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スペシャルコラム

北原佐和子さん

北原佐和子さんプロフィール
1964年埼玉県生まれ。高校在学中に「ミス・ヤングジャンプ」に選ばれ芸能界デビュー。トップアイドルとして活動後、女優に転向。ドラマ、映画、舞台、バラエティー番組などに多数出演。2005年、ホームヘルパー2級、14年に介護福祉士、16年にケアマネジャーの資格を取得。女優業を続けながら介護士として現場で働き、講演会活動や朗読会「いのちと心の朗読会」を続けている。著書に「女優が実践した 介護が変わる魔法の声かけ」(飛鳥新社)。

更新日:2018年2月28日
取材日:2017年11月

女優として活動しながら介護の仕事も続ける北原佐和子さんに介護職の魅力を聞く後編。介護職を目指す方へのメッセージを聞きました。

女優も介護職も、人を掘り下げる作業は同じ

 私は女優と介護の仕事以外にも講演会や「いのちと心の朗読会」というボランティア活動も行っています。それぞれの仕事で気持ちを切り替えるには女優を続けてきたことが役に立っているように感じます。
 例えば女優の仕事は、メイクをしたり衣装を着替えたりするところで役のスイッチが入ります。介護の現場に入るとき支度をしながら気持ちが切り替わっていくのは、役柄の気持ちを作っていく仕事をしていたことで培われたことかもしれません。
 また、皆さん女優の仕事と介護の仕事は全然違うと思っていらっしゃるようですが、実はそうでもありません。女優の仕事は役を掘り下げ、その人を自分の中に入れ込んで演じるわけですが、しっかりその人を知るところは介護と同じ。介護の現場で一人ひとりの利用者さんをしっかり知る、どういうサポートが必要なのか、お困りのことは何なのか考えることと、演じる人物を掘り下げていく作業は一緒だと思っています。  

北原佐和子さん

将来は地域ぐるみで介護予防に取り組みたい

 介護職は生身の人と接する仕事なので、当然辛いこともあります。でも利用者さんから学ぶこともいっぱいある。辛さに目を背けずに向き合うことが、大切なことを学ぶことにも繋がります。そこが介護の面白いところだと思っています。
 ですから介護する側も大変なこと以上の喜びに出会いたいと思う意欲が大切なのではないでしょうか。目の前の利用者さんのことをもっと知りたいという気持ちです。それって大層な努力じゃなくて、いつもやっていることにちょっとプラスをしてみることで、それだけでもいい変化につながります。
 例えば認知症の方にトイレに行ってもらうためにいろんな声かけをしても、なかなかうまくいかないことがあります。でも、へこたれてはいけません。目を見てください。目が微妙に動くときがあります。動くときは感じている証拠ですから、それを見過ごさないでください。介護は観察が重要。観察の中から変化を発見することで、利用者さんを深く知ることができ、自分のやりがいに繋がります。
 昨年、ケアマネの資格を取った理由は、デイサービスなど一面からだけで、利用者さんを見るのではなく、多方面から、当事者、家族へのサポートやアドバイスが出来るようになりたかったからです。その思いは当事者の方々と関わる認知症啓蒙活動への参加もきっかけになっています。地域包括支援センターなど、地域の人に目を向けられるような業務に就きたい。地域ぐるみで介護予防に取り組んでいきたいと思っています。
 残念なことに、認知症の方が行方不明になり保護されるケースが増加しています。地域の関係性が希薄なことも一因としてあると思います。もう少し同じコミュニティーの人同士が温かい眼差しを持ち、サポートしていける社会であったら、悲しい事件もなくなるのではないでしょうか。  

介護職の面白さ、みんなから発信しよう!

 介護の仕事だけではなく、人をサポートしていく仕事を志す方は元々、優しい方だと思います。利用者さんを喜ばせたい、笑顔が見たい、困っている人を助けたいというお気持ちが根本にあるから介護の仕事を目指される。世間ではネガティブな意味で“3K”と言われてますが、私は介護の仕事の“3K”は「キラキラ・輝く・希望にあふれた仕事」だと思っています。実際、私も利用者さんから毎日、元気をいただいています。
 介護職を目指す皆さんにも、そういう気持ちで取り組んでいただきたいし、私たちも周りの皆さんに本当の介護職の面白さ、やりがいを知っていただけるようどんどん発信していきたい。それは決まった人でなければいけないということはありません。今はSNSやブログなど伝える方法はいくらでもありますから、みんなで介護職の面白さややりがいを発信していけば、介護のイメージも少しずつ変わっていくのではないかと思っています。  

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