私は中高一貫校に通っていたのですが、その学校は社会に出てから必要な実践的な教育を重んじる学校でした。高校に上がるとき、美容や商業系のコースもあった中で、私が選択したのが介護福祉士のコース。“手に職を付けたい”との思いからでした。
　これは勉強があまり好きではなく大学進学の希望はなかった私と、それを知っていた両親の一致した意見でもありました。これから少子高齢化がますます進みます。将来就職するに当たって、介護の勉強をして資格を持っていれば仕事に困ることがないだろうと思ったからです。まだ中学３年生でしたし、恥ずかしながら介護の仕事がどういうものかも正直よく分からないまま。就職に有利だろうというだけの選択でした。
　介護の仕事がどういうものかを知ったのは、高校に進学してからのことです。介護の仕事が３Kなどと言われていたことも高校生になって初めて知り「介護の仕事ってそんなに厳しい世界なのかな？」と驚いたくらいでした。

　高校では実習もありました。デイサービスでの実習1日目は正直キツくて分からないことだらけ。でも、担当した利用者さんのことをどんどん知るうちに、楽しさが分かってくると言いますか、自分に余裕が出てきて、来て良かったという感情が芽生えてくるのを感じました。
　ネットに書かれていた厳しさはありましたが、それ以上に利用者さんが昔の話をしてくださったり、「リンゴの唄」など古い歌謡曲を教えてくださったり。孫のように接してくれるのが楽しかったですし、生まれる前の歌を覚えて、自分のおじいちゃん、おばあちゃんにも歌ってあげられるようになったのもうれしかったです。
　実習を通して、実際の介護の現場と周りが抱いているイメージとは違う部分も多く、自分で体験をしてみると3Kという感覚ではないと感じました。これは人によっても違うと思いますが、私は介護を選択して良かったと感じたことを覚えています。
　利用者さんの食事や入浴の介助をしながら思ったのは、これって人生のお手伝いをしている感覚だよな、ということです。利用者さんに「ありがとう」とか「楽しかった」って言葉をかけていただいた時は、私はこの方の人生の一部を楽しくすることができているんだなって、やりがいを感じました。今、振り返ってみても、改めて私は実習先で尊い瞬間を過ごせたのだと思います。
　その後、高校卒業と同時に介護福祉士の試験に合格。声優になる夢の実現を目指し、別の道に進みました。

　今でも介護福祉士の勉強をして良かったなと思いますし、もしかしたら遠い将来、資格を生かして働くことがあるかもしれません。介護職は人の人生に関われる尊い仕事です。介護は誰にとっても必要なことなので、学んで損はないとも思います。それに、利用者さんのお話を聞くことによって、色々な人生があると学ばせてもらったこと、「私も若いころはこんな夢があったのよ」と写真を見ながら話していただいたことは私の財産ですし、声優や女優の仕事にも役立っているって感じます。
　今後は、自分の夢を頑張りながらSNSや動画配信などを通して若い方たちに介護職の魅力も伝えていけたらいいなと思っています。ネイル検定3級を持っているので、チャンスがあればデイサービスなどでネイル技術を生かして活動してみたいです。
　介護職にちょっと興味があるよっていう若い方には、一度挑戦してみることをお勧めします。やってみて合わなかったら別の職を探すのもいいですし、もっとやりたいと思えば、働きながら介護福祉士の資格を取ることもできます。今、介護の現場で頑張って働いている方には、皆さんのことを本当に尊敬していますし、これからも応援しています！と伝えたいです。