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スペシャルコラム

安藤なつさん

安藤なつさんプロフィール
1981年1月31日東京都生まれ。中学生のときから芸人を目指し、高校生のときに男性2人とトリオを結成する。いくつかのコンビを経て2012年8月、カズレーザーとお笑いコンビ「メイプル超合金」結成。ツッコミを担当。2015年、「M-1グランプリ」決勝に進出しブレーク。テレビ、舞台、CMなどで活躍中。愛車はハーレーダビッドソン。

更新日:2018年12月28日
取材日:2018年11月

売れっ子お笑いコンビ「メイプル超合金」の安藤なつさん。相方のカズレーザーさんとともに個性的なキャラクターと明るいネタで人々を笑わせ、見る人に元気を与えています。テレビやイベント、舞台に引っ張りだこの安藤さん。実はコンビが売れるまで芸人と介護職員の2足のわらじを履いていました。介護職に興味を持ったきっかけや、介護の仕事を通して感じたことなど聞きました。

一晩に15〜20軒を訪問しておむつ交換

 私の介護の仕事との出会いは伯母さんの旦那さんが運営していた障害者グループホームです。子どものころからよく遊びに行っていて、中学生になってからは毎週土日にボランティアをしていました。障害のある方とレクリエーションをしたり、ご飯を一緒に食べたり。伯母夫妻の自宅が施設だったので、遊びに行く感覚でした。
 高校生になってからはアルバイトとして働いていましたが、通うのが大変だったので一旦辞め、お笑いだけでは食べていけなかったため20歳のときにヘルパー2級(当時)の資格を取得し、介護の仕事を再開しました。
 それからは夜勤の訪問介護専門でおむつ交換とトイレ介助をしていました。ほとんどが要介護5の寝たきりの方で、ご家族から鍵を預かり一晩で15軒から20軒を回っていました。なぜ夜勤専門だったかというと、芸人として昼間活動していたので夜間の方が働きやすかったからです。体力的にはきつかったのですが給料も良かったし、急に休まなければならなくなったときにもシフトを変えやすかったのが理由です。
 実は売れるきっかけとなった「M—1グランプリ」の決勝(2015年)も、前日に夜勤で働いてほとんど寝ていません。その日以来、夢であった芸人として食べていけるようになりました。

会話はなくても心の交流があった夜の訪問介護

 よく介護の仕事は汚いとかって言いますけど、いや、自分もするでしょって思います。私は子どものころから介護の現場にいたからか、汚いと思ったことがありません。
 訪問介護をしながら思っていたのは、親や配偶者が認知症になったとき、ご家族をどう支えてあげればいいのか、ということです。家族が認知症であることを隠したいと思ってしまう気持ちをどうすればもっとオープンにできるのか。こうやって介護サービスを利用できている人はまだいいけれど、一人で抱え込んでしまっている方も多いはずだと。そんなことを考えながら仕事をしていました。
 嬉しいこともありました。ポータブルトイレに移動介助する男性の利用者さんがチラシを持っていたので、私が鶴を折ったんです。そしたら次の日にご家族の方から「ありがとうございます。私も折りました」ってメモと別の折り鶴が置いてあって。そのときは、直接会話はしないけれど心が温かくなりました。

まずは現場で体験し、向き・不向きの判断を

 介護職に就こうかどうか迷っている方がいたら、ボランティアでも見学でもいいので、ぜひ現場に行ってみてください。やっていくうちに、介護職が合っている人には大変さを超える何かが見えてきますし、やっぱり駄目だという方もいらっしゃるでしょう。
 私も中学生のときに、ある認知症の利用者さんを起こして食堂まで連れてくる役目があったのですが、他のスタッフが言うとスッと来てくれるのに私だと動いてくれない。それを毎週続けて何ヶ月か経ったころ、「行くよ」と言ってくれたときは本当に嬉しかったです。それまで毎回、誘導の仕方を考えたり言い方を工夫したりしていた努力が報われた思いがしました。
 介護職に就くため今頑張っている方には、「楽しんで!」と言いたいです。利用者さんは十人十色。介護の現場には刺激的な毎日が待っています。ご飯の時間、お風呂の時間は決まっていますが、利用者さんそれぞれ、体の状態だけでなく空気もテンションもその都度違います。その違いを察知することが面白い。それをケアに生かせればもっと面白いし嬉しいです。私も将来、介護の仕事に戻るときが来るかもしれません。そのときは介護福祉士の資格取得にも挑戦したいと思っています。

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