委員会情報
委員会審査状況
農林水産委員会
( 委 員 会 )
日 時 令和6年10月2日(水) 午後1時~
会 場 第2委員会室
出 席 者
桜井秀樹、横田たかし 正副委員長
久保田浩文、横井五六、中野治美、峰野 修、新海正春、杉浦哲也、
鈴木 純、鈴木まさと、安井伸治、しまぶくろ朝太郎、末永けい
各委員
農業水産局長、農林水産推進監、農業水産局技監、農政部長、
畜産振興監兼畜産課長、水産振興監、農林基盤局長、同技監、
農地部長、林務部長、関係各課長等
<付託案件等>
○ 議 案
第128号 令和6年度愛知県一般会計補正予算第3号
第1条(歳入歳出予算の補正)の内
歳 出
第6款 農林水産費
第2条(繰越明許費の補正)の内
第6款 農林水産費
第147号 県の行う土地改良事業に対する市町村の負担金の変更について
(結 果)
全員一致をもって原案を可決すべきものと決した議案
第128号及び第147号
○ 閉会中継続調査申出案件
1 農林水産業の振興について
2 農地関係の調整及び土地改良について
3 緑化の推進について
4 農業水産局、農林基盤局、海区漁業調整委員会及び内水面漁場管理委員会の行政運営について
<会議の概要>
1 開 会
2 議案審査(2件)
(1)理事者の説明
(2)質 疑
(3)採 決
3 委員長報告の決定
4 一般質問
5 閉会中継続調査申出案件の決定
6 閉会中の委員会活動について
7 閉 会
(主な質疑)
《議案関係》
なし
《一般質問》
【委員】
ウナギの人工種苗の生産について伺う。
水産試験場が発行する水試ニュース9月号にウナギの人工種苗生産に関する記事が掲載されていた。これまでウナギ養殖は、種苗を天然のシラスウナギに依存しており、シラスウナギの採捕量が減少していることから、養鰻業の持続的発展にはウナギ人工種苗の大量生産技術の開発が求められている。
記事によると、水産試験場は国の委託事業に参画し、ウナギが卵からふ化してシラスウナギになるまでの餌の開発に取り組んでおり、このたび内水面漁業研究所から漁業生産研究所に拠点を移して、さらに研究に力を入れるとあった。
そこで、水産試験場が行うウナギの人工種苗生産に関する研究内容について、具体的に伺いたい。
【理事者】
ウナギの人工種苗生産においては、卵からふ化してシラスウナギになるまでの期間の餌として、深海に住んでいるアブラツノザメの卵を主原料に用いてきた。しかし、このアブラツノザメは、漁獲量が少なくて量産が困難であり、コストも課題になっていたことから、これに代わる餌の開発が必要であった。
このため、水産試験場では2020年度から国の研究機関や大学、民間企業で構成する研究プロジェクトに参画し、2021年度には、新たに鶏の卵黄等を用いた量産が可能で取扱いが容易な乾燥粉末の餌を開発し、シラスウナギまで育成することに成功した。
その後も餌の改良試験に取り組んでおり、今年度は研究のスピードアップやシラスウナギの量産化に向けて試験規模の拡大が必要となることから、研究拠点を西尾市の内水面漁業研究所から大量の綺麗な海水が利用できる南知多町の漁業生産研究所に移した。
現在、必要な施設整備を行っており、本年11月から本格的に試験を開始する予定である。将来、本県においてシラスウナギが大量生産できるよう、引き続き国などと連携して技術開発に努めていく。
【委員】
将来、人工種苗により、大量生産ができることになれば、ウナギの価格を抑えることができ、県民の食卓を彩ることができることから、引き続き力を入れてやって欲しい。
【委員】
二点目は、碧南干拓地における農業水利施設の整備状況について伺う。
碧南干拓地は、国営事業で造成された羽布ダムを水源とする矢作川用水により、冬の農業用水も確保されたことや、県営事業でスプリンクラーなどを用いた末端かんがい施設や農道、排水路を整備し、畑地帯を形成したことから、県内でも有数の野菜の産地となっている。
特にニンジンは、甘みの強いへきなん美人として、この地域のみの農家しか作付ができないオリジナルの品種で門外不出のものである。これらの野菜を高品質かつ安定的に生産し続けるため、経年劣化が進む農業水利施設の更新整備を計画的に実施してもらいたい。
令和4年2月の定例県議会本会議における議案質疑で、私から、老朽化した農業水利施設の更新整備の実施状況と今後の進め方について伺った。当時の農林基盤局長からは、碧南干拓地の南部に広がる114ヘクタールの農地にスプリンクラー散水するための川口揚水機場について、老朽化したポンプ施設の更新設備に今年度から着手しており、2025年度の完了を予定していると答弁があった。
そこで、更新整備を実施している川口揚水機場について、現在の進捗状況と完了の見込みについて伺う。
【理事者】
川口揚水機場については、老朽化した施設の更新を令和3年度から経営体育成基盤整備事業川口地区において実施しており、事業内容は、既存の揚水機場の隣接地に新しい揚水機場を造るものである。
進捗状況としては、令和3年度に測量設計を行い、令和4年度に用地買収と農業用水を一時的にためるファームポンドを令和5年度にかけて整備した。現在、ポンプ設備を工場製作しており、現地では上屋建築工事を実施している。
なお、令和7年春には新しい揚水機場が稼働する予定で、揚水機場内のフェンス、アスファルト舗装等の整備を令和7年度中に実施し、全ての工事を令和7年度末までに完了する予定である。
事業が確実に完了するよう、引き続き関係機関と調整を図り、しっかりと取り組んでいく。
【委員】
愛知県を代表する甘みの強いブランドニンジン、へきなん美人のような、高品質でブランド力の高い作物の生産をこれからも継続し続けるためには、川口揚水機場など農業水利施設により農業用水を安定的に供給することが不可欠である。
今後も引き続き予算を確保し、滞りなく早期に完了ができるよう努めてもらうようにお願いする。
【委員】
まず、農産物の価格転嫁について伺う。
足元の原材料価格の高騰や人件費の高騰で、農業を営むための経費が増加している。しかし、野菜を育てる農家に直接話を聞くと、なかなか消費者の意識が変わらないと話を聞く。そこで、県の価格転嫁の取組について伺う。
【理事者】
農業資材価格の高騰や急速な円安の進行などによって農業の生産環境が急激に変化していることから、国では、本年6月5日に施行された改正食料・農業・農村基本法の中で、新たに食料の持続的な供給に要する合理的な費用の考慮がうたわれている。国においては、改正食料・農業・農村基本法に基づき、持続的な食料供給に必要な合理的なコストを考慮する仕組みについて、令和7年中の国会提出を視野に法制化を検討しているという状況である。
また、農産物の価格については、需要と供給のバランスによって決まり、合理的なコストを上乗せするためには、消費者の理解醸成が大変重要である。
県としては、今後の国の法制化の動きに注視しながら、消費者に対して、農産物を適正な価格で購入してもらうことが愛知県の農業の振興、ひいては農地の多面的機能の適切な発揮、さらには消費者である県民の生活環境の確保につながることを理解していく取組を続けていきたい。
【委員】
あるキュウリ農家からは、食べられるものが規格に合わないという理由で廃棄されてしまう、家庭菜園だったら食べられるようなものが廃棄されてしまっていると話を聞いた。私も年配の人に聞いたところ、一説には、高度成長期のときに肉食、ステーキなどが出てきたとき、サラダ食も普及されて、野菜の見た目もきれいでないといけないから、店頭でも形の良いものを出すようになったとの話もある。
ただ、現実問題として、消費者の意識が綺麗な野菜をというと、生産者もそれに合わせざるを得ないという話を聞いて、命を頂いているという意識をどうやって変えていくのかは、大事だと思っているので、例えば、農林漁業体験等を通じてやっていくことも大事だと思うが、県の考えを伺う。
【理事者】
農林漁業体験は、食べ物を大切にする意識を高め、体験後の生活習慣にもよい影響を及ぼすことから、食育の観点でも重要な機会となっている。本県の「あいち食育いきいきプラン2025」においては、農林水産業への理解を深めるとともに、食に対する感謝の心を育むため、農林漁業体験学習を推進している。
このため、県では農家など農林漁業に関する豊富な経験を持つ人を「食育推進ボランティア」として育成し、県内各地域で行われる農林漁業体験学習に対し、紹介している。
また、小学校には実践マニュアルや地域協力者リストを提供し、農林漁業体験学習がスムーズに導入できるように支援している。
この結果、2023年度は県内の小学校の73パーセントが農林漁業体験学習に取り組むなど、子供たちが農業に触れる機会が年々広がっており、農産物への親しみを抱き、理解を深めることにつながっている。県としてはこうした取組がさらに広がるように努めている。
【委員】
次に、農業法人などにおける従業員の人材育成について伺う。
現在、どの分野においても、人手不足が進んでいる中で、最低賃金が年々引き上げられている。本県においても、2024年10月からの最低賃金が50円アップで、大幅な改定で1,077円になっている。生産者から聞いたところ、やはり最低賃金は遵守しなければいけない一方で、従業員のスキルや熟練度合いが追いつかないことで、なかなか難しい部分もあり、ある種、でっち奉公のような部分がある。
一律にどの分野でも最低賃金を一緒にしなくてはいけないのも、なかなか厳しい制度だと思うが、そういう課題に対して、県として生産者の悩みにどう応えていくのか。
【理事者】
農業分野においては、最低賃金等々の問題の解決に向け、農業分野における農業法人等の従業員の人材育成が必要と考えている。その中で、農業法人等の従業員のスキルアップや人材育成を行う際に活用できる支援として、国の雇用就農資金がある。農業法人などが就農希望者を新たに従業員として雇用した場合に農作業に必要な技術、経営ノウハウ等を習得させるための資金として、1人当たり月額5万円、年間最大60万円の助成を受けることができる。
本県においては、昨年度、県内の農業法人、それから農業者等、38の事業体が本事業を活用している。
【委員】
続いて、農林中央金庫の赤字、1兆5,000億円の影響について、県内の農業協同組合(JA)などに影響が出ないかと懸念しているが、検査する立場の当局に状況を伺う。
【理事者】
県内JAが行う信用事業の上部団体に当たる愛知県信用農業協同組合連合会に確認したところ、農林中央金庫が実施する資本増強については、愛知県信用農業協同組合連合会が対応するものであり、県内19JAに対して資本増強を求めることはないと聞いている。
また、県内JAが出資している農林中央金庫に対しての出資金に対する配当金は、2024年度はゼロ配当となるため、受取配当金はないが、その影響額は各JA数十万円単位と少ないため、令和5事業年度決算において県内各JAが数億円を超える当期剰余金を計上していることから、今回の事案がJAの経営及びJAの組合員利用者に影響を及ぼすことはないと聞いている。県としても、同様な認識をしている。
当室としても今回の事案の推移を注視しつつ、JAの運営が健全かつ適正に行われるよう指導、監督に努めていく。
【委員】
今の答弁では影響が出ることはないということだったが、実際、資本増強の手法として、劣後ローンなどをやっていく話があり、例えば、退職金で金融機関からそういうものを勧められたりする人に対して、劣後ローンなどを買うのかということである。本当に農林中央金庫も自分の意思で買っているのか。外資だとは思う。
愛知県のJAバンクでは、補塡すると聞いているが、実際、中長期で見たときに、この組合がJAバンクの口座を使って、年金などの運用をしており、様々な配当や金利などに影響が出ないか。あるいは、手数料といったものの上昇要因に今後なっていくのではないか。そういった部分もしっかり見ていかなくてはならないと思う。
農林中央金庫のやっている錬金術のような、虫のいい話が実際あるのか。その部分は、県としても組合の状況や各JAバンクの状況をしっかり注視してもらいたい。
続いて、遊休農地を活用した県営農業の実施について伺う。
今年の2月定例議会本会議の質疑でも提案しているが、数か月前の令和の米不足のような騒ぎもあり、新米が出てきて、状況は落ち着きつつある状況ではあるが、実際に、この数年で高齢の農業者が廃業を迎えていく。それに追い打ちをかけるような形で、45万人を超えるコロナワクチンの超過死亡。10月から世界のどこでも打ってないような新しいワクチンを日本人で治験的に使われてしまうことで、今後も、65歳以上が狙い撃ちにされて亡くなっていく。実際、私の地元でもワクチンを打ってから足が動かなくなって、農業ができなくなったという声もある。
このような社会環境において、食料自給率と食料の安定供給を見たときに、やはり、この1、2年が正念場ではないかと思う。様々な制度があるが、やはり、民間に任せるだけでは耕作放棄地の解消や自給率のアップ、あるいは農業従事者の確保、育成はもう追いつかないと思う。だから、殖産興業として、行政が農業、漁業などを率先垂範して直営でやっていくことによって、民間に火をつけていかなくてはいけない。
例えば、八幡製鉄所や富岡製糸場といった、特定の分野を国として育てるというところは、官営の殖産興業が担っていた。今の日本の状況は、一次産業が、がたがたになっている。だから、ぜひ農業のような一次産業を愛知県として、直営で、遊休農地もしっかり買上げて、雇用もし、やっていくことを改めて提案したいと思うが、県の所見を伺う。
【理事者】
本県の将来人口推計によると、本県の15歳以上65歳未満の生産年齢人口については、出生率が現状程度で推移する場合において、2020年の約465万人から40年後の2060年では約349万人となり、約116万人の減少が見込まれている。
こうした状況において、農業分野でも、様々な手法により、マンパワーの確保に注力することは、当然必要になってくるが、今後も本県農業の発展を進めるためには、農業の生産性を高め、競争力を強化していく必要がある。そのためには、遊休農地を利用した県営の農業よりも、認定農業者をはじめとした担い手等への農地の集積、集約化を加速していくことが効果的である。
2023年4月に施行された改正農業経営基盤強化促進法により、市町村には今年度末までに目指すべき将来の農地利用の姿を明確化する地域計画の策定が義務付けられており、本県としては、市町村や関係団体と連携しながら地域計画の着実な実現を図ることにより、担い手等への農地の集積、集約化を推進していきたい。
【委員】
続いて、農業における関係人口創出としての愛知型地域おこし協力隊について提案したい。
現在、生産者、担い手といった生産年齢人口が不足しており、後継者不足が厳しい状況にある中で、山村とか漁村と都市部との関係人口を増やしていく政策を国や自治体によっては、それぞれやっている。
一つの事例を紹介したいのは、大阪の泉大津市と高知県の香南市で、農業に関する連携協定をして、特別栽培米を適正な価格で、学校給食として使うことで、都市部、消費地と生産地、地方をつないでいく取組がある。
国の制度で、二拠点居住の促進制度が5月から法改正された。いわゆるデュアルライフで、国も後押しをしている。実際、愛知県も人口問題対策検討会議のワーキンググループの一つに農林水産業の振興も挙げており、空き家の活用のワーキンググループもある。やはり、大都市圏から関係人口、交流人口を増やしていく取組の一つとして、国の地域おこし協力隊があるが、愛知県として地域おこし協力隊、特に若い人、そこに1年、2年、生産地に居住して、一次産業などにしっかり携わってもらう中で、地方創生、地域活性化を図っていくことができると思う。
仮に、自治体を気に入れば、そのまま居住し、地域おこしをやったり、仲間を呼んで有機農業などを行ったり、あるいは将来的には婚活など、そういったコミュニティーづくりにもつながると思うので、まずは、県が主導して地域おこし協力隊を編成することを提案したい。
【理事者】
県としては、農山漁村での人口減少問題への対応として、関係人口創出に向けた取組は非常に重要であると考えている。
農村地域については、魅力ある地域資源があるので、その地域の維持、活性化を図っていくにはそのような地域資源を生かし、都市住民と農山漁村との交流拡大、そして関係人口を創出していくことが重要である。
愛知県としては、これまで、あいちの都市・農村交流ガイドをインターネットで公開しているが、県内の様々な地域資源を紹介し、農山漁村等を巡るルートを紹介し、食や花をテーマにした地域活性化や観光振興に向けた活動を行っている。
例えば、春日井サボテン街道というものがあるが、県内17地域の食と花の街道等のコンテンツを活用し、都市部の人に興味を持ってもらい、農村地域に実際に訪れてもらうという情報発信を行っている。
また、人の流れを生み出すことで、定住人口を創出する取組として、半農半Xがある。これは、農業と他の仕事を組み合わせた働き方であるが、昨年度は本県で半農半Xのイメージを持ってもらうため、見学会を開催するなど、半農半Xの支援を通じて、関係人口の創出に取り組んでいる。
現在、国が推進している地域おこし協力隊については、人口減少や高齢化の進行が著しく進む地域へ地域外から人材を積極的に誘致するものである。この制度は、一定期間、地域に居住し、地域ブランドなどの地場産品の開発、販売、PRを行ってもらい、農林水産業にも実際に従事してもらうなど、市町村等が委嘱するものである。
国の制度については、委嘱内容や制度運用が非常に弾力的な対応をしており、現行制度の中でも愛知県で活用されている。県内では人口減少が進む中山間地域等の6市町村で活用しており、6月1日現在で24人が活躍している。
そのうち、4人が実際に農林水産業に従事している。今後も国の制度を活用していくことが効果的、効率的な施策であると考えており、地域おこし協力隊制度を活用する市町村と連携し、例えば、就農希望者に対しては就農相談を通じて、早期に経営確立を支援する資金や機械施設等の導入事業を活用するなど、必要に応じた支援を行いたい。
【委員】
去年の2月に愛知県知事選挙に出て、愛知県の全域を回り、本当に豊かな自然環境、日本の原風景があると感じた。
まずは、農村、漁村、山村というものをきちんと知る、見に行くことが本当に大事だと思っており、来年の愛知国際芸術祭において、例えば日本の棚田とか、山村、漁村の美しさをぜひ国内、県民はもちろんのこと、世界にもっとPRしてもよいと思う。今、インバウンドを戦略としてやっているわけで、都市と農村との交流のための農村アート、漁村アートというものも、愛知国際芸術祭の企画に入れてもよいと思うが、地域振興の在り方について考えを伺いたい。
【理事者】
本県の農村アートの取組としては、水田を活用した田んぼアートがある。田んぼアートは田んぼを大きなキャンパスと見立て、品種の異なる水稲を植え、巨大な絵を描くというもので、現在、名古屋市や安城市で実際に行っている。
例えば、名古屋市の南陽地区の田んぼアートでは、地元の土地改良区や地域資源保全隊、名古屋市、愛知県で構成される実行委員会が主催しており、一般応募で消費者の方に田植や稲刈りなどの農作業を体験してもらいながら、農業への関心を高めつつ、都市近郊の水田保全を担う目的で行われている。
田んぼアート以外として農村の美しい田園風景、それを活用する事例として、新城市の千枚田において田植後のライトアップや、収穫感謝のイベントを実施しており、棚田における都市農村交流を通じて関係人口の創出、拡大による地域振興に取り組んでいる。
名古屋市南陽地区の田んぼアートや新城市の四谷地区の千枚田のイベントは、水田の多面的機能増進を図るという活動でもあり、国の日本型直接支払制度を活用しており、国、県、市町村が一体となって支援をしている。
国際芸術祭を農村地域に活用してはどうかという提案であるが、国際芸術祭は国内最大規模の芸術祭であり、県の芸術文化センターや県内の都市の街中を会場として開催している。
この芸術祭は、芸術文化振興が目的であり、国内外から多数のアーティストの方が参加している。アート作品の多くは非常にデリケートで、室内の空調が整っている施設での展示が基本であり、展示期間も二、三か月で、セキュリティー対策もしっかりやる必要があり、農村地域での開催は難しいと聞いている。
本県としては、田んぼアートや棚田のライトアップイベントなど、農村の美しい景観を生かした都市住民との交流活動に対して、国の交付金等を活用して、引き続き支援していきたい。
【委員】
続いて、ローカルフード法、地域在来種等の種苗の保存及び利用等の促進に関する法律案、について伺う。
この前、国会議員の講演を聞く機会があり、ローカルフード法というものを初めて知った。野党系の議員が法案を提出しており、与党系の議員の感触も悪くないと聞いたが、実際、閣法のほうが先に審議されてしまうので、毎回流れてしまう。
内容を聞いたところ、私が従来から言っている、あいちの伝統野菜とか固定種、在来種という品種の栽培、普及という理念が一致しており、全国でこのローカルフードという運動を盛り上げていきたい。
以前の質問内容と重複するが、愛知県の伝統野菜という、非常にユニークで郷土料理とも密接に絡むもので、愛知の食文化の推進、発展にも寄与するものだと思うので、しっかりと市町村や企業、家庭などの協力も得ながら普及させていくという考え方、あるいは民間の団体との連携体制が現状どのようになっているのか。
【理事者】
県では、2002年度から本県の地域在来品種から成るあいちの伝統野菜の選定を開始し、生産拡大や消費者の認知度向上を目的とした各種の取組を行っている。また、民間団体である、あいち在来種保存会では、あいちの伝統野菜を含む地域在来品種を栽培、収穫するとともに、それらの種子の継続と普及に取り組んでいる。
市町村、企業、家庭などへの働きかけとしては、県が2023年度から行うあいちの伝統野菜振興事業において、あいち在来種保存会の協力を得て、あいちの伝統野菜を紹介するウェブページの充実、パンフレットの作成を通じた情報発信を行うほか、市町村等の協力の下、初心者を含む栽培者講習会の開催などを行っている。
また、学生や飲食店、料理研究家などの協力を得て、家庭の食卓で伝統野菜を使用してもらえるようなレシピ開発も進めている。
県では引き続き、市町村、企業、家庭などと幅広い対象に向けた働きかけを行いながら、あいちの伝統野菜の振興にしっかり取り組んでいきたい。
【委員】
続いて、水稲有機農業に関する試験研究について伺う。
先日、農業総合試験場を視察し、水稲有機農業に関する試験研究として、本年度から化学合成農薬を用いない除草方法の開発に取り組んでいると聞いた。水稲の有機農業の技術開発、特に生産体制の構築に向けた農業総合試験場の取組内容について伺う。
【理事者】
水田有機農業省力化事業、今年度から開始した事業においては、農業総合試験場が開発した不耕起V溝直播栽培の特徴である省力性を生かして有機農業を行うため、労力のかかる除草作業の負担を軽減する栽培技術の開発を目指している。
この中で、農薬を使わない除草技術については、農業総合試験場が新しいアイデアや技術を持つ民間企業等と共同で除草機械の研究開発を進めている。さらに、農業総合試験場の水田において、省力的な管理による有機栽培の実証試験を行い、米の収穫量や品質、周辺環境に与える影響を調査するとともに、その経済性についても検証していく。
こうした取組により、有機米の生産技術の開発と実証を段階的に進め、より低コストで実効性のある生産体系の構築につなげていきたい。
【委員】
漁業者の所得向上について伺う。
先日、南知多町役場、漁協の組合長に話を聴いてきた。漁業は、農業以上に厳しい現実があると感じた。後継者不足をはじめ、資材価格の高騰、あるいは海水温の上昇により、魚が捕れなくなってるなど、栄養塩不足の話もあった。
都市部選出の議員として、春日井市は、海がないので、一体何ができるのかを聞いたところ、現代人は、魚を食べなくなっており、値段も肉よりも高く、子供も骨があるなどで食べない。母親が共働きになって、魚もあまり調理しなくなったというのも想像できるが、とにかく魚食文化をしっかり都市部のほうでも広めてほしいといわれた。
ポスターももらい、早速地元の自治体などに話をしたが、都市部の子供は魚がやはり好きである。ポスターなど渡すと、すごく喜んで絵を描くなどする。そういったところに県民の理解促進の鍵があると思う。
春日井市の学校給食のメニューでは、きちんと愛知の食材を取り入れているが、やはり、もっと生産地、生産者の顔が見えるような形で、都市部の政治家としても産地を応援していきたい。
漁業自体が魅力ある仕事にならないと人材の確保はできないと思う。テレビドラマを見ると、医者や弁護士ばかり扱われており、例えば、俳優が漁業をやるなど、何かそういうドラマが流行れば、また違うかもしれないが、とにかく漁業がもうかるものにしていく支援が必要かと思うのと、都市部の地域において、いかに県内の水産物や漁業への理解促進を図っていくのかという点について、県の所見を伺う。
【理事者】
一点目のもうかる漁業への支援について、愛知県では2021年3月に策定した愛知県漁業振興計画において、漁業者がもうかる経営体づくりを重点施策に位置づけ、養殖業の振興や漁業者の設備投資への支援などに取り組んでいる。
養殖業の振興について、漁業者の収入は、水産資源の状況に左右され、不安定なことが経営上の課題であることから、安定的、計画的な収入が期待できる養殖の導入を進めている。
具体的には、新たな技術を取り入れたカキ養殖やアサリ養殖の導入に向けた実証試験を漁業者と一緒に実施しており、来年度から各地区で本格的に導入される予定となっている。また、ノリ養殖については、魚や鳥による食害が増加しているので、漁業協同組合に対して漁場への侵入を防ぐ防除網の購入費用への補助を行っている。
次に、漁業者への設備投資の支援については、老朽化した漁船などを更新する際に、漁業者の負担が大きいことから、国と連携した新たな漁船の導入の補助などを行っている。
今後もこのような取組により、漁業者の所得が向上するよう、引き続き支援していく。
二点目の県産水産物や漁業への県民の理解促進の県の取組について、県では、県産水産物の消費を将来にわたって定着させるため、特に子供への啓発普及に力を入れて取り組んでいる。具体的には、小学校において水産業を学ぶ際の学習教材に利用してもらうよう、県産水産物や県内で行われている漁業を紹介するパンフレットや下敷きを作成しており、昨年度は県内の全小学校約1,000校の小学5年生児童約6万8,000人に配布した。配布先の小学校からは、児童の興味を広げ、学習を深めるのに役立ったとの声を聞いている。
また、漁業者が講師となり、本県の漁業について直接説明する出前授業を県内の小学校で開催しており、昨年度は県内20校、947人の児童を対象に実施した。児童は、漁業者の話を興味深く聞いており、漁業を身近に感じてもらう機会になったのではないか。
こうした取組を通じて、県産水産物や漁業への理解が深まるよう、引き続き努めていく。
【委員】
8月30日に農林水産省が発表した2024年産米の本年8月15日現在の作柄概況によると、青森県が良、東北地方などの11道府県がやや良となっているほか、最大産地の新潟県など31都府県が平均並み、佐賀、長崎、宮崎の3県はやや不良となっていた。
本県は平年並みとなっているが、今年もイネカメムシが発生しており、地元農家からは対応に苦慮しているという話を聞いた。日本農業新聞によると、今年は9月20日時点でイネカメムシの注意報が39府県に出ているとのことであった。また、昨年はイネカメムシが大量発生し、地域によってはイネカメムシの被害により収量が大きく減少したと聞いている。
そこで、今年のイネカメムシの発生状況及び県の対策について伺う。
【理事者】
イネカメムシはイネの出穂期、すなわち穂が出始めるその時期に集中的にもみを加害することから米が不稔となる、実らなくなってしまって収穫量の減少を引き起こす害虫であり、昨年は海部地域を中心に大変大きな被害があった。
本年の発生状況であるが、農業総合試験場が、いわゆるコシヒカリに代表される早生の出穂期直前の7月上旬に県内47地点、94の水田で実施した捕虫網、虫取り網で田んぼのすくい取り調査を行ったところ、イネカメムシを含めた斑点米カメムシ類の1水田当たりの平均の捕獲数、これは2.57頭であった。
この平均捕獲数であるが、平年は0.88頭、昨年は0.85頭と言われており、平年の2.9倍イネカメムシがおり、過去10年で最も多い状況であった。
昨年の大きな被害の要因としては、出穂期の防除が遅れて薬剤散布の適期を逃していたこと、散布した農薬が薬剤抵抗性により効きにくくなっていたことなどが考えられる。これを踏まえて、昨年被害が大きかった海部地域では、農業改良普及課がJAとイネカメムシ対策の作戦会議として意見交換会を開き、対策や指導方法について話合いを行った。また、農業改良普及課が作成した啓発資料をJAの広報誌に折り込み、全てのJA組合員に情報が行き渡るよう配布した。
また、従来からこの地域ではラジコンヘリによる共同防除が行われていたが、今年については、入念な防除計画を立て、適期を逃さないよう、7月は梅雨の晴れ間や8月は作業を行わないお盆期間中でも共同防除を行った。海部以外の地域でもイネカメムシに関する情報を講習会、JAの広報誌等を通じ、例年以上に積極的に発信して防除の徹底を図った。
これらの対策が功を奏し、昨年のような収穫量が大きく落ち込むようなイネカメムシの被害の発生は抑えられたと考えているが、今月末に本県の米の収穫が終了したところで、最終的な被害状況を見ながら防除対策を評価、検証して、さらなる防除の徹底に努めていく。
【委員】
農林水産省の資料によると、愛知県の2024年産米の8月末時点の、一等米であるが、この比率が33パーセントと、昨年同期を6.4パーセント下回って、少し低調な出だしという書きぶりであったが、収穫が終わった後、しっかりと検証していただきたい。
また、令和の米騒動と言われた今年の米不足の要因としては、昨年の猛暑の影響も要因の一つと言われている。今年の夏も昨年に引き続いて異常な暑さで、また暑い期間も長期にわたり、今日も沖縄より名古屋のほうが、気温が高いそうであるが、長期にわたっているので、地球温暖化の影響で今後もカメムシの被害や夏の暑さへの対応が重要になると思うので、県においては、引き続き、カメムシ対策や高温障害対策に取り組まれたい。
【委員】
先日の岡山県での県外調査で、ドローンによる生育状況分析や鳥獣被害調査のセンシング技術の活用のほか、水稲の種もみの播種に活用している取組を拝見した。
ドローンは、農薬や肥料の散布を省力的に行うスマート農業機械であると認識していたが、今回の県外調査で様々な活用方法があり、実際に現場で行われていることを知った。
そこで、本県におけるドローンの導入台数や用途などの実態について伺う。
【理事者】
農業総合試験場の普及戦略部及び農業改良普及課が昨年実施した実態調査によると、本県では170台のドローンが導入されている。部門別には、水田作で157台、農家数でいうと147戸になる。また、露地野菜では13戸の農家で13台が導入されている。
水田作の基幹経営体は358戸あるので、147戸というと、大規模な水田作の農家の41パーセントでドローンが導入されている。
ドローンの用途であるが、作業の省力化を目的として、多くは農薬散布に利用されている。最近では肥料散布への使用も始まりつつある。また、水稲種もみの湛水直播について、本県においても豊川市、田原市、東郷町などで試験が行われている。
さらには、省力化以外の用途として、生産性向上に向けたリモートセンシングの実証が行われている。これはドローンで撮影した圃場の画像を解析し、土壌や作物の生育などの状況を把握するものである。そして、それを基に適正な施肥や排水などの管理を行い、収量や品質の改善を目指す取組で、現在、豊田加茂地区、それから東三河地区において、普及戦略部と農業改良普及課が生産者やJA等関係機関と連携して、技術実証やコストなどの経済的な検証を行っている。
【委員】
さきの県外調査では、林業の取組も調査を行ったが、小型のドローンの性能も向上し、価格も下がり、操作性もよくなっており、解析にはフリーソフトの活用もできるとのことで、今後のドローンの可能性を感じた。
一方で、農業散布などに使う大型ドローンは数百万円程度と大変高価な機械であり、また、高度な操縦方法の習得も必要なことから、小規模な農家への普及はまだまだな気がした。小規模な農家では購入が難しいと思うので、実際、ドローンによる農薬散布などを業者委託していると聞いた。このような農家に対して、県としてドローンの利用をどのように推進していくのか。
【理事者】
生産者の高齢化や減少が進み、労働力不足が懸念されている本県の農業産地において、ドローンは省力化や作業の効率化の面で大変有用である一方、導入コストが高く、特に小規模農家では個々に導入した場合は経済的な負担が生じるとともに、効果的な運用ができない。
こうしたことから、ドローンなどの先端技術を使った大規模農家や作業の請負業者いわゆる農業支援サービス事業体による作業受託、共同利用、あるいはリースなどの方法で産地全体でまとまって導入を推進していくことが有効と考えている。
例えば、愛西市のレンコン産地であれば、JAあいち海部、JAあいち経済連、愛西市農業改良普及課を構成員としたレンコン産地協議会がドローンを活用した共同防除に取り組んでいる。農業改良普及課としては、補助事業を活用してドローンによる共同防除の取組について実証を行い、省力性や経済性を検証し、この結果を基に現在はレンコン産地協議会が請負業者にドローン防除の委託を行う体制が整っている。
県としては、国の補助金を活用した農業支援サービス事業体へのドローン等の導入と支援サービスを活用した地域、産地の仕組みづくりを支援するとともに、こういった取組事例を横展開して、ドローンの利用を推進していく。
【委員】
ドローンは、活用していく方向になると思うので、ドローンを実際に請け負っている企業、団体に補助するのはよく分かるが、実際に農家が依頼したときにコストが下がっているのか。私が聞いたのは、農家がそういったところに委託するときに補助金がもらえないかというような話も聞いたので、使うときに費用がある程度抑えられて、もうかる農業に少しでもシフトできるように取組をお願いしたい。
農業の省力技術として、地元では、担い手からも農家からも愛知県農業総合試験場で開発した不耕起V溝直播栽培が好評であった。直まきには鳥が大敵だが、種もみをまく溝の幅と深さが工夫されており、鳥のくちばしが入らないようになっているので大変喜んでいた。これからも農家の困り事を技術力で解決し、持続可能な農業の一助となるよう、生産技術の構築、スマート技術の推進をお願いしたい。
( 委 員 会 )
日 時 令和6年10月2日(水) 午後1時~
会 場 第2委員会室
出 席 者
桜井秀樹、横田たかし 正副委員長
久保田浩文、横井五六、中野治美、峰野 修、新海正春、杉浦哲也、
鈴木 純、鈴木まさと、安井伸治、しまぶくろ朝太郎、末永けい
各委員
農業水産局長、農林水産推進監、農業水産局技監、農政部長、
畜産振興監兼畜産課長、水産振興監、農林基盤局長、同技監、
農地部長、林務部長、関係各課長等
委員会審査風景
<付託案件等>
○ 議 案
第128号 令和6年度愛知県一般会計補正予算第3号
第1条(歳入歳出予算の補正)の内
歳 出
第6款 農林水産費
第2条(繰越明許費の補正)の内
第6款 農林水産費
第147号 県の行う土地改良事業に対する市町村の負担金の変更について
(結 果)
全員一致をもって原案を可決すべきものと決した議案
第128号及び第147号
○ 閉会中継続調査申出案件
1 農林水産業の振興について
2 農地関係の調整及び土地改良について
3 緑化の推進について
4 農業水産局、農林基盤局、海区漁業調整委員会及び内水面漁場管理委員会の行政運営について
<会議の概要>
1 開 会
2 議案審査(2件)
(1)理事者の説明
(2)質 疑
(3)採 決
3 委員長報告の決定
4 一般質問
5 閉会中継続調査申出案件の決定
6 閉会中の委員会活動について
7 閉 会
(主な質疑)
《議案関係》
なし
《一般質問》
【委員】
ウナギの人工種苗の生産について伺う。
水産試験場が発行する水試ニュース9月号にウナギの人工種苗生産に関する記事が掲載されていた。これまでウナギ養殖は、種苗を天然のシラスウナギに依存しており、シラスウナギの採捕量が減少していることから、養鰻業の持続的発展にはウナギ人工種苗の大量生産技術の開発が求められている。
記事によると、水産試験場は国の委託事業に参画し、ウナギが卵からふ化してシラスウナギになるまでの餌の開発に取り組んでおり、このたび内水面漁業研究所から漁業生産研究所に拠点を移して、さらに研究に力を入れるとあった。
そこで、水産試験場が行うウナギの人工種苗生産に関する研究内容について、具体的に伺いたい。
【理事者】
ウナギの人工種苗生産においては、卵からふ化してシラスウナギになるまでの期間の餌として、深海に住んでいるアブラツノザメの卵を主原料に用いてきた。しかし、このアブラツノザメは、漁獲量が少なくて量産が困難であり、コストも課題になっていたことから、これに代わる餌の開発が必要であった。
このため、水産試験場では2020年度から国の研究機関や大学、民間企業で構成する研究プロジェクトに参画し、2021年度には、新たに鶏の卵黄等を用いた量産が可能で取扱いが容易な乾燥粉末の餌を開発し、シラスウナギまで育成することに成功した。
その後も餌の改良試験に取り組んでおり、今年度は研究のスピードアップやシラスウナギの量産化に向けて試験規模の拡大が必要となることから、研究拠点を西尾市の内水面漁業研究所から大量の綺麗な海水が利用できる南知多町の漁業生産研究所に移した。
現在、必要な施設整備を行っており、本年11月から本格的に試験を開始する予定である。将来、本県においてシラスウナギが大量生産できるよう、引き続き国などと連携して技術開発に努めていく。
【委員】
将来、人工種苗により、大量生産ができることになれば、ウナギの価格を抑えることができ、県民の食卓を彩ることができることから、引き続き力を入れてやって欲しい。
【委員】
二点目は、碧南干拓地における農業水利施設の整備状況について伺う。
碧南干拓地は、国営事業で造成された羽布ダムを水源とする矢作川用水により、冬の農業用水も確保されたことや、県営事業でスプリンクラーなどを用いた末端かんがい施設や農道、排水路を整備し、畑地帯を形成したことから、県内でも有数の野菜の産地となっている。
特にニンジンは、甘みの強いへきなん美人として、この地域のみの農家しか作付ができないオリジナルの品種で門外不出のものである。これらの野菜を高品質かつ安定的に生産し続けるため、経年劣化が進む農業水利施設の更新整備を計画的に実施してもらいたい。
令和4年2月の定例県議会本会議における議案質疑で、私から、老朽化した農業水利施設の更新整備の実施状況と今後の進め方について伺った。当時の農林基盤局長からは、碧南干拓地の南部に広がる114ヘクタールの農地にスプリンクラー散水するための川口揚水機場について、老朽化したポンプ施設の更新設備に今年度から着手しており、2025年度の完了を予定していると答弁があった。
そこで、更新整備を実施している川口揚水機場について、現在の進捗状況と完了の見込みについて伺う。
【理事者】
川口揚水機場については、老朽化した施設の更新を令和3年度から経営体育成基盤整備事業川口地区において実施しており、事業内容は、既存の揚水機場の隣接地に新しい揚水機場を造るものである。
進捗状況としては、令和3年度に測量設計を行い、令和4年度に用地買収と農業用水を一時的にためるファームポンドを令和5年度にかけて整備した。現在、ポンプ設備を工場製作しており、現地では上屋建築工事を実施している。
なお、令和7年春には新しい揚水機場が稼働する予定で、揚水機場内のフェンス、アスファルト舗装等の整備を令和7年度中に実施し、全ての工事を令和7年度末までに完了する予定である。
事業が確実に完了するよう、引き続き関係機関と調整を図り、しっかりと取り組んでいく。
【委員】
愛知県を代表する甘みの強いブランドニンジン、へきなん美人のような、高品質でブランド力の高い作物の生産をこれからも継続し続けるためには、川口揚水機場など農業水利施設により農業用水を安定的に供給することが不可欠である。
今後も引き続き予算を確保し、滞りなく早期に完了ができるよう努めてもらうようにお願いする。
【委員】
まず、農産物の価格転嫁について伺う。
足元の原材料価格の高騰や人件費の高騰で、農業を営むための経費が増加している。しかし、野菜を育てる農家に直接話を聞くと、なかなか消費者の意識が変わらないと話を聞く。そこで、県の価格転嫁の取組について伺う。
【理事者】
農業資材価格の高騰や急速な円安の進行などによって農業の生産環境が急激に変化していることから、国では、本年6月5日に施行された改正食料・農業・農村基本法の中で、新たに食料の持続的な供給に要する合理的な費用の考慮がうたわれている。国においては、改正食料・農業・農村基本法に基づき、持続的な食料供給に必要な合理的なコストを考慮する仕組みについて、令和7年中の国会提出を視野に法制化を検討しているという状況である。
また、農産物の価格については、需要と供給のバランスによって決まり、合理的なコストを上乗せするためには、消費者の理解醸成が大変重要である。
県としては、今後の国の法制化の動きに注視しながら、消費者に対して、農産物を適正な価格で購入してもらうことが愛知県の農業の振興、ひいては農地の多面的機能の適切な発揮、さらには消費者である県民の生活環境の確保につながることを理解していく取組を続けていきたい。
【委員】
あるキュウリ農家からは、食べられるものが規格に合わないという理由で廃棄されてしまう、家庭菜園だったら食べられるようなものが廃棄されてしまっていると話を聞いた。私も年配の人に聞いたところ、一説には、高度成長期のときに肉食、ステーキなどが出てきたとき、サラダ食も普及されて、野菜の見た目もきれいでないといけないから、店頭でも形の良いものを出すようになったとの話もある。
ただ、現実問題として、消費者の意識が綺麗な野菜をというと、生産者もそれに合わせざるを得ないという話を聞いて、命を頂いているという意識をどうやって変えていくのかは、大事だと思っているので、例えば、農林漁業体験等を通じてやっていくことも大事だと思うが、県の考えを伺う。
【理事者】
農林漁業体験は、食べ物を大切にする意識を高め、体験後の生活習慣にもよい影響を及ぼすことから、食育の観点でも重要な機会となっている。本県の「あいち食育いきいきプラン2025」においては、農林水産業への理解を深めるとともに、食に対する感謝の心を育むため、農林漁業体験学習を推進している。
このため、県では農家など農林漁業に関する豊富な経験を持つ人を「食育推進ボランティア」として育成し、県内各地域で行われる農林漁業体験学習に対し、紹介している。
また、小学校には実践マニュアルや地域協力者リストを提供し、農林漁業体験学習がスムーズに導入できるように支援している。
この結果、2023年度は県内の小学校の73パーセントが農林漁業体験学習に取り組むなど、子供たちが農業に触れる機会が年々広がっており、農産物への親しみを抱き、理解を深めることにつながっている。県としてはこうした取組がさらに広がるように努めている。
【委員】
次に、農業法人などにおける従業員の人材育成について伺う。
現在、どの分野においても、人手不足が進んでいる中で、最低賃金が年々引き上げられている。本県においても、2024年10月からの最低賃金が50円アップで、大幅な改定で1,077円になっている。生産者から聞いたところ、やはり最低賃金は遵守しなければいけない一方で、従業員のスキルや熟練度合いが追いつかないことで、なかなか難しい部分もあり、ある種、でっち奉公のような部分がある。
一律にどの分野でも最低賃金を一緒にしなくてはいけないのも、なかなか厳しい制度だと思うが、そういう課題に対して、県として生産者の悩みにどう応えていくのか。
【理事者】
農業分野においては、最低賃金等々の問題の解決に向け、農業分野における農業法人等の従業員の人材育成が必要と考えている。その中で、農業法人等の従業員のスキルアップや人材育成を行う際に活用できる支援として、国の雇用就農資金がある。農業法人などが就農希望者を新たに従業員として雇用した場合に農作業に必要な技術、経営ノウハウ等を習得させるための資金として、1人当たり月額5万円、年間最大60万円の助成を受けることができる。
本県においては、昨年度、県内の農業法人、それから農業者等、38の事業体が本事業を活用している。
【委員】
続いて、農林中央金庫の赤字、1兆5,000億円の影響について、県内の農業協同組合(JA)などに影響が出ないかと懸念しているが、検査する立場の当局に状況を伺う。
【理事者】
県内JAが行う信用事業の上部団体に当たる愛知県信用農業協同組合連合会に確認したところ、農林中央金庫が実施する資本増強については、愛知県信用農業協同組合連合会が対応するものであり、県内19JAに対して資本増強を求めることはないと聞いている。
また、県内JAが出資している農林中央金庫に対しての出資金に対する配当金は、2024年度はゼロ配当となるため、受取配当金はないが、その影響額は各JA数十万円単位と少ないため、令和5事業年度決算において県内各JAが数億円を超える当期剰余金を計上していることから、今回の事案がJAの経営及びJAの組合員利用者に影響を及ぼすことはないと聞いている。県としても、同様な認識をしている。
当室としても今回の事案の推移を注視しつつ、JAの運営が健全かつ適正に行われるよう指導、監督に努めていく。
【委員】
今の答弁では影響が出ることはないということだったが、実際、資本増強の手法として、劣後ローンなどをやっていく話があり、例えば、退職金で金融機関からそういうものを勧められたりする人に対して、劣後ローンなどを買うのかということである。本当に農林中央金庫も自分の意思で買っているのか。外資だとは思う。
愛知県のJAバンクでは、補塡すると聞いているが、実際、中長期で見たときに、この組合がJAバンクの口座を使って、年金などの運用をしており、様々な配当や金利などに影響が出ないか。あるいは、手数料といったものの上昇要因に今後なっていくのではないか。そういった部分もしっかり見ていかなくてはならないと思う。
農林中央金庫のやっている錬金術のような、虫のいい話が実際あるのか。その部分は、県としても組合の状況や各JAバンクの状況をしっかり注視してもらいたい。
続いて、遊休農地を活用した県営農業の実施について伺う。
今年の2月定例議会本会議の質疑でも提案しているが、数か月前の令和の米不足のような騒ぎもあり、新米が出てきて、状況は落ち着きつつある状況ではあるが、実際に、この数年で高齢の農業者が廃業を迎えていく。それに追い打ちをかけるような形で、45万人を超えるコロナワクチンの超過死亡。10月から世界のどこでも打ってないような新しいワクチンを日本人で治験的に使われてしまうことで、今後も、65歳以上が狙い撃ちにされて亡くなっていく。実際、私の地元でもワクチンを打ってから足が動かなくなって、農業ができなくなったという声もある。
このような社会環境において、食料自給率と食料の安定供給を見たときに、やはり、この1、2年が正念場ではないかと思う。様々な制度があるが、やはり、民間に任せるだけでは耕作放棄地の解消や自給率のアップ、あるいは農業従事者の確保、育成はもう追いつかないと思う。だから、殖産興業として、行政が農業、漁業などを率先垂範して直営でやっていくことによって、民間に火をつけていかなくてはいけない。
例えば、八幡製鉄所や富岡製糸場といった、特定の分野を国として育てるというところは、官営の殖産興業が担っていた。今の日本の状況は、一次産業が、がたがたになっている。だから、ぜひ農業のような一次産業を愛知県として、直営で、遊休農地もしっかり買上げて、雇用もし、やっていくことを改めて提案したいと思うが、県の所見を伺う。
【理事者】
本県の将来人口推計によると、本県の15歳以上65歳未満の生産年齢人口については、出生率が現状程度で推移する場合において、2020年の約465万人から40年後の2060年では約349万人となり、約116万人の減少が見込まれている。
こうした状況において、農業分野でも、様々な手法により、マンパワーの確保に注力することは、当然必要になってくるが、今後も本県農業の発展を進めるためには、農業の生産性を高め、競争力を強化していく必要がある。そのためには、遊休農地を利用した県営の農業よりも、認定農業者をはじめとした担い手等への農地の集積、集約化を加速していくことが効果的である。
2023年4月に施行された改正農業経営基盤強化促進法により、市町村には今年度末までに目指すべき将来の農地利用の姿を明確化する地域計画の策定が義務付けられており、本県としては、市町村や関係団体と連携しながら地域計画の着実な実現を図ることにより、担い手等への農地の集積、集約化を推進していきたい。
【委員】
続いて、農業における関係人口創出としての愛知型地域おこし協力隊について提案したい。
現在、生産者、担い手といった生産年齢人口が不足しており、後継者不足が厳しい状況にある中で、山村とか漁村と都市部との関係人口を増やしていく政策を国や自治体によっては、それぞれやっている。
一つの事例を紹介したいのは、大阪の泉大津市と高知県の香南市で、農業に関する連携協定をして、特別栽培米を適正な価格で、学校給食として使うことで、都市部、消費地と生産地、地方をつないでいく取組がある。
国の制度で、二拠点居住の促進制度が5月から法改正された。いわゆるデュアルライフで、国も後押しをしている。実際、愛知県も人口問題対策検討会議のワーキンググループの一つに農林水産業の振興も挙げており、空き家の活用のワーキンググループもある。やはり、大都市圏から関係人口、交流人口を増やしていく取組の一つとして、国の地域おこし協力隊があるが、愛知県として地域おこし協力隊、特に若い人、そこに1年、2年、生産地に居住して、一次産業などにしっかり携わってもらう中で、地方創生、地域活性化を図っていくことができると思う。
仮に、自治体を気に入れば、そのまま居住し、地域おこしをやったり、仲間を呼んで有機農業などを行ったり、あるいは将来的には婚活など、そういったコミュニティーづくりにもつながると思うので、まずは、県が主導して地域おこし協力隊を編成することを提案したい。
【理事者】
県としては、農山漁村での人口減少問題への対応として、関係人口創出に向けた取組は非常に重要であると考えている。
農村地域については、魅力ある地域資源があるので、その地域の維持、活性化を図っていくにはそのような地域資源を生かし、都市住民と農山漁村との交流拡大、そして関係人口を創出していくことが重要である。
愛知県としては、これまで、あいちの都市・農村交流ガイドをインターネットで公開しているが、県内の様々な地域資源を紹介し、農山漁村等を巡るルートを紹介し、食や花をテーマにした地域活性化や観光振興に向けた活動を行っている。
例えば、春日井サボテン街道というものがあるが、県内17地域の食と花の街道等のコンテンツを活用し、都市部の人に興味を持ってもらい、農村地域に実際に訪れてもらうという情報発信を行っている。
また、人の流れを生み出すことで、定住人口を創出する取組として、半農半Xがある。これは、農業と他の仕事を組み合わせた働き方であるが、昨年度は本県で半農半Xのイメージを持ってもらうため、見学会を開催するなど、半農半Xの支援を通じて、関係人口の創出に取り組んでいる。
現在、国が推進している地域おこし協力隊については、人口減少や高齢化の進行が著しく進む地域へ地域外から人材を積極的に誘致するものである。この制度は、一定期間、地域に居住し、地域ブランドなどの地場産品の開発、販売、PRを行ってもらい、農林水産業にも実際に従事してもらうなど、市町村等が委嘱するものである。
国の制度については、委嘱内容や制度運用が非常に弾力的な対応をしており、現行制度の中でも愛知県で活用されている。県内では人口減少が進む中山間地域等の6市町村で活用しており、6月1日現在で24人が活躍している。
そのうち、4人が実際に農林水産業に従事している。今後も国の制度を活用していくことが効果的、効率的な施策であると考えており、地域おこし協力隊制度を活用する市町村と連携し、例えば、就農希望者に対しては就農相談を通じて、早期に経営確立を支援する資金や機械施設等の導入事業を活用するなど、必要に応じた支援を行いたい。
【委員】
去年の2月に愛知県知事選挙に出て、愛知県の全域を回り、本当に豊かな自然環境、日本の原風景があると感じた。
まずは、農村、漁村、山村というものをきちんと知る、見に行くことが本当に大事だと思っており、来年の愛知国際芸術祭において、例えば日本の棚田とか、山村、漁村の美しさをぜひ国内、県民はもちろんのこと、世界にもっとPRしてもよいと思う。今、インバウンドを戦略としてやっているわけで、都市と農村との交流のための農村アート、漁村アートというものも、愛知国際芸術祭の企画に入れてもよいと思うが、地域振興の在り方について考えを伺いたい。
【理事者】
本県の農村アートの取組としては、水田を活用した田んぼアートがある。田んぼアートは田んぼを大きなキャンパスと見立て、品種の異なる水稲を植え、巨大な絵を描くというもので、現在、名古屋市や安城市で実際に行っている。
例えば、名古屋市の南陽地区の田んぼアートでは、地元の土地改良区や地域資源保全隊、名古屋市、愛知県で構成される実行委員会が主催しており、一般応募で消費者の方に田植や稲刈りなどの農作業を体験してもらいながら、農業への関心を高めつつ、都市近郊の水田保全を担う目的で行われている。
田んぼアート以外として農村の美しい田園風景、それを活用する事例として、新城市の千枚田において田植後のライトアップや、収穫感謝のイベントを実施しており、棚田における都市農村交流を通じて関係人口の創出、拡大による地域振興に取り組んでいる。
名古屋市南陽地区の田んぼアートや新城市の四谷地区の千枚田のイベントは、水田の多面的機能増進を図るという活動でもあり、国の日本型直接支払制度を活用しており、国、県、市町村が一体となって支援をしている。
国際芸術祭を農村地域に活用してはどうかという提案であるが、国際芸術祭は国内最大規模の芸術祭であり、県の芸術文化センターや県内の都市の街中を会場として開催している。
この芸術祭は、芸術文化振興が目的であり、国内外から多数のアーティストの方が参加している。アート作品の多くは非常にデリケートで、室内の空調が整っている施設での展示が基本であり、展示期間も二、三か月で、セキュリティー対策もしっかりやる必要があり、農村地域での開催は難しいと聞いている。
本県としては、田んぼアートや棚田のライトアップイベントなど、農村の美しい景観を生かした都市住民との交流活動に対して、国の交付金等を活用して、引き続き支援していきたい。
【委員】
続いて、ローカルフード法、地域在来種等の種苗の保存及び利用等の促進に関する法律案、について伺う。
この前、国会議員の講演を聞く機会があり、ローカルフード法というものを初めて知った。野党系の議員が法案を提出しており、与党系の議員の感触も悪くないと聞いたが、実際、閣法のほうが先に審議されてしまうので、毎回流れてしまう。
内容を聞いたところ、私が従来から言っている、あいちの伝統野菜とか固定種、在来種という品種の栽培、普及という理念が一致しており、全国でこのローカルフードという運動を盛り上げていきたい。
以前の質問内容と重複するが、愛知県の伝統野菜という、非常にユニークで郷土料理とも密接に絡むもので、愛知の食文化の推進、発展にも寄与するものだと思うので、しっかりと市町村や企業、家庭などの協力も得ながら普及させていくという考え方、あるいは民間の団体との連携体制が現状どのようになっているのか。
【理事者】
県では、2002年度から本県の地域在来品種から成るあいちの伝統野菜の選定を開始し、生産拡大や消費者の認知度向上を目的とした各種の取組を行っている。また、民間団体である、あいち在来種保存会では、あいちの伝統野菜を含む地域在来品種を栽培、収穫するとともに、それらの種子の継続と普及に取り組んでいる。
市町村、企業、家庭などへの働きかけとしては、県が2023年度から行うあいちの伝統野菜振興事業において、あいち在来種保存会の協力を得て、あいちの伝統野菜を紹介するウェブページの充実、パンフレットの作成を通じた情報発信を行うほか、市町村等の協力の下、初心者を含む栽培者講習会の開催などを行っている。
また、学生や飲食店、料理研究家などの協力を得て、家庭の食卓で伝統野菜を使用してもらえるようなレシピ開発も進めている。
県では引き続き、市町村、企業、家庭などと幅広い対象に向けた働きかけを行いながら、あいちの伝統野菜の振興にしっかり取り組んでいきたい。
【委員】
続いて、水稲有機農業に関する試験研究について伺う。
先日、農業総合試験場を視察し、水稲有機農業に関する試験研究として、本年度から化学合成農薬を用いない除草方法の開発に取り組んでいると聞いた。水稲の有機農業の技術開発、特に生産体制の構築に向けた農業総合試験場の取組内容について伺う。
【理事者】
水田有機農業省力化事業、今年度から開始した事業においては、農業総合試験場が開発した不耕起V溝直播栽培の特徴である省力性を生かして有機農業を行うため、労力のかかる除草作業の負担を軽減する栽培技術の開発を目指している。
この中で、農薬を使わない除草技術については、農業総合試験場が新しいアイデアや技術を持つ民間企業等と共同で除草機械の研究開発を進めている。さらに、農業総合試験場の水田において、省力的な管理による有機栽培の実証試験を行い、米の収穫量や品質、周辺環境に与える影響を調査するとともに、その経済性についても検証していく。
こうした取組により、有機米の生産技術の開発と実証を段階的に進め、より低コストで実効性のある生産体系の構築につなげていきたい。
【委員】
漁業者の所得向上について伺う。
先日、南知多町役場、漁協の組合長に話を聴いてきた。漁業は、農業以上に厳しい現実があると感じた。後継者不足をはじめ、資材価格の高騰、あるいは海水温の上昇により、魚が捕れなくなってるなど、栄養塩不足の話もあった。
都市部選出の議員として、春日井市は、海がないので、一体何ができるのかを聞いたところ、現代人は、魚を食べなくなっており、値段も肉よりも高く、子供も骨があるなどで食べない。母親が共働きになって、魚もあまり調理しなくなったというのも想像できるが、とにかく魚食文化をしっかり都市部のほうでも広めてほしいといわれた。
ポスターももらい、早速地元の自治体などに話をしたが、都市部の子供は魚がやはり好きである。ポスターなど渡すと、すごく喜んで絵を描くなどする。そういったところに県民の理解促進の鍵があると思う。
春日井市の学校給食のメニューでは、きちんと愛知の食材を取り入れているが、やはり、もっと生産地、生産者の顔が見えるような形で、都市部の政治家としても産地を応援していきたい。
漁業自体が魅力ある仕事にならないと人材の確保はできないと思う。テレビドラマを見ると、医者や弁護士ばかり扱われており、例えば、俳優が漁業をやるなど、何かそういうドラマが流行れば、また違うかもしれないが、とにかく漁業がもうかるものにしていく支援が必要かと思うのと、都市部の地域において、いかに県内の水産物や漁業への理解促進を図っていくのかという点について、県の所見を伺う。
【理事者】
一点目のもうかる漁業への支援について、愛知県では2021年3月に策定した愛知県漁業振興計画において、漁業者がもうかる経営体づくりを重点施策に位置づけ、養殖業の振興や漁業者の設備投資への支援などに取り組んでいる。
養殖業の振興について、漁業者の収入は、水産資源の状況に左右され、不安定なことが経営上の課題であることから、安定的、計画的な収入が期待できる養殖の導入を進めている。
具体的には、新たな技術を取り入れたカキ養殖やアサリ養殖の導入に向けた実証試験を漁業者と一緒に実施しており、来年度から各地区で本格的に導入される予定となっている。また、ノリ養殖については、魚や鳥による食害が増加しているので、漁業協同組合に対して漁場への侵入を防ぐ防除網の購入費用への補助を行っている。
次に、漁業者への設備投資の支援については、老朽化した漁船などを更新する際に、漁業者の負担が大きいことから、国と連携した新たな漁船の導入の補助などを行っている。
今後もこのような取組により、漁業者の所得が向上するよう、引き続き支援していく。
二点目の県産水産物や漁業への県民の理解促進の県の取組について、県では、県産水産物の消費を将来にわたって定着させるため、特に子供への啓発普及に力を入れて取り組んでいる。具体的には、小学校において水産業を学ぶ際の学習教材に利用してもらうよう、県産水産物や県内で行われている漁業を紹介するパンフレットや下敷きを作成しており、昨年度は県内の全小学校約1,000校の小学5年生児童約6万8,000人に配布した。配布先の小学校からは、児童の興味を広げ、学習を深めるのに役立ったとの声を聞いている。
また、漁業者が講師となり、本県の漁業について直接説明する出前授業を県内の小学校で開催しており、昨年度は県内20校、947人の児童を対象に実施した。児童は、漁業者の話を興味深く聞いており、漁業を身近に感じてもらう機会になったのではないか。
こうした取組を通じて、県産水産物や漁業への理解が深まるよう、引き続き努めていく。
【委員】
8月30日に農林水産省が発表した2024年産米の本年8月15日現在の作柄概況によると、青森県が良、東北地方などの11道府県がやや良となっているほか、最大産地の新潟県など31都府県が平均並み、佐賀、長崎、宮崎の3県はやや不良となっていた。
本県は平年並みとなっているが、今年もイネカメムシが発生しており、地元農家からは対応に苦慮しているという話を聞いた。日本農業新聞によると、今年は9月20日時点でイネカメムシの注意報が39府県に出ているとのことであった。また、昨年はイネカメムシが大量発生し、地域によってはイネカメムシの被害により収量が大きく減少したと聞いている。
そこで、今年のイネカメムシの発生状況及び県の対策について伺う。
【理事者】
イネカメムシはイネの出穂期、すなわち穂が出始めるその時期に集中的にもみを加害することから米が不稔となる、実らなくなってしまって収穫量の減少を引き起こす害虫であり、昨年は海部地域を中心に大変大きな被害があった。
本年の発生状況であるが、農業総合試験場が、いわゆるコシヒカリに代表される早生の出穂期直前の7月上旬に県内47地点、94の水田で実施した捕虫網、虫取り網で田んぼのすくい取り調査を行ったところ、イネカメムシを含めた斑点米カメムシ類の1水田当たりの平均の捕獲数、これは2.57頭であった。
この平均捕獲数であるが、平年は0.88頭、昨年は0.85頭と言われており、平年の2.9倍イネカメムシがおり、過去10年で最も多い状況であった。
昨年の大きな被害の要因としては、出穂期の防除が遅れて薬剤散布の適期を逃していたこと、散布した農薬が薬剤抵抗性により効きにくくなっていたことなどが考えられる。これを踏まえて、昨年被害が大きかった海部地域では、農業改良普及課がJAとイネカメムシ対策の作戦会議として意見交換会を開き、対策や指導方法について話合いを行った。また、農業改良普及課が作成した啓発資料をJAの広報誌に折り込み、全てのJA組合員に情報が行き渡るよう配布した。
また、従来からこの地域ではラジコンヘリによる共同防除が行われていたが、今年については、入念な防除計画を立て、適期を逃さないよう、7月は梅雨の晴れ間や8月は作業を行わないお盆期間中でも共同防除を行った。海部以外の地域でもイネカメムシに関する情報を講習会、JAの広報誌等を通じ、例年以上に積極的に発信して防除の徹底を図った。
これらの対策が功を奏し、昨年のような収穫量が大きく落ち込むようなイネカメムシの被害の発生は抑えられたと考えているが、今月末に本県の米の収穫が終了したところで、最終的な被害状況を見ながら防除対策を評価、検証して、さらなる防除の徹底に努めていく。
【委員】
農林水産省の資料によると、愛知県の2024年産米の8月末時点の、一等米であるが、この比率が33パーセントと、昨年同期を6.4パーセント下回って、少し低調な出だしという書きぶりであったが、収穫が終わった後、しっかりと検証していただきたい。
また、令和の米騒動と言われた今年の米不足の要因としては、昨年の猛暑の影響も要因の一つと言われている。今年の夏も昨年に引き続いて異常な暑さで、また暑い期間も長期にわたり、今日も沖縄より名古屋のほうが、気温が高いそうであるが、長期にわたっているので、地球温暖化の影響で今後もカメムシの被害や夏の暑さへの対応が重要になると思うので、県においては、引き続き、カメムシ対策や高温障害対策に取り組まれたい。
【委員】
先日の岡山県での県外調査で、ドローンによる生育状況分析や鳥獣被害調査のセンシング技術の活用のほか、水稲の種もみの播種に活用している取組を拝見した。
ドローンは、農薬や肥料の散布を省力的に行うスマート農業機械であると認識していたが、今回の県外調査で様々な活用方法があり、実際に現場で行われていることを知った。
そこで、本県におけるドローンの導入台数や用途などの実態について伺う。
【理事者】
農業総合試験場の普及戦略部及び農業改良普及課が昨年実施した実態調査によると、本県では170台のドローンが導入されている。部門別には、水田作で157台、農家数でいうと147戸になる。また、露地野菜では13戸の農家で13台が導入されている。
水田作の基幹経営体は358戸あるので、147戸というと、大規模な水田作の農家の41パーセントでドローンが導入されている。
ドローンの用途であるが、作業の省力化を目的として、多くは農薬散布に利用されている。最近では肥料散布への使用も始まりつつある。また、水稲種もみの湛水直播について、本県においても豊川市、田原市、東郷町などで試験が行われている。
さらには、省力化以外の用途として、生産性向上に向けたリモートセンシングの実証が行われている。これはドローンで撮影した圃場の画像を解析し、土壌や作物の生育などの状況を把握するものである。そして、それを基に適正な施肥や排水などの管理を行い、収量や品質の改善を目指す取組で、現在、豊田加茂地区、それから東三河地区において、普及戦略部と農業改良普及課が生産者やJA等関係機関と連携して、技術実証やコストなどの経済的な検証を行っている。
【委員】
さきの県外調査では、林業の取組も調査を行ったが、小型のドローンの性能も向上し、価格も下がり、操作性もよくなっており、解析にはフリーソフトの活用もできるとのことで、今後のドローンの可能性を感じた。
一方で、農業散布などに使う大型ドローンは数百万円程度と大変高価な機械であり、また、高度な操縦方法の習得も必要なことから、小規模な農家への普及はまだまだな気がした。小規模な農家では購入が難しいと思うので、実際、ドローンによる農薬散布などを業者委託していると聞いた。このような農家に対して、県としてドローンの利用をどのように推進していくのか。
【理事者】
生産者の高齢化や減少が進み、労働力不足が懸念されている本県の農業産地において、ドローンは省力化や作業の効率化の面で大変有用である一方、導入コストが高く、特に小規模農家では個々に導入した場合は経済的な負担が生じるとともに、効果的な運用ができない。
こうしたことから、ドローンなどの先端技術を使った大規模農家や作業の請負業者いわゆる農業支援サービス事業体による作業受託、共同利用、あるいはリースなどの方法で産地全体でまとまって導入を推進していくことが有効と考えている。
例えば、愛西市のレンコン産地であれば、JAあいち海部、JAあいち経済連、愛西市農業改良普及課を構成員としたレンコン産地協議会がドローンを活用した共同防除に取り組んでいる。農業改良普及課としては、補助事業を活用してドローンによる共同防除の取組について実証を行い、省力性や経済性を検証し、この結果を基に現在はレンコン産地協議会が請負業者にドローン防除の委託を行う体制が整っている。
県としては、国の補助金を活用した農業支援サービス事業体へのドローン等の導入と支援サービスを活用した地域、産地の仕組みづくりを支援するとともに、こういった取組事例を横展開して、ドローンの利用を推進していく。
【委員】
ドローンは、活用していく方向になると思うので、ドローンを実際に請け負っている企業、団体に補助するのはよく分かるが、実際に農家が依頼したときにコストが下がっているのか。私が聞いたのは、農家がそういったところに委託するときに補助金がもらえないかというような話も聞いたので、使うときに費用がある程度抑えられて、もうかる農業に少しでもシフトできるように取組をお願いしたい。
農業の省力技術として、地元では、担い手からも農家からも愛知県農業総合試験場で開発した不耕起V溝直播栽培が好評であった。直まきには鳥が大敵だが、種もみをまく溝の幅と深さが工夫されており、鳥のくちばしが入らないようになっているので大変喜んでいた。これからも農家の困り事を技術力で解決し、持続可能な農業の一助となるよう、生産技術の構築、スマート技術の推進をお願いしたい。