委員会情報
委員会審査状況
農林水産委員会
( 委 員 会 )
日 時 令和7年3月12日(水) 午後0時59分~
会 場 第2委員会室
出 席 者
桜井秀樹、横田たかし 正副委員長
久保田浩文、横井五六、中野治美、峰野 修、新海正春、杉浦哲也、
鈴木 純、鈴木まさと、安井伸治、しまぶくろ朝太郎、末永けい 各委員
農業水産局長、農林水産推進監、農業水産局技監、農政部長、
畜産振興監兼畜産課長、水産振興監、
農林基盤局長、同技監、農地部長、林務部長、関係各課長等
<付託案件等>
○ 議 案
第 1 号 令和7年度愛知県一般会計予算
第1条(歳入歳出予算)の内
歳 出
第6款 農林水産費
第10款 災害復旧費の内
第1項 農林水産施設災害復旧費
第2条(繰越明許費)の内
第6款 農林水産費
第3条(債務負担行為)の内
農業総合試験場施設設備改修工事
農業近代化資金貸付金利子補給
国家戦略特別区域農業保証融資に係る愛知県信用保証協会損失補償
畜産総合センター段戸山牧場施設設備改修工事
漁業近代化資金貸付金利子補給
かんがい排水事業神野新田地区管水路工事
農地環境整備事業つくば地区用排水路工事
農地環境整備事業下山地区用排水路工事(その1)
農地環境整備事業下山地区用排水路工事(その2)
農地環境整備事業大野瀬地区区画整理工事
農業水利施設保全対策事業愛知地区スペア資材備蓄倉庫整備工事
農業水利施設保全対策事業宇塚地区排水機場機械設備工事
農業水利施設保全対策事業一本松下地区排水機場機械設備工事
たん水防除事業小牧小木2期地区排水機場設置工事
たん水防除事業豊明東部2期地区排水機場撤去工事
たん水防除事業領内川右岸北部地区排水機場機械設備工事
たん水防除事業新下津地区排水機場撤去工事
たん水防除事業新岩倉地区排水機場設置工事
たん水防除事業新十三沖永地区排水機場設置工事
たん水防除事業新立田輪中地区樋管工事委託契約(国土交通省)
たん水防除事業室場南部地区排水機場設置工事
たん水防除事業高河原地区排水機場設置工事
たん水防除事業上郷2期地区排水機場撤去工事
たん水防除事業新高師地区排水機場撤去工事
たん水防除事業新梅薮地区排水機場機械設備工事
老朽ため池等整備事業大窯池地区ため池改修工事
用排水施設整備事業吉根地区堰改修工事
用排水施設整備事業丹羽排水地区調節池工事
用排水施設整備事業光堂地区堰改修工事
地盤沈下対策事業木曽川用水2期地区揚水機場機械設備工事
海岸整備事業鍋田地区海岸改修工事
海岸整備事業伊良湖樋門地区樋門工事
防災ダム事業雁狭間池地区ため池改修工事
防災ダム事業中池下池地区ため池改修工事
震災対策農業水利施設整備事業枝下用水地区用水路工事
排水施設保全対策事業福田川河口地区排水機場機械設備工事
緊急農地防災事業円楽寺地区排水機場設置工事
緊急農地防災事業三宅川左岸地区排水路工事(その1)
緊急農地防災事業三宅川左岸地区排水路工事(その2)
緊急農地防災事業須ケ脇第1地区排水機場撤去工事
緊急農地防災事業大海用地区排水機場機械設備工事
緊急農地防災事業福田川甚目寺地区排水機場機械設備工事
羽布ダム管理所始め3管理所利水施設管理補助業務委託契約
坂崎揚水機場機械設備工事
木曽川用水受託事業管水路工事(その1)
木曽川用水受託事業管水路工事(その2)
木曽川用水受託事業管水路工事(その3)
木曽川用水受託事業管水路工事(その4)
第 7 号 令和7年度愛知県就農支援資金特別会計予算
第 8 号 令和7年度愛知県沿岸漁業改善資金特別会計予算
第 9 号 令和7年度愛知県県有林野特別会計予算
第 10 号 令和7年度愛知県林業改善資金特別会計予算
第 50 号 県の行う土地改良事業に対する市町村の負担金について
第 51 号 県の行う農村総合環境整備事業に対する市町村の負担金について
第 52 号 県の行う林道事業に対する市町村の負担金について
(結 果)
全員一致をもって原案を可決すべきものと決した議案
第1号、第7号から第10号まで及び第50号から第52号まで
○ 閉会中継続調査申出案件
1 農林水産業の振興について
2 農地関係の調整及び土地改良について
3 緑化の推進について
4 農業水産局、農林基盤局、海区漁業調整委員会及び内水面漁場管理委員会の行政運営について
<会議の概要>
1 開 会
2 議案審査(8件)
(1)理事者の説明
(2)質 疑
(3)採 決
3 委員長報告の決定
4 一般質問
5 休 憩(午後2時51分)
6 再 開(午後3時5分)
7 閉会中継続調査申出案件の決定
8 閉 会
(主な質疑)
《議案関係》
【委員】
歳出、第6款農林水産費、第1項農業総務費のうち、農業改良普及事業費、農業後継者育成指導費及び女性農業者活躍支援事業費について伺う。
先日、旧知の稲作農家から、従来の農業政策では今後ますます廃業する農家が増えるため、愛知県としても抜本的な対策を進めてほしいとの意見を聴いた。私から見ると、子供が家業である稲作農家を継ぐことが既定路線で、経営的にも困っている様子は見受けられなかったが、新しい農機具の購入資金や人件費の上昇に伴い、経営状況の今後が見通せないとの話だった。
近年の予測以上の急速な少子化の進行は、今後生産年齢人口が減少し、労働力不足が深刻化することが見込まれる中、持続的発展が可能な社会を実現し、地域経済など様々な分野の発展を可能にするためには、これまで参画していなかった人材の社会参画が不可欠であると考える。
農林水産分野においては、ドローンやICTの活用によるスマート農業の推進等、省力化の取組が進められているが、今後、担い手不足の解消の取組を進めていかなければならないと考える。農家の平均年齢が69.2歳となっている現在、後継者の育成が喫緊の課題であり、新規就農者の育成を進める必要があると考える。また、女性が持つポテンシャルを最大限に発揮してもらうことが重要であり、これは今後の農業経営の維持、安定化にも寄与することである。
農林水産分野関係では、あいち農山漁村男女共同参画プラン2025が策定、公表されており、家族経営協定の締結推進や経営参画の促進のほか、女性リーダーの育成として農村生活アドバイザーの認定など特色ある取組が進められてきたと認識している。また、令和7年度には次期プランの策定が行われることと認識している。
そこで、今後も農林水産業の振興や農山村地域の維持・発展のためには、後継者の育成及び女性の活躍を支援していく取組を積極的に推進していく必要があると考えるが、令和7年度にはどのような取組が行われるのか伺う。
【理事者】
農業後継者育成指導費及び女性農業者活躍支援事業費に関する令和7年度の取組についての質問だが、本県では食と緑の基本計画2025において、新規就農者を5年間で1,000人確保することを目標としている。農業大学校に設置した農起業支援ステーション及び県内8か所に設置した農起業支援センターにおいて、農業後継者や新規参入者からの就農相談や就農後のフォローアップ等に対応している。
令和7年度も引き続き、農起業支援ステーション等による相談対応や県内外の就農相談会への出展等を通じて、新規就農を支援していきたい。
また、今年度、DX推進室と連携して、民間企業等のノウハウやICTを活用して行政課題の解決を図るアイチクロステックにおいて就農相談のデジタル化に向けた実証実験を行った。来年度は、農業後継者育成指導費において実装するコンテンツの開発等を進める予定である。同じく来年度から整備していく予定の就業支援プラットフォームと連携して、農業後継者等担い手の確保、育成に取り組んでいく。
次に、女性農業者の活躍支援については、本県では、2020年度にあいち農山漁村男女共同参画プラン2025を策定し、家族経営協定締結数や農村生活アドバイザー認定数、農業法人等における女性役員の割合等を目標として掲げ、女性農業者の経営参画、社会参画の推進に取り組んでいる。
来年度もプランに基づき、若手の女性農業者等を対象としたセミナーやリーダー育成研修会を開催し、女性農業者が経営参画、社会参画に必要な知識、技術の習得や活躍できる機会、場の設定を支援していきたい。
また、来年度は、委員が示したとおり次期プランを策定する予定である。プラン策定に当たっては、ワーキンググループや学識経験者、農林漁業団体等を構成員とした女性の活躍促進連携会議を開催し、男女の枠にとらわれず、女性、男性それぞれの視点を生かし、一人一人が個性と能力を発揮できる地域社会の実現に向けてプランの策定を目指していきたい。
【委員】
理解しづらいところがあるので、もう一度詳しく教えてほしいが、県のDX推進室から農業水産局に移るのか。
【理事者】
県のDX推進室が全庁的に行政課題を募集し、それに対して民間のノウハウやICTを活用して課題解決を図る事業を実施しており、今年度、農起業支援ステーションの就農相談をデジタル化することで応募し、実証実験を行った。今年度はDX推進室が主体として進めていたものを、来年度は、それを実装するために、農業水産局で予算化して進めていく。
《一般質問》
【委員】
私からは、あいち農業イノベーションプロジェクト、特に環境面から見た農業イノベーションについて伺う。私はもともと環境系のNPO活動を行っていたため、その視点から伺う。
先日の農林水産委員会県内調査では、ウナギの陸上養殖を見学した。魚は古来日本人のたんぱく質の摂取源であった。しかし、現在漁業は危機的な状況にあると考える。捕獲漁業生産量の推移を見ると、最も多かった1984年の1,160万トンが2020年には約300万トン弱と約75パーセント減少している。
捕獲漁業生産量の減少という危機だけでなく、魚が体内に蓄積するマイクロプラスチックにより、妊婦が魚を食べないように言われるなど、水銀などの海洋汚染による人体への悪影響も危機的状況にあると考える。海洋汚染の状況を考えると、湧き水や温泉などを使った陸上養殖の技術が非常に重要であると考える。
また、先日沖縄県のEFポリマー株式会社を視察した。この会社は、沖縄科学技術大学院大学というアジアでもトップクラスの大学内にあるスタートアップ企業である。
EFポリマー株式会社の創業者、インド人のナラヤン・ラル・ガルジャール氏は、インドの乾燥地帯にある農村で農業を営む両親を助けたいという思いから、100パーセントオーガニックの超吸水性ポリマーであるEFポリマーを開発した。
このEFポリマーは、オレンジの皮などの果物の不可食部分をアップサイクルして作られた自然由来の超吸水性ポリマーで、自重の約50倍の水を吸収することができる。土に混ぜると土壌の吸水力が向上し、節水と肥料の使用量の削減につながる。このポリマーは完全生分解性を持ち、農地に適用すると約6か月効果が持続し、約12か月後には完全に土に返る。地球温暖化や砂漠化に対応する重要な技術であると考える。
愛知県農業総合試験場や愛知県水産試験場での研究において、地球の環境変化に対応する研究、技術は非常に重要である。また、今議会に提案されているあいち農業イノベーションプロジェクトにおいても、環境変化に対応するプロジェクトが非常に大切であると考える。
そこで、あいち農業イノベーションプロジェクトにおいて技術提案を採択する場合、環境問題に対応するプロジェクト課題に対する考えを伺う。
【理事者】
農業分野において、担い手の減少や高齢化といった従来からの課題に加え、気候変動やカーボンニュートラルといった環境問題は解決すべき重要な課題であると考える。
あいち農業イノベーションプロジェクトでは、愛知県農業総合試験場とスタートアップ等との共同研究開発により、こうした課題への迅速な対応と技術開発を目指している。
来年度に予定している新たな技術提案の公募においても、これらの環境課題を含め、農業の課題解決につながる技術、アイデアを持ったスタートアップ等を公募し、共同研究開発により新技術の開発、ひいてはイノベーションの創出につなげていきたい。
【委員】
農林水産業は、水、空気、土が健全な状態であることが第一であると考える。12月定例議会の委員会でも質問したスタートアップ企業の知恵や、農業者の知恵を借りながら、愛知県はもとより、日本、世界全体の農林水産業の発展につながるイノベーションを採択し、伸ばしてほしい。
【委員】
農業関係1件と水産業関係2件の質問をする。
まず、愛知県の農業経営体の法人化の推進について伺う。
本県の農業は全国でも有数な農業産出額を誇り、特に施設園芸や花卉、畜産など多様な農業が盛んな地域である。しかし、近年、農業従事者の高齢化や農家数の減少が進行し、新たな担い手の確保が重要な課題となっている。本県の農業の発展には、新規就農者の確保と定着、育成が必要であると考える。
本県の新規就農者数を見ると、2023年度の愛知県における44歳以下の新規就農者数は148人で、その内訳は、新規学卒就農者9人、Uターン青年59人、新規参入者80人である。これらの新規就農者を確保するために、本県では各農業改良普及課の農起業支援センターや農業大学校の農起業支援ステーションにおいて新規就農者の支援に取り組んでいる。
新規就農者の中には雇用就農を望む者もおり、このような者の受皿として農業法人が重要な役割を果たすと考える。
私の地元碧南市では、農業経営を法人化し六次産業化や農福連携、規模拡大など、経営を多角化、高度化し、雇用を活用した企業的な経営で経営基盤を強化し、産地を活性化している。しかし、このような農業法人は全体の農業経営体に占める割合は依然として低く、もっと増えてもよいと考える。本県の法人化の推進は他県と比較して進んでいる部分もあるが、今後一層の推進が必要であると考える。
そこで伺う。農業産出額の拡大や農業経営の維持、発展のために農業経営の法人化が重要であると考えるが、まず本県の農業経営の法人化の現状について伺う。
次に、法人化を推進するに当たってのこれまでの県の対応状況と今後の取組について伺う。
【理事者】
愛知県の農業経営の法人化の現状について、農業法人には、社会的な信用性、農業経営と家計の分離による経営の合理化、経営継承の円滑化、魅力ある職場づくりなど様々なメリットがあるため、県は一定規模以上の農家に対して農業経営の法人化を推進している。
本県における2024年7月現在の農業法人数は887経営体である。2019年には745経営体であったが、5年間で142の法人が増加した。現在の887経営体を部門別に見ると、野菜部門が最も多く、283経営体で全体の31.9パーセントを占めている。次いで畜産部門が230経営体、水田作部門が145経営体の順である。地域別には、尾張地域が34.5パーセント、西三河地域が21.8パーセント、東三河地域が43.7パーセントを占めており、尾張や東三河地域では野菜部門が、西三河地域では水田作が多いのが特色である。
次に、これまでの県の対応状況と今後の取組について、県では、農業経営・就農支援センターを設置し、農業改良普及課を窓口として、法人化を希望する経営体に対して個別に相談対応を行っている。法人化については、税務や会社経営に関する専門的な知識が必要なため、税理士や中小企業診断士など専門家とともに対応している。この3年で45件の法人化の相談があり、このうち法人化の見通しが立った経営体に対しては専門家を派遣し、2経営体が法人を設立した。また、農業大学校ではあいち農業経営塾を開講し、各農業改良普及課でも農業経営の改善に意欲的な経営体を対象とした研修会を開催して法人化を進めている。
さらに、既存の農業法人に対しては、資金融資の支援、認定農業者制度における農業経営改善計画の作成支援、スマート農業やICTを活用した効率的な労働管理手法の検討など、高度な技術と経営の改善を進めている。
今後の取組としては、意欲ある農業者がさらなる経営発展を図るために法人化を推進する必要があると考える。引き続き、農業経営に関する研修会や専門家の派遣などにより法人化を進めていく。
【委員】
現状として法人化の経営体が増加している状況で、それに対する農業法人への相談業務などを引き続き行っているとのことである。一定規模の農家に対して法人化を進めることは当然だが、担い手確保や農業経営の持続のためには、個人経営よりも法人化が望ましいと考える。今後もある程度の規模の農家には農業法人化を進めるよう取り組んでいきたい。
次に、水産業振興に関する栽培漁業センター施設設備整備について伺う。
本県水産業の総生産量は全国的に中位程度であるが、小型底びき網漁業や船びき網漁業などにより全国上位の生産量を上げている魚種も多く、特色ある水産業が営まれている。
近年、全国的に水産資源の変動が大きく、安定した漁獲量を確保することが難しく、漁獲量は減少傾向にある。こうした状況は本県の沿岸漁業でも同様であり、漁業者の経営を不安定にしている。
水産資源の変動は温暖化などの環境変動によるものであり、水産業は自然が相手であるため、自然に逆らうことは困難である。しかし、水産業を成り立たせるためには水産資源の維持、増大により漁獲量を確保し、安定させる必要がある。
県では、2021年3月に策定した愛知県漁業振興計画において、ダムや河川に堆積した砂を活用した干潟・浅場の造成や資源管理、魚介類の稚魚を放流して漁獲する栽培漁業、栄養塩対策などを進めている。この中でも栽培漁業が重要であると考える。
本県水産業を将来に向けて発展させるためには、栽培漁業により水産資源の増大を図ることが必要不可欠である。近年の漁場環境の変化による水産資源の変動を考慮し、生産する魚種や数量の見直しを行うなど、栽培漁業の強化が必要であると考える。
そこで伺う。栽培漁業センターの施設設備整備として新たな生産棟を建設中であるが、この施設で今後どのような取組を具体的に行うのか。
【理事者】
栽培漁業センターの新たな生産棟については、昨年度に実施計画を行い、今年度から建設を開始している。施設の規模は、延べ床面積583平方メートル、木造平家建てで、竣工時期は2026年1月を予定している。
この新生産棟では、漁業者からの要望が強く、新たな貝類資源として期待されるハマグリ、高級なすしネタとして知られるミルクイの種苗生産を新たに開始する。また、ワカメ養殖に用いる種苗の生産にも取り組む。さらに、漁獲が少ない冬季の貴重な漁獲対象であるナマコの種苗を増産する。
新生産棟での種苗生産は、来年度中に準備に取りかかり、新棟完成後の2026年度から本格的に実施する計画である。
今後も漁業者のニーズに応えながら、水産資源を増やす栽培漁業の強化に取り組んでいく。
【委員】
現在建設中で2026年1月に完成予定であり、ナマコやハマグリなど様々な魚種を栽培していくとのことである。漁業者の期待に応え、漁獲量を増やす栽培漁業の取組を進めてほしい。
次に、愛知県漁業振興計画における栄養塩対策について伺う。
寒い冬が終わり、春が近づいているが、これからの季節、愛知県の特産品であるアサリが旬を迎える。アサリは20年連続で漁獲量全国1位であるが、2014年頃から資源の減少が著しく、漁獲量は最盛期の1割から2割程度にとどまっている。その要因は海の栄養塩量低下による餌不足の影響があると指摘されている。また、ノリ養殖においても栄養塩量の低下による色落ちが深刻であり、漁業現場で大きな問題となっている。
漁業者からは、水質規制が進み、海がきれいになり過ぎたとの声が多く上がっている。そのため、本県では2022年度から2年間、三河湾の矢作川浄化センターと豊川浄化センターで、放流水中の窒素とリンの濃度を国の基準まで緩和して放流し、漁業への効果を調査する社会実験を実施した。その結果、環境への悪影響は見られず、ノリやアサリへの効果が確認された。
そこで伺う。今回の社会実験を踏まえ、漁業生産に必要な栄養塩を確保するために今後どのように取り組むのか。
【理事者】
今後の栄養塩確保の取組について、県では、社会実験の効果の検証と漁業生産に必要な望ましい栄養塩管理の在り方を検討するために、学識経験者、漁業者、国、県及び市町で構成する愛知県栄養塩管理検討会議を設置し、本年2月に検討結果を報告書に取りまとめた。
報告書では、漁業生産に必要な栄養塩濃度を、窒素は1リットル当たり0.4ミリグラム以上、リンは1リットル当たり0.04ミリグラム以上とし、その実現に必要な四つの方策を示している。
一つ目は、矢作川及び豊川浄化センターにおける栄養塩の増加運転の継続であり、まずは2027年度までの実施が決定しており、今年度も実施している。
二つ目は、増加運転の実施箇所や運転期間の拡大、さらには増加運転の恒常的な実施を可能とするための水質環境基準における類型指定や総量削減計画の見直しである。
三つ目は、増加した栄養塩を漁業生産につなげるための干潟・浅場造成等の推進である。
四つ目は、環境への影響や漁業の状況を踏まえて順応的に栄養塩管理を実施していくことである。
今後は、今回取りまとめた報告書の内容の実現に向けて関係機関と連携し、しっかりと取り組んでいく。
【委員】
栄養塩のこれまでの取組や今後の方向性を示してもらった。
水産業は、現在、水産資源が取れない状況にある。そのような中で、栽培漁業と栄養塩の管理について質問した。漁業者は、農業とは異なり、海の中で見えない部分で漁獲を行う難しい面がある。重油の高騰や漁獲量の不確実性の中で経費もかかっている。水産の漁獲量を上げるための取組が必要であり、漁業者の担い手が減少するスピードは農業者よりも速い。そのため、漁獲量を確保できるような水産資源の充実に向けてしっかり取り組んでもらいたい。
【委員】
委員から質問があった水産業の関連で伺う。三河湾の話は理解したが、伊勢湾についてはどう考えているのか。また、関係機関には環境局も含まれていると思うが、その対応についてどう考えるのか。
【理事者】
伊勢湾については、現在、県の日光川下流浄化センターと東海市、知多市、常滑市で、県の規制基準の範囲内でリンの増加運転を行っている。次の第10次総量削減計画が2027年に策定される予定であり、その中で伊勢湾も検討対象に入っている。
環境局や関係機関については、国の環境省や県の環境局、上下水道課、浄化センター、市町などと調整が必要である。関係機関とはそのようなところを指す。
【委員】
ノリの色落ちについては、九州でも大変な問題となっている。愛知県のノリは昨年、一番色落ちが少なく、三河湾のノリが黒かったため、高い値段で取引されたと聞いている。全国的な問題であり、漁業者の廃業も大変多い。できるだけ早く、環境局と愛知県がしっかりと取り組むよう要望する。
【委員】
ナスに関して二点質問する。
岡崎市や幸田町はナス生産が古くから盛んであり、昭和30年頃から施設栽培が始まり、昭和40年代にはハウス団地が整備されて本格的に普及している。現在では農業生産工程管理(GAP)への取組が行われ、品質向上と環境保全に努めている。県が育成したとげなし輝楽などの新たな品種の導入も進んでいる。
産地を維持するために、あいち三河農業協同組合が新規就農者育成の取組を進めており、令和元年度からいちご塾が開講され、15人の卒業生がハウスリースを活用して就農している。令和4年からはなす塾も開講され、農業大学校での研修やベテラン農家での実習が行われ、来年度3人も含めて8人の研修生を育成している。
この地域は県内屈指のナス産地であり、品質の向上が進められている。県の農業改良普及課からの技術指導や部会運営の助言指導が行われているが、最近、ベテランのナス生産者から普及指導員の巡回が少なくなったとの声が聞かれている。
県では2021年に機構改革を行い、県全域の普及指導機関として農業総合試験場普及戦略部の普及指導員を増員し強化した。普及指導員の役割は非常に重要であり、新規就農者にとって力強い存在である。
最近は普及指導員が現場指導に来なくなったとの農家の声に対して、今後どのように改善するのか。
【理事者】
普及指導員は、県内8か所の農業改良普及課に186人、農業総合試験場の普及戦略部に22人、合計208人を配置している。農業改良普及課では、現場での巡回指導、農家や新規就農者の相談対応、新たな技術の実証や展示、生産部会の研究会や講習会への対応などにより、直接農業者に接して生産技術や経営の改善、地域の特性に合わせた産地の育成や地域振興に取り組んでいる。
委員が言うように、普及指導員が現場に来なくなったとの農家の声を受け止め、普及指導員の、農家の困りごとを拾い上げて解決するといった意識を高め、農家から頻繁に現場活動を行っていると言われるよう進めていく。
2021年に普及指導の機能強化を図るため、農業総合試験場に普及戦略部を設置した。ベテランの普及指導員を集め、県全域を対象にスマート農業などの新技術や農業法人の企業経営など高度な指導を行う体制を整え、指導力の底上げを図っている。経験の少ない若手普及指導員や高度な指導が必要な産地には一緒に現場に出向き、農家指導に当たっている。
今後、普及指導員にはこれまで以上に高度な指導力が求められるため、体制を一層進めていく。
【委員】
普及指導員が回ってこないとの農家の声に対して、頻繁に回り、農家と直接会って指導を行う体制を整えてほしい。
次に、当地域のナス栽培についてである。当地域では、食用ナスのとげなし輝楽や漬物用の千両が生産されている。千両ナスは軟らかい果肉と歯切れの良さが評価されており、漬物事業者に出荷されている。
漬物は日本の伝統的な発酵食品であり、ビタミンB1を多く摂取でき、乳酸菌も摂取できる。また、生で野菜を食べるよりも多くの量を摂取できる効果がある。愛知県は野菜の生産が盛んであるが、県民1人当たりの野菜摂取量は目標の350グラムを下回っている。手軽に食べられる漬物は重要な食品であると考える。
本県には、県内の漬物製造業者等による公益社団法人愛知県漬物協会があるが、どのような活動を行っているのか。
【理事者】
公益社団法人愛知県漬物協会は、県内で漬物の生産、販売もしくは関連資材の製造、販売を行っている51の事業者が会員となっており、漬物業界では全国で唯一、公益法人として活動する団体である。知事が名誉会長を務めている。
協会の事業の一つに漬物を通じた食文化の振興と食育があり、愛知県の伝統野菜である守口大根の採種事業、ぬか漬け体験教室や漬物に関する出張授業の実施、工場見学の受け入れ等を行っている。
また、漬物生産における技術研究会の開催や、会員から漬物の寄付品を集め、愛知県社会福祉協議会と連携して子ども食堂へ漬物の寄付を行うなどのチャリティー事業も行っている。さらに、県が設立した愛知「発酵食文化」振興協議会の構成員として、発酵食文化の振興にも協力している。
【委員】
公益社団法人愛知県漬物協会は、県が設立した愛知「発酵食文化」振興協議会の構成員として発酵食文化のPRにも関わっており、漬物への理解や消費拡大に向けた取組を行っている。県としてはどのような支援を行っているのか。
【理事者】
現在、漬物協会の事務局を園芸農産課内に設置しており、県職員が兼職により協会の運営や事務の補助を行っている。また、愛知の野菜や漬物の魅力を発信するため、漬物協会と協力して野菜の収穫体験や漬物講習会も行っている。県が主催するあいちの農林水産フェアへ漬物協会が出店し、愛知県産の野菜を使った漬物の販売も行っている。
県としては、今後も協会の運営に対する継続的な支援を行い、漬物協会と連携して漬物及び県産の野菜の消費拡大に努めていく。
【委員】
本県は漬物出荷額が全国第5位であり、漬物産業が盛んである。公益社団法人愛知県漬物協会は地産地消や食育活動にも積極的であり、県が新たに取り組んでいる愛知「発酵食文化」振興協議会の取組にも協力している。県産農産物の消費拡大や地域経済の活性化にも尽力しているため、協会の活動に対して県の関係部局等と連携し、支援を行うことを要望して質問を終える。
【委員】
大きく四つの分野で質問する。
まず、米の価格安定について伺う。これについては、一言で言うとマネーゲームに巻き込まれないよう、しっかり生産能力を着実に上げていくことが今できることだと考える。
私の調べでは、実需の不足で価格が上がっていると思っていたが、いろいろな背景を見ていると、少し違う感覚を持っている。マクロの要因でいうと国際情勢、ウクライナ騒動が始まってから、西洋側、日本も含めてだが、ロシアに経済制裁を科し、逆にロシアが小麦などの生産能力を持ち、ヨーロッパ側に供給を制限したことによって、日本も含めて西側諸国は価格が上がり、消費者物価が上がっている。一方で、ロシアはスターバックスなどが撤退して逆に好景気になっている状況である。ロンドンシティも西洋とブリックスの両方に金融で資金を出しているため、戦争させて軍産複合体がもうかる構図になっている。
昨年8月、令和の米騒動が起きた。このときに政府やメディアが言っていたのは、天候不順や南海トラフ地震の不安、インバウンドが戻ってきているからという理由であるが、これらの理由は取ってつけたようなものである。インバウンドの人たちが来たくらいで米の価格が上がるなら、日本の米事情が大丈夫かという話になる。
8月に大阪の株式会社堂島取引所が米の先物市場の取引を開始した。これは先物というよりも指数先物で、米の現物の受渡しを伴わない金融商品である。上場したら令和の米騒動でメディアが騒いでストップ高をつけた。
エネルギーや食に関するこのようなことに関して、マネーゲームになっており、それに巻き込まれないことが大切であり、日本人の世論を利用してもうけている人たちがいると思わざるを得ない。実勢価格が持っていかれているため、転売屋が現れている。
先般、国が備蓄米を放出することを発表した。21万トンであり、これも今月末くらいから出ると聞いているが、参議院選挙対策ではないかと思わざるを得ない。政府がこのようなことをすると、価格安定を目指しているが、政府が追い込まれていると見る人もいるため、転売などが起きるリスクもある。
実際に農家に直接買い付けに来ているブローカーもいるとの話も県民から入っている。短期的には純粋な需給の問題ではないと感じるが、中長期的には新規就農者を含めて担い手を育成し、生産能力を上げる必要があると考える。
台湾有事が起きるとの話もある。政府の背後にいる日米合同委員会やメディアが、そういったスケジュール感で動いているとの話がある。
私はその実情を確かめに石垣島に行き、関係者に話を聞いたが、日本のメディアが不安をあおっているだけという状況もある。しかし、金融筋が動いているため、シーレーンが止まることもある。
自分たちで自給率を高めることができれば心配することはないため、米の生産量を増加させる観点で、令和7年産の県内の米の生産量についてどのように考えているのか。
【理事者】
県では、需要に応じた米の生産を推進している。このため、県と農業団体で構成する愛知県農業再生協議会が、毎年、翌年の米の生産数量目標の目安を設定し、各地域に示している。 令和7年産の米の生産数量目標の目安は13万2,464トン、面積換算で2万6,532ヘクタールとし、令和6年産に比べて5,354トン、面積換算で1,258ヘクタールの増加とした。これは、令和6年6月末の愛知県産米の在庫が2万927トンと、昨年より5,000トン、約2割減少したため、愛知県産の米を年間を通じて安定的に供給するために目安を増加させたものである。 県としては、主食用米の生産の増加を目指すとともに、水田を有効活用できる稲、麦、大豆の2年3作体制のブロックローテーションについて引き続き推進し、需要に応じた米の生産と価格の安定を推進していく。
【委員】
続いて、先ほど話した国の備蓄米の売渡し、放出について、その内容と影響についてどのように把握しているのか伺う。
【理事者】
政府備蓄米の売渡しの内容について、まず売渡しの対象者は年間の玄米の仕入量が5,000万トン以上(後刻訂正)の集荷業者であり、全国89事業者あると聞いている。その中で卸売事業者等への販売計画、契約を有する者となっている。売渡量は全体で21万トン、3月10日から12日にかけて第1回目の入札が行われ、15万トンが売り渡される予定であり、原則として売渡しから1年以内に買戻しされることになっている。 売り渡された政府備蓄米は、3月下旬頃にはスーパー等で販売されることが見込まれている。また、国は必要に応じて備蓄米の放出拡大を検討しており、米の流通量が増加するとともに投機目的で在庫を抱えている業者が米を販売するきっかけになることから、米価は安定することが期待されている。
【委員】
三つ目の質問として、台湾有事などに関しては、軍産複合体の言っていることを進めようとする勢力がいる。国外だけでなく、国内にもいる。このため、あらかじめ動いていかなければならない。 さきに食料供給困難事態対策法が通ったが、これはナンセンスな話であり、自分たちで食料自給率を高めていれば食料供給困難事態は起きない。このタイミングで法律を通すことも茶番劇の一幕だと感じざるを得ない。 愛知県には、田原藩の渡辺崋山が報民倉を設置した事例がある。渡辺崋山は、天保時代に全国的に飢饉が起こった状況を見越して食料を蓄える倉庫を田原藩で造ることを上申し、領民と一緒に建設し、天保6年に完成した。翌年、大飢饉が全国で起きたが、報民倉から米を供給して一人の餓死者も出さなかった。この事例を見習うべきだと考える。 70代を中心とした生産者が80代になり、辞めていく状況の中で、公共が生産者から米を適正な価格で買い取り、備蓄することが安全保障にもなり、生産者への応援にもなる。消費者も物価高で苦しんでおり、子ども食堂も米を確保したいという声がある。愛知県で独自の報民倉を設置することについて所見を伺う。
【理事者】
先ほどの答弁で一部誤りがあったため訂正する。政府の売渡しの対象者について、5,000万トン以上と答弁したが、正しくは5,000トン以上である。
備蓄の関係だが、従来、政府備蓄米は10年に1度の不作や災害が発生した場合に放出し、米価の価格調整には対応しない方針であった。今回、米の販売価格の高騰により、買戻しが条件となっているが、備蓄米を放出する方針に転換された。
政府備蓄米による米の流通、価格の安定を図る制度が新たに構築された。また、名古屋港のエリアに政府備蓄米の倉庫があるため、本県は備蓄米の供給を受けやすい地域である。現時点で県として米の備蓄を行う考えはない。
【委員】
近くに備蓄米があることは説明されたが、愛知県独自で令和版の報民倉を建設することを強く要望する。
次の質問に移る。野菜の消費拡大についてである。
県民から、愛知県は野菜の産出額が全国第5位の農業県にもかかわらず、野菜の摂取量が全国で最下位であると聞いた。
私もこの報道がされていたことは知らなかったが、要因と、最近物価高で野菜に手が伸びない状況もある中で、本県産の野菜の消費拡大に向けた取組について伺う。
【理事者】
野菜の摂取量について、野菜摂取量が男女ともに全国最下位であることは、厚生労働省が発表した2012年国民健康・栄養調査の結果によるものである。最新値は2018年に発表された2016年の国民健康・栄養調査で、本県の野菜摂取量は、男性は最下位、女性は下位グループである。
調査を所管する保健医療局の健康対策課によると、他県と比べて下回っている要因は特定できないが、2022年に健康対策課が独自に実施した生活習慣に関連する調査では、野菜料理を毎日食べない理由として、用意するのに手間や時間がかかるとの回答が多かった。
【理事者】
野菜の消費拡大に向けた取組について、食の多様化や簡便化が一層進む中、県では県産野菜の消費拡大を促進する取組として、今年度初めてレシピ動画を作成した。具体的には、県の特産品であるレンコンとオオバを用い、手軽に調理できるレンコンとオオバのつくねのレシピを出回り時期に合わせて県内小売店59店舗の青果売場で放映した。この動画を視聴することで、消費者が野菜への親しみや理解を深め、購買行動に移し、消費拡大につなげる取組である。日頃あまりレンコンを利用しない消費者からは、レシピを参考に調理してみたいとの反応があった。
また、県民に対して県産野菜を含む農林水産物を紹介し、その魅力を伝えるため、あいちの農林水産フェアを例年実施している。今年度は、昨年の11月9日、10日の2日間、金山総合駅連絡通路橋のイベント広場で開催し、ブロッコリー、ハクサイ、ダイコンなど、季節の野菜を農業者が直接消費者に販売するための支援を行った。このような取組により、本県産の野菜の消費拡大を進めていく。
【委員】
農産物の価格転嫁も課題であるが、県民がもっと野菜を食べれば産出額も上がり、県内の生産者の応援にもなる。野菜の摂取量が最下位というのは問題であり、ぜひ改善してほしい。
次に、農産物の流通販路拡大に対する支援について伺う。
最近、生産者も新規就農の意欲がある人が多く、独自で販売したいとの声も聞かれる。流通と販路拡大が課題となっており、生産者は生産に集中せざるを得ないため、流通や販路拡大のノウハウを持ち合わせていないことが多い。県の支援について所見を伺う。
【理事者】
農産物の流通について、農産物を販売する上での流通形態は、農業者が農業協同組合(JA)の集荷場、最寄りの卸売市場や直売所に自ら運搬するのが一般的である。新鮮な農産物を小売店や飲食店に直接届ける民間サービスが複数登場している。
県では、2023年度に民間サービスの一つであるやさいバスを活用し実証試験を行い、その結果を情報提供している。実証では、農産物を効果的に集荷するポイントを設置し、東三河地域と知多地域でルートを設計し、共同配送のトラックを運行させて採算性を検証した。実証後は、安定した農産物の取引量が確保された東三河地域のルートで継続運行している。
販路拡大については、中部地区で初めて開催された食の商談展示会、フードスタイルにおいて県ブースを設置し、農業者に商談やPRの場を無償で提供した。出展者からは好評であり、来年度も展示会に出展して農業者の販路拡大を支援していく。
【委員】
農業者の経営自立を促すために、流通と販路拡大は重要である。しっかりとした支援を期待する。
最後の質問として、農業、漁業の金融制度について伺う。
先日、テックガラジャパンというイベントがあり、そこで特徴的だと思ったのが、地元の金融機関や都市銀行が一次産業に力を入れ、関心を持っていることが分かった。現状、農業者や漁業者向けの金融制度としてどのようなものがあるのか、近年の利用状況と傾向について伺う。
【理事者】
農業者に対する金融制度として、農業用機械や施設の取得に必要な設備資金として農業近代化資金がある。株式会社日本政策金融公庫による資金として、農業経営基盤強化資金(スーパーL資金)、認定新規就農者を対象とした青年等就農資金、六次産業化法認定者等を対象とした農業改良資金、災害等の影響を受けた際の経営維持に利用できる農林漁業セーフティネット資金等がある。
これらの資金は、JAだけでなく、地方銀行や信用金庫、一部の都市銀行も取扱窓口となっており、農業者がふだん取引のある金融機関等で使途に応じた資金を借り入れられるようになっている。
近年の利用状況としては、農業近代化資金の貸付けは、コロナ禍の影響で2019年度以降急減したが、2020年度以降は回復傾向にある。長期的には担い手の減少や資金の多様化等の影響を受けて減少傾向にあり、2023年度の農業近代化資金の貸付額は約9億3,000万円であり、20年前の2003年度の貸付額約20億8,000万円と比較して55.2パーセント減少している。
【理事者】
漁業者に対する金融制度について、漁船や施設等の取得に必要な設備資金として低利で融資を受けることができる漁業近代化資金、小規模な沿岸漁業者等や新規に漁業を開始する人を対象とした沿岸漁業改善資金、燃料費や原材料仕入費などの短期運転資金として融資を受けることができる漁業振興資金がある。こうした資金は、海沿いの遠隔地域にある漁村に金融機関が少ないため、漁業協同組合系統の金融機関が主に取り扱っている。
近年の利用状況については、漁業者に多く利用されている漁業近代化資金の貸付額はコロナ禍の影響で一時的に減少したが、2022年度以降は回復傾向にある。長期的には担い手の減少等の影響を受けて減少傾向にあり、2023年度の漁業近代化資金の貸付額は約8億円であり、20年前の2003年度の貸付額約10億2,000万円と比較して約22パーセント減少している。
【委員】
長期的には貸付額が減少傾向にあることが分かった。最近の事業者や経営者の声を聞くと、一次産業に関心を持つ経営者が増えてきた。担い手の入れ替わり時期でもあり、一次産業はビジネスチャンスにもなる。設備投資などを含めて、民間の金融機関にも一次産業の状況を理解してもらい、融資を進める流れをつくる必要があると考える。
そこで、金融制度を活用してもらうために県として今後どのように取り組んでいくのか伺う。
【理事者】
今後、農業の安定的な発展に向けては、農業機械や施設等現場への投資が重要であり、県としては引き続き農業者等に適切な農業制度資金を周知、活用してもらいたい。
県では、各農業改良普及課や新規就農希望者の相談窓口である農起業支援ステーション等において融資に関する相談があった際には、使途や借入期間等に応じて最も適切な資金を提案するとともに、経営改善資金計画書等、借入に必要な書類の作成を支援している。また、農業近代化資金を融資したJAやその他民間の金融機関に対して利子補給を行い、農業者負担の低減を図っている。
今後も引き続きJAや民間の金融機関等と連携して、農業者の経営安定、改善や規模拡大等を支援していく。
【理事者】
漁業の今後の取組について、漁業経営の安定化に向けて漁業者が漁船や施設等の整備に必要な融資を受けることができるように、県として引き続き市町や漁業協同組合を通じて漁業制度資金を周知し、今後も活用してもらいたい。また、県では各農林水産事務所に金融担当を配置し、漁業者からの融資に関する相談に対応している。
なお、漁業近代化資金を融資した金融機関に対しては、県から利子補給を行い、漁業者負担の軽減を図っている。
今後も、引き続き漁業協同組合系統の金融機関等と連携し、漁業者の経営安定、経営改善等を支援していく。
【委員】
今、米の価格安定という中で、スーパーに5キログラムで4,500円や5,000円の米が並んでいるが、これは一等米である。農家から言わせると、一等米、二等米、三等米、そしてそれ以外の米があり、田んぼに苗を植えて収穫されるのは一等米だけではない。昨年などは二等米、三等米が多かった。カメムシや異常気象の影響があったためである。そして、何年か前に国が減反政策を進め、米を食べたら太るからといって、米離れが全国的にも広がった。全部、何年か前のしわ寄せが、昨年から今年にかけて来ているだけである。
今、ここでまた米をどうにかしようとしても、数年先にまた米が余り、また米離れが起きる。米離れなら農家も生産したくない。
米を田んぼに植えたら全て売れると思っている消費者がいるが、実際は全て4,000円、5,000円で売れるわけではない。ひどいものは畜産の飼料になる。メディア、マスコミやテレビ報道などでもこの現状を伝えなければ、生産者はかわいそうであるが、どうか。
【理事者】
指摘のとおり、現在米は高値であるが、数年前は非常に安く、再生産価格もなく農家が困っていた。愛知県では、主食用米以外にも麦、大豆などを作り、国からの補助金があるため生産が成り立つ部分はあるものの、バランスよく作ってもらうことで農家経営の安定を図っている。米の生産数量目安を示し、国の補助事業等を活用しながらバランスよく作るよう要望している。
令和7年産の米の生産数量目安を増やしたが、これは在庫が非常に少なく、年間を通じて安定供給するためである。今後も需給バランスを見ながら目安を設定し、農家経営の安定を図るためのアドバイスを行っていく。
【委員】
何年か前に愛知県の農産物の輸出について聞いたことがある。当時、愛知県の農産物は大消費地であり、全て県内で消費されるため輸出はしていないとのことだった。現在はどうなっているのか。
【理事者】
農産物全体については答えかねるが、米については愛知県で生産される米は県民が消費する量の3割程度である。愛知県の米は一部輸出も行っているが、基本的に県内で消費されている。
【委員】
愛知県有機農業推進計画について伺う。2030年までに有機農業に取り組む面積を900ヘクタールを目標として推進しているが、有機農業の推進には技術や採算性、販路の確保などの課題があると認識している。販売農家が有機農業に取り組む場合、これらの課題がネックになる。一方、自給的農家、いわゆる家庭菜園利用者は創意工夫を凝らして有機農業に取り組んでいる例が多い。この層に有機農業の知識や技術を伝え、実践してもらうことで、有機農業の理解と拡大につながると考える。
野菜価格が高騰している中、家庭菜園で自家用の野菜を栽培する農家が増えている。この機会を捉えて有機農業へのチャレンジを支援することが重要である。令和7年度の取組として小規模農家に対してどのように支援していくのか。
【理事者】
有機農業の推進において、小規模農家に対する支援について、県では、農業改良普及課に有機農業指導員を配置し、規模の大小を問わず有機農業に関する相談に対応している。また、地域ぐるみで有機農業に取り組む市町村を支援している。現在、オーガニックビレッジ宣言をしている市町では、有機農業塾の開設、有機農産物のマルシェの開催、有機農業の体験や援農などを行い、小規模農家や農業に関心を持つ市民に有機農業の技術や知識を提供し、有機農家との交流の場を創出している。このような取組をさらに進める必要があると考え、来年度も国の補助事業を活用して支援するとともに、優良な取組を横展開して県内各地に広げる予定である。また、来年度は堆肥の熟度や適切な品質、投入量を示した堆肥利用マニュアルなど、有機農業の標準的な技術を分かりやすく示した、小規模農家が活用できる教科書の作成を進めていく。さらに、有機農業の理解を深めるため、生産者、消費者が一堂に会する、有機農業のつどいを開催する計画である。
県としては、自給的農家や家庭菜園を楽しむ人が有機農業に関心を持ち、取り組みやすくなるよう支援していく。
【委員】
今の答弁では、堆肥の作り方や塾の開設、マルシェ、市民への啓発などが含まれていた。これに加えて、家庭菜園の場所についても考慮してほしい。特に市街地の生産緑地を活用することを要望する。市街地の生産緑地は、地主が耕作を依頼してもオペレーターが嫌がることが多い。駐車違反やクレーム、農薬の使用などの問題があるためである。生産緑地を都市内緑化として利用し、有機菜園を小分けにして実施することは環境にもよいと考える。市町に対して、このような取組をアピールしてほしい。
【委員】
あいち農業イノベーションプロジェクトに関連して、一般社団法人アグベンチャーラボとの包括協定について伺う。1月に知事のエックスで、プロジェクトの成果を広く社会に実装し、スタートアップの成長を一層促進するため、農業分野で豊富なスタートアップ支援の実績を持つアグベンチャーラボと連携、協力に関する包括協定を締結するとの投稿を見た。
アグベンチャーラボでは、スタートアップから食や農に関する新規ビジネスやサービスのアイデアを募集し、これまでに52件の提案に支援を行っているとのことである。一方、愛知県においては、2021年度から愛知県農業総合試験場がスタートアップ等と新しい農業イノベーションの創出を目指すあいち農業イノベーションプロジェクトを実施している。あいち農業イノベーションプロジェクトのような取組を一層拡大し、成果を広く社会に実装するためには、イノベーション創出に関わる多くの人々の協力を得ることが効果的であると思う。
そこで、アグベンチャーラボとの協定締結に至る経緯はどのようなものであったのか伺う。
【理事者】
アグベンチャーラボとの協定締結に至った経緯について紹介する。アグベンチャーラボは、JAグループの一般社団法人全国農業協同組合中央会をはじめとする全国組織8団体が共同で2019年に設立したイノベーションのための組織であり、拠点は東京にあるが、本県のSTATION Aiにもパートナー企業として参画している。
県では、これまでにあいち農業イノベーションプロジェクトにおいて、研究成果の社会実装や事業化についてスタートアップ等への助言を受ける、本県の農業者を対象に講演を行ってもらうなどの協力を得ている。
こうしたスタートアップへの豊富な支援実績や本県の取組への協力の経緯を踏まえ、今後、農業分野におけるイノベーションの創出をさらに推進するために包括協定を締結することとした。2月12日にSTATION Aiで開催された、あいち農業イノベーションサミット2025のオープニングセレモニーで締結式を行った。
【委員】
私も調べたところ、包括協定を結んだのは都道府県では愛知県が3番目くらいである。しっかりとこの協定を生かしてもらい、負けないように頑張ってもらいたいと思うが、包括協定の下、今後どのような取組を行うのか。
【理事者】
まず、締結式は農業イノベーションサミット参加者165人の前で行い、本県の農業イノベーション創出に向けた意気込みを伝えることができた。また、サミットのトークセッションでは、アグベンチャーラボの荻野浩輝代表理事にファシリテーターを依頼し、イベントを盛り上げてもらった。
包括協定では、スタートアップ等との連携やオープンイノベーション体制の構築、人材の育成などについて連携、協力していくこととしており、アグベンチャーラボが持つ豊富なスタートアップ支援のノウハウやネットワークがイノベーションの創出につながるものと期待している。
今後、アグベンチャーラボには、あいち農業イノベーション研究会の構成員になってもらうとともに、農業分野に生かせる技術やアイデアを持つスタートアップ等を呼び込んでもらうなど、あいち農業イノベーションプロジェクトにおける共同研究開発から成果の社会実装に向けた取組を連携、協力して進めていく。
【委員】
県とアグベンチャーラボとの取組の親和性が高く、同じ方向を向いて進めていけるとのことであるが、今回の包括協定をきっかけに、これまで以上に連携、協力を進め、アグベンチャーラボが持つネットワークが農業イノベーションの創出、ひいては本県農業のさらなる振興につながるよう期待している。
私は昨年、県議会の海外調査でオランダに行ったが、EUの中で大きな潮流といえば環境とデジタルであった。環境は厳しすぎて農民がデモをすることもあったが、デジタルには大変な投資がされていた。オランダはスマート農業やデジタル関係が進んでおり、普通に実施されていた。日本では、中小企業のDXが進まず、農業分野も同じような状況である。本県の農業総合試験場が入ることで、農業者の身近なテーマをスタートアップで解決し、普及が図られるよう、政策的な支援を行ってもらいたい。せっかくつくったプロジェクトであるので、進めてもらうよう要望する。
【委員】
質問の前に、資料を配付したい。
【委員長】
ただいま委員から資料の配付の申出があったので、これを許可する。
【委員】
この本は、あいちの木材利用施設事例集である。愛知県の中で、これは第2巻目であり、ぱらぱらと見るだけで、こんなに木材が使われるようになったのかと実感できると思う。
それでは、まず鳥インフルエンザに関して、農業水産局長や畜産振興監をはじめ、県の担当者が休みなく対応してくれたことに感謝する。補正予算もしっかりつけてもらい、公益社団法人愛知県畜産協会や一般社団法人愛知県養鶏協会からも感謝の言葉をもらっている。県の対応が迅速で適切であり、後のフォローもしっかりしていた。この場を借りて改めて感謝する。次の経営再開に向けて、いろいろな宿題が出てくると思うため、ぜひしっかりとしたフォローを要望する。
次に、あいち森と緑づくり事業について伺う。この事業は今年で16年目になる。10年たって一旦更新してもらった。議員の理解と協力をもらって更新できたと思う。我々の地域では、間伐事業が県の貴重な財源を使って行われ、非常に大きな効果を表していた。今年度に入り、また6年目に入った。前半の5年間の教訓を踏まえて事業が進化していると感じている。
まず、事業内容の見直しが行われていると聞いている。新規事業として、間伐が今までは一定程度、ある程度の広さの面積を対象としていた間伐事業に、小面積の間伐の補助も追加されたと聞いている。これまでの経験を踏まえた新しい一歩だと思う。小規模な林業経営体が受注できることは非常にありがたいことである。その点について、実績や林業経営体の感想を伺う。
【理事者】
あいち森と緑づくり事業による人工林の間伐について、事業の効率化を図るため、ある程度まとまった面積の事業団地を作成し、県の直営事業として間伐工事を発注している。間伐工事の規模が大きいため、規模の大きい林業経営体の受注が中心となっており、小規模な林業経営体が直接森林整備に参入できる仕組みができるとよいとの提案があった。このため、昨年度の事業計画の見直しに当たり、新規事業として1か所当たり5ヘクタール以下の小面積の間伐を推進するための事業を新設した。
この事業は、小規模な林業経営体が実施しやすい小面積の間伐に対して補助するものであり、林業経営体が主体的に間伐事業を実施する機会を得て経験を積むことで、経営基盤の強化が図られるものと考えている。今年度は四つの経営体が事業を行い、計5件、面積にして9ヘクタールの実績となる見込みである。事業を実施した林業経営体からは好評で、来年度も引き続き事業を実施したい、集約化が難しい小面積の森林でも実施できるため使いやすいといった感想を聞いている。
また、これらの小規模な林業経営体は、事務専門職員を雇用する余裕がなく、経営者自ら補助事業の書類作成事務を行っているため、他の書類や市町村の把握している情報で確認できる書類は省略してほしい、補助金額の算出を容易にしてほしいといった要望も聞いている。
【委員】
今、答えてもらったところが大事である。私も地元で小規模な林業経営体の人と意見交換してきたが、下請はつらいものである。元請でできることがプライドにもなり、ハードルが高かった。こうした取組は新しい一歩であり、次につながるものである。
書類の作成が大変だという声もある。できるだけ簡素化し、マニュアル化して、小規模な経営体でも容易に書類作成できるようにしてほしい。
今後の取組について、もう少し詳しく伺う。
【理事者】
小規模な林業経営体の事務の簡素化、負担軽減を図るため、要望を踏まえ、来年度からは可能な限り申請等に係る添付書類を省略する。補助金額についても、現場条件等に応じて細分化されていたものを、統一した標準的な単価により算出を容易にするなど工夫していく。また、ICTを活用した林業経営体の事務の簡素化、負担軽減についても検討を進めていく。
この事業を通して、小規模な林業経営体が下請ではなく主体的な間伐を実施することで経営基盤を強化し、将来的には県の発注する規模の大きな工事に参入できるよう、小規模な林業経営体の育成に取り組んでいく。
【委員】
今の答弁を心強く思う。具体的に相談に乗りながら進めてもらいたい。
次に、木材利用の促進について伺う。木材の有効利用が山への還元につながるため、木材利用の推進が重要である。木材利用の推進について、県庁内に愛知県木材利用促進連絡会議が設置され、ほとんどの局が参加しているが、特に教育委員会の遅れが目立つ。例えば、附属中学校の建物は全て鉄筋コンクリートである。学校教育の場で木をふんだんに見てもらうことは教育効果も非常に高く、これから県の造る建物で木造化・木質化がもっとできる分野があると思うため、教育委員会と協力して力強く進めてもらいたい。
もう一点、木材利用の促進について、あいち木造・木質化サポートセンターが設置されたと聞いているが、その実績について伺う。
【理事者】
事例集について簡単に触れる。青い表紙の冊子であり、139の施設が掲載されている。データは林務課のホームページでも公表されており、グーグルマップ上にピン留めして場所が分かりやすくなっている。サポートセンターも記載されており、関心を持った人が相談に来られるようになっている。
サポートセンターは、木材に関心を持ち、木造・木質化を進めようとする建築主や事業者の疑問や相談に答えるため、2023年7月に開設した。運営は、一般社団法人愛知県木材組合連合会と公益社団法人愛知建築士会が構成する環境都市実現のための木造化・木質化推進あいち協議会に委託している。問合せ実績は、2023年度の7月の開設以降21件、2024年度は2月末までで59件である。建築主や建築業者だけでなく、市町村等からも問合せがあり、回答に加え建築士や木材業者を紹介するなど、ニーズに応じた対応をしている。
また、チラシの配布や専用ホームページの開設により、広く周知を図っており、ホームページではよくもらう質問をQ&A方式でまとめるとともに、相談先となる建築士や木材業者のリストを掲載している。
今後も、各種イベントや企業等を訪問して木材利用を普及する際に、このセンターのPRも併せて行い、利用促進を図っていく。
【委員】
件数が多いか少ないかは分からないが、増えているとのことで、非常に楽しみなセンターである。積極的に活用してもらえるように努力してほしい。
木材利用に関しては、大径材の需要拡大に取り組んでいると聞いている。需要拡大の一つの切り口として、どんどん使ってもらえるようにしてほしい。
もう一つお願いしたいのは、設楽町に新しく建て替えられる設楽公舎の職員住宅に設楽ダムの水没林を使ってほしい。ダムで沈む土地の人たちが手放した山の木が、使われ先がなくなっている。設楽公舎の職員住宅に水没林を使うことで、メモリアルな建物になると思う。担当の人も含めて応援してもらいたい。
【委員】
愛知県の米の状況と今後の対策について伺う。令和6年12月24日に農林水産省から令和5年の農業産出額が公表された。それによると、米や野菜、鶏卵の価格が上昇したことから、前年に比べ5.5パーセント、4,977億円増加し、9兆4,987億円となっている。同日に都道府県別の農業産出額も公表され、本県は前年に比べ3パーセント、93億円増加し、3,207億円となっており、都道府県別の順位では前年と同じ第8位である。農業産出額上位10道県の前年からの伸び率を比較すると、一番伸びているのが第9位の岩手県で11.8パーセントの増、本県はその中で一番低い数値、3パーセントの増となっている。岩手県の農業産出額は前年に比べ315億円の増で2,975億円、その下の第10位の栃木県では8.9パーセント、241億円の増で2,959億円となっており、このままではこの2県に抜かれてしまうと心配している。昔は、愛知県は第4位、第5位の時代があったと記憶している。
本県の産出額の伸び率が低い主な原因として、米が考えられ、全国で9パーセント増加している中で本県は5パーセントの増加にとどまっている。
そこで伺う。令和5年の米の産出額が他県に比べ伸びていない理由は何か、またそれに対応するためどのような対策に取り組んでいるのか。
【理事者】
令和5年の全国の米の産出額については、米価の回復によって大幅に増加した県があった。本県では、令和4年産までの米価の低迷により、令和5年産の主食用米の作付面積が2万4,700ヘクタールと前年から500ヘクタール減少している。また、全国の稲の作況指数は101の平年並みであったが、本県については高温障害やイネカメムシをはじめとしたカメムシ類の食害などの影響により作況指数が96のやや不良となった。これらの要因により、主食用米の収穫量は11万8,600トンと前年から8,700トン、率にして6.8パーセント減少したため、米価は回復したが他県に比べて米の産出額の増加率が低くなった。
【理事者】
本県の令和5年産米の産出額が伸びなかった主な原因であるイネカメムシと高温障害への対策について、まず、イネカメムシについては、令和5年度は平年に比べ大変発生量が多かったため、農家も防除を行っていたが、防除適期が短いため防除が遅れたことに加え、特に海部地域では薬剤抵抗性により使用した薬剤が効きにくくなっていたことが被害が大きくなった原因と考えられる。これを踏まえ、令和6年度もイネカメムシ多発の傾向があったが、県が注意報3回、病害虫情報を3回発令し情報発信するとともに、農業改良普及課がJAや市とタイアップして効果の高い薬剤を使用した適期防除やドローンなどによる地域での一斉防除などを進めたところ、大幅に被害を抑えることができた。
次に、高温対策についてであるが、農業総合試験場では高温に強い品種を開発している。農業改良普及課では、JAと協力してこうした品種の導入を進めており、例えば、現在品種登録出願中のあいちのこころは今年から本格的に栽培を始める計画である。今年も暑い夏になる予報が出されており、引き続きイネカメムシ対策を徹底するとともに、高温耐性品種の開発と普及に取り組んでいく。
【委員】
米の産出額が他県に比べて伸びていない理由は理解した。今後、米の安定生産のために、病害虫防除などの技術指導や高温耐性を持つ品種の普及及び新たな品種開発等に取り組むことを要望する。
一点伺うが、愛ひとつぶという品種は高温耐性を持っているのか。
【理事者】
愛ひとつぶも高温耐性を持っている。
【委員】
この間テレビを見ていたら、東海3県で特A米が三重県の伊賀米と愛知県豊田市のミネアサヒだった。こういったものにも対応できないのかと素人ながらに思ったがどうか。
【理事者】
特Aを愛知県で取ったミネアサヒは品種の特性上、中山間地、緯度の高いところに適した品種である。なお、平場については現在コシヒカリ、あいちのかおりを作っているが、愛知県は全国の中でも非常に暑く、特に6年産は夜温が下がらず、なかなか厳しい状況である。食味が良くなるように生産者と県の普及課も併せて一生懸命努力しているが、難しいのが実態である。
【委員】
しっかりと努力してもらいたい。
次に、有機農業の推進について伺う。愛知県は、愛知県有機農業推進計画を策定し、有機農業に取り組む面積を2020年の330ヘクタールから2030年までに900ヘクタールまで拡大する目標を掲げて有機農業を推進している。私の地元の愛西市にある株式会社山三レンコンという農業法人は、およそ20ヘクタールの経営面積の一部で県内唯一の有機JAS認証のレンコンを生産しており、市場出荷に加え、生活協同組合への出荷、ふるさと納税の返礼品への出品、近隣市町の学校給食への食材提供など、おいしいレンコンを食べてほしいという熱い思いと優れた経営感覚を持って、地域の多様な関係者の理解を得ながら生産、流通、消費まで取組を精力的に展開している。
有機農業を拡大、定着させていくには、このような大規模農家が既に持ち合わせている技術力や経営力を生かして、既存の経営の一部を有機農業に転換して付加価値の高い農業に取り組むことが重要であり、これらの担い手を地域ぐるみで育成していくことが必要である。そのために、規模に応じた栽培技術の向上と販路の拡大に向けた支援に早急に着手することが不可欠と考える。
そこで伺う。有機農業の推進に当たり令和7年度の取組について、有機農業の拡大、定着に向けた重要となる担い手の確保と経営の安定に向けた対策を、県としてどのように取り組むのか。
【理事者】
有機農業の担い手の確保と経営の安定に向けた対策について、まず担い手の確保は、令和7年度から新たに農業大学校で有機農業者向けの公開講座を開設する。主な対象者は、新規就農者、また経営の一部を有機農業に転換する農業者としている。栽培技術の基礎、販路の確保や拡大の手法、優良経営体の事例研究、自らの経営計画の策定などを学んでもらい、有機農業の経営者を育成していく。また、有機農業推進計画の目標900ヘクタールの達成に向け、大規模な経営体が経営の一部に付加価値の高い有機農業を導入することが重要なポイントと考えている。例えば稲作では、農業総合試験場が開発した省力技術である水稲不耕起V溝直播栽培における雑草防除技術について今年度から民間企業3社との共同研究を始めており、来年度は試作機による試験を行う予定である。
さらに、経営安定に向けて、手間暇かけて栽培した有機農産物をその価値が分かる人に届けるため、マーケティングの視点が必要である。有機農業の出荷実態の調査、市場関係者や消費者の意向調査などのマーケット調査を実施し、その結果が販路拡大に生かせるよう農業者を支援していく。こうした取組を進め、環境に配慮した付加価値の高い農業として有機農業を拡大していく。
( 委 員 会 )
日 時 令和7年3月12日(水) 午後0時59分~
会 場 第2委員会室
出 席 者
桜井秀樹、横田たかし 正副委員長
久保田浩文、横井五六、中野治美、峰野 修、新海正春、杉浦哲也、
鈴木 純、鈴木まさと、安井伸治、しまぶくろ朝太郎、末永けい 各委員
農業水産局長、農林水産推進監、農業水産局技監、農政部長、
畜産振興監兼畜産課長、水産振興監、
農林基盤局長、同技監、農地部長、林務部長、関係各課長等
委員会審査風景
<付託案件等>
○ 議 案
第 1 号 令和7年度愛知県一般会計予算
第1条(歳入歳出予算)の内
歳 出
第6款 農林水産費
第10款 災害復旧費の内
第1項 農林水産施設災害復旧費
第2条(繰越明許費)の内
第6款 農林水産費
第3条(債務負担行為)の内
農業総合試験場施設設備改修工事
農業近代化資金貸付金利子補給
国家戦略特別区域農業保証融資に係る愛知県信用保証協会損失補償
畜産総合センター段戸山牧場施設設備改修工事
漁業近代化資金貸付金利子補給
かんがい排水事業神野新田地区管水路工事
農地環境整備事業つくば地区用排水路工事
農地環境整備事業下山地区用排水路工事(その1)
農地環境整備事業下山地区用排水路工事(その2)
農地環境整備事業大野瀬地区区画整理工事
農業水利施設保全対策事業愛知地区スペア資材備蓄倉庫整備工事
農業水利施設保全対策事業宇塚地区排水機場機械設備工事
農業水利施設保全対策事業一本松下地区排水機場機械設備工事
たん水防除事業小牧小木2期地区排水機場設置工事
たん水防除事業豊明東部2期地区排水機場撤去工事
たん水防除事業領内川右岸北部地区排水機場機械設備工事
たん水防除事業新下津地区排水機場撤去工事
たん水防除事業新岩倉地区排水機場設置工事
たん水防除事業新十三沖永地区排水機場設置工事
たん水防除事業新立田輪中地区樋管工事委託契約(国土交通省)
たん水防除事業室場南部地区排水機場設置工事
たん水防除事業高河原地区排水機場設置工事
たん水防除事業上郷2期地区排水機場撤去工事
たん水防除事業新高師地区排水機場撤去工事
たん水防除事業新梅薮地区排水機場機械設備工事
老朽ため池等整備事業大窯池地区ため池改修工事
用排水施設整備事業吉根地区堰改修工事
用排水施設整備事業丹羽排水地区調節池工事
用排水施設整備事業光堂地区堰改修工事
地盤沈下対策事業木曽川用水2期地区揚水機場機械設備工事
海岸整備事業鍋田地区海岸改修工事
海岸整備事業伊良湖樋門地区樋門工事
防災ダム事業雁狭間池地区ため池改修工事
防災ダム事業中池下池地区ため池改修工事
震災対策農業水利施設整備事業枝下用水地区用水路工事
排水施設保全対策事業福田川河口地区排水機場機械設備工事
緊急農地防災事業円楽寺地区排水機場設置工事
緊急農地防災事業三宅川左岸地区排水路工事(その1)
緊急農地防災事業三宅川左岸地区排水路工事(その2)
緊急農地防災事業須ケ脇第1地区排水機場撤去工事
緊急農地防災事業大海用地区排水機場機械設備工事
緊急農地防災事業福田川甚目寺地区排水機場機械設備工事
羽布ダム管理所始め3管理所利水施設管理補助業務委託契約
坂崎揚水機場機械設備工事
木曽川用水受託事業管水路工事(その1)
木曽川用水受託事業管水路工事(その2)
木曽川用水受託事業管水路工事(その3)
木曽川用水受託事業管水路工事(その4)
第 7 号 令和7年度愛知県就農支援資金特別会計予算
第 8 号 令和7年度愛知県沿岸漁業改善資金特別会計予算
第 9 号 令和7年度愛知県県有林野特別会計予算
第 10 号 令和7年度愛知県林業改善資金特別会計予算
第 50 号 県の行う土地改良事業に対する市町村の負担金について
第 51 号 県の行う農村総合環境整備事業に対する市町村の負担金について
第 52 号 県の行う林道事業に対する市町村の負担金について
(結 果)
全員一致をもって原案を可決すべきものと決した議案
第1号、第7号から第10号まで及び第50号から第52号まで
○ 閉会中継続調査申出案件
1 農林水産業の振興について
2 農地関係の調整及び土地改良について
3 緑化の推進について
4 農業水産局、農林基盤局、海区漁業調整委員会及び内水面漁場管理委員会の行政運営について
<会議の概要>
1 開 会
2 議案審査(8件)
(1)理事者の説明
(2)質 疑
(3)採 決
3 委員長報告の決定
4 一般質問
5 休 憩(午後2時51分)
6 再 開(午後3時5分)
7 閉会中継続調査申出案件の決定
8 閉 会
(主な質疑)
《議案関係》
【委員】
歳出、第6款農林水産費、第1項農業総務費のうち、農業改良普及事業費、農業後継者育成指導費及び女性農業者活躍支援事業費について伺う。
先日、旧知の稲作農家から、従来の農業政策では今後ますます廃業する農家が増えるため、愛知県としても抜本的な対策を進めてほしいとの意見を聴いた。私から見ると、子供が家業である稲作農家を継ぐことが既定路線で、経営的にも困っている様子は見受けられなかったが、新しい農機具の購入資金や人件費の上昇に伴い、経営状況の今後が見通せないとの話だった。
近年の予測以上の急速な少子化の進行は、今後生産年齢人口が減少し、労働力不足が深刻化することが見込まれる中、持続的発展が可能な社会を実現し、地域経済など様々な分野の発展を可能にするためには、これまで参画していなかった人材の社会参画が不可欠であると考える。
農林水産分野においては、ドローンやICTの活用によるスマート農業の推進等、省力化の取組が進められているが、今後、担い手不足の解消の取組を進めていかなければならないと考える。農家の平均年齢が69.2歳となっている現在、後継者の育成が喫緊の課題であり、新規就農者の育成を進める必要があると考える。また、女性が持つポテンシャルを最大限に発揮してもらうことが重要であり、これは今後の農業経営の維持、安定化にも寄与することである。
農林水産分野関係では、あいち農山漁村男女共同参画プラン2025が策定、公表されており、家族経営協定の締結推進や経営参画の促進のほか、女性リーダーの育成として農村生活アドバイザーの認定など特色ある取組が進められてきたと認識している。また、令和7年度には次期プランの策定が行われることと認識している。
そこで、今後も農林水産業の振興や農山村地域の維持・発展のためには、後継者の育成及び女性の活躍を支援していく取組を積極的に推進していく必要があると考えるが、令和7年度にはどのような取組が行われるのか伺う。
【理事者】
農業後継者育成指導費及び女性農業者活躍支援事業費に関する令和7年度の取組についての質問だが、本県では食と緑の基本計画2025において、新規就農者を5年間で1,000人確保することを目標としている。農業大学校に設置した農起業支援ステーション及び県内8か所に設置した農起業支援センターにおいて、農業後継者や新規参入者からの就農相談や就農後のフォローアップ等に対応している。
令和7年度も引き続き、農起業支援ステーション等による相談対応や県内外の就農相談会への出展等を通じて、新規就農を支援していきたい。
また、今年度、DX推進室と連携して、民間企業等のノウハウやICTを活用して行政課題の解決を図るアイチクロステックにおいて就農相談のデジタル化に向けた実証実験を行った。来年度は、農業後継者育成指導費において実装するコンテンツの開発等を進める予定である。同じく来年度から整備していく予定の就業支援プラットフォームと連携して、農業後継者等担い手の確保、育成に取り組んでいく。
次に、女性農業者の活躍支援については、本県では、2020年度にあいち農山漁村男女共同参画プラン2025を策定し、家族経営協定締結数や農村生活アドバイザー認定数、農業法人等における女性役員の割合等を目標として掲げ、女性農業者の経営参画、社会参画の推進に取り組んでいる。
来年度もプランに基づき、若手の女性農業者等を対象としたセミナーやリーダー育成研修会を開催し、女性農業者が経営参画、社会参画に必要な知識、技術の習得や活躍できる機会、場の設定を支援していきたい。
また、来年度は、委員が示したとおり次期プランを策定する予定である。プラン策定に当たっては、ワーキンググループや学識経験者、農林漁業団体等を構成員とした女性の活躍促進連携会議を開催し、男女の枠にとらわれず、女性、男性それぞれの視点を生かし、一人一人が個性と能力を発揮できる地域社会の実現に向けてプランの策定を目指していきたい。
【委員】
理解しづらいところがあるので、もう一度詳しく教えてほしいが、県のDX推進室から農業水産局に移るのか。
【理事者】
県のDX推進室が全庁的に行政課題を募集し、それに対して民間のノウハウやICTを活用して課題解決を図る事業を実施しており、今年度、農起業支援ステーションの就農相談をデジタル化することで応募し、実証実験を行った。今年度はDX推進室が主体として進めていたものを、来年度は、それを実装するために、農業水産局で予算化して進めていく。
《一般質問》
【委員】
私からは、あいち農業イノベーションプロジェクト、特に環境面から見た農業イノベーションについて伺う。私はもともと環境系のNPO活動を行っていたため、その視点から伺う。
先日の農林水産委員会県内調査では、ウナギの陸上養殖を見学した。魚は古来日本人のたんぱく質の摂取源であった。しかし、現在漁業は危機的な状況にあると考える。捕獲漁業生産量の推移を見ると、最も多かった1984年の1,160万トンが2020年には約300万トン弱と約75パーセント減少している。
捕獲漁業生産量の減少という危機だけでなく、魚が体内に蓄積するマイクロプラスチックにより、妊婦が魚を食べないように言われるなど、水銀などの海洋汚染による人体への悪影響も危機的状況にあると考える。海洋汚染の状況を考えると、湧き水や温泉などを使った陸上養殖の技術が非常に重要であると考える。
また、先日沖縄県のEFポリマー株式会社を視察した。この会社は、沖縄科学技術大学院大学というアジアでもトップクラスの大学内にあるスタートアップ企業である。
EFポリマー株式会社の創業者、インド人のナラヤン・ラル・ガルジャール氏は、インドの乾燥地帯にある農村で農業を営む両親を助けたいという思いから、100パーセントオーガニックの超吸水性ポリマーであるEFポリマーを開発した。
このEFポリマーは、オレンジの皮などの果物の不可食部分をアップサイクルして作られた自然由来の超吸水性ポリマーで、自重の約50倍の水を吸収することができる。土に混ぜると土壌の吸水力が向上し、節水と肥料の使用量の削減につながる。このポリマーは完全生分解性を持ち、農地に適用すると約6か月効果が持続し、約12か月後には完全に土に返る。地球温暖化や砂漠化に対応する重要な技術であると考える。
愛知県農業総合試験場や愛知県水産試験場での研究において、地球の環境変化に対応する研究、技術は非常に重要である。また、今議会に提案されているあいち農業イノベーションプロジェクトにおいても、環境変化に対応するプロジェクトが非常に大切であると考える。
そこで、あいち農業イノベーションプロジェクトにおいて技術提案を採択する場合、環境問題に対応するプロジェクト課題に対する考えを伺う。
【理事者】
農業分野において、担い手の減少や高齢化といった従来からの課題に加え、気候変動やカーボンニュートラルといった環境問題は解決すべき重要な課題であると考える。
あいち農業イノベーションプロジェクトでは、愛知県農業総合試験場とスタートアップ等との共同研究開発により、こうした課題への迅速な対応と技術開発を目指している。
来年度に予定している新たな技術提案の公募においても、これらの環境課題を含め、農業の課題解決につながる技術、アイデアを持ったスタートアップ等を公募し、共同研究開発により新技術の開発、ひいてはイノベーションの創出につなげていきたい。
【委員】
農林水産業は、水、空気、土が健全な状態であることが第一であると考える。12月定例議会の委員会でも質問したスタートアップ企業の知恵や、農業者の知恵を借りながら、愛知県はもとより、日本、世界全体の農林水産業の発展につながるイノベーションを採択し、伸ばしてほしい。
【委員】
農業関係1件と水産業関係2件の質問をする。
まず、愛知県の農業経営体の法人化の推進について伺う。
本県の農業は全国でも有数な農業産出額を誇り、特に施設園芸や花卉、畜産など多様な農業が盛んな地域である。しかし、近年、農業従事者の高齢化や農家数の減少が進行し、新たな担い手の確保が重要な課題となっている。本県の農業の発展には、新規就農者の確保と定着、育成が必要であると考える。
本県の新規就農者数を見ると、2023年度の愛知県における44歳以下の新規就農者数は148人で、その内訳は、新規学卒就農者9人、Uターン青年59人、新規参入者80人である。これらの新規就農者を確保するために、本県では各農業改良普及課の農起業支援センターや農業大学校の農起業支援ステーションにおいて新規就農者の支援に取り組んでいる。
新規就農者の中には雇用就農を望む者もおり、このような者の受皿として農業法人が重要な役割を果たすと考える。
私の地元碧南市では、農業経営を法人化し六次産業化や農福連携、規模拡大など、経営を多角化、高度化し、雇用を活用した企業的な経営で経営基盤を強化し、産地を活性化している。しかし、このような農業法人は全体の農業経営体に占める割合は依然として低く、もっと増えてもよいと考える。本県の法人化の推進は他県と比較して進んでいる部分もあるが、今後一層の推進が必要であると考える。
そこで伺う。農業産出額の拡大や農業経営の維持、発展のために農業経営の法人化が重要であると考えるが、まず本県の農業経営の法人化の現状について伺う。
次に、法人化を推進するに当たってのこれまでの県の対応状況と今後の取組について伺う。
【理事者】
愛知県の農業経営の法人化の現状について、農業法人には、社会的な信用性、農業経営と家計の分離による経営の合理化、経営継承の円滑化、魅力ある職場づくりなど様々なメリットがあるため、県は一定規模以上の農家に対して農業経営の法人化を推進している。
本県における2024年7月現在の農業法人数は887経営体である。2019年には745経営体であったが、5年間で142の法人が増加した。現在の887経営体を部門別に見ると、野菜部門が最も多く、283経営体で全体の31.9パーセントを占めている。次いで畜産部門が230経営体、水田作部門が145経営体の順である。地域別には、尾張地域が34.5パーセント、西三河地域が21.8パーセント、東三河地域が43.7パーセントを占めており、尾張や東三河地域では野菜部門が、西三河地域では水田作が多いのが特色である。
次に、これまでの県の対応状況と今後の取組について、県では、農業経営・就農支援センターを設置し、農業改良普及課を窓口として、法人化を希望する経営体に対して個別に相談対応を行っている。法人化については、税務や会社経営に関する専門的な知識が必要なため、税理士や中小企業診断士など専門家とともに対応している。この3年で45件の法人化の相談があり、このうち法人化の見通しが立った経営体に対しては専門家を派遣し、2経営体が法人を設立した。また、農業大学校ではあいち農業経営塾を開講し、各農業改良普及課でも農業経営の改善に意欲的な経営体を対象とした研修会を開催して法人化を進めている。
さらに、既存の農業法人に対しては、資金融資の支援、認定農業者制度における農業経営改善計画の作成支援、スマート農業やICTを活用した効率的な労働管理手法の検討など、高度な技術と経営の改善を進めている。
今後の取組としては、意欲ある農業者がさらなる経営発展を図るために法人化を推進する必要があると考える。引き続き、農業経営に関する研修会や専門家の派遣などにより法人化を進めていく。
【委員】
現状として法人化の経営体が増加している状況で、それに対する農業法人への相談業務などを引き続き行っているとのことである。一定規模の農家に対して法人化を進めることは当然だが、担い手確保や農業経営の持続のためには、個人経営よりも法人化が望ましいと考える。今後もある程度の規模の農家には農業法人化を進めるよう取り組んでいきたい。
次に、水産業振興に関する栽培漁業センター施設設備整備について伺う。
本県水産業の総生産量は全国的に中位程度であるが、小型底びき網漁業や船びき網漁業などにより全国上位の生産量を上げている魚種も多く、特色ある水産業が営まれている。
近年、全国的に水産資源の変動が大きく、安定した漁獲量を確保することが難しく、漁獲量は減少傾向にある。こうした状況は本県の沿岸漁業でも同様であり、漁業者の経営を不安定にしている。
水産資源の変動は温暖化などの環境変動によるものであり、水産業は自然が相手であるため、自然に逆らうことは困難である。しかし、水産業を成り立たせるためには水産資源の維持、増大により漁獲量を確保し、安定させる必要がある。
県では、2021年3月に策定した愛知県漁業振興計画において、ダムや河川に堆積した砂を活用した干潟・浅場の造成や資源管理、魚介類の稚魚を放流して漁獲する栽培漁業、栄養塩対策などを進めている。この中でも栽培漁業が重要であると考える。
本県水産業を将来に向けて発展させるためには、栽培漁業により水産資源の増大を図ることが必要不可欠である。近年の漁場環境の変化による水産資源の変動を考慮し、生産する魚種や数量の見直しを行うなど、栽培漁業の強化が必要であると考える。
そこで伺う。栽培漁業センターの施設設備整備として新たな生産棟を建設中であるが、この施設で今後どのような取組を具体的に行うのか。
【理事者】
栽培漁業センターの新たな生産棟については、昨年度に実施計画を行い、今年度から建設を開始している。施設の規模は、延べ床面積583平方メートル、木造平家建てで、竣工時期は2026年1月を予定している。
この新生産棟では、漁業者からの要望が強く、新たな貝類資源として期待されるハマグリ、高級なすしネタとして知られるミルクイの種苗生産を新たに開始する。また、ワカメ養殖に用いる種苗の生産にも取り組む。さらに、漁獲が少ない冬季の貴重な漁獲対象であるナマコの種苗を増産する。
新生産棟での種苗生産は、来年度中に準備に取りかかり、新棟完成後の2026年度から本格的に実施する計画である。
今後も漁業者のニーズに応えながら、水産資源を増やす栽培漁業の強化に取り組んでいく。
【委員】
現在建設中で2026年1月に完成予定であり、ナマコやハマグリなど様々な魚種を栽培していくとのことである。漁業者の期待に応え、漁獲量を増やす栽培漁業の取組を進めてほしい。
次に、愛知県漁業振興計画における栄養塩対策について伺う。
寒い冬が終わり、春が近づいているが、これからの季節、愛知県の特産品であるアサリが旬を迎える。アサリは20年連続で漁獲量全国1位であるが、2014年頃から資源の減少が著しく、漁獲量は最盛期の1割から2割程度にとどまっている。その要因は海の栄養塩量低下による餌不足の影響があると指摘されている。また、ノリ養殖においても栄養塩量の低下による色落ちが深刻であり、漁業現場で大きな問題となっている。
漁業者からは、水質規制が進み、海がきれいになり過ぎたとの声が多く上がっている。そのため、本県では2022年度から2年間、三河湾の矢作川浄化センターと豊川浄化センターで、放流水中の窒素とリンの濃度を国の基準まで緩和して放流し、漁業への効果を調査する社会実験を実施した。その結果、環境への悪影響は見られず、ノリやアサリへの効果が確認された。
そこで伺う。今回の社会実験を踏まえ、漁業生産に必要な栄養塩を確保するために今後どのように取り組むのか。
【理事者】
今後の栄養塩確保の取組について、県では、社会実験の効果の検証と漁業生産に必要な望ましい栄養塩管理の在り方を検討するために、学識経験者、漁業者、国、県及び市町で構成する愛知県栄養塩管理検討会議を設置し、本年2月に検討結果を報告書に取りまとめた。
報告書では、漁業生産に必要な栄養塩濃度を、窒素は1リットル当たり0.4ミリグラム以上、リンは1リットル当たり0.04ミリグラム以上とし、その実現に必要な四つの方策を示している。
一つ目は、矢作川及び豊川浄化センターにおける栄養塩の増加運転の継続であり、まずは2027年度までの実施が決定しており、今年度も実施している。
二つ目は、増加運転の実施箇所や運転期間の拡大、さらには増加運転の恒常的な実施を可能とするための水質環境基準における類型指定や総量削減計画の見直しである。
三つ目は、増加した栄養塩を漁業生産につなげるための干潟・浅場造成等の推進である。
四つ目は、環境への影響や漁業の状況を踏まえて順応的に栄養塩管理を実施していくことである。
今後は、今回取りまとめた報告書の内容の実現に向けて関係機関と連携し、しっかりと取り組んでいく。
【委員】
栄養塩のこれまでの取組や今後の方向性を示してもらった。
水産業は、現在、水産資源が取れない状況にある。そのような中で、栽培漁業と栄養塩の管理について質問した。漁業者は、農業とは異なり、海の中で見えない部分で漁獲を行う難しい面がある。重油の高騰や漁獲量の不確実性の中で経費もかかっている。水産の漁獲量を上げるための取組が必要であり、漁業者の担い手が減少するスピードは農業者よりも速い。そのため、漁獲量を確保できるような水産資源の充実に向けてしっかり取り組んでもらいたい。
【委員】
委員から質問があった水産業の関連で伺う。三河湾の話は理解したが、伊勢湾についてはどう考えているのか。また、関係機関には環境局も含まれていると思うが、その対応についてどう考えるのか。
【理事者】
伊勢湾については、現在、県の日光川下流浄化センターと東海市、知多市、常滑市で、県の規制基準の範囲内でリンの増加運転を行っている。次の第10次総量削減計画が2027年に策定される予定であり、その中で伊勢湾も検討対象に入っている。
環境局や関係機関については、国の環境省や県の環境局、上下水道課、浄化センター、市町などと調整が必要である。関係機関とはそのようなところを指す。
【委員】
ノリの色落ちについては、九州でも大変な問題となっている。愛知県のノリは昨年、一番色落ちが少なく、三河湾のノリが黒かったため、高い値段で取引されたと聞いている。全国的な問題であり、漁業者の廃業も大変多い。できるだけ早く、環境局と愛知県がしっかりと取り組むよう要望する。
【委員】
ナスに関して二点質問する。
岡崎市や幸田町はナス生産が古くから盛んであり、昭和30年頃から施設栽培が始まり、昭和40年代にはハウス団地が整備されて本格的に普及している。現在では農業生産工程管理(GAP)への取組が行われ、品質向上と環境保全に努めている。県が育成したとげなし輝楽などの新たな品種の導入も進んでいる。
産地を維持するために、あいち三河農業協同組合が新規就農者育成の取組を進めており、令和元年度からいちご塾が開講され、15人の卒業生がハウスリースを活用して就農している。令和4年からはなす塾も開講され、農業大学校での研修やベテラン農家での実習が行われ、来年度3人も含めて8人の研修生を育成している。
この地域は県内屈指のナス産地であり、品質の向上が進められている。県の農業改良普及課からの技術指導や部会運営の助言指導が行われているが、最近、ベテランのナス生産者から普及指導員の巡回が少なくなったとの声が聞かれている。
県では2021年に機構改革を行い、県全域の普及指導機関として農業総合試験場普及戦略部の普及指導員を増員し強化した。普及指導員の役割は非常に重要であり、新規就農者にとって力強い存在である。
最近は普及指導員が現場指導に来なくなったとの農家の声に対して、今後どのように改善するのか。
【理事者】
普及指導員は、県内8か所の農業改良普及課に186人、農業総合試験場の普及戦略部に22人、合計208人を配置している。農業改良普及課では、現場での巡回指導、農家や新規就農者の相談対応、新たな技術の実証や展示、生産部会の研究会や講習会への対応などにより、直接農業者に接して生産技術や経営の改善、地域の特性に合わせた産地の育成や地域振興に取り組んでいる。
委員が言うように、普及指導員が現場に来なくなったとの農家の声を受け止め、普及指導員の、農家の困りごとを拾い上げて解決するといった意識を高め、農家から頻繁に現場活動を行っていると言われるよう進めていく。
2021年に普及指導の機能強化を図るため、農業総合試験場に普及戦略部を設置した。ベテランの普及指導員を集め、県全域を対象にスマート農業などの新技術や農業法人の企業経営など高度な指導を行う体制を整え、指導力の底上げを図っている。経験の少ない若手普及指導員や高度な指導が必要な産地には一緒に現場に出向き、農家指導に当たっている。
今後、普及指導員にはこれまで以上に高度な指導力が求められるため、体制を一層進めていく。
【委員】
普及指導員が回ってこないとの農家の声に対して、頻繁に回り、農家と直接会って指導を行う体制を整えてほしい。
次に、当地域のナス栽培についてである。当地域では、食用ナスのとげなし輝楽や漬物用の千両が生産されている。千両ナスは軟らかい果肉と歯切れの良さが評価されており、漬物事業者に出荷されている。
漬物は日本の伝統的な発酵食品であり、ビタミンB1を多く摂取でき、乳酸菌も摂取できる。また、生で野菜を食べるよりも多くの量を摂取できる効果がある。愛知県は野菜の生産が盛んであるが、県民1人当たりの野菜摂取量は目標の350グラムを下回っている。手軽に食べられる漬物は重要な食品であると考える。
本県には、県内の漬物製造業者等による公益社団法人愛知県漬物協会があるが、どのような活動を行っているのか。
【理事者】
公益社団法人愛知県漬物協会は、県内で漬物の生産、販売もしくは関連資材の製造、販売を行っている51の事業者が会員となっており、漬物業界では全国で唯一、公益法人として活動する団体である。知事が名誉会長を務めている。
協会の事業の一つに漬物を通じた食文化の振興と食育があり、愛知県の伝統野菜である守口大根の採種事業、ぬか漬け体験教室や漬物に関する出張授業の実施、工場見学の受け入れ等を行っている。
また、漬物生産における技術研究会の開催や、会員から漬物の寄付品を集め、愛知県社会福祉協議会と連携して子ども食堂へ漬物の寄付を行うなどのチャリティー事業も行っている。さらに、県が設立した愛知「発酵食文化」振興協議会の構成員として、発酵食文化の振興にも協力している。
【委員】
公益社団法人愛知県漬物協会は、県が設立した愛知「発酵食文化」振興協議会の構成員として発酵食文化のPRにも関わっており、漬物への理解や消費拡大に向けた取組を行っている。県としてはどのような支援を行っているのか。
【理事者】
現在、漬物協会の事務局を園芸農産課内に設置しており、県職員が兼職により協会の運営や事務の補助を行っている。また、愛知の野菜や漬物の魅力を発信するため、漬物協会と協力して野菜の収穫体験や漬物講習会も行っている。県が主催するあいちの農林水産フェアへ漬物協会が出店し、愛知県産の野菜を使った漬物の販売も行っている。
県としては、今後も協会の運営に対する継続的な支援を行い、漬物協会と連携して漬物及び県産の野菜の消費拡大に努めていく。
【委員】
本県は漬物出荷額が全国第5位であり、漬物産業が盛んである。公益社団法人愛知県漬物協会は地産地消や食育活動にも積極的であり、県が新たに取り組んでいる愛知「発酵食文化」振興協議会の取組にも協力している。県産農産物の消費拡大や地域経済の活性化にも尽力しているため、協会の活動に対して県の関係部局等と連携し、支援を行うことを要望して質問を終える。
【委員】
大きく四つの分野で質問する。
まず、米の価格安定について伺う。これについては、一言で言うとマネーゲームに巻き込まれないよう、しっかり生産能力を着実に上げていくことが今できることだと考える。
私の調べでは、実需の不足で価格が上がっていると思っていたが、いろいろな背景を見ていると、少し違う感覚を持っている。マクロの要因でいうと国際情勢、ウクライナ騒動が始まってから、西洋側、日本も含めてだが、ロシアに経済制裁を科し、逆にロシアが小麦などの生産能力を持ち、ヨーロッパ側に供給を制限したことによって、日本も含めて西側諸国は価格が上がり、消費者物価が上がっている。一方で、ロシアはスターバックスなどが撤退して逆に好景気になっている状況である。ロンドンシティも西洋とブリックスの両方に金融で資金を出しているため、戦争させて軍産複合体がもうかる構図になっている。
昨年8月、令和の米騒動が起きた。このときに政府やメディアが言っていたのは、天候不順や南海トラフ地震の不安、インバウンドが戻ってきているからという理由であるが、これらの理由は取ってつけたようなものである。インバウンドの人たちが来たくらいで米の価格が上がるなら、日本の米事情が大丈夫かという話になる。
8月に大阪の株式会社堂島取引所が米の先物市場の取引を開始した。これは先物というよりも指数先物で、米の現物の受渡しを伴わない金融商品である。上場したら令和の米騒動でメディアが騒いでストップ高をつけた。
エネルギーや食に関するこのようなことに関して、マネーゲームになっており、それに巻き込まれないことが大切であり、日本人の世論を利用してもうけている人たちがいると思わざるを得ない。実勢価格が持っていかれているため、転売屋が現れている。
先般、国が備蓄米を放出することを発表した。21万トンであり、これも今月末くらいから出ると聞いているが、参議院選挙対策ではないかと思わざるを得ない。政府がこのようなことをすると、価格安定を目指しているが、政府が追い込まれていると見る人もいるため、転売などが起きるリスクもある。
実際に農家に直接買い付けに来ているブローカーもいるとの話も県民から入っている。短期的には純粋な需給の問題ではないと感じるが、中長期的には新規就農者を含めて担い手を育成し、生産能力を上げる必要があると考える。
台湾有事が起きるとの話もある。政府の背後にいる日米合同委員会やメディアが、そういったスケジュール感で動いているとの話がある。
私はその実情を確かめに石垣島に行き、関係者に話を聞いたが、日本のメディアが不安をあおっているだけという状況もある。しかし、金融筋が動いているため、シーレーンが止まることもある。
自分たちで自給率を高めることができれば心配することはないため、米の生産量を増加させる観点で、令和7年産の県内の米の生産量についてどのように考えているのか。
【理事者】
県では、需要に応じた米の生産を推進している。このため、県と農業団体で構成する愛知県農業再生協議会が、毎年、翌年の米の生産数量目標の目安を設定し、各地域に示している。 令和7年産の米の生産数量目標の目安は13万2,464トン、面積換算で2万6,532ヘクタールとし、令和6年産に比べて5,354トン、面積換算で1,258ヘクタールの増加とした。これは、令和6年6月末の愛知県産米の在庫が2万927トンと、昨年より5,000トン、約2割減少したため、愛知県産の米を年間を通じて安定的に供給するために目安を増加させたものである。 県としては、主食用米の生産の増加を目指すとともに、水田を有効活用できる稲、麦、大豆の2年3作体制のブロックローテーションについて引き続き推進し、需要に応じた米の生産と価格の安定を推進していく。
【委員】
続いて、先ほど話した国の備蓄米の売渡し、放出について、その内容と影響についてどのように把握しているのか伺う。
【理事者】
政府備蓄米の売渡しの内容について、まず売渡しの対象者は年間の玄米の仕入量が5,000万トン以上(後刻訂正)の集荷業者であり、全国89事業者あると聞いている。その中で卸売事業者等への販売計画、契約を有する者となっている。売渡量は全体で21万トン、3月10日から12日にかけて第1回目の入札が行われ、15万トンが売り渡される予定であり、原則として売渡しから1年以内に買戻しされることになっている。 売り渡された政府備蓄米は、3月下旬頃にはスーパー等で販売されることが見込まれている。また、国は必要に応じて備蓄米の放出拡大を検討しており、米の流通量が増加するとともに投機目的で在庫を抱えている業者が米を販売するきっかけになることから、米価は安定することが期待されている。
【委員】
三つ目の質問として、台湾有事などに関しては、軍産複合体の言っていることを進めようとする勢力がいる。国外だけでなく、国内にもいる。このため、あらかじめ動いていかなければならない。 さきに食料供給困難事態対策法が通ったが、これはナンセンスな話であり、自分たちで食料自給率を高めていれば食料供給困難事態は起きない。このタイミングで法律を通すことも茶番劇の一幕だと感じざるを得ない。 愛知県には、田原藩の渡辺崋山が報民倉を設置した事例がある。渡辺崋山は、天保時代に全国的に飢饉が起こった状況を見越して食料を蓄える倉庫を田原藩で造ることを上申し、領民と一緒に建設し、天保6年に完成した。翌年、大飢饉が全国で起きたが、報民倉から米を供給して一人の餓死者も出さなかった。この事例を見習うべきだと考える。 70代を中心とした生産者が80代になり、辞めていく状況の中で、公共が生産者から米を適正な価格で買い取り、備蓄することが安全保障にもなり、生産者への応援にもなる。消費者も物価高で苦しんでおり、子ども食堂も米を確保したいという声がある。愛知県で独自の報民倉を設置することについて所見を伺う。
【理事者】
先ほどの答弁で一部誤りがあったため訂正する。政府の売渡しの対象者について、5,000万トン以上と答弁したが、正しくは5,000トン以上である。
備蓄の関係だが、従来、政府備蓄米は10年に1度の不作や災害が発生した場合に放出し、米価の価格調整には対応しない方針であった。今回、米の販売価格の高騰により、買戻しが条件となっているが、備蓄米を放出する方針に転換された。
政府備蓄米による米の流通、価格の安定を図る制度が新たに構築された。また、名古屋港のエリアに政府備蓄米の倉庫があるため、本県は備蓄米の供給を受けやすい地域である。現時点で県として米の備蓄を行う考えはない。
【委員】
近くに備蓄米があることは説明されたが、愛知県独自で令和版の報民倉を建設することを強く要望する。
次の質問に移る。野菜の消費拡大についてである。
県民から、愛知県は野菜の産出額が全国第5位の農業県にもかかわらず、野菜の摂取量が全国で最下位であると聞いた。
私もこの報道がされていたことは知らなかったが、要因と、最近物価高で野菜に手が伸びない状況もある中で、本県産の野菜の消費拡大に向けた取組について伺う。
【理事者】
野菜の摂取量について、野菜摂取量が男女ともに全国最下位であることは、厚生労働省が発表した2012年国民健康・栄養調査の結果によるものである。最新値は2018年に発表された2016年の国民健康・栄養調査で、本県の野菜摂取量は、男性は最下位、女性は下位グループである。
調査を所管する保健医療局の健康対策課によると、他県と比べて下回っている要因は特定できないが、2022年に健康対策課が独自に実施した生活習慣に関連する調査では、野菜料理を毎日食べない理由として、用意するのに手間や時間がかかるとの回答が多かった。
【理事者】
野菜の消費拡大に向けた取組について、食の多様化や簡便化が一層進む中、県では県産野菜の消費拡大を促進する取組として、今年度初めてレシピ動画を作成した。具体的には、県の特産品であるレンコンとオオバを用い、手軽に調理できるレンコンとオオバのつくねのレシピを出回り時期に合わせて県内小売店59店舗の青果売場で放映した。この動画を視聴することで、消費者が野菜への親しみや理解を深め、購買行動に移し、消費拡大につなげる取組である。日頃あまりレンコンを利用しない消費者からは、レシピを参考に調理してみたいとの反応があった。
また、県民に対して県産野菜を含む農林水産物を紹介し、その魅力を伝えるため、あいちの農林水産フェアを例年実施している。今年度は、昨年の11月9日、10日の2日間、金山総合駅連絡通路橋のイベント広場で開催し、ブロッコリー、ハクサイ、ダイコンなど、季節の野菜を農業者が直接消費者に販売するための支援を行った。このような取組により、本県産の野菜の消費拡大を進めていく。
【委員】
農産物の価格転嫁も課題であるが、県民がもっと野菜を食べれば産出額も上がり、県内の生産者の応援にもなる。野菜の摂取量が最下位というのは問題であり、ぜひ改善してほしい。
次に、農産物の流通販路拡大に対する支援について伺う。
最近、生産者も新規就農の意欲がある人が多く、独自で販売したいとの声も聞かれる。流通と販路拡大が課題となっており、生産者は生産に集中せざるを得ないため、流通や販路拡大のノウハウを持ち合わせていないことが多い。県の支援について所見を伺う。
【理事者】
農産物の流通について、農産物を販売する上での流通形態は、農業者が農業協同組合(JA)の集荷場、最寄りの卸売市場や直売所に自ら運搬するのが一般的である。新鮮な農産物を小売店や飲食店に直接届ける民間サービスが複数登場している。
県では、2023年度に民間サービスの一つであるやさいバスを活用し実証試験を行い、その結果を情報提供している。実証では、農産物を効果的に集荷するポイントを設置し、東三河地域と知多地域でルートを設計し、共同配送のトラックを運行させて採算性を検証した。実証後は、安定した農産物の取引量が確保された東三河地域のルートで継続運行している。
販路拡大については、中部地区で初めて開催された食の商談展示会、フードスタイルにおいて県ブースを設置し、農業者に商談やPRの場を無償で提供した。出展者からは好評であり、来年度も展示会に出展して農業者の販路拡大を支援していく。
【委員】
農業者の経営自立を促すために、流通と販路拡大は重要である。しっかりとした支援を期待する。
最後の質問として、農業、漁業の金融制度について伺う。
先日、テックガラジャパンというイベントがあり、そこで特徴的だと思ったのが、地元の金融機関や都市銀行が一次産業に力を入れ、関心を持っていることが分かった。現状、農業者や漁業者向けの金融制度としてどのようなものがあるのか、近年の利用状況と傾向について伺う。
【理事者】
農業者に対する金融制度として、農業用機械や施設の取得に必要な設備資金として農業近代化資金がある。株式会社日本政策金融公庫による資金として、農業経営基盤強化資金(スーパーL資金)、認定新規就農者を対象とした青年等就農資金、六次産業化法認定者等を対象とした農業改良資金、災害等の影響を受けた際の経営維持に利用できる農林漁業セーフティネット資金等がある。
これらの資金は、JAだけでなく、地方銀行や信用金庫、一部の都市銀行も取扱窓口となっており、農業者がふだん取引のある金融機関等で使途に応じた資金を借り入れられるようになっている。
近年の利用状況としては、農業近代化資金の貸付けは、コロナ禍の影響で2019年度以降急減したが、2020年度以降は回復傾向にある。長期的には担い手の減少や資金の多様化等の影響を受けて減少傾向にあり、2023年度の農業近代化資金の貸付額は約9億3,000万円であり、20年前の2003年度の貸付額約20億8,000万円と比較して55.2パーセント減少している。
【理事者】
漁業者に対する金融制度について、漁船や施設等の取得に必要な設備資金として低利で融資を受けることができる漁業近代化資金、小規模な沿岸漁業者等や新規に漁業を開始する人を対象とした沿岸漁業改善資金、燃料費や原材料仕入費などの短期運転資金として融資を受けることができる漁業振興資金がある。こうした資金は、海沿いの遠隔地域にある漁村に金融機関が少ないため、漁業協同組合系統の金融機関が主に取り扱っている。
近年の利用状況については、漁業者に多く利用されている漁業近代化資金の貸付額はコロナ禍の影響で一時的に減少したが、2022年度以降は回復傾向にある。長期的には担い手の減少等の影響を受けて減少傾向にあり、2023年度の漁業近代化資金の貸付額は約8億円であり、20年前の2003年度の貸付額約10億2,000万円と比較して約22パーセント減少している。
【委員】
長期的には貸付額が減少傾向にあることが分かった。最近の事業者や経営者の声を聞くと、一次産業に関心を持つ経営者が増えてきた。担い手の入れ替わり時期でもあり、一次産業はビジネスチャンスにもなる。設備投資などを含めて、民間の金融機関にも一次産業の状況を理解してもらい、融資を進める流れをつくる必要があると考える。
そこで、金融制度を活用してもらうために県として今後どのように取り組んでいくのか伺う。
【理事者】
今後、農業の安定的な発展に向けては、農業機械や施設等現場への投資が重要であり、県としては引き続き農業者等に適切な農業制度資金を周知、活用してもらいたい。
県では、各農業改良普及課や新規就農希望者の相談窓口である農起業支援ステーション等において融資に関する相談があった際には、使途や借入期間等に応じて最も適切な資金を提案するとともに、経営改善資金計画書等、借入に必要な書類の作成を支援している。また、農業近代化資金を融資したJAやその他民間の金融機関に対して利子補給を行い、農業者負担の低減を図っている。
今後も引き続きJAや民間の金融機関等と連携して、農業者の経営安定、改善や規模拡大等を支援していく。
【理事者】
漁業の今後の取組について、漁業経営の安定化に向けて漁業者が漁船や施設等の整備に必要な融資を受けることができるように、県として引き続き市町や漁業協同組合を通じて漁業制度資金を周知し、今後も活用してもらいたい。また、県では各農林水産事務所に金融担当を配置し、漁業者からの融資に関する相談に対応している。
なお、漁業近代化資金を融資した金融機関に対しては、県から利子補給を行い、漁業者負担の軽減を図っている。
今後も、引き続き漁業協同組合系統の金融機関等と連携し、漁業者の経営安定、経営改善等を支援していく。
【委員】
今、米の価格安定という中で、スーパーに5キログラムで4,500円や5,000円の米が並んでいるが、これは一等米である。農家から言わせると、一等米、二等米、三等米、そしてそれ以外の米があり、田んぼに苗を植えて収穫されるのは一等米だけではない。昨年などは二等米、三等米が多かった。カメムシや異常気象の影響があったためである。そして、何年か前に国が減反政策を進め、米を食べたら太るからといって、米離れが全国的にも広がった。全部、何年か前のしわ寄せが、昨年から今年にかけて来ているだけである。
今、ここでまた米をどうにかしようとしても、数年先にまた米が余り、また米離れが起きる。米離れなら農家も生産したくない。
米を田んぼに植えたら全て売れると思っている消費者がいるが、実際は全て4,000円、5,000円で売れるわけではない。ひどいものは畜産の飼料になる。メディア、マスコミやテレビ報道などでもこの現状を伝えなければ、生産者はかわいそうであるが、どうか。
【理事者】
指摘のとおり、現在米は高値であるが、数年前は非常に安く、再生産価格もなく農家が困っていた。愛知県では、主食用米以外にも麦、大豆などを作り、国からの補助金があるため生産が成り立つ部分はあるものの、バランスよく作ってもらうことで農家経営の安定を図っている。米の生産数量目安を示し、国の補助事業等を活用しながらバランスよく作るよう要望している。
令和7年産の米の生産数量目安を増やしたが、これは在庫が非常に少なく、年間を通じて安定供給するためである。今後も需給バランスを見ながら目安を設定し、農家経営の安定を図るためのアドバイスを行っていく。
【委員】
何年か前に愛知県の農産物の輸出について聞いたことがある。当時、愛知県の農産物は大消費地であり、全て県内で消費されるため輸出はしていないとのことだった。現在はどうなっているのか。
【理事者】
農産物全体については答えかねるが、米については愛知県で生産される米は県民が消費する量の3割程度である。愛知県の米は一部輸出も行っているが、基本的に県内で消費されている。
【委員】
愛知県有機農業推進計画について伺う。2030年までに有機農業に取り組む面積を900ヘクタールを目標として推進しているが、有機農業の推進には技術や採算性、販路の確保などの課題があると認識している。販売農家が有機農業に取り組む場合、これらの課題がネックになる。一方、自給的農家、いわゆる家庭菜園利用者は創意工夫を凝らして有機農業に取り組んでいる例が多い。この層に有機農業の知識や技術を伝え、実践してもらうことで、有機農業の理解と拡大につながると考える。
野菜価格が高騰している中、家庭菜園で自家用の野菜を栽培する農家が増えている。この機会を捉えて有機農業へのチャレンジを支援することが重要である。令和7年度の取組として小規模農家に対してどのように支援していくのか。
【理事者】
有機農業の推進において、小規模農家に対する支援について、県では、農業改良普及課に有機農業指導員を配置し、規模の大小を問わず有機農業に関する相談に対応している。また、地域ぐるみで有機農業に取り組む市町村を支援している。現在、オーガニックビレッジ宣言をしている市町では、有機農業塾の開設、有機農産物のマルシェの開催、有機農業の体験や援農などを行い、小規模農家や農業に関心を持つ市民に有機農業の技術や知識を提供し、有機農家との交流の場を創出している。このような取組をさらに進める必要があると考え、来年度も国の補助事業を活用して支援するとともに、優良な取組を横展開して県内各地に広げる予定である。また、来年度は堆肥の熟度や適切な品質、投入量を示した堆肥利用マニュアルなど、有機農業の標準的な技術を分かりやすく示した、小規模農家が活用できる教科書の作成を進めていく。さらに、有機農業の理解を深めるため、生産者、消費者が一堂に会する、有機農業のつどいを開催する計画である。
県としては、自給的農家や家庭菜園を楽しむ人が有機農業に関心を持ち、取り組みやすくなるよう支援していく。
【委員】
今の答弁では、堆肥の作り方や塾の開設、マルシェ、市民への啓発などが含まれていた。これに加えて、家庭菜園の場所についても考慮してほしい。特に市街地の生産緑地を活用することを要望する。市街地の生産緑地は、地主が耕作を依頼してもオペレーターが嫌がることが多い。駐車違反やクレーム、農薬の使用などの問題があるためである。生産緑地を都市内緑化として利用し、有機菜園を小分けにして実施することは環境にもよいと考える。市町に対して、このような取組をアピールしてほしい。
【委員】
あいち農業イノベーションプロジェクトに関連して、一般社団法人アグベンチャーラボとの包括協定について伺う。1月に知事のエックスで、プロジェクトの成果を広く社会に実装し、スタートアップの成長を一層促進するため、農業分野で豊富なスタートアップ支援の実績を持つアグベンチャーラボと連携、協力に関する包括協定を締結するとの投稿を見た。
アグベンチャーラボでは、スタートアップから食や農に関する新規ビジネスやサービスのアイデアを募集し、これまでに52件の提案に支援を行っているとのことである。一方、愛知県においては、2021年度から愛知県農業総合試験場がスタートアップ等と新しい農業イノベーションの創出を目指すあいち農業イノベーションプロジェクトを実施している。あいち農業イノベーションプロジェクトのような取組を一層拡大し、成果を広く社会に実装するためには、イノベーション創出に関わる多くの人々の協力を得ることが効果的であると思う。
そこで、アグベンチャーラボとの協定締結に至る経緯はどのようなものであったのか伺う。
【理事者】
アグベンチャーラボとの協定締結に至った経緯について紹介する。アグベンチャーラボは、JAグループの一般社団法人全国農業協同組合中央会をはじめとする全国組織8団体が共同で2019年に設立したイノベーションのための組織であり、拠点は東京にあるが、本県のSTATION Aiにもパートナー企業として参画している。
県では、これまでにあいち農業イノベーションプロジェクトにおいて、研究成果の社会実装や事業化についてスタートアップ等への助言を受ける、本県の農業者を対象に講演を行ってもらうなどの協力を得ている。
こうしたスタートアップへの豊富な支援実績や本県の取組への協力の経緯を踏まえ、今後、農業分野におけるイノベーションの創出をさらに推進するために包括協定を締結することとした。2月12日にSTATION Aiで開催された、あいち農業イノベーションサミット2025のオープニングセレモニーで締結式を行った。
【委員】
私も調べたところ、包括協定を結んだのは都道府県では愛知県が3番目くらいである。しっかりとこの協定を生かしてもらい、負けないように頑張ってもらいたいと思うが、包括協定の下、今後どのような取組を行うのか。
【理事者】
まず、締結式は農業イノベーションサミット参加者165人の前で行い、本県の農業イノベーション創出に向けた意気込みを伝えることができた。また、サミットのトークセッションでは、アグベンチャーラボの荻野浩輝代表理事にファシリテーターを依頼し、イベントを盛り上げてもらった。
包括協定では、スタートアップ等との連携やオープンイノベーション体制の構築、人材の育成などについて連携、協力していくこととしており、アグベンチャーラボが持つ豊富なスタートアップ支援のノウハウやネットワークがイノベーションの創出につながるものと期待している。
今後、アグベンチャーラボには、あいち農業イノベーション研究会の構成員になってもらうとともに、農業分野に生かせる技術やアイデアを持つスタートアップ等を呼び込んでもらうなど、あいち農業イノベーションプロジェクトにおける共同研究開発から成果の社会実装に向けた取組を連携、協力して進めていく。
【委員】
県とアグベンチャーラボとの取組の親和性が高く、同じ方向を向いて進めていけるとのことであるが、今回の包括協定をきっかけに、これまで以上に連携、協力を進め、アグベンチャーラボが持つネットワークが農業イノベーションの創出、ひいては本県農業のさらなる振興につながるよう期待している。
私は昨年、県議会の海外調査でオランダに行ったが、EUの中で大きな潮流といえば環境とデジタルであった。環境は厳しすぎて農民がデモをすることもあったが、デジタルには大変な投資がされていた。オランダはスマート農業やデジタル関係が進んでおり、普通に実施されていた。日本では、中小企業のDXが進まず、農業分野も同じような状況である。本県の農業総合試験場が入ることで、農業者の身近なテーマをスタートアップで解決し、普及が図られるよう、政策的な支援を行ってもらいたい。せっかくつくったプロジェクトであるので、進めてもらうよう要望する。
【委員】
質問の前に、資料を配付したい。
【委員長】
ただいま委員から資料の配付の申出があったので、これを許可する。
【委員】
この本は、あいちの木材利用施設事例集である。愛知県の中で、これは第2巻目であり、ぱらぱらと見るだけで、こんなに木材が使われるようになったのかと実感できると思う。
それでは、まず鳥インフルエンザに関して、農業水産局長や畜産振興監をはじめ、県の担当者が休みなく対応してくれたことに感謝する。補正予算もしっかりつけてもらい、公益社団法人愛知県畜産協会や一般社団法人愛知県養鶏協会からも感謝の言葉をもらっている。県の対応が迅速で適切であり、後のフォローもしっかりしていた。この場を借りて改めて感謝する。次の経営再開に向けて、いろいろな宿題が出てくると思うため、ぜひしっかりとしたフォローを要望する。
次に、あいち森と緑づくり事業について伺う。この事業は今年で16年目になる。10年たって一旦更新してもらった。議員の理解と協力をもらって更新できたと思う。我々の地域では、間伐事業が県の貴重な財源を使って行われ、非常に大きな効果を表していた。今年度に入り、また6年目に入った。前半の5年間の教訓を踏まえて事業が進化していると感じている。
まず、事業内容の見直しが行われていると聞いている。新規事業として、間伐が今までは一定程度、ある程度の広さの面積を対象としていた間伐事業に、小面積の間伐の補助も追加されたと聞いている。これまでの経験を踏まえた新しい一歩だと思う。小規模な林業経営体が受注できることは非常にありがたいことである。その点について、実績や林業経営体の感想を伺う。
【理事者】
あいち森と緑づくり事業による人工林の間伐について、事業の効率化を図るため、ある程度まとまった面積の事業団地を作成し、県の直営事業として間伐工事を発注している。間伐工事の規模が大きいため、規模の大きい林業経営体の受注が中心となっており、小規模な林業経営体が直接森林整備に参入できる仕組みができるとよいとの提案があった。このため、昨年度の事業計画の見直しに当たり、新規事業として1か所当たり5ヘクタール以下の小面積の間伐を推進するための事業を新設した。
この事業は、小規模な林業経営体が実施しやすい小面積の間伐に対して補助するものであり、林業経営体が主体的に間伐事業を実施する機会を得て経験を積むことで、経営基盤の強化が図られるものと考えている。今年度は四つの経営体が事業を行い、計5件、面積にして9ヘクタールの実績となる見込みである。事業を実施した林業経営体からは好評で、来年度も引き続き事業を実施したい、集約化が難しい小面積の森林でも実施できるため使いやすいといった感想を聞いている。
また、これらの小規模な林業経営体は、事務専門職員を雇用する余裕がなく、経営者自ら補助事業の書類作成事務を行っているため、他の書類や市町村の把握している情報で確認できる書類は省略してほしい、補助金額の算出を容易にしてほしいといった要望も聞いている。
【委員】
今、答えてもらったところが大事である。私も地元で小規模な林業経営体の人と意見交換してきたが、下請はつらいものである。元請でできることがプライドにもなり、ハードルが高かった。こうした取組は新しい一歩であり、次につながるものである。
書類の作成が大変だという声もある。できるだけ簡素化し、マニュアル化して、小規模な経営体でも容易に書類作成できるようにしてほしい。
今後の取組について、もう少し詳しく伺う。
【理事者】
小規模な林業経営体の事務の簡素化、負担軽減を図るため、要望を踏まえ、来年度からは可能な限り申請等に係る添付書類を省略する。補助金額についても、現場条件等に応じて細分化されていたものを、統一した標準的な単価により算出を容易にするなど工夫していく。また、ICTを活用した林業経営体の事務の簡素化、負担軽減についても検討を進めていく。
この事業を通して、小規模な林業経営体が下請ではなく主体的な間伐を実施することで経営基盤を強化し、将来的には県の発注する規模の大きな工事に参入できるよう、小規模な林業経営体の育成に取り組んでいく。
【委員】
今の答弁を心強く思う。具体的に相談に乗りながら進めてもらいたい。
次に、木材利用の促進について伺う。木材の有効利用が山への還元につながるため、木材利用の推進が重要である。木材利用の推進について、県庁内に愛知県木材利用促進連絡会議が設置され、ほとんどの局が参加しているが、特に教育委員会の遅れが目立つ。例えば、附属中学校の建物は全て鉄筋コンクリートである。学校教育の場で木をふんだんに見てもらうことは教育効果も非常に高く、これから県の造る建物で木造化・木質化がもっとできる分野があると思うため、教育委員会と協力して力強く進めてもらいたい。
もう一点、木材利用の促進について、あいち木造・木質化サポートセンターが設置されたと聞いているが、その実績について伺う。
【理事者】
事例集について簡単に触れる。青い表紙の冊子であり、139の施設が掲載されている。データは林務課のホームページでも公表されており、グーグルマップ上にピン留めして場所が分かりやすくなっている。サポートセンターも記載されており、関心を持った人が相談に来られるようになっている。
サポートセンターは、木材に関心を持ち、木造・木質化を進めようとする建築主や事業者の疑問や相談に答えるため、2023年7月に開設した。運営は、一般社団法人愛知県木材組合連合会と公益社団法人愛知建築士会が構成する環境都市実現のための木造化・木質化推進あいち協議会に委託している。問合せ実績は、2023年度の7月の開設以降21件、2024年度は2月末までで59件である。建築主や建築業者だけでなく、市町村等からも問合せがあり、回答に加え建築士や木材業者を紹介するなど、ニーズに応じた対応をしている。
また、チラシの配布や専用ホームページの開設により、広く周知を図っており、ホームページではよくもらう質問をQ&A方式でまとめるとともに、相談先となる建築士や木材業者のリストを掲載している。
今後も、各種イベントや企業等を訪問して木材利用を普及する際に、このセンターのPRも併せて行い、利用促進を図っていく。
【委員】
件数が多いか少ないかは分からないが、増えているとのことで、非常に楽しみなセンターである。積極的に活用してもらえるように努力してほしい。
木材利用に関しては、大径材の需要拡大に取り組んでいると聞いている。需要拡大の一つの切り口として、どんどん使ってもらえるようにしてほしい。
もう一つお願いしたいのは、設楽町に新しく建て替えられる設楽公舎の職員住宅に設楽ダムの水没林を使ってほしい。ダムで沈む土地の人たちが手放した山の木が、使われ先がなくなっている。設楽公舎の職員住宅に水没林を使うことで、メモリアルな建物になると思う。担当の人も含めて応援してもらいたい。
【委員】
愛知県の米の状況と今後の対策について伺う。令和6年12月24日に農林水産省から令和5年の農業産出額が公表された。それによると、米や野菜、鶏卵の価格が上昇したことから、前年に比べ5.5パーセント、4,977億円増加し、9兆4,987億円となっている。同日に都道府県別の農業産出額も公表され、本県は前年に比べ3パーセント、93億円増加し、3,207億円となっており、都道府県別の順位では前年と同じ第8位である。農業産出額上位10道県の前年からの伸び率を比較すると、一番伸びているのが第9位の岩手県で11.8パーセントの増、本県はその中で一番低い数値、3パーセントの増となっている。岩手県の農業産出額は前年に比べ315億円の増で2,975億円、その下の第10位の栃木県では8.9パーセント、241億円の増で2,959億円となっており、このままではこの2県に抜かれてしまうと心配している。昔は、愛知県は第4位、第5位の時代があったと記憶している。
本県の産出額の伸び率が低い主な原因として、米が考えられ、全国で9パーセント増加している中で本県は5パーセントの増加にとどまっている。
そこで伺う。令和5年の米の産出額が他県に比べ伸びていない理由は何か、またそれに対応するためどのような対策に取り組んでいるのか。
【理事者】
令和5年の全国の米の産出額については、米価の回復によって大幅に増加した県があった。本県では、令和4年産までの米価の低迷により、令和5年産の主食用米の作付面積が2万4,700ヘクタールと前年から500ヘクタール減少している。また、全国の稲の作況指数は101の平年並みであったが、本県については高温障害やイネカメムシをはじめとしたカメムシ類の食害などの影響により作況指数が96のやや不良となった。これらの要因により、主食用米の収穫量は11万8,600トンと前年から8,700トン、率にして6.8パーセント減少したため、米価は回復したが他県に比べて米の産出額の増加率が低くなった。
【理事者】
本県の令和5年産米の産出額が伸びなかった主な原因であるイネカメムシと高温障害への対策について、まず、イネカメムシについては、令和5年度は平年に比べ大変発生量が多かったため、農家も防除を行っていたが、防除適期が短いため防除が遅れたことに加え、特に海部地域では薬剤抵抗性により使用した薬剤が効きにくくなっていたことが被害が大きくなった原因と考えられる。これを踏まえ、令和6年度もイネカメムシ多発の傾向があったが、県が注意報3回、病害虫情報を3回発令し情報発信するとともに、農業改良普及課がJAや市とタイアップして効果の高い薬剤を使用した適期防除やドローンなどによる地域での一斉防除などを進めたところ、大幅に被害を抑えることができた。
次に、高温対策についてであるが、農業総合試験場では高温に強い品種を開発している。農業改良普及課では、JAと協力してこうした品種の導入を進めており、例えば、現在品種登録出願中のあいちのこころは今年から本格的に栽培を始める計画である。今年も暑い夏になる予報が出されており、引き続きイネカメムシ対策を徹底するとともに、高温耐性品種の開発と普及に取り組んでいく。
【委員】
米の産出額が他県に比べて伸びていない理由は理解した。今後、米の安定生産のために、病害虫防除などの技術指導や高温耐性を持つ品種の普及及び新たな品種開発等に取り組むことを要望する。
一点伺うが、愛ひとつぶという品種は高温耐性を持っているのか。
【理事者】
愛ひとつぶも高温耐性を持っている。
【委員】
この間テレビを見ていたら、東海3県で特A米が三重県の伊賀米と愛知県豊田市のミネアサヒだった。こういったものにも対応できないのかと素人ながらに思ったがどうか。
【理事者】
特Aを愛知県で取ったミネアサヒは品種の特性上、中山間地、緯度の高いところに適した品種である。なお、平場については現在コシヒカリ、あいちのかおりを作っているが、愛知県は全国の中でも非常に暑く、特に6年産は夜温が下がらず、なかなか厳しい状況である。食味が良くなるように生産者と県の普及課も併せて一生懸命努力しているが、難しいのが実態である。
【委員】
しっかりと努力してもらいたい。
次に、有機農業の推進について伺う。愛知県は、愛知県有機農業推進計画を策定し、有機農業に取り組む面積を2020年の330ヘクタールから2030年までに900ヘクタールまで拡大する目標を掲げて有機農業を推進している。私の地元の愛西市にある株式会社山三レンコンという農業法人は、およそ20ヘクタールの経営面積の一部で県内唯一の有機JAS認証のレンコンを生産しており、市場出荷に加え、生活協同組合への出荷、ふるさと納税の返礼品への出品、近隣市町の学校給食への食材提供など、おいしいレンコンを食べてほしいという熱い思いと優れた経営感覚を持って、地域の多様な関係者の理解を得ながら生産、流通、消費まで取組を精力的に展開している。
有機農業を拡大、定着させていくには、このような大規模農家が既に持ち合わせている技術力や経営力を生かして、既存の経営の一部を有機農業に転換して付加価値の高い農業に取り組むことが重要であり、これらの担い手を地域ぐるみで育成していくことが必要である。そのために、規模に応じた栽培技術の向上と販路の拡大に向けた支援に早急に着手することが不可欠と考える。
そこで伺う。有機農業の推進に当たり令和7年度の取組について、有機農業の拡大、定着に向けた重要となる担い手の確保と経営の安定に向けた対策を、県としてどのように取り組むのか。
【理事者】
有機農業の担い手の確保と経営の安定に向けた対策について、まず担い手の確保は、令和7年度から新たに農業大学校で有機農業者向けの公開講座を開設する。主な対象者は、新規就農者、また経営の一部を有機農業に転換する農業者としている。栽培技術の基礎、販路の確保や拡大の手法、優良経営体の事例研究、自らの経営計画の策定などを学んでもらい、有機農業の経営者を育成していく。また、有機農業推進計画の目標900ヘクタールの達成に向け、大規模な経営体が経営の一部に付加価値の高い有機農業を導入することが重要なポイントと考えている。例えば稲作では、農業総合試験場が開発した省力技術である水稲不耕起V溝直播栽培における雑草防除技術について今年度から民間企業3社との共同研究を始めており、来年度は試作機による試験を行う予定である。
さらに、経営安定に向けて、手間暇かけて栽培した有機農産物をその価値が分かる人に届けるため、マーケティングの視点が必要である。有機農業の出荷実態の調査、市場関係者や消費者の意向調査などのマーケット調査を実施し、その結果が販路拡大に生かせるよう農業者を支援していく。こうした取組を進め、環境に配慮した付加価値の高い農業として有機農業を拡大していく。