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スペシャルコラム

経験無しでも飛び込んで正解 自分に合っていた介護職 りんたろー。さん

りんたろー。さんプロフィール
1986年3月6日生まれ、静岡県出身。吉本興業所属のお笑いコンビ、EXIT(イグジット)のメンバー。大学卒業後けがのためサッカー選手になる夢をあきらめ、2008年、お笑い芸人を目指して吉本興業の養成所(NSC東京)に入学。漫才コンビ、ピン芸人を経て現在の相方、兼近大樹さんと2017年12月、EXITを結成。テレビ、舞台、動画サイトなどで幅広く活躍。お笑い第7世代の代表格として若手を牽引している。趣味は美容、ジム、お酒、パチンコ。

更新日:2020年8月31日
取材日:2020年7月

人気沸騰中のネオパリピ系漫才師、EXIT(イグジット)。チャラ男のしゃべくり漫才と派手な外見から一見近寄り難いイメージの2人ですが、素顔の2人を知る人たちからは真摯に仕事と向き合う真面目な人物として知られています。中でもりんたろー。さんは「お笑い第7世代」を引っ張るリーダー的存在。お笑い芸人としてブレイク前、デイサービスの事業所で8年間働いた経験を持つ介護職の経験者でもあります。なぜ介護の世界と関わるようになったのか。お笑いの仕事と両立する中で感じていたことをうかがいました。

施設の仲間が芸人活動をサポート

 上京して、お笑い芸人を目指しながらアルバイトをしていたのですが、あるバイトを辞めたとき家の近くで介護職員の募集があって。もともとおばあちゃん子だったし、できたばかりの事業所だったので、僕でもイチからできるんじゃないかって思いました。チャラ男と介護のエピソードとかネタにできればいいなって思いつつ、飛び込んでみた感じです。  
 不安はすごくありました。でも実際働き始めたら、しんどいと感じるところが予想と違っていました。お下の世話がしんどい、というかできるのかな?という気持ちだったのが、そんなのは全く抵抗無くできて。それよりも認知症の方からときどき言われる心無い言葉がキツかったです。
 それまで介護の勉強をしたことが無い僕も含め、何をしたらいいかいまいち分かっていない人が多かったので、経験豊富な人に働きながら一から教えてもらいました。結局そこで働いたのは23歳から31歳まで8年間。お泊まりできるデイサービスだったので、僕は夜勤が多くてお笑いと両立するのに都合が良かったというのも長く続いた理由です。利用者さんが寝ている間にネタを考えることもできたし、小さな施設だったのも良かったと思います。それと、同僚たちがすごく応援してくれていたことも大きいです。お笑いの仕事が急に入ったときも「代わるよ。行ってきな」ってサポートしてくれて。とてもアットホームなところでした。

心無い言葉はツッコミで解消、ネタに昇華

 介護の仕事をしているとき、ストレスがかかる瞬間があったとしますよね。僕はそれをツッコミで解消させていたというか、これトークになるじゃん!って昇華させていたので、思い詰めずに済みました。
 大変なこともありますよ。でも施設ではストレスが無い時間のほうが長い。すごくゆっくりとした時間が流れています。レクリエーションしたり、ご飯をみんなで食べたり。視野が狭くなっているときでもリセットできる。温かい人たち、おじいちゃん、おばあちゃんに癒やされていました。心無い言葉を言われて悲しくなることもありましたけど、病気だし、いちいち気にしてたらやっていけないから。「そんなこと言わないの」って流せるようになってから楽になりましたね。
 介護やってえらいとか、大変でしょって言われるけど、色々なバイトを経験している僕からしたら居酒屋とかコンビニで、立ちっぱなしで接客するほうがよっぽどしんどい。おじいちゃんおばあちゃんとおしゃべりしたり、みんなを連れて散歩に行ったり。毎日同じようでちょっとずつ違う。そういうところがすごく楽しい仕事でした。

金髪とヒゲの外見変えずに勤務 付いたあだ名は「ハイカラ兄ちゃん」

 おじいちゃん、おばあちゃんと接するときに心掛けていたのは目線の高さを合わせること。あと僕がよくやっていたのは体に触れることです。安心してほしくて肩に触れながら話しかけたりしていました。
 利用者さんが覚えやすいからという理由で金髪、ヒゲもOKだったので、確かに結構覚えてくれていましたね。「ハイカラ兄ちゃん」って呼ばれたり。「ハイカラって何?みたいな」(笑)。他にもスマートフォンのアプリでゾンビ風に撮って「変わってねーじゃん!」って笑い合って。楽しかったですね。
 やりがいなんて大それたもんじゃないですけど、土日にお泊まりして月曜日に家に送った時、ご家族から「おかげさまでリフレッシュできました」って言われたりすると、そういう時間を作れて良かったなーと思いました。ご本人は楽しんでいても忘れちゃう。だからご家族からの連絡帳に「今日はレクリエーションが楽しかったって言っていました」なんて書いてあると、嬉しい気持ちになりました。
 振り返ってみると、僕はいい意味で適当だったのかもしれません。流すところは流していかないと続けられない職業です。だからこそ、そういうところさえうまくこなせたら楽しいことも多いよ、って伝えたいです。
(10月公開予定の後編に続く)

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