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スペシャルコラム

いとうまい子さん

いとうまい子さんプロフィール
名古屋市出身。1982年「ミスマガジン」コンテストで初代グランプリを受賞しアイドル歌手としてデビュー。以来、ドラマ、映画、情報・バラエティー番組など多方面で活躍中。芸能生活の傍ら2010年に早稲田大学(e-school)入学。2014年卒業後、大学院へ進学。2016年、修士課程修了。同年4月から博士後期課程へ進学。ロコモティブシンドロームを予防するロボットの研究と同時にロコモ予防の講演、トークショーなども行っている。

更新日:2017年6月30日

ロコモティブシンドロームを予防する“相棒”ロボ

 私が長年仕事を続けてこられたのは多くの方が支えてくださったおかげ。お世話になった方々に何か恩返しができないかと考えていましたが、自分には何も返せるものがありませんでした。そこで恩返しの土台となるものを築くためにまずは勉強しようと思い立ち、大学に入学したことが介護予防ロボットの開発に携わるようになったきっかけです。
 勉学を進めていくうちに、同じゼミで出会った整形外科の先生からロコモティブシンドローム(略称ロコモ)のことを聞きました。ロコモとは、筋肉や骨、関節など運動器の衰えが原因で歩行や移動など日常生活に支障がでている状態のこと。要介護リスクもあるためロコモが増えると寝たきりの方も増えてしまいます。そうした症状を予防し少しでも軽減できれば、それは世の中への恩返しになるのではないか。そこからロコモ予防ロボットの研究・開発を始めました。

いとうまい子さん

生活に運動を取り入れることで寝たきりを減らすことが目標

 開発した介護予防ロボット「ロコピョン」は1日3回、利用者がロコモ予防のために行うスクワット運動を応援します。簡単な運動であっても毎日続けることは難しいですからね。それを促すための装置がロコピョン。うさぎ型のロボットが目の前に人が来るまで呼び続け、「膝は痛くないですか」など話しかけながら一緒にスクワット運動を行います。
 修士課程の論文を書くときの実証実験を愛知県設楽町でやらせていただいたのですが、最初はロコピョンに対して半信半疑だったご夫婦も、1ヶ月後、自分の足腰がしっかりしてきたことを実感でき、「返したくないくらいだ」と愛着を持って使っていただくことができました。
 研究の目標はロボットを多くの方に使ってもらうこと。それがもしうまくいかなかったとしても、私を通してロコモを知り、自分もちょっと歩いてみよう、スクワットしてみるかと日々の暮らしの中で思っていただければうれしいです。

介護職はなくてはならない重要な仕事

 こうした経験を通して介護の仕事を知れば知るほど、この仕事に就いて多くの方をサポートされている方は、人に対する愛情や正義感が強い、素晴らしい方ばかりだと感じるようになりました。気持ちが介護に向くこと自体、選ばれた人たちなのだと私は思います。
 私も父ががんを患っていたとき病院でお世話になりました。私一人ではトイレに行かせるだけでも大変で、そのとき介護に携わる方はなくてはならない、重要な仕事だと実感しましたね。
 介護職に就くことを迷っている方がいたら、とにかく一度チャレンジしてください。高齢者と介護職の方との関わり方は、人ひとりの命を預かるに等しいこと。責任は重大ですが、ほかの職業では味わうことのできないやりがいがあり、貴重な体験が経験となるのではないでしょうか。
 また、若い方たちや他職種で働いていた方が介護職に就くことで、介護の仕事の改善点を挙げ、現場をより良く変えていける可能性もあると思います。嫌だから、大変だから辞めてしまうのでは何も変わりません。携わってみて何がいけなくて、どうすればいいか声を挙げられる人になってもらえればと願っています。

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