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スペシャルコラム

メイミさん

メイミさんプロフィール
1980年12月4日、福岡県生まれ。大手芸能事務所でお笑い芸人として活動後、フリーになり福祉施設での演芸ボランティア活動をスタート。2005年、デイサービス職員に。07年、NPO法人笑顔工場を立ち上げ、高齢者施設、福祉イベント等で活動を行う。09年、介護福祉士登録。11年東京都港区手話通訳者登録。現在も舞台を中心にお笑い芸人として活躍中。

更新日:2022年6月
取材日:2022年5月12日

お笑い芸人として舞台に立ちながら介護福祉士の資格を持ち、デイサービスで介護職員として働いていた経験を持つ介護福祉芸人のメイミさん。「笑顔は副作用の無い魔法のお薬」をモットーにお年寄りや障害のある方のみならず、その場にいる人たちみんなに笑顔のひとときを届けています。演芸を通して介護福祉に興味を持ってもらい、「笑って長生き」を広めるメイミさんに介護福祉芸人となったきっかけや活動への思いをうかがいました。

お年寄りを理解したくて介護職に

 介護の仕事に興味を持ったのは、先輩芸人の施設慰問に付いていったのをきっかけに、高齢者施設や高齢者の皆さんを対象に笑いを届けたいと思うようになったことが始まりです。
 そのころの私はまだ芸歴1〜2年の若手芸人。ライブのお客さんは若い人ばかりで、施設で披露した芸もお年寄り向けに準備したわけではありませんでした。施設で一人コントをやったとき、セリフで「鈴木さんっ」と呼びかける場面がありました。そしたら客席にいたおじいちゃんが「はいっ!」って返事をして。私はびっくりしてしまい、あたふたしていたら周りの人は皆大笑い。続けて「鈴木さんっ」って言うとまた「はいっ!」と返事が返ってくる。そんなやり取りを後から思い返し、あれ面白かったなーと思うようになりました。
 施設でのパフォーマンスは、舞台に立っている人対お客さんという形ではなく、ハプニングも含めて全員で楽しい場を作っているような一体感がありました。そのときは、そう思っただけで終わってしまったのですが、その後事務所を辞める際、施設での経験が面白かったし、おじいちゃん、おばあちゃんが好きだから、これからは高齢者の方に笑いを届ける仕事をしたいと思うようになったのです。
 それまで自分の祖母以外、高齢者の方と接する機会が無かったためにお年寄りのことは分からないことだらけでした。そんなとき、デイサービスのスタッフ募集の張り紙を見つけ、介護の仕事をしてみたら分かることもあるだろうと思い介護職に就きました。

メイミさん

デイサービスで勤務しながら芸人活動

 8年半、非常勤の介護職員として働きながらお笑い芸人の活動もしていましたが、介護の仕事は本当に楽しかったです。働く前にホームヘルパー2級(現在の介護職員初任者研修)を取り、働きながら介護福祉士の資格を取得しました。体力仕事ではありますが、他の利用者さんが優しく声を掛けてくださったり、助けてくれようとする利用者さんもいたりして精神的にはキツいと思ったことはありません。ただ、どんなことが起きてどういう展開になるか予想できないとき、一人で判断しなければならない場面もあります。生死に関わるようなことが起きることもあるので、責任の大きさは感じていました。
 パズルのようにスケジュールを組みながら休みの日に芸人の仕事をする毎日。今、振り返ってみると、介護の仕事は他にやりたいことがある人にとっても都合がいい。両方の仕事と人生に良い影響を与え合えるものだと思います。なぜなら介護は誰もがどこかで関わるかもしれないものだからです。学びも多く、仕事を通じて思いがけない素敵な場面に立ち会えたり、お話を聞けたりします。人は自分の人生しか生きられませんが、80年、90年生きてきた方と介護の現場で繋がりができることで、その方の生きざまを少しのぞかせていただけるという点も魅力だと思っています。
 デイサービスで働いているとき、こんなことがありました。100歳の女性利用者さんがもうすぐ誕生日だったので「誕生日が来たら101歳ですね」と話しかけたら、その方が「気付かなかったね。夢中で生きてきたからね」っておっしゃった。衝撃でした。関東大震災も第二次世界大戦も経験され100年夢中で生きて、気づいたら101歳って、すごいなーと感動しました。

メイミさん

コロナ禍で広がった活動範囲

 若い世代の人の中には介護職をネガティブなイメージで捉えている方がいるかもしれません。でも発信を続けることで、現場で働いている人たちの本当の姿を知ってほしい。そして介護施設がもっと外に開かれて双方向で交流できるようになればいいなーと思っています。
 現在、私は漫談家として浅草の寄席やイベントに出演しながら特定非営利活動法人笑顔工場の代表として、高齢者や障害のある方を訪問して演芸イベントを行っています。舞台でお見せするのは介護漫談や早変わりパフォーマンス。早変わりパフォーマンスは、見た目で分かりやすい出し物を考えた結果、生まれた芸です。
 法人を立ち上げた15年前は年間30か所くらいの施設さんにお邪魔していましたが、最近はお元気なシニア世代向けの介護予防イベントや、高齢者対象の催し物の出演を依頼されることが増えてきました。コロナ禍で直接施設さんに行ってイベントを行うことが難しくなり、オンラインでの活動がメインです。そこで、シニア世代のオンラインコミュニティ「六月の村」をコアメンバーの一人として立ち上げ、その発展形として施設さん向けにオンラインでレクリエーションを提供する活動も行っています。
 コロナ禍で不自由なことももちろん多くありますが、不自由の中にも広がる自由があるとの思いもあります。これまで予算の問題で関東中心だった活動が、全国や海外の方と繋がれるようになりました。今後も、年齢や障害のある無しに関係なく子どもからお年寄りまでいろいろな人たちが繋がり共存していけるよう、自分にできることを少しずつ実践していきたいと思っています。

メイミさん
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