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スペシャルコラム

谷元圭介選手

谷元圭介選手プロフィール
1985年1月28日三重県鈴鹿市生まれ。中部大学卒業後、薬品卸会社入社。硬式野球部でプレーを続け、2008年ドラフト会議を経て日本ハムファイターズに入団。16年には一軍公式戦58試合の登板で31ホールドポイントを記録し優勝に貢献。日本シリーズの胴上げ投手となる。17年、7月に中日ドラゴンズへ移籍。19年からナゴヤドームでも介護福祉士を招待する「アナたにもんシート」をスタートした。

更新日:2019年12月27日
取材日:2019年11月

ドラゴンズのピッチャー、谷元圭介選手。伸びのある直球を武器に活躍し、ファイターズ時代の2016年には日本シリーズで胴上げ投手になりました。17年6月23日には100ホールド(史上25人目)を達成。そんな谷元選手は17年から球場に介護福祉士を招待する「アナたにもんシート」を実施するなど介護職員への支援を続けています。谷元選手に活動を始めた動機や介護の仕事への思いを聞きました。

介護職員さんへの感謝の気持ちがきっかけ

 ファイターズ時代から何か社会貢献活動をしたかったのですが、自分にとって身近なものでないと本気で支援することができないと思っていました。そのころ鈴鹿に住んでいる母から、祖父がアルツハイマー病を患って介護職員の方にお世話になっていると聞いて、何か力になれたらと考えたことが「アナたにもんシート」を始めたきっかけです。
 母は5〜6年一人で祖父の介護を続けていたのですが、祖父がだんだん弱ってきて、母のことも分からない状態になりました。徘徊も始まって、母も介護ノイローゼじゃないですがパンクしかけていたので、介護の専門家にお世話になることになりました。デイサービスから始まり、アルツハイマー病が進行した今は施設で暮らしています。僕が見舞いに行っても誰か分かっていない状態。でも施設に入ったことで母の負担も減りましたし、お医者さんも常駐している施設なので安心できます。
 僕は決して介護に詳しいわけではありませんが、母の話を聞いたり祖父の見舞いに行ったりした際に見聞きしたことで、介護職員の方々に感謝すると同時に、僕も何か力になれないかと思いました。僕は野球を一生懸命やること以外お手伝いすることができません。だったら介護職員の方々に球場に見に来て、楽しかったと感じてもらって、それが皆さんの明日への活力になればと。そのために、社会福祉協議会のような公の団体に推薦をお願いし、そこから「抽選に当たりました」って言ってもらえれば、周囲にも気兼ねすることなく見に行けるんじゃないかと考えました。

谷元圭介選手

ナゴヤドーム公式戦全試合に2人ずつ招待

 「アナたにもんシート」は、ファイターズ時代の2017年にスタートしました。18年にドラゴンズにトレードになった後は、19年のシーズンから再開し、名古屋市社会福祉協議会を通じてナゴヤドーム公式戦全69試合で、各試合2人の介護福祉士さんを招待しています。来てもらった方にはオリジナルの非売品タオルもプレゼントしているので、思い出として取っておいてもらってもいいですし、介護の現場で使っていただけたら嬉しいです。このタオルは今まで名古屋市内の介護職員の方800人にプレゼントしているので、施設や事業所で見たことがある方もいらっしゃるかもしれません。
 名前の由来は僕のニックネーム「たにもん」に引っ掛けたダジャレです。「介護福祉士招待シート」じゃ固いと思って名付けました。これまでに来ていただいた方から「次は自腹で見に行きます」とか、「介護職に目を向けてもらえることが励みになっています」といったお手紙など、お礼の言葉をいただいて、僕もやっていて良かったと思います。
 来シーズンも「アナたにもんシート」は実施します。そして、まだ実現できていませんが、今後は施設などにうかがって直接交流できる機会も増やしていきたいです。

介護福祉士の存在を皆に知ってもらいたい

 介護の仕事のやりがいや素晴らしさを広く知ってもらうには「ありがとう」の言葉がポイントかなという気がします。僕も「勝ってくれてありがとう」とか「一生懸命投げてくれてありがとう」と言われると、練習を一生懸命やって次の試合も頑張ろうと思えます。「ありがとう」って言われると、もっと期待に応えたいという気持ちになりますよね。介護職員の方も仕事は大変だけど「ありがとう」の一言があると頑張れるんじゃないかなと思っています。
 これからますます高齢者が増えていく中で、介護職員の方の絶対数が少ないと聞きます。数が足りていないと尚更一人ひとりにかかる負担が大きくなって大変な仕事だというイメージが広がり、目指そうという人が増えません。数を増やしていく必要があると新聞記事やニュースなどで目にしているので、この企画で介護福祉士の存在を知ってもらうだけでもやっている意味はあるのかなと思っています。  
 介護の仕事は、僕らプロ野球選手以上にプロフェッショナルで、たくさんの「ありがとう」を言ってもらえる仕事です。プロ介護職を目指していただいて、子どもたちの憧れの職業に介護職の名前が挙がるようになるよう、共に頑張っていきましょう!

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