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スペシャルコラム

上条百里奈さん

上条百里奈さんプロフィール
1989年7月18日、長野県生まれ。中学2年生のとき職業体験で介護施設に行ったことがきっかけで介護職を目指す。高校でホームヘルパー2級を取得。短大は福祉援助学科に進み、2009年介護福祉士資格を取得。卒業後、老人保健施設に就職。スカウトされたことをきっかけに2011年からモデルとしても活動開始。神戸コレクションなどの舞台を踏む。講演、テレビドラマの介護監修など幅広く活躍中。

更新日:2018年8月31日
取材日:2018年4月

特別養護老人ホームで介護職員として働きながら、モデルや講演活動も行い“かわいすぎる介護福祉士“と呼ばれている上条百里奈さん。介護福祉士とモデルを兼業しながらどのような活動を行っているのでしょうか。介護職を目指す人へのメッセージとともに熱い思いを聞きました。

特養での「看取り」にやりがい

 半年ほど介護職に専念して自分を取り戻した私は、介護現場の楽しさを実感すると同時に、20歳のときに感じた課題も同じように感じました。そこで、今度は介護の仕事を続けながら、皆さんに注目していただくためにモデルの仕事もすることにしました。現在は特別養護老人ホームでの介護現場の仕事と、モデルや講演活動、研究が半々くらいです。
 特別養護老人ホームを職場に選んだ理由はお看取りまでできるから。最期まで一緒にいられるのは介護職の魅力です。その方の人生がたとえ辛いことばかりだったとしても、最期を幸せにできたら、人生丸ごと幸せにできたことになるのではないかと思っています。介護は人生のクライマックスを幸せにできる、とてもお得な仕事。責任は大きいですが、一番身近にいて、その方の好みや過ごし方を知っているからこそ、最期どう迎えたいかを一番叶えられると思っています。亡くなられた時に、「死んだのではなく、生きたんだ」と言える人生を送れるようにこれからも介護福祉士として精一杯関わっていきたいと思います。

上条百里奈さん

居心地の良さが高齢者介護の魅力

 モデル業や講演のお仕事と、介護のお仕事の切り替えをどうやっているのか聞かれることがありますが、私にとっては一番自分らしくいられる場所が介護の現場です。なので切り替えるというより自分に戻るという感覚です。私は特別頭がいいわけでも何か特技があるわけでもありません。それがずっとコンプレックスでもあったのですが、そんな私に施設のおばあちゃんたちは、私がそこにいるだけで、ただ存在しているだけで嬉しいのだという気持ちを伝えてくれます。この「居心地の良さ」は高齢者の最大の魅力だと思っています。
 人間、ときには誰かと比べて嫉妬したり、理不尽さを感じて悪口を言ったりしますよね。そんな中でおじいちゃん、おばあちゃんたちが日々の色んな理不尽さを乗り越えて、あらゆるモノに感謝しながら過ごされる姿を見ると心が洗われます。「失う」ことは「得る」こと以上に人を成長させてくれるのかもしれません。
「100年生きた今が一番幸せだ」と言ってくれたおばあちゃんがいました。さらに「人は歳をとるたびに幸せになっていく、だから人は歳をとるんだよ」と教えてくれました。その言葉や生きる姿は、人生に悩む全ての人の希望になる。私たち介護福祉士は、高齢者を幸せにすることで社会に大きな光を生み出していると言えるかもしれません。

自分の「好き」を見つけて、いきいきと働ける進路選択を

 介護の何が凄いのか。実は凄いことをしているのに本人が気付いていないということがたくさんあります。スポーツ中継に解説が入るのと同じように、こういうところが凄い!と客観的な視点で第三者が伝えていくことは大事だと思っています。
 そして、これからはいかに障害のある方に社会参加してもらうかが高齢者介護にとって重要です。病気や障害があって医療や介護を受けていたとしても、テクノロジーと医療の進化によって、寝たきりでも就労することができます。「寝たきり=仕事ができない」という方程式はもう成り立たない時代にきています。働けるということは、人の役に立っているということ。支えられるだけではなく、支える側になっているということです。少子高齢化社会を乗り越えるためには、「高齢者」を支えられるべき人と決めつけるのではなく、子どもたちを支える一人の大人として何ができるのかという視点で考える必要があると思っています。そしてそれが、これからの介護福祉士に必要なスキルになってくると思います。現在、パラリンピックサポートセンターのあすチャレアカデミーのイメージモデルもさせていただいていることもあり、障害のある方、高齢者が地域社会でお互いに良い影響を与え合えるよう、積極的に取り組んでいきたいです。
 好きなことを職業にするには、好きなことを見つけなければなりません。好きなことがなんなのか分からないと相談を受けることが多いのですが、好きなことを見つけられない方は、ぜひ嫌いなことを体験してみてください。そして、なぜそれが嫌いなのかを細かく整理することによって嫌いではないものが見えてきます。  
 私は介護で人生が変わりました。介護の現場にいることでいきいきといられます。介護職を目指す皆さんには、自分の「好き」をあきらめず、進路を選んでいただきたいと思っています。

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