらいたい。
いろいろな資料を見ると、昨今、農福連携に取り組んでいることが分かるが、今までの取組の経過と現状について伺う。
【理事者】
農業と福祉が連携して障害者が農業分野で就労する農福連携については、農業分野では働き手の確保につながるとして注目されている。
愛知県は、2019年度から農福連携に関する様々な相談への対応や、農家と障害者就労施設の農作業請負のマッチングを行う農福連携相談窓口を設置している。
相談窓口では、2019年度から2022年度までの4年間の累計で、計803件の相談に対応しており、そのうち54件のマッチングを成立させている。
また、農福連携セミナーの開催や現地視察を実施するなど、農福連携の周知啓発を図るとともに、農業者にも福祉事業者にも助言することができる専門人材の育成に向け、農福連携技術支援者育成研修を開催している。2022年度には、農福連携技術支援者として、19人が農林水産省から認定を受けている。
【委員】
労働不足の解消という側面と、福祉の観点からすると、障害者の働く場の確保のような形にもなると思っているが、今後、愛知県としてどのように農福連携を進めるのか。
【理事者】
農福連携に取り組むことで得られる農業側のメリットとしては、障害者を労働力として期待できること、障害者への就労機会の提供が社会貢献につながることなどが挙げられる。また、障害者就労施設が農地を取得して自ら農業に取り組むケースでは、担い手不足による農地の荒廃を防ぎ、地域の農地が有効に活用される効果もあると考えている。
しかしながら、理解不足により障害者の活用に踏み出せていない農業者もいること、それから、福祉側に農業に関する技術や経験を持った人材が少ないことなどの課題がある。
このため、農業水産局としては、推進体制の整備、専門人材の育成、県民理解の促進の3本を施策の柱として、相談窓口の設置、技術支援者の育成セミナーの開催等を通じて、農福連携の推進に引き続き取り組んでいきたい。
【委員】
持続可能な酪農飼料の自給率向上をテーマに質問をする。
本県の畜産は名古屋港や豊橋港などの港に近く、安価に飼料を調達できる恵まれた立地の下で発展してきたため、経営コストの半分以上を飼料費が占めている畜産農家では、飼料価格の高騰、高止まりにより、農家の経営努力だけでは追いつかない、かつてない厳しい経営を強いられている。
特に酪農や肉用牛は、養豚や養鶏でも利用しているトウモロコシなどエネルギー効率の高い濃厚飼料以外に、牛の特性として牧草などの粗飼料を給与する必要があり、北海道のような広大な牧草地で放牧ができる環境がない本県では、長期保存が可能な乾牧草やサイレージといった形で粗飼料を給与しており、濃厚飼料に加え粗飼料も輸入価格が高騰している現状では、畜産の中で最も厳しい経営環境に置かれている。
先日、酪農家でつくる愛知県酪農農業協同組合を訪問し、酪農家の現状について意見交換したところ、2022年4月の時点で225戸あった組合員は、27戸が廃業し、2023年3月末の時点で198戸となり、廃業割合は12パーセント、また、2023年度も4月から6月までの間に既に5戸が廃業し、年度中に最大で12戸程度の廃業が見込まれるとのことであった。
つまり、年間で酪農家の1割以上が廃業したことになり、過去15年間にわたり後継者不足等により、平均で戸数が年5パーセントほど減っていたが、2022年からはかつてないスピードで廃業する酪農家が増え、まさに廃業ラッシュであることが分かる。
2022年4月と2023年4月の酪農家の収入を、実際に愛知県内の牧場で国の補助金を入れない状態の乳代計算書を用いて検証した資料を見たところ、2022年4月と比べ2023年4月では、基本乳代単価は111.79円から122.61円へ上がったものの、飼料購買代金が426万9,330円から609万1,095円と前年比で142.7パーセントとなり、本人の手取り乳代金は172万605円からマイナス42万6,542円となっており、乳価は値上げしたものの飼料代が高騰したことで牧場経営は大幅に赤字となっていること、また、乳代金649万7,213円のうち飼料購買代金が93.7パーセントとなる609万1,095円であったことが検証されていた。このような状況では、従業員に払う給与や電気代などを乳代で賄うことができず、経営継続は大変厳しい状況である。
さらに、愛知県酪農農業協同組合のデータによると、輸入乾牧草の価格、チモシー、アルファルファ、スーダンなどの価格は、3年前と比較するとほぼ2倍に値上がりしている状況も分かった。要因として、最大産地の米国での水不足による収穫減や、ロシアのウクライナ侵攻による供給懸念による穀物価格の高騰から、欧州やオーストラリア等で牧草の作付の一部がより利益の大きい穀物に切り換えられたこと、また、乳製品の消費が増える中国や中東からの引き合いが強くなっていることなどもある。
本県も、飼料価格の急騰に対して国の飼料価格安定制度を補完するため、濃厚飼料の価格高騰に対して配合飼料価格高騰対策支援金を、また、粗飼料の価格高騰に対して粗飼料価格高騰対策支援金を措置し、経営の悪化に対して緊急的かつ直接的な支援を実施しているが、抜本的な対策としては、飼料自給率を向上させ、円安等、輸入飼料の動向に左右されない飼料供給体制をつくることが必要であると考える。
畜産農家が自給飼料を生産するだけでは限界があるため、飼料作物を生産する担い手を増やし、地域の水田や耕作放棄地を有効に活用して、耕種農家、とりわけ稲作農家と畜産農家が連携した飼料作物生産流通システムの確立が必要である。
そこで、本県は飼料生産の取組で耕畜連携をどのように推進していくのか伺う。
【理事者】
本県では、これまで粗飼料の自給率を高めるため、穂が成熟する前の稲を茎や葉も同時に収穫して家畜の飼料へ利用する、稲発酵粗飼料に取り組んでいる。稲作農家が稲を生産して畜産農家へ供給し、畜産農家は堆肥を水田に還元するといった資源の循環も図りながら、耕種農家、畜産農家、いわゆる耕畜が連携して粗飼料の生産を増大する取組である。
今後、愛知県内の飼料生産をさらに増大するため、稲よりも飼料として有効とされるトウモロコシに着目し、水田でトウモロコシを作付し、稲発酵粗飼料と同様、実が熟す前に茎や葉も同時に収穫して利用する青刈りトウモロコシを進め、耕畜連携の取組をさらに推進していく。
耕畜の連携を推進するには、稲作農家、畜産農家、それぞれにとってウィン・ウィンとなるような関係を築くことが必要である。稲作農家に対しては、トウモロコシを作付けることで水管理などの労力の大幅な軽減が期待できること、畜産農家に対しては、国産トウモロコシを飼料とすることで輸入飼料価格の高騰の影響が緩和されるほか、堆肥の利用促進にもつながるなどのメリットを説明し、マッチングを進めていきたい。
愛知県は、こうした取組を愛知県酪農農業協同組合並びに愛知県農業協同組合中央会などの生産者団体と連携し、耕畜連携を推進し、自給飼料生産に立脚した足腰の強い畜産の実現を目指していきたい。
【委員】
本県で2022年度から取り組んでいる自給飼料生産拡大事業のうち、水田でトウモロコシを栽培し、実をつける前に茎ごと刈り取るいわゆる青刈りトウモロコシ、コーンサイレージに関する実証試験の結果と課題等について伺う。
【理事者】
2022年度から取り組んでいる自給飼料生産拡大事業だが、2022年度は海部地域、知多地域、豊田地域の各地域で、合計25ヘクタールの水田で青刈りトウモロコシの実証試験を実施した。
その結果、収穫量は10アール当たり2.1トンと目標の8割ではあったが、適正な肥料の量や排水対策など、栽培に適した条件を明らかにすることができた。
また、青刈りトウモロコシを乳牛に与えた結果、嗜好性もよく、乳量や乳質といった生産物への影響も認められなかったことから、輸入粗飼料と比較しても遜色ない飼料であることが明らかとなった。
今後、栽培を拡大するに当たって、栽培、収穫に必要となる高額な専用機械の導入、収穫した飼料の保管スペースの確保、収穫した場所から遠方の畜産農家へ輸送する場合のコスト、流通システムなどの課題があるが、こうした課題については2023年度の実証試験等で検証していく予定である。
【委員】
まさに、今が国産転換のターニングポイントだと思っている。今後も広く県内各地域で耕畜マッチング補助を設置し、飼料作物の種類やほかの作物との組合せなどの生産技術実証、また、各地域の実態に応じた耕畜連携による自給飼料の生産拡大、エコフィードなどの利用拡大の継続的支援等に積極的に取り組んでもらいたい。
私の地元の西尾市でも、2011年に35戸あった酪農家の戸数が、現在、13戸となっている。今は比較的若い世代の酪農家が借金するか廃業するかの選択を迫られており、災害に備えるために老朽化した牛舎等の施設を修繕したり、生産性向上のために機械を更新するなど設備投資をしたいが、そこに資金を回す余裕が全くない現状である。
西尾市の酪農家と話をする中で、愛知県へは粗飼料価格高騰支援金の対象範囲に関すること、また、飼料分野のイノベーションへの期待、国へは本年3月に示された国の畜産・酪農緊急対策パッケージで示された、配合飼料価格安定制度の補填金算定ルールの新たな特例、また、価格転嫁対策として、生乳取引価格に配合飼料価格のコスト上昇を反映できる環境整備への期待、主食用米を飼料用米として生産する場合の補助制度などの要望、また、酪農家を存続させるための抜本的な対策として、数年間の実施期間を決めた上で緊急の所得補償対策を実施しつつ、その期間内でコスト削減や経営合理化、事業環境の改善などに取り組むべきではないかという意見等があった。
暗い話題しかない業界では、新たに就農したいと思う担い手を確保することは、大変困難であると思う。愛知県として国へ強く働きかけを実施してもらうこと、また、市町村、業界団体等と連携し、経営再建のための取組への支援、経営転換に必要な施設整備、機械導入への支援等を通じて、農家に寄り添い、意欲ある畜産経営を支え、持続的に発展するように支えてもらうことを強く要望する。
【委員】
6次産業について伺う。
6次産業化とは、1次産業として農畜水産物を生産するだけではなく、2次産業である加工、3次産業である販売やサービスにも農林漁業者が主体的かつ総合的に関わり、新たな付加価値を生み出す活動のことである。
意欲ある農林漁業者が新たに6次産業に取り組み、事業を成功させるためには、それまでの農林水産物自体の生産に関する知識や技術に加え、新商品の企画や加工、流通、マーケティングなど多岐にわたる知識の習得が必要になる。加えて、事業を開始するために必要となる機械、設備の調達資金の確保についても解決しなければならない重要な課題であると思う。
そこで、6次産業化を施行する農林漁業者等が必要とする知識習得等に対する支援はどのように行っているのか伺う。
【理事者】
本県では、農林漁業者等に対する知識習得を支援するため、国の交付金を活用して、愛知県6次産業化サポートセンターを設置している。
このセンターでは、中小企業診断士やファイナンシャルプランナー等の専門家21人を6次産業化プランナーとして登録し、農林漁業者等の要請に応じて派遣している。2022年度は、経営管理、新商品の企画や商品設計、ブランディング等に関する、延べ155件の相談に対して助言、指導を行っている。
また、これから6次産業化に取り組む新たな人材を発掘、育成するため、大学教授や先進農家等を講師とした研修会を県内各地で開催しており、2022年度は14回の研修会に計250人の農林漁業者等が参加した。
【委員】
次に、農林漁業者等が6次産業化の取組を開始するに当たり、必要となる施設や機械などの初期投資に対して愛知県としてはどのような支援を行っているのか。また、近年、それらの整備を行った農林漁業者の現状について伺う。
【理事者】
本県が行う支援としては、国の農山漁村振興交付金を活用し、農林漁業者等が6次産業化に取り組む場合に必要となる農産物加工・販売施設等の整備に要する経費に対して補助を行っている。
近年の整備事例とその後の状況について、2022年度には、常滑市の養鶏業者が卵を活用したパンの製造、販売を行うための施設整備を実施しており、総事業費の約2分の1の補助金を交付した。
この事業により整備されたベーカリー店は2023年6月10日にオープンしたが、1日当たりの平均来客数は平日で200人、週末300人と大変好評を博しており、所得の向上に貢献している。
また、2018年度には、大府市内で牛の繁殖から肥育までを行う養牛業者が実施した精肉の販売店舗や焼き肉店の施設整備に対しても、同じく補助金を交付している。この事業者は、新たに卸、小売、飲食部門が経営に加わったことにより計画的な生産が可能となり、経営の安定化が図られている。
【委員】
私自身も食肉の販売という形で6次産業の一端を担ってきたが、消費者ニーズ等の変化のスピードはこれまで以上に速まっていると感じている。引き続き、時代に即応した6次産業化支援に取り組んでもらいたい。
【委員】
あいち林業技術強化カレッジについて伺う。
愛知県は、2022年4月に木材の利用について愛知県木材利用促進条例を施行し、木材利用の促進に向けた取組を、総合的かつ計画的に推進していると承知している。また、愛知県及び私の地元である豊田市は木材の生産地であり、林業、木材生産の振興、森林整備の推進、木材の利用促進など、生産、消費の両面からの一層の取組が求められている。また、平成30年度には奈良県を本社に持つ西垣林業株式会社が豊田市に工場を稼働させ、その後、製材能力が高まり、さらなる木材供給能力が求められている。
一方で、その木材を生産、供給する林業従事者の確保、育成については、高齢化に加え、雇用条件や仕事の安全性の問題から、人材の確保が困難である構造的な課題があった。
そこで、豊田森林組合では、令和2年度より、県内の林業関係の高校から就職した職員を、1年目より岐阜県にある岐阜県立文化アカデミーや長野県林業大学校に2年間通わせた後、さらに1年間、若手の育成指導員7人による指導を行い、人材育成に取り組んでいると聞いている。この取組が功を奏し、本年度、豊田森林組合に就職した人は、この人材育成の取組の魅力に引かれて就職したとのことであった。それくらい、森林組合として危機感を持って人材育成に取り組んでいる。
愛知県では、2023年6月14日の農林水産委員会で、本年度より森林環境譲与税を活用して、あいち林業技術強化カレッジを開設すると説明があった。
このあいち林業技術強化カレッジを中心に、林業従事者の育成に向けた取組について、順次伺う。
まず、県内の林業従事者は、六つの森林組合のほか、民間の林業経営体に雇用されている者が多いと聞いているが、林業従事者の現状について人数や年齢層はどのようになっているのか。また、一層の人材確保と育成が必要だと考えるが、愛知県はどのように考えているのか。
【理事者】
愛知県では、5年ごとに年間30日以上、林業に従事した者を林業従事者としてその人数等を調査しており、直近の調査結果は2018年、平成30年次で総数は558人となっている。また、そのうち雇用されている者は453人で、全体の約8割を占めている。
年齢層については、年代別割合では、20代は8パーセント、30代は17パーセント、40代は26パーセント、50代は15パーセント、60代以上は34パーセントと全体の約3分の1を占めており、平均年齢は52歳と全産業に比べて10歳程度高くなっている。
人材の確保については喫緊の課題と捉えており、食と緑の基本計画2025で、2025年度までの5年間で200人の新規就業者の確保を目標に掲げ、森林林業の魅力の発信や林業への就業相談などを実施している。
また、人材の育成についても大変重要な課題と認識しており、本年度より開設したあいち林業技術強化カレッジを生かし、しっかりと取り組んでいく。
【委員】
今後、5年間で200人の新規就農者を増やすとのことだが、林業従事者のうち、34パーセントが60代以上である。その人が、恐らく、定年になってその200人が入ったものの、実際に200人が純粋に増えるわけではないため、実態をよく見てもらい、状況に応じてこの200人という数字も変えていく必要があると思うので、検討してもらいたい。
次に、あいち林業技術強化カレッジの開設の経緯と、その内容について伺う。また、期待される効果についても伺う。
【理事者】
あいち林業技術強化カレッジの開設の経緯、内容、期待される成果の3点について、順に答える。
初めに、経緯については、令和2年度に、林業労働力の確保の促進に関する基本計画を愛知県が策定するに当たり、愛知県内の森林組合及び民間の林業経営体に対して、愛知県の実施する森林・林業研修についてヒアリングを実施し、研修体系や内容を分かりやすくしてほしいという意見をもらった。
また、林業関係団体である愛知県森林協会、愛知県森林組合連合会、公益財団法人愛知県林業振興基金、林業・木材製造業労働災害防止協会愛知県支部の4団体から、人材育成の強化や研修体制の充実についての要望をもらった。
こうした意見、要望を参考に、基本計画に経験年数や知識、技術レベルに応じた研修の実施などの取組を位置づけ、令和3年度に他県の研修体系の調査研究も行い、研修体系の見直しの検討をしてきた。そして、本年度より、あいち林業技術強化カレッジとして開設した。
2023年4月28日には、カレッジの拠点となる森林・林業技術センターで、知事出席のもと、関係市町村長、林業関係団体等に出席してもらい、オープニングセレモニーを開催した。
次に、内容については、これまでの研修体系の見直し・強化を図り、林業従事者が働きながら段階的にスキルアップが図れるよう、経験に応じて基礎コース、中堅コース、指導者コースの3コースに研修を分類し、コースごとに必要となる技術の習得ができる研修とした。また、新規就業者がいち早く現場で活躍できるよう、労働安全の徹底、伐木技術の基礎訓練を重点とした研修を新たに設けるなど、基礎コースの強化を図っている。
次に、期待される成果については、研修受講生にとって受講すべき研修が分かりやすくなり、効率的にスキルアップが図られると考えている。また、林業経営体にとっても従業員の人材育成のための中長期的な計画が立てやすくなり、組織全体で技術力の向上が図られると考えている。
【委員】
最後に、今回、森林環境譲与税を活用するとあるが、さらに有効活用してもらい、労働環境改善も含めた人材育成の取組を拡大させる必要があると考えるが、愛知県の考えを伺う。
【理事者】
愛知県では森林環境譲与税を活用し、研修内容の拡充、伐倒の反復訓練ができる研修機材の導入など、県内全域の林業従事者に対する人材育成を中心として取り組んでいる。
今後もこの税を有効に活用し、雨の日でも実技研修が可能な屋根付きの研修施設の整備など、カレッジの研修実施体制を充実・強化し、人材育成にしっかりと取り組んでいく。
なお、本年10月18日には、人材育成の取組の拡大の一つとして、県内で初めてとなる伐木競技会を開催することとしており、チェーンソー操作の技術や安全意識の一層の向上を図り、林業従事者のモチベーションアップにもつなげていく。
加えて、市町村でも、森林環境譲与税は地域の実情に応じて人材育成に活用されており、県の取組に合わせて市町村でも効果的に人材育成の取組が行われるよう、先進事例の情報提供や助言を積極的に行うなどしっかりサポートしていく。
【委員】
今回の質問の趣旨は、今後の森林施策を進めるには、人材育成、確保が必要不可欠である中、県として森林に携わる各種団体からのヒアリングにより、あいち林業技術強化カレッジを始めるものである。
今回の質問をするに当たり、豊田森林組合とのヒアリングの中で一つの課題が出てきた。それは安全性の話である。豊田森林組合では、平成17年から今日に至るまで4人が山で命を落とした。森林組合の林業従事者の総数から見ても、この数字は、我々、モノづくり産業から見るとあり得ない危険度である。
特にこの事業で、新規就労者向けの基礎コースの強化を行っていくとしている。安全な作業、確実な作業、熟練した作業は作業の入口である、この言葉は、故豊田英二が昭和32年につくり上げた言葉である。私もトヨタ自動車株式会社に入社したときに、最初に教えられたのはこの安全という言葉であった。技術もだが、やはり安全という部分もしっかりとこのカレッジの中で重視してもらいたい。
もう一つは、森林環境譲与税の活用である。豊田森林組合のように豊田市から補助金をもらい、年間2人ないし3人が森林大学に通うことができる体力のある事業者はよいが、そうでない団体については、愛知県として財政支援を検討してもらいたい。
【委員】
耕作地の集積について伺う。
以前から言われている話であるが、農業の担い手不足が進行していくと、耕作放棄地が出てくる。それを解消するために、平成28年に農業委員会等に関する法律が変わった。当時の議事録によると、今述べたような耕作放棄地にもっと対応しなければならないとのことで、農地利用最適化推進委員を委嘱することにより、耕作放棄地の解消が図られることを期待されたと記憶している。まず、平成28年に、このような農業委員会の形になってから、耕作放棄地は、どのように変わったのか伺う。
【理事者】
平成28年に改正された農業委員会等に関する法律に基づき、農地利用の集積、集約化、遊休農地の発生防止、解消、また、農業者の新規参入を図るために農地利用最適化推進委員が設置されている。
県内における遊休農地の面積の推移だが、横ばい状態にある。これについては、農地巡回や、受け持ちの区域における推進委員の農家への声かけ等の日常活動を通じ、日々遊休農地の発生防止等の業務に精励してもらっているおかげだと認識している。
【委員】
遊休農地は横ばいで、推進委員の委嘱による成果があったのか、分からない部分があるかと思うが、また、これは細かく分析してもらいたい。
私の地元である日進市と東郷町では、日進市の農業委員会がかなり活発に活動しており、耕作放棄地に対応するために、例えば、自分たちでサツマイモを育て、地域の幼稚園の子たちに掘ることは任せて地域で楽しむこと、あるいは、酒米を作成し、それを長野県の木祖村と提携し、酒蔵と提携して酒造りをしている。遊休農地をそのようなものに使ってもらおうと活動しているわけだが、農業委員によっても恐らく相当温度差があり、やりようが違ってくると思う。
少し話が飛ぶが、今朝、おにぎりの専門店が東京の新宿で評判になっており、かなり出店が増えているというニュースを見た。その中で、2人以上の世帯におけるお米に対する支出金額の推移がフリップで出されたが、2000年の時点で、2人世帯で米が4万256円、ところが、2022年で1万9,825円であり、半分になっている。
なぜこの話をしたかというと、今日の話の趣旨は、米の農家を守っていかないと農地は守れないことを話そうと思ったのだが、ここまで米の国内消費が減っていることから、米ばかりにこだわってはいけないことを改めて聞いたので、質問の方向転換をしようと思ったからである。
参考になった今朝のニュースもだが、先ほど藤原聖委員が話した、あま市で実証実験をしたトウモロコシの青刈りのような方法論がもっとあれば、水田では難しいかもしれないが、農地としては生きるだろう。
話を戻すが、2000何年問題という言葉をよく聞く。2025年問題というと、団塊の世代が後期高齢者になる。2023年で約7割が後期高齢者になっているが、農業従事者も75歳を超えると農作業が手一杯になる。
私の地元では、耕作放棄地になりようがない、きれいな整地での農地でも、農業従事者がこぞってギブアップしている。何とか農地転用を図れないだろうか。もともとは都市マスタープランでは商業エリアに持っていけそうないわゆる市街化区域に近い、名古屋に近いところなので、そこを宅地開発にしたらすぐに売れてしまい、左団扇で暮らしていた農家であったが、自分たちは農地を守りたいということであったが、そのエリアが農業振興地域に変わっており、いよいよ自分たちがやれなくなってしまい、何とかしたいという話である。
耕作放棄地を水田にすることは難しいため、先ほどの耕畜連携のようなものをぜひ、してもらい、農地を守りたい。
愛知県全体で、農地を守りたいが、なかなか守っていけない状況に対してどのような方策を講じているのか。
【理事者】
国の制度だが、以前から人・農地プランというものがあった。人・農地プランとは、地域での農業者による、徹底した話合いに基づき、まとまった農地を地域の担い手に集積し、また、集約化するという将来方針の作成が市町村で行われている。
しかしながら、高齢化や人口減少の本格化により、地域農地の適切な利用ができなくなることが一層懸念されている。そのため、農地の集積、集約化に向けた取組を、今後加速することが必要となっている。
このことから、改正農業経営基盤強化促進法が2023年4月1日から施行された。今まで市町村が取り組んできた人・農地プランが名称を改め、地域計画としてその作成が法定化されている。
ここの目玉となるのは、将来10年後を目指して、農業者の話合いを通じて目指すべき将来の農地利用の姿を明確化する、併せて、農地1筆ごとの耕作者を、誰が今後10年後は担っていくのかを示す目標地図の作成といったものが義務づけられている。
また、この地域計画の中では、将来の地域の農業の在り方も農業者の話合いによって決めていくため、例えば、水田を今後、畑作に変えていこうとか、そのような将来の地域の目指すべき方向も、関係者で話し合って決めてもらう。こうしたことをしっかりとやってもらうことで、守り続けたいという農地を、今後、次世代に引き継いでいくことができる。
地域計画が策定された後は、これは令和5年4月1日から法律が施行されており、作成までに2年間あるが、作成された後は市町村が中心となり、農業委員会、本県もしくは関連する農業協同組合などの関係機関が連携し、計画の達成に向けて引き続き集積、集約化を進めていく。
【委員】
説明してもらったとおり地域計画を進めていくとのことであるが、市町村で地区を決めていき、計画を進めることでよいか。
【理事者】
市町村で地区を決めてもらい、そこで進めてもらう。
【委員】
市町村では、農地を手放したいというよりも、異なる方法で活用したいという話が先行していること、あるいは、結構な一団の農地で、農業従事者が農業をギブアップしたいという話を自治体が把握していないこともある。それは大きな問題だと思うのと同時に、農業委員会も、そのようなことは耳にはしていたが明確な形で相談されないため、手を出せないとのことであった。
愛知県からすれば、地域計画は、市町村主体で進めてもらうだけかもしれない。しかしながら、地域の人からすると、自分たちの都合でいろいろなことを考える部分があるため、大局的な意味で本当にその農地を残さなければいけないのかということは、わかりにくいと思う。
そのため、愛知県である程度指導してもらわないといけないし、そのような意味からも、市町村と同調して潜在的な困りごとを吸い上げ、いわゆる風通しのいい議論ができるような状況にしていかないといけないと思う。
地域計画を策定するに当たり愛知県はどのような支援をしているのか。
【理事者】
地域住人の声は、農地利用最適化推進委員に現場に足しげく通ってもらい、現場の農家の声、農地持ちの人の声を吸い上げてもらうことに勝る手法はないと考えている。
市町村が、そのような住民の声を聴き取り、どこの地域で地域計画をまとめていくのかについては、愛知県も直接的に指導する立場にないことは、理解してもらいたい。
市町村でここの地区を守っていくと決めてもらった上で、情報の横の展開や、ほかの地域ではこのような取組を進めていて、このような形でうまくやっているといった情報の共有については、愛知県の七つの農林水産事務所管内を中心にし、農地集積・集約化地域推進会がある。ここには愛知県の職員のみならず、市町村の職員、農業委員会、管内の農業協同組合の職員、中間管理機構の職員等、地域計画の推進に直接関与するそれぞれの担当者が参堂し、情報交換等をしており、遠慮のない意見や質問をしてもらえればと思っている。
また、併せて、そのような人が一堂に会する場所での相談が難しいのであれば、担当する事務所に相談をしてもらえば、個別に対応する。
【委員】
確認だが、農地利用最適化推進委員は、農家要件がなくても推進委員になれると思う。
そうすると、推進委員は、地域特性から本来は農業のことを推進する人であるため、そのような発想ができるほうがいいと思う。また、愛知県が指導する立場にないとのことだが、やはり農地利用最適化推進委員と名前がつく以上、あるいは農業水産局と名称がつく以上、そのことを重んじてもらわないと困ると思うが、推進委員はそのことをよく理解できた人であるのか。
【理事者】
農地利用最適化推進委員は、農業委員は過半数が認定農業者であるなどの要件があるが、推進委員は、農業に情熱を持って取り組んでもらえる人ということである。もちろん、農業に関する知識があるほうが、より効率的な業務をやってもらえると思う。
しかしながら、推進委員が平成28年にできたときの役割の一つとして、農地の集積化、集約化といったことも課せられた任務であるため、その地元の人の声を聴き取るといったことも、推進委員の仕事なのではないかと認識している。
また、地区の決め方について、愛知県が決定する立場にはないと説明した。このような現状があるのでどのようにしたらよいかなどの相談については対応させてもらう。
【委員】
相談があればしっかり対応してもらえるとのことであるので、やはりまず地元の人が本当に悩みを相談しやすい環境に整えることが大事なことだと思う。そのため、出先の事務所を通し、相談を待っているだけではなく、聞いてもらえるようなシステムが取れればと願いたい。
地域計画について話を聞いてきたが、中間管理機構についても以前より議論をしてもらっているため、実績が上がっていると思う。
私の地元以外の豊明市や長久手市を見ても、集積面積自体はそれぞれ増えているが、実際に中間管理機構を使って集積ができているわけではない。愛知県全体の集積を図るための意味合いでいうと、中間管理機構の役割を、改めてどのように認識しているのか。
【理事者】
農地中間管理機構は、農地中間管理事業の推進に関する法律に基づき、都道府県に一つ設置される機関である。愛知県内で営農をやめる人から農地を借受け、規模の拡大を希望する人等に貸し出すという機関である。
こうしたことから、今後、地域計画が策定されていき、その推進という場合になると、地域計画の着実な実現に向けて農業委員会等の関係機関と連携し、その地域計画の区域内の所有者に対して貸出しを促す、所有者の意向を踏まえた上で担い手にはまとまりのある形で渡していくことで、中間管理機構の役割が今後高まっていくと考えている。
【委員】
中間管理機構には頑張ってもらい、集積率をアップしてもらいたいが、やはり農地、土地、その作り手をマッチングさせるわけなので、信頼関係が一番大事だと考える。
そのため、例えば、農福連携でも、農地も福祉法人あるいは障害者との関係で、どんなところか分からないのに土地は貸せないということもあり、やはり信頼関係が一番大きなことだと思う。また、農業者、農家、地主からすれば、代々引き継いでいる土地をめったなことで崩してもらっては困るという気持ちがすごく大きいと思う。そのようなことをよく分かってもらった上で提案してもらいたい。
先ほど話した一団の農地というのは、当然のことながら水田をこれまでやっているため、土地改良もできていて結構な規模の農地である。そこの人たちがもっと効率的に農地を利用する方法がないだろうか考えたが、当局でも、もし考えがあればアピールやアドバイスをしてもらえると、その農地が本当によみがえってくると思う。そのようなことを含めて、農業水産局にはこれからもぜひ日本の食の安全、愛知県の食の安全を守ってもらいたい。
【委員】
国が行っている、私たち国民がどんな健康状態にあるか、栄養状態にあるかという調査について調べた。その中で野菜の摂取量はあまり変わってないという調査結果が分かった。
国の調査によると、野菜の摂取量の平均値は280グラムである。一方、愛知県の食育いきいきプラン2020では、306グラムであり、国の調査より上である。昔は、愛知県の数値は、国より下であったそうだが、増加した要因を簡潔に教えてもらいたい。
【理事者】
2020年度を目標とする第3次愛知県食育推進計画、あいち食育いきいきプラン2020では、新たに野菜摂取量、成人1人1日当たり350グラム以上とする目標を設定した。基準年である2014年度の265グラムから2019年度には306グラムとなり、増加傾向が見られた。
増加した要因は、県、市町村及び関係団体等の地道な取組の成果が少しずつ出てきたものと考えている。
具体的には、県の取組として、野菜摂取の必要性や県産農産物に対する県民意識を高めるきっかけとするシンポジウムや調理講習会を開催した。食育推進ボランティアをはじめ、多数の県民が参加し、野菜をつくること、食べることのよさが改めて分かった、今後の食育活動に役立てたいとの意見をもらった。
また、市町村等の取組として、大府市の健康づくり食育推進協議会は、朝食で野菜を食べることが野菜不足改善の鍵であると考え、朝ベジファーストなどの普及啓発を行ったことが評価され、農林水産省の食育活動表彰を受賞した。
加えて、農業協同組合や民間企業も様々な食育活動を行っており、多くの関係者による地域に密着した食育活動が広まったことにより、食生活改善への関心が高まり、野菜摂取量が増加したと考えている。
【委員】
常滑市の国際展示場であった食育の大会も、要因の一つで開くことができたと理解しているが、消費者の目線は、日々野菜の値段で変わるため、350グラムの目標がある以上は、さらに消費者に食べてもらわなければいけない。そういう中でも食べてみたいと感じさせるような方策、シンポジウムなど、食育の啓発活動以外の取組があれば伺う。
【理事者】
2021年度からスタートしたあいち食育いきいきプラン2025でも、野菜を身近なものとして感じ、栄養面での野菜摂取の必要性とともに、さらに、農林水産物への理解を深め、たくさん食べてもらう観点で、県民意識を高める情報発信・啓発に取り組んでいる。
本県で2022年度に開催した食育推進全国大会でも、愛知の郷土料理の魅力や野菜のおいしさを体感できるイベントなどを行い、2日間で約2万3,500人の来場者にPRできた。
また、自らが実際に野菜を栽培管理や収穫することで興味や関心を持ち、積極的に食べる習慣につながるように、小学校等の農業体験の支援を行っている。このような取組を継続して進めることにより、県産農水産物への関心や郷土料理、和食への良さを再認識し、積極的に消費者に選ばれるように努めていく。
【委員】
私が調べた文献の中では、なごやめしはなかなか野菜に手が伸びないとのことなので、なごやめしに負けないような興味と関心が持てる方策を大いに進めてもらいたい。
次に、愛知県の取り組む農業分野におけるイノベーション創出に向けた取組と、国の農林水産省の取組の違いについて伺う。
【理事者】
愛知県では、STATION Aiプロジェクトの一環として、2021年度から県農業総合試験場とスタートアップ等との共同研究体制の強化を図り、新しい農業イノベーション創出を目指すあいち農業イノベーションプロジェクトを実施している。
農林水産省の実施しているスタートアップ総合支援プログラムは、農林水産業、食品産業の政策的な課題解決や、関連の産業の成長を目的とする新たなビジネスを創出するため、主に大学等の最先端技術の事業化を目指すスタートアップを支援するものである。
一方、あいち農業イノベーションプロジェクトの研究開発テーマは、本県農業の現場で農業者のニーズやアイデアなどの調査、分析等を基に設定しており、現場のニーズと最新の技術を速やかに研究に取り込みながら、本県農業現場の様々な課題に対応するための技術開発に取り組むものである。
【委員】
STATION Aiのもう一つの目的の中には、スタートアップ・エコシステムの形成がある。
スタートアップがスタートアップを呼び込んで循環をさせていくと、そのような大きな話があるため、愛知県のイノベーション創出に向けた取組の中では、どうしても農業者のニーズやアイデアが、農業総合試験場経由になってしまう。
そうすると、STATION Aiでスタートアップ・エコシステムが熟成されてきたときには、またそれを農業総合試験場へ戻さないと農業者に伝わっていかないとか、そのようなタイムラグがどうしても出てくると思うが、それに対する愛知県の考え、簡単に言えば、農業者はどこから情報を得るのか、農業総合試験場からの情報以外でどのような形で情報を得ていくのか。
【理事者】
県内の農林水産事務所に八つの農業改良普及課があり、186人の普及指導員等を配置している。普及指導員が直接農業者に接して技術指導、経営相談等に対応しており、農業者のニーズやアイデアなどをすくい上げ、農業総合試験場に橋渡しをする機能を持っている。
さらに、2021年度には、研究開発、普及指導活動等の機能を強化するため、農業総合試験場内に研究戦略部と普及戦略部を設置した。この二つの部が車の両輪となり、これまで以上に現場の先進的な農業者や農業団体等のニーズやアイデアを発掘し、研究部門につなげるとともに、開発した技術の現地導入を迅速化し、イノベーション創出につなげていく体制を整備している。
【委員】
鶴舞にSTATION Aiができるが、残念ながら、七つの事務所があってそこに普及員がいるとしても、愛知県の別の部署の施設なのでなかなか足が向かないと思う。そこは、県当局も考えて、STATION Aiと農業総合試験場と、七つの事務所の連携が取れる体制づくりをお願いする。
次に、会派の農業部門の最重点項目に、スマート農業があり、スマート農業の普及を進めるため実証グループを設置し、実証で得られた成果を共有することも要望した。そこで、スマート農業実証プロジェクトの進捗の状況と、スマート農業が今どのような状態なのか伺う。
【理事者】
本県では地域に合ったスマート農業を普及するため、国の研究機関である国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構、通称、農研機構の事業を活用し、規模的には1億円前後の事業になるが、2019年度から2022年度に西尾市のキュウリで、また、2020年度と2021年度に豊川市のスプレー菊でスマート農業実証プロジェクトを行っている。
まず、キュウリの関係では、JA西三河キュウリ部会の生産者のほか、大学、種苗会社、情報システム会社などと連携し、湿度や温度、ハウス内の環境や生育に関する各種データを活用した栽培管理により44パーセントの収量の向上と、労務データの分析による適切な作業者の配置により11パーセントの労働時間の削減、生育データに基づく収量、出荷予測及び生産者コードつきの自動袋詰め機導入により8.7パーセントの農業所得向上などの成果を得ている。
スプレー菊に関しても、JAひまわりの生産者と大学等、各関係機関と連携して取り組み、農業者が4人いたため、幅があるが、4パーセントから11パーセントの収量向上、2パーセントから10パーセントの労働時間の削減の成果などを得ている。
本年度については、JA西三河イチゴ生産者等の実証グループが、X線及び画像処理による選果システムの導入による労働力削減を検討していくので、今後ともこのような取組を続けていきたい。
スマート農業を地域へ効果的に普及を進めるための必要な実証グループの関係についてであるが、愛知県では、地域への効果的な普及を進めるために、各地域の実情に合わせたスマート農業機器を選定する必要がある。このため、実証グループとして、生産者、農業団体、県、民間企業等を構成とする協議会を設置して、スマート農業の技術の実証実験を行っている。
実証内容は、露地野菜や水稲での除草ロボットの活用、トルコギキョウの環境モニタリングと環境データに基づいた栽培管理の適正化等に取り組んでいる。
本年度については、水稲、小麦でのドローンによる薬剤散布、ナスやトマトでの温湿度センサーを活用したハウス内環境改善による病害防除といった、4品目の課題に取り組むこととしている。
実証で得られた成果については、実証グループに参加している生産者団体等で共有するとともに、取組ごとに実証の成果として産地戦略や栽培マニュアルを取りまとめ、県のホームページ等で掲載するとともに、普及指導員の活動の中で横展開を図っていきたい。
【委員】
そもそもスマート農業普及推進計画は2022年度からスタートして、4年間の計画と聞いている。
具体的な数字の目標も、スマート農業技術全体の普及状況を計る手法として普及割合50パーセントであるため、これを具現化できるように取り組んでもらいたい。
最後に、新聞に、愛知県が許可した工事現場で濁水が流れ出て、地元の瀬戸市が事業者に対して賠償請求をしていくという記事が載った。
そもそも林地開発の許可の技術基準というのは愛知県が定めていると思う。このような賠償まで求められるような工事現場に対して、愛知県の技術基準がそもそもなっていないのではないかと思うので、その点について伺う。
【理事者】
太陽光発電施設の設置を目的とした開発には、切土、盛土をほとんど行わなくても現地形に沿った設置が可能であるなど、他の開発目的とは異なった特殊性がある。そのため、国は、2019年12月に新たに太陽光発電施設の設置を目的とした開発行為の許可基準の運用細則を定め、本県でも国から示された基準に従って林地開発審査基準を改正し、2020年4月1日から運用している。
この基準に基づき、本事業地でも可能な限り森林土壌を残すことや、排水施設等の防災施設、表面侵食を防止するための土砂流出防止柵、植生を導入し地表を保護するための種子吹き付け工や、伏工などが計画されている。
愛知県としては、今後も国から示されている、地方自治法に基づく技術的助言に準じた林地開発審査基準としていきたいと考えている。
【委員】
技術基準に不備があるから濁水が出たのではないかという質問である。
【理事者】
今回の事案では、調整地の工事を先行する当初の工程が守られていなかったり、仮設の沈砂地が適切に管理されていないなど、申請書どおりの工事がされなかったことが問題であり、林地開発審査基準上の課題ではないと考えている。
そのため、2022年7月以降、泥水が出た後、現地確認を5回、事業者との打合せを5回実施し、事業者を指導しており、事業者もそれに従っている。
今後とも、完了までしっかりと指導していきたい。
【委員】
このような事案が、今後、発生するかもしれないが、愛知県としてはどういう改善をすべきと思ったか、この事案に対して愛知県は今後このようなことが発生しないようにどうしなければいけないのか伺う。
【理事者】
今回の事案は、工程管理に問題があったと考えている。基準については、申請書は基準に沿ったものであるため、また、工程はしっかり管理させること、申請書どおりの工事をさせることが重要と考えているため、今後はそのように取り組んでいきたい。
【委員】
今の答弁だと、工程どおりの工事をやっていなかったということか。それを愛知県は把握していて、対応していなかったということか。
【理事者】
7月の濁水が出るまでの間は、工程の問題については把握していなかった。濁水が出てから内容を確認したところ、工程上に問題があったため、それ以降は指導している。
【委員】
今の答弁から思うのは、工程に対して問題があり、それをなぜ許可の際に今後生かすような答弁がないのか不思議であるが、今後もこのような許可を求めてくる事案が出てくると思う。そのときに、今回、工程に問題があったことを愛知県が把握しているのであれば、申請が出た段階で工程管理に対して愛知県は意見をつけるべきだと思うが、その点についてはどうか。
【理事者】
許可証には、工程について防災施設を先行して設置するようにという文言が一応入っている。ただし、それが守られなかったことは残念に思うので、今後はしっかり守られるように管理していきたい。
【委員】
防災施設を先に造るようにという技術基準を初めて言われたので、林地開発基準については、まずは防災施設を先に造ることを議会の中の議事録にも残し、そして、今後、七つある事務所に指導するのは、その事務所にも林地開発行為の届出がある場合には防災施設を最初に造っていく。最初に造らないと、瀬戸市の太陽光の現場のような事例が出てしまう。これは、しっかり愛知県として反省してもらい、これからの事業に生かしてもらいたいと思うがどうか。
【理事者】
委員が言ったことは全くそのとおりであるので、今後に生かしていきたい。
【委員】
それを文書で残すなど、そのようなところまで踏み込んでほしい。口頭での答弁は議事録に残るだけなので、七つある事務所に対して今回の事例をしっかり検証した結果を伝えて、文書で今後そういった事業者にも分かるような発信をしてもらいたいと思うが、その点についてはどうか。
【理事者】
今の指摘のように、このような事例が反省材料としてあるので、各事務所に対して、林地保全担当を通じて、年度ごとに研修等を行ったり、打合せ会という機会もあるため、今回の事例をそのようなときに文書で、今後の指導に生かしていくよう事務所で対応できるように周知していきたい。
【委員】
内部の会議で周知するのは当たり前だと思う。内部の会議だけでなく、林地開発行為をしようとする事業者に対しても提示すべきではないか。口頭ではなく、文書で提示すべきではないか。その点を、重々理解してもらいたい。
皆さんが理解したとしても、職員が、異動してしまったら、また、それは過去のものになってしまうため、事務の手続上、不備なく対応できる体制を愛知県の中でつくってもらいたい。もし、再度このような新聞記事が出たら、改めてこの委員会で質問する。
【委員】
2023年6月2日の豪雨による農林水産被害状況の現状について、愛知県全体、東三河、また、私の地元である新城北設楽がどうだったのか伺う。
6月12日現在、6月19日現在、6月26日現在の、大雨被害についての資料を比較すると、全体の被害総額推計は6月12日現在で38億6,600万円、6月19日現在で66億円、6月26日現在で68億円となっており、被害総額推計が6月12日に集計したときから約30億円増えている。その点について、どのような被害を受けたのかを把握するために、再度、説明してほしい。
【理事者】
今回の豪雨による農林水産被害について、6月26日現在で、県全体で約68億5,000万円、そのうち農業被害は約22億9,000万円、農地・農業用施設は約20億円、林業被害は約24億4,000万円、水産被害は約1億2,000万円となっている。
6月12日から6月26日までで、増えている中身の要因は、農作物等に関しては被害の報告が非常に増えてきており、そのようなことから2億円程度増えている。ほかにも、共同利用施設等の実際の金額が上がってきたり、林業被害でも、森林の奥など、これまで調査できず、被害状況が把握できなかったものが、2週間経過し、公に出るようになったため、大幅な被害総額の増加となった。ほかにも、水産被害も一部分増加し、また、県有施設、獣害のためのイノシシ等の妨害柵が山の中で崩れて流出したという数値が上がっているため、6月26日現在で68億円という被害総額になっている。
それから、東三河地域に関しては区別していないが、新城設楽事務所管内での被害状況については、新城設楽管内では全体で約17億円、そのうち農業被害が約200万円、農地・農業用施設は約3億円、林業被害は約14億円、水産被害は約200万円となっている。
主な被害内容は、農作物等被害では水稲や小菊の圃場に土砂が流入し、埋没することによる被害、ほかにもホウレンソウのハウスへ水が浸水したことによる根傷み等が発生している。
ほかにも、農地・農業用施設では用水路とか排水路の破損、農道の路肩の崩壊、それから、林業被害では山が多いことから、山腹の崩壊、林道の路肩の崩落、それから、水産被害ではアユのやなの一部破損などが発生している。
【委員】
水産被害で、漁業協同組合が放流したアユがほとんど流れたと聞いているが、漁業協同組合が放流したアユが大雨で流れたとしても、それは水産被害ではないという判断でよいのか。
【理事者】
今回の大雨で、豊川水系の3漁業協同組合、天竜水系の2漁業協同組合は、多くの放流したアユが流されて遊漁者が減少するという事案が見られたと農林水産事務所から聞いている。
水産資源への影響に対して、このような大雨や台風で放流した種苗について被害として集計した事例は現状ないため、被害としては、今のところ計上していない。
【委員】
被害だという立証がされれば認定されるということでよいのか。
【理事者】
一般的に農林水産業のこのような災害被害については、施設が壊れたとか、明らかにこの災害により影響があったことが分かれば被害として計上している。
今回、漁業協同組合から聞き取りをして、アユがかなり流れてしまったという話は聞いている。漁業協同組合によっては、放流したアユの3分の2ぐらいが流れてしまったのではないかという話も聞いている。そのため、影響はあったと考えている。
ただし、どのぐらい流れてしまったのかなど、算定が難しいため、今回の被害には数値としては含んでいない。しかし、影響は確実にあったのではないかと認識しているため、今後、漁業協同組合に聞き、どの程度の影響があったか把握していきたいと考えている。
【委員】
被害の額を確定するのが難しいことは分かるが、被害でないという判断にされると大変である。あまり前例がなく、今回は特殊な事例だとは思うが、漁業協同組合のほとんどが赤字である中で、再度アユを追加放流しなければならず、金銭的な心配もしているため、親身になって相談に乗ってもらいたい。
今回、知事の提案理由説明の中で、農林水産委員会に関する話が水害の話、豊川カーボンニュートラルの話、県の植樹祭の理念を受けて木材利用を推進する話に触れた。それから、代表質問で、新海正春議員と鳴海やすひろ議員が森と緑づくりと木材利用について触れた。また、一般質問で、中村竜彦議員が豪雨災害の状況と災害復旧について質問をした。神谷和利議員は森林クレジットについて、伊藤貴治議員は名古屋コーチンの種鶏場について質問をした。
まさに、農林水産委員会が関わる質問がかなりされ、全県内でこのようなことが議論されるようになったと思っている。
そこで、具体的に話を進めていく必要があると思っている。
台風2号、2023年6月2日の豪雨被害の復旧について、この被害額の認定が非常に大事だと思っている。そのため、1週間ごとに被害額を把握してもらっている。これは、それぞれの農林水産事務所、ないしは土木建設事務所が把握してやっているが、補正予算の内容に反映されるため、正確に、漏れがないようにしてもらいたいと思う。
そこで、七つの農林水産事務所があるが、地元である新城設楽農林水産事務所がどのように対応したのか伺う。
【理事者】
新城設楽農林水産事務所の対応のうち、農業者への技術指導について答える。
大雨などの災害の被害防止に向けて、2019年9月に本県独自の農業気象災害対策技術指針改訂版第2版を定めている。この初版は平成24年度に定めている。今回の大雨対策についてもこの指針に基づき、農林水産事務所農業改良普及課が被害現場の確認をし、被害の状況に応じて直接農業者に対応策の指導を行っている。
新城設楽管内における具体的な指導としては、土砂の流入した水田に対しては水稲を圃場にすき込み、土壌改良資材の投入について助言を行っている。小菊の圃場では大量の土砂や木が流入し、今作の継続が不可能となり、まずは流入物を除去して土壌消毒などを実施するなど助言を行っている。
新城市のホウレンソウのハウスでは、浸水により収穫ができなくなったため、土壌消毒の指導を行い、速やかな植え替えを進めている。
その他、イチゴ、トマト、ミニトマトで浸水のあった施設では、速やかな排水、病害の発生を予防するための薬剤散布、灌水施設の泥の洗浄を指導するなど、被害の拡大防止と速やかな次期作の準備につながるように取り組んでいる。
【委員】
農業改良普及課の職員が、被災があった6月2日の土曜日から動いており、献身的に現状把握、現場把握をしてくれている。これは、農林水産事務所のみならず、建設事務所もそうである。これはやはり職員の問題意識の強さだと思う。
そのため、愛知県の本庁の職員も、情報交換も含めてしっかりと事務所と連携を取った支援をお願いしたい。
もう一つ大事なことは、市町村との連携である。現場の状況は把握しにくいため、市町村の行政組織を使って情報収集していき、それを愛知県がフォローしていくようなネットワークをつくるのがいいのではないか。
市町村に対する支援というのはどのようにしているのか。また、どのようにしたいのか伺う。
【理事者】
農地整備課の所管する農地や農業用施設に対する市町村への対応だが、災害復旧事業を活用した市町や土地改良区の申請に当たっては、農地や農業用施設の被災状況に応じた復旧工法を選定して、国へ申請して災害査定を受けていく必要がある。
この復旧工法の決定は、例えば、農道の路肩からのり面の崩壊が生じた場合、原形復旧で足りるのか、それとも、コンクリート板柵やブロック積みなどの土留めが必要になるのかなど、被災状況に応じた技術的な判断を求められる。
このため、県の技術職員が技術的な指導やアドバイスを行うなど、適切な復旧工法を選定するとともに、国の災害査定時でも市町村等をしっかりとサポートしていきたい。
【委員】
農業は大分分かった。林業はどうか。
【理事者】
まず、農林水産事務所の対応であるが、今回の大雨では事前に線状降水帯の発生が予測されていたことから、新城設楽農林水産事務所では大雨発生前から各市町村と連絡を取り合い、災害発生時の連絡体制の確認などの備えをしてきた。
また、大雨後も市町村及び建設事務所と連携して、被害箇所や被害状況の把握に努め、被災翌日の6月3日土曜日から直ちに現地調査に入り、農林水産事務所に配備されているドローンも活用して、被害状況や被害金額の把握に努めてきた。同時に、市町村と連携して、崩土除去やブルーシートの設置等の応急対応を行い、2次災害の防止に努めてきた。
現在は本格的な復旧に向け、国の災害関連事業を活用する予定の被害箇所について、計画書等の採択に向けた必要書類を作成している。また、国事業で対応できないものについては県単独事業である小規模治山事業を活用し、速やかに工事発注できるように準備を進めている。
二つ目の市町村の支援について、今回の大雨では林道の被害も多く発生したが、林道の復旧は管理者である市町村で対応する必要があるため、被害状況を的確に把握し、状況に応じて対応方針を決め、事業化に向けた設計積算をしていく必要がある。
しかしながら、新城設楽農林水産事務所の管内の市町村では、森林土木技術や設計積算業務に詳しい技術職員が不足しており、それらの技術的な支援が必要になっている。このため、工種工法や設計・積算に関する技術的な助言や測量支援をするとともに、国の事業、県単独事業が適切に活用され復旧工事が円滑に進むように支援していく。
なお、今回、最も被害が大きかった新城市では、2012年度から新城設楽農林水産事務所新城林務課と新城市森林課がワンフロア化され、新城フォレストベースとして機能している。今回の災害対応でも緊密に連携してきたが、今後もしっかりとサポートしていきたい。
【委員】
2点要望する。
まず、被災した人向けの相談窓口が分からない。農林の被害なのか、土木の被害なのか、市の担当なのか、県の担当なのか、分からない。そのため、愛知県にも指導してもらい、市町村にそれぞれのワンストップ相談窓口を設け、どこで対応するか考える場所を設けてほしい。
もう一つは、新城市の森林課と新城林務課がワンフロアになっていることは大変いいことだと思うが、豊根村、設楽町、東栄町など人の少ない場所にも積極的に技術指導を取り組んでもらいたい。
50何年前に七夕豪雨で被害があった。そのときは津具川が越水したが、今回の豪雨では越水しなかった。それは、建設事務所が河道掘削してくれた影響が大きいと思う。
山の被害も比較的少なかった。これは、日頃から治山事業をやってきた成果だと思う。一つ大崩れがあったが、途中の治山の施設で食い止められている。それぞれの被害はあったが、そのような日頃の事前防災による効果がかなりあったと思うので、ぜひ、これからも防災事業にしっかりと取り組んでもらいたい。
( 委 員 会 )
日 時 令和5年6月27日(火) 午後0時59分~
会 場 第2委員会室
出 席 者
佐藤英俊、村瀬正臣 正副委員長
峰野 修、いなもと和仁、近藤裕人、柳沢英希、杉浦友昭、高橋正子、
長江正成、桜井秀樹、藤原 聖、井上しんや、喚田孝博 各委員
農業水産局長、農林水産推進監、農業水産局技監、農政部長、
畜産振興監兼畜産課長、水産振興監、農林基盤局長、同技監、農地部長、
林務部長、関係各課長等
委員会審査風景
<付託案件等>
○ 議 案
第 81 号 令和5年度愛知県一般会計補正予算(第2号)
第1条(歳入歳出予算の補正)の内
歳 出
第6款 農林水産費
(結 果)
全員一致をもって原案を可決すべきものと決した議案
第81号
○ 閉会中継続調査申出案件
1 農林水産業の振興について
2 農地関係の調整及び土地改良について
3 緑化の推進について
4 農業水産局、農林基盤局、海区漁業調整委員会及び内水面漁場管理
委員会の行政運営について
<会議の概要>
1 開 会
2 議案審査(1件)
(1)理事者の説明
(2)質 疑
(3)採 決
3 委員長報告の決定
4 一般質問
5 閉会中継続調査申出案件の決定
6 閉会中の委員会活動について
7 閉 会
(主な質疑)
《議案関係》
【委員】
栽培漁業センター施設設備整備費について伺う。
水産資源減少の中、水産資源を積極的に増やす取組として、県では栽培漁業の取組を推進していると聞く。
栽培漁業は、魚や貝の死にやすい期間を人間が保護しながら飼育し、ある程度独り立ちできるようになったら自然の海に放流する取組で、県では田原市にある栽培漁業センターで、トラフグ、クルマエビ、ガザミ、ヨシエビ、アワビ、ナマコ、アユの7魚種の放流用種苗を生産している。これらにより、クルマエビやガザミでは全国1位の漁獲量となっており、漁業者の収入安定にも役立っており、重要な取組だと思う。
栽培漁業センターの長寿命化改修工事とはどのような内容なのか。
【理事者】
本県では、県有施設の老朽化対策として、愛知県庁舎等長寿命化計画を策定して改修工事を行っている。栽培漁業センターでも、1978年の開設から40年以上経過し、施設が老朽化しているため、本計画に基づいて昨年度から今年度にかけて改修工事を進めている。
工事の内容については、建物の外壁や屋根など本体構造に関するものや、電気設備や水回りなど建物内部に関するものなど建物の一般的な改修のほか、栽培漁業センターは魚の飼育を行う特殊な施設であるため、コンクリート水槽や配管などの改修も含まれている。
【委員】
アスベスト飛散防止対策に関する経費の増額とのことだが、長寿命化改修工事の当初設計時に見込むことはできなかったのか。
【理事者】
今回の補正予算については、長寿命化改修工事で古い配管の撤去を行うときに、配管の保温材にアスベストが使われていたため、大気汚染防止法に基づき飛散防止対策を行うものである。
アスベストの有無は保温材を取り出して分析するまで分からないため、その箇所を事前に把握することができず、当初設計には含められなかった。栽培漁業センターは魚を飼育することから、飼育内で配管が張り巡らされており、アスベストが使われていた保温材の箇所が1,300に上がることが判明したため補正予算を要求し、年度内に改修工事を完了させるものである。
【委員】
今年度の種苗生産に影響がないように工事を進めてもらいたい。
《一般質問》
【委員】
農業の担い手不足について伺う。
先日、農業水産局からもらった農業の動き2023を見ると、2015年と比較し、農業経営体数が25.5パーセントの減少となっており、販売金額では500万円未満の経営体で28.7パーセント、3,000万円以上の経営体数で6.5パーセントの減少となっている。農家数は17.3パーセントの減少であり、販売農家数は26.1パーセントの減少となっている。その反面、農業法人数については829法人で、前年より48法人の増加、2017年と比較しても138法人の増加となっている。
また、基幹的農業従事者は約4万人であり、2015年と比較して27.6パーセント、人口数では1万5,289人の減少となっている。
農家といっても幅広くあるが、農業を営む人が減少していくことは、食料自給率の低下や耕作放棄地の増加、農地の機能喪失などといった問題が生じてくるという懸念をしているので、これらのデータを踏まえ、愛知県の新規就農者の現状を伺う。
【理事者】
愛知県では、毎年5月2日から翌年の5月1日までの1年間で、新たに就農した人に関する実態調査を農業経営課で行っている。最新の新規就農者数は、2022年5月から2023年5月までの間に就農した64歳以下の数値であり、191人となっている。2021年5月から2022年5月までの間は181人であるため、10人増加している。
この191人の内訳は、農家出身で学校などを卒業してすぐ就農した新規学卒者が21人、農家出身で他産業に一旦就職した後に就農した人が55人、非農家出身の新規参入者が115人となっている。
【委員】
2021年の一般法人の農業参入数は、2020年と比較して28法人増加となっており、株式会社では97法人、特例有限会社が24法人、その他のNPO法人等で38法人となっているが、どのような法人が農業経営に新規で参入しているのか。
【理事者】
農業振興課では、農地の権利をリース方式で取得して農業に参入した法人の数を調査している。2020年末から2021年末にかけて増加した28法人の組織形態別の内訳は、株式会社が15法人、特例有限会社が5法人、その他、合同会社等の法人が8法人となっている。
業種別の内訳は、事業の多角化を目的とした農業を営む法人が19法人と、約7割を占めている。そのほかにも建設業を含む法人が3法人、福祉事業を営む法人が3法人と、他業種からの参入もある。
【委員】
いろいろな企業が参入しているのがよく分かる。
ところで、愛知県は、このような農業への新規参入者の確保、拡大に向けて、どのような取組を行っているのか。
【理事者】
愛知県では、2012年度から個人や企業などの新規参入希望に対する相談窓口として、県内8か所の農業改良普及課に農起業支援センターを設置している。その後、農業をやりたいという意向があっても、地域や作物など具体的なことが決まっていない相談者も増えてきたので、2021年度からは就農相談のワンストップ窓口として、県の農業大学校に新たに農起業支援ステーションを設け、就農に関する情報提供や具体的なビジョンづくりをサポートする体制を強化している。
具体的な就農希望地、作物等が決まったら、農起業支援センターを中心として、地域の農業者、市町村、農業協同組合等関係機関とも連携して、就農前の研修、就農時の農地、施設の確保、就農後のフォローアップまできめ細かにサポートする体制の構築を推進している。なお、農起業支援センターを設置した2012年度から2022年度までの11年間では、計2,511人が新たに就農している。
引き続き、これらの取組を通じて新規就農者の確保、育成を進め、農業の担い手不足の解消を図っていきたい。
【委員】
ぜひしっかりと進めてもらいたい。
いろいろな資料を見ると、昨今、農福連携に取り組んでいることが分かるが、今までの取組の経過と現状について伺う。
【理事者】
農業と福祉が連携して障害者が農業分野で就労する農福連携については、農業分野では働き手の確保につながるとして注目されている。
愛知県は、2019年度から農福連携に関する様々な相談への対応や、農家と障害者就労施設の農作業請負のマッチングを行う農福連携相談窓口を設置している。
相談窓口では、2019年度から2022年度までの4年間の累計で、計803件の相談に対応しており、そのうち54件のマッチングを成立させている。
また、農福連携セミナーの開催や現地視察を実施するなど、農福連携の周知啓発を図るとともに、農業者にも福祉事業者にも助言することができる専門人材の育成に向け、農福連携技術支援者育成研修を開催している。2022年度には、農福連携技術支援者として、19人が農林水産省から認定を受けている。
【委員】
労働不足の解消という側面と、福祉の観点からすると、障害者の働く場の確保のような形にもなると思っているが、今後、愛知県としてどのように農福連携を進めるのか。
【理事者】
農福連携に取り組むことで得られる農業側のメリットとしては、障害者を労働力として期待できること、障害者への就労機会の提供が社会貢献につながることなどが挙げられる。また、障害者就労施設が農地を取得して自ら農業に取り組むケースでは、担い手不足による農地の荒廃を防ぎ、地域の農地が有効に活用される効果もあると考えている。
しかしながら、理解不足により障害者の活用に踏み出せていない農業者もいること、それから、福祉側に農業に関する技術や経験を持った人材が少ないことなどの課題がある。
このため、農業水産局としては、推進体制の整備、専門人材の育成、県民理解の促進の3本を施策の柱として、相談窓口の設置、技術支援者の育成セミナーの開催等を通じて、農福連携の推進に引き続き取り組んでいきたい。
【委員】
持続可能な酪農飼料の自給率向上をテーマに質問をする。
本県の畜産は名古屋港や豊橋港などの港に近く、安価に飼料を調達できる恵まれた立地の下で発展してきたため、経営コストの半分以上を飼料費が占めている畜産農家では、飼料価格の高騰、高止まりにより、農家の経営努力だけでは追いつかない、かつてない厳しい経営を強いられている。
特に酪農や肉用牛は、養豚や養鶏でも利用しているトウモロコシなどエネルギー効率の高い濃厚飼料以外に、牛の特性として牧草などの粗飼料を給与する必要があり、北海道のような広大な牧草地で放牧ができる環境がない本県では、長期保存が可能な乾牧草やサイレージといった形で粗飼料を給与しており、濃厚飼料に加え粗飼料も輸入価格が高騰している現状では、畜産の中で最も厳しい経営環境に置かれている。
先日、酪農家でつくる愛知県酪農農業協同組合を訪問し、酪農家の現状について意見交換したところ、2022年4月の時点で225戸あった組合員は、27戸が廃業し、2023年3月末の時点で198戸となり、廃業割合は12パーセント、また、2023年度も4月から6月までの間に既に5戸が廃業し、年度中に最大で12戸程度の廃業が見込まれるとのことであった。
つまり、年間で酪農家の1割以上が廃業したことになり、過去15年間にわたり後継者不足等により、平均で戸数が年5パーセントほど減っていたが、2022年からはかつてないスピードで廃業する酪農家が増え、まさに廃業ラッシュであることが分かる。
2022年4月と2023年4月の酪農家の収入を、実際に愛知県内の牧場で国の補助金を入れない状態の乳代計算書を用いて検証した資料を見たところ、2022年4月と比べ2023年4月では、基本乳代単価は111.79円から122.61円へ上がったものの、飼料購買代金が426万9,330円から609万1,095円と前年比で142.7パーセントとなり、本人の手取り乳代金は172万605円からマイナス42万6,542円となっており、乳価は値上げしたものの飼料代が高騰したことで牧場経営は大幅に赤字となっていること、また、乳代金649万7,213円のうち飼料購買代金が93.7パーセントとなる609万1,095円であったことが検証されていた。このような状況では、従業員に払う給与や電気代などを乳代で賄うことができず、経営継続は大変厳しい状況である。
さらに、愛知県酪農農業協同組合のデータによると、輸入乾牧草の価格、チモシー、アルファルファ、スーダンなどの価格は、3年前と比較するとほぼ2倍に値上がりしている状況も分かった。要因として、最大産地の米国での水不足による収穫減や、ロシアのウクライナ侵攻による供給懸念による穀物価格の高騰から、欧州やオーストラリア等で牧草の作付の一部がより利益の大きい穀物に切り換えられたこと、また、乳製品の消費が増える中国や中東からの引き合いが強くなっていることなどもある。
本県も、飼料価格の急騰に対して国の飼料価格安定制度を補完するため、濃厚飼料の価格高騰に対して配合飼料価格高騰対策支援金を、また、粗飼料の価格高騰に対して粗飼料価格高騰対策支援金を措置し、経営の悪化に対して緊急的かつ直接的な支援を実施しているが、抜本的な対策としては、飼料自給率を向上させ、円安等、輸入飼料の動向に左右されない飼料供給体制をつくることが必要であると考える。
畜産農家が自給飼料を生産するだけでは限界があるため、飼料作物を生産する担い手を増やし、地域の水田や耕作放棄地を有効に活用して、耕種農家、とりわけ稲作農家と畜産農家が連携した飼料作物生産流通システムの確立が必要である。
そこで、本県は飼料生産の取組で耕畜連携をどのように推進していくのか伺う。
【理事者】
本県では、これまで粗飼料の自給率を高めるため、穂が成熟する前の稲を茎や葉も同時に収穫して家畜の飼料へ利用する、稲発酵粗飼料に取り組んでいる。稲作農家が稲を生産して畜産農家へ供給し、畜産農家は堆肥を水田に還元するといった資源の循環も図りながら、耕種農家、畜産農家、いわゆる耕畜が連携して粗飼料の生産を増大する取組である。
今後、愛知県内の飼料生産をさらに増大するため、稲よりも飼料として有効とされるトウモロコシに着目し、水田でトウモロコシを作付し、稲発酵粗飼料と同様、実が熟す前に茎や葉も同時に収穫して利用する青刈りトウモロコシを進め、耕畜連携の取組をさらに推進していく。
耕畜の連携を推進するには、稲作農家、畜産農家、それぞれにとってウィン・ウィンとなるような関係を築くことが必要である。稲作農家に対しては、トウモロコシを作付けることで水管理などの労力の大幅な軽減が期待できること、畜産農家に対しては、国産トウモロコシを飼料とすることで輸入飼料価格の高騰の影響が緩和されるほか、堆肥の利用促進にもつながるなどのメリットを説明し、マッチングを進めていきたい。
愛知県は、こうした取組を愛知県酪農農業協同組合並びに愛知県農業協同組合中央会などの生産者団体と連携し、耕畜連携を推進し、自給飼料生産に立脚した足腰の強い畜産の実現を目指していきたい。
【委員】
本県で2022年度から取り組んでいる自給飼料生産拡大事業のうち、水田でトウモロコシを栽培し、実をつける前に茎ごと刈り取るいわゆる青刈りトウモロコシ、コーンサイレージに関する実証試験の結果と課題等について伺う。
【理事者】
2022年度から取り組んでいる自給飼料生産拡大事業だが、2022年度は海部地域、知多地域、豊田地域の各地域で、合計25ヘクタールの水田で青刈りトウモロコシの実証試験を実施した。
その結果、収穫量は10アール当たり2.1トンと目標の8割ではあったが、適正な肥料の量や排水対策など、栽培に適した条件を明らかにすることができた。
また、青刈りトウモロコシを乳牛に与えた結果、嗜好性もよく、乳量や乳質といった生産物への影響も認められなかったことから、輸入粗飼料と比較しても遜色ない飼料であることが明らかとなった。
今後、栽培を拡大するに当たって、栽培、収穫に必要となる高額な専用機械の導入、収穫した飼料の保管スペースの確保、収穫した場所から遠方の畜産農家へ輸送する場合のコスト、流通システムなどの課題があるが、こうした課題については2023年度の実証試験等で検証していく予定である。
【委員】
まさに、今が国産転換のターニングポイントだと思っている。今後も広く県内各地域で耕畜マッチング補助を設置し、飼料作物の種類やほかの作物との組合せなどの生産技術実証、また、各地域の実態に応じた耕畜連携による自給飼料の生産拡大、エコフィードなどの利用拡大の継続的支援等に積極的に取り組んでもらいたい。
私の地元の西尾市でも、2011年に35戸あった酪農家の戸数が、現在、13戸となっている。今は比較的若い世代の酪農家が借金するか廃業するかの選択を迫られており、災害に備えるために老朽化した牛舎等の施設を修繕したり、生産性向上のために機械を更新するなど設備投資をしたいが、そこに資金を回す余裕が全くない現状である。
西尾市の酪農家と話をする中で、愛知県へは粗飼料価格高騰支援金の対象範囲に関すること、また、飼料分野のイノベーションへの期待、国へは本年3月に示された国の畜産・酪農緊急対策パッケージで示された、配合飼料価格安定制度の補填金算定ルールの新たな特例、また、価格転嫁対策として、生乳取引価格に配合飼料価格のコスト上昇を反映できる環境整備への期待、主食用米を飼料用米として生産する場合の補助制度などの要望、また、酪農家を存続させるための抜本的な対策として、数年間の実施期間を決めた上で緊急の所得補償対策を実施しつつ、その期間内でコスト削減や経営合理化、事業環境の改善などに取り組むべきではないかという意見等があった。
暗い話題しかない業界では、新たに就農したいと思う担い手を確保することは、大変困難であると思う。愛知県として国へ強く働きかけを実施してもらうこと、また、市町村、業界団体等と連携し、経営再建のための取組への支援、経営転換に必要な施設整備、機械導入への支援等を通じて、農家に寄り添い、意欲ある畜産経営を支え、持続的に発展するように支えてもらうことを強く要望する。
【委員】
6次産業について伺う。
6次産業化とは、1次産業として農畜水産物を生産するだけではなく、2次産業である加工、3次産業である販売やサービスにも農林漁業者が主体的かつ総合的に関わり、新たな付加価値を生み出す活動のことである。
意欲ある農林漁業者が新たに6次産業に取り組み、事業を成功させるためには、それまでの農林水産物自体の生産に関する知識や技術に加え、新商品の企画や加工、流通、マーケティングなど多岐にわたる知識の習得が必要になる。加えて、事業を開始するために必要となる機械、設備の調達資金の確保についても解決しなければならない重要な課題であると思う。
そこで、6次産業化を施行する農林漁業者等が必要とする知識習得等に対する支援はどのように行っているのか伺う。
【理事者】
本県では、農林漁業者等に対する知識習得を支援するため、国の交付金を活用して、愛知県6次産業化サポートセンターを設置している。
このセンターでは、中小企業診断士やファイナンシャルプランナー等の専門家21人を6次産業化プランナーとして登録し、農林漁業者等の要請に応じて派遣している。2022年度は、経営管理、新商品の企画や商品設計、ブランディング等に関する、延べ155件の相談に対して助言、指導を行っている。
また、これから6次産業化に取り組む新たな人材を発掘、育成するため、大学教授や先進農家等を講師とした研修会を県内各地で開催しており、2022年度は14回の研修会に計250人の農林漁業者等が参加した。
【委員】
次に、農林漁業者等が6次産業化の取組を開始するに当たり、必要となる施設や機械などの初期投資に対して愛知県としてはどのような支援を行っているのか。また、近年、それらの整備を行った農林漁業者の現状について伺う。
【理事者】
本県が行う支援としては、国の農山漁村振興交付金を活用し、農林漁業者等が6次産業化に取り組む場合に必要となる農産物加工・販売施設等の整備に要する経費に対して補助を行っている。
近年の整備事例とその後の状況について、2022年度には、常滑市の養鶏業者が卵を活用したパンの製造、販売を行うための施設整備を実施しており、総事業費の約2分の1の補助金を交付した。
この事業により整備されたベーカリー店は2023年6月10日にオープンしたが、1日当たりの平均来客数は平日で200人、週末300人と大変好評を博しており、所得の向上に貢献している。
また、2018年度には、大府市内で牛の繁殖から肥育までを行う養牛業者が実施した精肉の販売店舗や焼き肉店の施設整備に対しても、同じく補助金を交付している。この事業者は、新たに卸、小売、飲食部門が経営に加わったことにより計画的な生産が可能となり、経営の安定化が図られている。
【委員】
私自身も食肉の販売という形で6次産業の一端を担ってきたが、消費者ニーズ等の変化のスピードはこれまで以上に速まっていると感じている。引き続き、時代に即応した6次産業化支援に取り組んでもらいたい。
【委員】
あいち林業技術強化カレッジについて伺う。
愛知県は、2022年4月に木材の利用について愛知県木材利用促進条例を施行し、木材利用の促進に向けた取組を、総合的かつ計画的に推進していると承知している。また、愛知県及び私の地元である豊田市は木材の生産地であり、林業、木材生産の振興、森林整備の推進、木材の利用促進など、生産、消費の両面からの一層の取組が求められている。また、平成30年度には奈良県を本社に持つ西垣林業株式会社が豊田市に工場を稼働させ、その後、製材能力が高まり、さらなる木材供給能力が求められている。
一方で、その木材を生産、供給する林業従事者の確保、育成については、高齢化に加え、雇用条件や仕事の安全性の問題から、人材の確保が困難である構造的な課題があった。
そこで、豊田森林組合では、令和2年度より、県内の林業関係の高校から就職した職員を、1年目より岐阜県にある岐阜県立文化アカデミーや長野県林業大学校に2年間通わせた後、さらに1年間、若手の育成指導員7人による指導を行い、人材育成に取り組んでいると聞いている。この取組が功を奏し、本年度、豊田森林組合に就職した人は、この人材育成の取組の魅力に引かれて就職したとのことであった。それくらい、森林組合として危機感を持って人材育成に取り組んでいる。
愛知県では、2023年6月14日の農林水産委員会で、本年度より森林環境譲与税を活用して、あいち林業技術強化カレッジを開設すると説明があった。
このあいち林業技術強化カレッジを中心に、林業従事者の育成に向けた取組について、順次伺う。
まず、県内の林業従事者は、六つの森林組合のほか、民間の林業経営体に雇用されている者が多いと聞いているが、林業従事者の現状について人数や年齢層はどのようになっているのか。また、一層の人材確保と育成が必要だと考えるが、愛知県はどのように考えているのか。
【理事者】
愛知県では、5年ごとに年間30日以上、林業に従事した者を林業従事者としてその人数等を調査しており、直近の調査結果は2018年、平成30年次で総数は558人となっている。また、そのうち雇用されている者は453人で、全体の約8割を占めている。
年齢層については、年代別割合では、20代は8パーセント、30代は17パーセント、40代は26パーセント、50代は15パーセント、60代以上は34パーセントと全体の約3分の1を占めており、平均年齢は52歳と全産業に比べて10歳程度高くなっている。
人材の確保については喫緊の課題と捉えており、食と緑の基本計画2025で、2025年度までの5年間で200人の新規就業者の確保を目標に掲げ、森林林業の魅力の発信や林業への就業相談などを実施している。
また、人材の育成についても大変重要な課題と認識しており、本年度より開設したあいち林業技術強化カレッジを生かし、しっかりと取り組んでいく。
【委員】
今後、5年間で200人の新規就農者を増やすとのことだが、林業従事者のうち、34パーセントが60代以上である。その人が、恐らく、定年になってその200人が入ったものの、実際に200人が純粋に増えるわけではないため、実態をよく見てもらい、状況に応じてこの200人という数字も変えていく必要があると思うので、検討してもらいたい。
次に、あいち林業技術強化カレッジの開設の経緯と、その内容について伺う。また、期待される効果についても伺う。
【理事者】
あいち林業技術強化カレッジの開設の経緯、内容、期待される成果の3点について、順に答える。
初めに、経緯については、令和2年度に、林業労働力の確保の促進に関する基本計画を愛知県が策定するに当たり、愛知県内の森林組合及び民間の林業経営体に対して、愛知県の実施する森林・林業研修についてヒアリングを実施し、研修体系や内容を分かりやすくしてほしいという意見をもらった。
また、林業関係団体である愛知県森林協会、愛知県森林組合連合会、公益財団法人愛知県林業振興基金、林業・木材製造業労働災害防止協会愛知県支部の4団体から、人材育成の強化や研修体制の充実についての要望をもらった。
こうした意見、要望を参考に、基本計画に経験年数や知識、技術レベルに応じた研修の実施などの取組を位置づけ、令和3年度に他県の研修体系の調査研究も行い、研修体系の見直しの検討をしてきた。そして、本年度より、あいち林業技術強化カレッジとして開設した。
2023年4月28日には、カレッジの拠点となる森林・林業技術センターで、知事出席のもと、関係市町村長、林業関係団体等に出席してもらい、オープニングセレモニーを開催した。
次に、内容については、これまでの研修体系の見直し・強化を図り、林業従事者が働きながら段階的にスキルアップが図れるよう、経験に応じて基礎コース、中堅コース、指導者コースの3コースに研修を分類し、コースごとに必要となる技術の習得ができる研修とした。また、新規就業者がいち早く現場で活躍できるよう、労働安全の徹底、伐木技術の基礎訓練を重点とした研修を新たに設けるなど、基礎コースの強化を図っている。
次に、期待される成果については、研修受講生にとって受講すべき研修が分かりやすくなり、効率的にスキルアップが図られると考えている。また、林業経営体にとっても従業員の人材育成のための中長期的な計画が立てやすくなり、組織全体で技術力の向上が図られると考えている。
【委員】
最後に、今回、森林環境譲与税を活用するとあるが、さらに有効活用してもらい、労働環境改善も含めた人材育成の取組を拡大させる必要があると考えるが、愛知県の考えを伺う。
【理事者】
愛知県では森林環境譲与税を活用し、研修内容の拡充、伐倒の反復訓練ができる研修機材の導入など、県内全域の林業従事者に対する人材育成を中心として取り組んでいる。
今後もこの税を有効に活用し、雨の日でも実技研修が可能な屋根付きの研修施設の整備など、カレッジの研修実施体制を充実・強化し、人材育成にしっかりと取り組んでいく。
なお、本年10月18日には、人材育成の取組の拡大の一つとして、県内で初めてとなる伐木競技会を開催することとしており、チェーンソー操作の技術や安全意識の一層の向上を図り、林業従事者のモチベーションアップにもつなげていく。
加えて、市町村でも、森林環境譲与税は地域の実情に応じて人材育成に活用されており、県の取組に合わせて市町村でも効果的に人材育成の取組が行われるよう、先進事例の情報提供や助言を積極的に行うなどしっかりサポートしていく。
【委員】
今回の質問の趣旨は、今後の森林施策を進めるには、人材育成、確保が必要不可欠である中、県として森林に携わる各種団体からのヒアリングにより、あいち林業技術強化カレッジを始めるものである。
今回の質問をするに当たり、豊田森林組合とのヒアリングの中で一つの課題が出てきた。それは安全性の話である。豊田森林組合では、平成17年から今日に至るまで4人が山で命を落とした。森林組合の林業従事者の総数から見ても、この数字は、我々、モノづくり産業から見るとあり得ない危険度である。
特にこの事業で、新規就労者向けの基礎コースの強化を行っていくとしている。安全な作業、確実な作業、熟練した作業は作業の入口である、この言葉は、故豊田英二が昭和32年につくり上げた言葉である。私もトヨタ自動車株式会社に入社したときに、最初に教えられたのはこの安全という言葉であった。技術もだが、やはり安全という部分もしっかりとこのカレッジの中で重視してもらいたい。
もう一つは、森林環境譲与税の活用である。豊田森林組合のように豊田市から補助金をもらい、年間2人ないし3人が森林大学に通うことができる体力のある事業者はよいが、そうでない団体については、愛知県として財政支援を検討してもらいたい。
【委員】
耕作地の集積について伺う。
以前から言われている話であるが、農業の担い手不足が進行していくと、耕作放棄地が出てくる。それを解消するために、平成28年に農業委員会等に関する法律が変わった。当時の議事録によると、今述べたような耕作放棄地にもっと対応しなければならないとのことで、農地利用最適化推進委員を委嘱することにより、耕作放棄地の解消が図られることを期待されたと記憶している。まず、平成28年に、このような農業委員会の形になってから、耕作放棄地は、どのように変わったのか伺う。
【理事者】
平成28年に改正された農業委員会等に関する法律に基づき、農地利用の集積、集約化、遊休農地の発生防止、解消、また、農業者の新規参入を図るために農地利用最適化推進委員が設置されている。
県内における遊休農地の面積の推移だが、横ばい状態にある。これについては、農地巡回や、受け持ちの区域における推進委員の農家への声かけ等の日常活動を通じ、日々遊休農地の発生防止等の業務に精励してもらっているおかげだと認識している。
【委員】
遊休農地は横ばいで、推進委員の委嘱による成果があったのか、分からない部分があるかと思うが、また、これは細かく分析してもらいたい。
私の地元である日進市と東郷町では、日進市の農業委員会がかなり活発に活動しており、耕作放棄地に対応するために、例えば、自分たちでサツマイモを育て、地域の幼稚園の子たちに掘ることは任せて地域で楽しむこと、あるいは、酒米を作成し、それを長野県の木祖村と提携し、酒蔵と提携して酒造りをしている。遊休農地をそのようなものに使ってもらおうと活動しているわけだが、農業委員によっても恐らく相当温度差があり、やりようが違ってくると思う。
少し話が飛ぶが、今朝、おにぎりの専門店が東京の新宿で評判になっており、かなり出店が増えているというニュースを見た。その中で、2人以上の世帯におけるお米に対する支出金額の推移がフリップで出されたが、2000年の時点で、2人世帯で米が4万256円、ところが、2022年で1万9,825円であり、半分になっている。
なぜこの話をしたかというと、今日の話の趣旨は、米の農家を守っていかないと農地は守れないことを話そうと思ったのだが、ここまで米の国内消費が減っていることから、米ばかりにこだわってはいけないことを改めて聞いたので、質問の方向転換をしようと思ったからである。
参考になった今朝のニュースもだが、先ほど藤原聖委員が話した、あま市で実証実験をしたトウモロコシの青刈りのような方法論がもっとあれば、水田では難しいかもしれないが、農地としては生きるだろう。
話を戻すが、2000何年問題という言葉をよく聞く。2025年問題というと、団塊の世代が後期高齢者になる。2023年で約7割が後期高齢者になっているが、農業従事者も75歳を超えると農作業が手一杯になる。
私の地元では、耕作放棄地になりようがない、きれいな整地での農地でも、農業従事者がこぞってギブアップしている。何とか農地転用を図れないだろうか。もともとは都市マスタープランでは商業エリアに持っていけそうないわゆる市街化区域に近い、名古屋に近いところなので、そこを宅地開発にしたらすぐに売れてしまい、左団扇で暮らしていた農家であったが、自分たちは農地を守りたいということであったが、そのエリアが農業振興地域に変わっており、いよいよ自分たちがやれなくなってしまい、何とかしたいという話である。
耕作放棄地を水田にすることは難しいため、先ほどの耕畜連携のようなものをぜひ、してもらい、農地を守りたい。
愛知県全体で、農地を守りたいが、なかなか守っていけない状況に対してどのような方策を講じているのか。
【理事者】
国の制度だが、以前から人・農地プランというものがあった。人・農地プランとは、地域での農業者による、徹底した話合いに基づき、まとまった農地を地域の担い手に集積し、また、集約化するという将来方針の作成が市町村で行われている。
しかしながら、高齢化や人口減少の本格化により、地域農地の適切な利用ができなくなることが一層懸念されている。そのため、農地の集積、集約化に向けた取組を、今後加速することが必要となっている。
このことから、改正農業経営基盤強化促進法が2023年4月1日から施行された。今まで市町村が取り組んできた人・農地プランが名称を改め、地域計画としてその作成が法定化されている。
ここの目玉となるのは、将来10年後を目指して、農業者の話合いを通じて目指すべき将来の農地利用の姿を明確化する、併せて、農地1筆ごとの耕作者を、誰が今後10年後は担っていくのかを示す目標地図の作成といったものが義務づけられている。
また、この地域計画の中では、将来の地域の農業の在り方も農業者の話合いによって決めていくため、例えば、水田を今後、畑作に変えていこうとか、そのような将来の地域の目指すべき方向も、関係者で話し合って決めてもらう。こうしたことをしっかりとやってもらうことで、守り続けたいという農地を、今後、次世代に引き継いでいくことができる。
地域計画が策定された後は、これは令和5年4月1日から法律が施行されており、作成までに2年間あるが、作成された後は市町村が中心となり、農業委員会、本県もしくは関連する農業協同組合などの関係機関が連携し、計画の達成に向けて引き続き集積、集約化を進めていく。
【委員】
説明してもらったとおり地域計画を進めていくとのことであるが、市町村で地区を決めていき、計画を進めることでよいか。
【理事者】
市町村で地区を決めてもらい、そこで進めてもらう。
【委員】
市町村では、農地を手放したいというよりも、異なる方法で活用したいという話が先行していること、あるいは、結構な一団の農地で、農業従事者が農業をギブアップしたいという話を自治体が把握していないこともある。それは大きな問題だと思うのと同時に、農業委員会も、そのようなことは耳にはしていたが明確な形で相談されないため、手を出せないとのことであった。
愛知県からすれば、地域計画は、市町村主体で進めてもらうだけかもしれない。しかしながら、地域の人からすると、自分たちの都合でいろいろなことを考える部分があるため、大局的な意味で本当にその農地を残さなければいけないのかということは、わかりにくいと思う。
そのため、愛知県である程度指導してもらわないといけないし、そのような意味からも、市町村と同調して潜在的な困りごとを吸い上げ、いわゆる風通しのいい議論ができるような状況にしていかないといけないと思う。
地域計画を策定するに当たり愛知県はどのような支援をしているのか。
【理事者】
地域住人の声は、農地利用最適化推進委員に現場に足しげく通ってもらい、現場の農家の声、農地持ちの人の声を吸い上げてもらうことに勝る手法はないと考えている。
市町村が、そのような住民の声を聴き取り、どこの地域で地域計画をまとめていくのかについては、愛知県も直接的に指導する立場にないことは、理解してもらいたい。
市町村でここの地区を守っていくと決めてもらった上で、情報の横の展開や、ほかの地域ではこのような取組を進めていて、このような形でうまくやっているといった情報の共有については、愛知県の七つの農林水産事務所管内を中心にし、農地集積・集約化地域推進会がある。ここには愛知県の職員のみならず、市町村の職員、農業委員会、管内の農業協同組合の職員、中間管理機構の職員等、地域計画の推進に直接関与するそれぞれの担当者が参堂し、情報交換等をしており、遠慮のない意見や質問をしてもらえればと思っている。
また、併せて、そのような人が一堂に会する場所での相談が難しいのであれば、担当する事務所に相談をしてもらえば、個別に対応する。
【委員】
確認だが、農地利用最適化推進委員は、農家要件がなくても推進委員になれると思う。
そうすると、推進委員は、地域特性から本来は農業のことを推進する人であるため、そのような発想ができるほうがいいと思う。また、愛知県が指導する立場にないとのことだが、やはり農地利用最適化推進委員と名前がつく以上、あるいは農業水産局と名称がつく以上、そのことを重んじてもらわないと困ると思うが、推進委員はそのことをよく理解できた人であるのか。
【理事者】
農地利用最適化推進委員は、農業委員は過半数が認定農業者であるなどの要件があるが、推進委員は、農業に情熱を持って取り組んでもらえる人ということである。もちろん、農業に関する知識があるほうが、より効率的な業務をやってもらえると思う。
しかしながら、推進委員が平成28年にできたときの役割の一つとして、農地の集積化、集約化といったことも課せられた任務であるため、その地元の人の声を聴き取るといったことも、推進委員の仕事なのではないかと認識している。
また、地区の決め方について、愛知県が決定する立場にはないと説明した。このような現状があるのでどのようにしたらよいかなどの相談については対応させてもらう。
【委員】
相談があればしっかり対応してもらえるとのことであるので、やはりまず地元の人が本当に悩みを相談しやすい環境に整えることが大事なことだと思う。そのため、出先の事務所を通し、相談を待っているだけではなく、聞いてもらえるようなシステムが取れればと願いたい。
地域計画について話を聞いてきたが、中間管理機構についても以前より議論をしてもらっているため、実績が上がっていると思う。
私の地元以外の豊明市や長久手市を見ても、集積面積自体はそれぞれ増えているが、実際に中間管理機構を使って集積ができているわけではない。愛知県全体の集積を図るための意味合いでいうと、中間管理機構の役割を、改めてどのように認識しているのか。
【理事者】
農地中間管理機構は、農地中間管理事業の推進に関する法律に基づき、都道府県に一つ設置される機関である。愛知県内で営農をやめる人から農地を借受け、規模の拡大を希望する人等に貸し出すという機関である。
こうしたことから、今後、地域計画が策定されていき、その推進という場合になると、地域計画の着実な実現に向けて農業委員会等の関係機関と連携し、その地域計画の区域内の所有者に対して貸出しを促す、所有者の意向を踏まえた上で担い手にはまとまりのある形で渡していくことで、中間管理機構の役割が今後高まっていくと考えている。
【委員】
中間管理機構には頑張ってもらい、集積率をアップしてもらいたいが、やはり農地、土地、その作り手をマッチングさせるわけなので、信頼関係が一番大事だと考える。
そのため、例えば、農福連携でも、農地も福祉法人あるいは障害者との関係で、どんなところか分からないのに土地は貸せないということもあり、やはり信頼関係が一番大きなことだと思う。また、農業者、農家、地主からすれば、代々引き継いでいる土地をめったなことで崩してもらっては困るという気持ちがすごく大きいと思う。そのようなことをよく分かってもらった上で提案してもらいたい。
先ほど話した一団の農地というのは、当然のことながら水田をこれまでやっているため、土地改良もできていて結構な規模の農地である。そこの人たちがもっと効率的に農地を利用する方法がないだろうか考えたが、当局でも、もし考えがあればアピールやアドバイスをしてもらえると、その農地が本当によみがえってくると思う。そのようなことを含めて、農業水産局にはこれからもぜひ日本の食の安全、愛知県の食の安全を守ってもらいたい。
【委員】
国が行っている、私たち国民がどんな健康状態にあるか、栄養状態にあるかという調査について調べた。その中で野菜の摂取量はあまり変わってないという調査結果が分かった。
国の調査によると、野菜の摂取量の平均値は280グラムである。一方、愛知県の食育いきいきプラン2020では、306グラムであり、国の調査より上である。昔は、愛知県の数値は、国より下であったそうだが、増加した要因を簡潔に教えてもらいたい。
【理事者】
2020年度を目標とする第3次愛知県食育推進計画、あいち食育いきいきプラン2020では、新たに野菜摂取量、成人1人1日当たり350グラム以上とする目標を設定した。基準年である2014年度の265グラムから2019年度には306グラムとなり、増加傾向が見られた。
増加した要因は、県、市町村及び関係団体等の地道な取組の成果が少しずつ出てきたものと考えている。
具体的には、県の取組として、野菜摂取の必要性や県産農産物に対する県民意識を高めるきっかけとするシンポジウムや調理講習会を開催した。食育推進ボランティアをはじめ、多数の県民が参加し、野菜をつくること、食べることのよさが改めて分かった、今後の食育活動に役立てたいとの意見をもらった。
また、市町村等の取組として、大府市の健康づくり食育推進協議会は、朝食で野菜を食べることが野菜不足改善の鍵であると考え、朝ベジファーストなどの普及啓発を行ったことが評価され、農林水産省の食育活動表彰を受賞した。
加えて、農業協同組合や民間企業も様々な食育活動を行っており、多くの関係者による地域に密着した食育活動が広まったことにより、食生活改善への関心が高まり、野菜摂取量が増加したと考えている。
【委員】
常滑市の国際展示場であった食育の大会も、要因の一つで開くことができたと理解しているが、消費者の目線は、日々野菜の値段で変わるため、350グラムの目標がある以上は、さらに消費者に食べてもらわなければいけない。そういう中でも食べてみたいと感じさせるような方策、シンポジウムなど、食育の啓発活動以外の取組があれば伺う。
【理事者】
2021年度からスタートしたあいち食育いきいきプラン2025でも、野菜を身近なものとして感じ、栄養面での野菜摂取の必要性とともに、さらに、農林水産物への理解を深め、たくさん食べてもらう観点で、県民意識を高める情報発信・啓発に取り組んでいる。
本県で2022年度に開催した食育推進全国大会でも、愛知の郷土料理の魅力や野菜のおいしさを体感できるイベントなどを行い、2日間で約2万3,500人の来場者にPRできた。
また、自らが実際に野菜を栽培管理や収穫することで興味や関心を持ち、積極的に食べる習慣につながるように、小学校等の農業体験の支援を行っている。このような取組を継続して進めることにより、県産農水産物への関心や郷土料理、和食への良さを再認識し、積極的に消費者に選ばれるように努めていく。
【委員】
私が調べた文献の中では、なごやめしはなかなか野菜に手が伸びないとのことなので、なごやめしに負けないような興味と関心が持てる方策を大いに進めてもらいたい。
次に、愛知県の取り組む農業分野におけるイノベーション創出に向けた取組と、国の農林水産省の取組の違いについて伺う。
【理事者】
愛知県では、STATION Aiプロジェクトの一環として、2021年度から県農業総合試験場とスタートアップ等との共同研究体制の強化を図り、新しい農業イノベーション創出を目指すあいち農業イノベーションプロジェクトを実施している。
農林水産省の実施しているスタートアップ総合支援プログラムは、農林水産業、食品産業の政策的な課題解決や、関連の産業の成長を目的とする新たなビジネスを創出するため、主に大学等の最先端技術の事業化を目指すスタートアップを支援するものである。
一方、あいち農業イノベーションプロジェクトの研究開発テーマは、本県農業の現場で農業者のニーズやアイデアなどの調査、分析等を基に設定しており、現場のニーズと最新の技術を速やかに研究に取り込みながら、本県農業現場の様々な課題に対応するための技術開発に取り組むものである。
【委員】
STATION Aiのもう一つの目的の中には、スタートアップ・エコシステムの形成がある。
スタートアップがスタートアップを呼び込んで循環をさせていくと、そのような大きな話があるため、愛知県のイノベーション創出に向けた取組の中では、どうしても農業者のニーズやアイデアが、農業総合試験場経由になってしまう。
そうすると、STATION Aiでスタートアップ・エコシステムが熟成されてきたときには、またそれを農業総合試験場へ戻さないと農業者に伝わっていかないとか、そのようなタイムラグがどうしても出てくると思うが、それに対する愛知県の考え、簡単に言えば、農業者はどこから情報を得るのか、農業総合試験場からの情報以外でどのような形で情報を得ていくのか。
【理事者】
県内の農林水産事務所に八つの農業改良普及課があり、186人の普及指導員等を配置している。普及指導員が直接農業者に接して技術指導、経営相談等に対応しており、農業者のニーズやアイデアなどをすくい上げ、農業総合試験場に橋渡しをする機能を持っている。
さらに、2021年度には、研究開発、普及指導活動等の機能を強化するため、農業総合試験場内に研究戦略部と普及戦略部を設置した。この二つの部が車の両輪となり、これまで以上に現場の先進的な農業者や農業団体等のニーズやアイデアを発掘し、研究部門につなげるとともに、開発した技術の現地導入を迅速化し、イノベーション創出につなげていく体制を整備している。
【委員】
鶴舞にSTATION Aiができるが、残念ながら、七つの事務所があってそこに普及員がいるとしても、愛知県の別の部署の施設なのでなかなか足が向かないと思う。そこは、県当局も考えて、STATION Aiと農業総合試験場と、七つの事務所の連携が取れる体制づくりをお願いする。
次に、会派の農業部門の最重点項目に、スマート農業があり、スマート農業の普及を進めるため実証グループを設置し、実証で得られた成果を共有することも要望した。そこで、スマート農業実証プロジェクトの進捗の状況と、スマート農業が今どのような状態なのか伺う。
【理事者】
本県では地域に合ったスマート農業を普及するため、国の研究機関である国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構、通称、農研機構の事業を活用し、規模的には1億円前後の事業になるが、2019年度から2022年度に西尾市のキュウリで、また、2020年度と2021年度に豊川市のスプレー菊でスマート農業実証プロジェクトを行っている。
まず、キュウリの関係では、JA西三河キュウリ部会の生産者のほか、大学、種苗会社、情報システム会社などと連携し、湿度や温度、ハウス内の環境や生育に関する各種データを活用した栽培管理により44パーセントの収量の向上と、労務データの分析による適切な作業者の配置により11パーセントの労働時間の削減、生育データに基づく収量、出荷予測及び生産者コードつきの自動袋詰め機導入により8.7パーセントの農業所得向上などの成果を得ている。
スプレー菊に関しても、JAひまわりの生産者と大学等、各関係機関と連携して取り組み、農業者が4人いたため、幅があるが、4パーセントから11パーセントの収量向上、2パーセントから10パーセントの労働時間の削減の成果などを得ている。
本年度については、JA西三河イチゴ生産者等の実証グループが、X線及び画像処理による選果システムの導入による労働力削減を検討していくので、今後ともこのような取組を続けていきたい。
スマート農業を地域へ効果的に普及を進めるための必要な実証グループの関係についてであるが、愛知県では、地域への効果的な普及を進めるために、各地域の実情に合わせたスマート農業機器を選定する必要がある。このため、実証グループとして、生産者、農業団体、県、民間企業等を構成とする協議会を設置して、スマート農業の技術の実証実験を行っている。
実証内容は、露地野菜や水稲での除草ロボットの活用、トルコギキョウの環境モニタリングと環境データに基づいた栽培管理の適正化等に取り組んでいる。
本年度については、水稲、小麦でのドローンによる薬剤散布、ナスやトマトでの温湿度センサーを活用したハウス内環境改善による病害防除といった、4品目の課題に取り組むこととしている。
実証で得られた成果については、実証グループに参加している生産者団体等で共有するとともに、取組ごとに実証の成果として産地戦略や栽培マニュアルを取りまとめ、県のホームページ等で掲載するとともに、普及指導員の活動の中で横展開を図っていきたい。
【委員】
そもそもスマート農業普及推進計画は2022年度からスタートして、4年間の計画と聞いている。
具体的な数字の目標も、スマート農業技術全体の普及状況を計る手法として普及割合50パーセントであるため、これを具現化できるように取り組んでもらいたい。
最後に、新聞に、愛知県が許可した工事現場で濁水が流れ出て、地元の瀬戸市が事業者に対して賠償請求をしていくという記事が載った。
そもそも林地開発の許可の技術基準というのは愛知県が定めていると思う。このような賠償まで求められるような工事現場に対して、愛知県の技術基準がそもそもなっていないのではないかと思うので、その点について伺う。
【理事者】
太陽光発電施設の設置を目的とした開発には、切土、盛土をほとんど行わなくても現地形に沿った設置が可能であるなど、他の開発目的とは異なった特殊性がある。そのため、国は、2019年12月に新たに太陽光発電施設の設置を目的とした開発行為の許可基準の運用細則を定め、本県でも国から示された基準に従って林地開発審査基準を改正し、2020年4月1日から運用している。
この基準に基づき、本事業地でも可能な限り森林土壌を残すことや、排水施設等の防災施設、表面侵食を防止するための土砂流出防止柵、植生を導入し地表を保護するための種子吹き付け工や、伏工などが計画されている。
愛知県としては、今後も国から示されている、地方自治法に基づく技術的助言に準じた林地開発審査基準としていきたいと考えている。
【委員】
技術基準に不備があるから濁水が出たのではないかという質問である。
【理事者】
今回の事案では、調整地の工事を先行する当初の工程が守られていなかったり、仮設の沈砂地が適切に管理されていないなど、申請書どおりの工事がされなかったことが問題であり、林地開発審査基準上の課題ではないと考えている。
そのため、2022年7月以降、泥水が出た後、現地確認を5回、事業者との打合せを5回実施し、事業者を指導しており、事業者もそれに従っている。
今後とも、完了までしっかりと指導していきたい。
【委員】
このような事案が、今後、発生するかもしれないが、愛知県としてはどういう改善をすべきと思ったか、この事案に対して愛知県は今後このようなことが発生しないようにどうしなければいけないのか伺う。
【理事者】
今回の事案は、工程管理に問題があったと考えている。基準については、申請書は基準に沿ったものであるため、また、工程はしっかり管理させること、申請書どおりの工事をさせることが重要と考えているため、今後はそのように取り組んでいきたい。
【委員】
今の答弁だと、工程どおりの工事をやっていなかったということか。それを愛知県は把握していて、対応していなかったということか。
【理事者】
7月の濁水が出るまでの間は、工程の問題については把握していなかった。濁水が出てから内容を確認したところ、工程上に問題があったため、それ以降は指導している。
【委員】
今の答弁から思うのは、工程に対して問題があり、それをなぜ許可の際に今後生かすような答弁がないのか不思議であるが、今後もこのような許可を求めてくる事案が出てくると思う。そのときに、今回、工程に問題があったことを愛知県が把握しているのであれば、申請が出た段階で工程管理に対して愛知県は意見をつけるべきだと思うが、その点についてはどうか。
【理事者】
許可証には、工程について防災施設を先行して設置するようにという文言が一応入っている。ただし、それが守られなかったことは残念に思うので、今後はしっかり守られるように管理していきたい。
【委員】
防災施設を先に造るようにという技術基準を初めて言われたので、林地開発基準については、まずは防災施設を先に造ることを議会の中の議事録にも残し、そして、今後、七つある事務所に指導するのは、その事務所にも林地開発行為の届出がある場合には防災施設を最初に造っていく。最初に造らないと、瀬戸市の太陽光の現場のような事例が出てしまう。これは、しっかり愛知県として反省してもらい、これからの事業に生かしてもらいたいと思うがどうか。
【理事者】
委員が言ったことは全くそのとおりであるので、今後に生かしていきたい。
【委員】
それを文書で残すなど、そのようなところまで踏み込んでほしい。口頭での答弁は議事録に残るだけなので、七つある事務所に対して今回の事例をしっかり検証した結果を伝えて、文書で今後そういった事業者にも分かるような発信をしてもらいたいと思うが、その点についてはどうか。
【理事者】
今の指摘のように、このような事例が反省材料としてあるので、各事務所に対して、林地保全担当を通じて、年度ごとに研修等を行ったり、打合せ会という機会もあるため、今回の事例をそのようなときに文書で、今後の指導に生かしていくよう事務所で対応できるように周知していきたい。
【委員】
内部の会議で周知するのは当たり前だと思う。内部の会議だけでなく、林地開発行為をしようとする事業者に対しても提示すべきではないか。口頭ではなく、文書で提示すべきではないか。その点を、重々理解してもらいたい。
皆さんが理解したとしても、職員が、異動してしまったら、また、それは過去のものになってしまうため、事務の手続上、不備なく対応できる体制を愛知県の中でつくってもらいたい。もし、再度このような新聞記事が出たら、改めてこの委員会で質問する。
【委員】
2023年6月2日の豪雨による農林水産被害状況の現状について、愛知県全体、東三河、また、私の地元である新城北設楽がどうだったのか伺う。
6月12日現在、6月19日現在、6月26日現在の、大雨被害についての資料を比較すると、全体の被害総額推計は6月12日現在で38億6,600万円、6月19日現在で66億円、6月26日現在で68億円となっており、被害総額推計が6月12日に集計したときから約30億円増えている。その点について、どのような被害を受けたのかを把握するために、再度、説明してほしい。
【理事者】
今回の豪雨による農林水産被害について、6月26日現在で、県全体で約68億5,000万円、そのうち農業被害は約22億9,000万円、農地・農業用施設は約20億円、林業被害は約24億4,000万円、水産被害は約1億2,000万円となっている。
6月12日から6月26日までで、増えている中身の要因は、農作物等に関しては被害の報告が非常に増えてきており、そのようなことから2億円程度増えている。ほかにも、共同利用施設等の実際の金額が上がってきたり、林業被害でも、森林の奥など、これまで調査できず、被害状況が把握できなかったものが、2週間経過し、公に出るようになったため、大幅な被害総額の増加となった。ほかにも、水産被害も一部分増加し、また、県有施設、獣害のためのイノシシ等の妨害柵が山の中で崩れて流出したという数値が上がっているため、6月26日現在で68億円という被害総額になっている。
それから、東三河地域に関しては区別していないが、新城設楽事務所管内での被害状況については、新城設楽管内では全体で約17億円、そのうち農業被害が約200万円、農地・農業用施設は約3億円、林業被害は約14億円、水産被害は約200万円となっている。
主な被害内容は、農作物等被害では水稲や小菊の圃場に土砂が流入し、埋没することによる被害、ほかにもホウレンソウのハウスへ水が浸水したことによる根傷み等が発生している。
ほかにも、農地・農業用施設では用水路とか排水路の破損、農道の路肩の崩壊、それから、林業被害では山が多いことから、山腹の崩壊、林道の路肩の崩落、それから、水産被害ではアユのやなの一部破損などが発生している。
【委員】
水産被害で、漁業協同組合が放流したアユがほとんど流れたと聞いているが、漁業協同組合が放流したアユが大雨で流れたとしても、それは水産被害ではないという判断でよいのか。
【理事者】
今回の大雨で、豊川水系の3漁業協同組合、天竜水系の2漁業協同組合は、多くの放流したアユが流されて遊漁者が減少するという事案が見られたと農林水産事務所から聞いている。
水産資源への影響に対して、このような大雨や台風で放流した種苗について被害として集計した事例は現状ないため、被害としては、今のところ計上していない。
【委員】
被害だという立証がされれば認定されるということでよいのか。
【理事者】
一般的に農林水産業のこのような災害被害については、施設が壊れたとか、明らかにこの災害により影響があったことが分かれば被害として計上している。
今回、漁業協同組合から聞き取りをして、アユがかなり流れてしまったという話は聞いている。漁業協同組合によっては、放流したアユの3分の2ぐらいが流れてしまったのではないかという話も聞いている。そのため、影響はあったと考えている。
ただし、どのぐらい流れてしまったのかなど、算定が難しいため、今回の被害には数値としては含んでいない。しかし、影響は確実にあったのではないかと認識しているため、今後、漁業協同組合に聞き、どの程度の影響があったか把握していきたいと考えている。
【委員】
被害の額を確定するのが難しいことは分かるが、被害でないという判断にされると大変である。あまり前例がなく、今回は特殊な事例だとは思うが、漁業協同組合のほとんどが赤字である中で、再度アユを追加放流しなければならず、金銭的な心配もしているため、親身になって相談に乗ってもらいたい。
今回、知事の提案理由説明の中で、農林水産委員会に関する話が水害の話、豊川カーボンニュートラルの話、県の植樹祭の理念を受けて木材利用を推進する話に触れた。それから、代表質問で、新海正春議員と鳴海やすひろ議員が森と緑づくりと木材利用について触れた。また、一般質問で、中村竜彦議員が豪雨災害の状況と災害復旧について質問をした。神谷和利議員は森林クレジットについて、伊藤貴治議員は名古屋コーチンの種鶏場について質問をした。
まさに、農林水産委員会が関わる質問がかなりされ、全県内でこのようなことが議論されるようになったと思っている。
そこで、具体的に話を進めていく必要があると思っている。
台風2号、2023年6月2日の豪雨被害の復旧について、この被害額の認定が非常に大事だと思っている。そのため、1週間ごとに被害額を把握してもらっている。これは、それぞれの農林水産事務所、ないしは土木建設事務所が把握してやっているが、補正予算の内容に反映されるため、正確に、漏れがないようにしてもらいたいと思う。
そこで、七つの農林水産事務所があるが、地元である新城設楽農林水産事務所がどのように対応したのか伺う。
【理事者】
新城設楽農林水産事務所の対応のうち、農業者への技術指導について答える。
大雨などの災害の被害防止に向けて、2019年9月に本県独自の農業気象災害対策技術指針改訂版第2版を定めている。この初版は平成24年度に定めている。今回の大雨対策についてもこの指針に基づき、農林水産事務所農業改良普及課が被害現場の確認をし、被害の状況に応じて直接農業者に対応策の指導を行っている。
新城設楽管内における具体的な指導としては、土砂の流入した水田に対しては水稲を圃場にすき込み、土壌改良資材の投入について助言を行っている。小菊の圃場では大量の土砂や木が流入し、今作の継続が不可能となり、まずは流入物を除去して土壌消毒などを実施するなど助言を行っている。
新城市のホウレンソウのハウスでは、浸水により収穫ができなくなったため、土壌消毒の指導を行い、速やかな植え替えを進めている。
その他、イチゴ、トマト、ミニトマトで浸水のあった施設では、速やかな排水、病害の発生を予防するための薬剤散布、灌水施設の泥の洗浄を指導するなど、被害の拡大防止と速やかな次期作の準備につながるように取り組んでいる。
【委員】
農業改良普及課の職員が、被災があった6月2日の土曜日から動いており、献身的に現状把握、現場把握をしてくれている。これは、農林水産事務所のみならず、建設事務所もそうである。これはやはり職員の問題意識の強さだと思う。
そのため、愛知県の本庁の職員も、情報交換も含めてしっかりと事務所と連携を取った支援をお願いしたい。
もう一つ大事なことは、市町村との連携である。現場の状況は把握しにくいため、市町村の行政組織を使って情報収集していき、それを愛知県がフォローしていくようなネットワークをつくるのがいいのではないか。
市町村に対する支援というのはどのようにしているのか。また、どのようにしたいのか伺う。
【理事者】
農地整備課の所管する農地や農業用施設に対する市町村への対応だが、災害復旧事業を活用した市町や土地改良区の申請に当たっては、農地や農業用施設の被災状況に応じた復旧工法を選定して、国へ申請して災害査定を受けていく必要がある。
この復旧工法の決定は、例えば、農道の路肩からのり面の崩壊が生じた場合、原形復旧で足りるのか、それとも、コンクリート板柵やブロック積みなどの土留めが必要になるのかなど、被災状況に応じた技術的な判断を求められる。
このため、県の技術職員が技術的な指導やアドバイスを行うなど、適切な復旧工法を選定するとともに、国の災害査定時でも市町村等をしっかりとサポートしていきたい。
【委員】
農業は大分分かった。林業はどうか。
【理事者】
まず、農林水産事務所の対応であるが、今回の大雨では事前に線状降水帯の発生が予測されていたことから、新城設楽農林水産事務所では大雨発生前から各市町村と連絡を取り合い、災害発生時の連絡体制の確認などの備えをしてきた。
また、大雨後も市町村及び建設事務所と連携して、被害箇所や被害状況の把握に努め、被災翌日の6月3日土曜日から直ちに現地調査に入り、農林水産事務所に配備されているドローンも活用して、被害状況や被害金額の把握に努めてきた。同時に、市町村と連携して、崩土除去やブルーシートの設置等の応急対応を行い、2次災害の防止に努めてきた。
現在は本格的な復旧に向け、国の災害関連事業を活用する予定の被害箇所について、計画書等の採択に向けた必要書類を作成している。また、国事業で対応できないものについては県単独事業である小規模治山事業を活用し、速やかに工事発注できるように準備を進めている。
二つ目の市町村の支援について、今回の大雨では林道の被害も多く発生したが、林道の復旧は管理者である市町村で対応する必要があるため、被害状況を的確に把握し、状況に応じて対応方針を決め、事業化に向けた設計積算をしていく必要がある。
しかしながら、新城設楽農林水産事務所の管内の市町村では、森林土木技術や設計積算業務に詳しい技術職員が不足しており、それらの技術的な支援が必要になっている。このため、工種工法や設計・積算に関する技術的な助言や測量支援をするとともに、国の事業、県単独事業が適切に活用され復旧工事が円滑に進むように支援していく。
なお、今回、最も被害が大きかった新城市では、2012年度から新城設楽農林水産事務所新城林務課と新城市森林課がワンフロア化され、新城フォレストベースとして機能している。今回の災害対応でも緊密に連携してきたが、今後もしっかりとサポートしていきたい。
【委員】
2点要望する。
まず、被災した人向けの相談窓口が分からない。農林の被害なのか、土木の被害なのか、市の担当なのか、県の担当なのか、分からない。そのため、愛知県にも指導してもらい、市町村にそれぞれのワンストップ相談窓口を設け、どこで対応するか考える場所を設けてほしい。
もう一つは、新城市の森林課と新城林務課がワンフロアになっていることは大変いいことだと思うが、豊根村、設楽町、東栄町など人の少ない場所にも積極的に技術指導を取り組んでもらいたい。
50何年前に七夕豪雨で被害があった。そのときは津具川が越水したが、今回の豪雨では越水しなかった。それは、建設事務所が河道掘削してくれた影響が大きいと思う。
山の被害も比較的少なかった。これは、日頃から治山事業をやってきた成果だと思う。一つ大崩れがあったが、途中の治山の施設で食い止められている。それぞれの被害はあったが、そのような日頃の事前防災による効果がかなりあったと思うので、ぜひ、これからも防災事業にしっかりと取り組んでもらいたい。